JP2002239857A - 熱変形抑制機能を備えた工作機械 - Google Patents

熱変形抑制機能を備えた工作機械

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 工作機械のコラム構造体やイケール構造体の
各部の温度を略均一に保つことができる熱変形抑制機能
を備えた工作機械を提供する。 【解決手段】 コラム５の内部に空洞部５ａを形成し、
制御手段２７によって空洞部５ａに供給した液体を循環
ポンプ１９で循環し、工場内の室温の温度分布の差に応
じて液体の循環時間を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】本発明は、工具とワークとを
相対移動させてワークを加工する工作機械に関し、工作
機械のコラム構造体やイケール構造体の各部の温度を略
均一に保ち熱変形を抑制する工作機械に関するものであ
る。
【０００２】
【従来の技術】一般的に、工作機械が設置される工場内
には空調機が備えられており、例えば早朝にその空調機
を運転してからしばらくの間は、工場内の室温が変化し
徐々に所定温度に落ち着く。特に室温が変化している間
は、工場内の高い所と低い所でどうしても温度差が生じ
てしまう。また、空調機の吹き出し口や工場の窓や出入
口に面した側とその反対側では室温に温度差が生じてし
まう。そして、この温度差の大きさや温度分布の差は時
間とともに変化する。このような工作機械の設置雰囲気
の温度変化や温度分布の差により工作機械のコラム構造
体やイケール構造体もまた、前後左右上下の各部で温度
差が生じ各部の温度が均一にならず、倒れや反り等の熱
変形が発生してしまう。この状態でワークの加工を行っ
てはその加工精度に悪影響を及ぼしてしまう。
【０００３】コラム構造体の熱変形を抑制する技術とし
て、例えば次のような従来技術がある。第１の従来技術
として、特公昭６１−２６４５３号公報に開示の電気加
工装置がある。これは、コラム及びベッドの中空内部に
加圧下で液体を充満することにより、コラム及びベッド
の熱容量を大きくしてその熱的剛性を高めたものであ
る。第２の従来技術として、特開平１０−２４９６６０
号公報に開示の冷却機能付きコラムを有する工作機械が
ある。これは、コラムの四隅角部の中空部としての鋳抜
き穴に、クーリングユニット及びクーラントタンクを介
して冷却液を供給・回収して循環させるようにしたもの
である。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】第１の従来技術は、単
にコラム及びベッドの中空内部に液体を充満しただけの
ものなので、早朝、日中、夜間等の時間帯の違いによる
工場内の室温の温度変化や温度分布の差により、コラム
の各部は依然としてゆるやかに温度差が生じてしまう。
そのため、コラムの前後左右上下の各部の温度を均一に
することができず、倒れや反り等の熱変形を発生させ、
ひいてはワークの加工精度に悪影響を及ぼしてしまうと
いう問題がある。第２の従来技術は、コラムの中空内部
に冷却液供給回収手段で冷却した冷却液を常時供給・回
収して循環させるもので、装置が大掛かりなものになる
という問題がある。しかも、加工を行わないときでも常
に冷却液を供給・回収して循環させることとなり、エネ
ルギを余計に消費してしまうという問題がある。
【０００５】本発明は、上述の従来技術の問題点を解決
することを技術課題としており、工場内の室温の温度変
化や温度分布の差があっても、工作機械のコラム構造体
やイケール構造体の各部の温度を略均一に保つことがで
きる熱変形抑制機能を備えた工作機械を提供することを
目的とする。また、本発明は、工場内の室温の温度分布
の差に応じて、コラム構造体やイケール構造体に形成さ
れた空洞部に液体を供給して循環させる時間を変える制
御が可能な熱変形抑制機能を備えた工作機械を提供する
ことを目的とする。さらに、本発明は、エネルギの消費
を低減して、工作機械のコラム構造体やイケール構造体
の各部の温度を略均一に保つことができる熱変形抑制機
能を備えた工作機械を提供することを目的とする。
【０００６】
【課題を解決するための手段】上述の目的に鑑みて、本
発明は、工作機械のコラム構造体やイケール構造体の内
部の空洞部に液体を供給して循環させ、工場内の室温の
温度分布の差に応じて液体循環手段を起動、停止して液
体の循環時間を制御するものである。
【０００７】本発明によれば、工具とワークとを相対移
動させて前記ワークを加工する工作機械において、前記
工作機械のコラム構造体の内部に液体を循環可能に形成
された空洞部と、前記空洞部に液体を供給して循環させ
る液体循環手段と、室温の温度分布の差があっても前記
コラム構造体の各部の温度を略均一に保つように、前記
液体循環手段を起動、停止して液体の循環時間を制御す
る制御手段と、を具備する熱変形抑制機能を備えた工作
