JP4826009B2 - ライニング施工方法及びそれを用いた土木建築構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種コンクリート、木材、鋼材など各種基材への被覆(ライニング)を現地・現場で行う際に、樹脂の調製方法が簡略化され、作業性の優れたライニング施工方法及びその施工方法を用いて得られた土木建築構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
昨今の建築・土木構造物はコンクリートや鋼材を構造材としているものが殆どである。しかし、これらのコンクリートや鋼材は、経年で劣化するという問題がある。近年ビル、トンネル、橋脚、排水溝、床、上下水道管、ガス管、油送管などコンクリートや鋼材を使用した構造物の劣化防止や劣化の進行した既設構造物を更正するためにエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を用いた各種ライニングが施されている。このライニングには、熱硬化性樹脂が多用されているが、その中でも硬化性、耐食性及び経済性の点から不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂の需要が年々高まっている。これらの樹脂は、通常熱硬化性プレポリマー成分とエチレン性不飽和単量体からなる樹脂組成物であり、ラジカル重合反応によって硬化される。しかし、現地、現場で施工するライニングは、重合反応の過程で表面が外気と接触しているため、酸素により重合が阻害され易く、いつまでもベタつきが残るという問題がある。そのため、養生シートとよばれるガス不透性のシートをライニング表面に貼り付けたり、樹脂組成物中にパラフィンワックスを添加して空気遮断膜を形成させて外気との接触を妨げたり、あるいは金属ドライヤーと呼ばれる乾燥促進剤を樹脂に添加して表面乾燥性を改良するなどの対応が図られている。しかし、エチレン性不飽和単量体に金属ドライヤーを添加すると、保存安定性が低下してしまうため、施工の直前に添加しなければならない。そのため、現地・現場で極めて煩雑な混合作業を行っているのが現状である。また、金属ドライヤーは一般に常温で液状であるため、現地、現場で正確に計量することが困難で、計量ミスや場合によっては添加を忘れてしまう場合があり、金属ドライヤーの添加という作業工程を省くことが強く望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ライニング組成物への金属ドライヤーの添加作業を軽減した作業性に優れたライニング施工方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の発明の効果に加えて、低臭気で作業環境の改善を可能にするライニング施工方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、従来法によるライニング施工の土木建築構造体と同等以上の耐久性を有する土木建築構造体を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記課題に対して発明者らが鋭意検討した結果、金属ドライヤーをあらかじめ充填材に配合しておくことで上記の課題を解決することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)あらかじめ混合しておいた(a)金属ドライヤーと(b)不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材との混合物100重量部に対して、(B)(c)熱硬化性プレポリマー及び/又は熱可塑性樹脂5〜60重量%並びに(d)エチレン性不飽和単量体95〜40重量%からなる樹脂組成物を5〜500重量部混合して得られるライニング組成物を用いて、基材表面に保護層を形成することを特徴とするライニング施工方法に関する。
また、本発明は、(A)成分の(a)金属ドライヤーがコバルトを金属成分とするものである上記のライニング施工方法に関する。
また、本発明は、(B)成分の(c)熱硬化性プレポリマーがビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である上記のライニング施工方法に関する。
また、本発明は、(B)成分の(d)エチレン性不飽和単量体が次の一般式(1)
【化2】
[式中RはH又はCH3であり、R1は2〜12個の炭素原子を有するアルキレン基又は少なくとも2個の炭素原子を有する2個以上のアルキレン基が酸素原子で結合された、全体として4〜12個の炭素原子を有するオキシアルキレン基である。]で表される少なくとも1種のジシクロペンテニルオキシアルキルアクリレート又はジシクロペンテニルオキシアルキルメタクリレートである上記のライニング施工方法に関する。
また、本発明は上記のライニング施工方法で施工された保護層を少なくとも1層以上含む土木建築構造体に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いることのできる金属ドライヤー(乾燥剤)とは、有機金属化合物又は金属を含有する化合物を必須の構成成分とするもので、ラジカル重合における酸素阻害を抑え、外気と接触する部分(表面)の硬化を促進し、未硬化の発生を抑える、いわゆる乾燥性を高める作用があるものとされる。有機金属化合物として、例えば、金属石鹸(酢酸、オクチル酸、ステアリン酸等の脂肪酸又はナフテン酸のMg、Ca、Zn、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Pb、Cu、Zr、Ba、Li、La、K、Na、Sn等の金属の金属塩)や有機金属錯体(コバルトアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトナート等の遷移元素のアセチアセトン錯体等)が挙げられる。また、これら金属石鹸とケイ酸カルシウムやパラフィンとの混合物も金属ドライヤーとして挙げられる。ネオデカン酸金属塩とケイ酸カルシウム及びパラフィンを配合した金属ドライヤーの市販品としてCatalyst4142(コバルト含有量約11%、OMG ジャパン社製商品名)がある。
