JP4517491B2 - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法 - Google Patents

2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、飼料添加物等として有用な2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法として、3−メチルチオプロパナールをシアンヒドリン化した後、加水分解させる方法が知られている。例えば、米国特許第4912257号明細書には、3−メチルチオプロパナールをピリジンの存在下にシアン化水素酸と反応させた後、硫酸と反応させる方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル(3−メチルチオプロパナールのシアンヒドリン)から2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸への加水分解反応は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドへの水和反応と、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドから2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸への加水分解反応とからなるが、従来の方法では、上記水和反応の反応速度が十分でない。製品の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル含量は、極力低減させる必要があるところ、上記水和反応の反応速度が遅いと、反応時間を長くする必要が生じ、生産性を損ねることとなる。
本発明の目的は、上記問題点を解決し、生産性に優れる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを製造する方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討の結果、3−メチルチオプロパナールとシアン化水素との反応を水の存在下に行った後、油水分離させ、得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層を硫酸加水分解に付することにより、上記目的が達成されることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(A):3−メチルチオプロパナールを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させる工程、
(B):工程(A)で得られた反応混合物を2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに分離する工程、および
(C):工程(B)で分離された油層に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを硫酸存在下に加水分解反応させる工程
を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法に係るものである。
このうち、工程(A)と工程(B)により2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを製造する方法も新規であり、特に工程(B)で油水分離操作を行うことにより、後の加水分解における反応速度を向上させる効果が奏される。そこで本発明はまた、3−メチルチオプロパナールを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させた後、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに分離することにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを製造する方法にも係るものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、原料として3−メチルチオプロパナールを用い、これを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを生成させる[工程(A)]。原料の3−メチルチオプロパナールは、アクロレインにメチルメルカプタンを付加させることにより、調製することができる。
【0006】
シアン化水素の使用量は、3−メチルチオプロパナール1モルに対して、通常1〜1.1モル、好ましくは1.02〜1.08モルの範囲である。シアン化水素として、シアン化水素の水溶液、すなわちシアン化水素酸を用いてもよい。
【0007】
3−メチルチオプロパナールとシアン化水素との反応を、塩基の存在下に行うことにより、反応速度を向上させることができる。塩基としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミンのような有機塩基や、炭酸カリウム、アンモニアのような無機塩基が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
塩基の使用量は、3−メチルチオプロパナール1モルに対して、通常0.001〜0.05モル、好ましくは0.003〜0.01モルの範囲である。
【0008】
3−メチルチオプロパナールとシアン化水素との反応を、水の存在下に行うことにより、シアン化水素の安定性や操作性を向上させることができる。このためには、水を上記3−メチルチオプロパナール、シアン化水素および塩基とは別に供給してもよいし、3−メチルチオプロパナールとしてその水溶液を用いてもよいし、塩基としてその水溶液を用いてもよいし、シアン化水素としてその水溶液を用いてもよい。水の使用量は、3−メチルチオプロパナール100重量部に対して、通常20〜200重量部、好ましくは30〜100重量部の範囲である。
【0009】
反応温度は、通常5〜40℃、好ましくは10〜30℃の範囲であり、反応時間は通常0.5〜3時間の範囲である。
【0010】
3−メチルチオプロパナール、シアン化水素、塩基および水の供給方法としては、例えば、3−メチルチオプロパナールおよび塩基を混合した中に、シアン化水素および水を供給してもよいし、3−メチルチオプロパナールの中に、シアン化水素、塩基および水を併注してもよいし、4者を併注してもよい。4者を併注しながら、反応液を抜き出すことにより、反応を連続的に行うことができる。
【0011】
工程(A)で得られた反応混合物を、必要に応じて、濾過、水分調整、pH調整等の後処理操作に供した後、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに分離する[工程(B)]。該油水分離操作を行うことにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの水和反応速度を向上させることができる。油水分離は、回分式で行う場合、通常、静置することで行うことができるが、必要に応じて、遠心分離により行ってもよい。
【0012】
油水分離の温度は、操作性の観点から、通常−5℃以上、好ましくは0℃以上であり、油層中の水分低減の観点から、通常50℃以下、好ましくは30℃以下の範囲である。油水分離の温度を下げることにより、さらに2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの水和反応速度を向上させることができる。
【0013】
