JPH113765A - 内燃機関用スパークプラグ及びその製造方法 - Google Patents

内燃機関用スパークプラグ及びその製造方法

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JPH113765A
JPH113765A JP12427098A JP12427098A JPH113765A JP H113765 A JPH113765 A JP H113765A JP 12427098 A JP12427098 A JP 12427098A JP 12427098 A JP12427098 A JP 12427098A JP H113765 A JPH113765 A JP H113765A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融固着層の熱応力緩和効果が大きく,Ir
合金チップと電極母材の接合強度に優れた長寿命の内燃
機関用スパークプラグ及びその製造方法を提供するこ
と。 【解決手段】 中心電極2と接地電極の少なくとも一方
の先端部に,貴金属チップ1をレーザ溶接により接合し
てなる内燃機関用スパークプラグにおいて,上記貴金属
チップ1は,少なくともIrを含有する融点が2200
℃以上のイリジウム材よりなり,また上記貴金属チップ
1と上記中心電極2の電極母材との間には溶融固着層1
1を有しており,該溶融固着層11中には,融点が15
00〜2100℃,線膨張係数が8〜11×10-6/℃
の貴金属が1重量%以上含有されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,中心電極,接地電極のいずれか
一方の先端部に,貴金属チップを設けた内燃機関用スパ
ークプラグ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】内燃機関用スパークプラグ(以下,単にス
パークプラグもいう)は,中心電極,接地電極の放電部
材としてPt合金を用いることにより長寿命化,高性能
化が図られている。そして,近年,排気浄化,希薄燃焼
の観点より,中心電極,接地電極を細径,伸長化し,飛
び火性,着火性を向上させることが行なわれている。
【0003】しかしながら,Pt合金電極は,上記細
径,伸長化に伴って,使用中における電極消耗により,
火花隙間の拡大化,飛び火不良を生じるおそれがある。
そこで,中心電極,接地電極の少なくとも一方の面に,
貴金属チップを接合することが検討されている。そし
て,この接合方法としては,まず抵抗溶接法がある。し
かし,抵抗溶接法によるときには,貴金属チップと中心
電極,接地電極との接合部に熱膨張差に起因する熱応力
が発生し,接合部に損傷を生ずるおそれがある。
【0004】そこで,上記接合法としてレーザ溶接法を
用いることが検討されている。このレーザ溶接によると
きには,レーザ光による高密度エネルギを,中心電極又
は接地電極の電極母材と貴金属チップとの接合部に集中
させる。そのため,上記電極母材の主成分であるNi
と,Ir合金とが溶け合い,両者の中間の線膨張係数を
有する溶融固着層を形成でき,熱応力を緩和させること
ができる。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,発明者らは,
上記溶融固着層中におけるIrとNiとの比率は,レー
ザ溶接時のレーザエネルギの大小によって大きく異な
り,これがスパークプラグの寿命に大きな影響を与える
ことを見出した。
【0006】即ち,発明者らの研究によれば,レーザエ
ネルギが小さい場合には,接合時の溶融温度が低いた
め,Niのみが溶融し,Irの溶け込みが少なく,熱応
力緩和効果が発揮されない。これは,Niの融点が約1
450℃であるのに対してIrの融点は約2450℃と
極めて高く,両者の温度差が大きいこと,更にNiの沸
点は約2700℃でIrの融点に近いことによると考え
られる。一方,レーザエネルギが過大の場合には,溶融
部が高温になり過ぎて,Niの蒸発が生じ,溶融固着層
に表面部のエグレが発生したり,内部に巣が発生する
(図20参照)。
【0007】本発明はかかる問題点に鑑み,溶融固着層
の熱応力緩和効果が大きく,貴金属チップと電極母材と
の接合強度に優れた長寿命の内燃機関用スパークプラグ
及びその製造方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】請求項1に記載の発明は,貫通孔を
有する絶縁碍子と,少なくとも上記貫通孔の一端に配設
した中心電極と,上記絶縁碍子を保持するハウジング
と,上記ハウジングに設けられ上記中心電極と対向配設
し,中心電極と共に火花ギャップを形成する接地電極と
を有し,かつ上記中心電極と接地電極とが対向する少な
