JP2002120477A5 - - Google Patents
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【書類名】明細書
【発明の名称】カット紙用疑似接着用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】非剥離性疑似接着剤を基剤とし、微粒子充填剤を含有する疑似接着剤の層が、支持体シートの情報隠蔽面の少なくとも一部に形成され、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着されるカット紙用疑似接着用紙において、非情報隠蔽面に、平均分子量が100〜450のポリエチレングリコールとポリビニルアルコールを主成分とし、これらの重量割合が、10:90〜90:10とされ、固形分塗布量が0.1〜1.0g/m2の表面処理剤層が、前記情報隠蔽面の反対面に設けられていることを特徴とするカット紙用疑似接着用紙。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一時的に接着するが、必要時に容易に剥離できる機能を有し、枚葉で情報記録がなされる用途に適用されるカット紙用の疑似接着用紙に関するものである。さらに詳しく述べれば、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着される接着剤を、支持体の情報隠蔽面の少なくとも一部に塗布した、折り畳み疑似接着用紙、重ね合わせ疑似接着用紙、その他親展性を有する情報隠蔽用紙、親展性葉書、親展性封筒などとして好適なカット紙用疑似接着用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年は、通信、郵送などの連絡手段にて情報を伝達する量が多くなる一方で、個人情報など親展性を必要とする連絡手段が重要視され要望されている。
【0003】
また、郵便法の改正に伴い、親展性をもつ葉書システムが実用化され、普及し始めている。この親展性をもつ葉書システムは、個人情報などの各種情報が折り畳み内面に記載された往復葉書状の葉書を折り畳み、重ね合わせた部分を疑似接着して情報を隠蔽したのち、郵送し、受取人が疑似接着部分を剥離して隠蔽情報を読み取るシステムである。
【0004】
これら親展性を必要とする連絡手段には、たとえば会社が従業員に、銀行やクレジット会社が顧客に親展性を有する情報を連絡する場合、その親展性情報の漏洩防止、情報連絡の利便性、開封の容易性が大きな課題と残されている。
【0005】
従来、親展性を必要とする連絡手段を構成する場合、支持体上に熱可塑性樹脂層を設け、親展性の情報を印刷した後に、樹脂層同士を対向させて加熱接合させたり、感熱または感圧性の非剥離性接着剤を使用する方法にて親展性を得ていた。こうした加熱接合、感熱または感圧非剥離性接着剤による方法は、コンピュータ、印刷機を使用した大量処理が可能であり、特に一度に両面印刷が可能なカット紙を使用した高速処理が可能であることから、需要が増加している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、加熱接合、感熱または感圧非剥離性接着剤による接合は、上述の大量処理が可能である利点を有するものの、開封時に必要部分の破損を避けるためミシン目加工が必要なこと、開封時に切片が発生すること、さらに上記葉書システムに利用できないなどの問題点がある。
【0007】
これらの問題点を解消する手段として、第2種定型郵便物として郵送できるようにした情報積層体が提案されており、その一例が特開平4−59395号公報に開示されたものである。これは、基体シート面の少なくとも一部に、天然ゴム、合成ゴムなどのいわゆる非剥離性疑似接着剤と、その接着剤基剤に対して非親和性を示し、その剥離を可能とする微粒子充填剤とからなる疑似接着剤の層を設けたいわゆる疑似接着用紙によって形成されるものである。
【0008】
さらに、情報の隠蔽化が可能なようにする種々の葉書用紙が提案されている。この例として、例えば透明フィルムを介した粘着二つ折り接着葉書(特開昭64−16691号)や、接合部のエッジ部分の全域あるいは一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有する再剥離性の感圧接着性葉書(特開平2−289393号)等がある。これらを含め、従来の再剥離性を有する疑似接着性葉書は、再剥離性の接着剤の塗布を支持体の片面にのみ行っているため、疑似接着剤塗工後には疑似接着剤塗布面側へカールする挙動が生じ、疑似接着剤の非塗布面に水を塗布したり、加湿処理を行う等の煩雑な手間が必要であり、カット紙プリンターでの印字工程や印刷工程、その後の加工工程において、紙の水分変動によるカールが発生する現象が生じ、作業性の効率を妨げる問題がある。
【0009】
また、かかるカールを防止するために、支持体シートの両面に再剥離性の接着剤の塗布が行われている葉書用紙もあるが、過度の温度またまたは湿度条件下において、表裏が接着するブロッキングを発生したり、製造コストが高くなる問題がある。
【0010】
