JP2013249396A - 成形体の製造方法 - Google Patents

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有信 堅田
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Abstract

【課題】 ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が緩やかなために塊状重合時の取り扱いが容易で、かつ、導電性に優れた成形体を提供することができる成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 特定のルテニウム触媒、特定のホスフィン化合物、シクロオレフィンモノマー、及び、カーボンナノチューブを含有してなる重合性組成物を、電界を印加しながら塊状重合することを特徴とする、成形体の製造方法を提供する。
そして、前記重合性組成物が、さらに連鎖移動剤を含有することが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が緩やかなために塊状重合時の取り扱いが容易で、かつ、導電性に優れた成形体を提供することができる成形体の製造方法に関する。
アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の導電性カーボン添加剤と、樹脂、ゴム等の高分子材料とを混合することにより、導電性を付与した複合材料の研究が行なわれている。
例えば、特許文献1には、脂環式構造含有重合体と、カーボンナノチューブを含有する樹脂組成物を、二軸押出機で混練してペレット化し、得られたペレットを射出成形装置を用いて射出成形し、カーボンナノチューブを含有する成形体を得ることが開示されている。
しかしながら、このような方法では、二軸押出機で混練する工程が必要なため、生産性に劣るという問題がある。
また、二軸押出機を用いずに、射出成形を行う方法として、反応射出成形法が知られている。
例えば、特許文献2には、テトラシクロドデセンとノルボルネンからなる環状オレフィンの混合モノマーに、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドとトリフェニルホスフィンを含有してなる触媒溶液を添加し、金型内で塊状重合(反応射出成形)を行うことにより、平板状の成形体を得ている。
しかしながら、特許文献2には、カーボンナノチューブを含有する成形体については、何ら開示されていない。
国際公開第2004/029152号 国際公開第2005/000579号
本発明は、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が緩やかなために塊状重合時の取り扱いが容易で、かつ、導電性に優れた成形体を提供することができる成形体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、(i)ルテニウム触媒、ホスフィン化合物、シクロオレフィンモノマー、及び、カーボンナノチューブを含有してなる重合性組成物を塊状重合する場合において、使用するルテニウム触媒やホスフィン化合物の種類によっては、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が急激になり過ぎて塊状重合時の取り扱いが難しい場合(ポットライフが短すぎる場合)があり、特定のルテニウム触媒及びホスフィン化合物を用いればこの問題が解決できること、及び、(ii)電界を印加しながら塊状重合することで、得られる成形体の導電性が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明によれば、
下記式(1)又は(2)で表されるルテニウム触媒
Figure 2013249396
(式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又は中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。)、
下記式(A)で表されるホスフィン化合物
Figure 2013249396
(式(A)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、該シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよく、R〜Rのうち、少なくとも一つは水素原子又はメチル基であり、かつR〜Rのうちの一つ又は二つが水素原子又はメチル基であるときは、残りのR〜Rはアルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基である。)、
シクロオレフィンモノマー、及び、カーボンナノチューブを含有してなる重合性組成物を、電界を印加しながら塊状重合することを特徴とする、成形体の製造方法が提供される。
そして、上記R〜Rの少なくとも一つがシクロアルキル基であることが好ましい。
また、上記重合性組成物が、さらに連鎖移動剤を含有することが好ましい。
さらに、上記カーボンナノチューブの比表面積が、800m/g以上であることが好ましい。
本発明によれば、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が緩やかなために塊状重合時の取り扱いが容易で、かつ、導電性に優れた成形体を提供することができる成形体の製造方法を提供することができる。
図1は、電界を印加する前の型内の重合性組成物の状態を表す。 図2は、電界を印加した後の型内の重合性組成物の状態を表す。
ルテニウム触媒
本発明で用いるルテニウム触媒は、下記式(1)又は(2)で表されるルテニウム触媒であり、これらはルテニウムカルベン錯体を形成している。
Figure 2013249396
(式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又は中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。)
上記式(1)又は(2)で表されるルテニウム触媒において、触媒活性向上の観点から、L及びLの少なくとも一方がヘテロ原子含有カルベン化合物であることが好ましく、L及びLのいずれか一方がヘテロ原子含有カルベン化合物であり、他方が中性電子供与性化合物であることがより好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物におけるヘテロ原子とは、周期律表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる観点から、N、O、P、S原子などが好ましく、N原子が特に好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物は、カルベン炭素の両側にヘテロ原子が隣接して結合していることが好ましく、さらにカルベン炭素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成されているものがより好ましい。また、カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を有していることが好ましい。