機械が提供される。
【０００８】前記工作機械のテーブルに設けられ前記ワ
ークを取り付けるイケール構造体をさらに具備し、前記
イケール構造体はその内部に液体を循環可能に形成され
た空洞部を有し、液体を循環させて構成するようにして
もよい。
【０００９】
【作用】工作機械のコラム構造体やイケール構造体の各
部の温度を略均一に保つように、室温の温度分布の差に
応じてコラム構造体やイケール構造体の内部に形成され
た空洞部に液体を循環させる液体循環手段を起動、停止
して液体の循環時間を制御しているので、コラム構造体
やイケール構造体の各部の温度を略均一に保ち、倒れや
反り等の熱変形を抑制することができる。また、空調機
をＯＮしたばかりの早朝等の工場内の室温の温度変化が
大きい時間帯は、室温の温度分布の差が大きいので、液
体の循環を連続的に行い、空調機をＯＮしてしばらく時
間が経過して工場内の室温が比較的安定した時間帯は温
度分布の差が小さくなるので、液体の供給・循環を間欠
的に行うというような、その場その場の工場内の室温の
温度分布の差に応じた液体の供給・循環制御を行うこと
ができる。よって、エネルギの消費を低減して、コラム
構造体やイケール構造体の各部の温度を略均一に保ち、
倒れや反り等の熱変形を効率よくかつ効果的に抑制する
ことができる。このように本発明は、工作機械のコラム
構造体やイケール構造体の温度を室温に追従させるので
はなく、コラム構造体やイケール構造体の各部の温度を
略均一にするものである。
【００１０】
【発明の実施の形態】まず、図１を参照して、本発明の
熱変形抑制機能を備えた工作機械を説明する。ここでは
横形マシニングセンタに適用した場合の説明を行う。本
発明が適用される工作機械は、フライス盤、立形マシニ
ングセンタ、研削盤、旋盤、形彫放電加工機、ワイヤ放
電加工機等の工作機械であってもよい。
【００１１】横形マシニングセンタ１は、基台となるベ
ッド３と、ベッド３の後部をＺ軸方向（図１における左
右方向）へ移動するコラム５と、工具７を装着する主軸
９が回転可能に支持され、コラム５の前部をＹ軸方向
（図１における上下方向）へ移動する主軸頭１１と、ベ
ッド３の前部をＸ軸方向（図１の紙面と垂直方向）へ移
動するテーブル１３と、テーブル１３の上部に設けられ
ワーク１５が取り付けられるイケール１７とを主な機械
構成要素として構成されている。コラム５は、門形コラ
ム、ダブルコラム、シングルコラムという形態にはとら
われない。
【００１２】図１を参照すると、コラム５の側部の肉厚
部にコラム５の上部から下部にわたってかつその前部か
ら後部にわたって、液体を供給して循環するための空洞
部５ａが形成されている。ここでは、コラム５の剛性を
維持しつつ軽量化を図るためにコラム５の側部の肉厚部
に形成された鋳抜き穴を空洞部５ａとして利用してい
る。鋳抜き穴とは別に空洞部５ａを形成してもよく、コ
ラム５の前部から後部にわたって空洞部５ａを設けるの
ではなく、コラム５の四隅に設けるようにしてもよい。
また、コラム５の空洞部５ａには補強用のリブ５ｂが設
けられ、リブ５ｂに形成された複数の抜き穴５ｃを通っ
て空洞部５ａ全体に液体が供給・循環されるようになっ
ている。なお、コラム５の空洞部５ａには、コラム５の
上面に設けられた供給口（図示せず）から予め液体を供
給しその内部に貯留しておく。液体は油または防錆、防
腐処理された水が好ましい。
【００１３】コラム５の後部には、コラム５に形成され
た空洞部５ａに液体を供給して循環させる液体循環手段
としての循環ポンプ１９が設けられ、循環ポンプ１９に
は配管２１が接続され、コラム５の空洞部５ａの上部及
び下部にそれぞれ挿入される形で取り付けられ、コラム
５の空洞部５ａの下部から上部に向けて液体を供給・循
環するようになっている。循環ポンプ１９としては、発
熱の少ないものを用いるのが好ましい。
【００１４】コラム５と同様に、イケール１７の内部に
空洞部１７ａを形成して、イケール１７の空洞部１７ａ
に液体を供給して循環させる液体循環手段としての循環
ポンプや配管を設け、空洞部１７ａの内部に液体を循環
させるようにしてもよい。コラム５の液体循環手段とし
ての循環ポンプ１９を共用することも可能である。
【００１５】横形マシニングセンタ１の外部には、ＮＣ
プログラムを読み取り解釈して実行し、Ｘ，Ｙ，Ｚの各
軸の送り軸モータ（図１ではＺ軸の送り軸モータ２３の
みが図示されている）を駆動するＮＣ装置２５、循環ポ
ンプ１９の起動・停止を制御する制御手段２７、制御手
段２７に時間の情報を送出するタイマ２９が設けられて
いる。制御手段２７、タイマ２９は機械制御装置（図示
せず）の内部に設けられるのが好ましい。
【００１６】次に、図３を参照して、制御手段２７によ
る循環ポンプ１９の制御方法を説明する。ここでは、工
場内の室温が冷えている時期の早朝に工場内の空調機を
ＯＮしたときからの循環ポンプ１９の起動・停止の制御
