JP4799275B2 - 高活性光触媒 - Google Patents

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Description

本発明は、光活性の高い光触媒に関する。さらに詳しくは、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、スラリー、コーティング剤、光触媒性ならびに親水性を示す膜、ならびにそれを有する物品に関する。
従来、実用的に代表的な光触媒としては酸化チタンが幅広く使われている。酸化チタンには約400nm以下の波長の紫外線を吸収して電子を励起させる性質がある。そこで、発生した電子とホールは粒子表面に到達すると、酸素や水と化合して様々なラジカル種を発生させる。このラジカル種が主として酸化作用を示し、表面に吸着した物質を酸化分解する。これが光触媒の基本原理である。こうした超微粒子酸化チタンの光機能を利用して、抗菌、消臭、防汚、大気の浄化、水質の浄化等の環境浄化が検討されている。
ここで、その触媒能を高める例として次の方法がある。
(1)粒径を小さくする。
生成した電子とホールの再結合を抑制するために、非常に有効である。
(2)結晶性を高める。
生成した電子とホールの表面への拡散速度を上げるために、有効である。
(3)電荷分離を行う。
生成した電子とホールを電荷分離して、その表面に到達する歩留まりを向上する。
(4)バンドギャップを調整する。
微量不純物を添加するなどしてバンドギャップを小さく(最大吸収波長を大きく)すると、例えば、太陽光や蛍光灯のような紫外線の少ない光源の光利用率を高めることができる。
このような手段の中で、近年(4)を目的とするいわゆる可視光応答型光触媒の検討が種々なされている。
例えば、特開平9−262482号公報では、触媒活性の高いアナターゼ型二酸化チタンにCr(クロム),V(バナジウム)等の金属元素をイオン注入して材料改質を行うことにより、二酸化チタンの光最大吸収波長を長波長側にシフトさせ、可視光での二酸化チタン触媒の動作を可能にしている。しかし、上記のような金属元素のイオン注入は、装置が大規模になり高価であり工業的には現実性に乏しいという問題点がある。
また、特開2001−72419号公報では、X線光電子分光法で酸化チタンの結合エネルギー458eV〜460eVの間にあるチタンのピークの半価幅を4回測定した時の1回目と2回目のチタンのピークの半価幅の平均値をAとし、3回目と4回目のチタンのピークの半価幅の平均値をBとしたときに指数X=B/Aが0.97以下である酸化チタンが開示されている。しかし、粉の活性が不満足であるばかりか、着色を示しているが故にその用途には制限がある。現実的には、透明性を要求されるような塗料には不適である、というような欠点を有している。
また、従来の多くの可視光応答型の光触媒は、その触媒能の十分な発現のためには、キセノンランプのような強力な光源を必要としている点においても現実性に乏しいと言わざるを得ない。既存の安価な光源、例えば、昼白色蛍光灯のような室内において常用される光源で十分な効果を発揮する光触媒があれば大きな実用上のメリットがある。
国際公開WO94/11092号公報には、病室や居住空間の内壁に二酸化チタンなどの半導体からなる光触媒薄膜を設置することによって細菌や悪臭物質を処理する方法が開示されているが、その二酸化チタンの活性の作り込み方法およびその粒子の光触媒活性については言及されていない。通常の二酸化チタンを使用するのであれば、上述の例の可視光応答型の光触媒よりも、蛍光灯のような紫外線の比率の小さい光源による活性は低いものと予想される。
また、酸化チタン微粒子の光触媒能に注目した応用については、代表的な例として酸化チタン微粒子を取り扱いの容易な繊維やプラスチック成形体などの媒体に練り込んだり、布、紙等の基体の表面に塗布する方法が試みられている。しかしながら、酸化チタンの強力な光触媒作用によって有害有機物や環境汚染物質だけでなく繊維やプラスチック、紙自身の媒体も分解・劣化され易く、実用上の耐久性への障害になっていた。また、酸化チタン微粒子の取り扱い易さから、酸化チタン微粒子とバインダーを混合した塗料が開発されているが、そのような媒体への作用(障害)に克服する耐久性ある安価なバインダーはまだ見出されていない。
特開平9−225319号公報や特開平9−239277号公報には、酸化チタン粒子の強い光触媒作用による樹脂媒体の劣化またはバインダーの劣化に対する防止抑制策が開示されており、その手段として酸化チタン粒子の表面にアルミニウム、珪素,ジルコニウム等の光不活性化合物を立体的障壁のある島状に担持して光触媒作用を抑制する方法が提案されている。しかしながら、この方法では光不活性化合物が島状に担持されるものの、樹脂媒体やバインダーの特定部位は酸化チタンの強い光触媒作用を受ける部分が存在してしまう欠点がある。
特開平10−244166号公報には、酸化チタンの表面に多孔質のリン酸カルシウムを被覆した光触媒性酸化チタンが提案されているが、この場合は被覆膜のリン酸カルシウム層によって光触媒性能が低下するという問題点が指摘されている。
また、国際公開WO99/33566号公報には、酸化チタン微粒子の表面の少なくとも一部に多孔質のリン酸カルシウム被覆層が形成され、その界面に陰イオン性界面活性剤が存在する二酸化チタン微粒子粉体が開示されている。
さらに、光触媒活性を有する酸化チタンを含むスラリーに関しては、特開平10−142008号公報に、チタニアゾル溶液、チタニアゲル体又はチタニアゾル・ゲル混合体を、密閉容器内で加熱処理すると同時に加圧処理し、ついで超音波により分散させるか又は攪拌して得られたアナターゼ型酸化チタン含有スラリーが開示されている。
また、特開平11−343426号公報には分散安定性に優れた光触媒塗料が開示され、これには146〜150cm-1の範囲にラマンスペクトルのピークを有し、かつ、アナターゼ型酸化チタンの占める割合が95質量%以上である酸化チタンとシリカゾルとを溶媒中に含む光触媒塗料が開示されている。
このようにいくつかの技術が開示されてはいるが、これまでの従来技術においては、光触媒性と、有機系材料と一緒に用いる場合の耐久性及び分散安定性を同時に満足するような光触媒性粉体及びスラリーを工業的に有用な方法で提供することが不可能であった。
