JP2002020509A - コンクリート構造物の補強用樹脂組成物および補強方法 - Google Patents

コンクリート構造物の補強用樹脂組成物および補強方法

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JP2002020509A
JP2002020509A JP2000213410A JP2000213410A JP2002020509A JP 2002020509 A JP2002020509 A JP 2002020509A JP 2000213410 A JP2000213410 A JP 2000213410A JP 2000213410 A JP2000213410 A JP 2000213410A JP 2002020509 A JP2002020509 A JP 2002020509A
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reinforcing
meth
acrylate
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reinforcing resin
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Tomohiro Mizutani
智裕 水谷
Mari Otani
真理 大谷
Akihiko Fukada
亮彦 深田
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Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 常温および低温での硬化性(速度)に優れる
と共に薄膜乾燥性に優れ、短期間で施工ができ、所望す
る補強効果を発現することができる補強用樹脂組成物、
即ち、既存のコンクリート構造物を補強するのに好適に
用いられる補強用樹脂組成物、および、該補強用樹脂組
成物を用いた補強方法を提供する。 【解決手段】 補強用樹脂組成物は、重合性二重結合を
複数有する(メタ)アクリル系重合体を含むと共に、必
要に応じて、重合性二重結合を有する単量体をさらに含
んでいる。コンクリート構造物の表面に補強用繊維製基
材を披着する前および/または後に、該補強用繊維製基
材に上記補強用樹脂組成物を含浸させることにより、コ
ンクリート構造物を補強する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、各種建築
物の柱、橋脚、橋梁、トンネル等の既存のコンクリート
構造物を補強するのに好適に用いられる補強用樹脂組成
物、および、該補強用樹脂組成物を用いた補強方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、繊維強化樹脂を用いて、例え
ば、各種建築物の柱、橋脚、橋梁、トンネル等の既存の
コンクリート構造物を補強することが実施されている。
該補強方法としては、例えば、炭素繊維等の繊維のシー
ト状物または織物(補強用繊維製基材)にエポキシ樹脂
(補強用樹脂組成物)を予め含浸させてなるプリプレグ
を用い、補強(補修)すべきコンクリート構造物の施工
面(表面)に、エポキシ樹脂を適宜補充しながら該プリ
プレグを披着する方法が採用されている。
【0003】ところが、硬化反応が逐次重合であるた
め、常温硬化型のエポキシ樹脂は、常温での硬化に1日
以上かかる。また、5℃以下で硬化性(速度)が著しく
低下するため硬化不良を生じ易く、このため硬化・養生
に長時間を要すると共に、液ダレ等を防止するための処
置を講じなければならない。さらに、水分があると硬化
が阻害されるので、コンクリート構造物の施工面を下地
処理する等の充分な管理が必要である。従って、施工期
間が長期化する(施工費用が嵩む)、季節や地域によっ
ては施工が困難になる、或いは、雨天時における施工が
難しい等の欠点を有している。
【0004】そこで、上記の欠点を解消すべく、種々の
提案がなされている。例えば特開平9−184305号
公報には、(メタ)アクリル酸エステル等のビニル系単
量体にアクリル系共重合体等の熱可塑性樹脂を溶解して
なる樹脂組成物と、繊維製基材とを用いたコンクリート
構造物の補強方法が開示されている。また、例えば特開
平10−7750号公報には、(メタ)アクリル酸エス
テル等の単量体とビニルエステル樹脂とを含む樹脂組成
物を用いたコンクリート構造物の補強方法が開示されて
いる。後者の方法においては、構造物の表面にラジカル
重合性を有するプライマー組成物を塗布した後、樹脂組
成物および繊維製基材を用いて補強を行っている。つま
り、該プライマー組成物によってコンクリートと樹脂組
成物との密着性を向上させ、補強効果を高めている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
9−184305号公報に記載の樹脂組成物に含まれる
熱可塑性樹脂は硬化(重合)に関与しない。従って、該
樹脂組成物は硬化性(速度)に劣っており、特に、冬季
等の低温時における硬化性(速度)が著しく劣ってい
る。つまり、該公報に記載の補強方法では、施工期間が
長期化するという問題点を解消することができない。ま
た、上記の樹脂組成物は硬化時に酸素の存在を嫌う(嫌
気性)ので、薄膜硬化性に劣っている。
【0006】また、特開平10−7750号公報に記載
の補強方法では、コンクリート構造物の表面にプライマ
ー組成物を塗布する必要があるので、施工工程が増え
る。つまり、該公報に記載の補強方法では、施工期間が
長期化するという問題点を解消することができない。ま
た、ビニルエステル樹脂を用いるので耐候性や耐アルカ
リ性に劣っており、耐久性に難点を有している。
【0007】それゆえ、常温および低温での硬化性(速
度)に優れ、短期間での施工を実現することができる補
強用樹脂組成物、および、該補強用樹脂組成物を用いた
補強方法が求められている。
【0008】本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされ
たものであり、その目的は、常温および低温での硬化性
(速度)に優れると共に薄膜乾燥性に優れ、短期間で施
工ができ、所望する補強効果を発現することができる補
強用樹脂組成物、即ち、既存のコンクリート構造物を補
強するのに好適に用いられる補強用樹脂組成物、およ
び、該補強用樹脂組成物を用いた補強方法を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のコンクリート構
造物の補強用樹脂組成物は、上記の課題を解決するため
に、補強用繊維製基材と共に用いられるコンクリート構
造物の補強用樹脂組成物であって、重合性二重結合を複
数有する(メタ)アクリル系重合体を含むことを特徴と
している。
【0010】本発明のコンクリート構造物の補強方法
は、上記の課題を解決するために、上記の補強用樹脂組
成物を用いたコンクリート構造物の補強方法であって、
コンクリート構造物の表面に補強用繊維製基材を披着す
る前および/または後に、該補強用繊維製基材に上記補
強用樹脂組成物を含浸させることを特徴としている。
【0011】本発明の補強構造は、上記の課題を解決す
るために、コンクリート構造物の表面に形成される補強
構造であって、上記の補強用樹脂組成物と補強用繊維製
基材とからなる補強層を有することを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明にかかる補強用樹脂組成物
は、補強用繊維製基材と共に既存のコンクリート構造物
を補強するのに好適に用いられ、重合性二重結合を複数
有する(メタ)アクリル系重合体を含む構成である。補
強用樹脂組成物は、重合性二重結合を有する単量体をさ
らに含んでいることが好ましい。また、本発明にかかる
コンクリート構造物の補強方法は、コンクリート構造物
の表面に補強用繊維製基材を披着する前および/または
後に、該補強用繊維製基材に上記補強用樹脂組成物を含
浸させる方法である。さらに、本発明にかかる補強構造
は、コンクリート構造物の表面に形成され、上記の補強
用樹脂組成物と補強用繊維製基材とからなる補強層を有
する構成である。尚、本発明において「補強」には補修
も含まれることとする。また、本発明において「披着」
とは、拡げるようにして着けることの意味の他に、被包
するようにして着けること(被着)の意味も含むことと
する。
【0013】補強用樹脂組成物が含む(メタ)アクリル
系重合体は、分子内に重合性二重結合を複数有する重合
体であればよく、特に限定されるものではないが、側鎖
に重合性二重結合を複数有する重合体であることが特に
好ましい。従って、(メタ)アクリル系重合体は架橋性
を備えている。上記(メタ)アクリル系重合体の重合性
二重結合当量は、500〜20,000の範囲内である
ことが好ましく、3,000〜15,000の範囲内で
あることがより好ましく、4,000〜10,000の
範囲内であることが最も好ましい。該重合性二重結合当
量は、「(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量/
該重合体一分子が有する重合性二重結合の数」により求
められる。重合性二重結合当量が500未満である(メ
タ)アクリル系重合体を含む補強用樹脂組成物は、その
硬化物にクラックが発生する場合がある。一方、重合性
二重結合当量が20,000を越える(メタ)アクリル
系重合体を含む補強用樹脂組成物は、その硬化物の物性
が低下する場合がある。
【0014】(メタ)アクリル系重合体は、GPC(ゲ
ルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリス
チレン換算での重量平均分子量(Mw)が、3,000
〜1,000,000の範囲内であることが好ましく、
5,000〜100,000の範囲内であることがより
好ましく、10,000〜60,000の範囲内である
ことがさらに好ましく、10,000〜40,000の
範囲内であることが特に好ましく、10,000〜3
0,000の範囲内であることが最も好ましい。重量平
均分子量が3,000未満である(メタ)アクリル系重
合体を含む補強用樹脂組成物は、その硬化物の物性が低
下する場合がある。一方、重量平均分子量が1,00
0,000を越える(メタ)アクリル系重合体を含む補
強用樹脂組成物は、粘度が高くなり過ぎ、例えば硬化剤
との混合時、施工時等における作業性や補強用繊維製基
材への含浸性、取り扱い性に支障を来す場合がある。
尚、上記重量平均分子量は、装置としてSC−8020
システム(東ソー株式会社製)を、カラムとしてTSK
gelGMH(東ソー株式会社製)を、展開溶媒として
テトラヒドロフランをそれぞれ用い、溶媒の流量を1m
l/分として測定した値である。
【0015】上記(メタ)アクリル系重合体の製造方法
としては、特に限定されるものではないが、例えば、
(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有していてもよ
い不飽和単量体(必要に応じて)とを含む単量体成分を
重合させることにより、分子内に官能基を有するポリマ
ーを合成した後、該ポリマーと、ポリマーが有する官能
基と反応する官能基を有する重合性単量体とを反応させ
る方法が挙げられる。エチレン性二重結合を有する単量
体を重合性単量体として用いることにより、コンクリー
トと樹脂組成物との密着性がより一層向上する。
【0016】上記ポリマーが有する官能基と、重合性単
量体が有する官能基との組み合わせとしては、具体的に
は、例えば、カルボキシル基とグリシジル基、カルボキ
