JP2002275464A - アルミン酸塩蛍光体,蛍光体ペースト組成物及びそれを用いた真空紫外線励起発光素子 - Google Patents

アルミン酸塩蛍光体,蛍光体ペースト組成物及びそれを用いた真空紫外線励起発光素子

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JP2002275464A
JP2002275464A JP2001080466A JP2001080466A JP2002275464A JP 2002275464 A JP2002275464 A JP 2002275464A JP 2001080466 A JP2001080466 A JP 2001080466A JP 2001080466 A JP2001080466 A JP 2001080466A JP 2002275464 A JP2002275464 A JP 2002275464A
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vacuum ultraviolet
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JP2001080466A
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Akihiro Oto
章裕 大戸
Tomohito Mizukami
友人 水上
Kohei Matsuda
康平 松田
Takayuki Hisamune
孝之 久宗
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Kasei Optonix Ltd
Original Assignee
Kasei Optonix Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成膜工程のベーキング処理による発光輝度の
劣化の少ない、高輝度の青色ないし青緑色発光のアルミ
ン酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物、及び真空紫外励
起発光素子を提供しようとするものである。 【解決手段】 Ba,Sr,Ca等のアルカリ土類金属元素と、
Eu2+,Mn2+等の元素と、Mg,Zn等の元素と、Al元素とを含
有するアルミン酸塩蛍光体において、拡散反射法による
蛍光体の赤外吸収スペクトルから波数3500cm-1における
クベルカムンク関数値[f(R)]ν3500と、波数1500cm-1
おけるクベルカムンク関数値 [f(R)]ν15 00を求め、そ
の比であるα値([f(R)]ν1500/[f(R)]ν3500)が15以
上であるアルミン酸塩蛍光体、該蛍光体を用いた蛍光体
ペースト組成物、及び該蛍光体からなる蛍光体塗布膜を
有する真空紫外線励起発光素子である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、波長が200nm
以下の真空紫外線で励起して青色ないし青緑色に発光す
るアルミン酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物、及び前
記蛍光体からなる蛍光膜を用いた真空紫外線励起発光素
子に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、Ar、Xe、He、Ne、Xe−
Ne等の希ガスをガラスなどの外囲器に封入し、外囲器
内に形成された蛍光膜を、希ガス放電によって放射され
る真空紫外線で励起して発光させる真空紫外線励起発光
素子の開発が盛んに行われている。
【0003】真空紫外線励起発光素子は、例えばスキャ
ナーの読みとり用光源である細管ランプとして使われて
いる。このランプは、管の内壁面に、真空紫外線により