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、下記の式(3)又は式(4)で示される化合物が好ましく、重合性組成物の粘度の上昇をより抑制できるとの観点から、式(4)で示される化合物が特に好ましい。
Figure 2013249396
(式中、R〜R10は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含んでもよい炭素数1〜20個の炭化水素基を表す。また、R〜R10は任意の組合せで互いに結合して環を形成していてもよい。)
前記式(3)または式(4)で表される化合物としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられるが、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデンが好ましい。
なお、前記式(3)または式(4)で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物も用い得る。
また、中性電子供与性化合物は、中心金属(ルテニウム原子)から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であれば特に限定されない。その具体例としては、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類などが挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、エーテル類及びピリジン類が好ましく、シクロアルキル基を含有するホスフィン類がより好ましく、トリシクロアルキルホスフィンがより好ましく、トリシクロヘキシルホスフィンが特に好ましい。
前記式(1)及び式(2)において、アニオン(陰イオン)性配位子X、Xは、中心金属原子から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例えば、F、Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基などを挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子(Cl)がより好ましい。
前記式(1)及び式(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表すが、本発明の効果がより一層顕著になることから、R及びRのいずれか一方が水素原子であり、他方が窒素原子を含有する炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、該窒素原子が式(1)及び式(2)中のRu=C又はRu=C=Cで表される末端の炭素原子と直接結合していることが特に好ましい。
本発明で用いるルテニウム触媒(以下、「ルテニウムカルベン錯体化合物」ということがある。)は、本発明の効果が、より一層顕著になることから、前記式(1)で表されるルテニウムカルベン錯体化合物が好ましい。
このような前記式(1)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(チオフェニル−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−ブロモ−1H−インデン−1−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メトキシ−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−ホスフィニル−エチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−トリメチルシリル−エチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモ−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
(2−ピロリドン−1−イルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メトキシ−2−ブテン−1−イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)ルテニウムジクロリドなどの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;などが挙げられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、ヘテロ原子含有カルベン化合物および中性の電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物が好ましく、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(チオフェニル−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドが好ましく、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドが特に好ましい。
また、前記式(1)において、R5とL1が結合しているルテニウムカルベン錯体化合物として、下記の式(5)〜(7)で表される化合物が挙げられる。なお、式(5)中の「Pr」はイソプロピル基を表し、「Mes」は下記式で示される基(メシチル基)を表す。
Figure 2013249396
また、前記式(2)で表されるルテニウムカルベン錯体としては、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−ブロモフェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(3−メトキシブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(3−アミノフェニルビニリデン)ルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
本発明で用いるルテニウム触媒は、本発明の効果がより一層顕著になることから、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(3)又は式(4)で表される化合物を1つ有するものが好ましく、前記式(1)で表され、かつ配位子として前記式(4)で表される化合物を1つ有するものが特に好ましい。
