JP2003340848A - ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法およびノルボルネン系樹脂成形体 - Google Patents

ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法およびノルボルネン系樹脂成形体

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JP2003340848A
JP2003340848A JP2002154494A JP2002154494A JP2003340848A JP 2003340848 A JP2003340848 A JP 2003340848A JP 2002154494 A JP2002154494 A JP 2002154494A JP 2002154494 A JP2002154494 A JP 2002154494A JP 2003340848 A JP2003340848 A JP 2003340848A
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molded object
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Naoya Kishi
直哉 岸
Naoki Nishioka
直樹 西岡
Shigeru Yagishita
茂 八木下
Atsushi Nishibe
淳 西部
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Zeon Corp
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Nippon Zeon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】アンダーカット部を有するノルボルネン系樹脂
成形体または大型のノルボルネン系樹脂成形体を簡易な
成形型により製造する方法であって、硬化不良の問題が
なく、かつ寸法精度と転写性に優れるノルボルネン系樹
脂成形体が得られる、ノルボルネン系樹脂成形体の製造
方法、及びこの製造方法により得られるノルボルネン系
樹脂成形体を提供する。 【解決手段】ノルボルネン系モノマーおよびメタセシス
重合触媒を含む反応液を成形型内に充填し、重合固化さ
せるノルボルネン系樹脂成形体の製造方法であって、前
記メタセシス重合触媒として金属カルベン錯体を用い、
前記成形型として、そのキャビティ内に、砂を有機粘結
剤で固めてなる部分を有するものを用いることを特徴と
するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法、及びこの製
造方法により得られるノルボルネン系樹脂成形体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノルボルネン系モ
ノマーおよびメタセシス重合触媒を含む反応液を成形型
内に充填し、重合固化させるノルボルネン系樹脂成形体
の製造方法の改良、およびこの製造方法により得られる
ノルボルネン系樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】ジシクロペンタジエンなどのノルボルネ
ン系モノマー、およびメタセシス重合触媒を含む反応液
を成形型内に充填し、重合固化させて、所望の形状の成
形体を得るノルボルネン系樹脂成形体の製造方法が知ら
れている。従来、このようなメタセシス重合触媒として
は、モリブデンやタングステン等の6族の金属元素のハ
ロゲン化物、オキシハロゲン化物、酸化物及び有機金属
酸塩が一般的である。
【0003】ところで、この方法により、成形型を一方
向に開いただけでは取り出せないような形状(「アンダ
ーカット部」という。)を有するノルボルネン系樹脂成
形体を簡易な成形型により製造する方法としては、成形
型として砂型を使用するか、あるいはアンダーカット部
の形状に沿った外形の型(「中子」という。)を成形型
内の所定の位置にセットして使用し、成形した後、砂型
または中子を破壊除去して成形体を取り出す方法が採用
されている。また大型で少数の成形体を簡易な成形型に
より生産する方法として、成形型として砂型を使用する
方法が採用されている。
【0004】成形型として砂型を用いる技術としては、
特開平5−116167号公報、ユリア樹脂を主成分と
する水溶性の中子を用いる技術としては、特開平9−3
00392号公報、発泡樹脂製の中子を用いる技術とし
ては、特開平11−105077号公報などが知られて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記製
造方法において、メタセシス重合触媒として上記の従来
のものを用い、砂型、砂でできた中子(以下「砂中子」
ともいう。)または水溶性の中子を用いる場合には、硬
化不良を引き起こし、得られるノルボルネン系樹脂成形
体の表面がべたついたり、残留モノマーの臭気が激しい
場合があった。また、発泡樹脂製の中子を用いる場合に
は、発泡性樹脂が熱により収縮するために、寸法精度や
転写性が不十分となる問題があった。
【0006】本発明は、かかる実情に鑑みてなされたも
のであって、アンダーカット部を有するノルボルネン系
樹脂成形体または大型のノルボルネン系樹脂成形体を簡
易な成形型により製造する方法であって、硬化不良の問
題がなく、かつ寸法精度と転写性に優れるノルボルネン
系樹脂成形体が得られるノルボルネン系樹脂成形体の製
造方法、およびこの製造方法により得られるノルボルネ
ン系樹脂成形体を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、メタセシ
ス重合触媒及び成形型の材質について鋭意検討した。そ
の結果、メタセシス重合触媒として金属カルベン錯体を
用い、成形型としてキャビティを構成する面に砂を有機
粘結剤で固めた部分を有するものを用いると、水分や砂
型の固化に用いる有機粘結剤などによる影響を受けず、
表面のべたつきや残留モノマーの臭気の問題がなく、寸
法精度と転写性に優れたアンダーカット構造を有するノ
ルボルネン系樹脂成形体を効率よく製造できることを見
出し、本発明を完成するに到った。
【0008】かくして本発明の第1によれば、ノルボル
ネン系モノマーおよびメタセシス重合触媒を含む反応液
を成形型内に充填し、重合固化させるノルボルネン系樹
脂成形体の製造方法であって、前記メタセシス重合触媒
として金属カルベン錯体を用い、前記成形型として、そ
のキャビティ内に、砂を有機粘結剤で固めてなる部分を
有するものを用いることを特徴とするノルボルネン系樹
脂成形体の製造方法が提供される。
【0009】本発明の第2によれば、本発明の製造方法