励起され発光する蛍光体の蛍光膜が形成されており、管
内にはXe、Xe−Ne等の希ガスが封入されている。
そして、管の両端もしくは管の外面に一対の電極が付設
されている。電気エネルギーを印可すると、細管内に希
ガス放電が起こり、真空紫外線が放射される。
【0004】この真空紫外線により励起して可視光を発
する蛍光膜には(Y,Gd)BO3:Euなどの赤色蛍
光体、LaPO4 :Ce,Tbなどの緑色蛍光体、Ba
MgAl1017:Eu、(Ba,Sr)MgAl
1017:Eu,Mnなどの青色ないし青緑色蛍光体が単
独で又はそれらの3色蛍光体を混合して用いられる。
【0005】真空紫外線励起発光素子の他の例に、プラ
ズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)が
ある。PDPは原理的には、真空紫外線励起の細管ラン
プを小さくした3色のランプを平面状に並べたものであ
る。隔壁で区画された狭い放電空間(以下「セル」とい
う)がマトリックス状もしくはストライプ状に配置され
たものである。各セルには一対の電極が設けられ、各セ
ルの内側に蛍光体を塗布して蛍光膜が形成され、かつ各
セル内にはXe、Xe−Ne、Xe−Ne−He等の希
ガスが封入されている。電極から電気エネルギーを印加
すると、セル内に希ガス放電が起こり、真空紫外線が放
射される。この真空紫外線により蛍光体が励起されて可
視光を発し、この発光によって画像が表示される。
【0006】フルカラーPDPは、真空紫外線で高効率
に発光する、(Y,Gd)BO3 :Euなどの赤色蛍光
体、Zn2 SiO4 :Mn、BaAl1219:Mn、
(Ba,Sr,Mg)O・aAl2 3 :Mnなどの緑
色蛍光体、BaMgAl1017:Euなどの青色蛍光体
が使用されている。
【0007】真空紫外線励起発光素子の蛍光膜は、細管
ランプ、PDPなど適用される対象物により結合剤や溶
媒の種類が若干異なるものの、基本的には蛍光体とニト
ロセルロース、エチセルロースなどの結合剤を酢酸ブチ
ル、ブチルカルビトールなどの溶媒中で混合して泥状の
蛍光体ペースト組成物を調製し、これをそれぞれの真空
紫外線励起発光素子の細管やセルの内壁に塗布し、乾燥
した後、500℃前後の温度でベーキング処理して形成
するのが一般的である。
【0008】このように真空紫外線励起発光素子の製造
過程には、蛍光膜の形成に際し、蛍光体ペーストの塗
布、乾燥、ベーキング処理工程が必須となっている。こ
のベーキング処理工程において、蛍光体の発光輝度が低
下することが問題となっていた。このようなベーキング
処理工程における輝度低下は、特に真空紫外線励起発光
素子の蛍光膜用の代表的な青色ないし青緑色蛍光体であ
る、BaMgAl1017:Eu蛍光体、(Ba,Sr)
MgAl1017:Eu,Mn蛍光体など、Eu付活又は
EuとMnで共付活したアルミン酸塩蛍光体において顕
著であり、これらの蛍光体を素子化した真空紫外線励起
発光素子も、青色ないし青緑色発光成分の発光輝度の低
化を回避することができない。そこで、ベーキングによ
る輝度劣化の少ない高輝度の青色ないし青緑色蛍光体、
及び蛍光体ペースト組成物の開発が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の課題
を解消し、成膜工程のベーキング処理による発光輝度の
劣化の少ない、高輝度の青色ないし青緑色発光のアルミ
ン酸塩蛍光体、蛍光体ペースト組成物、及び真空紫外励
起発光素子を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、これらベ
ーキング処理による輝度劣化の大きい、Eu付活又はE
uとMnで共付活したアルミン酸塩蛍光体について詳細
に検討した結果、蛍光体の赤外線領域における特定波数
域での吸収と、水酸基(OH)によると見られる波数域
での吸収との比の値が、蛍光体のベーキング劣化と相関