なお、これらのルテニウム触媒は、Org.Lett.,1999年,第1巻,953頁、Tetrahedron.Lett.,1999年,第40巻,2247頁などに記載された方法によって製造することができる。
ルテニウム触媒の使用量は、(ルテニウム金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
ルテニウム触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解又は懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。
また、ルテニウム触媒としての活性を低下させないものであれば、液状の老化防止剤、液状の可塑剤、液状のエラストマーを溶剤として用いてもよい。
本発明で用いるルテニウム触媒は、重合活性を制御し、重合反応率を向上させる目的で活性剤(共触媒)と併用することもできる。活性剤としては、アルミニウム、スカンジウム、スズのアルキル化物、ハロゲン化物、アルコキシ化物及びアリールオキシ化物などを例示することができる。
活性剤の具体例としては、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。
活性剤を併用する場合の使用量は、(ルテニウム金属原子:活性剤)のモル比で、好ましくは1:0.05〜1:100、より好ましくは1:0.2〜1:20、特に好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
本発明で用いるルテニウム触媒は、室温以下での重合反応の進行を抑制することができることから、連鎖移動剤を併用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、置換基を有していてもよい鎖状のオレフィン類を用いることが好ましく、式(B):CH2=CH−Y−OCO−CR=CHで表される化合物(「−OCO−」は、オキシカルボニル基を表す。)が特に好ましい。式(B)中のYはアルキレン基、R4は水素原子又はメチル基である。
アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、通常1〜20、好ましくは4〜12である。この構造の連鎖移動剤を用いることで、より強度の高い成形体を得ることが可能になる。
式(B)で表される化合物としては、メタクリル酸アリル、メタクリル酸3−ブテン−1−イル、アクリル酸アリル、アクリル酸3−ブテン−1−イル、メタクリル酸ウンデセニル、メタクリル酸ヘキセニルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸ウンデセニルおよびメタクリル酸ヘキセニルが特に好ましい。
また、上記式(B)で表される化合物以外の連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセンなどの脂肪族オレフィン類;スチレン、ジビニルベンゼン、スチルベンなどの芳香族基を有するオレフィン類;ビニルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素基を有するオレフィン類;エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;メチルビニルケトン、1,5−ヘキサジエン−3−オン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン−3−オンなどのビニルケトン類;アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレート;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシラン、アリルジメチルビニルシラン;アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル;アリルアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノールビニルエーテル、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリン;などが挙げられる。
連鎖移動剤の添加量は、使用するシクロオレフィンモノマーの全量に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%である。連鎖移動剤の添加量がこの範囲であるときに、室温以下での重合反応の進行を抑制するとともに、より強度の高い成形体を得ることができる。
ホスフィン化合物
本発明で用いるホスフィン化合物は、下記式(A)で表されるものである。
このようなホスフィン化合物を添加することにより、室温以下での重合反応の進行を抑制することができる。
Figure 2013249396
(式(A)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、該シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよく、R〜Rのうち、少なくとも一つは水素原子又はメチル基であり、かつR〜Rのうちの一つ又は二つが水素原子又はメチル基であるときは、残りのR〜Rはアルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基である。)
アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基等が挙げられるが、ビニル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられるが、シクロヘキシル基が好ましい。
アリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
また、該シクロアルキル基及びアリール基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基を置換基として有していてもよい。この場合のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。また、この場合のアルケニル基、シクロアルキル基又はアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
式(A)で表されるホスフィン化合物としては、ジシクロヘキシルホスフィン、メチルジシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィンなどが挙げられる。中でも、室温以下での重合反応の進行を抑制する効果が大きいので、ジシクロヘキシルホスフィン及びメチルジフェニルホスフィンが好ましく、ジシクロヘキシルホスフィンが特に好ましい。