シル基とヒドロキシル基、カルボキシル基とアミノ基、
カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とア
ジリジン基、ヒドロキシル基と酸無水物基、ヒドロキシ
ル基とイソシアネート基、等が挙げられるが、これら例
示の組み合わせに限定されるものではない。上記例示の
組み合わせのうち、カルボキシル基とグリシジル基が特
に好ましい。また、上記組み合わせにおける何方の官能
基をポリマーが有するべきかに関しては、特に限定され
るものではない。但し、該ポリマーが重合性二重結合お
よびカルボキシル基を有する場合には、両者の反応性が
高いとポリマー間での架橋結合が形成され、ゲル化する
おそれがある。従って、この場合には、例えば、(メ
タ)アクリル系単量体と、カルボキシル基との反応性が
低い官能基を有する不飽和単量体とを含む単量体成分を
重合させることにより、分子内に該官能基を有するポリ
マーを合成した後、該ポリマーと、ポリマーが有する官
能基との反応性が高い官能基を有する重合性単量体とを
反応させる方法が好ましい。さらに、反応の簡便性や利
便性から鑑みて、カルボキシル基を有するポリマーを合
成した後、該ポリマーと、グリシジル基を有する重合性
単量体とを反応させることにより、ポリマーが有するカ
ルボキシル基の一部とグリシジル基とを結合させる方法
がより好ましい。これにより、重合性二重結合およびカ
ルボキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体が製造
される。
【0017】上記(メタ)アクリル系重合体の製造に用
いられる(メタ)アクリル系単量体としては、具体的に
は、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アク
リレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル
(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレー
ト、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル
(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、
デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アク
リレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル
(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリ
レート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジ
シクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ジシクロ
ペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペ
ンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシ
化シクロデカトリエン(メタ)アクリレート、イソボル
ニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレ
ート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル
(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリ
レート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキ
シエトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエト
キシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフ
リル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラ
ヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アク
リレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2
−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリ
レート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシ
アネートエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2
−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシ
エチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエ
チレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピ
レングリコール(メタ)アクリレート、エトキシプロピ
レングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシプロピ
レングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロ
ピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジプ
ロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジ
プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ
トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキ
シトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブト
キシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メ
トキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレー
ト、エトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリ
レート、ブトキシトリプロピレングリコール(メタ)ア
クリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アク
リレート、アルキルオキシポリエチレングリコールモノ
(メタ)アクリレート〔例えば、メトキシポリエチレン
グリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレ
ングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチ
レングリコール(メタ)アクリレート等〕、ポリプロピ
レングリコールモノ(メタ)アクリレート、アルキルオ
キシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレー
ト〔例えば、メトキシポリプロピレングリコール(メ
タ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール
(メタ)アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコ
ール(メタ)アクリレート等〕、フェノキシジエチレン
グリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチ
レングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリ
エチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ
ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリ
ル(メタ)アクリレート、アリルアルコールのオリゴエ
チレンオキサイド付加物の(メタ)アクリル酸エステ
ル、アリルアルコールのポリプロピレンオキサイド付加
物の(メタ)アクリル酸エステル等の、(メタ)アクリ
ル酸エステル類;N,N−ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート等の、塩基性(メタ)アクリレート類;(メ
タ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アク
リルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミ
ド等の、(メタ)アクリルアミド類;エチル−2−シア
ノ−3,5−ジフェニルアクリレート等の、紫外線吸収
性基を有する(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリ
ロニトリル、(メタ)アクロレイン;(メタ)アクリロ
イルモルホリン;エトキシカルボニルメチル(メタ)ア
クリレート、エチレンオキシド変性フタル酸(メタ)ア
クリレート、エチレンオキシド変性コハク酸(メタ)ア
クリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレー
ト、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2
−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピ
ルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
これら(メタ)アクリル系単量体は、一種類のみを用い
てもよく、また、二種類以上を併用してもよい。
【0018】単量体成分に占める(メタ)アクリル系単
量体の割合は、50重量%以上,100重量%以下であ
ることが好ましく、70重量%以上,100重量%以下
であることがさらに好ましく、80重量%以上,100
重量%以下であることが最も好ましい。
【0019】(メタ)アクリル系単量体と共重合可能な
その他の不飽和単量体としては、具体的には、例えば、
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロ
ロスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル等のビニルエス
テル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテ
ル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アリ
ルアルコール、アリルグリシジルエーテル、エチレング
リコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモ
ノアリルエーテル等のアリル化合物;N−フェニルマレ
イミド、N−シクロへキシルマレイミド、N−イソプロ
ピルマレイミド等のN−置換マレイミド類;等が挙げら
れる。これら不飽和単量体は、必要に応じて、一種類の
みを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよ
い。
【0020】単量体成分に占める、(メタ)アクリル系
単量体と共重合可能なその他の不飽和単量体の割合は、