により得られるノルボルネン系樹脂成形体が提供され
る。本発明のノルボルネン系樹脂成形体は、その一部に
アンダーカット構造を有するものであるのが好ましい。
本発明のノルボルネン系樹脂成形体は、具体的には、流
体機器用ケーシングまたはバタフライ弁の弁体として好
適である。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、ノルボルネン系モノマーおよびメタセシス
重合触媒を含む反応液を成形型内に充填し、重合固化さ
せてノルボルネン系樹脂成形体(以下、単に「成形体」
ともいう。)を製造する。
【0011】(1)ノルボルネン系モノマー 本発明に用いるノルボルネン系モノマーは、ノルボルネ
ン環構造を有する二環若しくは三環以上の多環炭化水素
化合物(以下、「ノルボルネン類」ともいう。)であ
り、置換基を有するものであってもよい。
【0012】ノルボルネン系モノマーの具体例として
は、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボル
ネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩
素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、クロロメ
チルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フ
ェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノ
ルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジ
ルノルボルネン、ノルボルネンのナヂック酸無水物、ノ
ルボルネンのナヂック酸イミドなどの二環ノルボルネン
類;ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエンの二量
体)、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、
アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの
三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナフタレ
ン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、
アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体などの
四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエン(シクロ
ペンタジエンの三量体)などの五環ノルボルネン類、ヘ
キサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボルネン類;ジ
ノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖また
はエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル
またはアリール置換体などのノルボルネン環を含む化合
物などが挙げられる。
【0013】前記ノルボルネン系モノマーは単独で用い
ても、二種以上を混合して用いてもよい。ノルボルネン
系モノマーを単独で使用する場合と比較して、二種以上
を併用すると凝固点降下により、凝固点温度が高いモノ
マーでも液状として取扱えるという塊状重合時の利点が
ある。
【0014】これらのノルボルネン系モノマーの中で
も、他の溶媒を使用することなくモノマー液を得ること
ができることから、それ自体が常温付近(20〜30
℃)で液状のものの使用が好ましい。また、常温で液状
のノルボルネン系モノマーの中でも、反応性、物性、価
格および入手の容易さの点から、ジシクロペンタジエン
を主たる成分として用いることがより好ましく、80重
量%以上がジシクロペンタジエンであることがさらに好
ましい。
【0015】ジシクロペンタジエンは純度99重量%以
上のものであってもよく、シクロペンタジエンの三量体
を例えば2〜20重量%の範囲で含むものであってもよ
い。後者を使用する場合には、機械的強度が優れるノル
ボルネン系樹脂を得ることができる。
【0016】さらに、本発明においては、上記ノルボル
ネン系モノマーに加えて、開環重合可能なその他の重合
性モノマーの一種または二種以上を使用することもでき
る。その他の重合性モノマーとしては、例えば、シクロ
ブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデ
センなどの単環シクロオレフィンおよび置換基を有する
それらの誘導体が挙げられる。
【0017】(2)金属カルベン錯体 本発明の製造方法においては、メタセシス重合触媒とし
て金属カルベン錯体を用いる。金属カルベン錯体は塊状
重合時の触媒活性が優れるため、水分や有機樹脂が存在
する場合であっても硬化不良を引き起こすことがなく、
得られる成形体の表面のべたつきや残留モノマーの臭気
の問題がなくなる。
【0018】金属カルベン錯体は、中心金属原子にカル
ベン化合物が結合した化合物であり、金属原子(M)に
カルベン炭素が二重結合した構造(M=C、以下、「反
応中心のカルベン構造」ともいう。)を有するものであ
る。
【0019】金属カルベン錯体としては、周期律表第5
族、6族および8族の金属原子を中心金属とするものが
好ましい。これらの中でも、第8族のルテニウムやオス
ミウムのカルベン錯体が好ましく、ルテニウムカルベン
錯体がより好ましく、反応中心のカルベン構造以外に別
のヘテロ原子含有カルベン化合物がさらにルテニウムに
結合したルテニウムヘテロ原子含有カルベン錯体が特に
好ましい。
【0020】ルテニウムヘテロ原子含有カルベン錯体の
具体例としては、下記の式(1)または(2)で表され
るルテニウム化合物が挙げられる。
【0021】
【化1】
【0022】(式中、RおよびRは、互いに独立し
て水素原子またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、
硫黄原子、リン原子若しくはけい素原子を含んでもよい
〜C20の炭化水素基を表す。XおよびXは、
互いに独立して任意のアニオン性配位子を表す。L
ヘテロ原子含有カルベン化合物を表し、Lはヘテロ原
子含有カルベン化合物または任意の中性の電子供与性化
合物を表す。また、R、R、X、X、Lおよ
びLの2個以上は、互いに結合して多座キレート化配
位子を形成してもよい。)
【0023】ここでヘテロ原子とは、長周期型周期律表
の第15族および16族の原子のことで、具体的には、