くとも一方の面には,貴金属チップをレーザ溶接により
接合してなる内燃機関用スパークプラグにおいて,上記
貴金属チップは,上記中心電極又は接地電極の電極母材
の少なくとも一部に対して溶融固着層を介して設けられ
ていると共に,少なくともIrを含有する融点が220
0℃以上のイリジウム材よりなり,また,上記溶融固着
層中には,融点が1500〜2100℃,線膨張係数が
8〜11×10-6/℃の貴金属が1重量%以上含有され
ていることを特徴とする内燃機関用スパークプラグであ
る。
【0009】本発明において最も注目すべきことは,貴
金属チップが少なくともIr(イリジウム)を含有する
2200℃以上の融点を有する上記イリジウム材である
こと,上記貴金属チップと電極母材との間には溶融固着
層を有し,該溶融固着層中には上記融点及び線膨張係数
を有する貴金属が1重量%以上含有されていることであ
る。
【0010】そして,上記貴金属チップの融点は220
0℃以上であることが必要である。2200℃未満では
火花ギャップ増加による飛火電圧上昇の問題がある。な
お,貴金属チップの融点の上限は,Niの沸点2700
℃に対して約100℃の余裕度をもたせるために260
0℃以下とすることが好ましい。また,上記イリジウム
材としては,Ir,IrとPt(白金),Pd(パラジ
ウム),Rh(ロジウム),Au(金),Ni(ニッケ
ル),Ru(ルテニウム)の1種以上の合金,IrとY
2 3 (イットリア),ZrO2 (ジルコニア)の1種
以上との合金などがある。
【0011】次に,上記溶融固着層は,貴金属チップと
中心電極又は接地電極の電極母材との間に形成されてい
る。溶融固着層は,レーザ溶接によって貴金属チップと
電極母材との間が溶融し,次いで固化することによって
形成された接合層である。それ故,溶融固着層はIr合
金と電極母材との合金層を形成している。なお,上記溶
融固着層は貴金属チップと電極母材との間に全て設ける
必要はなく,両者の間に未溶融部が残存していてもよい
(図11,図12参照)。
【0012】上記溶融固着層中には融点が1500〜2
100℃で線膨張係数が8〜11×10-6/℃の貴金属
が1重量%含有されている。上記融点が1500℃未満
の場合には,Niの融点と近くなりレーザエネルギ過大
時に溶融層表面にエグレ発生等の問題があり,一方21
00℃を越えるとNiの融点との温度差が大であり,レ
ーザエネルギ過小の場合Niのみが溶け熱応力緩和作用
を発揮しないという問題がある。また,上記線膨張係数
が8×10-6/℃未満の場合には,貴金属チップと同等
レベルの線膨張であり,また,11×10-6/℃を越え
ると電極母材と同等レベルになり熱応力緩和作用が減少
する問題がある。
【0013】また,上記溶融固着層中における貴金属が
1重量%未満の場合には,後述するが冷熱繰り返しで使
用する環境下で強度が低下する問題がある。なお,貴金
属の上限は,加工性ならびにコスト面より10重量%と
することが好ましい。
【0014】次に,請求項8に記載の発明は,貫通孔を
有する絶縁碍子と,少なくとも上記貫通孔の一端に配設
したニッケルを主成分とする中心電極と,上記絶縁碍子
を保持するハウジングと,上記ハウジングに設けられ上
記中心電極と対向配設し,中心電極と共に火花ギャップ
を形成する接地電極とを有し,かつ上記中心電極の上記
接地電極に対向する面には,貴金属チップを接合してな
る内燃機関用スパークプラグの製造方法において,上記
中心電極の先端に径小部が形成されるとともに,かつ上
記径小部の先端に,略同一な径を有する円筒部を形成す
るとともに,上記中心電極の上記円筒部の径よりも小な
る径を有する少なくともIrを含有する融点が2200
℃以上のイリジウム材よりなる貴金属チップを上記中心
電極の上記円筒部先端面に当接させ,上記貴金属チップ
と上記中心電極の上記円筒部とにレーザ光を照射させる
ことにより,上記貴金属チップと上記中心電極の上記円
筒部とを溶融固着させることを特徴とする内燃機関用ス
バークプラグの製造方法である。
【0015】次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明のスパークプラグにおいては,上記溶融固着層が
上記条件下にあるため,電極母材と貴金属チップとの接
合部にレーザを照射すると例えば電極母材の主成分であ
るNi(ニッケル)は上記貴金属と「Ni+貴金属」合
金を形成し,このものは更にIrとの間に「Ni+貴金
属+Ir」合金を段階的に形成していく。
【0016】このとき,レーザエネルギが小さい場合に
は,貴金属の存在によって融点がIr>Ir+貴金属と
なり,「Ir+貴金属」の溶け込みが増加する。つま
り,これらの貴金属はIrに対して全率固溶する性質を
有している。一方,レーザエネルギが大きい場合には,
貴金属の存在により融点がNi+貴金属>Niとなる。
