JP2002298674A - 絶縁電線の製造方法および絶縁電線 - Google Patents

絶縁電線の製造方法および絶縁電線

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resin
conductor
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Masanori Fujii
政徳 藤井
Hiroyuki Kamibayashi
裕之 上林
Yoshiji Miyashita
芳次 宮下
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 充分な絶縁性能を有し、かつ可及的に厚みが
小さく、さらに耐熱性にも優れる絶縁層を備える絶縁電
線を製造する方法、それによって得られた絶縁電線を提
供する。 【解決手段】 ポリイミド樹脂とフッ素樹脂と電荷付与
剤とを水分散してなる水分散型樹脂エマルジョンを導体
上に電着し、乾燥、焼付けすることによって絶縁層を形
成することを特徴とする絶縁電線の製造方法、およびそ
れによって得られた絶縁電線。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器の配線な
どに好適に使用される絶縁電線の製造方法、およびそれ
によって得られた絶縁電線に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の軽量化、小型化に伴い、電子
機器内や電子機器間の配線などに使用される絶縁電線と
して、断面積のより小さな絶縁電線が求められている。
絶縁電線は、導体と、これを被覆してなる絶縁層とを基
本的に備える構造であるが、上記の用途の絶縁電線で
は、絶縁性能を損なうことなく、可及的に小さな厚みの
絶縁層を形成することが望まれる。またこのような絶縁
電線としては、空間を有効に利用できる点から、絶縁電
線の長手方向に対し略垂直な断面形状が矩形状である平
形絶縁電線が多く用いられている。
【0003】絶縁電線の絶縁層を形成する方法として、
吹付けやディッピング、コータなどによって導体に樹脂
ワニスを塗布した後、これを乾燥、焼付けする方法が従
来から知られている。しかしながらこの方法では、上記
の平形絶縁電線を形成する場合、上記矩形状の断面でみ
たときに長辺側の絶縁層を小さな厚みに形成しようとす
ると、短辺側では樹脂ワニスが垂れてしまい、導体の角
部近辺を被覆する絶縁層および短辺側の絶縁層の厚み
が、特には導体の角部近辺を被覆する絶縁層の厚みが小
さくなり過ぎてしまい、充分な絶縁性能を発揮できなく
なってしまう。
【0004】また平形絶縁電線の他の製造方法として、
断面円状の丸形絶縁電線を圧延する方法も知られてい
る。しかしこの方法では、絶縁層に残留応力が残るため
に耐電圧や耐ヒートショック性などが著しく低下してし
まい、また丸形絶縁電線の時点での絶縁層の厚みが20
μm以下と比較的小さい場合、圧延率が大きいと、絶縁
層に割れが生じてしまう問題があった。
【0005】また近年においては、上記の電子機器内や
電子機器間の配線などに使用される絶縁電線にも耐熱用
途が多くなってきており、充分な絶縁性能を有し、かつ
可及的に厚みが小さく、さらに耐熱性にも優れる絶縁層
を備える絶縁電線の開発が望まれている。中でも特に、
充分な絶縁性能を有し、かつ上記断面において長辺側の
厚みを可及的に小さくでき、さらに耐熱性にも優れる絶
縁層を備える平形絶縁電線の開発が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、充分
な絶縁性能を有し、かつ可及的に厚みが小さく、さらに
耐熱性にも優れる絶縁層を備える絶縁電線を製造する方
法、およびそれによって得られた絶縁電線を提供するこ
とである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成す
るに至った。即ち、本発明は以下のとおりである。 (1)ポリイミド樹脂とフッ素樹脂と電荷付与剤とを水
分散してなる水分散型樹脂エマルジョンを導体上に電着
し、乾燥、焼付けすることによって絶縁層を形成するこ
とを特徴とする絶縁電線の製造方法。 (2)上記(1)に記載の方法で製造されたものである
絶縁電線。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、水分散型樹脂エマルジョンの電着によって絶
縁層を形成する絶縁電線の製造方法であって、基本的
に、樹脂エマルジョン調製工程と、電着工程と、
乾燥・焼付け工程とを有する。
【0009】樹脂エマルジョン調製工程では、まず、
形成する絶縁層に耐熱性を付与するためのポリイミド樹
脂と、形成する絶縁層に可撓性を付与するためのフッ素
樹脂と、ポリイミド樹脂に電荷を付与するための電荷付
与剤とを水分散してなる水分散型樹脂エマルジョンを調
製する。本発明の水分散型樹脂エマルジョンに用いられ
るポリイミド樹脂としては、脂肪族ポリイミド、芳香族
ポリイミド、脂環族ポリイミドなど、従来公知の各種の
ものが用いられ、特には限定されないが、耐熱性の観点
からは、芳香族ポリイミドを用いるのが好ましい。なお
本明細書中でいう「ポリイミド樹脂」とは、電着後の加
熱などによりポリイミド樹脂を成形可能な前駆的化合物
(たとえばポリアミドなど)、ポリイミド樹脂の形成に
用いられる単量体、オリゴマー、ならびにこれらの混合
物を含むものとする。
【0010】本発明の水分散型樹脂エマルジョンに用い
られるフッ素樹脂としては、含フッ素モノマーの単独重
合体や共重合体など種々の重合体であればよく、特には
限定されない。このようなフッ素樹脂としては、従来公
知のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラ
フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテ
ル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキ
サフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフル
オロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリビ
ニリデンフルオライド(PVdF)、ポリクロロトリフ
ルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエ
チレン−エチレン共重合体(ECTFE)などが例示さ
れる。本発明においては、上記フッ素樹脂を単独または
2種以上併用して用いてもよい。
【0011】上記フッ素樹脂は、たとえば平均粒径が好
ましくは0.01μm〜50μm、より好ましくは0.