本発明の目的は、上記のような従来技術に鑑み、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、スラリー、コーティング剤、光触媒性を示す膜ならびにそれを有する物品を提供するものである。また、それらの組成物や膜において、着色が少なく、膜においては透明性が高いものを提供するものである。
また、本発明の目的の一つには、二酸化チタンの光触媒性を損なうことなく、それと同時に分散安定性に優れることによって産業上の利用性を極めて高めることが可能となる光触媒性粉体及びスラリーとそれらを用いた重合体組成物、塗工剤、光触媒性成形体、光触媒性構造体を提供することが含まれる。
本発明は、繊維、紙、プラスチック素材への表面塗布、または該素材への練り混み、あるいは塗料組成物への使用において優れた光触媒性と耐久性及び分散安定性とを有する光触媒性粉体及びスラリーを提供する。
本発明者らは、上記の目的に向かって鋭意研究を重ねた結果、微弱な光量の光源でも高い活性を示す光触媒粒子を作り込むことや、前述のような活性の高い二酸化チタン微粒子の表面に、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む多塩基酸塩が存在することを特徴とする光触媒粉体及び該粉体を含んだスラリーを発明することにより上記課題を達成した。
即ち、本発明は以下の発明からなる。
(1)光触媒粒子であって、アセトアルデヒドを20ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cm2となるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率が20%以上となることを特徴とする光触媒粒子。
(2)分解率が、40%以上となることを特徴とする前項1記載の光触媒粒子。
(3)分解率が、80%以上となることを特徴とする前項2記載の光触媒粒子。
(4)光触媒粒子が、二酸化チタンを含有する前項1乃至3のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
(5)二酸化チタンのBET比表面積が、10〜300m2/gである前項4に記載の光触媒粒子。
(6)二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである前項5に記載の光触媒粒子。
(7)二酸化チタンがブルッカイト型結晶系を含むものである前項5に記載の光触媒粒子。
(8)二酸化チタンがルチル型結晶系を含むものである前項5に記載の光触媒粒子。
(9)二酸化チタンが、アナターゼ型、ルチル型及びブルッカイト型のうち少なくとも2種以上の結晶系を含む前項5に記載の光触媒粒子。
(10)光触媒粒子が、二酸化チタンと光触媒として不活性なセラミックスとの複合粒子である前項6乃至9のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
(11)光触媒として不活性なセラミックスが、二酸化チタン粒子の表面に部分的に存在する前項10に記載の光触媒粒子。
(12)光触媒として不活性なセラミックスが、アルカリ土類金属、遷移金属及びAlからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む塩である前項10または11に記載の光触媒粒子。
(13)アルカリ土類金属が、Mg、Caからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項12に記載の光触媒粒子。
(14)遷移金属が、Fe,Znからなる群より選ばれた少なくとも1種である前項12に記載の光触媒粒子。
(15)アルカリ土類金属を含む塩もしくは遷移金属を含む塩が、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩及びカルボン酸塩から選ばれることを特徴とする前項12に記載の光触媒粒子。
(16)縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である前項15に記載の光触媒粒子。
(17)光触媒として不活性なセラミックスが、Si化合物、Al化合物、P化合物、S化合物、N化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項10または11に記載の光触媒粒子。
(18)複合粒子が、10〜300m2/gのBET比表面積を有する複合粒子である前項10乃至17のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
(19)電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点が4以下であることを特徴とする前項1乃至18のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
(20)前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする光触媒性粉体。
(21)前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とする有機重合体組成物。
(22)有機重合体組成物の有機重合体が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成樹脂、天然樹脂及び親水性高分子からなる群より選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前項21に記載の有機重合体組成物。
(23)有機重合体組成物が、塗料、コーティング組成物、コンパウンド及びマスターバッチからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体組成物である前項21に記載の有機重合体組成物。
(24)有機重合体組成物が、光触媒性粉体を該組成物全質量中0.01〜80質量%含む前項21乃至23のいずれか1項に記載の有機重合体組成物。
(25)前項21乃至24のいずれか1項に記載の有機重合体組成物を成形してなることを特徴とする光触媒性成形体。
(26)光触媒性成形体が、繊維、フィルム及びプラスチックからなる群より選ばれた少なくとも1種の成形体である前項25に記載の光触媒性成形体。
(27)前項26に記載の光触媒性成形体から得られることを特徴とする物品。