そのため,Niの蒸発が抑制され,溶融固着層における
エグレ,内部巣の発生が防止される。
【0017】したがって,レーザ溶接時におけるレーザ
エネルギの大小による,溶融固着層への悪影響がない。
また,そのため溶融固着層における熱応力を緩和するこ
とができ,その接合力が向上する。したがって,長寿命
のスパークプラグが得られる。
【0018】このように,本発明によれば,貴金属チッ
プと電極母材の接合強度に優れ,溶融固着層の熱応力緩
和効果が大きく,長寿命の内燃機関用スパークプラグ及
びその製造方法を提供することができる。
【0019】次に請求項2に記載の発明のように,上記
溶融固着層中の貴金属は,Pt,Pd又はRhの1種以
上であり,一方上記中心電極の電極母材はFe,Crを
含有するNi基合金であることが好ましい。これによ
り,電極母材表面の酸化を抑制するという効果を得るこ
とができる。
【0020】次に,請求項3に記載の発明のように,上
記溶融固着層中に上記貴金属が1重量%以上含有されて
いる貴金属含有層は,上記貴金属チップの半径の半分の
位置における軸方向の厚みが0.2mm以上であること
が好ましい。これにより,本発明の効果を確実に発揮さ
せることができる。これらのことは,図11,図12に
示すごとく,貴金属チップと中心電極との間に未溶融部
を有する場合についても同様である。
【0021】次に,請求項4に記載の発明のように,上
記貴金属チップは,上記中心電極に対して溶接されてい
ることが好ましい。これにより,接地電極よりも放電に
よる消耗が激しい中心電極にIrを含有する貴金属チッ
プを採用したので,長寿命の内燃機関用スパークプラグ
を得ることができる。
【0022】次に,請求項5に記載の発明のように,上
記溶融固着層中の貴金属は,貴金属チップ中の貴金属が
溶融されたものであることが好ましい。これにより,容
易に本発明の効果を達成させることができる。
【0023】次に,請求項6に記載の発明のように,貴
金属は,レーザによって接合される中心電極と貴金属チ
ップとの間に設けられるとともに,溶融固着層中の貴金
属は,中心電極と貴金属チップとの間に設けられた貴金
属から溶融される貴金属であることが好ましい。これに
より,溶融固着層中に,融点が1500〜2100℃で
あり,所定の線膨張係数を有する貴金属を1重量%以上
確実に含有させることができる。
【0024】次に,請求項7に記載の発明のように,上
記貴金属チップは,上記中心電極に対して上記溶融固着
層のみを介して設けられていることが好ましい。これに
より,中心電極に対して貴金属チップを確実に溶接固定
させることができる。
【0025】次に,請求項8に記載される内燃機関用ス
バークプラグの製造方法においては,中心電極先端に略
同一な径を有する円筒部を形成し,この円筒部の端面に
貴金属チップを当接させたのち,レーザ光を照射させる
ことにより,貴金属チップと中心電極とを溶接するよう
にした。このため,特に,中心電極先端には,貴金属チ
ップの径よりも大なる略同一な径を有する円筒部に貴金
属チップを当接した後に,当接しているため,レーザ光
の照射が貴金属チップと中心電極の端面との当接境界面
より多少ずれたとしても,貴金属チップと中心電極とか
らなる溶融固着層の組成が大きく変化することがない。
このため,溶融固着層の組成を安定化させることがき,
貴金属チップと中心電極との接合カの高い溶融固着層を
得ることができる。
【0026】また,請求項9に記載の発明のように,上
記貴金属チップを上記中心電極の上記円筒部先端面に当
接させた後,上記貴金属チップと上記中心電極の上記円
筒部先端面とを抵抗溶接した後に,レーザ光を照射さ
せ,上記貴金属チップと上記中心電極の上記円筒部とを
溶融固着させることが好ましい。これにより,貴金属チ
ップと中心電極とが抵抗溶接にて仮止めされた状態とな
っているため,レーザ照射により,貴金属チップと中心
電極との相対位置のずれが生じにくく,当接境界領域に
レーザを確実に照射させることができる。
【0027】また,請求項10の発明のように,上記貴
金属チップと上記中心電極の上記円筒部との当接境界領
域にレーザ光を照射させることにより,上記貴金属チッ
プと上記中心電極の上記円筒部とを溶融固着させること
が好ましい。このように,当接境界領域にレーザ光を照
射させることにより,,溶融固着層を中心電極と中心電
極の円筒部端面との境界面に確実に形成することがで
き,貴金属チップと中心電極との接合カを向上させるこ
とができる。
【0028】また,請求項11の発明のように,上記当
接境界領域は,上記貴金属チップと上記中心電極の上記
円筒部との当接境界面を中心として,上記中心電極の軸
方向に±0.3mm領域であることが好ましい。もし,
レーザの照射位置が貴金属チップと中心電極の円筒部と
の当接境界面を中心として,中心電極の軸方向に±0.