1μm〜10μmとなるように微粉砕された微粒子形態
で用いられる。なおフッ素樹脂微粒子の平均粒径は、た
とえば以下のようにして測定できる。測定対象とする粉
末を水あるいはエタノールなどの有機液体に投入し、3
5kHz〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて
約2分間分散処理して得た分散液を用い、且つその場合
の粒状物の量は該分散液のレーザー透過率(入射光量に
対する出力光量の比)が70%〜95%となる量とし、
ついで該分散液に就いて、マイクロトラック粒度分析計
にかけてレーザー光の散乱により個々の粒状物の粒径
(D1、D2、D3・・・)、および各粒径毎の存在個数
(N1、N2、N3・・・)を計測する(個々の粒状物の
粒径(D)は、マイクロトラック粒度分析計によれば種
々の形状の粒状物毎に球相当径が自動的に測定され
る。)。上記平均粒径(μm)は、視野内に存在する個
々の粒子の個数(N)と各粒径(D)とから下式(1)
にて算出される。 平均粒径(μm)=(ΣND3/ΣN)1/3 (1)
【0012】本発明において用いられる電荷付与剤とし
ては、特には限定されず、従来公知の電荷付与剤を好適
に用いることができる。上記電荷付与剤としては、たと
えばアクリル酸またはメタクリル酸共重合体のアミノ誘
導体やアクリル酸またはメタクリル酸共重合体のヒドロ
キシ誘導体を含有する電荷付与剤が挙げられる。上記ア
クリル酸またはメタクリル酸のアミノ誘導体は、共重合
体にカチオン性を付与するものであり、たとえばアクリ
ル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミ
ノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリ
ル酸ジエチルアミノエチル、アクリロイロキシエチルト
リメチルアンモニウムクロライド、メタクロイルオキシ
エチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル
酸N−ターシャリブチルアミノエチル、メタクリル酸モ
ルホリノエチルが例示される。上記アクリル酸またはメ
タクリル酸のヒドロキシ誘導体は、硬化剤(たとえばブ
ロック化イソシアネート)との架橋と、素材との密着性
を付与するものであり、たとえば2−ヒドロキシメチ
ル、メタクリル酸2−ヒドロキシメチル、アクリル酸2
−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチ
ル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸
2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブ
チル、メタクリル酸2−ヒドロキシブチル、アクリル酸
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル、2−アクリ
ロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート
が例示される。
【0013】上記のポリイミド樹脂、フッ素樹脂および
電荷付与剤を、たとえば従来公知のディスパーサ装置な
どを用いて、水中に分散して、水分散型樹脂エマルジョ
ンを調製する。分散媒である水としては、水道水、工業
用水、純水またはイオン交換水など、水分散型樹脂エマ
ルジョンを作製するために用いられる一般的なものを用
いることができる。
【0014】該水分散型樹脂エマルジョンは、まずポリ
イミド樹脂と電荷付与剤とを水中に分散させ、これにフ
ッ素樹脂を添加して調製する。またフッ素樹脂と電荷付
与剤とを水中に分散させ、これにポリイミド樹脂を添加
して調製してもよい。
【0015】本発明において用いられる水分散型樹脂エ
マルジョンにおける樹脂成分(ポリイミド樹脂とフッ素
樹脂との混合樹脂)の濃度は、特に限定されないが、
0.1重量%〜20重量%であるのが好ましく、0.3
重量%〜10重量%であるのがより好ましい。該樹脂成
分の濃度が0.1重量%未満であると、得られた絶縁層
のピンホール数が増加してしまい絶縁不良となってしま
う傾向にあるため好ましくない。また該樹脂成分の濃度
