JP7125319B2 - 銀被覆樹脂粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
前記無電解めっき中、銀の析出量100%に対して前記銀が50%以上90%以下析出したときに、前記無電解めっき液の温度をめっき開始時の摂氏表示温度(以下、単に「めっき開始時の温度」という。)の1/3以下の温度に1℃/秒以上の速度で冷却することを特徴とする銀被覆樹脂粒子の製造方法である。
まず、本実施形態の銀被覆樹脂粒子について説明する。図1(a)に示すように、本実施形態の銀被覆樹脂粒子10は、コア粒子としての樹脂粒子11と、この樹脂粒子の表面に形成された銀被覆層12とから構成される。銀被覆層12は、コア粒子表面にこの表面に形成された平均結晶子径が400nm以下の微細銀粒子からなるベース層12aと、このベース層12aから互いに間隔をあけて突出して形成された銀粒子からなる複数の硬質突出部12b及びコア粒子表面から互いに間隔をあけて突出して形成された銀粒子からなる複数の硬質突出部12cとを有する。硬質突出部12b、12cの平均結晶子径は、600nm以上5000nm以下である。
この平均結晶子径は、以下のようにして求めた。まずカーボン製試料台に振りかけた銀被覆樹脂粒子10を、FIB(集束イオンビーム装置)を用いて約100 nmの厚みまで断面露出加工した試料を作製した。次に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面露出した試料中の銀/樹脂粒子界面における断面形状を、10個の銀被覆樹脂粒子10について、樹脂粒子11の表面5000nmの範囲で、銀被覆層12の全体を重複なく観察できるように、複数に分けて観察し、ベース層12aの結晶方位分布を取得した。結晶方位分布の取得については、以下のように実施した。透過型電子顕微鏡(TEM)に付属する結晶方位解析装置を用いて、表面研磨面の法線方向に対して0.5度~1.0度に傾けた電子線をPrecession(歳差運動)照射しながら、電子線でスキャンし、連続的に電子回折パターンを取り込み、個々の測定点の電子回折パターンを取得した。なお、本測定に用いた電子回折パターンの取得条件は、加速電圧200kV、カメラ長20cm、ビームサイズ2.2nmで、測定ステップは5.0nmである。
得られた個々の測定点の電子回折パターンを、立方晶の任意の方位に対してあらかじめ計算した電子回折パターンと比較し、最も良くマッチした結晶方位をその測定点の結晶方位とした。
得られた結晶方位のうち、最小粒界角度を5度とし、結晶子サイズが5nm以下であるものをノイズとして除去し、結晶方位分布が識別された画像を出力することで、結晶方位分布が識別された画像を得た。
得られた画像についてソフトウェア「imageJ」を用いて結晶子径を測定した。具体的には、以下のように測定した。まず、観察画像のスケールに合わせて、ソフトウェア中の計測スケールを設定する。次に、上述した方法で得られた、結晶方位分布が識別された画像から判定される結晶粒界を基に結晶子を判定し、その観察画像中の全ての結晶子について、それぞれの結晶子の結晶粒界の任意の2点を結んだ線分のうち、最も長さが大きくなるときの線分の長さをソフトウェアで計測し、これをその結晶子の結晶子径とした。なお、これはフェレー径に相当する。更に、測定した全ての結晶子径の平均値を算出し、この値をベース層12aの平均結晶子径とした。
本実施形態の銀被覆樹脂粒子の製造方法は、銀塩、銀錯体化剤、pH調整剤及び還元剤を含む無電解めっき液を用いてコア粒子となる樹脂粒子の表面に銀被覆層を形成する方法である。
(1)銀錯体化剤、還元剤及びpH調整剤を含む水溶液中に錫吸着処理後の樹脂粒子を浸漬し銀塩水溶液を滴下する方法。
(2)銀塩、銀錯体化剤を含む水溶液中に錫吸着処理後の樹脂粒子を浸漬し還元剤及びpH調整剤を含む水溶液を滴下する方法。
(3)銀塩、銀錯体化剤、還元剤及びpH調整剤を含む水溶液中に錫吸着処理後の樹脂粒子が分散された樹脂スラリーを滴下する方法。
(4)錫吸着処理後の樹脂粒子が分散された樹脂スラリーに対して、銀塩及び銀錯体化剤を含む水溶液と、還元剤及びpH調整剤を含む水溶液とを同時に滴下する方法。
本実施形態の銀被覆樹脂粒子10は、導電性フィラーとして優れており、特に、導電性接着剤、導電性フィルム(シート)、導電性ゴム(エラストマー)、導電性粘着剤、放熱シートや放熱グリス等のTIM(Thermal Interface Material)材料、又は導電性スペーサなどの導電性材料の導電性フィラーとして最適に適用できる。
