JP2002050448A - スパークプラグおよびその製造方法 - Google Patents
スパークプラグおよびその製造方法Info
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Abstract
として、この母材に貴金属もしくはその合金よりなる火
花放電用のチップをレーザ溶接により固定してなるスパ
ークプラグにおいて、チップと母材との接合信頼性を向
上させる。 【解決手段】 レーザ溶接することにより形成された溶
融部60は、母材としての中心電極30に最も近い列を
1列目として中心電極30から離れる方向へ向かって隣
接する列の間で重なるように複数列形成されており、接
合面31に沿った断面を見たとき、1列目の溶融部61
の断面積と、1列目の溶融部61と2列目の溶融部62
との重なり部の断面積との合計が、チップ50の断面積
の1.4倍以上になるようにしている。
Description
極の少なくとも一方に貴金属もしくはその合金よりなる
火花放電用のチップをレーザ溶接により固定してなるス
パークプラグおよびその製造方法に関する。
ては、特開平6−188062号公報や特開平11−3
765号公報に記載のものが提案されている。これらの
ものは、中心電極及び接地電極を備え、中心電極と接地
電極の少なくとも一方を母材とし、この母材の一面を接
合面として、この接合面に火花放電を行うための貴金属
もしくはその合金よりなるチップがレーザ溶接により固
定されてなる。
材との接合によれば、線膨張係数の差の大きいチップ
(Ir合金やPt合金等)と母材(Ni基合金等)との
界面に溶融部が形成され、この溶融部を介して接合が行
われるため、抵抗溶接に比べて接合信頼性の高い構成と
することができる。
パークプラグにおいては、抵抗溶接に比べて接合信頼性
の高いレーザ溶接を採用してはいるものの、チップのサ
イズの増大化やエンジンの熱負荷が厳しくなるにつれ
て、チップと母材との接合部に加わる熱応力が大きくな
り、最悪、チップが母材から脱落してしまう恐れがあ
る。
−3765号公報では、溶融部を、母材側から母材を離
れる方向へ向かって複数列形成し、溶融部を厚肉化する
とともにチップと母材との線膨張係数差を小さくするこ
とにより、上記接合部に加わる熱応力を緩和させる方法
が採られている。
溶融部を複数列形成しただけでは、場合によっては十分
な接合信頼性が得られないことがわかった。ちなみに、
上記公報では、複数列形成された溶融部の外観形状しか
記載されておらず、断面形状等、溶融部の詳細構成につ
いては記載がない。
電極の少なくとも一方を母材として、この母材に貴金属
もしくはその合金よりなる火花放電用のチップをレーザ
溶接により固定してなるスパークプラグにおいて、チッ
プと母材との接合信頼性を向上させることを目的とす
る。
め、請求項1の発明では、中心電極(30)及び接地電
極(40)の少なくとも一方を母材とし、この母材の一
面を接合面(31、43)として、この接合面に火花放
電を行うための貴金属もしくはその合金よりなるチップ
(50)がレーザ溶接により形成された溶融部(60)
を介して固定されてなるスパークプラグにおいて、溶融
部を、母材に最も近い列を1列目として母材から離れる
方向へ向かって隣接する列の間で重なるように複数列形
成し、接合面に沿った断面を見たとき、1列目の溶融部
(61)の断面積と各列の溶融部(61〜63)同士の
重なり部の断面積との合計が、チップの断面積の1.4
倍以上になるようにしたことを特徴としている。
意検討した結果、実験的に見出されたものであり、複数
列形成された溶融部において、1列目の溶融部の断面積
と各列の溶融部同士の重なり部の断面積との合計を、チ
ップの断面積の1.4倍以上にすることにより、チップ
と母材との接合信頼性を向上させ実用レベルにて確保す
ることができる。
(31、43)に沿った断面を見たとき、2列目以降の
溶融部のうち少なくとも1つの溶融部(62、63)に