3mmよりも大きく偏ってしまうと,例え,中心電極に
円筒部が形成されているとしても,得られる溶融固着層
自体も貴金属チップ側もしくは中心電極側に大きく偏っ
てしまう。そのため,貴金属チップと中心電極との境界
面において,溶融固着層が形成されない箇所が生じてし
まうおそれがある。その結果,貴金属チップと中心電極
との十分な接合カを得ることができないおそれがある。
【0029】なお,上記溶融固着層中に上記貴金属を添
加する方法としては,上記貴金属を予め上記貴金属チッ
プ中に添加しておき,貴金属チップと電極母材とをレー
ザ溶接する方法(実施形態例1),貴金属チップ又は電
極母材の表面に予め貴金属板を接合しておき,これらに
レーザを照射して溶接する方法(実施形態例2)があ
る。或いは貴金属チップと電極母材との間に貴金属板を
挟持して,これらにレーザを照射して溶接する方法など
がある。
【0030】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる内燃機関用スパークプラグ
及びその製造方法につき図1〜図7を用いて説明する。
まず,本例において得ようとするスパークプラグ9は,
図2,図3に示すごとく,貫通孔920を有する絶縁碍
子92と,上記貫通孔920の一端に配設した中心電極
2と,上記絶縁碍子92を保持するハウジング91と,
上記ハウジング91に設けられ上記中心電極2と対向配
設した接地電極3と,上記中心電極2と接地電極3との
間に設けた火花ギャップ27とを有する。
【0031】そして,上記中心電極2の先端面には,貴
金属チップ1をレーザ溶接により接合してなる。上記貴
金属チップ1は,少なくともIrを含有する融点が22
00℃以上のイリジウム材よりなり,また上記貴金属チ
ップ1と上記中心電極の電極母材との間には溶融固着層
11を有している。また,該溶融固着層11中には,融
点が1500〜2100℃,線膨張係数が8〜11×1
-6/℃の貴金属が1重量%以上含有されている。な
お,図2において符号93は,高圧コード接続用の端子
部である。また,本例においては,貴金属チップ1は,
中心電極2に接合する例を示すが,このことは,貴金属
チップ1を接地電極3に接合する場合も同様である。
【0032】次に,上記貴金属チップ1を中心電極2に
レーザ溶接する場合につき図1を用いて説明する。ま
ず,本例においては,貴金属チップ1として,Irに予
めRhを添加したIr−Rh合金を用いている。そし
て,図1に示すごとく,中心電極2の先端部21の先端
面211に貴金属チップ1を載置して抵抗溶接により仮
接着しておき(図1A,B),次いで貴金属チップ1と
中心電極2の先端部21との間にレーザ光4を照射した
(図1C)。このとき,上記中心電極2を回転させなが
ら,上記ごとくレーザ光4を照射した。
【0033】これにより,貴金属チップ1と中心電極2
の先端部21との間がレーザエネルギによって溶融され
る。レーザ光4の照射を終了し,放冷することにより,
貴金属チップと中心電極2との間に溶融固着層11が形
成される(図1D)。
【0034】本例においては,上記貴金属チップ1は厚
み1.0mm,直径0.7mmのIr−Rh合金を用い
た。また,レーザ光はYAGレーザを用いた。また,中
心電極2は,Cr15.5重量%,Fe8.0重量%を
含有するNi合金を用いた。また,上記貴金属チップ
は,Rh含量を種々に変えたものを用い,またレーザエ
ネルギは5,7.5,10J(ジュール)の3種類を用
いた。
【0035】このようにして,中心電極2の先端部に貴
金属チップ1をレーザ溶接したスパークプラグ9につい