【0006】
また、金属を含有する化合物からなる金属ドライヤーとしては、結晶化可能な部分を有する側鎖を有する熱可塑性エラストマーを含み、このエラストマー内に有機金属化合物又は金属が含まれているものが挙げられる。この化合物は、有機金属化合物又は金属が熱可塑性エラストマーのマイクロカプセル効果(保護効果)によって、その特性の発現が抑制されているが、加熱して結晶化可能な部分を有する側鎖を有する熱可塑性エラストマーが溶融化すると結果としてマイクロカプセル効果(保護効果)が解除され、有機金属化合物又は金属がその特性を発揮するようになるものである。これらの市販品としては、Intelimer6050(融点約65℃、コバルト含有量2重量%)、Intelimer6054(融点約65℃、コバルト含有量4重量%)、Intelimer216−17(融点約55℃)、Intelimer205−108(融点約45℃)(Intelimer:ランデック コーポレーション製、商品名)などが挙げられる。
【0007】
(a)金属ドライヤーを(b)不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材に混合する方法として、金属ドライヤーが粉体の場合、充填材と混合することで簡単に調製できるが、金属石鹸は一般にトルエンやミネラルターペンなどの石油系溶剤で希釈されて液体として市販されていることが多い。このような場合は、充填材を金属石鹸溶液に一旦浸漬し、取り出して粒子表面に付着した金属石鹸溶液を乾燥し、溶剤分を揮発させることで調製が可能である。これらのうち、金属ドライヤーとしては、常温で固体であることが充填材の調製が簡単なことから好ましい。また、金属成分がコバルトである金属ドライヤーが好ましく、例えばCatalyst4142(コバルト含有量約11重量%、OMG ジャパン社製商品名)、Intelimer6054(融点約65℃、コバルト含有量4重量%、ランデック コーポレーション製商品名)が挙げられる。これらの金属ドライヤーの配合量は、金属成分量に換算して、通常充填材100重量部に対し0.001〜10重量部添加される。0.001重量部未満では、金属ドライヤーとしての乾燥性の効果が低くなる傾向があり、10重量部を超えても乾燥性を高める効果の限界を超える傾向がある。より好ましくは0.005〜5重量部の範囲である。
【0008】
(b)不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材としては、硅砂、川砂、寒水石、ガラス及びこれらの微粉末、さらに炭酸カルシウム粉、クレー、窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ粉、タルク、シリカ粉末、硫酸バリウム、焼石膏、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、雲母、フッ化アルミなどが挙げられる。また、木粉、ポリエステル、シリコーン、ポリスチレンアクリロニトリル−ブタジエン-スチレン(ABS)、塩化ビニリデン−ポリアクリロニトリルセルにイソブタンガスがコア内に封入された発泡性有機充填材((株)日本フェライト製 エクスパンセル)などの有機充填材も挙げられる。さらに、ガラスや炭素繊維を5〜100mmにカットしたチョップドストランドも充填材として挙げられる。これら充填材の粒子形状に制限はなく、粒状、針状、棒状、りん片状、フレークなどが挙げられる。
【0009】
(A)成分100重量部に対して(B)成分である樹脂組成物は5〜500重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲で用いることができる。5重量部未満では(A)成分と(B)成分である樹脂組成物を配合したライニング組成物において樹脂分過多となり、施工時に基材の表面保護層を形成させることが困難となる。また、500重量部を超えると樹脂組成物の充填材や補強材の界面におけるバインダー(粘着剤)としての作用が低くなってしまうため、ライニングの強度及び耐食性が低下してしまう。
【0010】
本発明の(B)成分である樹脂組成物では(c)熱硬化性プレポリマー及び/又は熱可塑性樹脂を必須成分としているが、これら(c)成分は一般公知のものが挙げられ特に制限はない。熱硬化性プレポリマーとしは、例えばビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル変性不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、熱可塑性樹脂としてはスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、石油樹脂などが挙げられる。石油樹脂は、エチレンプラントから精製される公知のC5又はC9留分を原料に製造されるもので、例えばクイントン(日本ゼオン(株)製商品名)やノルソレックス(日本ゼオン(株)製商品名、熱可塑性ポリノルボルネン樹脂)が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂を組み合わせても用いることができる。