方法について述べる。まず、早朝に空調機をＯＮしてか
らしばらくの間（図３におけるＡの時間帯、例えば１，
２時間）は、室温の温度変化の度合いが高く、かつ工場
内の高い所と低い所で室温にかなりの温度差がある。す
ると、コラム５の上部と下部で温度差が生じる。また、
工場の天井から調温された空気が吹き出し、コラム５の
高い所にあたる。そこで、循環ポンプ１９を連続的に運
転させ、コラム５の空洞部５ａの液体を頻繁に循環させ
ることにより、コラム５の各部の温度が略均一になるよ
うにする。ここで、何時から何時まで、どれだけの時
間、どれだけの周期で循環ポンプ１９を起動・停止する
かという時間の情報を予め実験的に求め、これらの情報
に基づいて制御手段２７は循環ポンプ１９の制御を行う
ようにしてもよい。
【００１７】空調機をＯＮしてからしばらくすると工場
内の室温が安定し、また室温の温度分布の差が小さくな
り（図３におけるＢの時間帯）、言い換えればコラム５
の上部と下部で温度差がほとんど無くなるので、循環ポ
ンプ１９を間欠的に、例えば２０分に１回１０分間運転
すればよい。また、イケール１７へのワーク１５の取付
・取外の段取り作業や昼休み等の機械休止時間中は、機
械の主要部の電源スイッチがＯＦＦされている。この場
合も循環ポンプ１９をより間欠的に、例えば１時間に１
回１０分間運転して、コラム５の空洞部５ａに液体を供
給して循環させ、コラム５の各部の温度を略均一にして
いる。これにより、加工再開時にコラム５の上部と下部
で温度差が無くなり、高精度な加工をすぐに行うことが
できる。
【００１８】次に、制御手段２７による循環ポンプ１９
の別の制御方法を説明する。図１に示すように、コラム
５の上部及び下部には温度センサ３１，３３がそれぞれ
取り付けられている。そして、上部の温度センサ３１と
下部の温度センサとの検出値の差が、例えば２℃を越え
たら循環ポンプ１９を連続運転し、１〜２℃なら２０分
に１回１０分間間欠運転し、１℃未満ならタイマ運転を
優先するようにして、コラム５の空洞部５ａの液体を循
環させ、コラム５の各部の温度を略均一にできる。
【００１９】空洞部５ａに供給・循環する液体は、例え
ば機械外部の液体温度制御装置で所定温度に自動制御さ
れたものでもよい。また、コラム５の空洞部５ａに供給
・循環した液体を機械外部のタンクに一旦回収して、そ
の回収された液体を液体温度制御装置を通して所定温度
に冷却してから空洞部５ａに供給して循環させるように
してもよい。
【００２０】
【発明の効果】以上説明した通り本発明によれば、工場
内の室温の温度変化や温度分布の差があっても工作機械
のコラム構造体やイケール構造体の各部の温度を略均一
に保つように、コラム構造体やイケール構造体の内部に
形成された空洞部に液体を供給して循環させるようにし
たので、熱容量が大きくなり、かつ各部の温度が略均一
になって、コラム構造体やイケール構造体の熱変形を抑
制することができる。これにより、工作機械の加工精度
の向上が実現する。また、工作機械のコラム構造体やイ
ケール構造体の内部に形成された空洞部に、最適な循環
時間で液体を供給して循環させるようにしたので、エネ
ルギの消費を低減して、コラム構造体やイケール構造体
の各部の温度を略均一に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の熱変形抑制機能を備えた工作機械を示
す一部分を断面にした側面図及び構成ブロック図であ
る。
【図２】工場内の室温の温度変化と循環ポンプの運転状
態との関係を示す線図である。
【符号の説明】
１…横形マシニングセンタ ５…コラム ５ａ…空洞部 ７…工具 １３…テーブル １５…ワーク １７…イケール １７ａ…空洞部 １９…循環ポンプ ２１…配管 ２７…制御手段 ２９…タイマ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 工具とワークとを相対移動させて前記ワ
    ークを加工する工作機械において、 前記工作機械のコラム構造体の内部に液体を循環可能に
    形成された空洞部と、 前記空洞部に液体を供給して循環させる液体循環手段
    と、 室温の温度分布の差があっても前記コラム構造体の各部
    の温度を略均一に保つように、前記液体循環手段を起
    動、停止して液体の循環時間を制御する制御手段と、 を具備することを特徴とした熱変形抑制機能を備えた工
    作機械。
  2. 【請求項２】 前記工作機械のテーブルに設けられ前記
    ワークを取り付けるイケール構造体をさらに具備し、前
    記イケール構造体はその内部に液体を循環可能に形成さ
    れた空洞部を有し、液体を循環させて構成した請求項１
    に記載の熱変形抑制機能を備えた工作機械。
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