おいて、当該溶融部の断面積が、当該溶融部と当該溶融
部よりも母材寄りの溶融部(60)との重なり部の断面
積よりも大きくなっていることが好ましい。
(50)の内部において、2列目以降の溶融部のうち少
なくとも1つの溶融部(62)と当該溶融部(62)よ
りも母材(30)寄りの溶融部(61)との間に、チッ
プ(50)が入り込んだくさび形状となる。そして、チ
ップ(50)が母材(30)から離れようとする力が加
わっても、このくさび部分が引っ掛かるため、チップの
脱落防止という点で好ましい構成とすることができる。
部のうち少なくとも1つの溶融部の断面積が、当該溶融
部と当該溶融部よりも母材寄りの溶融部との重なり部の
断面積よりも大きくなっている」とは、当該少なくとも
1つの溶融部が例えば2列目である場合、この2列目の
溶融部の断面積が2列目と1列目の溶融部の重なり部の
断面積よりも大きいこと、また例えば3列目である場
合、この3列目の溶融部の断面積が3列目と2列目の溶
融部の重なり部の断面積よりも大きいことを意味する。
勿論、4列目以降の場合も同様であり、当該少なくとも
1つの溶融部が2列目以降の全ての列の溶融部に相当す
るものであっても良い。
0)及び接地電極(40)の少なくとも一方を母材と
し、この母材の一面を接合面(31、43)として、こ
の接合面に火花放電を行うための貴金属もしくはその合
金よりなるチップ(50)がレーザ溶接により形成され
た溶融部(60)を介して固定されてなるスパークプラ
グにおいて、チップと接合面との間に、線膨張係数がチ
ップと母材との間の範囲にある緩和層(80)を介在さ
せ、チップと母材とを、レーザ溶接によって緩和層、チ
ップ及び母材の間の各界面に形成された溶融部(90)
を介して固定したことを特徴としている。
を低減すべく鋭意検討した結果、実験的に見出されたも
のである。チップと母材との間に、線膨張係数がチップ
と母材との間の範囲にある緩和層を介在させることによ
り、チップと母材との線膨張係数差に起因する熱応力が
緩和層によって緩和される。そのため、チップと母材と
の接合信頼性を向上させることができる。
結果、請求項4の発明のように、緩和層(80)の厚さ
tが0.2mm以上0.6mm以下の範囲にあり、母材
の接合面(31、43)に沿った断面を見たとき、溶融
部(90)の断面積をチップ(50)の断面積で割った
比αが、(1.4−t)/2以上の範囲にあることが好
ましいことが実験的にわかった。それにより、チップと
母材との接合信頼性を実用レベルにて確保することがで
きる。
チップ(50)を、Irが50重量%以上含有されてい
るようなチップ、即ち母材との線膨張係数差の大きいチ
ップとした場合に特に有効である。
0)及び接地電極(40)の少なくとも一方を母材と
し、この母材の一面を接合面(31、43)として、こ
の接合面に火花放電を行うための貴金属もしくはその合
金よりなるチップ(50)がレーザ溶接により固定され
てなるスパークプラグを製造する方法であって、チップ
と接合面との間に、線膨張係数がチップと母材との間の
範囲にある緩和層(80)を介在させた後、レーザ溶接
を行うことによって緩和層、チップ及び母材の間の界面
に溶融部(90)を形成することを特徴としている。本
製造方法によれば、請求項3または請求項4記載のスパ
ークプラグを適切に製造することができる。
する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一
例である。
図に示す実施形態について説明する。本第1実施形態
は、例えばコージェネレーションにおける発電機のガス
エンジン用のスパークプラグとして用いられる。
ークプラグ100の全体構成を示す半断面図である。本
実施形態では、中心電極と接地電極のうち中心電極を母
材とし中心電極側にチップをレーザ溶接した例を述べる
こととする。図2及び図3には、スパークプラグ100
の軸方向に沿った中心電極30とチップ50との接合部
の断面形状を示す。
金具(ハウジング)10を有しており、この取付金具1