N、O、P、S、As、Se原子などを挙げることがで
きる。中でもN、O、P、S原子が安定なカルベン化合
物を得るためには好ましく、N原子が特に好ましい。
【0024】カルベン化合物とは、メチレン遊離基を有
する化合物の総称であり、(>C:、カルベン炭素とも
いう)で表される電荷のない2価の炭素原子を持つ化合
物のことである。一般的に、カルベン化合物は化学反応
中に生じる不安定な中間体として存在するが、ヘテロ原
子を有すると比較的安定なカルベン化合物として単離す
ることができる。
【0025】前記Lの好ましいヘテロ原子含有カルベ
ン化合物としては、下記式(3)で表される1,3−二
置換イミダゾリジン−2−イリデン類および式(4)で
表される1,3−二置換−4−イミダゾリン−2−イリ
デン類が挙げられる。
【0026】
【化2】
【0027】(式中、R〜Rは、互いに独立して水
素原子またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄
原子、リン原子若しくはけい素原子を含んでもよい炭素
数1〜20の炭化水素基を表す。)
【0028】前記R〜R、および上記ヘテロ原子含
有カルベン化合物のカルベン炭素に隣接するヘテロ原子
に結合する置換基としては嵩高い基が好ましい。嵩高い
基の具体例としては、イソプロピル基やターシャリーブ
チル基などの分岐構造を有するアルキル基;シクロヘキ
シル基やアダマンチル基などの脂環基;フェニル基、メ
チルフェニル基、メチルナフチル基、2,6−ジイソプ
ロピルフェニル基、メシチル基などの置換若しくは非置
換の芳香環基などが挙げられる。
【0029】また、前記式(3)および(4)で表され
る化合物以外の好ましいヘテロ原子含有カルベン化合物
として、1,3,4,5−四置換イミダゾリジン−2−
イリデン類、1,3,4,5−四置換−4−イミダゾリ
ン−2−イリデン類、1,3,4−三置換−2,3,
4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾー
ル−5−イリデン類、3−置換−2,3,4,5−テト
ラヒドロチアゾール−2−イリデン類、1,3−二置換
ヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン−N,N,
N’,N’−四置換ホルムアミジニリデン類、3−置換
−2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデン類などが
挙げられる。
【0030】前記XおよびXは、中心金属から引き
離されたときに負の電荷を持つ配位子である。例えば、
F、Br、Cl、Iなどのハロゲン原子;水素原子;ア
ルキル基、アルケニル基、置換アリル基、置換シクロペ
ンタジエニル基などの鎖状、分岐状または環状で置換ま
たは非置換の炭化水素基;アリール基などの芳香族炭化
水素基;アセチルアセトナト基、ジケトネート基、アル
コキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基
やカルボキシル基などの酸素原子を含む炭化水素基;ア
ルキルチオ基、アルケニルチオ基やアリールチオ基など
の硫黄原子を含む炭化水素基;アルキルスルフォネート
基、アリールスルフォネート基、アルキルスルホニル
基、アルキルスルフィニル基などの酸素原子と硫黄原子
とを含む炭化水素基などを挙げることができる。これら
の中でも、ハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好
ましい。
【0031】前記Lが中性の電子供与性の化合物であ
る場合、Lは中心金属から引き離されたときに中性の
電荷を持つ配位子であり、中性の電子供与性化合物、す
なわちルイス塩基であればいかなるものでもよい。その
具体例としては、酸素;水;芳香族化合物、環状ジオレ
フィン類やオレフィン類などの置換または非置換の不飽
和炭化水素化合物;エ−テル類、カルボニル類やエステ
ル類などの酸素原子を含む炭化水素化合物;アミド類、
アミン類やピリジン類などの窒素原子を含む炭化水素
類;ニトリル類やイソシアニド類などの酸素原子と窒素
原子とを含む炭化水素類;ホスフィン類、ホスフィナイ
ト類やホスファイト類などの酸素原子とリン原子とを含
む炭化水素類;スルホキシド類やチオエーテル類などの
酸素原子と硫黄原子とを含む炭化水素類;チオシアネ−
ト類などの窒素原子と硫黄原子とを含む化合物;スチビ
ン類などのアンチモン原子を含む化合物;などのルイス
塩基が挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類が好
ましく、トリアルキルホスフィンやトリアリールホスフ
ィンなどの三置換のホスフィン類がより好ましい。
【0032】前記RおよびRは、互いに独立して水
素原子またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄
原子、リン原子若しくはけい素原子を含んでもよいC
〜C 20の炭化水素基を表す。炭化水素基としては、例
えば、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アリ
ール基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アルキ
ニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニ
ル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスル
ホニル基またはアルキルスルフィニル基などが挙げられ
る。
【0033】前記式(1)で表される化合物としては、
例えば、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリ
ジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィ
ン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミ
ダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン
−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ル
テニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチ
ル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)
(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリ
ド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)