が20重量%を超えると、均一な絶縁層の形成が困難と
なる傾向にあるため好ましくない。
【0016】また該樹脂成分において、ポリイミド樹脂
とフッ素樹脂との混合割合についても特に限定はない
が、ポリイミド樹脂:フッ素樹脂=80:20〜40:
60であるのが好ましく、ポリイミド樹脂:フッ素樹脂
=70:30〜50:50であるのがより好ましい。ポ
リイミド樹脂:フッ素樹脂=80:20よりもフッ素樹
脂の割合が少ないと、得られた絶縁電線に充分な可撓性
が付与されない傾向にあるため好ましくない。またポリ
イミド樹脂:フッ素樹脂=40:60よりもポリイミド
樹脂の割合が少ないと、得られた絶縁電線の耐熱性が不
充分となる傾向にあるため好ましくない。
【0017】また本発明における水分散型樹脂エマルジ
ョン中の電荷付与剤の配合量についても特に限定はない
が、ポリイミド樹脂100重量部に対し、10重量部〜
30重量部の電荷付与剤が配合されているのが好まし
く、15重量部〜20重量部の電荷付与剤が配合されて
いるのがより好ましい。該電荷付与剤の配合量がポリイ
ミド樹脂100重量部に対し10重量部未満であると、
電着が充分に行われない傾向にあるため好ましくない。
また電荷付与剤の配合量が30重量部を超えると、得ら
れた絶縁層の耐熱性が低下する傾向にあるため好ましく
ない。
【0018】本発明における水分散型樹脂エマルジョン
は、必要に応じて、従来公知の酸化防止剤、着色剤など
を適宜添加してもよい。
【0019】なお本発明における水分散型樹脂エマルジ
ョンは、水と、ポリイミド樹脂と、フッ素樹脂と、電荷
付与剤とを含有するエレコートTR−MI(株式会社シ
ミズ製)を用いてもよい。
【0020】続く電着工程では、電着によって、導体
を、の工程で調製した水分散型樹脂エマルジョンで被
覆する。該電着は、たとえば水分散型樹脂エマルジョン
で満たされた電着バス中に上記導体を通過させるなどし
て、導体を水分散型樹脂エマルジョン中に浸漬させた状
態で電圧を印加する。
【0021】電着工程において印加する電圧は、通
常、直流電圧で0.5V〜100Vであり、好ましくは
直流電圧で2V〜30Vである。電着時間としては、通
常、0.01秒〜30秒であり、好ましくは1秒〜10
秒である。電着の際の水分散型樹脂エマルジョンの温度
としては、5℃〜40℃であるのが好ましく、10℃〜
35℃であるのがより好ましい。
【0022】乾燥・焼付け工程では、の電着工程で
導体上に電着した水分散型樹脂エマルジョンを、たとえ
ば従来公知の乾燥装置および焼付け炉などを用いて、乾
燥し、焼付けて、絶縁層を形成する。乾燥の条件は、5
0℃〜100℃の温度で5分間〜20分間行うのが好ま
しく、80℃〜100℃の温度で5分間〜10分間行う
のがより好ましい。また焼付けは、200℃〜300℃
の温度で10分間〜60分間行うのが好ましく、220
℃〜250℃の温度で10分間〜20分間行うのがより
好ましい。
【0023】上記の〜の各工程を経て形成された絶
縁層は、上記のポリイミド樹脂とフッ素樹脂との混合樹
脂を主体成分とするものである。ポリイミド樹脂はそれ
単独では帯電しにくいため、電着には一般に不向きであ
るが、本発明の製造方法においては、水分散型樹脂エマ
ルジョン中においてポリイミド樹脂が電荷付与剤によっ
て帯電し、上記のような電圧が印加されることでフッ素
樹脂とともに導体上に引き付けられる。導体上に電着さ
れた後、乾燥・焼付け工程を経ることで、水分散型樹脂
エマルジョン中の水分が揮発し、導体上の混合樹脂の粒
子が溶融し融合することで、絶縁層が形成される。この
ような本発明の製造方法では、充分な絶縁性能を有し、
かつ従来と比較して厚みの小さな絶縁層を有する絶縁電
線を得ることができる。
【0024】本発明の絶縁電線の絶縁層は、ポリイミド
樹脂を含有することによって、優れた耐熱性を有し、た
とえば180℃〜200℃の連続使用温度であっても絶
縁性を保持できる。しかしポリイミド樹脂のみで絶縁層
が形成された絶縁電線では、絶縁電線の可撓性が劣って
しまい、絶縁電線を屈曲すると絶縁層が剥がれたり破れ
たりする不具合がある。本発明においては、ポリイミド
樹脂に加えてフッ素樹脂が絶縁層に含有されているの
で、耐熱性に加えて弾力性を有する混合樹脂にて導体が
