JP4178942B2 - 珪酸塩蛍光体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばテレビなどの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネル装置、および照明用途の蛍光管などの紫外線励起発光素子と、発光素子を形成する蛍光体の製造方法に関し、特に緑色の珪酸塩蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられているカラー表示デバイスにおいて、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)を用いたプラズマディスプレイ装置が、大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
【0003】
プラズマディスプレイ装置は、いわゆる3原色(赤色、緑色、青色)を加法混色することによりフルカラー表示を行っている。フルカラー表示を行うために、PDPには3原色である赤色、緑色、青色の各色を発光する蛍光体層が備えられ、この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発生する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0004】
上記の各色蛍光体に用いられる化合物としては、例えば、赤色を発光する(Y、Gd)BO3:Eu3+、Y2O3:Eu3+、緑色を発光するBaAl12O19:Mn2+、Zn2SiO4:Mn2+、青色を発光するBaMgAl10O17:Eu2+などの組合せが知られている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
通常、各色の蛍光体は電子線や紫外線などの励起エネルギーの種類、発光色や残光時間が適切になるように母体結晶およびその中に分散される発光センターである付活物質が選ばれる。例えば、酸化物系の蛍光体では一般的に母体となる金属の酸化物と付活物質となる金属の酸化物あるいは炭酸塩の粉体を混合し、1000℃以上の高温で焼成する固相法で合成されることも開示されている(例えば、非特許文献2)。この焼成により得られた蛍光体粒子を、結晶を破断して輝度低下が生じない程度に凝集粒子をほぐすための軽い粉砕を行った後、分級によって赤色蛍光体、緑色蛍光体は平均粒径が2μm〜5μm、青色蛍光体は平均粒径が3μm〜10μmの粒子に選別して使用している。
【0006】
また、母体材料を付活物質の塩を含む水溶液に分散させ、沈澱剤を加えて沈澱物を濾過する、いわゆる共沈法も開示されている(例えば、特許文献1)。
【0007】
【非特許文献1】
O plus E・1996年2月 No.195 p99〜p100
【非特許文献2】
蛍光体ハンドブック p219〜p225 オーム社参照
【特許文献1】
特開2002−194346号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
PDPの特性向上のためには、3色それぞれの蛍光体がバランス良く高輝度特性を保つ必要がある。しかし現在用いられている蛍光体の内、赤色蛍光体を除く青色蛍光体と緑色蛍光体で、例えば、青色蛍光体のBaMgAl10O17:Eu2+(以下、BAM:Euという)などのアルミン酸塩蛍光体は、パネル作成時の焼成工程やエージング時、さらにはパネルの駆動による輝度劣化(特に147nmの紫外線による輝度劣化)が大きいという課題がある。一方、緑色蛍光体としてのZn2SiO4:Mn2+(珪酸塩蛍光体)は輝度劣化は小さいが、初期輝度が低いといった課題がある。
【0009】
固相法による蛍光体合成は、現在、工業的に一般的な方法になっているが、蛍光体の生成過程では、原材料の加熱により蛍光体母体結晶が生成し、熱拡散で付活物質を母体結晶中に拡散させ、その母体結晶の一部の元素を、発光能を有する付活物質と置換して合成される。このため、固相法では高い焼成温度が必要になるとともに、母体結晶中に付活物質が十分に分散、置換せずに局在する不均一化が発生し、濃度消光といわれる発光強度の低下の起こることが知られている。このような母体結晶中での付活物質分布の不均一化は、蛍光体の合成方法、出発物質としての原材料の調整方法、材料の混合方法などで大きくばらつき、これが輝度劣化の直接原因になっている。