一方、これらの再剥離性の疑似接着性葉書は剥離面に隠蔽情報を設けることを目的とするが、支持体シート及び疑似接着剤層のみでは隠蔽情報の隠蔽力が不足する場合があり、それを補うために、不透明シートを接着面に介在させたり(実開平3−64770号)や地紋印刷加工を行なう(実開平3−116974号)必要がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、非剥離性疑似接着剤を基剤とし、微粒子充填剤を含有する疑似接着剤の層が、支持体シートの情報隠蔽面の少なくとも一部に形成され、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着されるカット紙用疑似接着用紙において、非情報隠蔽面に、平均分子量が100〜450のポリエチレングリコールとポリビニルアルコールを主成分とし、これらの重量割合が、10:90〜90:10とされ、固形分塗布量が0.1〜1.0g/m2の表面処理剤層が、前記情報隠蔽面の反対面に設けられていることを特徴とするカット紙用疑似接着用紙である。
【0012】
従って、本発明は、再剥離性の疑似接着性葉書の最大の目的である情報の隠蔽性を向上し、併せてカールの発生及びブロッキングを抑制し、再剥離性の接着剤が塗布されていない情報隠蔽面の反対面の印刷適性を改良したカット紙用疑似接着用紙の提供を行うものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は支持体シートの片面に疑似接着剤塗布層を有するカット紙用疑似接着用紙において、疑似接着剤が塗布されていない情報隠蔽面の反対面にポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールを主成分とする表面処理剤層を設けたカット紙用疑似接着用紙を提供するものである。
【0014】
表面処理剤層は、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールを主成分とし、必要に応じて消泡剤、耐水化剤、撥水剤、浸透剤、増粘剤、蛍光染料、染料、着色顔料等の添加剤を併用することができる。該カット紙用疑似接着用紙を作成する方法としては、まず、支持体シートの情報隠蔽面に疑似接着剤の塗布を行いながら、バックコートで、情報隠蔽面の反対となる面に、表面処理剤層を形成するのが望ましい。
【0015】
表面処理剤層を形成する場合のポリエチレングリコールとしては、平均分子量が100〜450であり、その固形分添加量として前記表面処理剤層の総固形分量に対して10〜90%(以下断りのない限り%は重量%を意味する)として添加することが好ましい。その固形分添加量が10%未満であると、ポリエチレングリコールの保湿効果が不十分であり、反対に90%を超えると、表面処理剤層の強度が低下し印刷が困難となるとともに、表面がベトツクという問題が発生するからである。
【0016】
より好ましい態様の下では、ポリエチレングリコールの固形分添加量が表面処理剤層の総固形分量に対して20〜40%とされ、ポリエチレングリコールの平均分子量が190〜210のものである。
【0017】
また、ポリエチレングリコールと混合使用され、表面処理剤層を支持体シートになじませる接着剤としては、ポリビニルアルコール、及びまたは変性ポリビニルアルコールを使用するが、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの共重合体ラテックスやカゼイン等の各種蛋白質、澱粉類、セルロース、などを併用することができる。
【0018】
なお表面処理剤中のポリエチレングリコール重量に対するポリビニルアルコール(接着剤)重量%は、10〜90重量%になるように調整するのが好ましい。ちなみに余りに少ないと表面処理剤層と支持体シートとの造膜性、接着性が悪くなりカール抑制効果が低く、逆に必要以上に多いとベタツキの発現、ブロッキング、印刷適性の低下の原因となる。
【0019】
上記表面処理剤の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗布されるが、塗布量は乾燥重量で0.1〜1.0g/m2の範囲で調整されるのが望ましい。
【0020】
ちなみに、0.1g/m2以下では、充分なカール抑制効果及び印刷適性を付与することができず、一方1.0g/m2以上はベタツキの発現の問題及び印刷適性の効果を得るには余りあり、コスト的にも不都合である。
【0021】
以上のようにして構成された表面処理剤層を設けることにより、片面のみの塗布時の乾燥縮みにより発生するカールの矯正が行え、さらにブロッキングを抑制し、印刷適性の改良がなされた再剥離性のカット紙用疑似接着用紙が得られる。
【0022】
本発明で用いられている非剥離性疑似接着剤としては、ラテックス、具体的には天然ゴム、合成ゴム等の従来通常の疑似接着剤に使用されているものの中から任意に選択して使用することができるが、特に天然ゴムを無硫黄加硫し、メタアクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタアクリル酸メチルをグラフト重合させて得られた天然ゴムラテックス、アクリル変性ゴムラテックス、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとの混合物が、耐ブロッキング性、耐経時劣化、インク着肉性等の点で好適である。
【0023】