【0011】
熱硬化性プレポリマーのうち、ビニルエステル樹脂の場合、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸及び必要に応じて炭素数12個以上の二塩基酸を反応させて得られるものが好ましく用いられる。原料として用いられるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、例えば下記一般式(2)
【化3】
[式中、xは0〜15の範囲の整数である。]で表されるものが用いられる。市販されているものとしては、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、旭化成エポキシ(株)製AER−664H、AER−331、AER−337、ダウケミカル社製D.E.R.330、D.E.R.660、D.E.R.664などがある。また、上記エポキシ樹脂の水素原子の一部をハロゲン(例えば臭素)で置換したタイプも使用できる。この種の市販品の例としては、東都化成(株)エポトートYDB−400、YDB−340、住友化学工業(株)製スミエポキシESB−340、ESB−400、ESB−500、ESB−700、ダウケミカル社製D.E.R.542、D.E.R.511、D.E.R.580、油化シェルエポキシ(株)製1045、1050、1046、DX−248などがある。また、下記一般式(3)
【化4】
[式中、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を示し、xは0〜15の範囲の整数である。]で示されるものを用いることもできる。市販されているものとしては、ダウケミカル社製D.E.N.431、D.E.N.438、油化シェルエポキシ(株)製エピコート152、エピコート154、旭チバ(株)製EPN1138などがある。また長瀬チバ(株)製CY208、CY221、CY350、XB2615、CY192、CY184等も用いられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上併用することができる。また、作業性の改善のため、エピ−ビスタイプのエポキシ樹脂、フェノールノボラックタイプのエポキシ樹脂、クレゾールノボラックタイプのエポキシ樹脂等とビスフェノールF型や脂肪族エポキシ樹脂に代表される公知の低粘度エポキシ樹脂とを併用することもできる。
【0012】
エポキシ樹脂に反応させる不飽和一塩基酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕−4−デセン−8又は9残基と不飽和二塩基酸残基を構成要素として含む部分エステル化カルボン酸などを用いることができる。部分エステル化カルボン酸の例としては、8又は9−ヒドロキシトリシクロデセン−4−〔5.2.1.02,6〕1.0〜1.2モル及び無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和二塩基酸1モルを不活性ガス気流下で70〜150℃に加熱して得られる不飽和二塩基酸モノエステルがある。
【0013】
トリシクロデカジエン−4,8−〔5.2.1.02,6〕にマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和二塩基酸を硫酸、ルイス酸などの触媒の存在下で付加して得られる不飽和二塩基酸モノエステルを用いることもできる。
マレイン酸を例に採って例示すると、下記のようになる。
【化5】
【0014】
これら不飽和一塩基酸のうち、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸が組成物の反応性の点で好ましく、さらに好ましくはメタクリル酸である。
【0015】
また、炭素数が12個以上、好ましくは12〜100個の二塩基酸としてはトデカン二酸、市販品として岡村製油(株)製SLB−12、また、炭素数16の不飽和二塩基酸の異性体の混合物であるULB−20(同じく岡村製油(株)製)、炭素数20の飽和二塩基酸主体の混合物であるSL−20(同じく岡村製油(株)製)、不飽和二塩基酸の市販品としてはバーサダイム216、バーサダイム288(ヘンケルジャパン(株)製)、ハリダイマー200(ハリマ化成(株)製)なども軟質ビニルエステル樹脂に変性する場合好適に用いることができる。
【0016】
これらエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸及び炭素数12以上の二塩基酸を、エポキシ樹脂1.0エポキシ当量に対して、不飽和一塩基酸を好ましくは0.2〜1.0当量及び炭素数12以上の二塩基酸を好ましくは0〜0.8当量の割合で好ましくは60〜150℃、より好ましくは70〜130℃の温度で反応させてビニルエステル樹脂とする。エステル化の反応に際しては、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、ピリジニウムクロリドなどの第4級アンモニウム塩、トリエチルアミン、ジメチルアニリンなどの第3級アミン、塩化第二鉄、水酸化リチウム、塩化リチウム、塩化第二スズなどのエステル化触媒を用いて反応時間を短縮することもできる。反応の過程は不飽和一塩基酸及び必要に応じて用いる二塩基酸のカルボキシル基を定量し、酸価により調べることが出来る。この酸価は、好ましくは50以下、より好ましくは15以下とされる。
