JP4288826B2 - ポリノルボルネン系樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルテニウム錯体触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られる無色の、および着色されたポリノルボルネン系樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ノルボルネン系モノマーを開環メタセシス重合することにより、エラストマーや室温で軟質な樹脂、硬質樹脂が得られ、これらのエラストマーや樹脂が各種成形品の製造に用いられている。
【0003】
成形品を得る方法としては、ノルボルネン系モノマーを溶液重合した後、その重合体を射出成形やカレンダー成形などの熱成形により成形品とする方法がある。
また、反応射出成形(RIM)法のように、金型内でノルボルネン系モノマーを塊状(バルク)重合して成形品を得る方法も知られている。後者のRIM法においては、ノルボルネン系モノマーを金型内で塊状重合することにより、液状原料から一挙に耐熱性のよい熱硬化性樹脂となるため、近年、各種の成形品の製造に実用化され、注目を浴びている。その代表的な成形品としては、バンパーやグローブボックスカバーなどの車輛部品、パイプの継手や浄化槽の筐体のような土木建築用部材、浴槽パンや防水パンなどの住宅設備部材などが挙げられる。
【0004】
かかるノルボルネン系モノマーの塊状開環メタセシス重合は、従来、モリブテン、タングステン、タンタルなどの化合物からなるメタセシス触媒(主触媒)とアルキルアルミニウムハライドなどの共触媒からなる触媒系の存在下に行われてきた。このような触媒系を用いて得られるポリノルボルネン系樹脂は、通常、黄色また褐色を呈しているので、着色剤(顔料、染料)を配合して着色する方法が提案されている(特開平2−28214号公報、特開平2−214764号公報、特開平5−112633号公報など参照)。しかしながら、ポリノルボルネン系樹脂自体の地の色の影響を受けて、鮮やかな色調を樹脂に付与することは難しく、意匠性の観点から改善が求めれている。
【0005】
また、プラスチック性の着色シートや印刷シートをポリノルボルネン系樹脂に積層することにより、成形物の表面状態の改質も試みられているが、これらのシートはポリノルボルネン系樹脂と接着性の悪いものが多いため、未だ実用化には至っていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特開昭60−186511号公報には、タンタル系のメタセシス触媒と有機アルミニウム系の共触媒からなる触媒系を用いて、ジシクロペンタンジエンを開環メタセシス重合して得られる熱硬化性架橋重合ポリマーは、肉眼による検査で殆ど無色と良好な透明性を示すと記載されている。
【0007】
また、WO97/29135号明細書には、オスミウムまたはルテニウムに同一または異なる中性電子供与体が配位した触媒を用いて、ジシクロペンタジエンを開環メタセシス重合して得られる重合体は、透明(transparent)または半透明(translucent)であると記載されている。該明細書に具体的に開示される触媒は、配位子としてトリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンのような中性電子供与体が2つ配位したルテニウム−ビニリデン系の化合物である。
【0008】
しかしながら、特開昭60−186511号公報に記載されるタンタル系触媒やWO97/29135号明細書に開示されるオスミウムまたはルテニウム錯体は触媒活性が低いため、塊状開環メタセシス重合に使用するには比較的多量に使用する必要がある。このため得られる重合物は、触媒に由来する色調を呈して十分に無色であるとは言い難い。
【0009】
従来技術の上記のような問題点に鑑み、本発明の第1の目的は、ルテニウム錯体触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られるポリノルボルネン系樹脂であって、触媒に由来する樹脂自体の地の色調を呈さない、無色なポリノルボルネン系樹脂を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、ルテニウム錯体触媒および着色剤の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られる着色されたポリノルボルネン系樹脂であって、任意の色調に鮮やかに着色されたポリノルボルネン系樹脂を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねたところ、特定な構造を有するルテニウム錯体触媒は極めて高活性であり、このものを用いてノルボルネン系モノマーの塊状開環メタセシス重合を行うと、得られる重合物は完全に無色で黄色度が非常に低いこと、含有されるルテニウム金属の濃度が一定値以下でも重合可能であること、そしてまた、重合を行うに際して着色剤を添加すれば、任意の色調に鮮やかに着色できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