被覆されていることとなり、耐熱性および可撓性に優れ
る絶縁電線を実現することができる。
【0025】本発明の製造方法によって得られる絶縁電
線は、その形状に特に限定はなく、円形絶縁電線であっ
てもよく平形絶縁電線であってもよいが、平形絶縁電線
であるのが好ましい。図1は、本発明の製造方法によっ
て得られた好ましい一例の平形絶縁電線1を簡略化して
示す、絶縁電線の長手方向に対して略垂直な方向におけ
る断面図である。図1に示す平形絶縁電線1は、基本的
に、前記断面が矩形状の導体2と、該導体2を被覆する
絶縁層3とを備える。平形絶縁電線1の導体2は、その
厚みt1が好ましくは1μm〜1000μm程度、その
幅w1が好ましくは0.1mm〜3mm程度が好適であ
る。導体2の形成材料としては、導電性が良好なもので
あれば特に制限なく用いることができ、たとえば銅、銅
合金、銅クラッドアルミニウム、アルミニウム、亜鉛め
っき鉄などが例示される。
【0026】本発明で得られる平形絶縁電線1は、長辺
側における絶縁層の厚みが上記のように従来と比較して
格段に小さな厚みであっても、短辺側の絶縁層および導
体の角部近辺を被覆する絶縁層を充分な絶縁性能を有す
る程度の厚みとできる。図1に示すような本発明で得ら
れる平形絶縁電線1の長辺側の絶縁層の厚みは、0.1
μm〜30μmであるのが好ましく、0.2μm〜20
μmであるのがより好ましい。
【0027】このように本発明で得られた絶縁層3は、
長辺側における絶縁層が上記のような従来と比較して格
段に小さな厚みであったとしても、従来の吹付けやディ
ッピング、コータなどによって樹脂ワニスを塗布した
後、焼付けなどによってこれを乾燥する従来の方法によ
って形成された絶縁層とは異なり、前記長辺側の絶縁層
を従来よりも格段に小さな厚みに形成したとしても、導
体の角部近辺を被覆する絶縁層および短辺側の絶縁層の
厚みが小さくなり過ぎて、絶縁性能に劣ってしまうよう
なことがない。これは、上記樹脂が有機溶媒中ではな
く、水中に分散されている水分散型の樹脂エマルジョン
を用いているためである。
【0028】仮にポリイミド樹脂、フッ素樹脂および電
荷付与剤を有機溶媒に分散したものを用いて絶縁層を形
成した場合、電着時に導体を被覆する絶縁層全体が樹脂
と溶媒との略均一物となっているため、焼付け時の高温
度で硬化より先に溶媒の存在に起因する著しい粘度低下
が起こり、表面張力の作用により混合樹脂液が導体の角
部近辺および短辺側から長辺側に流れてしまう。特に、
上記長辺側において厚みが3μm以下の絶縁層を形成す
る場合には、上記のように混合樹脂液の流れが少しでも
生じると絶縁層に欠損部が生じてしまう。
【0029】これに対して、本発明においては、ポリイ
ミド樹脂、フッ素樹脂および電荷付与剤を水分散してな
る水分散型樹脂エマルジョンを用いているので、上記
の電着工程において、樹脂細粒が幾重にも重なり合って
導体上に堆積し、この細粒間に分散媒である水が存在す
る構造で混合樹脂が電着する。各細粒内には水が存在し
ていないので、上記の乾燥・焼付け工程における焼付
け時に分散媒である水による粘度の低下の問題は殆ど起
こらずに、電着時そのままの形状を保って硬化するもの
と考えられる。
【0030】このように本発明においては、充分な絶縁
性能を有し、かつ上記長辺側における厚みが可及的に小
さく、さらには耐熱性にも優れる絶縁層を備える平形絶
縁電線1を実現できる。このような平形絶縁電線1は、
耐熱性が要求される電子機器内や電子機器間の配線など
に特に好適に用いることができる。なお本明細書中にお
いて、「充分な絶縁性能を有する」とは、JIS C
3003に準拠した耐電圧試験により、規定の電気特性
(絶縁性)(塗膜厚によって決定される電圧値に対し、
課電1秒間で漏れ電流が5mA以下であること)を有す
ることを指す。
【0031】上述した電着工程および乾燥・焼付け
工程は、たとえば図2に模式的に示すような装置を用い
て行われる。図2の例では、導体11を交流電源の陽極
側に接続した状態で、上記のポリイミド樹脂とフッ素樹
脂と電荷付与剤とを水分散してなる水分散型樹脂エマル
ジョン13で満たされた電着バス12中を通過させる。
電着バス12中には、たとえば陰極管14が配置され、