(28)前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子を表面に具備したことを特徴とする物品。
(29)物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項27または28に記載の物品。
(30)前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とするスラリー。
(31)光触媒粒子を含むスラリーであって、スラリーを乾燥して得られる粉体が、前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子であることを特徴とするスラリー。
(32)スラリーが、溶媒として水を含有する前項30または31に記載のスラリー。
(33)スラリーが、光触媒粒子を0.01〜50%含有する前項30または31に記載のスラリー。
(34)スラリーのpHが、4〜10である前項30または31に記載のスラリー。
(35)スラリーのpHが、6〜8である前項34に記載のスラリー。
(36)スラリーの光透過率が、スラリー中の光触媒粒子の濃度を10%、波長550nm、光路長2mmで測定したとき、10%以上である前項30乃至35のいずれか1項に記載のスラリー。
(37)光透過率が30%以上である前項36に記載のスラリー。
(38)光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、前項1乃至19のいずれか1項に記載の光触媒粒子と、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
(39)光触媒性を示す膜を与えるコーティング剤であって、前項30乃至37のいずれか1項に記載のスラリーと、少なくともバインダーとから構成されることを特徴とするコーティング剤。
(40)バインダーが、有機化合物を含む前項38または39に記載のコーティング剤。
(41)有機化合物が、アクリルシリコン、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド及びアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の有機化合物である前項40に記載のコーティング剤。
(42)バインダーが、無機化合物を含む前項38または39に記載のコーティング剤。
(43)無機化合物が、Zr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機化合物である前項42に記載のコーティング剤。
(44)コーティング剤を塗布し得られた膜を硬化させる光触媒性を示す膜の製造方法であって、硬化させる温度が500℃以下であり、前項38乃至43のいずれか1項に記載のコーティング剤を用いることを特徴とする光触媒性を示す膜の製造方法。
(45)硬化させる温度が、200℃以下である前項44に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
(46)硬化させる温度が、30℃以下である前項45に記載の光触媒性を示す膜の製造方法。
(47)光触媒性を示す膜を有する物品であって、光触媒性を示す膜が前項44乃至46のいずれか1項に記載の方法により得られることを特徴とする物品。
(48)光触媒性を示す膜を有する物品であって、硫化水素を60ppm含有する5Lの乾燥空気中で、表面積400cm2の光触媒性を示す膜に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cm2となるように光を照射したとき、照射4時間後の硫化水素の分解率が20%以上となることを特徴とする物品。
(49)光触媒性を示す膜が、0.01〜100μmの膜厚を持つ前項47または48に記載の物品。
(50)膜厚が、0.01〜0.1μmである前項49に記載の物品。
(51)膜厚が、1〜100μmである前項49に記載の物品。
(52)物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光透過率をT1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光透過率をT2%としたとき、T2/T1が0.9以上となる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項47または48に記載の物品。
(53)物品が、光触媒性を示す膜の無い状態での550nmにおける光反射率をR1%、光触媒性を示す膜を有する状態での550nmにおける光反射率をR2%としたとき、R2/R1が0.9以上でとなる部分を有する光触媒性を示す膜を有する物品である前項47または48に記載の物品。
(54)光触媒性を示す膜が、2H以上の鉛筆硬度を有する前項47乃至53のいずれか1項に記載の物品。
(55)光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように、昼白色蛍光灯で光を24時間照射された後、20°以下の水との接触角を有するとを特徴とする前項47乃至54のいずれか1項に記載の物品。
(56)水との接触角が、10°以下である前項55に記載の物品。
(57)水との接触角が、5°以下である前項56に記載の物品。
(58)光触媒性を示す膜が、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射され、ついで暗所に24時間保持された後、20°以下の水との接触角を有することを特徴とする前項47乃至57のいずれか1項に記載の物品。
(59)暗所に24時間保持された後、水との接触角が10°以下である前項58に記載の物品。
(60)暗所に24時間保持された後、水との接触角が5°以下である前項59に記載の物品。
(61)光触媒性を示す膜が、キセノンアークランプ式促進暴露試験4000時間後、黄変度が10以下であり、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角が20°以下である前項47乃至60のいずれか1項に記載の物品。
(62)光触媒性を示す膜が、無機基材上に形成されている前項47乃至61のいずれか1項に記載の物品。
(63)無機基材が、金属もしくはセラミックスである前項62に記載の物品。