導電性接着剤は、等方性の導電性接着剤(ICA:Isotropic Conductive Adhesive)と異方性の導電性接着剤(ACA:Anisotropic Conductive Adhesive)に区分される。また、バインダの形態によってペースト状、フィルム状、インク状の形態を有する。等方性の導電性接着剤は、バインダ硬化時にバインダが収縮することで、縦方向、横方向、斜方向ともにフィラーが互いに接触し、これにより接続したい導電物とフィラーが接触して導電性が得られる。等方性の導電性接着剤にてシートを形成することも可能である。異方性の導電性接着剤は、バインダ中にフィラーが分散していて接続したい導電物同士の間に異方性の導電性接着剤を挟み込む。これを縦方向に加圧することで、接続したい導電物の間のフィラーと接続したい導電物が縦方向に接触し導電性が得られる。一方、加圧されていない部分は絶縁物であるバインダを介してフィラー同士が横方向に配置され、互いに接触しないので導電性は得られない。
導電性フィルムとしては、フィルム状に成形された異方性又は等方性の導電性フィルムがある。導電性フィルムは、先ず銀被覆樹脂粒子が絶縁性のバインダ樹脂中に分散された樹脂組成物を作製し、次いでこの樹脂組成物をPET等の支持フィルムの表面に塗布することにより作製される。この樹脂組成物は銀被覆樹脂粒子と絶縁性のバインダ樹脂とを遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して調製される。導電性フィルムでは、支持体フィルム上で絶縁性のバインダ樹脂中に銀被覆樹脂粒子が均一に分散する。導電性フィルムにおける絶縁性のバインダ樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの樹脂又はそれらの混合物を主成分として含む樹脂組成物が挙げられる。導電性フィルムにおける樹脂組成物中の銀被覆樹脂粒子の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダ樹脂100質量部に対して0.5~90質量部の範囲内が好ましい。
導電性ゴムとしては、シート状や直方体状に成形された導電性ゴムがあり、放熱シートや導電コネクタとして使用できる。導電性ゴムは、まずバインダゴムと、加硫剤と、銀被覆樹脂粒子とを二軸ロール等を用いて混練し、次いで加熱プレス機や乾燥機を用いて加熱や加圧を実施することにより加硫および成型することで作製される。導電性ゴムにおけるバインダゴムとしては、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。導電性ゴムにおける組成物中の銀被覆樹脂粒子の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダゴム100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
導電性粘着剤としては、シート状や直方体状に成形された導電性粘着剤又は導電性ゲルがあり、電気接点材料、放熱シート及び電極として使用できる。導電性粘着剤は、先ず銀被覆樹脂粒子が絶縁性のバインダとなる粘着剤中に分散された粘着性組成物を作製し、次いでこの粘着性組成物をPET等の支持フィルムの表面に塗布することにより作製される。導電性粘着剤におけるバインダ粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。導電性粘着剤における組成物中の銀被覆樹脂粒子の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、粘着剤100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
放熱グリスとしては、不揮発性の基油、銀被覆樹脂粒子を混合したものがあり、放熱材料として用いることができる。放熱グリスは基油と銀被覆樹脂粒子を遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して調製される。放熱グリスに用いられる基油としては、シリコーンオイル系基油、鉱油系基油、合成炭化水素系基油、エステル系基油、エーテル系基油及びグリコール系基油又はそれらの組合せなどを挙げることができる。放熱グリスにおける組成物中の銀被覆樹脂粒子の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、基油100質量部に対して0.5質量部~90質量部の範囲内が好ましい。