また、本実施例における疑似接着剤層には、好ましくは、微粒子充填剤として、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤と、緩衝効果を有しない微粒子充填剤とを添加するのが望ましい。加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤は、外圧がかかるとその形状を変化させるため、疑似接着剤層に外圧がかかったとき、疑似接着剤層表面の凹凸が少なくなる。このため、疑似接着剤同士の接触面積が大きくなり、疑似接着剤層の接着力をさらに高める効果を発揮するが、一方で疑似接着用紙が剥離不能となったり支持体シートに印字された文字のブロッキングが発生するといった問題の原因となることがある。
【0024】
そこで、加圧に対して緩衝効果を有しない微粒子充填剤をも基剤に添加するのが望ましい。加圧に対して緩衝効果を有しない微粒子充填剤は、外圧がかかった場合でもその変形量が小さいので、この微粒子充填剤を添加した疑似接着剤層の表面粗さおよび接着剤同士の接着面積は、緩衝効果を有する微粒子充填剤の変化量に留まり、それ以上変化することがなく、したがって、外圧が大きくなった場合でも、接着力の向上を抑制することができる。
【0025】
これら加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤と緩衝効果を有しない微粒子充填剤とを疑似接着剤に添加して疑似接着剤を生成し、それらの添加量をそれぞれ適宜調整することによって、疑似接着剤層の接着力がある上限値付近までしか上がらないようにすることができる。したがって、加圧接着時にある程度大きな圧力によって加圧接着することによって、情報隠蔽用紙などとして使用される際の輸送時などにおける接着面剥離の問題は解消され、一方、疑似接着剤層の接着力が、一定の接着力以上とはならないため、上記した剥離不能やブロッキングといった問題が発生することはない。
【0026】
また、これらの微粒子充填剤は、緩衝効果を有するものと有しないものとの間で粒径および比表面積が異なる。したがって、疑似接着剤層に外圧がかかった場合でも、粒径が異なる微粒子充填剤が添加されているので、外圧により疑似接着剤層表面の凹凸が一様に変化するのを防止し、疑似接着剤層の接着力の変動を抑制することができる。一方、比表面積が異なる微粒子充填剤に対しては、疑似接着剤がその表面へ付着する量が異なるため、疑似接着剤層の接着力や剥離力を微細な領域にて調整することができる。
【0027】
さらには、緩衝効果を有しない微粒子充填剤として、表面に針状の突起が放射状に多数存在し、平均粒子径が1〜5μmである1次または2次凝集体を形成しているカルサイト系沈降性炭酸カルシウム、または、表面に針状の突起が放射状に多数存在し、平均粒子径が1〜5μmである2次凝集体を形成しているアラゴナイト系沈降性炭酸カルシウムを用いることにより、安定した接着力を得ることもできる。
【0028】
上記形状を有するカルサイト系1次または2次凝集炭酸カルシウム、またはアラゴナイト系2次凝集炭酸カルシウムは、その形状より、疑似接着剤を表面に付着させやすく、支持体表面で疑似接着剤を容易に保持する。また、その凝集体は、針状の突起が放射状に多数存在する形状を有する結晶構造であるため、加圧した際接着剤表層同士の間隙を凝集体の径にて保持することができる。したがって、このような沈降性炭酸カルシウムを用いた場合、疑似接着剤の接着力の調整が容易となり、しかも疑似接着剤の必要量を最少に抑えることも可能である。平均粒径が1μm未満だと、非緩衝効果は発現せず、反対に5μmを超えると、疑似接着力を低下させる。
【0029】
これら微粒子充填剤のうち、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤としては、スチレンビーズ、穀物澱粉、変性澱粉、合成微粒子シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられ、この中で特に好適に使用できるのが穀物澱粉、合成微粒子シリカである。穀物澱粉は、多孔性表面を有しないため、疑似接着剤の付着量が少なく、粒子径が2次凝集炭酸カルシウムと同等またはより大きく、粒子自体の弾性があるため、疑似接着力の調整を容易にするとともに、疑似接着剤の付着量が少ないため、ブロッキングを防止し、紙らしい手触りを得ることができる。穀物澱粉としては、その粒径が1〜30μm、好ましくは5〜20μmのものが好適に利用できる。なお、ここでいう炭酸カルシウムとは、前記緩衝効果を有しない1次または2次凝集炭酸カルシウム以外の炭酸カルシウムを指している。
【0030】
また、疑似接着剤、微粒子充填剤の両者に対して親和性を有する変成ポリビニルアルコール(以下PVAとも略称する。)を、疑似接着剤層に併用することによって、さらに確実に疑似接着剤層の接着力を正確に調整することができる。疑似接着剤、微粒子充填剤の両者に対して親和性を有する変性PVAとしては、カルボキシル基変性PVA、スルホン基変性PVA、アセトアセチル基変性PVA、カチオン基(4級アンモニウム塩)変性PVA、珪素含有PVAが用いることができるが、特に珪素含有PVAが好適である。珪素含有PVAは、各種無機微粒子充填剤と顕著な相互作用を有し、特に化学結合体を形成するため、疑似接着剤層を形成する際、微粒子充填剤との造膜性に優れ、その被膜は透明かつ強靱でバリヤー性にも優れているため、疑似接着剤との親和性も高く疑似接着剤の経時劣化防止、印刷適性向上が図られ、印字が対向面に転写され情報印刷面が汚れることもない。
【0031】