0は、図示しないエンジンブロックに固定するための取
付ネジ部11を備えている。取付金具10の内部には、
アルミナセラミック(Al2O3)等からなる絶縁体2
0が固定されており、この絶縁体20の一端部21は、
取付金具10の一端面12から露出するように設けられ
ている。
定され、絶縁体20を介して取付金具10に絶縁保持さ
れている。この中心電極30は、内材がCu等の熱伝導
性に優れた金属材料、外材がNi基合金等の耐熱性およ
び耐食性に優れた金属材料により構成された円柱体をな
し、その一端面31は絶縁体20の一端部21から露出
している。
電極30の一端面31と対向して配置された角柱状のも
のであり、Ni基合金等からなる。そして、接地電極4
0は、途中部に曲がり部を有し、他端42は、取付金具
10の一端面12に溶接等により固定され支持されてい
る。
母材として、中心電極30の一端面(本発明でいう接合
面)31に貴金属もしくはその合金よりなるチップ50
がレーザ溶接により形成された溶融部60を介して固定
されている(図2及び図3参照)。
0の一端41側の側面との間隔が放電ギャップ70とし
て形成されている。具体的に、チップ50は、Ir(イ
リジウム)、Ir合金、Pt(白金)、Pt合金等より
なる円板状のものである。耐熱性等を考慮するとチップ
50は、Irが50重量%以上含有されているものが好
ましい。
心電極(母材)30との接合部の構成を述べる。本実施
形態では、溶融部60は、中心電極30に最も近い列を
1列目として中心電極30から離れる方向(本例では、
中心電極の軸方向)へ向かって、隣接する列の間で重な
るように複数列(2列以上)形成されている。なお、溶
融部60の形状は、切断面を金属顕微鏡等で観察するこ
とで知ることができる。
30寄りから1列目の溶融部61、2列目の溶融部62
の2列の溶融部が形成されており、1列目の溶融部61
と2列目の溶融部62とが重なり合っている。
成に更に3列目を追加したものであり、中心電極30寄
りから1列目の溶融部61、2列目の溶融部62、3列
目の溶融部63の3列の溶融部が形成されている。そし
て、1列目の溶融部61と2列目の溶融部62とが重な
り合い、2列目の溶融部62と3列目の溶融部63とが
重なり合っている。なお、これら図2及び図3に示す例
以外にも、溶融部60は4列以上であっても良い。
中心電極30の一端面31(本例では、中心電極の径方
向に相当)に沿ってみたとき、環状の形状となってい
る。ただし、この環状形状は、連続してつながったもの
でも、非連続でつながっていないものでも良い。この複
数列の溶融部60は次のようにして形成することができ
る。
に、抵抗溶接により仮止めしたり、治具を用いて仮止め
する等により固定した状態で、チップ50と中心電極3
0との界面部に全周もしくは部分的にレーザを照射する
ことにより、1列目の溶融部61を形成し、次に、中心
電極30の軸方向へ照射ポイントをずらして同様にレー
ザを照射することにより、2列目の溶融部62を形成す
る。図3に示す例では、次に、同様にして3列目の溶融
部63を形成する。
とを溶け込み合わせることで形成された溶融部60は、
上記界面部の外表面から内部に向かって入り込んだ形と
なる。なお、図2に示す例は、1列目、2列目の順に形
成されたものであり、図3に示す例は、1列目、2列
目、3列目の順に形成されたものであるが、各列の形成
順序は任意として良い。
材)30の一端面(接合面)31に沿った断面を見たと
き、1列目の溶融部61の断面積と各列の溶融部61、
62、63同士の重なり部の断面積との合計が、チップ
50の断面積の1.4倍以上になるようにしている。な
お、以下、特に明示していない場合を含めて断面積と
は、中心電極30の一端面31に沿った断面積をいう。
61の断面積(図中のA−A断面における断面積)と、
1列目と2列目の溶融部61、62同士の重なり部の断
面積(図中のB−B断面における断面積)との合計が、
チップ50の断面積(チップの径方向の断面積)の1.