て,耐久テストを行なった。この耐久テストは,上記ス
パークプラグ9を6気筒,2000CCの内燃機関に装
着し,運転条件としてアイドリング1分間保持後スロッ
トル全開で6000rpm,1分間保持という条件を1
00時間繰り返した。
【0036】耐久テストの結果を,図4に,横軸にレー
ザエネルギ(J)を縦軸に溶融固着層の接合強度(N;
ニュートン)を採って示す。上記接合強度(N)は,溶
融固着層における曲げ強度を示している。この値が大き
い程,貴金属チップと電極母材の接合性が高く,熱応力
緩和効果が大きく,長寿命のスパークプラグである。同
図より,貴金属チップ1としてRhを含有するIr合金
を用いた場合には,レーザエネルギ強度の大小に影響さ
れることなく,優れた接合強度を得ることができること
が分かる。
【0037】次に,上記貴金属チップ1中におけるRh
含有量を種々に変え,レーザエネルギ5Jでレーザ溶接
を行った。その他の条件は上記と同様である。耐久テス
トの結果を図5に,貴金属チップ中のRh含有量と溶融
固着層の接合強度(N)を採って示す。同図より知られ
るごとく,貴金属チップ中のRhが増加すると共に接合
強度が向上し,Rh含有量が2%以上では100N以上
の強度が得られることが分かる。なお,貴金属チップ中
におけるRh含有量が2%の場合には,溶融固着層中に
おける「Rh含有量が1重量%以上のRh含有量」の軸
方向の厚みTは,約0.2mmであった。
【0038】次に,上記3種類のレーザ溶接における上
記溶融固着層の断面形状は,大略図6〜図8に示す状態
となった。即ち,図6に示すレーザエネルギ5Jの場合
には貴金属チップ1と中心電極2との間の溶融固着層1
1は,比較的小さく,Irの溶け込み量は,後述する比
較例(貴金属チップがIr100%)の場合に比較して
多かった。
【0039】また,図7に示すレーザエネルギ7.5J
の場合は,溶融固着層11は比較的大きく,Ir,Ni
とも良好な溶け込み状態であった。また,図8に示すレ
ーザエネルギ10Jの場合には,溶融固着層11はかな
り大きく,側面のエグレ111が認められるが,内部に
は巣は全く認められなかった。
【0040】実施形態例2 本例は,図9,図10に示すごとく,貴金属チップ10
と中心電極2との間に貴金属としてのRhチップを介在
させ,レーザ溶接を行なった例を示す。即ち,本例にお
いては,溶融固着層中にRhを添加する方法として,図
9(A)に示すごとく,まず中心電極2の先端部21の
先端面211にRh板15を,抵抗溶接により仮接合
し,次いで同図(B)に示すごとく,その上にIr10
0%の貴金属チップ10を載置し,抵抗溶接により仮接
合した。
【0041】次いで,実施形態例1と同様にして,7.
5Jのレーザを照射し,同図(C)に示すごとく,貴金
属チップ10と中心電極2とを溶融固着層150により
レーザ溶接した。この溶融固着層150は,中心電極2
中のNiと貴金属チップ10のIrと上記Rhとよりな
る合金である。そして,上記Rh板の厚みを種々に変え
て,上記溶融固着層中のRh含有量を変化させたスパー
クプラグを作製した。
【0042】次いで,実施形態例1と同様に耐久テスト
を行なった。その結果を,図10に,溶融固着層中のR
h量と接合強度との関係を示す。同図より,溶融固着層
中のRh量1%以上の場合には優れた接合強度を有する
ことが分かる。なお,上記実施形態例1,2について
は,Rhの他にPt,Pdについても同様のテストを行
なった。その結果,上記と同様の結果が得られた。
【0043】なお,上記実施形態例においては,貴金属
チップの直径は0.7mmとしたが,これに限らず0.