【0010】
一方、付活物質分布の改善につながる他の方法として共沈法がある。これは蛍光体構成材料のそれぞれを一旦、それらの金属イオンを含む水溶液とし、それらを溶液として混合した後、沈澱剤を用いて、各イオンを塩(水酸化物、炭酸塩、有機錯体など)のかたちで沈澱させ、その後に、焼成工程を経て蛍光体を作製する方法である。この方法は構成元素を分子レベルで混合できる最も優れた方法であり、共沈化合物から合成した蛍光体は、その特性が固相法における特性よりも格段に優れ、特に赤色の蛍光体であるY2O3:Eu3+など構成材料の比較的少ないものでは実用化されている。しかしながら、その構成元素が多種類にわたる蛍光体では、それらを構成する金属イオンの化学的性質の違いから、沈澱に際し塩生成のし易さに差を生じ、あるものは沈澱するが、一部は他の化合物となって溶液中に溶けて残るなど、仕込んだ材料に対して所定の化学量論比を有する純粋の蛍光体を得ることが難しく、また、収率も極めて悪いという課題がある。また、複数の金属イオンの混合溶液では、ある金属塩が沈澱した後、他の塩が沈澱するなど、本質的に完全な混合が得られ難く、液温の影響も受けるため複雑な化学反応による不安定さを増し、高コストな合成法の割には高輝度の蛍光体が得られないという課題がある。
【0011】
一般的に、発光強度が高く、輝度劣化に優れた、いわゆる高品位の蛍光体を得るには、構成元素が均一に分散し、結晶性が良好かつ粒子径が均一で、蛍光体組成結晶以外の不純物相を極力含まないものを再現性良く調整することが必要である。
【0012】
そこで、本発明は固相法における蛍光体の合成においても、付活物質を蛍光体の母体結晶に効率良く導入し、高輝度で、かつ輝度劣化の小さい珪酸塩蛍光体を得ると同時に、高輝度の紫外線励起発光素子を実現することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題に鑑み、蛍光体原材料のひとつに前もって付活物質を含浸、担持させることによって課題を解決するものである。
【0014】
すなわち、組成式がZn 2-X Si α O β :Mn X (ただし、Xは0.03≦X≦0.8、αは1≦α≦3、βは4≦β≦10なる条件を満たす数である。)珪酸塩蛍光体の製造方法において、シリカ粉末に前記珪酸塩蛍光体を構成するMnの金属の陽イオンを水溶液のかたちで含浸させて乾燥する工程と、前記金属の陽イオンを含浸させたシリカ粉末とZnとを混合し焼成する工程とを有する珪酸塩蛍光体の製造方法である。
【0015】
このような、含浸による合成方法によれば、界面からの物質移動に加えて、最初からシリカ粉末母体内部に付活物質が存在するため、生成される珪酸塩蛍光体内に取り込まれる付活物質の確率が飛躍的に向上し、蛍光体内部での付活物質分布をより均一化することができ、著しく高い発光輝度、かつ高寿命の蛍光体を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
まず、蛍光体と付活物質分布に関する固相法での問題点について図3を用いて説明する。図3(a)は、完全な母体結晶21に付活物質22を均一に分布させた理想の蛍光体の状態を示したものである。これに対し、図3(b)は固相法で得られる一般的な蛍光体の場合を示している。例えば、緑色蛍光体であるZn2-XSiαOβ:MnXを合成する際には、母体物質の原材料であるシリカ、酸化亜鉛と、付活物質22として炭酸マンガンとを化学量論的に適切な量を調整、混合して高温焼成している。この場合、実際の反応は個々の原材料粒子間の接触界面における熱拡散を基本としており、付活物質22が母体結晶21内部に拡散されるとともに、母体結晶21中のZnとMnとの置換反応を経て、Mnが母体結晶21中に取り込まれて有効な付活物質22となる。しかしながら、これら原材料同士は反応直前では殆どが酸化物であるため、それらの反応性が低く、母体結晶21中のZnとMnの置換反応が不十分となる。
【0021】