【0017】
不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β−エチレン性不飽和二塩基酸及び必要に応じてα,β−エチレン性不飽和二塩基酸以外の飽和二塩基酸と多価アルコールとを縮合反応させて得られる。α,β−エチレン性不飽和二塩基酸としては、マレイン酸、フマル酸、クロルマレイン酸等が有り、マレイン酸またはフマル酸を必須成分とすることが好ましい。これらは、その酸無水物を使用することができる。α,β−エチレン性不飽和二塩基酸は、塩基酸1モル中、0.3〜1.0モルの範囲で用いられるのが好ましい。α,β−エチレン性不飽和二塩基酸以外の飽和二塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、ニトロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等があり、これらの酸無水物を使用してもよい。
【0018】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などがある。多価アルコールは、塩基酸成分1モルに対して、1.0〜1.2モルの範囲で使用することが望ましい。この不飽和ポリエステル樹脂の合成は、80〜250℃、好ましくは90〜230℃の温度で反応させる。エステル化の過程は、酸成分のカルボキシル基を定量し、酸価により調べることが出来る。この酸価は、好ましくは50以下、より好ましくは40以下とされる。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、多官能性イソシアネート化合物に活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物及び必要に応じて2価アルコールを反応させることにより得られる樹脂が挙げられる。多官能性イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体、イソシアヌレート環を含むイソホロンジイソシアネートの三量体、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスルトール等の多価アルコール(n価)1モルに上記のジイソシアネート化合物をnモル反応させて得られる化合物などが用いられる。
【0020】
また、次の一般式(4)又は(5)で示される脂肪族ジイソシアネート及び/又は脂環族ジイソシアネートの三量体も用いられる。
【化6】
[式中、R5は炭素数6〜20の脂肪族又は脂環族アルキレン基を示す。]
【0021】
これらの中でも、可とう性及び硬さをバランス化できる点でヘキサメチレンジイソシアネートを出発物質とした上記の一般式(4)又は(5)で示される三量化ポリイソシアネートが好ましい。このヘキサメチレンジイソシアネートを三量化したポリイソシアネートは市場より容易に入手することが可能であり、例えば、旭化成工業(株)製、デュラネート24Α−100(ビュレット型)、デュラネートTPA−100(イソシアヌレート環を含む)等である。トリメチロールプロパン1モルとトリレンジイソシアネート3モルを反応させて得られる多官能イソシアネート化合物としてはコロネートL、HL(日本ポリウレタン工業(株)商品名)がある。
【0022】
活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物としてはヒドロキシ(メタ)アクリレート[(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。]が好適に用いられる。ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等があり、これらのうち、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが、反応性、経済性の点から好ましい。
【0023】
必要に応じて反応させる2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオールなど炭素数が2〜20までの脂肪族及び/又は脂環族のポリアルキレングリコールが挙げられる。この中でも炭素数2〜12までのものが得られるライニングの可とう性と硬さをバランス化させるのに好ましい。
【0024】
多官能性イソシアネート化合物に活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物、必要に応じ添加する2価アルコールを反応させてウレタンアクリレート(A)を得る条件としては、反応温度は、通常0〜120℃、好ましくは20〜80℃であり、反応時間は、通常1〜50時間、好ましくは3〜10時間である。反応に際してジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫チオカルボキシレートなど有機金属触媒やトリエチレンジアミン、トリエチルアミン、N,N,N′−トリエチエルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルなどのアミン系触媒などのウレタン反応触媒を存在させてもよい。これらの材料は全てを同時に反応させてもよく、多官能性イソシアネート化合物にいずれかの化合物を反応させ、次いで他の化合物を反応させてもよい。
【0025】