(64)無機基材が、Si化合物、Al化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の無機基材である前項62に記載の物品。
(65)光触媒性を示す膜が、有機基材上に形成されている前項47乃至61のいずれか1項に記載の物品。
(66)有機基材が、有機重合体である前項65に記載の物品。
(67)有機重合体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エボキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素樹脂、フツ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂及びアルキド樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の有機重合体である前項66に記載の物品。
(68)物品が、建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材及び自動車用品からなる群より選ばれた少なくとも1種である前項62乃至67のいずれか1項に記載の物品。
(69)前項27、28及び68のいずれか1項に記載の物品の光触媒性及び親水性を発現するための光源が、太陽光、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎からなる群より選ばれた少なくとも1種の光源であることを特徴とする光触媒性及び親水性の付与方法。
〔発明の詳細な説明〕
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、微弱な光量の光源でも高い活性を示す光触媒に関する。さらに詳しくは、昼白色蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる光触媒粒子ならびに粉体、それを用いた有機重合体組成物、スラリー、コーティング剤、光触媒性を示す膜ならびにそれを有する物品に関する。また、それらの組成物や膜において、着色が少ないものに関し、さらに膜においては透明性が高いものに関する。
本発明における光触媒粒子は、アセトアルデヒドを20ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cm2となるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率(以下、「DWA」と称することがある)が20%以上となる光触媒粒子である。好ましくはDWAが40%以上であり、さらに好ましくはDWAが80%以上である。
この分解率は、例えば次のようにして測定できる。光触媒粒子(これを含有する粉体でもよい)3.5gを9cm内径のガラスシャーレの底面に均一に敷き詰めたものを5Lの容量の可視光〜紫外光の透過率の良い容器(フッ化ビニルフィルム製の袋等)に入れる。次いでそこにアセトアルデヒドを20ppm含有する乾燥空気を5L充填・ブローを少なくとも1回行い、再度同じ濃度のアセトアルデヒドを含有する乾燥空気を5L充填し、内部のガスを十分置換する。容器の外から光を照射して1時間後のアセトアルデヒドの吸着を除く分解率(以下、単に「分解率」と称する)を測定する。この時、光源として昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cm2の光が敷き詰めた光触媒粒子に照射されるようにする。
以下、さらに具体的に説明する。
粒子の形態が粉体である場合にはそれを用意する。粒子の形態がスラリー状態である場合には、例えば、そのスラリーを、加熱、減圧等により乾燥し、好ましくはその溶媒の沸点以上で乾燥し、粉砕した粉体を用意する。水スラリーである場合には100℃〜120℃で乾燥するとよい。そのようにして用意された粉体3.5gを9cm内径のガラスシャーレの底面に均一に敷き詰めたものを5Lの容量のフッ化ビニルフィルム製の袋に入れる。フッ化ビニルフィルム製の袋としては、テドラーバッグ(ジーエルサイエンス株式会社製、AAK−5)があげられる。一方、アセトアルデヒドを20ppm含有する乾燥空気は、例えば、乾燥空気を用いてパーミエーター(株式会社ガステック製、PD−1B)で調製のすることができる。乾燥空気としては、例えば、市販の圧縮空気(35℃で約14.7MPaになるように圧縮され、結露水やコンプレッサーオイル等を除去した空気)を用いればよい。次いでフッ化ビニルフィルム製袋にアセトアルデヒドを20ppm含有する乾燥空気の5L充填・ブローを少なくとも1回以上行う。二酸化チタンはある程度アセトアルデヒドを吸着するので、このような作業が必要となる。再度同じ濃度のガスを5L充填した後に、検知管(株式会社ガステック製、No.92L)を用いて袋中の初期アセトアルデヒド濃度C0T(ppm)を測定する。
光源として昼白色蛍光灯を用意する。昼白色蛍光灯としては、例えば、株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B等が挙げられる。このような蛍光灯の相対エネルギーのスペクトルとして図1のようなスペクトルが知られている(株式会社日立GEライティング、昼白色蛍光ランプカタログ)。
光強度の測定には、例えば、アテックス株式会社製、UVA−365を用いる。これを使えば、365nmにおける光強度を測定することができる。
次にバッグの外から所定の光強度で光照射を開始する。その時点を起点として1時間後の袋中のアセトアルデヒド濃度C1T(ppm)を測定する。
一方、対照実験として、上記と同様な操作にて暗所において1時間保持するテストも行う。その時の初期アセトアルデヒド濃度をC0B、1時間後のアセトアルデヒド濃度C1B(ppm)とする。
吸着を除く分解率DWAは、
DWA=〔{(C0T−C1T)−(C0B−C1B)}/C0T〕×100(%)
により定義される。
本発明における光触媒粒子のDWAは20%以上であることを特徴とする。好ましくは、40%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
光触媒粒子を構成する二酸化チタンのBET比表面積が10〜300m2/gであることが好ましい。より好ましくは、30〜250m2/g、さらに好ましくは、50〜200m2/gである。10m2/gより小さいと光触媒能が小さくなる。300m2/gより大きいと生産性が悪く、実用的ではない。