4倍以上になっている。
61の断面積(図中のA−A断面における断面積)と、
1列目と2列目の溶融部61、62同士の重なり部の断
面積(図中のB−B断面における断面積)と、2列目と
3列目の溶融部62、63同士の重なり部の断面積(図
中のC−C断面における断面積)との合計が、チップ5
0の断面積(チップの径方向の断面積)の1.4倍以上
になっている。
た断面を見たときの1列目の溶融部61の断面積とは、
図2、図3に示す様に、溶融部61の最大溶け込み深さ
d1の部分で見たときの断面積(最大断面積)である。
が行った実験検討の結果に基づくものである。限定する
ものではないが、この検討の一例を述べる。まず、上記
2列構成について検討した場合を示す。なお、比較のた
めに、溶融部を単列とした単列構成の場合、つまり、図
2において溶融部が一列目の溶融部61のみのものにつ
いても検討した。この単列構成を図4に示す。
基合金であるインコネル(登録商標)よりなり一端面3
1の径D1がφ2.7mmのものを使用し、チップ50
としてIr−10Rh(Irが90重量%、Rhが10
重量%の合金)よりなり、径D2がφ2.4mm、厚さ
が1.4mmの円板チップを用いた。これら中心電極3
0、チップ50の仕様は、熱負荷の厳しいコージェネレ
ーション用プラグとして一般的なものである。
溶接条件を変えることにより、1列目の溶融部61の溶
け込み深さd1、1列目と2列目の溶融部61、62同
士の重なり部における重なり深さd2を種々変え、1列
目の溶融部61の断面積と1列目と2列目の溶融部6
1、62同士の重なり部の断面積との合計(以下、溶融
部合計断面積という)を変えたサンプルを作製した。そ
して、種々の溶融部合計断面積について、上記チップ5
0の断面積との断面積比(溶融部合計断面積/チップ断
面積)をとった。
1、d2を種々変えたときの、上記断面積比(溶融部合
計断面積/チップ断面積)を示した図表である。図5に
おいて、仕様は溶け込み深さd1を0.3mmとし
て、重なり深さd2を0.1〜0.3mmと変えた場
合、仕様は溶け込み深さd1を0.7mmとして、重
なり深さd2を0.1〜0.7mmと変えた場合、仕様
は溶け込み深さd1を1.1mmとして、重なり深さ
d2を0.1〜1.1mmと変えた場合である。
照)については、レーザ溶接条件を変えることにより、
溶融部61の溶け込み深さd1を種々変え、溶融部61
の断面積を変えたものを作製した。そして、種々の溶融
部61の断面積について、上記チップ50の断面積との
比(溶融部断面積/チップ断面積)をとった。
深さd1を種々変えたときの、上記断面積比(溶融部断
面積/チップ断面積)を示した図表である。図6におい
て、仕様〜は、それぞれ溶け込み深さd1を0.
1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3
mmと変えた場合である。なお、単列構成の仕様〜
は図4(a)に示す様な部分溶融構成、仕様は図4
(b)に示す様なチップ50と中心電極30との界面が
全域で溶け合った全域溶融構成である。
て、耐久試験を行い、チップ50と中心電極30との接
合信頼性の評価を行った。耐久試験は、6気筒2000
ccエンジンにスパークプラグを取り付けて実施し、運
転条件は、アイドル1分保持・スロットル全開(600
0rpm)1分保持の繰り返しを100時間行った。上
記接合信頼性は引っ張り強度で評価し、上記耐久試験後
の引っ張り強度が200N以上であれば実用的な信頼接
合性が確保されたものとした。
における断面積比(溶融部合計断面積/チップ断面積)
と引っ張り強度(単位:N)との関係を示す図である。
図7中の各種プロットにおいて、黒丸プロットは仕様
の新品時、白丸プロットは仕様の耐久試験後、黒三角
プロットは仕様の新品時、白三角プロットは仕様の
耐久試験後、黒四角プロットは仕様の新品時、白四角
プロットは仕様の耐久試験後、をそれぞれ示す。
列構成における断面積比(溶融部断面積/チップ断面
積)と引っ張り強度(単位:N)との関係を示す図であ
る。図8中の各種プロットにおいて、黒丸プロットは新
品時、黒三角プロットは耐久試験後、をそれぞれ示す。
は、溶融部断面積により新品時の引っ張り強度に差は認
められるが、単列構成において最も接合信頼性に優れた
全域溶融構成を採用した場合であっても、接合信頼性を
実用レベルにて確保することは困難である。
断面積及び溶融部60の断面形状により新品時の引っ張
