JP2002001125A - 光触媒粉体及びスラリーならびに該粉体を含む重合体組成物、塗工剤、光触媒機能性成形体、光触媒機能性構造体 - Google Patents

光触媒粉体及びスラリーならびに該粉体を含む重合体組成物、塗工剤、光触媒機能性成形体、光触媒機能性構造体

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JP2002001125A
JP2002001125A JP2001037799A JP2001037799A JP2002001125A JP 2002001125 A JP2002001125 A JP 2002001125A JP 2001037799 A JP2001037799 A JP 2001037799A JP 2001037799 A JP2001037799 A JP 2001037799A JP 2002001125 A JP2002001125 A JP 2002001125A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた環境浄化能特性、媒体への優れた耐久性
と分散安定性を両立した光触媒粉体及びスラリーを提供
する。この粉体の利用により光触媒性を有する重合体組
成物、塗工剤、成形体、構造体を提供する。 【解決手段】アニオン活性物質を含む二酸化チタン微粒
子であって、pH5の水系環境下における該微粒子の界
面電位が0〜−100mVであることを特徴とする光触
媒粉体及び該粉体を含むスラリー。この光触媒粉体を含
む有機重合体組成物、該有機重合体組成物の成形体、該
有機重合体組成物を表面に有する構造体、スラリーを含
む塗工剤、該塗工剤を表面に有する構造体の製造に使用
される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒作用を有す
る材料に関し、特に光触媒作用を有する、二酸化チタン
を含む光触媒粉体、該光触媒粉体を含むスラリー、該光
触媒粉体を含む有機重合体組成物、該有機重合体組成物
の光触媒機能性成形体、光触媒スラリーを含む塗工剤、
及び該重合体組成物又は該塗工剤を表面に具備した光触
媒機能性構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、二酸化チタンを使用した光触媒性
微粒子が、抗菌、消臭、防汚、大気の浄化、水質の浄化
等の環境浄化材として注目されている。このような二酸
化チタンの光触媒メカニズムについては、次のような機
構に基づいていると言われている。先ず、二酸化チタン
微粒子に光が照射されると、二酸化チタン微粒子内部に
発生した電子や正孔が二酸化チタン微粒子表面近傍の水
や酸素と反応してヒドロキシラジカルや過酸化水素が発
生し、このヒドロキシラジカルと過酸化水素の強力な酸
化還元作用により有害な有機物質を炭酸ガスと水に浄化
する。こうした二酸化チタン微粒子の光触媒作用は、二
酸化チタン微粒子、光、水、酸素が存在する限り半永久
的に継続すると言われている。
【0003】このような二酸化チタンの光触媒性に注目
した応用については、代表的な例として二酸化チタン微
粒子を取り扱いの容易な繊維やプラスチック成形体など
の媒体に練り込んだり、布、紙等の基体の表面に塗布す
る方法が試みられている。しかしながら、二酸化チタン
の強力な光触媒作用によって有害有機物や環境汚染物質
だけでなく繊維やプラスチック、紙自身の媒体も分解・
劣化され易く、実用上の耐久性への障害になっていた。
また、二酸化チタン微粒子の取り扱い易さから、二酸化
チタン微粒子とバインダーを混合した塗料が開発されて
いるが、そのような媒体への作用(障害)に克服する耐
久性ある安価なバインダーはまだ見出されていない。
【0004】特開平9−225319号公報や特開平9
−239277号公報には、二酸化チタン粒子の強い光
触媒作用による樹脂媒体の劣化またはバインダーの劣化
に対する防止抑制策が開示されており、その手段として
二酸化チタン粒子の表面にアルミニウム、珪素,ジルコ
ニウム等の光不活性化合物を立体的障壁のある島状に担
持して光触媒作用を抑制する方法が提案されている。し
かしながら、この方法では光不活性化合物が島状に担持
されるものの、樹脂媒体やバインダーの特定部位は二酸
化チタンの強い光触媒作用を受ける部分が存在してしま
う欠点がある。
【0005】特開平10−244166号公報には、二
酸化チタンの表面に多孔質のリン酸カルシウムを被覆し
た光触媒性二酸化チタンが提案されているが、この場合