0重量%以上,50重量%未満であることが好ましく、
0重量%以上,30重量%未満であることがさらに好ま
しく、0重量%以上,20重量%未満であることが最も
好ましい。
【0021】(メタ)アクリル系単量体と不飽和単量体
とを含む単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を
使用することが望ましい。上記の重合開始剤としては、
例えば、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール
類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサ
イド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカー
ボネート類、パーオキシエステル類等の有機過酸化物;
アゾニトリル化合物類、アゾアミジン化合物類、サイク
リックアゾアミジン化合物類、アゾアミド化合物類、ア
ルキルアゾ化合物類等が挙げられる。該重合開始剤とし
ては、より具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサ
イド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトン
パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘ
キサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t
−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオ
キサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミル
パーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシ
ル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物;2,
2’−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ
−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等の
アゾ化合物;等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、ま
た、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。単量体成
分に対する重合開始剤の添加量等は、特に限定されるも
のではない。
【0022】上記単量体成分を重合させる際には、得ら
れるポリマーの平均分子量等を調節するために、連鎖移
動剤を添加することがより望ましい。上記の連鎖移動剤
としては、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御で
きることから、チオール化合物が特に好適であるが、特
に限定されるものではなく、α−メチルスチレンダイマ
ーや四塩化炭素等を用いることもできる。上記のチオー
ル化合物としては、具体的には、例えば、t−ブチルメ
ルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシル
メルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノー
ル、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリ
コール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコ
ールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリ
ス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテト
ラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール酸ア
ルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メ
ルカプトプロピオン酸オクチル、1,4−ブタンジオー
ルジ−(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプ
ロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタエ
リスリトールテトラキス−(β−チオプロピオネート)
等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル;等
が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら
連鎖移動剤は、必要に応じて、一種類のみを用いてもよ
く、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0023】連鎖移動剤の使用量は、該連鎖移動剤の種
類や、単量体成分との組み合わせ等に応じて設定すれば
よく、特に限定されるものではないが、単量体成分に対
して0.1重量%〜15重量%の範囲内が好適である。
【0024】単量体成分の重合方法としては、例えば、
塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方
法が挙げられるが、塊状重合が特に好ましい。上記の重
合を行う際の反応温度や反応時間等の反応条件は、特に
限定されるものではなく、例えば、公知の反応条件を採
用することができる。また、懸濁重合を採用する場合に
は、ポリビニルアルコール等の分散安定剤を用いて、水
等の分散媒中に懸濁させればよい。尚、上記の重合は、
窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0025】また、単量体成分の重合手法は、特に限定
されるものではないが、単量体成分の重合を途中で停止
させる方法、即ち、部分重合法がより好ましい。これに
より、(メタ)アクリル系重合体となるべきポリマー
と、未反応の単量体成分(重合性二重結合を有する単量
体)との混合物が得られ、一段階で(メタ)アクリルシ
ラップを製造することができる。単量体成分の重合を途
中で停止させるタイミング、即ち、所望の(メタ)アク
リルシラップを得るには、例えば反応液をサンプリング
し、該反応液に含まれる固形分の量を測定することによ
り、重合の進行度合いを確認すればよい。該固形分の量
は、10%〜90%の範囲内であることが好ましく、2
0%〜80%の範囲内であることがより好ましく、30
%〜70%の範囲内であることがさらに好ましく、40
%〜60%の範囲内であることが特に好ましい。固形分
の量が10%未満であると、補強用樹脂組成物の硬化時
の収縮率が大きくなるので残留歪みが大きくなり、その
硬化物にクラックが発生する場合がある。一方、固形分
の量が90%を越えると、補強用樹脂組成物の粘度が高
くなり過ぎ、例えば硬化剤との混合時、施工時等におけ
る作業性や補強用繊維製基材への含浸性、取り扱い性に
支障を来す場合がある。
【0026】前記重合性単量体のうち、カルボキシル基
を有する重合性単量体は、重合性二重結合とカルボキシ
ル基とを有する単量体であればよく、特に限定されるも
のではない。該重合性単量体としては、具体的には、例
えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル
安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマ
ル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン
酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル;酸無水
物のモノエステル等の長鎖カルボキシル基含有単量体;
等が挙げられる。これらカルボキシル基を有する重合性
単量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以
上を併用してもよい。
【0027】上記不飽和ジカルボン酸のモノエステルと
しては、具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、
マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイ
ン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ
エチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、
シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。上記酸無水物
のモノエステルとしては、例えば、コハク酸モノエステ
ル、フタル酸モノエステル、ヘキサフタル酸モノエステ
ル等が挙げられる。そして、長鎖カルボキシル基含有単
量体は、例えば、ヒドロキシル基を有する(メタ)アク
リル酸エステルの該ヒドロキシル基を、酸無水物でエス
テル化することによって得られる。該酸無水物として
は、具体的には、例えば、無水コハク酸、無水フタル
酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。該ヒド
ロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして
は、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アク
リレートへのε−カプロラクトン開環付加物、2−ヒド
ロキシエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラク
トン開環付加物等が挙げられる。
【0028】前記重合性単量体のうち、グリシジル基を
有する重合性単量体としては、具体的には、例えば、グ
リシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量
体、つまり、不飽和エポキシ化合物等が挙げられる。
【0029】前記重合性単量体のうち、酸無水物基と反
応する官能基を有する重合性単量体としては、具体的に
は、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレー
ト、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε
−カプロラクトン開環付加物、2−ヒドロキシエチル
(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトン開環付加
物等のヒドロキシル基含有単量体;グリシジル(メタ)
アクリレート等のエポキシ基含有単量体;2−イソプロ
ペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量
体;2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレ
ート等のアジリジン基含有単量体;等が挙げられる。
【0030】前記重合性単量体のうち、酸無水物基を有
する重合性単量体としては、具体的には、例えば、無水
マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水
フタル酸等が挙げられる。尚、重合性単量体は、ポリマ