り強度に差は認められるが、耐久試験後は溶融部の断面
形状に関係なく断面積比が大きいほど(溶融部断面積が
大きいほど)引っ張り強度が大きいといった関係が得ら
れた。
単列構成に比べて、溶融部60を厚肉化するとともにチ
ップ50と中心電極(母材)30との線膨張係数差を小
さくすることができ、接合部に加わる熱応力を緩和する
ことができるためである。そして、断面積比(溶融部合
計断面積/チップ断面積)が1.4以上であれば、引っ
張り強度200N以上が確保でき、接合信頼性を実用レ
ベルにて確保することができる。
も同様に検討した。検討に用いたチップ50、中心電極
30の仕様は2列構成の場合と同様である。3列構成に
ついて、レーザ溶接条件を変えることにより、図9に示
す様に、1列目の溶融部61の溶け込み深さd1、1列
目と2列目の溶融部61、62同士の重なり部における
重なり深さd2、2列目と3列目の溶融部62、63同
士の重なり部における重なり深さd3を種々変えたサン
プルを作製した。
融部61の断面積と、1列目と2列目の溶融部61、6
2同士の重なり部の断面積と、2列目と3列目の溶融部
62、63同士の重なり部の断面積との合計を溶融部合
計断面積とし、この溶融部合計断面積とチップ50の断
面積との断面積比(溶融部合計断面積/チップ断面積)
をとった。この断面積比も図9に示してある。
を0.3mmとして、重なり深さd2を0.1〜0.3
mm、重なり深さd3を0.1〜0.3mmと変えた場
合、仕様は溶け込み深さd1を0.7mmとして、重
なり深さd2を0.1〜0.2mm、重なり深さd3を
0.1〜0.2mmと変えた場合、仕様は溶け込み深
さd1を1.1mmとして、重なり深さd2を0.1m
m、重なり深さd3を0.1mmとした場合である。
と同様に耐久試験を行い、チップ50と中心電極30と
の接合信頼性の評価を行った。図10は、評価の結果得
られた3列構成における断面積比(溶融部合計断面積/
チップ断面積)と引っ張り強度(単位:N)との関係を
示す図である。
ロットは仕様の新品時、白丸プロットは仕様の耐久
試験後、黒三角プロットは仕様の新品時、白三角プロ
ットは仕様の耐久試験後、黒四角プロットは仕様の
新品時、白四角プロットは仕様の耐久試験後、をそれ
ぞれ示す。図10からわかるように、3列構成において
も上記2列構成と同様の効果が認められた。
形成された溶融部60において、1列目の溶融部61の
断面積と各列の溶融部61〜63同士の重なり部の断面
積との合計を、チップ50の断面積の1.4倍以上にす
ることにより、チップ50と中心電極(母材)30との
接合信頼性を向上させ実用レベルにて確保することがで
きるといえる。
(母材)30の一端面(接合面)31に沿った断面を見
たとき、2列目以降の溶融部62、63のうち少なくと
も1つの溶融部において、当該溶融部の断面積が、当該
溶融部と当該溶融部よりも中心電極30寄りの溶融部と
の重なり部の断面積よりも大きくなっていることが好ま
しい。
形態が採用されている。即ち、図2に示す2列構成で
は、2列目の溶融部62の断面積が、当該2列目の溶融
部62と1列目の溶融部61との重なり部の断面積より
も大きくなっている。更に、図3に示す3列構成では、
3列目の溶融部63の断面積が、当該3列目の溶融部6
3と2列目の溶融部62との重なり部の断面積よりも大
きくなっている。
外表面から内部に向かって溶け込んでいる。上記好まし
い形態によれば、例えば、図2に示す様に、溶融部の溶
け込み方向において、2列目の溶融部62の先端が、2
列目の溶融部62と1列目の溶融部61との重なり部の
端部よりも、チップ50の内部に向かって突出してい
る。
溶融部61との間に、チップ50がが入り込んだくさび
形状となる。そして、チップ50が中心電極30から離
れようとする方向(図2中の上方)へ力が加わっても、
このチップ50のくさび部分が2列目の溶融部62に引
っ掛かるため、チップ50を脱落しにくくすることがで
きる(くさび効果)。
溶融部62と1列目の溶融部61との間だけでなく、更
に、3列目の溶融部63と2列目の溶融部62との間に
も、チップ50が入り込んだくさび形状が形成されてい
る。そのため、2列構成の場合と同様の効果が得られ
る。
目以降の全ての列の溶融部において、上記好ましい形態
となっていても良いが、それ以外にも、少なくとも1つ
の列の溶融部において、上記好ましい形態となっていれ
ば、効果はある。
図1に示すスパークプラグ100において、中心電極3