導体11の通過時に上記電圧の印加により、陽極である
導体11と陰極である陰極管14間の電位差により、混
合樹脂が導体上に略均一に析出する。
【0032】電着バス12の後、導体11を乾燥装置1
5内を通過させる。該乾燥装置15内で、導体11上に
析出したポリイミド樹脂およびフッ素樹脂の混合樹脂中
の水が蒸発される。乾燥装置15を通過した後、焼付け
炉16を通過させ、ポリイミド樹脂およびフッ素樹脂の
混合樹脂を、導体11上に焼き付けおよび硬化させ、該
混合樹脂からなる上記絶縁層3を形成する。なお乾燥装
置において、高温度(たとえば約200℃〜500℃)
を採用して、水分散型樹脂エマルジョン中の水分の除去
とともに導体上の電着樹脂の半硬化または完全硬化を行
うようにしてもよい。
【0033】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明
するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではな
い。 実施例1 水分散型樹脂エマルジョンとして、水と、ポリイミド樹
脂と、フッ素樹脂と、電荷付与剤とを含有するエレコー
トTR−MI(株式会社シミズ製)を用いた。電着は、
銅円筒の陰極管(直径:6cm、長さ:30cm)を用
い、極間距離3cmで、浴液中に10秒間浸漬(バッチ
処理)しながら温度20℃で10Vの直流電圧をかける
という条件下で行った。また乾燥は、90℃の温度で1
0分間、焼付けは220℃の温度で10分間行った。
【0034】比較例1 アクリロニトリル5モル、アクリル酸1モル、グリシジ
ルメタアクリレート0.3モル、イオン交換水760
g、ラウリル硫酸エステルソーダ7.5g、過硫酸ソー
ダ0.13gからなる混合物を反応させてなる水分散型
アクリルワニスを用いて電着を行った以外は実施例1と
同様にして、平形絶縁電線を得た。
【0035】上記で得られた実施例1、比較例1の平形
絶縁電線は、いずれもJIS C3003に準拠した耐
電圧試験により、規定の絶縁性を有するものであった。
これらの平形絶縁電線を、JIS C 3003に準拠
した温度指数評価法によって、耐熱性を評価したとこ
ろ、表1に示すような結果となった。
【0036】
【表1】
【0037】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、充分な絶縁性能を有し、かつ可及的に厚みが小
さく、さらに耐熱性にも優れる絶縁層を備える絶縁電線
を製造する方法を提供できる。このような本発明で得ら
れた絶縁電線は、従来実現できなかった耐熱性が要求さ
れる電子機器内や電子機器間における配線に好適に使用
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法によって得られた好ましい一
例の平形絶縁電線1を簡略化して示す、絶縁電線の長手
方向に対して略垂直な方向における断面図である。
【図2】本発明の製造方法の電着工程において用いら
れる装置を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 平形絶縁電線 2 導体 3 絶縁層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮下 芳次 兵庫県尼崎市東向島西之町8番地 三菱電 線工業株式会社内 Fターム(参考) 5G305 AA02 AB01 AB24 BA22 CA21 CA38 DA22 5G325 KA05 KC01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリイミド樹脂とフッ素樹脂と電荷付与
    剤とを水分散してなる水分散型樹脂エマルジョンを導体
    上に電着し、乾燥、焼付けすることによって絶縁層を形
    成することを特徴とする絶縁電線の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の方法で製造されたもの
    である絶縁電線。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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