ーが有する官能基と反応する官能基と、重合性二重結合
とを有する単量体であればよく、特に限定されるもので
はない。
【0031】そして、例えば部分重合法によって得られ
た(メタ)アクリルシラップに含まれるポリマーと、重
合性単量体とを反応させる方法のうち、官能基の組み合
わせがカルボキシル基とグリシジル基である場合には、
その反応(エステル化反応)を迅速に進行させるため
に、エステル化触媒を用いることができる。該エステル
化触媒としては、例えば、トリエチルアミン等のアミン
類、テトラエチルアンモニウムクロライド等の四級アン
モニウム塩類、トリフェニルホスフィン等のリン化合
物、等の一般的な触媒を用いることができるが、Zn,
SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも一つ
の元素を含有する金属化合物(以下、単に金属化合物と
記す)、および/または、四級ホスホニウム塩がより好
ましい。該金属化合物および四級ホスホニウム塩は、触
媒活性が高く、ポリマーが有するカルボキシル基と不飽
和エポキシ化合物が有するグリシジル基とのエステル化
反応を主に促進することができる。また、(メタ)アク
リル系重合体を含むシラップ(補強用樹脂組成物)を着
色させることがない。さらに、補強用樹脂組成物の貯蔵
安定性が低下することを防止することができる。尚、該
シラップのハーゼン色数は、0〜50の範囲内であるこ
とが好ましく、0〜30の範囲内であることがより好ま
しい。
【0032】上記金属化合物としては、Zn,Snおよ
びZrからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を
含有する無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ
酸金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩等
が挙げられる。
【0033】無機金属化合物としては、Zn,Snおよ
びZrからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を
含有する金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属
ヨウ化物等の金属ハロゲン化物;金属酸化物、金属硫化
物等の金属カルコゲン化物;金属窒化物;金属リン化
物;金属砒化物;金属炭化物;金属ケイ化物;金属ホウ
化物;金属シアン化物;金属水酸化物;金属塩化酸化
物;等が挙げられ、より具体的には、例えば、塩化亜
鉛、酸化ジルコニウム、硫化スズ等が挙げられる。
【0034】オキソ酸金属塩としては、Zn,Snおよ
びZrからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を
含有する硫酸金属塩、硝酸金属塩、リン酸金属塩、ホス
フィン酸金属塩、ホスホン酸金属塩、メタリン酸金属
塩、ホウ酸金属塩、塩素酸金属塩、臭素酸金属塩、ヨウ
素酸金属塩、ケイ酸金属塩等が挙げられ、より具体的に
は、例えば、硫酸スズ、リン酸亜鉛、硝酸ジルコニウム
等が挙げられる。尚、オキソ酸金属塩には、リン酸水素
亜鉛等の水素塩も含まれるものとする。
【0035】ポリオキソ酸金属塩としては、Zn,Sn
およびZrからなる群より選ばれる少なくとも一つの元
素を含有するポリリン酸金属塩、ポリホウ酸金属塩、ポ
リニオブ酸金属塩、ポリタンタル酸金属塩、ポリモリブ
デン酸金属塩、ポリバナジン酸金属塩、ポリタングステ
ン酸金属塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、ポ
リリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0036】有機金属化合物としては、一般式(1) M−(R)n ……(1) (式中、MはZn,SnおよびZrからなる群より選ば
れる少なくとも一つの元素であり、Rはメチル,エチ
ル,メトキシ,エトキシ等の有機基であり、nは1〜6
の整数である)で表される化合物が挙げられ、より具体
的には、例えば、ジエチル亜鉛、テトラエトキシジルコ
ニウム等が挙げられる。
【0037】有機酸金属塩としては、例えば金属石鹸が
挙げられ、該金属石鹸としては、Zn,SnおよびZr
からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の脂肪酸
金属塩(ラウリル酸金属塩、ミリスチン酸金属塩、パル
ミチン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、オレイン酸金属
塩等)、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属塩、スルホ
ン酸金属塩、硫酸エステル金属塩、リン酸エステル金属
塩等が挙げられ、より具体的には、例えば、オクチル酸
亜鉛、ステアリン酸スズ等が挙げられる。また、金属石
鹸以外の有機酸金属塩としては、Zn,SnおよびZr
からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素の酢酸金
属塩、安息香酸金属塩、サリチル酸金属塩、シュウ酸金
属塩、酒石酸金属塩、乳酸金属塩、クエン酸金属塩等が
挙げられ、より具体的には、例えば、酢酸亜鉛、サリチ
ル酸スズ等が挙げられる。
【0038】金属錯塩としては、一般式(2) M−(L)n ……(2) (式中、MはZn,SnおよびZrからなる群より選ば
れる少なくとも一つの元素であり、Lはアセチルアセト
ン等の配位子であり、nは1〜6の整数である)で表さ
れる化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、アセ
チルアセトン亜鉛等が挙げられる。
【0039】上記四級ホスホニウム塩としては、具体的
には、例えば、テトラフェニルホスホニウムブロマイ
ド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラブ
チルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホス
ホニウムブロマイド等が挙げられるが、テトラフェニル
ホスホニウム塩が特に好ましい。
【0040】上記エステル化触媒の使用量は、その種類
や、ポリマーと重合性単量体との組み合わせ等に応じて
設定すればよく、特に限定されるものではないが、ポリ
マー100重量部に対して0.005重量部〜5重量部
の範囲内が好適であり、0.05重量部〜3重量部の範
囲内がより好適である。尚、エステル化触媒は、一種類
のみを用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよ
い。
【0041】また、上記エステル化反応を行う際には、
重合禁止剤を共存させてもよい。該重合禁止剤として
は、具体的には、例えば、ハイドロキノン、メチルハイ
ドロキノン、メトキシハイドロキノン、t−ブチルハイ
ドロキノン等が挙げられる。さらに、上記エステル化反
応を行う際には、溶媒を用いることができる。該溶媒と
しては、水および/または有機溶媒が挙げられる。
【0042】上記エステル化反応において、ポリマー
と、不飽和エポキシ化合物と、金属化合物および/また
は四級ホスホニウム塩とを混合する順序や方法は、特に
限定されるものではなく、ポリマーと不飽和エポキシ化
合物との反応時に金属化合物および/または四級ホスホ
ニウム塩が存在していればよい。
【0043】重合性二重結合を複数有する(メタ)アク
リル系重合体の具体的な製造方法としては、カルボキシ
ル基を有するポリマーの該カルボキシル基の一部と、不
飽和エポキシ化合物(重合性単量体)のグリシジル基と
を反応させる上記方法の他に、例えば、(メタ)アクリ
ル系単量体と、カルボキシル基含有単量体と、ヒドロキ
シル基含有単量体とを含む単量体成分を重合させること
により、分子内にヒドロキシル基を有するポリマーを合
成した後、有機錫化合物等のウレタン化触媒を用いて該
ポリマーのヒドロキシル基と、イソシアネート基含有単
量体のイソシアネート基とを反応させる方法;(メタ)
アクリル系単量体と、ヒドロキシル基含有単量体とを含
む単量体成分を重合させることにより、分子内にヒドロ
キシル基を有するポリマーを合成した後、該ポリマーの
ヒドロキシル基と、酸無水物基含有単量体の酸無水物基
とを反応させる方法;等が挙げられるが、上記例示の方
法にのみ限定されるものではない。
【0044】前記(メタ)アクリル系単量体と重合性単
量体との特に好ましい組み合わせとしては、例えば、
(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレー
ト、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリ
ル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2
−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、2−イ
ソシアネートエチル(メタ)アクリレートと2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレート、および、2−ヒドロ
キシエチル(メタ)アクリレートと無水マレイン酸、が
挙げられる。
【0045】尚、分子内に重合性二重結合とヒドロキシ
ル基とを有するポリマーが合成されていることの確認方
法としては、例えば下記方法が挙げられる。即ち、先
ず、ポリマーを含む反応液を該反応液と同量のアセトン
に溶解し、この溶液を20倍量のメチルアルコール(貧
溶媒)に滴下することによりポリマーを分離・沈澱させ
た後、濾別して乾燥させる。そして、得られた乾燥物
(ポリマー)を、核磁気共鳴装置( 1H−NMR装置)
としてUNITY−plus(バリアンジャパン株式会
社製)を用い、共鳴周波数:400MHz、溶媒:クロ
ロホルム−d、基準物質:テトラメチルシラン(TM
S)、積算回数:10回、の測定条件でプロトン核磁気
共鳴分析を行うことにより、 1H−NMRスペクトルに
重合性二重結合およびヒドロキシル基に基づくシグナル
が各々あるか否かを確認する。これにより、分子内に重
合性二重結合とヒドロキシル基とを有するポリマーが合
成されていることを確認することができる。
【0046】(メタ)アクリル系重合体に含まれるカル
ボキシル基の濃度(単位重量当たりの個数)は、特に規
定されるものではないが、(メタ)アクリル系重合体1
g当たり1×10-7モル〜6×10-3モルの範囲内であ
ることがより好ましい。(メタ)アクリル系重合体1g
当たりのカルボキシル基の濃度が6×10-3モルよりも
高くなると、補強用樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、
作業性や補強用繊維製基材への含浸性が低下するおそれ
がある。
【0047】補強用樹脂組成物は、重合性二重結合を有
する単量体(以下、二重結合含有単量体と記す)を含ん
でいてもよい。該二重結合含有単量体としては、具体的
には、例えば、上述した(メタ)アクリル系重合体の原
料として用いられる単量体成分、即ち、(メタ)アクリ
ル系単量体;スチレン類、ビニルエステル類、ビニルエ
ーテル類、アリル化合物、N−置換マレイミド類等の不
飽和単量体;不飽和ジカルボン酸およびその無水物等の
重合性単量体;等が挙げられる。これら二重結合含有単
量体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上
を併用してもよい。上記例示の二重結合含有単量体のう