−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキ
シルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン
(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダ
ゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィ
ン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロ
ヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−
2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−ト
リアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、
(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2
−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシ
ルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン
(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)
ピリジンルテニウムジクロリドなどのヘテロ原子含有カ
ルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合したルテ
ニウム錯体化合物;
【0034】ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキ
シルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロ
リド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4
−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド
などの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合した
ルテニウム錯体化合物などが挙げられる。
【0035】また、前記式(2)で表される化合物とし
ては、例えば、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−
2−イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘ
キシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t−ブチ
ルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−4−イミダ
ゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィ
ン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘ
キシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)フェニルビ
ニリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。これ
らの金属カルベン錯体は一種単独で、あるいは二種以上
を組み合わせて用いることができる。
【0036】金属カルベン錯体の使用量、すなわちノル
ボルネン系モノマーに対するメタセシス重合触媒の割合
は、触媒中の金属原子/ノルボルネン系モノマーのモル
比として、通常1:1,000〜1:2,000,00
0、好ましくは1:5,000〜1:1,000,00
0、より好ましくは1:10,000〜1:500,0
00である。これが小さすぎれば塊状重合時の活性が十
分でなく、大きすぎれば塊状重合時の活性が高すぎて、
硬化不良(反応ムラ)や成形型への充填不良を生じやす
くなる。
【0037】金属カルベン錯体は、必要に応じて、少量
の不活性溶剤に溶解して使用することができる。用いる
不活性溶剤としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキ
サン、n−ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶剤;シ
クロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサ
ン、デカヒドロナフタレン、トリシクロデカン、シクロ
オクタンなどの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエ
ン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤;ジエチルエ−
テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル系溶剤などが
挙げられる。また、触媒としての活性を落とさないよう
なものであれば、液状の老化防止剤、可塑剤やエラスト
マーを溶剤として用いてもよい。これらの溶剤の中で
は、工業的に汎用されている芳香族炭化水素溶剤、脂肪
族炭化水素溶剤や脂環式炭化水素溶剤が好ましい。
【0038】本発明においては、ノルボルネン系モノマ
ーおよび金属カルベン錯体の他に、本発明の目的を損な
わない範囲でその他の成分を添加して、塊状重合させる
ことができる。
【0039】その他の成分としては、例えば、ルイス
酸、酸化防止剤、紫外線吸収剤、エラストマー、高分子
改質剤、充填剤、着色剤、難燃剤、架橋剤、摺動化剤、
着臭剤、軽量化のためのフィラー類、発泡剤、表面平滑
化のためのウイスカー等を含有させることができる。そ
の他の成分は、予めノルボルネン系モノマーの溶液又は
金属カルベン錯体の溶液に溶解又は分散させることがで
きる。
【0040】ルイス酸は、重合反応率等を向上させるた
めに添加される。かかるルイス酸としては、例えば、ト
リアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウ
ム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジ
アルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジ
アルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキル
アルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリ
ド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチ
タン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコ
ニウム等が挙げられる。
【0041】前記アルコキシ基としては、例えば、メト
キシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキ
シ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−オク
トキシ基等を挙げることができる。これらのアルコキシ
基の他に、β位にハロゲン原子が結合したハロゲン含有
アルコキシ基を用いると、反応率が向上するだけでな
く、モノマーと触媒の混合性を害することなく反応速度
も速くなるので特に好適である。
【0042】エラストマーとしては、例えば、天然ゴ
ム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタ
ジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−ス
チレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプ
レン−スチレン共重合体(SIS)、エチレン−プロピ
レン−ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−酢
酸ビニル共重合体(EVA)及びこれらの水素化物等が
挙げられる。これらのエラストマーを反応液に添加する
と、得られるポリマーに耐衝撃性が付与されるだけでは
なく、反応液の粘度を調節することができる。
【0043】酸化防止剤としては、ヒンダードフエノー
ル系、リン系、アミン系等の各種のプラスチック・ゴム
用酸化防止剤がある。これらの酸化防止剤は単独で用い
てもよいが、2種以上を組合せ用いることが好ましい。
配合割合は、通常、ノルボルネン系モノマーに対して
0.5重量部以上、好ましくは1〜3重量部である。ま
た酸化防止剤はモノマーと共重合可能なものでもよく、
その具体例として5−(3,5−ジーtert−ブチル
ー4−ヒドロキシベンジルー2−ノルボルネンのような
ノルボルネニルフェノール系化合物等が例示される(特
開昭57−83522号公報参照)。
【0044】充填剤としては、ガラス粉末、カーボンブ
ラック、タルク、炭酸カルシウム、雲母、水酸化アルミ
ニウム等の無機質充填剤等が挙げられる。また充填剤
は、シランカップリング剤等で表面処理したものを用い
ることもできる。架橋剤としては、イオウ又は過酸化物
を用いると耐熱性が向上する。
【0045】着色剤としては、染料、顔料等が用いられ
る。染料は成形品に鮮やかな染料色を付与できるので好
ましい。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選
択して使用すればよい。例えば、ニトロ染料、ニトロソ
染料、アゾ染料、ケトイミン染料、トリフェニルメタン
染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染
料、メチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、ア
ジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料、
アミノケトン染料、アントラキノン染料、インジゴイド
染料、フタロシアニン染料等が挙げられる。また、顔料
としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、黄鉛、酸
化鉄黄色、二酸化チタン、酸化亜鉛、四酸化三鉛、鉛
丹、酸化クロム、紺青、チタンブラック等が挙げられ
る。
【0046】また、補強材を成形型内に予め充填してお
き、次いで反応液を成形型内に充填し、硬化させること
もできる。この方法によれば、特に機械的強度が優れる
ノルボルネン系樹脂成形体を得ることができる。補強材
の配合量は特に制限されないが、モノマー全重量を10
0重量%として、通常10重量%以上、好ましくは20
〜60重量%である。このような範囲で補強材を配合さ
せることで、ノルボルネン系樹脂成形体の機械的強度を
向上させることができる。補強材の充填量は特に制限さ
れないが、通常、モノマー重量の10重量%以上、好ま
しくは20〜60重量%である。充填量が少なければ、
機械的強度の割合が小さい。充填量が多すぎると、均一
に充填せずにむらができたり、充填阻害が生じる傾向に
ある。
【0047】補強材としては、例えば、ガラス繊維、ア
ラミド繊維、カーボン繊維、超高分子量ポリエチレン繊
維、金属繊維、ポリプロピレン繊維、アルミコーティン
グガラス繊維、木綿、アクリル繊維、ボロン繊維、シリ
コンカーバイド繊維、アルミナ繊維などを挙げることが
できる。これらの補強材は、長繊維状またはチョップド
ストランド状のものをマット化したもの、布状に織った
もの、チョップ形状のままのものなど、種々の形状で使
用することができる。また、表面をシランカップリング
材等のカップリング剤で処理した補強材を用いるのが、
樹脂との密着性を向上させる上で好ましい。
【0048】(5)成形型 本発明においては、成形型として、そのキャビティを構
成する面の全部または一部に砂を有機粘結剤で固めてな
る部分を有するものを用いる。すなわち、(a)キャビ
ティを構成する面の全体を、砂を有機粘結剤で固めて作
った成形型(「砂型」という。)、または(b)キャビ
ティを構成する面の一部を、砂を有機粘結剤で固めて作
った成形型を使用する。
【0049】砂型は、砂に有機粘結剤を配合して作製す
る。また砂型は、数十分から数時間、150〜250℃
の熱風で乾燥した後に使用することが好ましい。
【0050】砂型の作製に用いる有機粘結剤は、樹脂成
分に硬化剤が配合されてなるものである。樹脂成分は、
天然高分子又は合成樹脂であり、好ましくは合成樹脂で
ある。その具体的な例としては、フッ素樹脂、珪素樹
脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿
素樹脂、フラン樹脂、フェノール樹脂、アルコール系樹
脂、多糖類、ウレタン樹脂、イソシアネート化合物、ポ
リビニルアルコール、ポリオール、およびこれら2種以
上の組み合わせなどが挙げられる。また、これらの樹脂
成分に金属石鹸などがさらに配合されていてもよい。こ
れらの中でも、アルキッド樹脂、フラン樹脂またはフェ
ノール樹脂が好ましい。
【0051】上記の樹脂成分に、それに適した硬化剤を
組み合わせて、有機粘結剤として用いる。例えば、フラ