上記原料モノマーの使用割合は、多官能イソシアネート化合物のイソシアネート基に対し、活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物及び2価アルコールの活性水素の総量を0.8〜1.5当量の範囲とすることが好ましい。より好ましくは0.9〜1.2当量の範囲とする。また、活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物及び2価アルコールは、両者の活性水素の合計量を100当量%として、上記活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物を100〜60当量%、上記2価アルコールを0〜40当量%の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは上記活性水素とアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物を100〜80当量%、上記2価アルコールを0〜20当量%の範囲で用いる。
【0026】
これらの熱硬化性プレポリマーの反応に際し、重合によるゲル化を防止するためにヒドロキノン、パラベンゾキノン、p−第3級ブチルカテコール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンなどの重合禁止剤を用いるのが好ましい。
【0027】
このうち、重合して得られる硬化物の機械的特性の点から熱硬化性プレポリマーを使用することが好ましく、耐食性が要求される場合には、エポキシ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0028】
(d)エチレン性不飽和単量体としてはスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ジビニルベンゼン、t−ブチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、β−ヒドロキシメタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリルアミド、フェニルマレイミド、マレイミド、酢酸ビニル、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、アクリロニトリル、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等の多価アルコールのアクリル酸エステル、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート等の多価アルコールのメタクリル酸エステル等がある。ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシイソプロピルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシイソプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシネオペンチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシネオペンチルアクリレートなどが挙げられる。これらのうち、硬化性及び経済性の観点からはスチレンが好ましく、臭気の点からは次の一般式(1)に示されるジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート又はジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートが好ましい。
【化7】
[式中、R及びR1は前記のものを示す。]
【0029】
この化合物は公知であって、例えばジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は、特公昭61−43337号公報に記載されているように、ジシクロペンタジエンにアルキレングリコール又はオキサアルキレングリコールを付加反応させ、生成したアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテル又はオキサアルキレングリコールモノジシクロペンテニルエーテルをメタクリル酸と縮合反応させるか又はメタクリル酸メチルとエステル交換反応させることによって製造することができる。このメタクリル酸又はメタクリル酸メチルをアクリル酸又はアクリル酸メチルで代えることも可能である。また、特開昭57−200331号公報に記載されているように、アルキレングリコールモノアクリレート又はアルキレングリコールモノメタクリレートをジシクロペンタジエンに付加反応させることによっても製造することができる。
【0030】
本発明における(B)成分である樹脂組成物は(c)熱硬化性プレポリマー及び/又は熱可塑性樹脂5〜60重量%、好ましくは10〜55重量%と(d)エチレン性不飽和単量体95〜40重量%、好ましくは90〜45重量%からなる。エチレン性不飽和単量体が40重量%未満であると、樹脂組成物の粘度が高くなり、作業が行いにくくなる欠点があり好ましくない。また、95重量%を越えると、樹脂組成物を硬化させた樹脂硬化物がもろくなり、その結果、得られたライニングも脆く、強度の低いものとなってしまう。
【0031】
ライニング組成物は通常有機過酸化物で硬化させる。例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられ、これらは(B)樹脂組成物に対して0.1〜10重量%の範囲で用いることが好ましい。0.1重量%未満では有機過酸化物が開裂して発生するラジカルの発生量が不十分となり、完全に硬化しない場合がある。また、10重量%を超えると、有機過酸化物自身及びそれに含まれる希釈剤が可塑剤の働きを示し、硬化物が設計以上に軟質になりすぎる傾向がある。