関係にあり、この比の値が従来のものより大きいアルミ
ン酸塩蛍光体が、意外にもベーキング処理に対して顕著
な耐性を示すことを見いだした。このベーキング時の輝
度劣化の少ない蛍光体を用いて蛍光体ペースト組成物を
調製し、蛍光膜を形成すると、蛍光体粉体の発光輝度を
維持した高輝度の蛍光膜が得られ、良好な真空紫外線励
起発光素子が得られることがわかった。
【0011】本発明の構成は次のとおりである。 (1) Ba、Sr及びCaの群から選択される1種以上の
アルカリ土類金属元素と、二価ユーロピウム元素(Eu
2+)又は二価ユーロピウム(Eu2+)と二価マンガン
(Mn2+)の2つの元素と、Mg及びZnの群から選択
される1種以上の元素と、Al元素とを少なくとも含有
するアルミン酸塩蛍光体において、拡散反射法による蛍
光体の赤外吸収スペクトルから波数3500cm-1にお
けるクベルカムンク関数値〔f(R)〕ν3500と、波数
1500cm-1におけるクベルカムンク関数値〔f
(R)〕ν1500を求め、その比であるα値(〔f
(R)〕ν1500/〔f(R)〕ν3500)が15以上であ
ることを特徴とするアルミン酸塩蛍光体。 (2) 前記α値(〔f(R)〕ν1500/〔f(R)〕ν
3500)が22以上であることを特徴とする前記(1) 記載
のアルミン酸塩蛍光体。
【0012】(3) 上記蛍光体が、下記一般式で表される
蛍光体であることを特徴とする前記(1) 又は(2) 記載の
アルミン酸塩蛍光体。 (M1 1-x Eux )O・a(M2 1-y ,Mny )O・(5.5
−0.5ax)Al2 3 (式中、M1 は、Ba,Sr及びCaの群から選択され
る1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、M2 はMg
及びZnの群から選択される1種以上の元素を表し、a
値、x値及びy値は、それぞれ0<a≦2、0<x<
1、及び0≦y<1の条件を満たす数を表す。)
【0013】(4) 上記a値、x値及びy値が、それぞれ
0<a≦2、0.05≦x≦0.5、0≦y≦0.2の
条件を満たす数であることを特徴とする前記(3) 記載の
アルミン酸塩蛍光体。 (5) 上記a値、x値及びy値が、それぞれ1≦a≦2、
0.05≦x≦0.5、0≦y≦0.2の条件を満たす
数であることを特徴とする前記(3) 記載のアルミン酸塩
蛍光体。 (6) 上記a値、x値及びy値が、それぞれ1≦a≦2、
0.05≦x≦0.5、y=0の条件を満たす数である
ことを特徴とする前記(3) 記載のアルミン酸塩蛍光体。
【0014】(7) 結合剤を含む溶媒中に蛍光体を分散さ
せてなる蛍光体ペースト組成物において、前記蛍光体が
前記(1) 〜(6) のいずれか1つに記載のアルミン酸塩蛍
光体であることを特徴とする蛍光体ペースト組成物。 (8) 上記蛍光体ペースト組成物中のアルミン酸塩蛍光体
の含有率が5〜60重量%であることを特徴とする前記
(7) 記載の蛍光体ペースト組成物。
【0015】(9) 外囲器の内部に蛍光膜を有し、該外囲
器に希ガスを封入し、希ガス放電により蛍光体を励起し
て発光させる真空紫外線励起発光素子において、前記蛍
光膜が前記(7) 又は(8) 記載の蛍光体ペースト組成物に
より形成されてなることを特徴とする真空紫外線励起発
光素子。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は組成式がBa0.9 Eu0.1
MgAl1017であるアルミン酸塩蛍光体の赤外線吸収
スペクトルを例示したものであり、図1の曲線aは本発
明のBa0.9Eu0.1 MgAl1017蛍光体、曲線bは
従来のBa0.9 Eu0.1 MgAl10 17の赤外線吸収ス
ペクトルの例である。なお、図1の赤外線吸収スペクト
ルはNicolet社製赤外線分光光度計を用いて拡散
反射法により求めた拡散反射率からクベルカムンク関数