ン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂などを樹脂成分
とし、有機スルホン酸、アルコール、エステルなどを硬
化剤とする常温自硬性有機粘結剤;フェノール樹脂とポ
リイソシアネート、フルフリルアルコールに有機過酸化
物を配合したもの、高アルカリ性フェノール樹脂などを
樹脂成分として、第三級アミン、二酸化炭素、二酸化硫
黄、エステルなどのガスを硬化剤とする常温ガス硬化性
有機粘結剤;などが挙げられる。
【0052】有機粘結剤のより具体的な例としては、ア
ルキッド樹脂、金属石鹸およびポリ4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネートからなる鋳型用ノーベークバ
インダー(商品名:リノキュア、保土ヶ谷アシュランド
社製)、フェノール樹脂およびポリ4,4’−ジフェニ
ルメタンジイソシアネートからなるコールドボックス法
鋳型造型用バインダー(商品名:イソキュア、保土ヶ谷
アシュランド社製)などが挙げられる。
【0053】また、本発明においては、例えば、特開平
3−92809号公報、特開平5−116167号公報
に記載されているように、表面を黒鉛粉、揮発分および
灰分からなる基材を溶剤で希釈した反応充填成形用塗型
剤で処理した砂型を使用することもできる。
【0054】成形型の形態は特に限定されないが、密閉
型の成形型を用い、それらの空隙部(キャビティ)内に
反応液をバッチ式にて充填して塊状重合を行なうことが
好ましい。成形型は、その内部が目的とする成形体の形
状にあった空隙部を形成するように作製される。
【0055】また、前記(b)の例としては、砂を有機
粘結剤で固めて作った中子(「砂中子」という。)を使
用した成形型が挙げられる。この場合には、成形体のう
ちアンダーカット部以外を成形するための成形型の内部
に砂中子を配置し、この成形型と砂中子との間にできた
空間(キャビティ)内にノルボルネン系モノマーと金属
カルベン錯体を含む反応液を充填し、急速に重合固化さ
せることにより成形体を得た後、この成形体の内部から
前記砂中子を除去することにより成形体が得られる。
【0056】砂中子は、上述した砂型の作製方法と同様
にして作製することができる。砂中子は成形性および転
写性に優れ、成形後、破壊することができるため、成形
型から容易に成形体を取り出すことができる。
【0057】さらに本発明においては、砂中子の表面
を、例えば非水溶性塗料、ウレタン塗料または黒鉛粉、
揮発分および灰分からなる基材を溶剤で希釈した反応充
填成形用塗型剤などで処理したものを使用することもで
きる。
【0058】前記(b)の場合に用いる成形型のうち、
砂中子以外の部分は、割型構造、すなわち、雄型と雌型
とで構成される密閉型のものを用いることが好ましく、
砂中子を含む成形型とにより形成される空隙部(キャビ
ティ)が、目的とする成形体の形状となるように作製す
る。
【0059】また、前記(b)の場合に用いる成形型の
うち、砂中子以外の部分の材質は特に限定されない。材
質としては、例えば、鋳鉄、鉄、ステンレス、アルミニ
ウム、ニッケル電鋳などの金属類;ポリエチレン、ポリ
スチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ウレタ
ン、エポキシ、フェノール、ポリエステルなど合成樹脂
類;などが挙げられる。ノルボルネン系モノマーの塊状
重合による成形は、熱可塑性樹脂の溶融成形に比べて、
比較的低圧での成形が可能であり、必ずしも高剛性の成
形型を用いる必要はない。
【0060】金属カルベン錯体およびノルボルネン系モ
ノマーを成形型内に充填する方法としては、例えば、ノ
ルボルネン系モノマーの1種以上を含むモノマー液と、
金属カルベン錯体の1種以上を少量の不活性溶剤に溶解
若しくは分散させてなる触媒液とを別々に調製してお
き、成形型内に充填する直前に、モノマー液と触媒液と
を所定割合で混合して反応液(本発明では、ノルボルネ
ン系モノマーと金属カルベン錯体を混合し、塊状重合が
開始し得る状態の混合液を「反応液」という。)を調製
し、得られた反応液を成形型内に充填する方法が挙げら
れる。
【0061】反応液を調製して成形型内に充填するに
は、例えば、レジントランスファーモールディング(R
TM)法や反応射出成形(RIM)法などを用いること
ができる。
【0062】RTM法において用いるRTM機は、一般
にモノマー液を貯蔵するモノマー液タンク、触媒液を貯
蔵する触媒液タンク、計量ポンプ及びスタティックミキ
サーなどの静的混合機などからなる。RIM法において
用いるRIM機は、一般にモノマー液タンク、触媒液タ
ンク、計量ポンプ及び衝突混合機などからなる。RTM
法及びRIM法では、通常、モノマー液と触媒液とを、
計量ポンプにより1000:1から10:1の容量比で
混合機に送り込み、次いで所定温度に設定された成形型
内に充填し、そこで即座に塊状重合させてノルボルネン
系樹脂成形体を得ることができる。
【0063】触媒液とその他の成分及びモノマー液とそ
の他の成分の混合には、静的混合機やアジテーターなど
公知の各種混合機などが使用可能である。前述したその
他の成分を、どこの工程で混合するかは特に限定されな
い。例えば、ノルボルネン系モノマーに溶解する成分
は、反応液を調製する前までにモノマー液に混合してお
くことが好ましく、ノルボルネン系モノマーに不溶性の
成分は、塊状重合が始まって粘度が急激に上昇する前に
反応液に混合するのが好ましい。
【0064】塊状重合反応が開始する前の反応液の温度
は特に限定されない。反応液の温度は、室温(20℃程
度)でもよいし、塊状重合の活性を上げるため20〜7
0℃の間で昇温させてもよいし、成形方法によっては、
塊状重合の開始を遅らせるために、モノマー液を室温以
下に冷却することも好ましい。冷却する場合の温度は、
−20℃から+20℃の範囲である。
【0065】反応液の塊状重合を行う際の成形型の温度
は、通常70℃以下、好ましくは60℃以下、より好ま
しくは50℃以下である。成形型の温度を70℃以下に
設定することにより、得られるノルボルネン系樹脂成形
体での空孔の存在量を一定レベル以下に抑制し、実質的
に空孔を有しないようにすることができる。また、型締
圧力は通常0.1〜100kg/cmの範囲内であ
る。
【0066】成形型内への反応液の充填時間は5〜30
0秒が好ましく、10〜150秒がより好ましい。成形
型内への充填をこの時間内で行うと、反応液中に気泡が
混入することがなくなり、成形体に空孔を生じるおそれ
がなくなる。また、充填不良を生じ難く、これにより成
形体にウェルドを生じるおそれがなくなる。
【0067】ノルボルネン系モノマーと金属カルベン錯
体を含む反応液を成形型の空隙部(キャビティ)に充填
すると、通常は数分で塊状重合が開始し、温度が上昇