二酸化チタンの結晶型はアナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうちいずれでもかまわない。好ましくは、アナターゼ型、もしくはブルッカイト型である。さらに好ましくはブルッカイト型である。また、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のうち2種以上の結晶型を含有していてもかまわない。2種以上の結晶型を含有していると、それぞれの単独の結晶型である場合より活性が向上する場合もある。
また、光触媒性粉体が、二酸化チタンと光触媒として不活性なセラミックスとの複合粒子を含有していてもかまわない。また、その光触媒として不活性なセラミックスの存在は、二酸化チタン粒子の粒子内であっても、表面であってもよい。表面に存在する場合には、部分的な被覆が好ましい。前者の場合は、n型半導体やp型半導体を形成して可視光活性を高めることがあり、後者の場合には、有機物との接触を抑制することによってその光触媒粒子の実用上の応用範囲を広げることができる。
次に、後者の場合について説明する。光触媒として不活性なセラミックスとしては特に制限はないが、アルカリ土類金属もしくは遷移金属もしくはAlからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属を含む塩であることが好ましい。アルカリ土類金属としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Raがあるが、特に性能面の観点から、Mg、Caが好ましい。前記遷移金属としては、特に制限はないが、Fe,Znが好ましい。これらの金属は、通常、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜20質量%、好ましくは0.01質量%〜10質量%の範囲で存在することが好ましい。金属が0.01質量%より少ないとバインダーとしての役割を果たさず、多塩基酸塩が媒体中で遊離しやすくなる。一方、金属が20質量%より多いと、媒体中での二酸化チタン微粒子の分散性を悪くする。
前記多塩基酸塩としては、リン酸塩、縮合リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、縮合硫酸塩、多価カルボン酸塩があげられる。中でも、縮合リン酸塩が好ましく、縮合リン酸としては、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩があげられる。その中でも、ピロリン酸、トリポリリン酸が好ましい。
これらの多塩基酸塩を二酸化チタンの表面に被覆する手段としては、二酸化チタンを含む水系スラリーに所定の多塩基酸もしくは、その水溶性の金属塩を添加して十分分散させた後、担持させる金属の塩化物等の水溶液を添加して熟成する方法等が採用される。
前記光触媒として不活性なセラミックスとしては、多塩基酸塩以外に、Si化合物、Al化合物、P化合物、B化合物、S化合物、N化合物、があげられる。具体的には、シリカ、ジルコニア、アルミナ、マグネシア、カルシア、アモルファスのチタニア、ムライト、スピネル、リン酸、縮合リン酸、ホウ酸、硫酸、縮合硫酸、硝酸等があげられる。
これらの光触媒として不活性なセラミックスは、通常、二酸化チタン質量に対して、0.01質量%〜50質量%、好ましくは0.1質量%〜20質量%の範囲で存在することが好ましい。光触媒として不活性なセラミックスが0.01質量%より少ないと、プラスチック、紙、繊維などの媒体への二酸化チタンの光触媒作用により媒体自身の耐久性が悪化する。一方、光触媒として不活性なセラミックスが50質量%より多いと経済的に不利になる。
驚くべき事に、二酸化チタン微粒子、多塩基酸イオン、アルカリ土類金属もしくは遷移金属もしくはAl金属の共存により、多塩基酸の金属塩(以下「多塩基酸塩」と略す)が二酸化チタン微粒子に強固に結合または担持し、可溶性の多塩基酸塩が、バインダーや樹脂のような媒体の作用により二酸化チタン微粒子表面から遊離しにくくなる。このようになる理由は明らかでないが、金属イオンが多塩基酸イオンと二酸化チタン微粒子のバインダー的な役割を果たしているためと思われる。
さらに驚くべきことに、二酸化チタンにこのような表面処理を施したにもかかわらず、未処理品に比べてその光触媒活性が場合によっては向上することがあることも判明した。特に、多塩基酸で部分的に表面処理された場合にそのような傾向が確認された。その理由は定かではないが、複数の電子吸引性のカルボキシル基やスルホニル基等が二酸化チタン表面のTi原子と相互作用を示し、そのために光吸収により二酸化チタン粒子内に生成した電子がその表面で電荷分離され、結果としてその光触媒活性が向上していることも一因ではないかと思われる。また、二酸化チタン表面においてTiを含有する複合酸化物のエネルギー準位が新たに形成され、その複合酸化物の種類によっては、可視光に応答しうるバンドギャップを有することができるためとも考えられる。従来、光触媒として不活性な物質を表面処理することにより、二酸化チタンの光触媒活性が抑制されると考えられているが、本発明においては特定の組み合わせにおいて、逆に光触媒活性を向上させているということが見出された。一方で、その表面処理基は少なくともその末端原子団部分は光触媒的には不活性であり、立体的にも有機系材料と二酸化チタンとの接触を抑制しており、その粒子を有機系材料に適用した場合においてその耐久性を向上している、という利点もある。一般的には、被分解物は気体や液体であり、それらと光触媒粒子との位置関係は流動的(すなわち、被分解物が易動性)であるのに対して、有機基材は固体であり、光触媒粒子と有機基材との立体的位置関係は固定的関係にある、ということから上記現象が実現しうることが理解できる。
二酸化チタンと光触媒として不活性なセラミックスとの複合粒子のBET比表面積が10〜300m2/gであることが好ましい。より好ましくは、30〜250m2/gであり、さらに好ましくは50〜200m2/gである。10m2/gより小さいと光触媒能が小さくなる。300m2/gより大きいと生産性が悪く、実用的ではない。
また、本発明の光触媒粒子の電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点は4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。以下、ゼータ電位の測定方法について説明する。