疑似接着剤層の配合は、疑似接着剤80〜100重量部に対して、加圧に対して非緩衝性を有する微粒子充填剤を10〜60部、より好ましくは20〜50重量部、加圧に対して緩衝性を有する微粒子充填剤を10〜250重量部、より好ましくは50〜150重量部、変性PVAを2〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の割合とするのが望ましく、疑似接着剤層の厚さは、5〜20μmとするのが望ましい。
【0032】
微粒子充填剤の配合量が前記範囲より少ないと、ブロッキングの問題が生じ、剥離不能あるいは剥離困難となることがある。特に、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤の配合量が少ないと問題が顕著に生じる。一方、前記範囲を超えると、疑似接着剤層の接着力が劣り、剥離が生じ易くなる。本発明の疑似接着用紙に用いられる疑似接着剤層においては、疑似接着剤と微粒子充填剤と変性PVAとの配合割合を適切に選ぶことが重要である。
【0033】
また、疑似接着剤層としては、均一な疑似接着面と印刷適性を得るために、ベントブレード、コンマ、リップまたエアーナイフ等による塗工を行い、疑似接着剤層表面を、約1〜10kg/cm2で加圧し、疑似接着剤層表面の過度の突出を平坦にすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明に用いられる支持体シートは、特に限定されるものではなく、たとえばセルロース繊維を主体とする上質紙や、各種合成紙など種々のものを用いることができる。
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」「%」は乾燥固形重量部%を示す。
【0036】
本発明に係る疑似接着用紙の一例としては次のようなものがある。すなわち、図1に示す二つ折り葉書および図2に示す一部折り畳みタイプの葉書は、支持体シート1の折り畳み内面側に疑似接着剤層2を形成し情報を印刷し、折り合わせて加圧接着するもので、いずれも疑似接着剤層2相互を重ね合わせて加圧接着するものである。3は隠蔽情報印刷面、4は宛名情報である。
【0037】
これらの例に掲げた用途以外にも、各種葉書、封書、報告書にも広く好適に使用されるものであり、疑似接着剤を支持体シートの一部のみに塗布したり、一部非塗布部を設けることで再剥離を容易にすることも可能である。本発明の疑似接着剤用紙は、折り畳み疑似接着用紙、重ね合わせ疑似接着用紙の他、親展性を有する情報隠蔽用紙、親展性葉書、親展性封筒などとして好適に適用される。
【0038】
<実験例>
次に、本発明に係る疑似接着用紙の実験例を示す。
(実験紙基材)
疑似接着剤として、天然ゴムを無硫黄加硫しメタアクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックスを用い、この疑似接着剤に、微粒子充填剤や耐水化剤などを添加したものを支持体シートの情報隠蔽面に塗布し実験紙基材Aを作成した。
(実施例1)
実験紙基材Aの疑似接着剤塗布反対面にポリエチレングリコール(以下PEGと略称する、「トーホーポリエチレングリコール200」東邦科学社製)と接着剤としてポリビニルアルコール(「PVA110」クラレ社製)を混合し、添加するPEGの平均分子量、固形分添加量を適宜に調整し、更に塗布量を適宜変更して、カット紙用疑似接着用紙を作成した。
(実施例2)
実験例1において、接着剤としてポリビニルアルコールに代えて、酸化澱粉(「エースA」王子コーンスターチ社製)100部を90℃の熱水に溶解し、希釈して固形分濃度5%にしたものを使用した。
その結果を表1に示す。
【0039】
各実施例の評価は以下の方法を用いた。
(湿度変化カール)
カールが見られない状態のサンプルを10cm×10cmに裁断し、平坦な支持台に置き、保管湿度を、50%〜80%〜50%〜20%〜50%と変化させ、各湿度における4片角端部の平坦支持台に対するカール変化量をスケールにて測定した。
<評価の目安>
○:カール変化量3mm未満 ほぼフラットで、そのまま疑似接着できるレベル。
△:カール変化量3mm以上、10mm未満 ややカールしているが、手で矯正することで、圧着可能なレベル。
×:カール変化量10mm以上、カールが著しく、圧着処理できないレベル。
(NIP印刷後カール)
富士ゼロックス社製「4660プリンター」にて、連続10,000枚の両面印字を行い、カールによる搬送不良トラブル回数を確認した。
<評価の目安>
○:トラブル回数0回 △:トラブル回数1〜4回 ×:トラブル回数5回以上
(印刷時の取られ)
印刷後のブランケット、ターンバー等への塗工層取られの有無を目視にて判定。
(印刷適性)
印刷時のインク乾燥性、ベタ印刷部の濃度均一性を目視にて判定。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、塗工量0.1〜1.0g/m2、PEGとPVA比率が10:90から90:10としたときにカール抑制効果が高く、さらに添加するPEGの平均分子量が100〜450の範囲内、特に190〜210の範囲内のときにカールの抑制効果がさらに向上した。
【0042】
【発明の効果】
以上詳説の通り、本発明によれば、カット紙用疑似接着用紙における情報隠蔽面の反対面に、表面処理剤層を設けることにより、片面疑似接着剤塗工において問題となるカールの発生を解消し、印刷適性をも向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