かくして、本発明の第1の発明によれば、ルテニウム錯体触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られるポリノルボルネン系樹脂であって、前記ルテニウム錯体触媒として、ルテニウムに少なくとも1つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位してなる錯体を用いたことを特徴とするポリノルボルネン系樹脂が提供される。この樹脂は無色であり、光路長4mmにおける黄色度(YI)が10以下であることを好ましい特徴とする。さらに、この樹脂は含有されるルテニウムの濃度が25ppm以下であることも好ましい特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、ルテニウム錯体触媒および着色剤の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られる着色されたポリノルボルネン系樹脂であって、前記ルテニウム錯体触媒として、ルテニウムに少なくとも1つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位してなる錯体を用いたことを特徴とするポリノルボルネン系樹脂が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、項目に分けて詳細に説明する。
【0014】
(触媒)
本発明において使用される触媒は、ルテニウムに少なくとも1つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位してなる錯体であれば特に限定されないが、通常、下記の一般式1または一般式2で表わされるルテニウムカルベン錯体である。
【0015】
【化1】
【0016】
(式1および式2のR1およびR2は、互いに独立に水素、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、けい素原子を含んでもよいC1〜C20の炭化水素基を示す。X1およびX2は、互いに独立に任意のアニオン性配位子を示す。L1はヘテロ原子含有カルベン化合物を示し、L2はヘテロ原子含有カルベン化合物または任意の中性の電子供与性化合物を示す。R1、R2、X1、X2、L1、L2の2個、3個、4個、5個、6個は互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい)
【0017】
本発明の文脈において、ヘテロ原子とは、周期律表第15族および第16族の原子のことで、具体的には、N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることができる。なかでもN、O、P、S原子などが安定なカルベン化合物を得るためには好ましく、N原子が特に好ましい。
【0018】
また、カルベン化合物とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子を持つ化合物のことである。一般的にカルベンは、反応中に生じる不安定な中間体として存在するが、ヘテロ原子を有すると比較的安定なカルベン化合物として単離することができる。
【0019】
ヘテロ原子含有カルベン化合物の例としては、下記の式3または式4で示される化合物が挙げられる。
【0020】
【化2】
【0021】
(上記式3および式4のR3、R4は、互いに独立に水素、またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、けい素原子を含んでもよいC1〜C20の炭化水素基を示す。)
【0022】
前記式3の具体例としては、1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2−イリデンなどが挙げられる。
【0023】
前記式4の具体例としては、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニル−4−イミダゾリン−2−イリデンなどが挙げられる。
【0024】
また、前記式3および式4で示される化合物のほかに、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどのヘテロ原子含有カルベン化合物も挙げることができる。
【0025】
ヘテロ原子含有カルベン化合物としては、カルベンに隣接するヘテロ原子が嵩高い置換基を有する飽和環状化合物が特に好ましく、その具体例としては、1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5−テトラヒドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデンなどが挙げられる。
【0026】
前記式1および式2のアニオン(陰イオン)性配位子X1、X2は、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。例えば、F、Br、Cl、Iなどのハロゲン原子、水素、アセチルアセトナト基、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などを挙げることができる。好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子である。
【0027】
また、中性の電子供与性化合物は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子、すなわちルイス塩基であればいかなるものでもよい。その具体例としては、酸素、水、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族化合物、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネ−ト類などが挙げられる。好ましくはホスフィン類であり、特にトリアルキルホスフィンやトリアリールホスフィンなどが好ましい。
