JP2002114758A - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法 - Google Patents

2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生産性に優れる2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタンニトリルを製造する方法を提供すること。 【解決手段】 (A):3−メチルチオプロパナールを
塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させる工
程、(B):工程(A)で得られた反応混合物を2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と
水層とに分離する工程、および(C):工程(B)で分
離された油層に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチ
オブタンニトリルを硫酸存在下に加水分解反応させる工
程を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製
造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飼料添加物等とし
て有用な2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタン酸の製造方法として、3−メチルチオプロパナー
ルをシアンヒドリン化した後、加水分解させる方法が知
られている。例えば、米国特許第4912257号明細
書には、3−メチルチオプロパナールをピリジンの存在
下にシアン化水素酸と反応させた後、硫酸と反応させる
方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタンニトリル(3−メチルチオプロパナー
ルのシアンヒドリン)から2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタン酸への加水分解反応は、2−ヒドロキシ−4
−メチルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタンアミドへの水和反応と、2−ヒドロキ
シ−4−メチルチオブタンアミドから2−ヒドロキシ−
4−メチルチオブタン酸への加水分解反応とからなる
が、従来の方法では、上記水和反応の反応速度が十分で
ない。製品の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸
中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル含
量は、極力低減させる必要があるところ、上記水和反応
の反応速度が遅いと、反応時間を長くする必要が生じ、
生産性を損ねることとなる。本発明の目的は、上記問題
点を解決し、生産性に優れる2−ヒドロキシ−4−メチ
ルチオブタンニトリルを製造する方法を提供することに
ある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
の結果、3−メチルチオプロパナールとシアン化水素と
の反応を水の存在下に行った後、油水分離させ、得られ
た2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含
む油層を硫酸加水分解に付することにより、上記目的が
達成されることを見出し本発明を完成するに至った。す
なわち、本発明は、(A):3−メチルチオプロパナー
ルを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させる
工程、(B):工程(A)で得られた反応混合物を2−
ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層
と水層とに分離する工程、および(C):工程(B)で
分離された油層に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタンニトリルを硫酸存在下に加水分解反応させる
工程を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の
製造方法に係るものである。このうち、工程(A)と工
程(B)により2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン
ニトリルを製造する方法も新規であり、特に工程(B)
で油水分離操作を行うことにより、後の加水分解におけ
る反応速度を向上させる効果が奏される。そこで本発明
はまた、3−メチルチオプロパナールを塩基および水の
存在下にシアン化水素と反応させた後、2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに
分離することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタンニトリルを製造する方法にも係るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、原料として3−メチルチ
オプロパナールを用い、これを塩基および水の存在下に
シアン化水素と反応させることにより、2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタンニトリルを生成させる[工程
(A)]。原料の3−メチルチオプロパナールは、アク
ロレインにメチルメルカプタンを付加させることによ
り、調製することができる。
【0006】シアン化水素の使用量は、3−メチルチオ
プロパナール1モルに対して、通常1〜1.1モル、好
ましくは1.02〜1.08モルの範囲である。シアン
化水素として、シアン化水素の水溶液、すなわちシアン
化水素酸を用いてもよい。
【0007】3−メチルチオプロパナールとシアン化水
素との反応を、塩基の存在下に行うことにより、反応速
度を向上させることができる。塩基としては、例えば、
ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基や、炭酸
カリウム、アンモニアのような無機塩基が挙げられ、必
要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。塩
基の使用量は、3−メチルチオプロパナール1モルに対
して、通常0.001〜0.05モル、好ましくは0.
003〜0.01モルの範囲である。
【0008】3−メチルチオプロパナールとシアン化水
素との反応を、水の存在下に行うことにより、シアン化
水素の安定性や操作性を向上させることができる。この
ためには、水を上記3−メチルチオプロパナール、シア
ン化水素および塩基とは別に供給してもよいし、3−メ
チルチオプロパナールとしてその水溶液を用いてもよい
し、塩基としてその水溶液を用いてもよいし、シアン化
水素としてその水溶液を用いてもよい。水の使用量は、
3−メチルチオプロパナール100重量部に対して、通
常20〜200重量部、好ましくは30〜100重量部
の範囲である。
【0009】反応温度は、通常5〜40℃、好ましくは
10〜30℃の範囲であり、反応時間は通常0.5〜3
時間の範囲である。
【0010】3−メチルチオプロパナール、シアン化水
素、塩基および水の供給方法としては、例えば、3−メ
チルチオプロパナールおよび塩基を混合した中に、シア
ン化水素および水を供給してもよいし、3−メチルチオ
プロパナールの中に、シアン化水素、塩基および水を併
注してもよいし、4者を併注してもよい。4者を併注し
ながら、反応液を抜き出すことにより、反応を連続的に
行うことができる。
【0011】工程(A)で得られた反応混合物を、必要
に応じて、濾過、水分調整、pH調整等の後処理操作に
供した後、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニト
リルを含む油層と水層とに分離する[工程(B)]。該
油水分離操作を行うことにより、2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタンニトリルの水和反応速度を向上させる
ことができる。油水分離は、回分式で行う場合、通常、
静置することで行うことができるが、必要に応じて、遠
心分離により行ってもよい。
【0012】油水分離の温度は、操作性の観点から、通
常−5℃以上、好ましくは0℃以上であり、油層中の水
分低減の観点から、通常50℃以下、好ましくは30℃
以下の範囲である。油水分離の温度を下げることによ
り、さらに2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニト
リルの水和反応速度を向上させることができる。
【0013】工程(B)で得られた油層を、必要に応じ
て濃縮、蒸留等の後処理、精製操作に供した後、硫酸存