4〜1.5mmとした場合にも同様の効果を得ることが
できる。
【0044】実施形態例3 本例は,図11,図12に示すごとく,貴金属チップと
中心電極との間に溶融固着層と未溶融部とを有する例で
ある。即ち,まず図11は,上記実施形態例1のレーザ
溶接の際に,貴金属チップ1と中心電極2との間を完全
に溶融することなく,未溶融部116を残存させた例で
ある。
【0045】かかる未溶融部116は,レーザ溶接時の
レーザエネルギを,貴金属チップ1と中心電極2との間
が完全に溶融しないようにコントロールすることによっ
て形成される。そして,このとき,上記溶融固着層11
は,「該溶融固着層中に上記貴金属が1重量%以上含有
されている貴金属含有層の厚みT」が0.2mm以上で
あることが好ましい。これにより,上記未溶融部116
が残存していても,本発明の効果を確実に発揮すること
ができる。
【0046】上記厚みTは,同図に示すごとく,上記貴
金属チップ1の半径Rの半分の位置Sにおける軸方向の
厚みをいう。上記半分の位置Sとは,半径Rの貴金属チ
ップにおいて,貴金属チップの中心線Pから,上記半径
Rの半分(R/2)の位置,つまり半径Sの円の位置を
いう。
【0047】また,図12は,実施形態例2のように,
貴金属チップ10と中心電極2との間にRh板15を介
在させて,これら三者の間に溶融固着層11を設ける場
合,Rh板15の一部が未溶融部として残存している場
合を示している。この場合とも,上記と同様に,貴金属
チップ10の半径Rの半分の位置Sにおける軸方向の,
上記貴金属含有量の厚みTは0.2mm以上であること
が好ましい。その理由は,図11の場合と同様である。
【0048】なお,上記図11,図12においては,未
溶融部を有している場合について述べたが,上記貴金属
含有層の厚みTについては,未溶融部を有しない実施形
態例1,実施形態例2の場合についても同じである。
【0049】実施形態例4 次に,本願発明の内燃機関用スパークプラグの製造方法
について,図13〜か図16を用いて説明する。本例に
おいては,中心電極2の先端部21の先端に形成した円
筒部22上に貴金属チップ1を当接した後に,レーザ照
射することを特徴とする。本例にて使用した貴金属チッ
プ1は,実施形態例1に採用した貴金属チップ1と同様
の貴金属チップであり,例えば,lrにRhが10重量
%含有されたイリジウム合金を採用している。
【0050】また,図13に示すごとく,中心電極1の
先端には,実施形態例1と同様,径小部である先端部2
1が形成されているが,さらに,この先端部21の先端
に,略同一な径を有する円筒部22が形成されている。
尚,この円筒部22の径は,貴金属チップ1の直径0.
7mmよりも大なる径である1.1mm及び高さが0.
3mmを有する。
【0051】そして,図13に示すごとく,中心電極2
の円筒部22に貴金属チップ1を当接させ,抵抗溶接に
より,貴金属チップ1と円筒部22とを仮接着する。そ
の後,貴金属チップ1と中心電極2の円筒部22との境
界である当接境界領域Aに対して,レーザ光を照射し,
図14に示すごとく,中心電極2と貴金属チップ1との
間に溶融固着層11を形成した。
【0052】本例においては,中心電極2の先端部に,
貴金属チップ1の径よりも大なる略同一の径を有する円
筒部22を形成し,この円筒部22の端面と貴金属チッ
プ1とを当接させた後にレーザ溶接している。このよう
な製法を採用することにより,レーザが照射される領域
が貴金属チップ1と中心電極2の円筒部22との境界面
よりもずれたとしても,得られる溶融固着層11の組成
が大きく変化することがないので,貴金属チップ1と中
心電極2との接合を確実に行うことができる。
【0053】ここで,図13に示すレーザ光を当接溶解
領域A内に照射した場合の溶融固着層11の形状を図1
4に,レーザ光を当接溶解領域Aよりも中心電極軸方向
の貴金属チップ1側に0.35mmずれた箇所に照射し
た場合の溶融固着層11の形状を図15に示した。更
に,レーザ光を当接溶解領域Aよりも中心電極軸方向の
中心,電極2側に0.35mmずれた箇所に照射した場
合の溶融固着層11の形状を図16に示す。
【0054】図15及び図16においては,溶融固着層
11が形成されているにもかかわらず,貴金属チップ1
と中心電極2の先端面との当接境界面211が十分に溶
融固着層11内に含まれていない。そのため,図15及
び図16のような状態では,貫金属チップ1と中心電極
2とは十分な接合カを得ることができないことは容易に
考えられる。それに対して,図14のような溶融固着層
11が形成された場合には,貴金属チップ1と中心電極
2の先端面との当接境界面が溶融固着層11内に含まれ
ており,貴金属チップ1と中心電極2とは十分な接合力
を得ることができている。
【0055】比較例1 本比較例においては,上記実施形態例1において,貴金
属チップとしてIr−Rh合金を用いたのに変えて,貴
金属チップとして100%Irを用いた。そして,実施
形態例1と同様にして,レーザエネルギ5,7.5,1
0Jのレーザ溶接を行なった。
【0056】その結果,図17に示すごとく,耐久テス