を算出して得られた蛍光体粉体の吸収スペクトルであ
り、図1において横軸は波数であり、縦軸はクベルカム
ンク関数で表された相対吸収強度である。
【0017】図1からも明らかなように、アルミン酸塩
蛍光体の吸収スペクトルを測定すると、波数がおよそ3
500cm-1の赤外域に弱い吸収を有し、この吸収は蛍
光体と結合しているOH基に起因したものであると考え
られる。従来のアルミン酸塩蛍光体はこの波数領域にお
ける吸収の程度が相対的に高い。同一組成の蛍光体にお
いても、この波数領域における吸収が相対的に低いアル
ミン酸塩ほど、ベーキング処理時の輝度劣化が少なく、
この蛍光体ペースト組成物を用いて蛍光膜にするときに
は、高輝度の蛍光膜を得ることができることを見いだし
て本発明を完成するに至った。
【0018】本発明の蛍光体は、構成成分として、B
a、Sr及びCaの群から選択された1種以上のアルカ
リ土類金属元素と、二価ユーロピウム元素(Eu2+
単独又は二価ユーロピウム元素(Eu2+)と二価マンガ
ン(Mn2+)の2つの元素と、Mg及びZnの群から
選択された1種以上の元素と、Al元素とを少なくと
も含有するアルミン酸塩蛍光体であって、従来のアルミ
ン酸塩蛍光体に比べて3500cm-1の波数領域におけ
る赤外線吸収強度が従来のアルミン酸塩蛍光体に比べて
小さいことが特徴である。
【0019】その中でも、下記一般式で表されるアルミ
ン酸塩が真空紫外線で励起した時の発光輝度の点で特に
優れている。 (M1 1-x Eux )O・a(M2 1-y ,Mny )O・(5.5
−0.5ax)Al2 3 (式中、M1 は、Ba,Sr及びCaの群から選択され
る1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、M2 はMg
及びZnの群から選択される1種以上の元素を表し、a
値、x値及びy値は、それぞれ0<a≦2、0<x<
1、及び0≦y<1の条件を満たす数を表す。)
【0020】上記一般式中のx値及びy値に関し、x値
は結晶構造的には0から1までの値を取り得るが、十分
な発光強度を得るためには0.05〜0.5の範囲にあ
ることが好ましい。x値が0.05未満であっても、
0.5を越えても得られる蛍光体の発光強度は低くなる
ので、上記の範囲が好ましい。また、y値も結晶構造学
的には0から1までの値を取り得るが、十分な発光強度
を得るためには0.2以下であることが好ましい。な
お、y=0の場合は、発光色が青色発光を呈するが十分
な発光輝度を得ることができる。そして、この蛍光体の
粉末X線回折に基づくリートベルト解析法による結晶解
析によれば、a値は2以下であればよいが、特に1〜2
の範囲の組成の時に、特に高輝度の蛍光体を得ることが
できる。
【0021】本発明のアルミン酸塩蛍光体は、従来から
知られているアルミン酸塩蛍光体と同様、これらの蛍光
体を構成する各金属の炭酸塩、酸化物等の化合物を原料
として化学量論的に所望の蛍光体組成となる割合で秤取
し十分混合してアルミナ坩堝等の耐熱容器に充填し、還
元性雰囲気中もしくは中性雰囲気中において1200〜
1700℃の温度で2〜40時間かけて1回もしくは複
数回焼成し、この焼成物に対し、分散、水洗、乾燥、篩
い分け等の蛍光体製造の際に通常施される蛍光体処理を
施すことによって製造することができる。焼成時には従
来のアルミン酸塩蛍光体製造の場合と同様に、原料混合
物中にフッ化物等のフラックスを混在させ焼成しても良
い。
【0022】なお、最終焼成段階における焼成雰囲気を
弱還元性もしくは中性の雰囲気で行うとことにより、蛍
光体表面にOH基の少ない蛍光体を安定して製造できる
ので特に好ましい。
【0023】本発明の蛍光体ペースト組成物は、本発明
のアルミン酸塩蛍光体を用いる以外は、従来の蛍光体ペ
ースト組成物と同様に調製することができる。即ち、蛍
光体と結合剤と溶媒、又は蛍光体と予め結合剤を溶解さ