そのため、図3(b)に示すように、固相法では母体結晶21内での付活物質22の濃度分布は母体結晶21表面で極めて高く、そのばらつきも大きくなる。その結果、次のような課題を生ずる。すなわち、蛍光体結晶の表面に濃度消光による不活性膜を生じ、付活物質22の多くが発光に寄与しないのはもちろん、蛍光体励起用の真空紫外線をこの不活性膜が吸収するとともに、結晶内からの発光光の吸収を生じ、初期の発光効率が著しく低くする。また、蛍光体結晶表面での付活物質濃度が高すぎることは、その部分の結晶がアモルファス化しているため不安定となり、プラズマディスプレイ装置などに用いた場合、真空紫外線やイオン衝撃の影響を受け易く長時間の使用に対し輝度劣化の原因となる。さらに、固相法による高温、長時間焼成の結晶合成法では、蛍光体母体とは異なる不安定な不純物相23を形成し、これも輝度低下や輝度劣化の要因となる。
【0022】
本発明は、このような固相法での課題を解決する方法であり、蛍光体原材料のひとつに前もって付活物質を含浸、担持させることによって、課題を解決するものである。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態における蛍光体製造方法の概要を示すプロセスフロー図である。まずステップ1で、蛍光体の母体材料となる好ましくは純度4ナイン以上、かつ比表面積が数十m2/g以上を有するシリカを準備する。なお、純度に関しては、これが2ナイン〜3ナイン程度のものでは、例えばFe系の不純物などが多く含まれており、最終的に得られる蛍光体の発光強度や信頼性を著しく低下させるため好ましくない。また、比表面積に関しては、ステップ2の付活物質溶液濃度によって、どの大きさのシリカを使用するかの判断は必要であるが、付活物質を大量に母体シリカ中に含浸したい場合は比表面積の大きなものを用いる。
【0024】
次にステップ2で、付活物質の含浸を行う。本実施の形態における珪酸塩蛍光体の緑色蛍光体であるZn2-XSiαOβ:MnX蛍光体の場合は、まず、水に可溶する炭酸マンガンなどの塩を純水に溶解させる。ステップ1で述べたように、比表面積の大きさが数十m2/g程度であれば、濃度は1%〜4%程度が適当である。このような付活物質の水溶液にステップ1で準備した母体材料のシリカを加え、約2時間程度攪拌しながら、シリカに付活物質水溶液を含浸させてスラリーを作製する。
【0025】
ステップ3では、含浸後のスラリーを濾過する。粒子間の水分を取り切るためには吸引濾過が好ましい。次いでステップ4では、水分乾燥、塩根の分解除去のために乾燥および焼成を行う。水分乾燥には150℃〜300℃が望ましく、また塩根を分解除去するには350℃〜600℃程度の酸素雰囲気中で処理することが好ましい。状況に応じて、窒素雰囲気や水素などの還元ガス雰囲気を用いることも可能である。このステップ4までの工程によって、蛍光体母体材料であるシリカに対する付活物質の含浸は終了する。
【0026】
ステップ5以降は通常の固相法による蛍光体製造方法と同一であり、ステップ4までのステップで得られた付活物質が含浸されたシリカに、残りの母体材料であるZnの化合物を化学量論比に従って配合、混合した後、焼成すればよい。ただし焼成に先立ち、微調整として、新たに付活物質を補うこと、少量のフラックス剤を添加することも可能である。
【0027】
すなわち本発明は、比較的大きな比表面積を有し、粒子の表面とその内部まで多くの細孔を有するシリカなどの原材料に、付活物質となる物質を溶液のかたちで含浸させ、シリカなどの粒子内に付活物質を物理的、化学的に吸着させた後、乾燥、焼成したものを出発原料とし、酸化亜鉛などの他材料と混合している。
【0028】
また、図2には本発明の紫外線励起発光素子を用いた一例として、プラズマディスプレイ装置のプラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)についてその構成を示している。PDPは図2に示すように、基本的には前面板1と背面板2とで構成される。前面板1は、前面ガラス基板3と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極4およびバス電極5よりなる表示電極6と遮光膜層7と、表示電極6と遮光膜層7を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層9と、この誘電体層9上に形成されたMgO膜からなる保護層10とで構成されている。
【0029】