トの前後の接合強度をみると,7.5,10Jの場合は
余り変化はないが,5Jの場合には,耐久テストによっ
て接合強度が著しく低下していることが分かる。これ
は,溶融固着層中にRhが含有されていないために,レ
ーザ溶接時におけるレーザエネルギの強度の差異が影響
しているためである(図4と比較)。
【0057】また,図4と比較して分かるように,実施
形態例1においては,溶融固着層中にRhを含有してい
るため,耐久テスト前後とも200N近い接合強度を有
している。しかし,本比較例1(図17)においては,
それよりも低い接合強度しか得られていない。
【0058】また,図18〜図20は,本比較例におい
て,レーザエネルギを5,7.5,10J照射した場合
の溶融固着層81の断面を示している。まず,図18は
レーザエネルギ5Jの場合を示し,これを実施形態例1
の図6と比較すると分かるように,貴金属チップ8は溶
融固着層81中に余り溶け込んでいない。
【0059】図19は,レーザエネルギ7.5Jの場合
を示し,これを図7と比較すると分かるように,やはり
溶融固着層81の大きさが若干小さい。また,図20は
レーザエネルギ10Jの場合を示し,これを図8と比較
すると分かるように,大きなエグレ811と共に溶融固
着層の内部に巣83が発生していることが分かる。
【0060】比較例2 本例は,溶融固着層中に貴金属以外の金属を添加するこ
とについて検討した。即ち,線膨張係数がNiとIrと
の中間にある,Fe,V,B又はTiを貴金属チップ中
に5重量%添加した貴金属チップを用い,実施形態例1
と同様にスパークプラグを作製し,同様の耐久テストを
行なった。
【0061】その結果,これらを添加した場合には,溶
融固着層の接合強度は,上記Rhを添加した場合に比較
して,いずれも約5〜20%低くかった。また,耐久テ
ストにおいて,溶融固着層を切断面を見たところ,溶融
固着層中に微細なクラックが発生していた。これは,上
記Fe,V,B又はTiは酸化し易く,耐久テスト中
に,溶融固着層中において酸化物を生じること,これら
はIrと全率固溶せず,例えば「Ir3Ti」といった
線膨張係数が不連続な金属間化合物を生成し,熱応力緩
和効果が発揮されないためと判断される。
【0062】上記実施形態例では,中心電極と貴金属チ
ップの接合について述べたが,本発明では接地電極に対
して本件構成の溶融固着層を適用しても同様の効果を得
ることができる。
【0063】上記実施形態例においては,中心電極の先
端面に対向する位置に接地電極を対向させる,1極接地
の場合の内燃機関用スバークプラグに関して述べたが,
本発明においては,接地電極の先端面が中心電極の側面
に対向する2極型の内燃機関用スバークプラグにも適用
させることができる。即ち,本発明は,内燃機関用スパ
ークプラグの電極にイリジウム材よりなる貴金属チップ
を強固に接合させるものであり,イリジウム材よりなる
貴金属チップを採用する内燃機関用スバークプラグであ
れば,どのような内燃機関用スパークブラグにも採用す
ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,貴金属チップと中心電
極とのレーザ溶接の説明図。
【図2】実施形態例1における,内燃機関用スパークプ
ラグの一部断面図。
【図3】実施形態例1における,内燃機関用スパークプ
ラグの要部説明図。
【図4】実施形態例1における,レーザエネルギと接合
強度との関係図。
【図5】実施形態例1における,貴金属チップ中のRh
量と接合強度との関係図。
【図6】実施形態例1における,レーザエネルギ5Jの
場合の溶融固着層の断面説明図。
【図7】実施形態例1における,レーザエネルギ7.5
Jの場合の溶融固着層の断面説明図。
【図8】実施形態例1における,レーザエネルギ10J
の場合の溶融固着層の断面説明図。
【図9】実施形態例2における,レーザ溶接の説明図。
【図10】実施形態例2における,溶融固着層中のRh
量と接合強度の関係図。
【図11】実施形態例3における,未溶融部を有する場
合の,貴金属含有層の厚みTの説明図。
【図12】実施形態例3における,Rh板を残存させた
場合の,貴金属含有層の厚みTの説明図。
【図13】実施形態例4における,貴金属チップと中心
電極とのレーザ溶接の説明図。
【図14】実施形態例4における,溶融固着層の断面説
明図。
【図15】実施形態例4における,他の溶融固着層の断
面説明図。
【図16】実施形態例4における,更に他の溶融固着層
の断面説明図。
【図17】比較例1における,レーザエネルギと接合強
度の関係図。
【図18】比較例1における,レーザエネルギ5Jの場
合の溶融固着層の断面説明図。
【図19】比較例1における,レーザエネルギ7.5J
の場合の溶融固着層の断面説明図。
【図20】比較例1における,レーザエネルギ10Jの
場合の溶融固着層の断面説明図。
【符号の説明】
1...貴金属チップ, 11,150...溶融固着層, 15...Rh片, 2...中心電極, 21...先端部, 3...接地電極,