は被覆膜のリン酸カルシウム層によって光触媒性能が低
下するという問題点が指摘されている。
【0006】また、国際公開WO99/33566号公報には、二
酸化チタン微粒子の表面の少なくとも一部に多孔質のリ
ン酸カルシウム被覆層が形成され、その界面に陰イオン
性界面活性剤が存在する二酸化チタン微粒子粉体が開示
されている。さらに、光触媒活性を有する二酸化チタン
を含むスラリーに関しては、特開平10−142008
号公報に、チタニアゾル溶液、チタニアゲル体又はチタ
ニアゾル・ゲル混合体を、密閉容器内で加熱処理すると
同時に加圧処理し、ついで超音波により分散させるか又
は攪拌して得られたアナターゼ型酸化チタン含有スラリ
ーが開示されている。
【0007】また、特開平11−343426号公報に
は分散安定性に優れた光触媒塗料が開示され、これには
146〜150cm-1の範囲にラマンスペクトルのピー
クを有し、かつ、アナターゼ型二酸化チタンの占める割
合が95質量%以上である酸化チタンとシリカゾルとを
溶媒中に含む光触媒塗料が開示されている。これまでの
従来技術においては、光触媒活性と、有機系材料と一緒
に用いる場合の耐久性及び分散安定性を同時に満足する
ような光触媒粉体及びスラリーを工業的に有用な方法で
提供することが不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
のような従来技術に鑑み、悪臭の除去、空気中の有害物
質または汚れの分解除去、排水処理や浄水処理、抗菌や
抗かび作用など(以下、環境浄化作用と総称する。)を
効果的かつ経済的に行い、それと同時に分散安定性に優
れることによって産業上の利用性を極めて高めることが
可能となる光触媒粉体及び該光触媒粉体を含むスラリ
ー、該光触媒粉体を含む有機重合体組成物、該有機重合
体組成物の成形体、該スラリーを含む塗工剤、及び該有
機重合体組成物又は該塗工剤を表面に具備する構造体を
提供するものである。特に本発明は、繊維、紙、プラス
チック素材への表面塗布、または該素材への練り混み、
あるいは塗料組成物への使用において優れた光触媒活性
と耐久性及び分散安定性とを有する光触媒粉体及びスラ
リーを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するため鋭意研究を重ねた結果、二酸化チタン微
粒子にアニオン活性物質を含む微粒子であって、pH5
の水系環境下における該微粒子の界面電位が0〜−10
0mVであることを特徴とする光触媒粉体及び該粉体を
含んだスラリーを発明することにより上記課題を達成し
た。
【0010】即ち、本発明は、以下の発明からなる。 (1)アニオン活性物質を含む二酸化チタン微粒子であ
って、pH5の水系環境下における該微粒子の界面電位
が0〜−100mVであることを特徴とする光触媒粉
体。 (2)微粒子の一次粒子径が、0.001〜0.2μm
の範囲である前項1に記載の光触媒粉体。 (3)アニオン活性物質が、縮合リン酸、有機スルホン
酸、硫酸、フッ酸、から選ばれた少なくとも1種の物質
である前項1又は2に記載の光触媒粉体。 (4)前項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒粉体
を含んだ水系スラリー。
【0011】(5)前項1乃至3のいずれか1項に記載
の光触媒粉体を含む有機重合体組成物。 (6)前項4に記載の光触媒スラリーを用いた塗工剤。 (7)有機重合体組成物の有機重合体が、熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、天然樹脂、親水性高分子
からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項5に
記載の光触媒粉体を含む有機重合体組成物。 (8)有機重合体組成物が、塗料、コーティング組成
物、コンパウンド、及びマスターバッチから選ばれた物
品である前項5に記載の光触媒粉体を含む有機重合体組
成物。
【0012】(9)有機重合体組成物中の光触媒粉体の
濃度が、該組成物全質量中0.01〜80質量%の範囲
である前項8に記載の光触媒粉体を含む有機重合体組成
物。 (10)前項7乃至9のいずれか1項に記載の光触媒粉
体を含む有機重合体組成物を成形してなる光触媒機能性
成形体。 (11)前項10に記載の光触媒機能性成形体が、繊
維、フィルム、プラスチックから選ばれた成形体である