し、重合反応が進行する。この塊状重合反応は急激なも
のである。メタセシス触媒として金属カルベン錯体を使
用する本発明では、重合反応速度の温度依存性が大きい
ため、一旦発熱が開始して温度が上昇すると、重合反応
速度が極めて速くなり、その結果、発熱時の温度の立ち
上がり(温度上昇カーブ)が急となる。最高昇温速度
は、通常10℃/秒以上である。重合時間は適宜選択す
ればよいが、通常、10秒〜20分、好ましくは5分以
内である。
【0068】なお、成形後に生ずるノルボルネン系樹脂
成形体のヒケを防止するために、さらに、成形型内に反
応液を供給した後、保圧をかけてもよい。ここでいう
「保圧」とは、成形型のキャビティ内に反応液を供給し
た後に、ヒケ容積に相当する反応液を追加供給する際に
必要な圧力をいう。
【0069】いずれの場合にも、成形後、砂型又は砂中
子を破壊除去することにより、ノルボルネン系樹脂成形
体を容易に取り出すことができる。
【0070】(6)ノルボルネン系樹脂成形体 本発明により製造される成形体は特に限定されるもので
はなく、本発明は、あらゆる用途、形状、大きさの成形
体の製造に適用できる。特に本発明の製造方法は、特に
アンダーカット構造を有する成形体の製造に好ましく適
用される。かかる成形体としては、例えば、ポンプケー
シングなどの流体機器用ケーシングやバタフライ弁の弁
体などが挙げられる。本発明の方法により製造されるノ
ルボルネン系樹脂成形体は、耐衝撃性、耐熱性、寸法安
定性、耐吸水性等に優れており、しかも薄肉成形ができ
るので軽量であるという優れた特長を有する。
【0071】本発明により製造されるポンプケーシング
を有するポンプの断面図を図1に示す。図1に示すポン
プ1は遠心ポンプの一種であり、ケーシング10の流路
6内に羽根車7が回転自在に装着してある。羽根車7は
回転軸8の端部に固定され、回転軸8の回転と共に回転
するようになっている。ケーシング10は、吸込側フラ
ンジ2及び吐出側フランジ3が一体に形成されたケーシ
ング本体4と、グランドカバー5とで構成されている。
ケーシング本体4とグランドカバー5とは、ボルト9に
よって連結され、内部に羽根車7が収容された流路6を
構成するようになっている。グランドカバー5と回転軸
8との間の隙間から流体が漏洩するのを防止するため、
これらの隙間にはパッキン11が装着してあり、これら
パッキン11をパッキン押え12で保持するようになっ
ている。図1に示すポンプ1の吸込側フランジ2、吐出
側フランジ3およびグランドカバー5は、厚さ10mm
以上の厚肉部を有しており、いわゆるアンダーカット部
を持つ。
【0072】図1に示すポンプケーシング10を製造す
るには、まず、ポンプケーシング10の外部形状を有す
る成形型と、ポンプケーシング10の内部形状に対応す
る外部形状を持つ砂中子とを用意し、成形型の内部の所
定位置に砂中子をセットして、ポンプケーシング製造用
の成形型とする。次いで、成形型と砂中子との間にでき
た空間(キャビティ)内に、ノルボルネン系モノマーの
液と金属カルベン錯体を含む触媒液の混合液を、RIM
機を使用して充填する。その後、成形型を開き、砂中子
を破壊、除去することにより、ポンプケーシング10を
得ることができる。
【0073】本発明により製造されるバタフライ弁の弁
体の平面図を図2(A)に、同図(A)のA−A線に沿
う半断面図を図2(B)にそれぞれ示す。
【0074】図2に示すように、バタフライ弁の弁体1
3は、全体として円盤状であり、内部に金属製骨組材1
4が埋め込まれ、その外周をノルボルネン系モノマーの
反応射出成形により得られる樹脂層15が形成されてい
る。
【0075】図2に示すバタフライ弁の弁体13は、回
動軸孔16に回動軸(図示を省略)を通し、例えば、水
力発電所の水流路内に設置することにより、回動軸の軸
芯周りに回動させて、該流路を開閉動作するために用い
ることができる。
【0076】バタフライ弁の弁体13を製造するには、
先ずバタフライ弁の外周形状をした金属製のリングと骨
組材14を用意する。その後、これらを弁体成形用砂型
の内部にセットし、反応射出成形を行ない、ノルボルネ
ン系樹脂層15を形成する。成形後は、砂型を破壊、除
去することにより、バタフライ弁の弁体13を取り出す
ことができる。
【0077】
【実施例】次に、実施例および比較例により、本発明を
更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定され
るものではない。
【0078】実施例1 ポンプ用ケーシングの製造 先ず、図1に示すポンプケーシング本体4の外部形状を
内部にもつ成形型と、内部形状をもつ砂中子を用意し
た。砂中子は、砂に有機粘結剤としてフラン樹脂(商品
名:AVライトHP6100、旭有機材工業株式会社
製)を、重量比で砂:フラン樹脂=100:10で混合
したものを所定の形状に固めた後、200℃の熱風で1
時間乾燥して得た。次いで、成形型の内部の所定位置に
得られた砂型をセットして、ポンプケーシング成形用成
形型を作製した。
【0079】一方、約10%のシクロペンタジエン三量
体を含むジシクロペンタジエンからなるノルボルネン系
モノマー300gを、それぞれ2つのタンクに入れた
(A液およびB液)。A液及びB液とは別に、ベンジリ
デン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデ
ン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジク
ロリド(Org.Lett.1999年、1巻、953
頁の記載に基づいて合成したもの)62mgをトルエン
3.6mlに溶解したC液(ルテニウム錯体/ノルボル
ネン系モノマー=1/10000(mol/mol))
を調製した。
【0080】これらの三液をミキシングヘッドに送り込
み、衝突混合(衝突圧60kgf/cm)させた後、
成形型と砂型とでできたキャビティ内に15秒かけて充
填した。ピーク温度までの時間は約50秒であった。重
合反応終了後、成形型および成形体を室温で放置し、十
分に砂型が冷えてから成形型を開き、砂中子を破壊して
成形体を取り出した。
【0081】得られた成形体は図1に示すケーシング本
体4であり、ほぼ透明であった。また、成形体の表面の
硬化具合を、成形体表面のべたつきの有無および残留モ
ノマーの臭気の有無で評価した。評価結果を第1表に示
す。第1表中、硬化が良好で、成形体の表面にべたつき
がなく、残留モノマーの臭気がない場合を〇、硬化がや
や不良で、成形体の表面にべたつきはないが、残留モノ
マーの臭気がある場合を△、硬化が不良で、成形体の表
面にべたつきがあり、残留モノマーの臭気がある場合を
×として評価した。
【0082】実施例2 ポンプ用ケーシングの製造 実施例1において、有機粘結剤としてフラン樹脂に代え
て、鋳型用ノーベークバインダー(商品名:リノキュ