0とチップ50との接合部を上記第1実施形態とは異な
らせたものであり、他の部分は同一である。従って、当
該接合部の断面形状を図11に示し、この図11に基づ
いて主として第1実施形態との相違点について述べるこ
ととする。
(母材)30の一端面(接合面)31との間に、線膨張
係数がチップ50と中心電極30との間の範囲にある緩
和層80を介在させ、チップ50と中心電極30とを、
レーザ溶接によって緩和層80、チップ50及び中心電
極母材の間に形成された溶融部90を介して固定したこ
とを主たる特徴としている。なお、図11中、(a)は
部分溶融構成、(b)は全域溶融構成である。
金を使用し、チップ50としてIrもしくはIr合金を
用いた場合、緩和層80としては、線膨張係数がNi基
合金とIr合金の中間であるPt合金等を使用すること
ができる。このようなPt合金としては例えば、Pt−
20Ir−2Ni(Ptが78重量%、Irが20重量
%、Niが2重量%の合金)を採用することができる。
様な製造方法により、適切に製造することができる。図
12は、図11の断面に対応した断面にて製造方法を示
すものである。
31との間に、上記緩和層80を介在させこれら3つの
部材30、50、80を仮固定する。この仮固定は、抵
抗溶接により仮止めしたり、治具を用いて仮止めする等
により行うことができる。しかる後、緩和層80を中心
にレーザを照射することによって緩和層80とチップ5
0の界面及び緩和層80と中心電極30の界面を無くす
ように、3部材30、50、80が溶け合った溶融部9
0を形成する。こうして、図11に示す接合部構成とな
る。
0と中心電極30の一端面31との間に、線膨張係数が
チップ50と中心電極30との間の範囲にある緩和層8
0を介在させることにより、チップ50と中心電極30
との線膨張係数差に起因する熱応力が、緩和層80によ
って緩和される。そのため、従来よりもチップ50と中
心電極30との接合信頼性を向上させることができる。
以上0.6mm以下の範囲にあり、中心電極30の一端
面(接合面)31に沿った断面を見たとき、溶融部90
の最大溶け込み深さd4の部分(図11中のE−E断
面)における断面積をチップ50の断面積(チップの径
方向の断面積)で割った比αが、(1.4−t)/2以
上の範囲にあることが好ましい。それにより、チップと
母材との接合信頼性を実用レベルにて確保することがで
きる。
た実験検討の結果に基づくものである。限定するもので
はないが、この検討の一例を述べる。中心電極30とし
て、インコネル(登録商標)よりなり一端面31の径D
1がφ2.7mmのものを使用し、チップ50としてI
r−10Rhよりなり、径D2がφ2.4mm、厚さが
1.4mmの円板チップを用い、緩和層80としてPt
−20Ir−2Niよりなる径D3(図12参照)がφ
2.4mmの円板を用いた。
以上0.6mm以下の範囲としたのは、0.2mmより
薄いと緩和層80の強度不足により熱応力によって緩和
層80に割れが生じやすくなること、また、0.6mm
より厚くしても熱応力緩和効果は変わらないためであ
る。
り、図13に示す様に、溶融部90の溶け込み深さd4
を種々変え、溶融部90の溶け込み深さd4の部分にお
ける断面積(溶融部断面積)とチップ50との断面積比
α(溶融部断面積/チップ断面積)を種々変えたサンプ
ルを作製した。
上記第1実施形態と同様に耐久試験を行い、チップ50
と中心電極30との接合信頼性の評価を行った。図14
は、評価の結果得られた本実施形態の接合部構成におけ
る断面積比α(溶融部断面積/チップ断面積)と引っ張
り強度(単位:N)との関係を緩和層80の厚さを変え
て示す図である。
プロットは緩和層80の厚さtが0.2mmのときの新
品時、白四角プロットは緩和層80の厚さtが0.2m
mのときの耐久試験後、黒三角プロットは緩和層80の
厚さtが0.4mmのときの新品時、白三角プロットは
緩和層80の厚さtが0.4mmのときの耐久試験後、
黒丸プロットは緩和層80の厚さtが0.6mmのとき
の新品時、白丸プロットは緩和層80の厚さtが0.6
mmのときの耐久試験後、をそれぞれ示す。
きいほど(溶融部断面積が大きいほど)耐久試験後の引
っ張り強度が大きい。これは、レーザ溶接による線膨張
係数差の縮小やエッジ部が無くなることによる熱応力低
減効果のためである。また、緩和層80が厚いほど、耐
久試験後の引っ張り強度は向上し、接合信頼性が高くな