光触媒機能性成形体。 (12)前項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒粉
体を表面に具備した光触媒機能性構造体。 (13)前項6に記載の塗工剤を表面に具備した光触媒
機能性構造体。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明において用いられる二酸化
チタンは、基本的には光触媒能を有するものであれば特
に結晶形やその製法には限定されるものではなく、例え
ばハロゲン化チタンを原料とし気相反応により得られる
二酸化チタン微粒子、あるいはチタン酸溶液を湿式で加
水分解して得られる二酸化チタン微粒子やゾルまたはそ
れらを焼成した物でも良い。
【0014】本発明において用いられる二酸化チタン微
粒子は、前記のように結晶形を限定するものではない
が、光触媒として高性能を期待する上からアナターゼや
ブルーカイトの方が好ましい。前記二酸化チタン微粒子
は、これらの結晶形微粒子もしくはこれらの結晶を含む
複合結晶系微粒子であっても良い。
【0015】本発明において用いられる二酸化チタン
は、一次粒子の平均粒径が0.001〜0.2μm、さ
らに好ましくは0.001〜0.1μmの範囲がよい。
一次粒子の平均粒径が0.001μm以下ではそれを効
率よく生産するのが困難であり実用的でない。また、
0.2μmを超えると該二酸化チタンの光触媒性能が大
幅に低下する。
【0016】本発明においては、上記二酸化チタンを主
成分として、これにアニオン活性物質を含む微粉末であ
って、pH5の水系環境下における該微粉末の界面電位
が0〜−100mVであることが重要である。ここで、
アニオン活性物質とは、分子中に陰イオン性を示す親水
性原子団を有する物質であり、水中においてプロトン供
与性を有することによりその物質の表面が陰イオン性を
示しやすい物質を指し、それらに該当するものであれば
何でも良い。例えば、分子中に陰イオンを有する親水性
原子団(特にブレンステッド塩基)を有する物質として
は、縮合リン酸、有機スルホン酸、硫酸、フッ酸から選
ばれた少なくとも1種の物質である。縮合リン酸を例示
すれば、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン
酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリ
ン酸等が挙げられる。有機スルフォン酸を例示すれば、
メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホ
ン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン
酸が挙げられる。中でも、縮合リン酸が好ましい。
【0017】二酸化チタンを主成分としアニオン活性物
質を含むとは、アニオン活性物質が二酸化チタンと複合
化した状態でかつ微粒子表面近傍に存在したり、アニオ
ン活性物質が二酸化チタン微粒子の表面に吸着した状態
になっていたり、アニオン活性物質が二酸化チタンの表
面付近に存在した状態であってもよく、いずれの状態の
粉体でも構わない。
【0018】本発明において、界面電位とは互いに接し
ている固体粒子と水とが相対運動を行った時、両者の界
面に生じる電位差を指す。この界面電位を測定する方法
としては、例えば微粉末を水中に分散させたセルの両端
に電場を負荷して電気泳動を生じさせ、その泳動速度を
測定する方法が一般的である。泳動速度の測定法として
は顕微鏡下で直接観察する方法、回転プリズム法、レー
ザードップラー法、レーザー回転グレーティング法、画
像解析法、質量測定法などを用いることができる。
【0019】また、電気泳動法以外では沈降電位法、電
気浸透法、流動電位法、超音波法などがある。これらの
うち、レーザードップラー速度測定法を応用した電気泳
動法の電気泳動光散乱法が望ましい。本発明において
は、pH5における界面電位の値が0〜−100mVで
あることが必要であり、さらに言えば−10mV〜−5
0mVであることが望ましい。界面電位の値が0より大
きいと十分な光触媒活性が得られず、また分散安定性も
不十分なものとなる。界面電位の値が−100mVより
小さい場合には、十分な光触媒活性が得られない。
【0020】本発明において、二酸化チタンに対するア
ニオン活性物質の存在割合としては、pH5の水系環境
下における該微粒子の界面電位の値が0〜−100mV
の範囲の特性を有するものであれば良く、例えば、二酸
化チタンの100質量部に対しアニオン活性物質が0.