二つ折り葉書の説明図である。
【図2】
一部折り畳み葉書の説明図である。
【符号の説明】
1…支持体シート、2…疑似接着剤層、3…隠蔽情報印刷面、4…宛名情報。
【発明の名称】カット紙用疑似接着用紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】非剥離性疑似接着剤を基剤とし、微粒子充填剤を含有する疑似接着剤の層が、支持体シートの情報隠蔽面の少なくとも一部に形成され、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着されるカット紙用疑似接着用紙において、非情報隠蔽面に、平均分子量が100〜450のポリエチレングリコールとポリビニルアルコールを主成分とし、これらの重量割合が、10:90〜90:10とされ、固形分塗布量が0.1〜1.0g/m2の表面処理剤層が、前記情報隠蔽面の反対面に設けられていることを特徴とするカット紙用疑似接着用紙。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一時的に接着するが、必要時に容易に剥離できる機能を有し、枚葉で情報記録がなされる用途に適用されるカット紙用の疑似接着用紙に関するものである。さらに詳しく述べれば、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着される接着剤を、支持体の情報隠蔽面の少なくとも一部に塗布した、折り畳み疑似接着用紙、重ね合わせ疑似接着用紙、その他親展性を有する情報隠蔽用紙、親展性葉書、親展性封筒などとして好適なカット紙用疑似接着用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年は、通信、郵送などの連絡手段にて情報を伝達する量が多くなる一方で、個人情報など親展性を必要とする連絡手段が重要視され要望されている。
【0003】
また、郵便法の改正に伴い、親展性をもつ葉書システムが実用化され、普及し始めている。この親展性をもつ葉書システムは、個人情報などの各種情報が折り畳み内面に記載された往復葉書状の葉書を折り畳み、重ね合わせた部分を疑似接着して情報を隠蔽したのち、郵送し、受取人が疑似接着部分を剥離して隠蔽情報を読み取るシステムである。
【0004】
これら親展性を必要とする連絡手段には、たとえば会社が従業員に、銀行やクレジット会社が顧客に親展性を有する情報を連絡する場合、その親展性情報の漏洩防止、情報連絡の利便性、開封の容易性が大きな課題と残されている。
【0005】
従来、親展性を必要とする連絡手段を構成する場合、支持体上に熱可塑性樹脂層を設け、親展性の情報を印刷した後に、樹脂層同士を対向させて加熱接合させたり、感熱または感圧性の非剥離性接着剤を使用する方法にて親展性を得ていた。こうした加熱接合、感熱または感圧非剥離性接着剤による方法は、コンピュータ、印刷機を使用した大量処理が可能であり、特に一度に両面印刷が可能なカット紙を使用した高速処理が可能であることから、需要が増加している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、加熱接合、感熱または感圧非剥離性接着剤による接合は、上述の大量処理が可能である利点を有するものの、開封時に必要部分の破損を避けるためミシン目加工が必要なこと、開封時に切片が発生すること、さらに上記葉書システムに利用できないなどの問題点がある。
【0007】
これらの問題点を解消する手段として、第2種定型郵便物として郵送できるようにした情報積層体が提案されており、その一例が特開平4−59395号公報に開示されたものである。これは、基体シート面の少なくとも一部に、天然ゴム、合成ゴムなどのいわゆる非剥離性疑似接着剤と、その接着剤基剤に対して非親和性を示し、その剥離を可能とする微粒子充填剤とからなる疑似接着剤の層を設けたいわゆる疑似接着用紙によって形成されるものである。
【0008】
さらに、情報の隠蔽化が可能なようにする種々の葉書用紙が提案されている。この例として、例えば透明フィルムを介した粘着二つ折り接着葉書(特開昭64−16691号)や、接合部のエッジ部分の全域あるいは一部分が非エッジ部分より大きな剥離力を有する再剥離性の感圧接着性葉書(特開平2−289393号)等がある。これらを含め、従来の再剥離性を有する疑似接着性葉書は、再剥離性の接着剤の塗布を支持体の片面にのみ行っているため、疑似接着剤塗工後には疑似接着剤塗布面側へカールする挙動が生じ、疑似接着剤の非塗布面に水を塗布したり、加湿処理を行う等の煩雑な手間が必要であり、カット紙プリンターでの印字工程や印刷工程、その後の加工工程において、紙の水分変動によるカールが発生する現象が生じ、作業性の効率を妨げる問題がある。
【0009】
また、かかるカールを防止するために、支持体シートの両面に再剥離性の接着剤の塗布が行われている葉書用紙もあるが、過度の温度またまたは湿度条件下において、表裏が接着するブロッキングを発生したり、製造コストが高くなる問題がある。
【0010】