【0032】
上記の有機過酸化物で硬化させるため、ラジカル重合の促進剤として多価金属塩及び/又は錯体を添加することができる。多価金属塩としては、高級脂肪酸の金属塩がよく知られている。例えばナフテン酸、オクテン酸の多価金属塩であり、多価金属とは、カルシウム、銅、ジルコニウム、マンガン、コバルト、鉛、鉄、バナジウムなどを示す。特に好ましくはオクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルトが挙げられる。錯体としては、アセチルアセトンの錯体がよく知られており、コバルトアセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート等が挙げられる。これらは(B)成分である樹脂組成物に対して0.01〜5重量%の範囲で用いられるが、これらは有機過酸化物の作用を促進する働きを示し、0.01重量%未満では効果が十分でなく、5重量%を超えても、それ以上の効果を示さない。
【0033】
また、促進剤として芳香族アミン化合物も挙げられ、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)−m−トルイジン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン等を1種以上組み合わせて、(B)樹脂組成物に対して0.01〜10重量%の範囲で用いることができる。0.01重量%未満では促進効果が十分でなく、また10重量%を超えると可塑効果が働き、硬化物の強度低下を招き好ましくない。
【0034】
また、ライニング組成物は光によって硬化させることもできる。光開始剤として、例えばベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、ベンゾインエーテル、メトキシアセトフェノンなどを(B)樹脂組成物に対して好ましくは0.1〜5重量%の範囲で添加し、太陽光、紫外線ランプ等を用いて光で照射することによって行われる。
【0035】
さらに、(B)成分である樹脂組成物には種々の添加剤を添加できる。添加剤とは改質剤、湿潤剤、分散剤、離型剤、消泡剤、揺変材、カップリング剤、着色剤、ワックス類、表面乾燥助剤、耐候性付与剤などのことであるが、改質剤としては例えば、エラストマー、天然ゴム、ブタジエン系ゴム、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びこれらの誘導体を配合し物性を改良することもできる。
【0036】
また、充填材や補強材との濡れ性を改良する湿潤剤や分散剤としては、例えばビックケミー社製BYKシリーズなどの市販のものが挙げらる。成形作業性を改良するためにはシリコン系オイルやステアリン酸亜鉛などの離型剤や消泡剤も添加でき、消泡剤としては例えば、シリコン系オイル、フッ素オイル、ポリカルボン酸系ポリマーなど公知の消泡剤が挙げられ、これら離型剤や消泡剤は通常(B)樹脂組成物100重量部に対し0.001〜5重量部添加することができる。また、揺変材も添加できる。揺変材とは一般公知のものである。例えば、シリカヒューム(日本アエロジル(株)製 商品名:#200、R972、RX200など)、ベントナイトなどが挙げられる。また、シリカバルーン(デュポン社製商品名Baomasil)も用いることができる。さらに、例えば楠本化成(株)製ディスパロンやBYK社から提供される有機揺変剤も用いることができる。メガファックMCF−300やメガファックF−178RM(大日本インキ化学製 商品名)パーフルオロアルキル基を含有する共重合体なども表面状態の改質には有効である。
【0037】
これらの添加剤は(B)成分である樹脂組成物100重量部に対して好ましくは0.01〜20重量部添加される。0.01重量部よりも少ないと添加剤としての効果が十分に発現しない傾向があり、20重量部を越えると不飽和エステルの含有量が低下してしまうため、耐食性が低下してしまう傾向がある。
【0038】
本発明で用いることのできるカップリング剤としては、一般公知のシラン系カップリング剤が挙げられる。通常式YSiX(Yは官能基を有し、Siに結合する1価の基、Xは加水分解性を有しSiに結合する1価の基)で表される。上記Y中の官能基としては、例えばビニル、アミノ、エポキシ、クロロ、メルカプト、メタクリルオキシ、シアノ、カルバメート、ピリジン、スルホニルアジド、尿素、スチリル、クロロメチル、アンモニウム塩、アルコール等の基がある。Xとしては、例えばクロル、メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシ等がある。具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチルアミノフェニルトリエトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシエチルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロライド、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩等、ポリマータイプのポリシロキ酸誘導体化合物などが挙げられ、これらを混合して使用することも可能である。シラン系カップリング剤は(B)成分である樹脂組成物100重量部に対し通常0.001〜5重量部添加する。