ち、(メタ)アクリル系単量体が特に好ましい。また、
速硬化性および低温硬化性の観点から、(メタ)アクリ
ル系単量体の二重結合含有単量体に占める割合は、50
重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上
であることがさらに好ましい。尚、(メタ)アクリルシ
ラップを製造した場合、即ち、部分重合法によって(メ
タ)アクリル系重合体となるべきポリマーと、未反応の
単量体成分との混合物を製造した場合には、該未反応の
単量体成分が二重結合含有単量体に相当する。
【0048】さらに、補強用樹脂組成物の硬化物の性能
を向上させるために、多官能の二重結合含有単量体を用
いることもできる。該多官能の二重結合含有単量体とし
ては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)ア
クリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプ
ロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリグリ
セロールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ
タ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)
アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)ア
クリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレー
ト、2−ブチン−1,4−ジ(メタ)アクリレート、シ
クロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリ
レート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレー
ト、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、水素
化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタン
ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノー
ルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス−(4−(メ
タ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−
ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェ
ニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)アクリ
ロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−
ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキ
シフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−(メタ)
アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、
2,2−ビス−(4−(メタ)アクリロイルオキシ(2
−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、ビス−
(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フタレー
ト、両末端(メタ)アクリル変性ブタジエン系オリゴマ
ー(分子量1,000〜10,000)等の多官能(メ
タ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレート
類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレン
グリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコール
ジビニルエーテル、シクロへキサンジメタノールジビニ
ルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;ジビニルベン
ゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、
トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレー
ト、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシア
ヌレート;等が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。これら多官能の二重結合含有単量体は、必要に応
じて一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。尚、二重結合含有単量体として、(メ
タ)アクリル系単量体とそれ以外の上記単量体とを用い
る場合における両者の比率、即ち、二重結合含有単量体
全体に占める(メタ)アクリル系単量体の割合は、所望
する補強用樹脂組成物の性能等に応じて調節すればよ
く、特に限定されるものではない。
【0049】さらに、補強用樹脂組成物に低臭気性を付
与する場合には、常圧(1013hPa)における沸点
が120℃以上の、いわゆる高沸点の二重結合含有単量
体を用いることもできる。該沸点は150℃以上である
ことがより好ましく、180℃以上であることがさらに
好ましい。高沸点の二重結合含有単量体としては、例え
ば、アルキレングリコールやオリゴアルキレングリコー
ルと、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とのエ
ステル、具体的には、エチレングリコールやオリゴエチ
レングリコール、オリゴプロピレングリコールの、アク
リル酸またはメタクリル酸エステル、例えば、アルコキ
シオリゴエチレン(またはプロピレン)グリコールジ
(メタ)アクリレート等が挙げられる。より具体的に
は、高沸点の二重結合含有単量体としては、例えば、エ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート(分子量が好ましくは800
以下、さらに好ましくは600以下)、トリプロピレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレング
リコールジ(メタ)アクリレート(分子量が好ましくは
800以下、さらに好ましくは600以下)等が挙げら
れる。これら高沸点の二重結合含有単量体は、必要に応
じて一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。これら化合物は多官能の二重結合含有単
量体でもある。上記例示の高沸点の二重結合含有単量体
のうち、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好
ましい。
【0050】尚、二重結合含有単量体として、高沸点の
二重結合含有単量体を用いる場合には、二重結合含有単
量体全体に占める高沸点の二重結合含有単量体の割合
は、20重量%以上であることが好ましく、30重量%
以上であることがより好ましく、50重量%以上である
ことがさらに好ましく、60重量%以上であることが特
に好ましく、70重量%以上であることが最も好まし
い。高沸点の二重結合含有単量体の割合が20重量%未
満であると、補強用樹脂組成物が大気に曝された場合に
皮張りし易くなる。また、二重結合含有単量体全体に占
める高沸点の二重結合含有単量体以外の前記単量体の割
合が相対的に多くなるので、補強用樹脂組成物の臭気が
強くなる。
【0051】また、補強用樹脂組成物は、コンクリート
との密着性の観点から、前記(メタ)アクリル系単量体
および/または重合性単量体として、分子内に(メタ)
アクリロイル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する
二重結合含有単量体(例えば、ジシクロペンテニルオキ
シエチル(メタ)アクリレート等)や、(メタ)アクリ
ロイル基と共重合可能な重合性二重結合およびエチレン
性不飽和二重結合を有する二重結合含有単量体を用いる
ことがより好ましい。尚、「エチレン性不飽和二重結
合」とは、例えばビニル基やアリル基等の不飽和炭化水
素基を意味し、(メタ)アクリロイル基等のいわゆる
α,β−不飽和カルボニル基を意味するものではない。
【0052】二重結合含有単量体に含まれるカルボキシ
ル基の濃度(単位重量当たりの個数)は、特に規定され
るものではないが、二重結合含有単量体1g当たり1×
10-6モル〜1×10-2モルの範囲内であることがより
好ましい。二重結合含有単量体1g当たりのカルボキシ
ル基の濃度が1×10-2モルよりも高くなると、補強用
樹脂組成物の取り扱い性や安全性が低下するおそれがあ
る。
【0053】補強用樹脂組成物は、前記(メタ)アクリ
ル系重合体と二重結合含有単量体との混合物である。補
強用樹脂組成物における(メタ)アクリル系重合体と二
重結合含有単量体との割合(重合体/単量体)は、作業
に適した良好な粘度と硬化物の各種物性とのバランスを
図る上で、90/10〜10/90の範囲内であること
がより好ましく、80/20〜20/80の範囲内であ
ることがさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体の
割合が90%を越えると、補強用樹脂組成物の粘度が高
くなり過ぎ、例えば硬化剤との混合時、施工時等におけ
る作業性や補強用繊維製基材への含浸性、コンクリート
との密着性、取り扱い性に支障を来す場合がある。一
方、(メタ)アクリル系重合体の割合が10%未満であ
ると、硬化性に劣り、補強用樹脂組成物の硬化物が熱可
塑性の傾向を示し、耐熱性等の性能が低下する場合があ
る。上記の割合で(メタ)アクリル系重合体と二重結合
含有単量体とが混合された補強用樹脂組成物の室温付近
での粘度は、通常、0.1ポイズ〜100ポイズ程度で
ある。該粘度は、補強用樹脂組成物の用途等に応じて、
(メタ)アクリル系重合体と二重結合含有単量体との割
合を適宜変更することにより、所望の値に調節すること
ができる。
【0054】補強用樹脂組成物に含まれるカルボキシル
基の濃度(単位重量当たりの個数)の上限値は、該補強
用樹脂組成物1g当たり3×10-3モルであることが好
ましく、2×10-3モルであることがさらに好ましく、
1.5×10-3モルであることが特に好ましい。一方、
カルボキシル基の濃度の下限値は、該補強用樹脂組成物
1g当たり1×10-7モルであることが好ましく、1×
10-5モルであることがさらに好ましく、1×10-4
ルであることが特に好ましい。補強用樹脂組成物1g当
たりのカルボキシル基の濃度が3×10-3モルよりも高
くなると、補強用樹脂組成物の硬化物の耐水性が低下し
易い傾向にある。また、カルボキシル基の濃度が1×1
-7モルよりも低くなると、補強用繊維製基材やコンク
リートとの密着性が低下するおそれがある。尚、上記の
カルボキシル基は、(メタ)アクリル系重合体および二
重結合含有単量体の何方が有していてもよいが、少なく
とも(メタ)アクリル系重合体が有していることがより
好ましく、両者が有していることがさらに好ましい。
【0055】さらに、本発明にかかる補強用樹脂組成物