式(A)で表されるホスフィン化合物の量は、(ルテニウム金属原子:ホスフィン化合物)のモル比で、好ましくは1:0.01〜1:100、より好ましくは1:0.1〜1:10、特に好ましくは1:0.1〜1:5の範囲である。
シクロオレフィンモノマー
本発明で用いるシクロオレフィンモノマーとして、ノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン環を含むモノマーであり、具体的には、ノルボルネン類、テトラシクロドデセン類、ジシクロペンタジエン類などが挙げられる。これらは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基や、カルボキシル基又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。また、ノルボルネン環の二重結合以外に、さらに二重結合を有していてもよい。
これらの中でも、極性基を含まない、すなわち炭素原子と水素原子のみで構成されるノルボルネン系モノマーが好ましい。ノルボルネン系モノマーを構成する環の数は、3〜6であるものが好ましく、3または4であるものがより好ましく、4であるものが特に好ましい。
極性基を含まないノルボルネン系モノマーとしては、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−プロペニル−2−ノルボルネン、などの環の数が2であるノルボルネン類;
5−シクロヘキシル−2−ノルボルネン、5−シクロペンチル−2−ノルボルネン、5−シクロヘキセニル−2−ノルボルネン、5−シクロペンテニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネンなどの環の数が3であるノルボルネン類;
テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロ−9H−フルオレンとも言う。)、テトラシクロ[10.2.1.02,11.04,9]ペンタデカ−4,6,8,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9,9a,10−ヘキサヒドロアントラセンとも言う。)などの環の数が4であるノルボルネン類;
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、などの環の数が4であるテトラシクロドデセン類;
9−シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エンなどの環の数が5であるテトラシクロドデセン類;
ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エンとも言う。)などの環の数が3であるジシクロペンタジエン類;
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ−4,10−ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ−5,12−ジエン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ−4−エンなどの環の数が5以上である、ノルボルネン類、テトラシクロドデセン類及びジシクロペンタジエン類以外のノルボルネン系モノマー;などが挙げられる。
極性基を含むノルボルネン系モノマーとしては、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、2−メチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル、酢酸5−ノルボルネン−2−イル、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、2−アセチル−5−ノルボルネン、7−オキサ−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
なお、上記ノルボルネン系モノマーは、1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
また、本発明においては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン、1,5−シクロオクタジエン、メチルシクロブテン、クロロシクロペンテンなどの置換基を有していても良い単環シクロオレフィンを、上記ノルボルネン系モノマーに添加して重合に供することもできる。これらの単環シクロオレフィンは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。単環シクロオレフィンの添加量は、シクロオレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。単環シクロオレフィンの添加量が多すぎると、塊状重合により得られる成形体の耐熱性が不十分となる場合がある。
なお、2種以上のシクロオレフィンモノマーを併用し、そのブレンド比を変化させることで、得られる成形体のガラス転移温度や溶融温度を自由に制御することも可能である。
カーボンナノチューブ
本発明で用いるカーボンナノチューブは、炭素六角網面が円筒状に閉じた単層構造又はこれらの円筒構造が入れ子状に配置された多層構造をした材料のことであり、単層構造のみから構成されていても多層構造のみから構成されていても良く、単層構造と多層構造が混在していても良い。また部分的にカーボンナノチューブの構造を有している炭素材料も用いることができる。
本発明で用いるカーボンナノチューブは、従来公知のカーボンナノチューブであればよいが、平均外径が2nm以上、50nm以下であることが、より優れた導電性が得られるためより好ましく、BET比表面積が800m/g以上の単層カーボンナノチューブであることが、更に優れた導電性が得られるため、特に好ましい。
なお、BET比表面積が800m/g以上の単層カーボンナノチューブにおいては、平均外径が、通常、2nm以上、15nm以下である。
本発明で得られる成形体の重量を基準にしたカーボンナノチューブの配合割合は、使用するシクロオレフィンモノマーの全量100重量部に対し、好ましくは0.001〜5重量部、特に好ましくは0.005〜2.5重量部である。この範囲であればカーボンナノチューブは塊状重合により得られる成形体のマトリックス中に均一に分散されるため導電性向上の効果がより一層顕著になる。
カーボンナノチューブは従来公知の方法で得ればよいが、本発明において好適に用いられるBET比表面積が800m/g以上の単層カーボンナノチューブは、スーパーグロース法により容易に得ることができる。スーパーグロース法によるカーボンナノチューブ(以下、「SG−CNT」ということがある)の製造方法は、例えば、日本国特許第4621896号公報に記載されている。