一方、これらの再剥離性の疑似接着性葉書は剥離面に隠蔽情報を設けることを目的とするが、支持体シート及び疑似接着剤層のみでは隠蔽情報の隠蔽力が不足する場合があり、それを補うために、不透明シートを接着面に介在させたり(実開平3−64770号)や地紋印刷加工を行なう(実開平3−116974号)必要がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決した本発明の請求項1記載の発明は、非剥離性疑似接着剤を基剤とし、微粒子充填剤を含有する疑似接着剤の層が、支持体シートの情報隠蔽面の少なくとも一部に形成され、通常では接着せず所定の条件が付与されると剥離可能に疑似接着されるカット紙用疑似接着用紙において、非情報隠蔽面に、平均分子量が100〜450のポリエチレングリコールとポリビニルアルコールを主成分とし、これらの重量割合が、10:90〜90:10とされ、固形分塗布量が0.1〜1.0g/m2の表面処理剤層が、前記情報隠蔽面の反対面に設けられていることを特徴とするカット紙用疑似接着用紙である。
【0012】
従って、本発明は、再剥離性の疑似接着性葉書の最大の目的である情報の隠蔽性を向上し、併せてカールの発生及びブロッキングを抑制し、再剥離性の接着剤が塗布されていない情報隠蔽面の反対面の印刷適性を改良したカット紙用疑似接着用紙の提供を行うものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は支持体シートの片面に疑似接着剤塗布層を有するカット紙用疑似接着用紙において、疑似接着剤が塗布されていない情報隠蔽面の反対面にポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールを主成分とする表面処理剤層を設けたカット紙用疑似接着用紙を提供するものである。
【0014】
表面処理剤層は、ポリエチレングリコール及びポリビニルアルコールを主成分とし、必要に応じて消泡剤、耐水化剤、撥水剤、浸透剤、増粘剤、蛍光染料、染料、着色顔料等の添加剤を併用することができる。該カット紙用疑似接着用紙を作成する方法としては、まず、支持体シートの情報隠蔽面に疑似接着剤の塗布を行いながら、バックコートで、情報隠蔽面の反対となる面に、表面処理剤層を形成するのが望ましい。
【0015】
表面処理剤層を形成する場合のポリエチレングリコールとしては、平均分子量が100〜450であり、その固形分添加量として前記表面処理剤層の総固形分量に対して10〜90%(以下断りのない限り%は重量%を意味する)として添加することが好ましい。その固形分添加量が10%未満であると、ポリエチレングリコールの保湿効果が不十分であり、反対に90%を超えると、表面処理剤層の強度が低下し印刷が困難となるとともに、表面がベトツクという問題が発生するからである。
【0016】
より好ましい態様の下では、ポリエチレングリコールの固形分添加量が表面処理剤層の総固形分量に対して20〜40%とされ、ポリエチレングリコールの平均分子量が190〜210のものである。
【0017】
また、ポリエチレングリコールと混合使用され、表面処理剤層を支持体シートになじませる接着剤としては、ポリビニルアルコール、及びまたは変性ポリビニルアルコールを使用するが、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系などの共重合体ラテックスやカゼイン等の各種蛋白質、澱粉類、セルロース、などを併用することができる。
【0018】
なお表面処理剤中のポリエチレングリコール重量に対するポリビニルアルコール(接着剤)重量%は、10〜90重量%になるように調整するのが好ましい。ちなみに余りに少ないと表面処理剤層と支持体シートとの造膜性、接着性が悪くなりカール抑制効果が低く、逆に必要以上に多いとベタツキの発現、ブロッキング、印刷適性の低下の原因となる。
【0019】
上記表面処理剤の塗工は、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ダイコーター等の一般的なコーターによって塗布されるが、塗布量は乾燥重量で0.1〜1.0g/m2の範囲で調整されるのが望ましい。
【0020】
ちなみに、0.1g/m2以下では、充分なカール抑制効果及び印刷適性を付与することができず、一方1.0g/m2以上はベタツキの発現の問題及び印刷適性の効果を得るには余りあり、コスト的にも不都合である。
【0021】
以上のようにして構成された表面処理剤層を設けることにより、片面のみの塗布時の乾燥縮みにより発生するカールの矯正が行え、さらにブロッキングを抑制し、印刷適性の改良がなされた再剥離性のカット紙用疑似接着用紙が得られる。
【0022】
本発明で用いられている非剥離性疑似接着剤としては、ラテックス、具体的には天然ゴム、合成ゴム等の従来通常の疑似接着剤に使用されているものの中から任意に選択して使用することができるが、特に天然ゴムを無硫黄加硫し、メタアクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックス、天然ゴムにメタアクリル酸メチルをグラフト重合させて得られた天然ゴムラテックス、アクリル変性ゴムラテックス、ゴムラテックスと保護コロイド系アクリル共重合エマルジョンとの混合物が、耐ブロッキング性、耐経時劣化、インク着肉性等の点で好適である。
【0023】