【0028】
前記式1および式2のR1、R2としては、水素、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C1〜C20アルキル基、アリール基、カルボキシル基、C2〜C20アルケニルオキシ基、C2〜C20アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、C2〜C20アルコキシカルボニル基、C1〜C20アルキルチオ基、アリールチオ基、C1〜C20アルキルスルホニル基、C1〜C20アルキルスルフィニル基などが挙げられる。
【0029】
前記式1で表わされる錯体化合物としては、例えば、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3,4,5−テトラフェニルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が配位したルテニウム錯体化合物;
【0030】
ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム錯体化合物などが挙げられる。
【0031】
前記式2で表わされる錯体化合物としては、例えば、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、(1,3,4,5−テトラフェニルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が配位したルテニウム錯体化合物;
【0032】
ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム錯体化合物などが挙げられる。
【0033】
さらに、前記式1または式2で表わされる錯体化合物を、ジ−μ−クロロビス[(p−シメン)クロロルテニウム]、ジ−μ−クロロビス[(p−シメン)クロロオスミウム]、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ロジウムダイマーなどの複核金属錯体と反応させて得られる、複核ルテニウム−カルベン錯体化合物を用いてもよい。
【0034】
かかる触媒の使用量、すなわちノルボルネン系モノマーに対する触媒の割合は、触媒中の金属ルテニウム/ノルボルネン系モノマーのモル比として、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000である。
【0035】
触媒は必要に応じて、少量の不活性溶剤に溶解して使用することができる。かかる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テルなどの溶媒を使用することができる。これらの中では、工業的に汎用な芳香族炭化水素や脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素が好ましい。
【0036】
(ノルボルネン系モノマー)
本発明において、前記の触媒の存在下に塊状開環メタセシス重合されるモノマーは、ノルボルネン環構造を有するノルボルネン系モノマーである。かかるノルボルネン系モノマーとしては、置換および未置換の二環もしくは三環以上の多環ノルボルネンが用いられる。
【0037】
その具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環ノルボルネン類;
【0038】
ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエンなどの五環ノルボルネン類、ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボルネン類;ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物などが挙げられる。
【0039】
上記ノルボルネン系モノマーにシクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有するそれらの誘導体を共重合することもできる。
【0040】
前記ノルボルネン系モノマーは単独でも二種以上を使用してもよいが、二種以上の使用が好ましい。二種以上使用する場合には、熱可塑性樹脂となる1つの二重結合を有するモノマーと、熱硬化性樹脂となる複数の二重結合を有するモノマーを適宜組合せると、種々の物性を有する樹脂を入手することができる。また、モノマーを単独で使用する場合と比較して、二種以上併用すると凝固点降下により、凝固点温度が高いモノマーでも液状として取扱えるという利点がある。
【0041】
(塊状開環メタセシス重合)
本発明のポリノルボルネン系樹脂を得る重合方法は、塊状開環メタセシス重合である。特にレジントランスファーモールディング(RTM)法や反応射出成形(RIM)法により、ノルボルネン系モノマーを金型内において塊状で重合する方法が有用である。金型は所定形状の成形物を得るために使用する。これらの方法は、実質的に塊状であればよく、少量の不活性溶剤が存在していてもよい。かかる塊状重合においては、従来からRTM機やRIM機として公知の成形機を、モノマーや触媒を含有する反応液または触媒液を混合するために使用することができる。
【0042】
RTM機は、一般的にモノマー配合液タンク、触媒配合液タンク、計量ポンプ、ミキサーなどからなる。計量ポンプにより、モノマー配合液と触媒配合液を1000:1から10:1の容量比でミキサーに送り込み、次いで所定温度に加熱した成形金型内に注入し、そこで即座に塊状重合させて成形品を得ることができる。