せた溶媒とを混合し、これを十分に混練し、分散させる
ことによって製造することができる。
【0024】ここで用いる結合剤としては、エチルセル
ロース、ニトロセルロース、ポリエチレンオキサイド、
アクリル樹脂等を挙げることができる。また、ペースト
の粘度調整のために添加される溶媒は、水の他に、酢酸
ブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセ
テート、テルピオネール等の有機溶媒を挙げることがで
きる。
【0025】本発明の蛍光体ペースト組成物へのアルミ
ン酸塩蛍光体の添加量は、ペースト組成物の溶媒を除い
た全重量に対し、5〜60重量%の範囲が適当である。
これに溶媒を添加して粘度を調整する。この粘度は、塗
膜を所望の厚さに塗布するときの作業性、蛍光体ペース
ト組成物の塗布特性を確保する上で重要である。
【0026】図2は、組成式がBa0.9 Eu0.1 MgA
1017で表されるアルミン酸塩蛍光体の蛍光体ペース
ト組成物で形成した蛍光膜を例に、蛍光膜として用いた
蛍光体のα値と蛍光膜の(発光輝度/y値)との相関を
示したものである。即ち、波数3500cm-1における
赤外吸収の強さの異なる複数の蛍光体を作製し、それら
の蛍光体ペースト組成物を使用し形成した各蛍光膜の真
空紫外線励起下での発光輝度を測定し、また、各ペース
ト中に含まれるそれぞれの蛍光体の波数3500cm-1
におけるクベルカムンク関数値〔f(R)〕ν3500と、
波数1500cm-1におけるクベルカムンク関数値〔f
(R)〕ν1500を求め、その比であるα値([f
(R)]ν1500/[f(R)]ν3500)と、先の(発光
強度/y)との相関を示したものである。
【0027】即ち、図2において、横軸のα値は蛍光体
ペースト組成物中のアルミン酸塩蛍光体の、波数350
0cm-1の波長域での相対的な吸収の大小を評価する値
である。このα値は、図1に例示したスペクトルと同様
にして拡散反射法により各アルミン酸塩蛍光体粉末の赤
外線吸収スペクトルを測定して、クベルカムンクの関数
値〔f(R)〕と波数との相関曲線(粉体の吸収スペク
トル)を得た後、この曲線から水酸基に起因する吸収と
考えられる波数3500cm-1での吸収を表すクベルカ
ムンクの関数値〔f(R)〕ν3500と、基準値としての
相関性に優れた波数1500cm-1での吸収を表すクベ
ルカムンクの関数値〔f(R)〕ν1500をそれぞれ測定
し両者の比(〔f(R)〕ν1500/〔f(R)〕
ν3500)として定義したのがα値である。
【0028】なお、赤外線吸収スペクトルは、図1の測
定に用いたと同様のフーリエ変換赤外分光計である、自
記分光光度計(Nicolet社製、Avatar36
0)により、深さ約3mm、内径約10mmφの凹部を
有する円柱状セル内に蛍光体試料を充填し、セル内の試
料表面に光源からの光を入射させ、アルミニウムミラー
面を参照試料として拡散反射法により赤外線吸収スペク
トルを測定した。
【0029】また、蛍光膜は、各アルミン酸塩蛍光体を
用いて作成された各蛍光体ペースト組成物をガラス板上
に500μmの厚さで塗布し、これを120℃で30分
間乾燥させた後、更に500℃で30分間ベーキングし
て蛍光膜を形成した。この蛍光膜は、波長146nmの
真空紫外線を照射して発光させ、その時の発光輝度を求
めた。青色蛍光体の輝度はその発光色(色度点のy値)
に比例して大きく変わるため、発光色の異なる青色蛍光
体相互間の発光効率を比較する簡便な方法として輝度を
y値で割った値(輝度/y値)で比較することが一般に
行われている。
【0030】本発明の蛍光膜においても、発光輝度と共
にCIE表色系色度座標のy値を同時に求めておき、輝
度をy値で割った値(輝度/y値)を算出し、α値が
4.56のアルミン酸塩蛍光体(Ba0.9 Eu0.1 Mg
Al1017)からなる蛍光膜の(輝度/y値)を100