【0039】
(B)成分である樹脂組成物には着色剤やワックス類を添加できる。着色剤としては二酸化チタン、コバルトブルー、カドミウムエローなどの無機顔料、カーボンブラック、アニリンブラック、β−ナフトール、フタロシアニン、キナクリドン、アゾ系、キノフタロン、インダンスレンブルーなどの有機系顔料が挙げられ、所望する色調に応じてそれぞれを配合することができる。これらは、2種以上組み合わせて使用しても良い。これら顔料は、(B)成分である樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜50重量部添加することができる。また、ワックス類としては例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロスタイリンワックス、ステアリン酸などの高級脂肪酸が挙げられる。この中でも、パラフィンワックスの融点が40℃〜75℃までのものを0.1〜5重量%の範囲で添加することができる。
【0040】
表面乾燥助剤とは、樹脂中の溶存酸素を消費する化合物であり、例えば3級アミン類、チオール類、ホスフィン類が挙げられるが、硬化性の点でp−ジメチルアミノベンズアルデヒドが好ましい。これらの助剤は(B)成分である樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部添加することができる。また、可視光によりメチレンブルーに代表される色素で溶存酸素を活性化させて1,3−ジフェニルイソベンゾフランと反応させるような組み合わせのものも助剤として挙げられる。
【0041】
耐候性付与剤としては、例えばフェニルサリシレート、パラ−t−ブチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物などのヒンダードアミン系光安定剤も挙げられる。これらの耐候性付与剤は単独または2種類以上併用しても良い。通常(B)樹脂組成物100重量部に対し0.05〜20重量部添加できる。
【0042】
前記の熱硬化性プレポリマーの合成に添加する重合禁止剤とは別に、ライニング組成物のゲル化時間を調整するために(B)成分である樹脂組成物にはさらに公知の重合禁止剤を添加できる。例えば、ハイドロキノン、パラベンゾキノン、モノターシャリブチルハイドロキノン、1,4−ハイドロキノン、1,4−ナフトキノン、フェノチアジンなどが挙げられる。添加量は、ライニング組成物の常温ゲル化時間を約5〜120分程度に調整する目的で決まるもので、通常(B)成分である樹脂組成物に対して0.001〜5重量部添加する。
【0043】
(B)成分である樹脂組成物の粘度は、作業性を考慮し、通常50〜1000mPa・sの範囲とされる。好ましくは70〜800mPa・sであり、より好ましくは100〜500mPa・sである。
【0044】
本発明には(A)成分中の(b)不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材のほかにも補強材を用いることができる。例えばガラス繊維、炭素繊維、金属繊維などの無機系補強材やアラミド繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系繊維からなる補強材が挙げられる。好ましくはガラス繊維または炭素繊維補強材が挙げられる。これらの補強材の形態には、ストランドを引きそろえて束状にしたロービング、ロービングを織ったロービングクロス、ランダムコイル状の長繊維をマット状に成形したコンティニュアスストランドマット、長繊維をカットしたチョップドストランド、チョップドストランドをバインダーで接着しマット状に成形したチョップドストランドマット、サーフェイシングマット、綾織り状のマットまたはクロスとストランドを組み合わせた3次元ガラスマット(蝶理(株)製、商品名パラビーム)、不織布、コンティニュアスストランドやストランドを立体的に成形したプリフォームなどを挙げることができる。
【0045】
これら補強材は、(B)成分である樹脂組成物100重量部に対して好ましくは1〜1000重量部の範囲で用いることができる。1重量部未満ではライニング組成物として樹脂分が多くなりすぎるため、施工時に基材の表面保護膜として形成させることが困難となる傾向がある。また、1000重量部を超えると樹脂組成物の充填材や補強材の界面におけるバインダー(粘着剤)としての作用が低くなってしまい、ライニング材としての強度及び耐食性が低下してしまう傾向がある。
【0046】
本発明のライニング組成物を用いて、コンクリート、鋼材、FRP成形品等の基材表面に塗布して硬化させる等の方法により、基材表面に保護層を形成すると耐久性に優れた土木建築構造体が得られる。
【0047】
【実施例】
次に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれによって制限されるものではない。なお、例中、「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を示すものとする。
【0048】
<合成例1:ビニルエステル樹脂1>
メタクリル酸411部、Ep−828、453部、Ep−1001、1136部(共に油化シェルエポキシ(株)製エピ−ビス型エポキシ樹脂)、ヒドロキノン0.4部及びトリメチルベンジルアンモニウムクロリド4部を100℃で10時間加熱して酸価15のビニルエステル樹脂1を得た。
【0049】
<合成例2:ビニルエステル樹脂2>