重合性組成物
本発明で用いる重合性組成物は、上記式(1)又は(2)で表されるルテニウム触媒、上記式(A)で表されるホスフィン化合物、上記シクロオレフィンモノマー、及び、上記カーボンナノチューブを含有してなり、電界を印可しながら塊状重合する用途に用いられる。
本発明で用いる重合性組成物には、さらに架橋剤を含有させていても良い。架橋剤を含有させることにより、塊状重合後の後架橋が可能となり、成形体の強度をより向上させることができる。
架橋剤としては、例えば、ラジカル発生剤、エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物、アミノ基含有化合物、ルイス酸などが挙げられる。これらは1種単独でも、2種以上を併用しても良い。
これらの中でも、ラジカル発生剤、エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物基含有化合物の使用が好ましく、ラジカル発生剤、エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物の使用がより好ましく、ラジカル発生剤の使用が特に好ましい。
ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物、非極性ラジカル発生剤などが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキサシド類およびペルオキシケタール類;などが挙げられる。中でも、メタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、ジアルキルペルオキシドおよびペルオキシケタール類が好ましい。
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、4,4’−ジアジドカルコン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドジフェニルスルホン、4,4’−ジアジドジフェニルメタン、2,2’−ジアジドスチルベンなどが挙げられる。
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、2,3−ジフェニルブタン、1,4−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2,2,3,3−テトラフェニルブタン、3,3,4,4−テトラフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルプロパン、1,1,2−トリフェニルエタン、トリフェニルメタン、1,1,1−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニルプロパン、1,1,1−トリフェニルブタン、1,1,1−トリフェニルペンタン、1,1,1−トリフェニル−2−プロペン、1,1,1−トリフェニル−4−ペンテン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
架橋剤を用いる場合の使用量は、使用するシクロオレフィンモノマーの全量に対して、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.2〜5重量%である。
また架橋剤としてラジカル発生剤を用いた場合、その架橋反応を促進させるために、架橋助剤を使用することができる。架橋助剤としては、p−キノンジオキシムなどのジオキシム化合物;ラウリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクレートなどのメタクリレート化合物;ジアリルフマレートなどのフマル酸化合物:ジアリルフタレートなどのフタル酸化合物、トリアリルシアヌレートなどのシアヌル酸化合物;マレイミドなどのイミド化合物;などが挙げられる。架橋助剤の使用量は特に制限されないが、架橋剤の全量に対して、好ましくは0〜100重量%、特に好ましくは0〜50重量%である。
本発明で用いる重合性組成物には、各種の添加剤、例えば、重合反応遅延剤、ラジカル架橋遅延剤、強化材、改質剤、酸化防止剤、難燃剤、カーボンナノチューブ以外の充填剤、着色剤、光安定剤などを含有させることができる。
重合反応遅延剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィンなどの前記式(A)で表されるホスフィン化合物以外のホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;が挙げられる。
ラジカル架橋遅延剤としては、アルコキシフェノール類、カテコール類、ベンゾキノン類が挙げられ、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールなどのアルコキシフェノール類が好ましい。
強化材としては、ガラス繊維、ガラス布、紙基材、ガラス不織布などが挙げられる。 改質剤としては、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物などのエラストマーなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は単独で用いてもよいが、二種以上を組合せて用いることが好ましい。
難燃剤としては、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、などが挙げられる。難燃剤は単独で用いてもよいが、二種以上を組合せて用いることが好ましい。
カーボンナノチューブ以外の充填剤としては、ガラス粉末、セラミック粉末、シリカなどが挙げられる。これら充填剤は、二種類以上を併用してもよい。また、充填剤として、シランカップリング剤等で表面処理したものを用いることもできる。充填剤の量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、好ましくは0〜600重量部、より好ましくは0〜300重量部、特に好ましくは0〜100重量部である。
着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。
本発明で用いる重合性組成物は、その調製する方法によって特に制約されない。重合性組成物は、例えば、ルテニウムカルベン錯体を適当な溶媒に溶解若しくは分散させた液(以下、「触媒液」ということがある。)を調製し、別にシクロオレフィンモノマーに、カーボンナノチューブ、必要に応じて用いられる難燃剤などの添加剤を配合した液(以下、「モノマー液」ということがある。)を調製し、該モノマー液に触媒液を添加し、攪拌することによって調製できる。触媒液の添加は塊状重合を行う直前に行うことが好ましい。また、式(A)で表されるホスフィン化合物、必要に応じて添加される連鎖移動剤、架橋剤などは、モノマー液と触媒液を混合する前にモノマー液及び/又は触媒液に添加してもよいし、モノマー液と触媒液とを混合した後に添加してもよい。