とした時の相対値で示した。図2における縦軸は各蛍光
膜の発光輝度をy値で除した値(輝度/y値)の相対値
とし、α値との相関関係を示した。
【0031】図2からわかるように、同一組成の蛍光体
であって赤外線吸収スペクトルにおける波数1500c
-1での吸収ピークに対する波数3500cm-1での吸
収ピークの相対強度が弱く、α値が4.56より大きな
アルミン酸塩蛍光体を用いた蛍光膜は、ベーキング処理
の影響が少なく、従来のアルミン酸塩蛍光体を用いた蛍
光膜よりも高い輝度の蛍光膜を得ることができ、特にα
値が22以上の大きなアルミン酸塩蛍光体を用いると、
ベーキングによる輝度劣化が少なく、より高輝度の蛍光
膜が得られる。
【0032】なお、図2には蛍光体として組成がBa
0.9 Eu0.1 MgAl1017のアルミン酸塩蛍光体につ
いて示したが、組成式が(M1 1-x Eux )O・a(M
2 1-y,Mny )O・(5.5−0.5ax)Al2
3 で表される、これ以外のアルミン酸塩蛍光体について
も、図2とほぼ同様の傾向を示し、α値が15以上のア
ルミン酸塩蛍光体の蛍光膜は、ベーキングによる輝度劣
化が抑制され、真空紫外線励起下での発光輝度がより高
いことが確認された。特に、α値が22以上のときは上
記の改善効果が一層高いことが確認された。
【0033】次に、本発明の真空紫外線励起発光素子に
ついて説明する。本発明の真空紫外線励起発光素子は、
上記の蛍光体ペースト組成物を用いて蛍光膜を作成する
ことを除いて、従来の真空紫外線励起発光素子と同様に
して作製することができる。即ち、本発明の真空紫外線
励起発光素子の1例であるPDPについてみると、ガラ
ス板などからなる背面板の片面に格子状に隔壁を設けて
複数のセルに区画し、複数のセルの各セルの隔壁及び背
面板上に蛍光体ペースト組成物を膜厚印刷などで塗布
し、ベーキングしてセル内に蛍光膜を形成する。ガラス
などの透明な前面板と背面板とを一定の間隙を隔てて対
向配置し、表示用の電極を設けてから前面板及び背面板
の周囲を封止して外囲器を形成し、その内部を排気しX
e、Ne−Xe等の希ガスを数千Paから数万Paの内
圧になるように封入して真空紫外線励起発光素子を得
る。
【0034】また、本発明の真空紫外線励起発光素子の
もう1つの例である細管ランプは、本発明のアルミン酸
塩蛍光体をニトロセルロース等の結着剤を含む酢酸ブチ
ル等の有機溶剤や、ポリエチレンオキサイド等を含む水
中に縣濁させて蛍光体ペースト組成物を調製し、ガラス
などの光に対して透明な細管の内壁に、流し塗り法など
によって塗布し、乾燥及びベーキング処理を施して蛍光
膜を形成する。その後、その両端、又は管壁を挟んだ細
管の内外部に電極を付設し、細管の内部に少量のArガ
ス、Xeガス等の希ガスを封入して完成する。
【0035】
〔実施例1〕
BaCO3 0.9 モル Eu2 3 0.05 モル 3MgCO3 ・Mg(OH)2 0.25 モル Al2 3 5.0 モル AlF3 0.004 モル 上記原料混合物をアルミナ坩堝に充填し、還元性雰囲気
中で最高温度1450℃で昇降温時間を含め24時間か
けて焼成した。次いで,得られた焼成粉を分散し、乾燥
し、篩い分けの処理を行い、組成式が(Ba0.9 Eu
0.1 )MgAl1017の実施例1のアルミン酸塩蛍光体
を得た。
【0036】この蛍光体の赤外線吸収スペクトルは、自
記分光光度計(Nicolet社製、Avatar36
0)を用いて測定した。このスペクトルから波数350
0cm-1におけるクベルカムンク関数値〔f(R)〕ν
3500対する、波数1500cm-1における〔f(R)〕
ν1500の比α値(〔f(R)〕ν1500/〔f(R)〕ν
3500)を求めたところ、α値は24.9であった。
【0037】次に、実施例1の蛍光体30重量%に、ブ
チルカルビトール10重量%及びエチルセルロース7重
量%の割合で加え十分に混練して実施例1の蛍光体ペー