には、該補強用樹脂組成物が奏すべき効果を阻害しない
範囲内で以て、種々の特性の更なる改善のために、硬化
触媒(硬化剤)、硬化促進剤、紫外線吸収剤、パラフィ
ン、チキソトロピー付与剤(揺変化剤)、熱重合抑制剤
等の重合禁止剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、艶消
し剤、顔料、顔料分散剤、染料、希釈剤、耐候剤、帯電
防止剤、潤滑剤、消泡剤、低収縮化剤、充填材、増量
材、強化材(補強材)、骨材、内部離型剤、可塑剤、沈
降防止剤、変色防止剤、防錆剤、溶剤、シランカップリ
ング剤、チタネートカップリング剤、キレート化剤、難
燃剤、界面活性剤、熱可塑性樹脂、エラストマー等の各
種添加剤が必要に応じて添加されていてもよい。また、
例えばアクリルウレタン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、
不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリエ
ステル(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂等の他
の重合性樹脂等が必要に応じて添加されていてもよい。
但し、補強用樹脂組成物100重量部に対する他の重合
性樹脂の添加量は、0重量部以上,50重量部以下が好
ましく、0重量部以上,40重量部以下がより好まし
く、0重量部以上,30重量部以下がさらに好ましく、
0重量部以上,20重量部以下が特に好ましく、0重量
部以上,10重量部以下が最も好ましい。他の重合性樹
脂の添加量が多いと、補強用樹脂組成物が本来備えるべ
き効果を発揮するのに支障が生じるおそれがある。ま
た、補強用樹脂組成物における重合性二重結合を複数有
する(メタ)アクリル系重合体の含有量は、上述した
(メタ)アクリルシラップの固形分の範囲内において、
該補強用樹脂組成物が本来備えるべき効果を発揮するの
に支障が生じない範囲内で以て添加される上記他の重合
性樹脂の量を考慮して、適宜、設定することができる。
より具体的には、補強用樹脂組成物(100重量%)に
占める重合性二重結合を複数有する(メタ)アクリル系
重合体の割合は、10重量%〜70重量%の範囲内が好
ましく、20重量%〜60重量%の範囲内がより好まし
い。
【0056】上記の硬化触媒としては、前記例示の重合
開始剤が好適である。該硬化触媒としては、より具体的
には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイル
パーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、
t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t
−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキ
シベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロ
ヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、
ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカ
ーボネート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソ
ブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル
−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物;等が挙
げられるが、特に限定されるものではない。これら硬化
触媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上
を併用してもよい。上記例示の重合開始剤のうち、有機
過酸化物がより好ましい。補強用樹脂組成物100重量
部に対する硬化触媒の添加量は、補強用樹脂組成物の組
成、両者の組み合わせ、施工時の気温等に応じて設定す
ればよいが、0.1重量部〜10重量部の範囲内である
ことがより好ましく、0.2重量部〜5重量部の範囲内
であることがさらに好ましい。尚、ベンゾイルパーオキ
サイド等の有機過酸化物は、取り扱い時の安全性を確保
するために、不活性な液体または固体で50%程度の濃
度に希釈したペースト状または粉末状のものが好適であ
る。
【0057】上記の硬化促進剤としては、硬化触媒との
組み合わせでレドックス系硬化剤を構成する化合物が好
適であり、例えば、チオ尿素誘導体、アミン類、有機酸
の金属塩、有機金属キレート化合物類等が挙げられる。
該硬化促進剤としては、より具体的には、例えば、ナフ
テン酸コバルト、オクチル酸コバルト等の金属石鹸;ジ
メチルトルイジン、ジエチルトルイジン、ジイソプロピ
ルトルイジン、ジヒドロキシエチルトルイジン、ジメチ
ルアニリン、ジエチルアニリン、ジイソプロピルアニリ
ン、ジヒドロキシエチルアニリン等の芳香族三級アミ
ン;アルデヒドとアミンとの縮合反応物;等が挙げられ
るが、特に限定されるものではない。これら硬化促進剤
は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を併
用してもよい。上記例示の硬化促進剤のうち、薄膜硬化
性の面から、アミン類、有機酸の金属塩がより好まし
い。補強用樹脂組成物100重量部に対する硬化促進剤
の添加量は、補強用樹脂組成物の組成、両者の組み合わ
せ、施工時の気温等に応じて設定すればよいが、0.0
1重量部〜10重量部の範囲内であることがより好まし
く、0.1重量部〜4重量部の範囲内であることがさら
に好ましい。
【0058】上記の紫外線吸収剤としては、例えば、ベ
ンゾトリアゾール類;ベンゾエート類;シアノアクリレ
ート類;ベンゾフェノン類;フェニルサリチレート、p
−t−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェ
ニルサリチレート等のサリチル酸エステル類;ヒンダー
ドアミン類;等が挙げられるが、特に限定されるもので
はない。また、ヒンダードアミン類としては、具体的に
は、例えば、TINUVIN 770,123,14
4,622(以上、チバ・ガイギー株式会社の商品
名)、SANOL LS−770,765,292,2
626(以上、三共株式会社の商品名)、アデカスタブ
LA−52,57,62(以上、旭電化工業株式会社
の商品名)等の市販品が好適である。
【0059】上記のパラフィンとしては、例えば、パラ
フィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリ
エチレンワックス等の、パラフィン類やワックス類;ス
テアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸等の高級
脂肪酸;等が挙げられる。該パラフィンの融点は30℃
〜130℃の範囲内であることがより好ましく、50℃
〜80℃の範囲内であることがさらに好ましく、50℃
〜65℃の範囲内であることが特に好ましい。パラフィ
ンを添加することにより、補強用樹脂組成物の硬化時に
該パラフィンが表面に析出して、補強用樹脂組成物と空
気との接触を遮断するので、補強用樹脂組成物の表面固
化性や表面硬度、強度、耐熱性、光沢性、耐汚れ性を向
上させることができる。補強用樹脂組成物100重量部
に対するパラフィンの添加量は、0.01重量部〜5重
量部の範囲内であることが好ましく、0.05重量部〜
2重量部の範囲内であることがより好ましく、0.1重
量部〜1重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0060】上記のチキソトロピー付与剤(揺変化剤)
は、補強用樹脂組成物にチキソトロピー性を付与するた
めに添加される。これにより、コンクリート構造物に対
する施工時に補強用樹脂組成物が補強部位(施工部位)
から垂れることや移動することを防止することができ
る。該チキソトロピー付与剤としては、具体的には、例
えば、コロイダルシリカ、フィームドシリカ、シリカエ
ーロゲル、有機改質粘土、クレー、シリカパウダー、酢
酸セルロース、アエロジル(日本アエロジル株式会社
製)、チクソゲル(横浜化成株式会社製)、ディスパロ
ン(楠本化成株式会社製)、レオロシール(株式会社ト
クヤマ製)、ユリヤウレタン樹脂等が挙げられる。これ
らチキソトロピー付与剤は、必要に応じて一種類のみを
用いてもよく、また、二種類以上を併用してもよい。補
強用樹脂組成物100重量部に対するチキソトロピー付
与剤の添加量は、0.1重量部〜5重量部の範囲内であ
ることが好ましく、0.5重量部〜3重量部の範囲内で
あることがより好ましく、1重量部〜2重量部の範囲内
であることがさらに好ましい。
【0061】上記の重合禁止剤としては、具体的には、
例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイ
ドロキノンモノメチルエーテル、モノ−t−ブチルハイ
ドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、
カテコール、t−ブチルカテコール、p−ベンゾキノ
ン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、2,5−
ジ−t−ブチル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、フェ
ノチアジン、2−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等が挙げられ
る。補強用樹脂組成物100重量部に対する重合禁止剤
の添加量は、0.001重量部〜3重量部の範囲内であ
ることが好ましく、0.01重量部〜2重量部の範囲内
であることがより好ましい。重合禁止剤を添加すること
により、補強用樹脂組成物の貯蔵安定性がより向上し、
該補強用樹脂組成物を安定な状態で保存(貯蔵)するこ
とができる。
【0062】上記の顔料としては、具体的には、例え
ば、酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、ベ
ンガラ、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブル
ー、黄鉛等が挙げられる。また、上記例示以外の添加剤
としては、具体的には、例えば、炭酸カルシウム、アル
ミナ粉末、珪石粉、珪砂、タルク、硫酸バリウム、マイ
カ、水酸化アルミニウム、セメント、高炉スラグ、石膏
等の無機粉体等が挙げられる。
【0063】補強用樹脂組成物に上記添加剤を添加する
際には、例えば、使い捨て容器等の容器に入れた補強用
樹脂組成物に、硬化触媒および重合禁止剤以外の添加剤
を必要に応じて添加・混合した後、施工時の直前に硬化
触媒を添加・混合することが望ましい。つまり、硬化触
媒は、施工時の直前に補強用樹脂組成物に添加すること
が最も好ましい。尚、重合禁止剤は、補強用樹脂組成物
を保存する際に添加すればよい。
【0064】上記添加剤が添加された後の補強用樹脂組
成物(以下、補強用樹脂混合物と記す)の20℃での粘
度は、0.05ポイズ〜100ポイズ程度であることが
好ましく、0.05ポイズ〜50ポイズ程度であること
がより好ましい。これにより、補強用樹脂混合物の補強
用繊維製基材への含浸性、コンクリート構造物に対する
施工性、コンクリートへの浸透性等を良好な状態にする
ことができる。補強用樹脂混合物は、硬化触媒が添加さ
れた後、10分〜90分程度で硬化が終了する。