っていることがわかる。これは、0.6mmの厚さまで
は緩和層80が厚いほど熱応力低減効果が大きいためで
ある。
引っ張り強度200Nに相当する様な上記断面積比αと
緩和層80の厚さtとの関係が得られる。例えば、厚さ
tが0.2mmのとき断面積比αは0.6、厚さtが
0.4mmのとき断面積比αは0.5、厚さtが0.6
mmのとき断面積比αは0.4である。
関係をグラフ化したものが図15である。図15から、
耐久試験後において引っ張り強度200N以上の実用レ
ベルの接合信頼性を確保するためには、次の数式1に示
す関係を満足することが必要であることがわかる。
以上0.6mm以下の範囲にある緩和層80を介してレ
ーザ溶接されたチップ50と中心電極30において、上
記断面積比αが(1.4−t)/2以上であることが好
ましく、それにより、チップ50と中心電極30との接
合信頼性を実用レベルにて確保することができる。
変形例を示す。図16(a)〜(f)は第1の変形例で
あり、第1実施形態に示した複数列の溶融部61〜63
のうち全ての列もしくは一部の列の溶融部を、チップ5
0と中心電極30との界面が全域で溶け合った全域溶融
構成としたものである。この第1の変形例においても上
記第1実施形態と同様の効果が得られる。
成のものであって、(a)は1列目の溶融部61、
(b)は全ての列の溶融部61、62、(c)は2列目
の溶融部62について、それぞれ全域溶融構成としたも
のである。また、(d)〜(f)は3列構成のものであ
って、(d)は全ての列の溶融部61〜63、(e)は
1列目の溶融部61、(f)は1列目と2列目の溶融部
61、62について、それぞれ全域溶融構成としたもの
である。
り、第2実施形態に示した接合部構成において、溶融部
90を複数列構成としたものである。この場合も、上記
第2実施形態と同様に、緩和層80による熱応力緩和効
果を発揮することができる。また、複数列の溶融部90
の形状によっては、上記第1実施形態と同様の効果を得
ることも可能である。
にチップ50をレーザ溶接した例として述べたが、接地
電極40側にチップ50をレーザ溶接する場合、また
は、中心電極30と接地電極40の両方にチップ50を
レーザ溶接する場合にも、上記各実施形態は適用可能で
あることは勿論である。図18は、接地電極40を母材
としてチップ50を設ける場合を示す第3の変形例であ
る。
1実施形態を接地電極40に適用したものである。な
お、図18中、(b)は(a)のF矢視図であるが、
(b)中の溶融部60に施してあるハッチングは識別の
ためのもので断面を示すものではない。
面(本発明でいう接合面)43に角柱状のチップ50が
レーザ溶接により固定されている。ここで、図示しない
が、この第3の変形例においては、チップ50の側面5
1が、中心電極30もしくは中心電極30に固定された
チップ50に対向して放電ギャップ70を形成する。
40に最も近い列を1列目として接地電極40から離れ
る方向へ向かって、隣接する列の間で重なるように2列
形成されている。更に、接地電極40における上記端面
(接合面)43に沿った断面を見たとき、1列目の溶融
部61の断面積と1列目と2列目の溶融部61、62)
同士の重なり部の断面積との合計が、チップ50の断面
積(図18(a)におけるチップの長軸と直交する方向
に沿った断面積)の1.4倍以上になっている。
2実施形態を接地電極40に適用したものである。
(d)は(c)のG矢視図であるが、(d)中の溶融部
90に施してあるハッチングは識別のためのもので断面
を示すものではないチップ50と接地電極40の上記端
面(接合面)43との間には、線膨張係数がチップ50
と接地電極40との間の範囲にある緩和層80が介在さ
れている。そして、チップ50と接地電極40とは、レ
ーザ溶接によって緩和層80、チップ50及び接地電極
40の間の各界面に形成された溶融部90を介して固定
されている。この場合、接地電極40は中心電極30同
様にNi基合金よりなるので、緩和層80も上記第2実
施形態と同様の材質を採用できる。
も、上記第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られ
るとともに、各実施形態に述べた好ましい形態(くさび
効果、断面積αの関係)を採用可能なことは勿論であ
る。
極、チップの形状は適宜設計変更可能である。要する
に、本発明は、中心電極及び接地電極の少なくとも一方
を母材とし、この母材の一面を接合面として、この接合