RTM機を用いた好ましい成形法は、ノルボルネン系モノマーを含有するモノマー配合液と、ルテニウムに少なくとも1つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位してなる錯体触媒を、少量の溶媒に溶解させた触媒配合液を用意し、これらを混合して成形する方法である。
【0043】
RIM機は、二種類以上の反応原液をミキシングヘッドに送り込み衝突エネルギーによって混合させ、次いで高温の成形金型中に注入し、そこで即座に塊状重合させて成形品を得る。RIM機を用いた好ましい成形法は、ノルボルネン系モノマーを二つの部分に分け、三液目にルテニウムに少なくとも1つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位してなる錯体触媒を少量の溶媒に溶解させた液を使用し、これらの三液を衝突混合によって混合して成形する方法である。
【0044】
本発明の成形方法では、通常、割型構造すなわちコア型とキャビティー型を有する成形金型を用い、それらの空隙部(キャビティー)に反応液を注入して塊状重合を行なう。コア型とキャビティー型は、目的とする成形品の形状にあった空隙部を形成するように作成される。金型の形状、材質、大きさには、特に制限はない。低粘度の反応液を用い、比較的低温低圧で成形できるため、金属製の金型だけではなく、各種合成樹脂、低融点合金など種々の材料で作成されたものが使用できる。
【0045】
前記のキャビティー内へ供給する前の反応原液の温度は、好ましくは20〜80℃である。反応液の粘度は、例えば30℃において、通常、2〜1000cps、好ましくは、5〜300cpsである。反応原液をキャビティー内に充填する際の充填圧力(射出圧)は、通常0.1〜100kgf/cm2、好ましくは0.2〜50kgf/cm2である。充填圧力が低すぎると、キャビティー内周面に形成された転写面の転写が良好に行われない傾向にあり、充填圧が高すぎると、金型の剛性を高くしなければならず経済的ではない。
【0046】
金型温度は、通常、室温以上、好ましくは40〜200℃、特に好ましくは50〜130℃である。型締圧力は通常0.1〜100kg/cm2 の範囲内である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常、10秒〜20分、好ましくは5分以内である。
【0047】
前記したRTM機またはRIM機などで混合した反応液を、金型の空隙部に注入すると、即座に塊状重合反応を開始し、硬化する。重合反応は発熱反応であり、硬化時間(キュアー時間)が長くなるにつれて、金型内の成形品の温度は徐々に低下していく。
【0048】
塊状重合させて得た成形品は、通常、コア型に付着させた状態で金型を開いて成形体を脱型することができる。成形品のコア型への付着は、成形条件を制御することによつて行われる。金型温度を高くする程、あるいはキュアー時間を長くする程、コア型に付着する可能性が高くなる。キュアー時間が短い場合には、金型を開けると、成形品はキャビティー型に付着して残る。キュアー時間が長くなると、成形品は、冷却されて収縮するため、コア型に付着するようになる。しかし、コア型に付着させても、キュアー時間があまり長すぎると成形品の冷却による収縮がかなりの程度まで進むため、過度に成形体が冷却しない状態で、エアーエジェクターまたは金型に設けた脱型装置により脱型すればよい。
【0049】
(無色のポリノルボルネン系樹脂)
本発明のポリノルボルネン系樹脂は、実質的に無色透明であることを特徴とする。一般的に無色または白色を呈するプラスチックの色の評価方法は、JISのK7103に黄色度(YI)として規定されているが、本発明のポリノルボルネン系樹脂は、光路長4mmにおける黄色度(YI)が10以下であり、より好ましくは5以下である。
【0050】
また、本発明のポリノルボルネン系樹脂に含有されるルテニウム金属の濃度は、通常25ppm以下である。好ましくは20ppm以下、より好ましくは15ppm以下である。
【0051】
ポリノルボルネン系樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、エラストマー、高分子改質剤、充填剤、難燃剤、架橋剤、摺動化剤、着臭剤、軽量化のためのフィラー類、発泡剤、表面平滑化のためのウイスカーなど種々の添加剤を配合することによって、成形体の特性を改質することができる。通常、これらの添加剤は、反応射出成形において予めノルボルネン系モノマーに溶解または分散させて、少なくとも一つの反応原液に混合しておき、その後金型内で重合させる。
【0052】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系、リン系、アミン系などの各種のプラスチック・ゴム用酸化防止剤がある。これらの酸化防止剤は単独で用いてもよいが、併用することが好ましい。酸化防止剤の配合割合は、通常、ノルボルネン系モノマーに対して0.5重量部以上、好ましくは1〜3重量部である。また酸化防止剤はモノマーと共重合可能なものでもよく、その具体例として5−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ベンジル−2−ノルボルネンなどのごときノルボルネニルフェノール系化合物などが例示される(特開昭57−83522号公報参照)。
【0053】
充填剤としては、ガラス粉末、タルク、炭酸カルシウム、雲母、水酸化アルミニウムなどの無機質充填剤が挙げられる。かかる充填剤はシランカップリング剤などで表面処理したものが好ましい。架橋剤としてイオウまたは過酸化物を用いると耐熱性が向上する。