在下の加水分解反応に供することにより、該油層中に含
まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル
を2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸に変換する
ことができる[工程(C)]。2−ヒドロキシ−4−メ
チルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4−メチ
ルチオブタン酸への加水分解反応は、2−ヒドロキシ−
4−メチルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4
−メチルチオブタンアミドへの水和反応と、2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタンアミドから2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタン酸への加水分解反応とからな
り、通常、主に前者の反応を行う1段目反応と、主に後
者の反応を行う2段目反応の、2工程に分けて行う。
【0014】1段目反応は、通常、上記2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層を硫酸およ
び必要に応じて水と混合し、40〜70℃、1〜3時間
の範囲で行うことができる。1段目反応における硫酸の
使用量は、油層中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブ
タンニトリル1モルに対して、通常0.5〜1モル、好
ましくは0.6〜0.8モルの範囲であり、水の使用量
は、油層中の水を含めて、2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタンニトリル100重量部に対して、通常20〜
70重量部、好ましくは25〜50重量部の範囲であ
る。
【0015】2段目反応は、通常、上記1段目反応で得
られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを
含む反応液を水および必要に応じて硫酸と混合し、90
〜130℃、2〜6時間の範囲で行うことができる。2
段目反応における硫酸の使用量は、1段目反応で用いた
量を含めて、1段目反応で用いた油層中の2−ヒドロキ
シ−4−メチルチオブタンニトリル1モルに対して、通
常0.5〜1モル、好ましくは0.6〜0.8モルの範
囲であり、水の使用量は、1段目反応で用いた量を含め
て、1段目反応で用いた油層中の2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタンニトリル100重量部に対して、通常
40〜180重量部、好ましくは50〜140重量部の
範囲である。
【0016】得られた反応液から2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタン酸を取り出す方法としては、例えば、
反応液を、必要に応じてアンモニア等の塩基で中和した
後、油水分離させてもよいし、有機溶媒で抽出してもよ
い。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れらに限定されるものではない。なお、実施例におい
て、水分の分析は、カールフィッシャー法で行った。ま
た、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル、
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドおよび2
−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の分析は、液体
クロマトグラフィーにより行った。
【0018】参考例1 連続式反応器に、3−メチルチオプロパナール、30%
シアン化水素水溶液および49%炭酸カリウム水溶液
を、3−メチルチオプロパナール:シアン化水素:炭酸
カリウム=1:1.05:0.005のモル比で供給
し、25℃にて滞留時間1時間で反応させた。得られた
反応液は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニト
リルを含む油層と水層からなり、33.3%の水を含ん
でいた。
【0019】実施例1〜4 参考例1で得られた反応液を表1に示す温度で油層と水
層とに分離した。油層は、表1に示す濃度の水を含む2
−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルであっ
た。
【0020】
【表1】
【0021】実施例5 80%硫酸42.9g(硫酸0.35モル)の中に、5
0℃にて、実施例1で得られた油層82g(2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を1
時間かけて滴下した後、50℃にて3時間保持した(1
段目反応)。次いで、水55gを加え、3時間還流(1
10℃)させた(2段目反応)。2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)および
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率(%)
の経時変化を表2に示す。
【0022】実施例6 実施例5において、実施例1で得られた油層82gの代
わりに実施例3で得られた油層86.3g(2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を滴
下し、水55gの代わりに水50.7gを加えた以外
は、実施例5と同様の操作を行った。2−ヒドロキシ−
4−メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)お
よび2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率
(%)の経時変化を表2に示す。
【0023】比較例1 実施例5において、実施例1で得られた油層82gの代
わりに参考例1で得られた反応液98.4g(2−ヒド
ロキシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を
滴下し、水55gの代わりに水38.6gを加えた以外
は、実施例5と同様の操作を行った。2−ヒドロキシ−
4−メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)お
よび2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率
(%)の経時変化を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】本発明によれば、2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタン酸を生産性良く製造することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H006 AA02 AC46 AC54 AD16 BA28 BA29 BA69 BC51 BD70 BE03 BE06 TA04 TB32 TB52 4H039 CA70 CF30

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A):3−メチルチオプロパナールを塩
    基および水の存在下にシアン化水素と反応させる工程、
    (B):工程(A)で得られた反応混合物を2−ヒドロ
    キシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層
    とに分離する工程、および(C):工程(B)で分離さ
    れた油層に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブ
    タンニトリルを硫酸存在下に加水分解反応させる工程を
    含むことを特徴とする2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
    ブタン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】工程(B)において、油層と水層とに分離
    する温度が0〜30℃の範囲である請求項1記載の製造
    方法。
  3. 【請求項3】3−メチルチオプロパナールを塩基および
    水の存在下にシアン化水素と反応させた後、2−ヒドロ
    キシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層
    とに分離することを特徴とする2−ヒドロキシ−4−メ
    チルチオブタンニトリルの製造方法。
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