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 貫通孔を有する絶縁碍子と,少なくとも
    上記貫通孔の一端に配設した中心電極と,上記絶縁碍子
    を保持するハウジングと,上記ハウジングに設けられ上
    記中心電極と対向配設し,中心電極と共に火花ギャップ
    を形成する接地電極とを有し,かつ上記中心電極と接地
    電極とが対向する少なくとも一方の面には,貴金属チッ
    プをレーザ溶接により接合してなる内燃機関用スパーク
    プラグにおいて,上記貴金属チップは,上記中心電極又
    は接地電極の電極母材の少なくとも一部に対して溶融固
    着層を介して設けられていると共に,少なくともIrを
    含有する融点が2200℃以上のイリジウム材よりな
    り,また,上記溶融固着層中には,融点が1500〜2
    100℃,線膨張係数が8〜11×10-6/℃の貴金属
    が1重量%以上含有されていることを特徴とする内燃機
    関用スパークプラグ。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記溶融固着層中の
    貴金属は,Pt,Pd又はRhの1種以上であることを
    特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記溶融固着
    層中に上記貴金属が1重量%以上含有されている貴金属
    含有層は,上記貴金属チップの半径の半分の位置におけ
    る軸方向の厚みが0.2mm以上であることを特徴とす
    る内燃機関用スパークプラグ。
  4. 【請求項4】 請求項1において,上記貴金属チップ
    は,上記中心電極に対して溶接されていることを特徴と
    する内燃機関用スパークプラグ。
  5. 【請求項5】 請求項4において,上記溶融固着層中の
    貴金属は,貴金属チップ中の貴金属が溶融されたもので
    あることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  6. 【請求項6】 請求項4において,貴金属は,レーザに
    よって接合される中心電極と貴金属チップとの間に設け
    られるとともに,溶融固着層中の貴金属は,中心電極と
    貴金属チップとの間に設けられた貴金属から溶融される
    貴金属であることを特徴とする内燃機関用スバークプラ
    グ。
  7. 【請求項7】 請求項4において,上記貴金属チップ
    は,上記中心電極に対して上記溶融固着層のみを介して
    設けられていることを特徴とする内燃機関用スパークプ
    ラグ。
  8. 【請求項8】 貫通孔を有する絶縁碍子と,少なくとも
    上記貫通孔の一端に配設したニッケルを主成分とする中
    心電極と,上記絶縁碍子を保持するハウジングと,上記
    ハウジングに設けられ上記中心電極と対向配設し,中心
    電極と共に火花ギャップを形成する接地電極とを有し,
    かつ上記中心電極の上記接地電極に対向する面には,貴
    金属チップを接合してなる内燃機関用スパークプラグの
    製造方法において,上記中心電極の先端に径小部が形成
    されるとともに,かつ上記径小部の先端に,略同一な径
    を有する円筒部を形成するとともに,上記中心電極の上
    記円筒部の径よりも小なる径を有する少なくともIrを
    含有する融点が2200℃以上のイリジウム材よりなる
    貴金属チップを上記中心電極の上記円筒部先端面に当接
    させ,上記貴金属チップと上記中心電極の上記円筒部と
    にレーザ光を照射させることにより,上記貴金属チップ
    と上記中心電極の上記円筒部とを溶融固着させることを
    特徴とする内燃機関用スバークプラグの製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項8において,上記貴金属チップを
    上記中心電極の上記円筒部先端面に当接させた後,上記
    貴金属チップと上記中心電極の上記円筒部先端面とを抵
    抗溶接した後に,レーザ光の照射により,上記貴金属チ
    ップと上記中心電極の上記円筒部とを溶融固着させるこ
    とを特徴とする内燃機関用スパークプラグの製造方法。
  10. 【請求項10】 請求項8において,上記貴金属チップ
    と上記中心電極の上記円筒部との当接境界領域にレーザ
    光を照射させることにより,上記貴金属チップと上記中
    心電極の上記円筒部とを溶融固着させることを特徴とす
    る内燃機関用スバークプラグの製造方法。
  11. 【請求項11】 請求項10において,上記当接境界領
    域は,上記貴金属チップと上記中心電極の上記円筒部と
    の当接境界面を中心として,上記中心電極の軸方向に±
    0.3mmの領域であることを特徴とする内燃機関用ス
    パークプラグの製造方法。
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