【0054】
(着色されたポリノルボルネン系樹脂)
本発明のノルボルネン系ポリマーは無色透明なので、塊状重合する際に着色剤を添加するだけで任意の色調に着色することができる。その結果、着色されたポリノルボルネン系樹脂を得ることができる。着色剤は特に限定されないが、染料、顔料などが好ましく用いられる。染料は、ポリノルボルネン系樹脂に鮮やかな染料色を付与できるので、特に好ましい。一般に顔料が、溶剤に溶解せず微粒子状に基材中に分散し、基材に対する結合力が弱いのに対し、染料は各種の溶剤に可溶であり、基材に対しイオン結合、水素結合、ファンデルワールス力、共有結合等の結合力で染着するよう工夫されている。
【0055】
染料の種類は多様であり、適宜選択して使用すればよい。例えば、染料便覧(有機合成化学協会編、昭和49年版、丸善(株)発行、発行日昭和49.7.20)では、その構造から、ニトロ染料、ニトロソ染料、アゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、アミノケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、フタロシアニン染料等に分類している。また、染色法から、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、建染染料、硫化染料、アゾイック染料、反応染料、カチオン染料、分散染料、酸化染料、油溶染料等に分類している。
【0056】
直接染料は、大部分がアゾ染料だが、フタロシアニン染料、オキサジン染料のものもあり、また、酸性染料では、アゾ染料、アントラキノン染料、トリフェニルメタン染料などがある。このように多様な染料を分類するために、染料便覧ではColour Index番号、その他で染料を規定している。
【0057】
この中で、油溶染料はsolvent dyesと称されるもので、本発明の着色してあるポリノルボルネン系樹脂の着色剤として好ましく用いられる。アルコールのような極性溶剤によく溶解するもの、ガソリンなどの非極性溶剤によく溶解するものなど、その溶解性の範囲は広く、主に溶解現象により着色を行う染料であり、低分子量のものが一般的である。黄色、赤系の色はアゾ染料が多く、青、緑はアントラキノン染料、フタロシアニン染料が多い。
【0058】
かかる染料の具体例としては、油溶染料でアゾ系のソルベントイエロー2、同じくアントラキノン系のソルベントブルー11、同じくフタロシアニン系のソルベントブルー55、同じくトリアリルメタン系のソルベントブルー2、分散染料でアントラキノン系のディスパースブルー3、同じくアゾ系のディスパースレッド13、酸性染料でアントラキノン系のアシドブルー45、塩基性染料でチアジン系のベーシックイエロー11、同じくベーシックブルー9、建染染料でアントラキノン系のバットイエロー4、同じくバットブルー20等が挙げられる。どのようなタイプの染料でも、ポリノルボルネン系モノマーに可溶なものが好ましい。なかでも油溶染料、分散染料、その中でも特に炭化水素系溶剤に可溶の油溶染料は、ノルボルネン系モノマーに溶解しやすいので、特に好ましく推奨される。
【0059】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、黄鉛、酸化鉄黄色、二酸化チタン、酸化亜鉛、四酸化三鉛、鉛丹、酸化クロム、紺青、チタンブラック等があげられる。
【0060】
かかる染料、顔料などの着色剤は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。2種以上の着色剤を併用することにより、多様な色彩を作り出せることは、当業者にとっては自明である。
【0061】
添加する着色剤は、そのまま反応原液に添加するか、またはノルボルネン系モノマーにできるだけ高濃度に溶解したマスターバッチを作成し、反応液に加える。マスターバッチの濃度は5%以上、好ましくは10%以上にすると、添加する上で取扱いやすい。着色剤の添加量は、各反応液を合計したモノマー量100部に対して0.002〜3.0部、好ましくは0.01〜2.0部である。添加量は、必要とする着色の程度に応じて決定する。添加量が少ないと着色の効果が低く、添加量が多すぎると経済的でない。
【0062】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1〜3 ヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒を使用した小スケール塊状重合
30mlの広口ガラス瓶に、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Org.Lett.1999年、1巻、953頁の記載に基づいて合成したもの)を、表1に示す量だけ加え、さらに攪拌子を入れた。このガラス瓶の広口に密栓できるゴム栓とポリエチレン製T字管を用意し、ゴム栓の中央付近に横向きのT字になるようにT字管を貫通させた後、ガラス瓶に装着した。T字管の横方向の口から窒素気流を流し、T字管上方向の口を指で押さえたり、離したりする動作を40回ほど繰返して、ガラス瓶内を窒素置換した。その後、窒素気流をゆるやかに流し続けた。
【0064】