ア、保土ヶ谷アシュランド社製)を用いる砂中子を使用
した以外は、実施例1と同様にして実施例1と同様の形
状の成形体を得た。得られた成形体の表面の硬化具合
を、成形体表面のべたつきの有無および残留モノマーの
臭気の有無で評価した。評価結果を第1表に示す。
【0083】比較例1 ポンプ用ケーシングの製造 シクロペンタジエン二量体(DCP)90%と、シクロ
ペンタジエン三量体10%とからなるノルボルネン系モ
ノマーとを2つのタンクに入れ、一方にはモノマーに対
しジエチルアルミニウムクロリドを40モル濃度、1,
3−ジクロロ−2−プロパノール48モル濃度になるよ
うに添加した(A液)。他方には、モノマーに対し、ト
リ(トリデシル)アンモニウムモリブデートを10ミリ
モル濃度となるように添加すると共に、ビニルノルボル
ネン6%を添加した(B液)。これらA液およびB液
は、それぞれAタンクおよびBタンクに貯留した。
【0084】一方、タンクから液温が各々25℃の同容
量のA液およびB液を、実施例1と同様の成形型のキャ
ビティ内に混合して注入し、約10分程度経過した後、
成形型を開き、砂中子を破壊してポンプケーシングを取
り出した。
【0085】得られた成形体の表面の硬化具合を、成形
体表面のべたつきの有無および残留モノマーの臭気の有
無で評価した。評価結果を第1表に示す。
【0086】比較例2 ポンプ用ケーシングの製造 比較例1において、有機粘結剤としてフラン樹脂に代え
て、鋳型用ノーベークバインダー(商品名:リノキュ
ア、保土ヶ谷アシュランド社製)を用いた砂型を使用し
た以外は、比較例1と同様にして実施例1と同様の形状
の成形体を得た。得られた成形体の表面の硬化具合を、
成形体表面のべたつきの有無および残留モノマーの臭気
の有無で評価した。評価結果を第1表に示す。
【0087】なお、第1表中、RCは、ベンジリデン
(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)
(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリ
ドを表し、MOは、ジエチルアルミニウムクロリドとト
リ(トリデシル)アンモニウムモリブデートとから得ら
れるメタセシス重合触媒を表す。また、FUはフラン樹
脂を、RNは鋳型用ノーベークバインダー(商品名:リ
ノキュア、保土ヶ谷アシュランド社製)をそれぞれ表
す。
【0088】
【表1】
【0089】第1表から、メタセシス重合触媒としてル
テニウムカルベン錯体を用い、砂中子を使用した場合
(実施例1、2)には、表面にべたつきおよび残留モノ
マーの臭気がないノルボルネン系樹脂成形体(ポンプ用
ケーシング)を得ることができた。それに対し、メタセ
シス重合触媒としてモリブデン系の触媒を使用した場合
(比較例1,2)には、硬化不良が生じ、得られる成形
体の表面がべたついていたり、残留モノマーの臭気があ
った。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、硬化不良の問題がな
く、かつ成形性に優れるノルボルネン系樹脂成形体を効
率よく製造することができる。特に本発明の製造方法
は、アンダーカット構造を有するノルボルネン系樹脂成
形体の製造に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の製造方法により製造されるポ
ンプケーシングを用いたポンプの断面図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法により製造されるバ
タフライ弁の弁体の断面図であり、図2(A)はバタフ
ライ弁の弁体の平面図、同図(B)は同図(A)のA−
A線に沿う半断面図である。
【符号の説明】
1…ポンプ 2…吸引側フランジ 3…吐出側フランジ 4…ケーシング本体 5…グランドカバー 6…流路 7…羽根車 8…回転軸 9…ボルト 10…ポンプケーシング(成形体) 11…パッキン 12…パッキン押え 13…バタフライ弁の弁体 14…骨組材 15…樹脂層 16…回動軸孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08G 61/08 C08G 61/08 4J032 C08J 5/00 CEZ C08J 5/00 CEZ F16K 1/36 F16K 1/36 Z // B29K 45:00 B29K 45:00 B29L 31:00 B29L 31:00 C08L 65:00 C08L 65:00 (72)発明者 八木下 茂 東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 日 本ゼオン株式会社内 (72)発明者 西部 淳 東京都千代田区丸の内二丁目6番1号 日 本ゼオン株式会社内 Fターム(参考) 3H052 AA02 CA17 EA02 4F071 AA39 AH05 AH17 BB01 BC04 BC07 4F202 AA12 AC05 AH13 AJ01 CA01 CA11 CB01 CD21 CD30 CK32 4F204 AA12 AB04 AG21 AH05 AH42 AJ01 EA03 EA04 EB01 EE02 EF02 EK24 4F206 AA12 AC05 AH13 AJ01 JA01 JL02 JM04 JN11 JQ81 4J032 CA34 CA35 CA36 CA38 CA46 CC03 CD02 CE06 CG07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ノルボルネン系モノマーおよびメタセシス
    重合触媒を含む反応液を成形型内に充填し、重合固化さ
    せるノルボルネン系樹脂成形体の製造方法であって、前
    記メタセシス重合触媒として金属カルベン錯体を用い、
    前記成形型として、そのキャビティ内に、砂を有機粘結
    剤で固めてなる部分を有するものを用いることを特徴と
    するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の製造方法により得られる
    ノルボルネン系樹脂成形体。
  3. 【請求項3】前記ノルボルネン系樹脂成形体が、その一
    部にアンダーカット構造を有するものである請求項2に
    記載のノルボルネン系樹脂成形体。
  4. 【請求項4】前記ノルボルネン系樹脂成形体が、流体機
    器用ケーシングである請求項3に記載のノルボルネン系
    樹脂成形体。
  5. 【請求項5】前記ノルボルネン系樹脂成形体が、バタフ
    ライ弁の弁体である請求項2に記載のノルボルネン系樹
    脂成形体。
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