1質量部〜50質量部の範囲、さらには0.2質量部〜
20質量部の範囲であることが望ましい。0.1質量部
を下回ると該微粒子の十分な分散安定性が得られない。
一方、50質量部を上回ると該微粒子の光触媒としての
性能が大幅に低下する。またアニオン活性物質を二酸化
チタン表面に存在させる方法についても特に制限されな
い。例えば、その方法として二酸化チタンの製造過程の
初期あるいは途中段階でアニオン活性物質を添加しても
良いし、二酸化チタンの製造終了後に改めてその表面処
理工程の中でアニオン活性物質を存在させても良い。
【0021】前記光触媒粉体において、予め二酸化チタ
ン微粒子の表面に白金やロジウム、ルテニウム、パラジ
ウム、銀、銅、亜鉛などの金属が担持されていても良
い。そのような場合は二酸化チタン微粒子の環境浄化作
用がさらに増長し、殺菌、殺藻作用も大きくなる。また
その金属の担持は原料の二酸化チタンになされても良い
し、また前記アニオン活物質を含ませる時に前記金属が
担持できる工程を組み込んでも良い。
【0022】本発明におけるスラリーとは、二酸化チタ
ン微粒子を主成分としてさらにアニオン活性物質を含む
微粒子であって、pH5の水系環境下における該微粒子
の界面電位が0〜−100mVであることを特徴とする
光触媒粉体を含む水分散体を指す。この水分散体に親水
性有機溶媒を添加してもよい。記スラリー中の光触媒
粉体の含有割合については特に制限なく、例えば0.0
1質量%〜50質量%、さらには1質量%〜40質量%
の範囲が望ましい。もし、光触媒粉体の含有量が0.0
1質量%を下回ると、塗工後に十分な光触媒効果が得ら
れない。一方、50質量%を越えると増粘等の問題が生
じるばかりか経済的に不利となる。
【0023】また、この水分散体(スラリー)にバイン
ダーを任意に添加して塗工剤となし、これを後記する各
種構造体の表面に塗布することにより、光触媒機能性構
造体を製造することができる。本発明においては、バイ
ンダー材料について制限されるものではないが、例えば
ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸酸ナトリウム、
ポリ(N−ビニルアセトアミド)等の親水性高分子やジ
ルコニウム化合物等の無機材料から選ばれた少なくとも
1種のものを使用することができる。
【0024】ジルコニウム化合物には、オキシ塩化ジル
コニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニ
ウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジル
コニウムアンモニウム、プロピオン酸ジルコニウム等を
例示できる。また、具体的に塗工剤中のバインダーの添
加量は、例えば0.01質量%〜20質量%、さらには
1質量%〜10質量%の範囲が望ましい。もし、バイン
ダーの含有量が0.01質量%以下だと、塗工後に十分
な接着性を有さず、また20質量%を越えると増粘等の
問題が生じるばかりか経済的に不利となる。
【0025】本発明の光触媒粉体は、有機重合体に添加
して組成物として使用できる。ここで、使用できる有機
重合体には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、
天然樹脂、親水性高分子等が挙げられる。前記アニオン
活性物質を二酸化チタンに含ませることにより、有機重
合体と二酸化チタンの光触媒活性面(表面)が直接接触
することが少ないために、媒体の有機重合体自身が分解
劣化を受けることが少ない。
【0026】このような有機重合体として、ポリエチレ
ン、ナイロン6、ナイロン66、ポリ塩化ビニル、ポリ
塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ
エチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、ポリエ
チレンテレフタレート、シリコン樹脂、ポリビニルアル
コール、ビニルアセタール樹脂、ポリアセテート、AB
S樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース、
セルロース誘導体、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹
脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素樹
脂、フッ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹
脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、
不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、アルキド樹脂、レ
ーヨン等が挙げられる。
【0027】本発明の環境浄化用光触媒粉体を含むこれ
ら有機重合体組成物として、塗料、コーティング組成
物、コンパウンド、マスターバッチといった形態で使用
できる。有機重合体組成物中の光触媒の濃度は、該組成
物全質量につき、0.01〜80質量%、好ましくは1
〜50質量%である。また、これらの重合体組成物の
中、悪臭物質の除去効果を高めるために活性炭、ゼオラ
イトのような吸収剤を添加しても良い。本発明において
は、上記重合体組成物を成形することによって環境浄化
機能を有する重合体成形体が得られる。このような組成
物の成形体として、繊維、フィルム、プラスチック成形
体等が挙げられる。
【0028】さらに、本発明の重合体組成物は、耐久性
に優れていることから壁材、ガラス、看板、道路建築用
コンクリート等の構造体のコーティング組成物として適
応できる。さらに表面処理された本発明の二酸化チタン
及び該重合体組成物は、紙やプラスチック、布、木のよ
うな構造体(有機物)や、車のような車体塗膜にコーテ
ィングされても、媒体(構造体や塗膜)を光触媒的劣化
・破壊することなく、光触媒の機能を十分発揮すること
が可能である。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明
する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら制限
されるものではない。 (実施例1)あらかじめ計量した純水476mlにヘキ
サメタリン酸ソーダ(純正化学工業(株)製試薬1級)
を0.01g添加し、ラボスターラーで攪拌を行いなが
ら加熱して温度を98℃に保持した。そこへ四塩化チタ
ン水溶液(昭和タイタニウム(株)製)36gを60分
かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透
析器にかけてpHを5にした。こうして得られた光触媒
スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度
を測定したところ、2.1質量%であった。乾燥粉をX
線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉
末はブルーカイト型酸化チタンであった。次に得られた
粉末をFT−IR((株)パーキンエルマー製、FT−
IR1650)で分析を行った結果、メタリン酸の吸収
が観察され、アニオン活性物質の存在が確認された。ま
た粉末のBET比表面積測定結果から一次粒子径を求め
たところ、0.015μmであった。
【0030】(光触媒活性評価)次に、この粉末を3質
量%含む塗工液(バインダーとしてオキシ塩化ジルコニ
ウムを使用し、その添加量は該粉末に対して20質量%
を用いた)を作製して市販のガラス板上にフローコート
法で塗布を行い、その表面に赤インクを滴下した。そう
して得られた試料を市販のブラックライトの直下に設置
し、ライト点灯後の相対的な赤インク退色速度を求めた
ところ130であった。
【0031】(樹脂劣化評価)また、前記表光触媒粉体
10gとポリエチレンテレフタレート樹脂を用い、市販
のバッチ式ニーダー((株)東洋精機製ラボプラスとミ
ル)にて温度280℃下で二酸化チタン濃度20%の混
練物を製造した。得られたコンパウンドを加熱プレスで
3cmφ×1cmの試験片を作製し、試験片の黄色度
(YI値、ASTM−D1925)を分光測色計(ミノ
ルタ(株)製、CM−2002)で測定した結果、黄変
は認められなかった。
【0032】(分散性評価)光触媒スラリーの一部を用
い、市販の光子相関法粒度分布測定器(ハネウエル社製
UPA)による分散粒径評価を行った結果、平均粒径で
0.17μmであった。
【0033】(界面電位評価)光触媒スラリーの一部を
採取し、市販の界面電位測定装置(コールター(株)社
製DELSA440)で界面電位測定を行った結果−3
5mVであった。
【0034】(実施例2)実施例1のヘキサメタリン酸
ナトリウムを酸性ピロリン酸ナトリウム(太平化学産業
(株)製を使用)とした以外は実施例1の方法と同様に
処理して、アニオン活性物質を含む光触媒粉体を製造し
た。次に、得られた光触媒粉末を実施例1と同様な手法
により光触媒活性評価と樹脂劣化評価及び分散粒径評
価、界面電位評価を行った結果、表1の結果が得られ
た。
【0035】(実施例3)実施例1のヘキサメタリン酸