ゼータ電位の測定方法には、いろいろあるが、本発明で採用する測定原理はレーザードップラー法による周波数シフト量より泳動速度を解析する、いわゆる電気泳動光散乱法である。具体的には大塚電子株式会社製ELS−8000にて測定を行うことができる。
0.01mol/lのNaCl溶液約50mlに、試料0.01g程度(耳掻き程度)を投入し、pH調整が必要であれば0.01および0.1mol/lのHClまたはNaOHにて調整し、約1分間超音波分散し、測定器にかける。
本発明の光触媒性粉体は、有機重合体に添加して組成物として使用できる。ここで、使用できる有機重合体には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、天然樹脂などが挙げられる。前記光触媒として不活性なセラミックスの存在により、有機重合体と二酸化チタンの光触媒活性面(表面)が直接接触することがないために、媒体の有機重合体自身が分解劣化を受けることが少なく、有機重合体の耐久性が増大する。
このような有機重合体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフイン、ナイロン6、ナイロン66、アラミドなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステルなどのポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エボキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素樹脂、フツ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。
本発明の光触媒性粉体を含むこれら有機重合体組成物は、コンパウンド、マスターバッチなどの形態で使用できる。有機重合体組成物中の光触媒性粉体の濃度は、該組成物全質量につき、0.01〜80質量%、好ましくは1〜50質量%である。また、有機重合体組成物には、悪臭物質の除去効果を高めるために活性炭、ゼオライトのような吸着剤を添加してもよい。本発明においては、上記重合体組成物を成形することによって光触媒性を有する重合体成形体が得られる。このような組成物の成形体として、繊維、フィルム、プラスチック成形体等が挙げられる。具体的には、各種建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品などに適用させることができる。
本発明におけるスラリーとは、前記光触媒粒子を含む溶媒分散体を指す。光触媒粒子としては、例えば、TiCl4を原料として気相法で得られる粉体や、TiCl4水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料として液相法で得られる粒子、もしくはそれらの粒子を多塩基酸塩で表面処理した粒子などが例示される。溶媒には、特に制限はないが、通常光触媒粒子の表面は親水性なので親水性溶媒が好ましく用いられる。さらに好ましくは、水が用いられる。もしくは、水に親水性有機溶媒を添加してもよい。
前記スラリー中の光触媒粒子の含有割合については特に制限なく、例えば、0.01質量%〜50質量%、さらには1質量%〜40質量%の範囲が望ましい。もし、光触媒性粉体の含有量が0.01質量%を下回ると、塗工後に十分な光触媒効果が得られない。一方、50質量%を越えると増粘等の問題が生じるばかりか経済的に不利となる。
また、水を含有する溶媒を採用するときにはそのスラリーのpHは4〜10であることが好ましい。さらに好ましくは、pH6〜8である。pHが4より小さいか、10より大きいと生体や環境に対して好ましくない影響を与えるし、金属に対する腐食作用が無視できなくなり金属基材に適用しにくくなってしまう。
また本発明のスラリーは、高い透過率を持つことを特徴とする。以下、透過率の測定方法を説明する。透過率の測定には分光光度計や分光測色計を用いる。ここではミノルタ株式会社製分光測色計CM−3700dでの測定について示す。
光路長2mmのガラスセルに10%濃度のスラリーを用意する。このガラスセル中のサンプルにキセノンランプを光源として積分球によって拡散反射された光を照射し、透過した光を測定分光器で受光する。一方積分球内で拡散された光は照明光用分光器で受光し、それぞれの光を分光し、各波長での透過率を測定する。
スラリーの光触媒粒子の濃度を10%とした時に、スラリーの2mm厚み(光路長)の550nmにおける光透過率が10%以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、30%以上の透過率を有する。このスラリーを用いることによって、塗布すべき対象の意匠性や色彩を損なうことがなくなり、実用上の応用において非常に有利となる。
また、この分散体(スラリー)にバインダーを任意に添加して塗工剤となし、これを後記する各種構造体の表面に塗布することにより、光触媒性構造体を製造することができる。すなわち、塗料、コーティング組成物などの形態で使用できる。本発明においては、バインダー材料について制限されるものではなく有機系バインダーであっても無機系バインダーであっても良い。有機バインダーには水溶性のバインダーが挙げられるが、具体例として、ポリビニルアルコール、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、ポリアクリルアミド、アクリルアミド等が挙げられる。また、無機バインダーとしてはZr化合物、Si化合物、Ti化合物、Al化合物が例示される。具体的にはオキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、プロピオン酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、アルコキシシラン、アルコキシシランの鉱酸による部分加水分解生成物、珪酸塩等の珪素化合物、或いはアルミニウムやTiの金属アルコキシド等が挙げられる。