また、本実施例における疑似接着剤層には、好ましくは、微粒子充填剤として、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤と、緩衝効果を有しない微粒子充填剤とを添加するのが望ましい。加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤は、外圧がかかるとその形状を変化させるため、疑似接着剤層に外圧がかかったとき、疑似接着剤層表面の凹凸が少なくなる。このため、疑似接着剤同士の接触面積が大きくなり、疑似接着剤層の接着力をさらに高める効果を発揮するが、一方で疑似接着用紙が剥離不能となったり支持体シートに印字された文字のブロッキングが発生するといった問題の原因となることがある。
【0024】
そこで、加圧に対して緩衝効果を有しない微粒子充填剤をも基剤に添加するのが望ましい。加圧に対して緩衝効果を有しない微粒子充填剤は、外圧がかかった場合でもその変形量が小さいので、この微粒子充填剤を添加した疑似接着剤層の表面粗さおよび接着剤同士の接着面積は、緩衝効果を有する微粒子充填剤の変化量に留まり、それ以上変化することがなく、したがって、外圧が大きくなった場合でも、接着力の向上を抑制することができる。
【0025】
これら加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤と緩衝効果を有しない微粒子充填剤とを疑似接着剤に添加して疑似接着剤を生成し、それらの添加量をそれぞれ適宜調整することによって、疑似接着剤層の接着力がある上限値付近までしか上がらないようにすることができる。したがって、加圧接着時にある程度大きな圧力によって加圧接着することによって、情報隠蔽用紙などとして使用される際の輸送時などにおける接着面剥離の問題は解消され、一方、疑似接着剤層の接着力が、一定の接着力以上とはならないため、上記した剥離不能やブロッキングといった問題が発生することはない。
【0026】
また、これらの微粒子充填剤は、緩衝効果を有するものと有しないものとの間で粒径および比表面積が異なる。したがって、疑似接着剤層に外圧がかかった場合でも、粒径が異なる微粒子充填剤が添加されているので、外圧により疑似接着剤層表面の凹凸が一様に変化するのを防止し、疑似接着剤層の接着力の変動を抑制することができる。一方、比表面積が異なる微粒子充填剤に対しては、疑似接着剤がその表面へ付着する量が異なるため、疑似接着剤層の接着力や剥離力を微細な領域にて調整することができる。
【0027】
さらには、緩衝効果を有しない微粒子充填剤として、表面に針状の突起が放射状に多数存在し、平均粒子径が1〜5μmである1次または2次凝集体を形成しているカルサイト系沈降性炭酸カルシウム、または、表面に針状の突起が放射状に多数存在し、平均粒子径が1〜5μmである2次凝集体を形成しているアラゴナイト系沈降性炭酸カルシウムを用いることにより、安定した接着力を得ることもできる。
【0028】
上記形状を有するカルサイト系1次または2次凝集炭酸カルシウム、またはアラゴナイト系2次凝集炭酸カルシウムは、その形状より、疑似接着剤を表面に付着させやすく、支持体表面で疑似接着剤を容易に保持する。また、その凝集体は、針状の突起が放射状に多数存在する形状を有する結晶構造であるため、加圧した際接着剤表層同士の間隙を凝集体の径にて保持することができる。したがって、このような沈降性炭酸カルシウムを用いた場合、疑似接着剤の接着力の調整が容易となり、しかも疑似接着剤の必要量を最少に抑えることも可能である。平均粒径が1μm未満だと、非緩衝効果は発現せず、反対に5μmを超えると、疑似接着力を低下させる。
【0029】
これら微粒子充填剤のうち、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤としては、スチレンビーズ、穀物澱粉、変性澱粉、合成微粒子シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられ、この中で特に好適に使用できるのが穀物澱粉、合成微粒子シリカである。穀物澱粉は、多孔性表面を有しないため、疑似接着剤の付着量が少なく、粒子径が2次凝集炭酸カルシウムと同等またはより大きく、粒子自体の弾性があるため、疑似接着力の調整を容易にするとともに、疑似接着剤の付着量が少ないため、ブロッキングを防止し、紙らしい手触りを得ることができる。穀物澱粉としては、その粒径が1〜30μm、好ましくは5〜20μmのものが好適に利用できる。なお、ここでいう炭酸カルシウムとは、前記緩衝効果を有しない1次または2次凝集炭酸カルシウム以外の炭酸カルシウムを指している。
【0030】
また、疑似接着剤、微粒子充填剤の両者に対して親和性を有する変成ポリビニルアルコール(以下PVAとも略称する。)を、疑似接着剤層に併用することによって、さらに確実に疑似接着剤層の接着力を正確に調整することができる。疑似接着剤、微粒子充填剤の両者に対して親和性を有する変性PVAとしては、カルボキシル基変性PVA、スルホン基変性PVA、アセトアセチル基変性PVA、カチオン基(4級アンモニウム塩)変性PVA、珪素含有PVAが用いることができるが、特に珪素含有PVAが好適である。珪素含有PVAは、各種無機微粒子充填剤と顕著な相互作用を有し、特に化学結合体を形成するため、疑似接着剤層を形成する際、微粒子充填剤との造膜性に優れ、その被膜は透明かつ強靱でバリヤー性にも優れているため、疑似接着剤との親和性も高く疑似接着剤の経時劣化防止、印刷適性向上が図られ、印字が対向面に転写され情報印刷面が汚れることもない。
【0031】