ナトリウムに代えてオルトリン酸(和光純薬(株)製試
薬1級を使用)を用いた以外は実施例1の方法と同様に
処理して、アニオン活性物質を含む光触媒粉体を製造し
た。次に、得られた光触媒粉末を実施例1と同様な手法
により光触媒活性評価と樹脂劣化評価及び分散粒径評
価、界面電位評価を行った結果、表1の結果が得られ
た。
【0036】(実施例4)1Lフラスコに純水476m
lを計量し、ラボスターラーで攪拌を行いながら加熱し
て温度を98℃に保持した。そこへ四塩化チタン水溶液
(昭和タイタニウム(株)製)36gを60分かけて滴
下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析器にか
けてpHを5にした。次にこの液中にヘキサメタリン酸
ソーダ(純正化学工業(株)製試薬1級)を0.1g添
加し、さらに、あらかじめ0.8mmのジルコニアビー
ズを2kg充填した2.4Lのポットミルの中にこのス
ラリーを入れ、回転数100rpmで混合処理を行っ
て、アニオン性活性剤を含む光触媒スラリーを得た。こ
の一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定し
たところ、1.9質量%であった。乾燥粉をX線回折装
置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブル
ーカイト型酸化チタンであった。次に得られた粉末をF
T−IR((株)パーキンエルマー製、FT−IR16
50)で分析を行った結果メタリン酸の吸収が観察さ
れ、アニオン活性物質の存在が確認された。
【0037】(比較例1)1Lフラスコに純水476m
lを計量し、ラボスターラーで攪拌を行いながら加熱し
て温度を98℃に保持した。そこへ四塩化チタン水溶液
(昭和タイタニウム(株)製)36gを60分かけて滴
下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析器にか
けてpHを5にした。こうして得られたスラリーの一部
を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したとこ
ろ、2.1質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にか
けて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルーカイ
ト型酸化チタンであった。また、BET法で測定した粉
末の比表面積から求めた一次粒子径は0.016μmで
あった。次いで、実施例1と同様にして粉体での光触媒
活性評価、樹脂劣化評価、及びスラリーでの分散粒径評
価及び界面電位評価を行った。結果は表1にまとめる。
【0038】(比較例2)市販の光触媒粉(石原産業
(株)製ST−01)1gを純水499mlに添加し、
ラボスターラーで分散を行って光触媒スラリーを得た。
元の粉末を用い、実施例1と同様の方法により光触媒活
性評価と樹脂劣化評価を行った。また光触媒スラリーを
用い、同じく実施例1と同様の方法により分散粒径及び
界面電位評価を行った。結果は表1にまとめる。
【0039】(比較例3)市販の顔料用酸化チタン(石
原産業(株)製A220)1gを純水499mlに添加
し、ラボスターラーで分散を行って光触媒スラリーを得
た。次にこの液中にヘキサメタリン酸ソーダ(純正化学
工業(株)製試薬1級)を0.1g添加し、さらに、あ
らかじめ0.8mmのジルコニアビーズを2kg充填し
た2.4Lのポットミルの中にこのスラリーを入れ、回
転数100rpmで混合処理を行って、アニオン性活性
剤を含む光触媒スラリーを得た。この一部を採取し、乾
燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、1.9質
量%であった。この時得られた乾燥粉を用い、実施例1
と同様の方法により光触媒活性評価と樹脂劣化評価を行
った。また光触媒スラリーを用い、同じく実施例1と同
様の方法により分散粒径及び界面電位評価を行った。結
果は表1にまとめる。
【0040】(比較例4)ヘキサメタリン酸ソーダの添
加量を0.001gとした以外は実施例と同様な手順で
光触媒粉末及び光触媒スラリーを得た。これらを用い実
施例1と同様の方法で光触媒活性、樹脂耐久性、分散粒
径、界面電位の評価を行った。結果は表1にまとめる。
【0041】(比較例5)ヘキサメタリン酸ソーダの添
加量を0.7gとした以外は実施例と同様な手順で光触
媒粉末及び光触媒スラリーを得た。これらを用い実施例
1と同様の方法で光触媒活性、樹脂耐久性、分散粒径、