面に火花放電を行うための貴金属もしくはその合金より
なるチップがレーザ溶接により形成された溶融部を介し
て固定されてなるスパークプラグにおいて、溶融部の構
成を工夫したり、緩和層を介在させた点が、主たる特徴
点であり、他の部分は適宜設計変更可能である。
全体構成を示す半断面図である。
した場合を示す概略断面図である。
した場合を示す概略断面図である。
す概略断面図である。
合計断面積/チップ断面積)を示す図表である。
断面積/チップ断面積)を示す図表である。
面積/チップ断面積)と引っ張り強度との関係を示す図
である。
/チップ断面積)と引っ張り強度との関係を示す図であ
る。
合計断面積/チップ断面積)を示す図表である。
断面積/チップ断面積)と引っ張り強度との関係を示す
図である。
におけるチップと中心電極との接合部構成を示す概略断
面図である。
造方法を示す説明図である。
積比α(溶融部断面積/チップ断面積)を示す図表であ
る。
(溶融部断面積/チップ断面積)と引っ張り強度との関
係を緩和層の厚さを変えて示す図である。
断面積比αと緩和層の厚さtとの関係を示すグラフであ
る。
る。
る。
電極、43…接地電極の一端側の端面、50…チップ、
60、90…溶融部、61…1列目の溶融部、62…2
列目の溶融部、63…3列目の溶融部、80…緩和層。
Claims (6)
- 【請求項1】 中心電極(30)及び接地電極(40)
の少なくとも一方を母材とし、この母材の一面を接合面
(31、43)として、この接合面に火花放電を行うた
めの貴金属もしくはその合金よりなるチップ(50)が
レーザ溶接により形成された溶融部(60)を介して固
定されてなるスパークプラグにおいて、 前記溶融部は、前記母材に最も近い列を1列目として前
記母材から離れる方向へ向かって、隣接する列の間で重
なるように複数列形成されており、 前記接合面に沿った断面を見たとき、前記1列目の溶融
部(61)の断面積と各列の前記溶融部(61〜63)
同士の重なり部の断面積との合計が、前記チップの断面
積の1.4倍以上になっていることを特徴とするスパー
クプラグ。 - 【請求項2】 前記接合面(31、43)に沿った断面
を見たとき、2列目以降の前記溶融部のうち少なくとも
1つの溶融部(62、63)において、当該溶融部の断
面積が、当該溶融部と当該溶融部よりも前記母材寄りの
溶融部(61、62)との重なり部の断面積よりも大き
くなっていることを特徴とする請求項1に記載のスパー
クプラグ。 - 【請求項3】 中心電極(30)及び接地電極(40)
の少なくとも一方を母材とし、この母材の一面を接合面
(31、43)として、この接合面に火花放電を行うた
めの貴金属もしくはその合金よりなるチップ(50)が
レーザ溶接により形成された溶融部(60)を介して固
定されてなるスパークプラグにおいて、 前記チップと前記接合面との間には、線膨張係数が前記
チップと前記母材との間の範囲にある緩和層(80)が
介在されており、 前記チップと前記母材とが、レーザ溶接によって前記緩
和層、前記チップ及び前記母材の間の各界面に形成され
た溶融部(90)を介して固定されていることを特徴と
するスパークプラグ。 - 【請求項4】 前記緩和層(80)の厚さtが0.2m
m以上0.6mm以下の範囲にあり、 前記接合面(31、43)に沿った断面を見たとき、前
記溶融部(90)の断面積を前記チップ(50)の断面
積で割った比αが、(1.4−t)/2以上の範囲にあ
ることを特徴とする請求項3に記載のスパークプラグ。 - 【請求項5】 前記チップ(50)は、Irが50重量
%以上含有されているものであることを特徴とする請求
項1ないし4のいずれか1つに記載のスパークプラグ。 - 【請求項6】 中心電極(30)及び接地電極(40)
の少なくとも一方を母材とし、この母材の一面を接合面
(31、43)として、この接合面に火花放電を行うた
めの貴金属もしくはその合金よりなるチップ(50)が
レーザ溶接により固定されてなるスパークプラグを製造
する方法であって、 前記チップと前記接合面との間に、線膨張係数が前記チ
ップと前記母材との間の範囲にある緩和層(80)を介
在させた後、 レーザ溶接を行うことによって前記緩和層、前記チップ
及び前記母材の間の界面に溶融部(90)を形成するこ
とを特徴とするスパークプラグの製造方法。
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