T字管を通して、注射器でトルエン0.05mlを加えて、マグネティックスターラーで攪拌してルテニウム触媒を溶解させた後、ジシクロペンタジエン(純度98.5%)9.95mlを加えて、さらに10秒間攪拌した。その後は、数分間で重合反応熱により温度が急激に上昇して重合反応が完結した(このとき、モノマー蒸気のミストが発生した)。なお、実験は、40℃に設定した恒温槽中で行ない、モノマーが入った容器、反応用ガラス瓶および注射器も、40℃に設定した恒温槽中に置いて恒温になったものを使用した。
【0065】
重合終了後、ポリマーの入ったガラス瓶を室温に冷やし、ポリマーを取り出し、示差走査熱量計によりそのガラス転移温度(Tg)を測定した。また、Tg測定と同様にガラス瓶から取り出したポリマーについて、熱天秤により室温から400℃まで加熱して求めた重量の残分率を求めた。これらの測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例4 ヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒を使用した小スケール塊状重合
ルテニウム触媒としてベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Tetrahedron Lett.1999年、40巻、2247頁の記載に基づいて合成したもの)を、1.7mg(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度20ppm)だけ添加する以外は、実施例1〜3と同様に操作した。測定結果は、Tgが140℃、加熱残分が97.0%となった。
【0068】
比較例1〜2 トリシクロヘキシルホスフィンが配位したルテニウム触媒を使用した小スケール塊状重合
ルテニウム触媒としてベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Strem Chemical社製)を表2に示す量だけ添加する以外は、実施例1〜3と同様に操作した。測定結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
比較例3 トリシクロペンチルホスフィンが配位したルテニウム触媒を使用した小スケール塊状重合
ルテニウム触媒としてベンジリデンビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Strem Chemical社製)を3.7mg(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度50ppm)だけ添加する以外は、実施例1〜3と同様に操作した。測定結果は、Tgが85℃、加熱残分が89.3%となった。
【0071】
以上の実施例1〜4および比較例1〜3より、本発明に用いられるヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒は、メタセシス開環重合に対する活性が極めて高く、ルテニウム濃度25ppm以下でも充分に重合反応が進行することがわかる。
【0072】
実施例5 ヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒を使用した平板の成形および成形品の黄色度測定
100mlのポリエチレン製の瓶にベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドを5.1mg(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度10ppm)と攪拌子を入れ、トルエン0.3mlを加え、マグネチックスターラーで攪拌してルテニウム触媒を溶解させた。これに、ジシクロペンタジエン(10%のシクロペンタジエン3量体を含む)を60ml加え攪拌し、金型内に圧送した。以上の操作は、室温、窒素雰囲気下で行った。
【0073】
ここで、金型は、4×80×80の平板成形用で、ヒーター付きクロームメッキ鉄板にコの字型スペーサーをはさんだものである。金型温度は、製品面側は80℃、裏面側は60℃にセットしてあった。
配合液を金型内に圧送してから3分後に脱型し、平板成形品を取り出した。この平板のTg、加熱残分を実施例1〜3と同様に測定した。また、黄色度をJIS K 7103にしたがって透過法により測定した。測定結果は表3に示す。
【0074】
実施例6 ヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒を使用した平板の成形および成形品の黄色度測定
ルテニウム触媒としてベンジリデン(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドを10mg(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度20ppm)使用する以外は、実施例5と同様に操作した。測定結果は表3に示す。
【0075】
比較例4 トリシクロヘキシルホスフィンが配位したルテニウム触媒を使用した平板の成形および成形品の黄色度測定
ルテニウム触媒としてベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Strem Chemical社製)を25mg(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度50ppm)使用する以外は、実施例5と同様に操作した。測定結果は表3に示す。
【0076】
比較例5 トリシクロヘキシルホスフィンが配位したルテニウム触媒を使用した平板の成形および成形品の黄色度測定
以下の成形法は、WO97/20865号明細書に開示された実験方法に基づくものである。