導電性スペーサは、液晶表示装置において、液晶物質を挟む上下2枚の基板の配線部分を電気的に上下に接続し、かつ基板の間隙を所定の寸法に保持して使用される。導電性スペーサは、先ず銀被覆樹脂粒子を熱硬化性樹脂や紫外光硬化型接着剤などの絶縁性のバインダ樹脂に添加した後、銀被覆樹脂粒子とバインダ樹脂とを遊星混合機や三本ロールミルのような混練機を用いて均一に混合して樹脂組成物を調製し、次いで上下2枚の基板の配線部分のいずれか一方又は双方に上記樹脂組成物を塗布して2枚の基板を貼り合わせることにより作製される。銀被覆樹脂粒子の含有量は、特に限定されず、用途などに応じて適宜決定されるが、バインダ樹脂100質量部に対して2質量部~10質量部の範囲内が好ましい。
錫吸着処理用として、塩化第一錫15g、塩酸15cm3を容量1dm3のメスフラスコを用いて水で1dm3に稀釈(メスアップ)した水溶液を27℃に保存した。塩酸は濃度35質量%の塩酸を用いた。
実施例1と同じ錫吸着処理用水溶液、無電解めっき液及び硝酸銀水溶液を用いて、実施例1と同様にして実施例2~8及び比較例2~7の銀被覆樹脂粒子を作製した。このときの樹脂粒子の平均粒径、無電解めっき液のめっき開始時の温度、冷却後の温度、急冷開始時の銀の析出量、めっき開始時の液温からの冷却した温度の冷却の程度及び冷却速度は、上記表1に示すように、それぞれ実施例1と変更するか、又は同じにした。
無電解めっき液の温度を開始時からめっき終了まで20℃に維持した以外、実施例1と同じ樹脂粒子、錫吸着処理用水溶液、無電解めっき液及び硝酸銀水溶液を用いて、実施例1と同様にして、銀被覆樹脂粒子を得た。この銀被覆樹脂粒子の実施例1と同じ顕微鏡により5千倍で撮影した写真図を図7に示す。
〔銀被覆樹脂粒子の銀被覆層の測定〕
実施例1~8及び比較例1~7で得られた15種類の銀被覆樹脂粒子について、上述した測定方法で、銀被覆層を構成するベース層の平均厚さ及び微細銀粒子の平均結晶子径と、硬質突出部の平均突出高さ及び平均結晶子径をそれぞれ測定した。その結果を樹脂粒子の種類と平均粒径とともに、以下の表2に示す。なお、表2の硬質突出部の平均結晶子径に関して、比較例1の平均結晶子径は、図2に示す突起部6aの基部の平均結晶子径を意味する。
実施例1~8及び比較例1~7で得られた15種類の銀被覆樹脂粒子を用いて、次の方法で異方導電性接着剤組成物を調製した後、離型処理したPETフィルムにバーコーターを用いて塗布し、フィルム状の異方導電性接着剤組成物を得た。樹脂粒子(コア粒子)の平均粒径が10μmの場合、異方導電性接着剤組成物の乾燥厚みは20μmであり、樹脂粒子(コア粒子)の平均粒径が20μmの場合、異方導電性接着剤組成物の乾燥厚みは40μmであった。これらの異方導電性接着剤組成物を用いて、150μm間隔で150μm幅の回路を形成させたガラスエポキシ基板とフレキシブル基板とを硬化温度190℃,加圧条件1.96MPa(20kg/cm2)、30秒間の条件で接続し、テスト用基板を作製した。この接続の接続抵抗及び接着強度を評価した。その結果を上記表2に示す。
得られた値の平均値を求めた。また上記接続の接着強度は、接続性能評価基板と同じ物を被着体として用い、90度剥離強度(N/10mm)を測定した。
11 樹脂粒子
12 銀被覆層
12a ベース層
12b、12c 硬質突出部
20 金属電極
20a 酸化絶縁膜
21 導電性接着剤
Claims (4)
- コア粒子としての樹脂粒子の表面に銀被覆層が形成された銀被覆樹脂粒子において、
前記銀被覆層が、前記コア粒子表面に形成された微細銀粒子からなるベース層と、このベース層から及び/又は前記コア粒子表面から間隔をあけて突出して形成された銀粒子からなる複数の硬質突出部とを有し、
前記ベース層の平均結晶子径が400nm以下であって、前記ベース層の平均厚さが30nm以上200nm以下であり、
前記硬質突出部の平均結晶子径が600nm以上5000nm以下であって、前記硬質突出部の前記ベース層からの平均突出高さが0.5μm以上3.0μm以下であることを特徴とする銀被覆樹脂粒子。 - 前記コア粒子の平均粒径が0.5μm以上110μm以下である請求項1記載の銀被覆樹脂粒子。
- 請求項1又は2記載の銀被覆樹脂粒子とバインダ成分とを含有する導電性接着剤。
- 銀塩、銀錯体化剤、pH調整剤及び還元剤を含む無電解めっき液を用いてコア粒子となる樹脂粒子の表面に銀被覆層を形成する銀被覆樹脂粒子の製造方法において、
めっき開始時の無電解めっき液の温度が15℃以上30℃以下であって、
前記無電解めっき中、銀の析出量100%に対して前記銀が50%以上90%以下析出したときに、前記無電解めっき液の温度をめっき開始時の摂氏表示温度の1/3以下の温度に1℃/秒以上の速度で冷却することを特徴とする銀被覆樹脂粒子の製造方法。
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