一方、背面板2は、背面ガラス基板11と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極12と、このアドレス電極12を覆う背面板誘電体層13と、その上に形成された隔壁14と、各隔壁14間に形成され紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層8とで構成されている。本実施の形態では、蛍光体層8を形成する緑色蛍光体として、前記の製造方法によって製造された珪酸塩蛍光体であるZn2-XSiαOβ:MnXを用いている。
【0030】
PDPは前面板1と背面板2とを、アドレス電極12と表示電極6とが直交するように対向させて気密封着し、隔壁14によって形成された放電空間15にNe−Xeなどの放電ガスを400Torr〜600Torrの圧力で封入したものである。表示電極6に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、その結果、発生した紫外線が各色蛍光体層8を励起し、各色蛍光体が赤色、緑色、青色に発光し、カラー画像が表示される。
【0031】
以下、本実施の形態に係る蛍光体製造の実施例について説明する。
【0032】
【実施例】
図1の製造方法に従って、珪酸塩蛍光体の緑色蛍光体を以下の要領で作製した。まず、炭酸マンガン(Aldrich製、5N)の2%水溶液を500g作製し、その水溶液中に比表面積が88m2/gのシリカ粉末100gを分散させる。次いで、常温で約2時間程度撹拌しながらシリカ中に炭酸マンガン水溶液を含浸させる。さらに、吸引濾過装置にて濾過した後、大気雰囲気、200℃の条件下で約2時間乾燥した。さらにその後、大気雰囲気、550℃の条件下で約2時間程度焼成した。図1のステップ5以降は、通常の固相法による蛍光体の製造方法であり、珪酸塩蛍光体の緑色蛍光体(Zn2-XSiαOβ:MnX)の化学量論比に従って、Zn化合物を配合し、大気雰囲気、1500℃の条件下で約2時間焼成後、1%水素雰囲気、1400℃で約2時間還元焼成した。次いで、焼成粉末に対して分散、洗浄、乾燥、篩い分けの処理を行った。なお、得られた蛍光体は組成分析の結果、上記組成式でX≒0.1であり、2価のマンガンで付活されたもので、不純物相は全く認められなかった。これを蛍光体サンプルAとする。
【0033】
続いて、原材料の内、比表面積が異なり、その値が20m2/gのシリカを用いた蛍光体を追加作製した。使用したシリカ以外は、基本的には上記製造方法と全く同じ条件である。しかし、加える硝酸マンガンの量は、それぞれが組成式でX≒0.1となるよう微調整した。すなわち、比表面積が88m2/gのシリカを用いた蛍光体をサンプルA、比表面積が20m2/gのシリカを用いた蛍光体をサンプルBとして作製した。
【0034】
さらに、比較例として、上記組成比に従って通常の固相法により蛍光体を調整した。結果的に、酸化マンガンの配合量がやや大きくなること以外は、全て実施例と同条件であり、このサンプルをR1とする。
【0035】
これらの蛍光体を用いて、図2に示すPDPに緑色蛍光体層を形成し、42インチ(リブピッチ150μmのHD−TV仕様)の大きさを持つプラズマディスプレイ装置を作製し、それぞれの蛍光体を用いた特性を評価比較した。なお、PDPへの封入ガスはNe−Xe(Xeは含有量5%)であり、封入圧力は500Torrである。図2に示す放電空間15で発生する147nmの真空紫外線が蛍光体を励起し、510nm〜520nmの緑色を発光する。
【0036】
これらのプラズマディスプレイ装置を連続駆動させ、輝度計を用いて輝度の経時変化を測定した。表1に本実施例で得られた各緑色蛍光体サンプルA、サンプルBのプラズマディスプレイ装置による緑色輝度出力(相対値)と駆動時間との相関を示す。
【0037】
なお、表1中では比較サンプルR1の初期輝度を100とし、それとの相対値で示している。
【0038】
【表1】
【0039】