塊状重合
本発明の製造方法においては、上記の重合性組成物を、電界を印加しながら塊状重合して成形体を得る。
電界印加の方法は特に限定されないが、例えば、図1に示すように、両端に電気良導体の金属製電極を備えた成形型にカーボンナノチューブを分散させた重合性組成物を入れ、次に両端の金属製電極に電圧を印可し、図2に示すようにカーボンナノチューブを配向させれば良い。
そして、カーボンナノチューブが配向した状態の重合性組成物を加熱して、塊状重合することにより、導電性に優れた成形体を得ることができる。
ここで用いる成形型としては、両端に電気良導体の金属製電極を備えた成形型であれば特に限定されず、例えば、割型構造すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して、電界を印可しながら塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とする成形品の形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。また、金属製電極を備えた板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入することにより、シート状又はフィルム状の成形体を得ることができる。このようにして得られるフィルム状の成形体は、厚さが好ましくは0.1〜15mm、より好ましくは0.5〜10mm、特に好ましくは1〜5mmである。
また、重合性組成物を成形型のキャビティー内に充填する際の充填圧力(注入圧)は、通常0.01〜10MPa、好ましくは0.02〜5MPaであり、型締圧力は通常0.01〜10MPaの範囲内である。
カーボンナノチューブを配向させるために印加する電界は、0.5V/cm以上が好ましく、1V/cm〜10V/cmがより好ましい。
また、印加するための電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vがより好ましい。
そして、印加時間は、5秒〜10分が好ましく、30秒〜5分が特に好ましい。
また、塊状重合を開始させるためには、ルテニウム錯体化合物が、塊状重合触媒として機能する温度まで加熱する必要がある。
塊状重合させるための加熱温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒以上20分以下、好ましくは10秒以上5分以下である。
重合性組成物を所定温度に加熱することにより重合反応が開始する。この重合反応は発熱反応であり、一旦塊状重合反応が開始すると、反応液(重合性組成物)の温度が急激に上昇し、短時間(例えば、10秒間から5分間程度)でピーク温度に到達し、その後塊状重合反応が完結した後に必要に応じて冷却し、成形型から成形体を取り出すことにより、成形体を得ることができる。
なお、重合性組成物が架橋剤を含有している場合には、得られた成形体を後架橋しても良い。後架橋の温度は、前記塊状重合時のピーク温度より、20℃以上高いことが好ましく、通常170〜250℃、好ましくは180〜220℃である。
また、架橋時間は、特に制約されないが、好ましくは1分〜3時間である。
成形体がシート状又はフィルム状である場合には、熱プレスして後架橋しても良い。熱プレスするときの圧力は、通常0.5〜20MPa、好ましくは3〜10MPaである。熱プレスは、真空または減圧雰囲気下で行ってもよい。熱プレスは、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて行なうことができる。
本発明の製造方法で得られる成形体は、導電性に優れているので、種々の用途に好適である。例えば、シリコンウエハ(集積回路チップなどの半導体部品への加工過程にあるウエハ基板を含む)、マスク原板、フォトマスク、磁気ディスク基板、液晶ディスプレイ基板、プリント基板などの精密基板を収納する容器、梱包袋;精密製版、電子製版などの製版を収納する容器、梱包袋;ハードディスク用部品などの精密電子部品を収納する容器、梱包袋;レンズ、プリズムなどの精密光学部品を収納する容器、梱包袋;マイクロチップなどのバイオデバイスを製造過程で一時的に保管したり、製造又は加工前後に保管したりするための容器、梱包袋;シリンジ、カテーテル、透析装置などの医療器具;菌体培養液や化学分析試薬、半導体製造過程で使用される洗浄用薬液及び液晶などの高純度薬液用容器及び配管、チューブ;UVプレート、蛍光プレート、りん光プレート、DNAチップ基板などのバイオ用検査容器;宇宙・航空機器部品;微量分析・精密分析用装置;ハードディスクドライブ用部品や筐体;コピー、プリンター用の除電ロール等の部品;ピンセット、ペン、ドライバー;燃料電池用セパレーター;フィルムコンデンサーの導電層;トナー;導電性塗料などが挙げられる。中でも、精密基板を収納する容器やバイオ用検査容器などに特に好適である。
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下による。
粘度上昇性
ルテニウム触媒を添加した直後の重合性組成物1.5mlについて、E型粘度計を用いて、25℃、回転数10rpmで粘度を測定する。該重合性組成物を20℃に保持した恒温槽内で保管し、4時間後の粘度を同様に測定し、粘度の上昇を以下の基準で評価する。
○:粘度上昇がほとんどない。
×:粘度上昇が激しすぎて測定できない。
この粘度上昇が低いほど、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が緩やかでポットライフが長く、塊状重合時の取り扱い性に優れる。
導電性
塊状重合により得られた成形体の導電率(体積抵抗率の逆数)を測定して、下記の基準で評価する。
○:導電率が1×10−6S/cm以上
×:導電率が1×10−6S/cm未満
実施例1
ガラス製フラスコ内で、式(1−1)で表される(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(2−ピロリドン−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド0.04部を、テトラヒドロフラン0.7部に溶解させて、ルテニウム濃度が0.05モル/リットルの溶液を得る。これに、式(A−1)で表されるジシクロヘキシルホスフィン0.008部(ルテニウム金属原子: ホスフィン化合物のモル比=1:1)を添加し、溶解させて触媒溶液を得る。
Figure 2013249396
Figure 2013249396