【0065】本発明にかかる補強用樹脂組成物は、重合
性二重結合を複数有する(メタ)アクリル系重合体を含
むと共に、必要に応じて重合性二重結合を有する単量体
を含んでいるので、常温および低温での硬化性(速度)
に優れると共に薄膜乾燥性に優れ、短期間で施工がで
き、所望する補強効果を発現することができる。即ち、
本発明にかかる補強用樹脂組成物は、コンクリートとの
密着性に優れると共に、靱性や耐熱性、耐溶剤性、耐摩
耗性、速硬化性、低温硬化性、薄膜乾燥性、表面硬度等
に優れており、かつ、作業時の取り扱い性や補強用繊維
製基材への含浸性等に優れている。
【0066】既存のコンクリート構造物を補強する際
に、上記の補強用樹脂混合物と共に用いられる補強用繊
維製基材は、一般に繊維強化樹脂に供される高強度また
は高弾性の繊維(以下、強化繊維と記す)のシート状物
が好適である。該シート状物としては、例えば、織物
(織布)、不織布、マット、強化繊維を一方向に配列さ
せた配列シート等が挙げられるが、特に限定されるもの
ではない。補強用繊維製基材に用いられる強化繊維とし
ては、例えば、ガラス繊維等の無機繊維;ポリアクリロ
ニトリル(PAN)系炭素繊維やピッチ系炭素繊維等の
炭素繊維、アラミド(芳香族系ポリアミド)繊維、ポリ
ビニルアルコール繊維等の有機繊維;が挙げられるが、
特に限定されるものではない。該PAN系炭素繊維とし
ては、具体的には、例えば、トレカT200,T30
0,高弾性タイプ(以上、東レ株式会社の商品名)、パ
イロフィルTR30,MR40(以上、三菱レイヨン株
式会社の商品名)、ベスファイトST−3,IM500
(以上、東邦レーヨン株式会社の商品名)等の市販品が
好適である。また、該ピッチ系炭素繊維としては、具体
的には、例えば、FORCAトウシートFT500,F
T700(以上、東燃株式会社の商品名)、グラノック
TUクロスST200,HM300(以上、日本石油化
学株式会社の商品名)等の市販品が好適である。これら
強化繊維は、必要に応じて二種類以上を併用してもよ
い。上記例示の強化繊維のうち、引張強度やヤング率、
作業性等の面から炭素繊維がより好ましく、PAN系炭
素繊維がさらに好ましく、引張弾性率2×104 kg/
mm2 以上、引張強度300kg/mm2 以上の炭素繊
維が特に好ましい。さらに、その表面にラジカル反応性
基を有する低分子量の化合物が付与(結合)されている
炭素繊維が最も好ましい。炭素繊維は剛性が高い一方、
脆いので、炭素繊維を例えばシート状物にする場合に
は、長繊維を揃え、必要に応じて熱融着繊維等の樹脂バ
インダ等を用いて成形することが好ましい。また、強化
繊維を織物にする場合には、長繊維を撚り合わせてヤー
ンとし、これを織ることが好ましい。
【0067】より具体的には、補強用繊維製基材として
の上記配列シートとしては、例えば、(1) 強化繊維を一
方向に配列して幅方向に拘束し、この拘束された強化繊
維を縦糸(経糸)に、強化繊維または他の繊維(ナイロ
ン繊維、アクリル繊維、(メタ)アクリル系樹脂からな
る繊維等)を横糸(緯糸)にして、互いに絡めるか或い
は織ることによって形成された配列シート;(2) 強化繊
維を一方向に配列すると共に、この強化繊維上に幅方向
に沿って熱融着繊維を配した後、加熱して該熱融着繊維
を溶融させることにより、強化繊維同士を接着してなる
配列シート;(3) 強化繊維を一方向に配列すると共に、
この強化繊維上に熱融着繊維を含むネット状支持体やウ
ェブ状支持体を配した後、加熱して該熱融着繊維を溶融
させることにより、強化繊維同士を接着してなる配列シ
ート;等が挙げられる。
【0068】該熱融着繊維は、例えば、室温以上の温度
で溶融して強化繊維に接着する化合物からなる繊維;該
化合物が表面に付与(結合)されている繊維;該化合物
からなる繊維と、他の繊維(ガラス繊維等)との交絡
糸;等が挙げられる。上記化合物としては、具体的に
は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロ
ン、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。強化繊維
の幅方向に沿って熱融着繊維を配する際の間隔は、3m
m〜150mm程度が好ましく、3mm〜15mm程度
がより好ましい。この間隔にすることにより、得られる
配列シートの取り扱い性が良好となり、かつ、補強用樹
脂混合物を充分に含浸させることができる。
【0069】ネット状支持体のネットの目開き面積は、
下限値が好ましくは10mm2 、より好ましくは15m
2 であり、上限値が好ましくは500mm2 である。
ウェブ状支持体は繊維が絡み合ったシート状物である。
ネット状支持体やウェブ状支持体の目付は、補強用繊維
製基材の強度並びに補強用樹脂混合物の含浸性を考慮し
て、20g/m2 以下が好ましい。
【0070】また、強化繊維として炭素繊維を用いた場
合の補強用繊維製基材の目付は、100g/m2 〜80
0g/m2 の範囲内が好ましく、150g/m2 〜60
0g/m2 の範囲内がより好ましい。目付をこの範囲内
にすることにより、得られる補強用繊維製基材の取り扱
い性が良好となり、かつ、補強用樹脂混合物を充分に含
浸させることができる。
【0071】施工時に用いる補強用繊維製基材と補強用
樹脂混合物との割合(基材/混合物)は、80/20〜
30/70の範囲内であることが好ましい。補強用樹脂
混合物の割合が20%未満であると、補強用繊維製基材
への含浸が不充分となり、補強効果が低減する。
【0072】本発明にかかるコンクリート構造物の補強
方法の具体的な手法としては、例えば、補強用繊維製
基材に補強用樹脂混合物を含浸させた後、該補強用繊維
製基材をコンクリート構造物の表面(施工面)に披着す
る方法;上記の方法を行った後、さらに補強用繊維
製基材に補強用樹脂混合物を塗工する方法;補強用繊
維製基材をコンクリート構造物の表面に披着した後、該
補強用繊維製基材に補強用樹脂混合物を塗工して含浸さ
せる方法;補強用樹脂混合物をコンクリート構造物の
表面に塗工した後、補強用繊維製基材をコンクリート構
造物の表面(つまり補強用樹脂混合物上)に披着し、さ
らに補強用繊維製基材に補強用樹脂混合物を塗工して含
浸させる方法;補強用樹脂混合物をコンクリート構造
物の表面に塗工した後、補強用樹脂混合物を含浸させた
補強用繊維製基材をコンクリート構造物の表面(つまり
補強用樹脂混合物上)に披着する方法;上記の方法
を行った後、さらに補強用繊維製基材に補強用樹脂混合
物を塗工する方法;等が挙げられる。さらに、上記手法
を繰り返すか、幾つかを併用することにより、コンクリ
ート構造物の表面に複数枚の補強用繊維製基材を積層し
て、補強効果をより一層高めることもできる。何れの手
法を採用するかは、例えばコンクリート構造物の補強部
位(施工部位)や、補強すべき程度等に応じて決定すれ
ばよい。補強用繊維製基材を直接、コンクリート構造物
の表面に披着させる場合には、必要に応じて接着剤を用
いればよい。また、補強用繊維製基材は、コンクリート
構造物にかかる応力の方向に応じて、その強化繊維の方
向、つまり、披着の方向を決定すればよく、さらに、複
数枚の補強用繊維製基材を積層する場合には、互いの繊
維方向が異なる(交差する)ように披着すればよい。
【0073】従って、本発明にかかる補強構造、即ち、
コンクリート構造物の表面に形成される補強構造は、補
強用樹脂混合物と補強用繊維製基材とからなる補強層を
有する構成である。該補強層は、一層であってもよく、
複数層であってもよい。
【0074】本発明にかかる補強方法のより具体的な手
順について、上記の方法を例に挙げて以下に説明す
る。先ず、補強すべきコンクリート構造物の施工面(表
面)にモルタル塗装等が施されている場合には、施工に
先立って該塗装を所定の方法で以て削り取り、コンクリ
ートを露出させる。また、コンクリート構造物の施工面
に凹凸(段差、欠損部、クラック等)がある場合には、
グラインダー等の工具を用いて凸部を削って平滑にする
か、若しくは、補強用樹脂混合物との接着性に優れたパ
テ材等で凹部を埋めて平滑にする。該パテ材としては、
例えば補強用樹脂混合物と各種充填材との混合物等が好
適である。
【0075】次に、上記コンクリート構造物の表面に補
強用樹脂混合物を例えば刷毛やローラ等を用いて塗工し
た後、この上(つまり補強用樹脂混合物上)に補強用繊
維製基材を披着する。補強用樹脂混合物の塗工量は、
0.05kg/m2 〜0.3kg/m2 程度が好適であ
る。さらに、該補強用繊維製基材に補強用樹脂混合物を
例えば刷毛やローラ等を用いて塗工すると共に、該補強
用樹脂混合物を例えば溝切りローラやゴムヘラ等を用い
て補強用繊維製基材の繊維方向に沿って移動させ、該補
強用繊維製基材中の空気を押し出しながら充分に含浸さ
せる。これにより、補強用樹脂混合物と補強用繊維製基
材とが複合化する(補強層となる)と共にコンクリート
と一体化するので、補強構造が形成され、コンクリート
構造物を補強することができる。
【0076】コンクリート構造物の表面に複数枚の補強
用繊維製基材を積層する場合には、下層の補強用繊維製
基材に含浸された補強用樹脂混合物の硬化が進行する前
に、上層の補強用繊維製基材を重ね合わせてもよく、下
層の補強用繊維製基材に含浸された補強用樹脂混合物が
硬化した後に、上層の補強用繊維製基材を重ね合わせて
もよい。従って、コンクリート構造物の表面に複数枚の
補強用繊維製基材を積層する場合において、補強用繊維
製基材同士を重ね合わせるタイミングは、特に限定され
るものではない。
【0077】これにより、短期間で施工ができ、所望す
る補強効果を発現することができる補強方法、即ち、既
存のコンクリート構造物を補強するのに好適な、補強用
樹脂組成物を用いた補強方法を提供することができる。
尚、補強用樹脂混合物の硬化後、つまり、補強作業が終
了した後、該硬化物の表面に、美観等の面から、必要に
応じて、アクリル系塗料やウレタン系塗料、アクリルウ
レタン系塗料等の塗料を用いて表面保護塗装を施しても
よい。
【0078】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限
定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載
の「部」は「重量部」を示し、「%」は「重量%」を示
す。
【0079】〔実施例1〕温度計、還流冷却管、ガス導
入管、および撹拌装置を取り付けた反応器にメチルメタ
クリレート96.5部とメタクリル酸3.5部とを仕込
んだ後、該反応器内を窒素ガスで充分に置換した。該混
合物を撹拌しながら80℃に昇温した後、混合物に2,
2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部とメルカプ
トプロピオン酸1.4部とを添加し、同温度で4.5時
間、共重合反応を行い、次いで、反応器内に空気を吹き
込むと共にハイドロキノン0.01部を添加して、共重
合反応を途中で停止させた。
【0080】続いて、上記反応器にグリシジルメタクリ
レート4.0部とテトラフェニルホスホニウムブロマイ
ド(以下、TPPBと記す)0.1部とをさらに仕込
み、撹拌しながら100℃に昇温した後、空気雰囲気
下、同温度で2時間、反応を行った。これにより、固形
分が55%、GPCによるポリスチレン換算での固形分
の重量平均分子量が17,000、粘度が120ポイ
ズ、カルボキシル基の濃度が1.2×10-4モル/gで
あるメタクリルシラップを得た。
【0081】分子内に重合性二重結合とヒドロキシル基
とを有するポリマーが合成されていることの確認は、下
記方法で行った。即ち、先ず、メタクリルシラップを