スト組成物を調製し、この蛍光体ペースト組成物をガラ
ス板上に500μmの厚さで塗布し、120℃で30分
乾燥した後,空気中で500℃で30分間焼成して蛍光
体塗布膜を得た。得られた蛍光体塗布膜を146nmの
真空紫外線で励起して発光させたところ、その時の(発
光輝度/y)値は下記比較例1の蛍光体にかかる蛍光体
塗布膜の(発光輝度/y)値の154%であった。
【0038】〔実施例2〕実施例1の焼成粉に対して分
散、乾燥、篩い分けの各処理を行った後、さらに真空乾
燥機中で10時間処理し、冷却し、再度分散、篩い分け
の処理を施した以外は実施例1のアルミン酸塩蛍光体と
同様にして組成式が(Ba0.9 Eu0.1 )MgAl10
17の実施例2のアルミン酸塩蛍光体を得た。この蛍光体
の赤外線吸収スペクトルを実施例1と同様にして測定
し、α値を求めたところ、α値は23.8であった。
【0039】次に、実施例2のアルミン酸塩蛍光体を用
い、実施例1の蛍光体ペースト組成物と同様にして実施
例2の蛍光体ペースト組成物を調製し、さらに蛍光体塗
布膜を得た。得られた蛍光体塗布膜を146nmの真空
紫外線で励起して発光させたところ、その時の(発光輝
度/y)値は下記比較例1の蛍光体にかかる蛍光体塗布
膜の(発光輝度/y)値の164%であった。
【0040】〔実施例3〕実施例1のアルミン酸塩蛍光
体の製造における原料混合物に、蛍光体の重量に対して
1200ppmの割合で硫黄(S)を加えて、還元性雰
囲気中で最高温度1450℃で昇降温時間を含め24時
間かけて焼成した。次いで、得られた焼成粉に分散、乾
燥、篩い分けの各処理を行い、組成式が(Ba0.9 Eu
0.1 )MgAl1017の実施例3のアルミン酸塩蛍光体
を得た。実施例1と同様にしてこの蛍光体の赤外線吸収
スペクトルを測定し、α値を求めたところ、α値は2
0.0であった。
【0041】次に、実施例3のアルミン酸塩蛍光体を用
い、実施例1の蛍光体ペースト組成物と同様にして実施
例3の蛍光体ペースト組成物を調製し、さらに蛍光体塗
布膜を得た。得られた蛍光体塗布膜を146nmの真空
紫外線で励起して発光させたところ、その時の(発光輝
度/y)値は下記比較例1の蛍光体にかかる蛍光体塗布
膜の(発光輝度/y)値の138%であった。
【0042】〔比較例1〕実施例1の焼成条件である、
最高温度1450℃及び焼成時間24時間を、最高温度
1400℃及び焼成時間15時間に変更した以外は、実
施例1と同様にして組成式が(Ba0.9 Eu0.1 )Mg
Al1017の比較例1のアルミン酸塩蛍光体を得た。実
施例1と同様にしてこの蛍光体の赤外線吸収スペクトル
を測定し、α値を求めたところ、α値は4.56であっ
た。
【0043】次に、比較例1のアルミン酸塩蛍光体を用
い、実施例1の蛍光体ペースト組成物と同様にして比較
例1の蛍光体ペースト組成物を調製し、さらに蛍光体塗
布膜を得た。得られた蛍光体塗布膜を146nmの真空
紫外線で励起して発光させて(発光輝度/y)値を求
め、この値を100と定めて、実施例の蛍光体塗布膜の
(発光輝度/y)値の相対的基準値とした。
【0044】〔実施例4〕実施例1のアルミン酸塩蛍光
体を30重量%、酢酸ブチル45重量%、及びニトロセ
ルロース25重量%をを混練りして実施例4の蛍光体ペ
ースト組成物を作製した。次いで、実施例4の蛍光体ペ
ースト組成物を外径4mmのガラス管内壁に塗布し、1
20℃で60分乾燥した後、600℃で10分間ベーキ
ングし、ガラス管の内壁に蛍光体塗布膜を形成した。次
いで、ガラス管の両端にニッケルの電極を付け、管内を
真空に排気した後、Ne98%−Xe2%の混合希ガス
を50Torr封入し、実施例4の真空紫外線励起発光
素子(希ガスランプ)を得た。得られた真空紫外線励起
発光素子に交流電圧を掛けて発光させたところ、管の中
心部の(輝度/y値)は同一の条件で点灯し、下記比較
例2の真空紫外線励起発光素子の140%であった。