界面電位の評価を行った。結果は表1にまとめる。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】本発明の光触媒粉体及びスラリーは、悪
臭の除去、空気中の有害物質または汚れの分解除去、排
水処理や浄水処理、抗菌や抗かびなどを効果的かつ経済
的に行える有益な材料であり、また光触媒粉体を含むス
ラリーは、分散安定性に優れ、産業上の利用性を極めて
高めるものである。特に本発明により繊維、紙、プラス
チック素材への表面塗布、または該素材への練り混み、
あるいは塗料組成物への使用において優れた光触媒活性
と耐久性及び分散安定性とを有する触媒粉体及びスラリ
ーを提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 5/00 CFD C08J 5/00 CFD C08K 9/00 C08K 9/00 C08L 101/00 C08L 101/00 C09D 201/00 C09D 201/00 Fターム(参考) 4F070 AA47 AC14 AD06 AE16 FB03 4F071 AA46 AB18 BC17 4G069 AA03 AA08 BA04A BA04B BA21A BA22A BA36A BB08A BB10A BB14A BB14B BC02A BC02B BD15A BE22A DA03 EA01X EA03X EA08 EB18X EB19 FA03 FB15 FB23 4J002 AA011 CF061 DE136 FB076 FB086 GH01 4J038 AA011 CB021 CB081 CD021 CD081 CE021 CF001 CF091 CG011 DD001 DH001 DL001 DN001 HA096 HA106 HA216 HA336 HA366 JA44 JC13 JC22 KA09 KA20 LA03 MA10 NA03 NA05

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アニオン活性物質を含む二酸化チタン微粒
    子であって、pH5の水系環境下における該微粒子の界
    面電位が0〜−100mVであることを特徴とする光触
    媒粉体。
  2. 【請求項2】微粒子の一次粒子径が、0.001〜0.
    2μmの範囲である請求項1に記載の光触媒粉体。
  3. 【請求項3】アニオン活性物質が、縮合リン酸、有機ス
    ルホン酸、硫酸、フッ酸、から選ばれた少なくとも1種
    の物質である請求項1又は2に記載の光触媒粉体。
  4. 【請求項4】請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光
    触媒粉体を含んだ水系スラリー。
  5. 【請求項5】請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光
    触媒粉体を含む有機重合体組成物。
  6. 【請求項6】請求項4に記載の光触媒スラリーを用いた
    塗工剤。
  7. 【請求項7】有機重合体組成物の有機重合体が、熱可塑
    性樹脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、天然樹脂、親水性高
    分子からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求
    項5に記載の光触媒粉体を含む有機重合体組成物。
  8. 【請求項8】有機重合体組成物が、塗料、コーティング
    組成物、コンパウンド、及びマスターバッチから選ばれ
    た物品である請求項5に記載の光触媒粉体を含む有機重
    合体組成物。
  9. 【請求項9】有機重合体組成物中の光触媒粉体の濃度
    が、該組成物全質量中0.01〜80質量%の範囲であ
    る請求項8に記載の光触媒粉体を含む有機重合体組成
    物。
  10. 【請求項10】請求項7乃至9のいずれか1項に記載の
    光触媒粉体を含む有機重合体組成物を成形してなる光触
    媒機能性成形体。
  11. 【請求項11】請求項10に記載の光触媒機能性成形体
    が、繊維、フィルム、プラスチックから選ばれた成形体
    である光触媒機能性成形体。
  12. 【請求項12】請求項1乃至3のいずれか1項に記載の
    光触媒粉体を表面に具備した光触媒機能性構造体。
  13. 【請求項13】請求項6に記載の塗工剤を表面に具備し
    た光触媒機能性構造体。
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