輝度の初期値は、表1からわかるように、従来方式の比較サンプルR1の100に対して、本実施例のサンプルAでは約40%、サンプルBで約25%の輝度向上が得られている。このように、輝度の向上は出発原料であるシリカの比表面積に依存していることがわかる。すなわち、比表面積の大きいほうが、付活物質が十分に母体結晶中に拡散できているためと考えられる。このような珪酸塩蛍光体の緑色蛍光体は、蛍光体粒子径を小さくすることによって輝度向上を図るのが一般的であり、例えば2μmの粒子サイズを0.6μmにすると輝度が約10%上昇する。しかしながら、本発明の実施例によれば、その輝度向上率は40%と大きく、本発明の効果の大きいことがわかる。
【0040】
一方、連続駆動した場合の輝度劣化率についてみてみる。劣化率Rを次式にて定義した。R=〔(初期輝度−所定時間経過後の輝度)/初期輝度〕×100%一般的に、珪酸塩蛍光体の緑色蛍光体の紫外線照射による輝度劣化率は、アルミン酸塩蛍光体の緑色蛍光体などに比べて小さい。表1に示すように、サンプルA、サンプルBとも、連続駆動500時間後の輝度劣化率は、サンプルR1と同等か若干小さい。したがって、本発明の珪酸塩緑色蛍光体は、通常の固相法によって製造された蛍光体に比べ、輝度が格段に向上し経時劣化も少ないことがわかる。
【0041】
このように、本発明で飛躍的な輝度向上が得られたのは、含浸という方法によって、あらかじめ付活物質をシリカ母体材料中に導入しているため、付活物質であるMnを母体結晶中へ熱拡散させる必要性が軽減されたこと、結晶成長時にZnサイトへのMn原子の置換確率が向上したこと、さらには、結晶外縁に存在する不安定なMnの発光サイトを減らすことができたためと考えられる。
【0042】
一方、本発明の珪酸塩蛍光体とその製造方法、および紫外線励起発光素子はプラズマディスプレイ装置を対象として説明してきたが、紫外線励起発光素子として254nmの紫外線によって励起されて発光する素子、例えば蛍光灯などの蛍光体にも適用が可能である。
【0043】
蛍光灯は254nm紫外線の直接励起であるため、蛍光体自身の結晶性が不完全でも使用できる。そのため、従来の固相法による蛍光体が用いられているが、組成ずれから、発光スペクトルが比較的ブロードになり易いとともに、各発光サイトの輝度劣化の差が大きく、発光色のシフトが顕著になり易い。一方、本発明の製造方法の特徴は、前述の如く組成の均一化がなされることである。したがって、発光スペクトルはその輝線スペクトルが明確であり、各発光サイトの輝度劣化が少なく、発光色のシフトも小さくできる蛍光灯などの発光素子に対して最適な蛍光体を提供できる。
【0044】
なお、本発明は、珪酸塩蛍光体についてであるが、このような付活物質あるいは構成物質の金属の陽イオンを含浸法によって、母体結晶中に均一分散させる方法は、リン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩蛍光体、タングステン酸塩蛍光体など、あらゆる蛍光体に応用可能である。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、比較的大きな比表面積を有するシリカなどに付活物質を溶液含浸させ、これを出発原料に、他材料と混合し、固相法によっても従来のものに比べてより発光強度が高く、経時的な発光輝度低下の少ない珪酸塩蛍光体を得るとともに高輝度の紫外線励起発光素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における蛍光体製造方法の概要を示すプロセスフロー図
【図2】PDPの構成を示す図
【図3】蛍光体粒子への付活物質分布を示す模式図
【符号の説明】
1 前面板
2 背面板
3 前面ガラス基板
4 透明電極
5 バス電極
6 表示電極
7 遮光膜層
8 蛍光体層
9 誘電体層
10 保護層
11 背面ガラス基板
12 アドレス電極
13 背面板誘電体層
14 隔壁
15 放電空間
21 母体結晶
22 付活物質
23 不純物相
Claims (1)
- 組成式がZn 2-X Si α O β :Mn X (ただし、Xは0.03≦X≦0.8、αは1≦α≦3、βは4≦β≦10なる条件を満たす数である。)珪酸塩蛍光体の製造方法において、シリカ粉末に前記珪酸塩蛍光体を構成するMnの金属の陽イオンを水溶液のかたちで含浸させて乾燥する工程と、前記金属の陽イオンを含浸させたシリカ粉末とZnとを混合し焼成する工程とを有することを特徴とする珪酸塩蛍光体の製造方法。
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