特に、カルボキシル基やスルホニル基等を官能基として複数個有するバインダーを用いるとその蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源下における光触媒能が向上する。そのバインダーの具体例としては、水溶性ウレタンエマルジョンなどがあげられる。その理由は定かではないが、前記多塩基酸による二酸化チタン表面処理と同様、水溶性ウレタンエマルジョンに存在する複数の電子吸引性のカルボキシル基やスルホニル基等と二酸化チタン表面のTi原子が相互作用を示し、そのために光吸収により二酸化チタン粒子内に生成した電子がその表面で電荷分離されたり、もしくは二酸化チタン表面のバンドギャップが変化しているために、その光触媒活性が向上しているのではないかと思われる。
また、具体的に塗工剤中のバインダーの添加量は、例えば、0.01質量%〜20質量%、さらには1質量%〜10質量%の範囲が望ましい。もし、バインダーの含有量が0.01質量%以下だと、塗工後に十分な接着性を有さず、また20質量%を越えると増粘等の問題が生じるばかりか経済的に不利となる。
有機バインダーを用いたり、アルコキシシランの鉱酸による部分加水分解生成物をバインダーとして採用したりすれば、30℃以下で塗布・硬化させることができる。また、30℃以下で塗布後、200℃以下で硬化させることもできる。さらに、無機基材に無機バインダーを採用し、30℃以下で塗布後、500℃以下で硬化させ、硬度の大きい膜を形成することもできる。膜中の二酸化チタンの結晶性を改善することによって光触媒能が高まることもあり、場合によっては300〜500℃に加熱することが推奨される。
また、本発明に光触媒性を示す膜を有する物品の光触媒能は以下のような特徴を有する。
硫化水素を60ppm含有する5Lの乾燥空気中で、表面積400cm2の光触媒性を示す膜に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cm2となるように光を照射したとき、照射4時間後の硫化水素の分解率(以下、単に「DWH」と称することがある)が20%以上となる。
この分解率は、例えば次のようにして測定できる。光触媒性膜を有する物品を、光が照射される面積が400cm2となるように5Lの容量のフッ化ビニルフィルム製の袋に入れる。次いでそこに硫化水素を60ppm含有する乾燥空気を5L充填・ブローを少なくとも1回行い、再度同じ濃度の硫化水素を含有する乾燥空気を5L充填し、容器内部のガスを十分置換する。次に、バッグの外から光を照射して4時間後の硫化水素の吸着を除く分解率を測定する。この時、光源として昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cm2の光が光触媒性膜を有する物品に照射されるようにする。
また、本発明は光透過率の高いスラリーを原料としているので、それを原料とする塗工剤からえられた膜も透明性が高いものが得られる。透明性の高い膜を与える光触媒粒子としては、液相法によって合成された二酸化チタンを原料として使うことが推奨される。具体的には、TiCl4水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料として熱加水分解したり、中和加水分解したりして得られる粒子、もしくはそれらの粒子を多塩基酸塩とアルカリ土類金属で表面処理した粒子などが例示される。通常、形成された膜が光触媒性を効果的に示す膜の厚みは0.01〜100μmである。また、干渉縞を効果的に抑制する為には、その膜の厚みは0.01〜0.1μm、もしくは1μm以上であることが好ましい。
基材が透明であれば、その上に形成された光触媒性膜の透明性は下記のように示すことができる。光触媒性を示す膜の無い状態(成膜前)の550nmにおける光透過率をT1%とし、光触媒性を示す膜を有する状態(成膜後)の550nmにおける光透過率をT2%、T2/T1が0.9以上であることを特徴とする。さらに好ましくは、T2/T1が0.95以上である。T2/T1が0.9より小さいと、基材の不透明性が実用上目立ってくる。
一方、基材が不透明であれば、その上に形成された膜の透明性を以下のように、反射率を用いて示すことができる。
反射率の測定には分光光度計や分光測色計を用いる。ここではミノルタ株式会社製分光測色計CM−3700dでの測定について示す。膜サンプルにキセノンランプを光源として積分球によって拡散反射された光を照射し、膜で反射した光のうち試料面で垂直な軸と8度の角度をなす方向の反射光を測定分光器で受光する。一方積分球内で拡散された光は照明光用分光器で受光し、それぞれの光を分光し、各派長での反射率を測定する。
光触媒性を示す膜の成膜前の550nmにおける光反射率をR1%とし、成膜後の550nmにおける光反射率をR2%としたときの、R2/R1が0.9以上であることを特徴とする。さらに好ましくはR2/R1が0.95以上である。R2/R1が0.9より小さいと、基材に対する隠蔽性や不透明性が実用上目立ってくる。
また、本発明においては、光触媒性を示す膜の鉛筆硬度が2H以上であることを特徴とする。膜の鉛筆硬度が大きいということは、その膜が傷つきにくいことを意味する。特にZr化合物をバインダーとして採用すると強固な膜を得やすい。
基材(物品)としては、特に制限はなく無機基材であっても、有機基材であってもよい。無機基材としてはSi化合物、Al化合物、各種セラミックスや金属等があげられる。具体的には、シリカ、アルミナ、ムライト、スピネル、ジルコニア、チタニア、黒鉛、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド、鉄、ステンレス、チタン、ジルコン、ニオブ、タンタル、等を例示することができる。
有機基材としては、有機重合体があげられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66、アラミド、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール、ピニルアセタール樹脂、ポリアセテート、ABS樹脂、エボキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースおよびレーヨンその他のセルロース誘導体、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、尿素樹脂、フツ素樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フェノール樹脂、セルロイド、キチン、澱粉シート、アクリル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂等から選ぶことができる。