工程(B)で得られた油層を、必要に応じて濃縮、蒸留等の後処理、精製操作に供した後、硫酸存在下の加水分解反応に供することにより、該油層中に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸に変換することができる[工程(C)]。2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸への加水分解反応は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルから2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドへの水和反応と、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドから2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸への加水分解反応とからなり、通常、主に前者の反応を行う1段目反応と、主に後者の反応を行う2段目反応の、2工程に分けて行う。
【0014】
1段目反応は、通常、上記2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層を硫酸および必要に応じて水と混合し、40〜70℃、1〜3時間の範囲で行うことができる。1段目反応における硫酸の使用量は、油層中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル1モルに対して、通常0.5〜1モル、好ましくは0.6〜0.8モルの範囲であり、水の使用量は、油層中の水を含めて、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル100重量部に対して、通常20〜70重量部、好ましくは25〜50重量部の範囲である。
【0015】
2段目反応は、通常、上記1段目反応で得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを含む反応液を水および必要に応じて硫酸と混合し、90〜130℃、2〜6時間の範囲で行うことができる。2段目反応における硫酸の使用量は、1段目反応で用いた量を含めて、1段目反応で用いた油層中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル1モルに対して、通常0.5〜1モル、好ましくは0.6〜0.8モルの範囲であり、水の使用量は、1段目反応で用いた量を含めて、1段目反応で用いた油層中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル100重量部に対して、通常40〜180重量部、好ましくは50〜140重量部の範囲である。
【0016】
得られた反応液から2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を取り出す方法としては、例えば、反応液を、必要に応じてアンモニア等の塩基で中和した後、油水分離させてもよいし、有機溶媒で抽出してもよい。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例において、水分の分析は、カールフィッシャー法で行った。また、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドおよび2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の分析は、液体クロマトグラフィーにより行った。
【0018】
参考例1
連続式反応器に、3−メチルチオプロパナール、30%シアン化水素水溶液および49%炭酸カリウム水溶液を、3−メチルチオプロパナール:シアン化水素:炭酸カリウム=1:1.05:0.005のモル比で供給し、25℃にて滞留時間1時間で反応させた。得られた反応液は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層からなり、33.3%の水を含んでいた。
【0019】
実施例1〜4
参考例1で得られた反応液を表1に示す温度で油層と水層とに分離した。油層は、表1に示す濃度の水を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルであった。
【0020】
【表1】
Figure 0004517491
【0021】
実施例5
80%硫酸42.9g(硫酸0.35モル)の中に、50℃にて、実施例1で得られた油層82g(2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を1時間かけて滴下した後、50℃にて3時間保持した(1段目反応)。次いで、水55gを加え、3時間還流(110℃)させた(2段目反応)。
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)および2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率(%)の経時変化を表2に示す。
【0022】
実施例6
実施例5において、実施例1で得られた油層82gの代わりに実施例3で得られた油層86.3g(2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を滴下し、水55gの代わりに水50.7gを加えた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)および2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率(%)の経時変化を表2に示す。
【0023】
比較例1
実施例5において、実施例1で得られた油層82gの代わりに参考例1で得られた反応液98.4g(2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル0.5モル)を滴下し、水55gの代わりに水38.6gを加えた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの残存率(%)、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドの収率(%)および2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の収率(%)の経時変化を表2に示す。
【0024】
【表2】
Figure 0004517491
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を生産性良く製造することができる。

Claims (3)

  1. (A):3−メチルチオプロパナールを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させる工程、
    (B):工程(A)で得られた反応混合物を2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに分離する工程、および
    (C):工程(B)で分離された油層に含まれる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを硫酸存在下に加水分解反応させる工程
    を含むことを特徴とする2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法。
  2. 工程(B)において、油層と水層とに分離する温度が0〜30℃の範囲である請求項1記載の製造方法。
  3. 3−メチルチオプロパナールを塩基および水の存在下にシアン化水素と反応させた後、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルを含む油層と水層とに分離することを特徴とする2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルの製造方法。
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