ガラス容器に、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン(TCD)100部、スーパーグロース法により得られた単層カーボンナノチューブ(SG−CNT)0.01部、連鎖移動剤としてのメタクリル酸ウンデセニル(商品名「エコノマーML」、新中村化学社製)2.8部を攪拌しながら加え、モノマー液を得る。 このモノマー液に、前記触媒溶液0.33部を加えて、触媒が均一に分散するように攪拌し、溶液状態の重合性組成物を調整する。
このようにして得られる重合性組成物を図1に示すような成形型に注入し、両端の金属製電極間に、直流電源を用いて10Vの電圧を約1分間印加する。この際、印加する電界は1V/cm以上である。このようにして、液中に分散しているカーボンナノチューブを電圧印加方向に配向することができる(図2)。これを加熱し、塊状重合を行い、フィルム状の成形体を得る。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
実施例2
実施例1で使用した単層カーボンナノチューブ(SG−CNT)に代えて、多層カーボンナノチューブ(商品名「VGCF」、昭和電工社製)を用いる以外は実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
実施例3
実施例1で使用したジシクロヘキシルホスフィンに代えて、メチルジフェニルホスフィンを用いる以外は実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
実施例4
実施例1で使用した式(1−1)で表される触媒に代えて、式(1−2)で示される(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)( チオフェニル−1−イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドを用いる以外は実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
Figure 2013249396
比較例1
実施例1で使用したジシクロヘキシルホスフィンを使用しない以外は、実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
比較例2
実施例1で使用したジシクロヘキシルホスフィンに代えて、トリフェニルホスフィンを使用する以外は、実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
比較例3
実施例1での電界を印加する工程を行わない以外は、実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
比較例4
実施例1で使用した式(1−1)で表される触媒に代えて、式(1−3)で示されるベンジリデン(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドを用いる以外は実施例1と同様に行う。粘度上昇性と導電性を表1に示す。
Figure 2013249396
Figure 2013249396
ホスフィン化合物を使用しないために本発明の要件を満たさない場合(比較例1)や、ホスフィン化合物を使用しても式(A)に該当するホスフィン化合物でないために本発明の要件を満たさない場合(比較例2)においては、ルテニウム触媒添加後の粘度上昇が激し過ぎて、導電性の測定に用いることのできる成形体が得られにくい。
また、電界を印加する工程を行わないために本発明の要件を満たさない場合においては、導電性が悪化し易い(比較例3)。
さらに、ルテニウム触媒は使用しても、式(1)及び式(2)のいずれにも該当しないルテニウム触媒を使用した場合にも、粘度上昇が激し過ぎて、導電性の測定に用いることのできる成形体が得られにくい。
1 金属製電極
2 重合性組成物
3a 電圧印加装置(電圧印加前)
3b 電圧印加装置(電圧印加後)

Claims (4)

  1. 下記式(1)又は(2)で表されるルテニウム触媒
    Figure 2013249396
    (式(1)及び(2)において、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若しくは珪素原子を含む炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X及びXは、それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。L及びLはそれぞれ独立して、ヘテロ原子含有カルベン化合物又は中性電子供与性化合物を表す。また、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。さらに、R、R、X、X、L及びLは、任意の組合せで互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい。)、
    下記式(A)で表されるホスフィン化合物
    Figure 2013249396
    (式(A)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、該シクロアルキル基およびアリール基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基で置換されていてもよく、R〜Rのうち、少なくとも一つは水素原子又はメチル基であり、かつR〜Rのうちの一つ又は二つが水素原子又はメチル基であるときは、残りのR〜Rはアルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基である。)、
    シクロオレフィンモノマー、及び、カーボンナノチューブを含有してなる重合性組成物を、電界を印加しながら塊状重合することを特徴とする、成形体の製造方法。
  2. 前記R〜Rの少なくとも一つがシクロアルキル基である請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 前記重合性組成物が、さらに連鎖移動剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体の製造方法。
  4. 前記カーボンナノチューブの比表面積が、800m/g以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN106317732A (zh) * 2015-06-25 2017-01-11 家登精密工业股份有限公司 环烯烃组合物及应用其的环烯烃半导体基板传送盒
CN114276491A (zh) * 2021-12-31 2022-04-05 上海中化科技有限公司 液态钌卡宾催化剂组合物及其在制备环烯烃树脂中的应用

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