同量のアセトンに溶解し、この溶液を20倍量のメチル
アルコールに滴下することによりポリマーを分離・沈澱
させた後、濾別して乾燥させた。そして、得られた乾燥
物(ポリマー)を、核磁気共鳴装置( 1H−NMR装
置)としてUNITY−plus(バリアンジャパン株
式会社製)を用い、共鳴周波数:400MHz、溶媒:
クロロホルム−d、基準物質:テトラメチルシラン(T
MS)、積算回数:10回、の測定条件でプロトン核磁
気共鳴分析を行った。その結果、 1H−NMRスペクト
ルに重合性二重結合およびヒドロキシル基に基づくシグ
ナルが各々あることを確認した。
【0082】該メタクリルシラップ70部にt−ブチ
ルメタクリレート30部を添加・混合して補強用樹脂組
成物を形成した後、該補強用樹脂組成物に、γ−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン(カップリング剤)
2部、消泡剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製,商
品名・A−515)0.2部、8%オクチル酸コバルト
(硬化促進剤)1部、および、硬化触媒(化薬アクゾ株
式会社製,商品名・328E)2部を添加して充分に混
合し、補強用樹脂混合物を形成した。該補強用樹脂混合
物をコンクリート上に0.5mmの厚さに塗工して25
℃にて乾燥させ、指で触っても補強用樹脂混合物が指に
付着しなくなるまでの時間、即ち、乾燥時間を測定し
た。その結果、薄膜の乾燥時間は50分であった。
【0083】また、補強用樹脂組成物に硬化促進剤およ
び硬化触媒以外の添加剤を添加してなる混合物の粘度
を、B型粘度計で測定した。その結果、粘度は25℃で
2.51ポイズであった。さらに、補強用樹脂組成物3
0gに上記の割合で硬化促進剤および硬化触媒を添加し
てなる混合物を、25℃にて静置し、流動性を失うまで
の時間、即ち、ポットライフを測定した。その結果、ポ
ットライフは26分であった。
【0084】上記の補強用樹脂混合物を直ちにコンクリ
ート板上に塗工した後、補強用繊維製基材としての炭素
繊維シート(東燃株式会社製,商品名・FTS−C1−
20)を披着した。さらに該炭素繊維シート上に補強用
樹脂混合物を塗工した後、シート中の空気を脱気ローラ
を用いて押し出しながら充分に含浸させた。次いで、こ
の上に別の炭素繊維シート(同上)を披着し、さらに該
炭素繊維シートに補強用樹脂混合物を塗工した後、同様
に含浸させた。上記両シートは、その繊維方向が互いに
直交するように重ね合わせ、かつ、炭素繊維シートが表
面に露出しないようにした。このようにして炭素繊維シ
ートを積層して補強用樹脂混合物と複合化すると共に、
該複合化物の厚さが1mmとなるように施工した。その
後、25℃にて補強用樹脂混合物を硬化させ、さらに1
日間、養生させた。
【0085】得られた硬化物の表面硬度を、バーコール
硬度計934−1(Barber ColmanCompany 製)を用い
て測定した。その結果、バーコール硬度は34であっ
た。また、コンクリートと硬化物との密着性を評価する
ために、建研式接着強度測定方法に基づき、付着面の大
きさが40×40mmである試験用ジグを硬化物表面に
接着させた後、該ジグを建研式接着試験器(山本打重機
株式会社製)を用いて接着面に対して垂直方向に引っ張
り、破断強度を測定し、この値を接着強度とした。その
結果、接着強度は16kg/cm2 であった。上記の結
果をまとめて表1に示す。
【0086】〔実施例2〕実施例1にて得られたメタク
リルシラップ70部にn−ブチルアクリレート30部
を添加・混合して補強用樹脂組成物を形成した後、該補
強用樹脂組成物に、パラフィン(日本精蝋株式会社製,
商品名・130F)0.1部、消泡剤(同上)0.2
部、8%オクチル酸コバルト4部、および、硬化触媒
(同上)3部を添加して充分に混合し、補強用樹脂混合
物を形成した。
【0087】上記の補強用樹脂混合物を用い、実施例1
と同様の施工を行ってコンクリート上に硬化物を形成
し、各種物性を測定した。その結果をまとめて表1に示
す。
【0088】〔実施例3〕実施例1にて得られたメタク
リルシラップ70部にジシクロペンテニルオキシエチ
ルメタクリレート30部を添加・混合して補強用樹脂組
成物を形成した後、該補強用樹脂組成物に、消泡剤(同
上)0.2部、8%オクチル酸コバルト0.5部、およ
び、硬化触媒(同上)1部を添加して充分に混合し、補
強用樹脂混合物を形成した。
【0089】上記の補強用樹脂混合物を用い、実施例1
と同様の施工を行ってコンクリート上に硬化物を形成
し、各種物性を測定した。その結果をまとめて表1に示
す。
【0090】〔実施例4〕実施例1にて得られたメタク
リルシラップ70部に、t−ブチルメタクリレート2
5部とエチレングリコールジメタクリレート(以下、E
GDMAと記す)5部とを添加・混合して補強用樹脂組
成物を形成した後、該補強用樹脂組成物に、γ−グリシ
ドキシプロピルトリメトキシシラン(同上)2部、消泡
剤(同上)0.2部、8%オクチル酸コバルト1部、お
よび、硬化触媒(同上)2部を添加して充分に混合し、
補強用樹脂混合物を形成した。
【0091】上記の補強用樹脂混合物を用い、実施例1
と同様の施工を行ってコンクリート上に硬化物を形成
し、各種物性を測定した。その結果をまとめて表1に示
す。
【0092】〔比較例1〕温度計、還流冷却管、ガス導
入管、および撹拌装置を取り付けた反応器にメチルメタ
クリレート100部を仕込んだ後、該反応器内を窒素ガ
スで充分に置換した。メチルメタクリレートを撹拌しな
がら80℃に昇温した後、これに2,2’−アゾビスイ
ソブチロニトリル0.1部とn−ドデシルメルカプタン
1.4部とを添加し、同温度で4時間、重合反応を行
い、次いで、反応器内に空気を吹き込むと共にハイドロ
キノン0.01部を添加して、重合反応を途中で停止さ
せた。
【0093】これにより、固形分が48%、固形分の重
量平均分子量が26,000、粘度が60ポイズ、カル
ボキシル基の濃度が0モル/gであるメタクリルシラッ
プを得た。
【0094】該メタクリルシラップ70部にt−ブチ
ルメタクリレート30部を添加・混合して比較用の補強
用樹脂組成物を形成した後、該補強用樹脂組成物に、消
泡剤(同上)0.2部、8%オクチル酸コバルト4部、
および、硬化触媒(同上)4部を添加して充分に混合
し、比較用の補強用樹脂混合物を形成した。
【0095】上記の補強用樹脂混合物を用い、実施例1
と同様の施工を行ってコンクリート上に硬化物を形成
し、各種物性を測定した。その結果をまとめて表1に示
す。
【0096】〔比較例2〕温度計、還流冷却管、ガス導
入管、および撹拌装置を取り付けた反応器にイソフタル
酸28.1部とプロピレングリコール15.5部とを仕
込んだ後、該反応器内を窒素ガスで充分に置換した。該
混合物を撹拌しながら220℃に昇温した後、混合物に
テトラブチルチタネート0.05部を添加し、同温度で
10時間、脱水縮重合反応を行った。その後、内容物を
100℃に冷却した。
【0097】続いて、上記反応器に無水マレイン酸8.
3部をさらに仕込み、撹拌しながら200℃に昇温した
後、同温度で5時間、開環付加反応を行った。その後、
内容物を100℃に冷却した。次いで、上記反応器にグ
リシジルメタクリレート48.1部、TPPB0.1
部、および、ハイドロキノン0.01部をさらに仕込
み、空気雰囲気下、撹拌しながら100℃で5時間、反
応を行った。その後、スチレン50部を添加し、内容物
を室温に冷却した。これにより、固形分が67%、固形
分の重量平均分子量が3,000、粘度が50ポイズ、
カルボキシル基の濃度が1.5×10-4モル/gである
ポリエステルメタクリレートを得た。
【0098】該ポリエステルメタクリレート70部にt
−ブチルメタクリレート30部を添加・混合して比較用
の補強用樹脂組成物を形成した後、該補強用樹脂組成物
に、消泡剤(同上)0.2部、8%オクチル酸コバルト
4部、および、硬化触媒(同上)4部を添加して充分に
混合し、比較用の補強用樹脂混合物を形成した。
【0099】上記の補強用樹脂混合物を用い、実施例1
と同様の施工を行ってコンクリート上に硬化物を形成
し、各種物性を測定した。その結果をまとめて表1に示
す。
【0100】
【表1】
【0101】上記の結果から明らかなように、本発明に
かかる補強用樹脂組成物の硬化物は、各種物性に優れて
いることが判った。従って、該補強用樹脂組成物を用い
て良好な施工が行えることが判った。
【0102】
【発明の効果】本発明のコンクリート構造物の補強用樹
脂組成物は、以上のように、重合性二重結合を複数有す
る(メタ)アクリル系重合体を含む構成である。また、
必要に応じて、上記(メタ)アクリル系重合体が側鎖に
重合性二重結合を複数有している構成であり、重合性二
重結合を有する単量体をさらに含む構成である。
【0103】それゆえ、補強用樹脂組成物は、常温およ
び低温での硬化性(速度)に優れると共に薄膜乾燥性に
優れ、短期間で施工ができ、所望する補強効果を発現す
ることができる。即ち、本発明にかかる補強用樹脂組成
物は、コンクリートとの密着性に優れると共に、靱性や
耐熱性、耐溶剤性、耐摩耗性、速硬化性、低温硬化性、
薄膜乾燥性、表面硬度等に優れており、かつ、作業時の
取り扱い性や補強用繊維製基材への含浸性等に優れてい
るという種々の効果を奏する。
【0104】本発明のコンクリート構造物の補強方法
は、以上のように、コンクリート構造物の表面に補強用
繊維製基材を披着する前および/または後に、該補強用
繊維製基材に上記補強用樹脂組成物を含浸させる構成で
ある。
【0105】これにより、短期間で施工ができ、所望す
る補強効果を発現することができる補強方法、即ち、既
存のコンクリート構造物を補強するのに好適な、補強用
樹脂組成物を用いた補強方法を提供することができると
いう効果を奏する。
【0106】本発明の補強構造は、以上のように、補強
用樹脂組成物と補強用繊維製基材とからなる補強層を有
する構成である。これにより、既存のコンクリート構造
物を補強することができるという効果を奏する。
フロントページの続き (72)発明者 深田 亮彦 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 2E176 AA04 BB29 4F072 AA04 AB04 AB05 AB06 AB07 AB08 AB09 AB10 AB28 AB29 AB30 AD09 AE02 AG03 AG13 AH02 AH22 AJ04 AK03 AL17 4J027 AA02 CD09

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】補強用繊維製基材と共に用いられるコンク
    リート構造物の補強用樹脂組成物であって、 重合性二重結合を複数有する(メタ)アクリル系重合体
    を含むことを特徴とするコンクリート構造物の補強用樹
    脂組成物。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の補強用樹脂組成物を用い
    たコンクリート構造物の補強方法であって、 コンクリート構造物の表面に補強用繊維製基材を披着す
    る前および/または後に、該補強用繊維製基材に上記補
    強用樹脂組成物を含浸させることを特徴とするコンクリ
    ート構造物の補強方法。
  3. 【請求項3】コンクリート構造物の表面に形成される補
    強構造であって、 請求項1に記載の補強用樹脂組成物と補強用繊維製基材
    とからなる補強層を有することを特徴とする補強構造。
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