【0045】〔比較例2〕実施例1の蛍光体に代えて比
較例1のアルミン酸塩蛍光体を用い、それ以外は実施例
4と同様にして比較例2の真空紫外線励起発光素子(希
ガスランプ)を製造した。実施例4の真空紫外線励起発
光素子(希ガスランプ)と同一の条件で点灯した。この
管の中央部の(輝度/y値)を求め、この値を100と
定めて実施例4の(輝度/y値)の相対的基準値とし
た。
【0046】α値が24.9の実施例1の蛍光体を用い
た希ガスランプ(実施例4)の(発光輝度/y)は、α
値が4.56の蛍光体を用いた希ガスランプ(比較例
2)の140%という極めて高い輝度を示した。
【0047】
【発明の効果】本発明は、上記の構成を採用することに
より、アルミン酸塩蛍光体のベーキング時の輝度劣化を
大幅に抑制することができ、高輝度の真空紫外線励起発
光素子の提供を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はアルミン酸塩蛍光体粉体の赤外線吸収ス
ペクトルである。
【図2】図2はアルミン酸塩蛍光体からなる蛍光膜のα
値と(発光輝度/y値)との相関関係を示したグラフで
ある。
フロントページの続き (72)発明者 松田 康平 神奈川県小田原市成田1060番地 化成オプ トニクス株式会社内 (72)発明者 久宗 孝之 神奈川県小田原市成田1060番地 化成オプ トニクス株式会社内 Fターム(参考) 4H001 CA02 CA07 XA08 XA12 XA13 XA20 XA30 XA38 XA56 YA25 YA63 5C040 FA01 FA02 GG08 MA03 MA23 5C043 AA03 BB03 BB09 CC08 CD01 DD28 EB01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ba、Sr及びCaの群から選択される
    1種以上のアルカリ土類金属元素と、Eu2+元素又はE
    2+とMn2+の2つの元素と、Mg及びZnの群から選
    択される1種以上の元素と、Al元素とを少なくとも含
    有するアルミン酸塩蛍光体において、拡散反射法による
    蛍光体の赤外吸収スペクトルから波数3500cm-1
    おけるクベルカムンク関数値〔f(R)〕ν3500と、波
    数1500cm-1におけるクベルカムンク関数値〔f
    (R)〕ν1500を求め、その比であるα値(〔f
    (R)〕ν1500/〔f(R)〕ν3500)が15以上であ
    ることを特徴とするアルミン酸塩蛍光体。
  2. 【請求項2】 上記蛍光体が、下記一般式で表される蛍
    光体であることを特徴とする請求項1記載のアルミン酸
    塩蛍光体。 (M1 1-x Eux )O・a(M2 1-y ,Mny )O・(5.5
    −0.5ax)Al2 3 (式中、M1 は、Ba,Sr及びCaの群から選択され
    る1種以上のアルカリ土類金属元素を表し、M2 はMg
    及びZnの群から選択される1種以上の元素を表し、a
    値、x値及びy値は、それぞれ0<a≦2、0<x<
    1、及び0≦y<1の条件を満たす数を表す。)
  3. 【請求項3】 結合剤を含む溶媒中に蛍光体を分散させ
    てなる蛍光体ペースト組成物において、前記蛍光体が請
    求項1又は2記載のアルミン酸塩蛍光体であることを特
    徴とする蛍光体ペースト組成物。
  4. 【請求項4】 外囲器の内部に蛍光膜を有し、該外囲器
    に希ガスを封入し、希ガス放電により蛍光体を励起して
    発光させる真空紫外線励起発光素子において、前記蛍光
    膜が請求項3記載の蛍光体ペースト組成物により形成さ
    れてなることを特徴とする真空紫外線励起発光素子。
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