疑似接着剤層の配合は、疑似接着剤80〜100重量部に対して、加圧に対して非緩衝性を有する微粒子充填剤を10〜60部、より好ましくは20〜50重量部、加圧に対して緩衝性を有する微粒子充填剤を10〜250重量部、より好ましくは50〜150重量部、変性PVAを2〜30重量部、より好ましくは5〜20重量部の割合とするのが望ましく、疑似接着剤層の厚さは、5〜20μmとするのが望ましい。
【0032】
微粒子充填剤の配合量が前記範囲より少ないと、ブロッキングの問題が生じ、剥離不能あるいは剥離困難となることがある。特に、加圧に対して緩衝効果を有する微粒子充填剤の配合量が少ないと問題が顕著に生じる。一方、前記範囲を超えると、疑似接着剤層の接着力が劣り、剥離が生じ易くなる。本発明の疑似接着用紙に用いられる疑似接着剤層においては、疑似接着剤と微粒子充填剤と変性PVAとの配合割合を適切に選ぶことが重要である。
【0033】
また、疑似接着剤層としては、均一な疑似接着面と印刷適性を得るために、ベントブレード、コンマ、リップまたエアーナイフ等による塗工を行い、疑似接着剤層表面を、約1〜10kg/cm2で加圧し、疑似接着剤層表面の過度の突出を平坦にすることが好ましい。
【0034】
なお、本発明に用いられる支持体シートは、特に限定されるものではなく、たとえばセルロース繊維を主体とする上質紙や、各種合成紙など種々のものを用いることができる。
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」「%」は乾燥固形重量部%を示す。
【0036】
本発明に係る疑似接着用紙の一例としては次のようなものがある。すなわち、図1に示す二つ折り葉書および図2に示す一部折り畳みタイプの葉書は、支持体シート1の折り畳み内面側に疑似接着剤層2を形成し情報を印刷し、折り合わせて加圧接着するもので、いずれも疑似接着剤層2相互を重ね合わせて加圧接着するものである。3は隠蔽情報印刷面、4は宛名情報である。
【0037】
これらの例に掲げた用途以外にも、各種葉書、封書、報告書にも広く好適に使用されるものであり、疑似接着剤を支持体シートの一部のみに塗布したり、一部非塗布部を設けることで再剥離を容易にすることも可能である。本発明の疑似接着剤用紙は、折り畳み疑似接着用紙、重ね合わせ疑似接着用紙の他、親展性を有する情報隠蔽用紙、親展性葉書、親展性封筒などとして好適に適用される。
【0038】
<実験例>
次に、本発明に係る疑似接着用紙の実験例を示す。
(実験紙基材)
疑似接着剤として、天然ゴムを無硫黄加硫しメタアクリル酸メチルと混合した天然ゴムラテックスを用い、この疑似接着剤に、微粒子充填剤や耐水化剤などを添加したものを支持体シートの情報隠蔽面に塗布し実験紙基材Aを作成した。
(実施例1)
実験紙基材Aの疑似接着剤塗布反対面にポリエチレングリコール(以下PEGと略称する、「トーホーポリエチレングリコール200」東邦科学社製)と接着剤としてポリビニルアルコール(「PVA110」クラレ社製)を混合し、添加するPEGの平均分子量、固形分添加量を適宜に調整し、更に塗布量を適宜変更して、カット紙用疑似接着用紙を作成した。
(実施例2)
実験例1において、接着剤としてポリビニルアルコールに代えて、酸化澱粉(「エースA」王子コーンスターチ社製)100部を90℃の熱水に溶解し、希釈して固形分濃度5%にしたものを使用した。
その結果を表1に示す。
【0039】
各実施例の評価は以下の方法を用いた。
(湿度変化カール)
カールが見られない状態のサンプルを10cm×10cmに裁断し、平坦な支持台に置き、保管湿度を、50%〜80%〜50%〜20%〜50%と変化させ、各湿度における4片角端部の平坦支持台に対するカール変化量をスケールにて測定した。
<評価の目安>
○:カール変化量3mm未満 ほぼフラットで、そのまま疑似接着できるレベル。
△:カール変化量3mm以上、10mm未満 ややカールしているが、手で矯正することで、圧着可能なレベル。
×:カール変化量10mm以上、カールが著しく、圧着処理できないレベル。
(NIP印刷後カール)
富士ゼロックス社製「4660プリンター」にて、連続10,000枚の両面印字を行い、カールによる搬送不良トラブル回数を確認した。
<評価の目安>
○:トラブル回数0回 △:トラブル回数1〜4回 ×:トラブル回数5回以上
(印刷時の取られ)
印刷後のブランケット、ターンバー等への塗工層取られの有無を目視にて判定。
(印刷適性)
印刷時のインク乾燥性、ベタ印刷部の濃度均一性を目視にて判定。
【0040】
【表1】
【0041】
表1から明らかなように、塗工量0.1〜1.0g/m2、PEGとPVA比率が10:90から90:10としたときにカール抑制効果が高く、さらに添加するPEGの平均分子量が100〜450の範囲内、特に190〜210の範囲内のときにカールの抑制効果がさらに向上した。
【0042】
【発明の効果】
以上詳説の通り、本発明によれば、カット紙用疑似接着用紙における情報隠蔽面の反対面に、表面処理剤層を設けることにより、片面疑似接着剤塗工において問題となるカールの発生を解消し、印刷適性をも向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
二つ折り葉書の説明図である。
【図2】
一部折り畳み葉書の説明図である。
【符号の説明】
1…支持体シート、2…疑似接着剤層、3…隠蔽情報印刷面、4…宛名情報。
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