400mlのPETカップに、ジシクロペンタジエン(10%のシクロペンタジエン3量体を含む)を250mlとトリフェニルホスフィン0.13gを加え攪拌して溶解させた。これに、ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(Strem Chemical社製)を0.21g(塊状重合物全体に対してルテニウム濃度100ppm)を加えて、攪拌・溶解させ、金型に注いだ。以上の操作は、空気中・室温で行った。ここで、金型は、4×200×200の平板成形用で、クロームメッキ鉄板にコの字型スペーサーをはさんだものである。金型温度は、室温であった。
【0077】
この金型をオーブンの中に入れてポストキュアーを行なった。オーブン温度は、40℃で30分保った後、90℃で30分、160℃で30分と昇温していった。その後、平板成形品を取り出し、実施例5と同様Tg、加熱残分、黄色度を測定した。測定結果は表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3より、ヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテニウム触媒で重合すると、黄色度の低い成形品が得られることが分かる(実施例5〜6)。一方、比較例にある触媒を使用した場合は、特に比較例5は黄色度が大きくなる。比較例4のように触媒量を減量しても、実施例5〜6に比べて黄色度が大きい上に、Tgが低下している。
【0080】
実施例7 黒色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、PD−143Nブラック(大日精化工業製)を1mg加える以外は、実施例2と同様に操作した。薄い黒色の透明の重合物が得られた。
【0081】
比較例6 黒色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、PD−143Nブラック(大日精化工業製)を1mg加える以外は、比較例1と同様に操作した。薄い黒色に黄色みが加わった透明の重合物が得られた。
【0082】
実施例8 白色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、PD−235Nホワイト(大日精化工業製)を20mg加える以外は、実施例2と同様に操作した。目的とした白色の重合物が得られた。
【0083】
比較例7 白色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、PD−235Nホワイト(大日精化工業製)を20mg加える以外は、比較例1と同様に操作した。目的とした白色にはならず、薄い黄色の重合物が得られた。
【0084】
実施例9 青色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、KET Blue 111(大日本インキ化学工業製)を1mg加える以外は、実施例2と同様に操作した。目的とした青色透明の重合物が得られた。
【0085】
比較例8 青色の着色剤を添加した配合液による塊状重合
触媒を加えた後に、KET Blue 111(大日本インキ化学工業製)を1mg加える以外は、比較例1と同様に操作した。目的とした青色にはならず、緑色透明の重合物が得られた。
【0086】
以上のように、比較例においては、重合物は着色剤本来の色にはならず、触媒の色である黄色が混じった色になる。
【0087】
【発明の効果】
本発明のポリノルボルネン系樹脂は無色であるので、光学材料などの分野において極めて有用である。また、本発明の樹脂は、含有されるルテニウムの濃度が25ppm以下であり、低い金属含有量が要求される各種の材料分野においても有用である。さらに、本発明の着色された樹脂は、任意の色調に鮮やかに着色できるので、意匠性に優れるという効果を奏する。
Claims (4)
- 下記式1または2で表されるルテニウム錯体触媒の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られるポリノルボルネン系樹脂。
式2中、R 1 、R 2 、X 1 およびX 2 は前記と同様であり、L 1 はヘテロ原子含有カルベン化合物を示し、L 2 はヘテロ原子含有カルベン化合物または任意の中性の電子供与性化合物を示す。R 1 、R 2 、X 1 、X 2 、L 1 およびL 2 のうちの2個、3個、4個、5個または6個は、互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい:
- 光路長4mmにおける黄色度(YI)が10以下であることを特徴とする請求項1記載のポリノルボルネン系樹脂。
- 含有されるルテニウムの濃度が25ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のポリノルボルネン系樹脂。
- 下記式1または2で表されるルテニウム錯体触媒および着色剤の存在下に、ノルボルネン系モノマーを塊状開環メタセシス重合して得られる着色されたポリノルボルネン系樹脂。
式2中、R 1 、R 2 、X 1 およびX 2 は前記と同様であり、L 1 はヘテロ原子含有カルベン化合物を示し、L 2 はヘテロ原子含有カルベン化合物または任意の中性の電子供与性化合物を示す。R 1 、R 2 、X 1 、X 2 、L 1 およびL 2 のうちの2個、3個、4個、5個または6個は、互いに結合して多座キレート化配位子を形成してもよい:
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