撹拌機、コンデンサ、ガス導入管及び温度計を取付けた2リットルの4つ口フラスコに、Ep−828(油化シェルエポキシ(株)製エピ−ビス型エポキシ樹脂)1017部、ハリダイマー200(ハリマ化成(株)製ダイマー酸)752部及びトリメチルベンジルアンモニウムクロリド4部を仕込み、110℃まで4時間かけて昇温し、さらに110℃で2時間加熱したところ酸価が2となった。その後、60℃まで冷却し、メタクリル酸ラウリル100部、メタクリル酸120部及びヒドロキノン0.4部を加え、2時間で110℃まで更に昇温し、さらに110℃で6時間加熱して酸価が4のビニルエステル樹脂を得た。
【0050】
<合成例3:ウレタンメタアクリレート樹脂>
撹拌機、冷却器、温度計及び滴下ろう斗を備えた1リットルの4つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート系ビュレット変性3官能ポリイソシアネート化合物(旭化成工業(株)デュラネート−24Α−100)450部、メチルメタクリレート210部を仕込み、ハイドロキノン0.5g、ジブチル錫ジラウリレート2gを加えて、60℃まで加熱した。次いで、このフラスコ内に2−ヒドロキシエチルメタクリレート330部、エチレングリコール10部の混合溶液を4時間かけて滴下した。合成中、赤外分光光度計を用いて、反応の追跡を行い、イソシアネート基に起因する2440cm−1付近の吸収ピークの消滅を合成終点とした。本合成例1では、滴下が終了してから1時間の測定で、該吸収ピークが消滅していたため、合成を終了した。無色透明で、25℃の粘度が10ポアズのウレタンメタアクリレート樹脂を得た。
【0051】
<合成例4:不飽和ポリエステル樹脂>
撹拌機、コンデンサ、窒素ガス導入管及び温度計を取付けた2リットルの4つ口フラスコにプロピレングリコール380部、ネオペンチルグリコール624部、イソフタル酸747部を仕込み、窒素ガスをゆっくり流しながらマントルヒータを用いて1時間で150℃に昇温し、さらに6時間かけて220℃に昇温した。その温度で5時間保温し、酸価8の中間体を得た。冷却後これに無水マレイン酸539部を仕込み、1時間で150℃に昇温し、さらに4時間かけて210℃に昇温した。その温度で保温しながら反応を進め、酸価25の不飽和ポリエステル樹脂を得た。
【0052】
<充填材1>
硅砂5号 30部、硅砂7号 30部及びクリスタライトA−1(龍森(株)製シリカ粉)40部にCatalyst4142(OMG ジャパン社製金属ドライヤー商品名、コバルト含有量約11%)0.3部を添加し、混合して充填材1とした。
<充填材2>
硅砂5号 30部、硅砂7号 30部及びクリスタライトA−1(龍森(株)製シリカ粉)40部にIntelimer6054(融点約65℃、コバルト含有量4重量%、ランデック コーポレーション製、商品名)1部を添加し、混合して充填材2とした。
<充填材3>
硅砂5号 30部、硅砂7号 30部及びクリスタライトA−1(龍森(株)製シリカ粉)40部を混合して充填材3とした
【0053】
実施例1〜6、比較例1〜2
表1に示す各材料を配合し、ライニング組成物を調製した。なお、全ての実験は樹脂の液温度及び室温を23℃に調整してから行った。
(1)粘度
JIS K6901に準拠し、B型粘度計を使用して23℃におけるライニング組成物の粘度を測定した。
(2)常温ゲル化時間
JIS K6901に準拠し23℃におけるゲル化時間を測定した。
(3)表面乾燥性
表2に示すライニング組成物を300×300×60mmのコンクリート歩道板上に厚さ3mmになるようにコテで塗布し、表面が硬化乾燥するまでの時間をJIS−K−5400に準拠し測定した。
(4)耐ヒートサイクル性の評価
表面乾燥性の評価で作製したライニング付コンクリート歩道板を、−20℃×1時間(冷凍庫)/80℃×1時間(熱水浸漬)を1サイクルとするヒートサイクル試験を10サイクル行い、ライニングが剥離するか評価した。剥離していないものを○、剥離したものを×とした。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【発明の効果】
あらかじめ骨材に特定の金属ドライヤーを添加しておく本発明の施工方法によれば、ライニング組成物への金属ドライヤーの添加作業を軽減することができるため、施工作業を簡素化できる。さらに、表面乾燥性を同等以上に高めることが可能であり、ライニングの耐ヒートサイクル性も、従来の施工方法によるものと同等であることが分かる。
また、本発明の土木建築構造体は優れた耐久性を有している。
Claims (5)
- (A)あらかじめ混合しておいた(a)金属ドライヤーと(b)不活性な微粒子及び/又は粒状の無機骨材材料を含む充填材との混合物100重量部に対して、(B)(c)熱硬化性プレポリマー及び/又は熱可塑性樹脂5〜60重量%並びに(d)エチレン性不飽和単量体95〜40重量%からなる樹脂組成物を5〜500重量部混合して得られるライニング組成物を用いて、基材表面に保護層を形成することを特徴とするライニング施工方法。
- (A)成分の(a)金属ドライヤーが、コバルトを金属成分とするものである請求項1記載のライニング施工方法。
- (B)成分の(c)熱硬化性プレポリマーがビニルエステル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のライニング施工方法。
- 請求項1〜4いずれか記載のライニング施工方法で施工された保護層を少なくとも1層以上含む土木建築構造体。
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