また、前記有機重合体組成物をマスターバッチ、コンパウンド等の形態を経由して作製された物品や、前記塗工剤を経由して作製された光触媒性を示す膜をその表面に有する物品は親水性を示すことができる。親水性を効果的に発現する光触媒粒子としては、液相法によって合成された二酸化チタンを原料として使うことが推奨される。具体的には、TiCl4水溶液や硫酸チタニル水溶液を原料として熱加水分解したり、中和加水分解したりして得られる粒子、もしくはそれらの粒子を多塩基酸塩とアルカリ土類金属で表面処理した粒子などが推奨される。親水性の指標としては、水の接触角で示すことができる。以下、接触角の測定方法を説明する。
膜上に純水の水滴を移し、このときの膜表面と液滴との接触角を測定する。ここでは協和界面科学株式会社製の接触角計CA−Dでの測定について示す。測定装置のシリンジより20目盛りの純水の水滴(φ1.5)を静かに膜表面の移し、光学鏡内の角度盤と可動十字を使い、液滴頂点を作図的に求め、その頂点と液滴端点のなす角度を直読し、その角度を2倍して接触角を求める。
本発明による光触媒性を示す膜の親水性は、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように、昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水の接触角(以下、CLと略称する)が20°以下であることを特徴とする。好ましくは、CLが10°以下であり、さらに好ましくは、CLが5°以下である。
また、光を照射した後に暗所保存した際の親水性の維持についても優れた効果を示すことができる。具体的には、光触媒性を示す膜に波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射し、ついで暗所に24時間保持した後、水とのの接触角(以下、CDと略称することがある)が20°以下であることを特徴とする。好ましくは、CDが10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。
このように、親水性を付与することによって、例えば、その表面の付着汚れが除去されやすくなり、長期にわたってその清浄面を維持もしくは、容易に清浄面を復活させることができる。
また、本発明による光触媒性を示す膜は良好な耐候性を示すことができる。具体的には、光触媒性を示す膜をキセノンアークランプ式促進暴露試験(スガ試験機株式会社 サンシャインキセノンロングライフ・ウェザーメーターによる。BP温度:63±3℃、降雨:12/60分。)にかけ、4000時間後においても、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角が20°以下であり、黄変度が10以下であることを特徴とする膜を得ることができる。
以上説明してきた、光触媒性や親水性を付与する対象となる物品としては、とくに制限されないが、各種建材、機械、車両、ガラス製品、家電製品、農業資材、電子機器、工具、食器、風呂用品、トイレ用品、家具、衣類、布製品、繊維、革製品、紙製品、スポーツ用品、蒲団、容器、眼鏡、看板、配管、配線、金具、衛生資材、自動車用品などを例示することができる。
また、前記物品が効果的にその光触媒性や親水性を発現することができる光源として、太陽光、蛍光灯、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード、レーザー、有機物の燃焼炎などを例示することができる。また蛍光灯としては、白色蛍光灯、昼白色蛍光灯、昼光色蛍光灯、温白色蛍光灯、電球色蛍光灯、ブラックライト、などを例示することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
参考例1
(液相法による二酸化チタン合成および多塩基酸による表面処理)
あらかじめ計量した純水50Lを攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15質量%の四塩化チタン水溶液(株式会社住友シチックス尼崎製)3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を電気透析器にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを5にした。こうして得られた光触媒スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、2質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89%、アナターゼ含有率11%であった。
次にこのようにして得られた2質量%二酸化チタンスラリー50Lに1kgのメタリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を添加して、分散するまで十分攪拌した。また、あらかじめ計量した純水2000Lに塩化カルシウム(株式会社トクヤマ製、食添用)200gを添加して塩化カルシウム溶液をつくった。
得られたメタリン酸ソーダを含んだ二酸化チタンスラリーと塩化カルシウム溶液を混合し、さらに10%苛性ソーダ水溶液でpHを9に調製し、40℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。 次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗した後、40℃にて減圧濃縮して光触媒性スラリーを得た。
得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.8であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.1であった。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により粉末を得た。これよりスラリーの固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は46%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IR(株式会社パーキンエルマー製、FT−IR1650)で分析を行った結果、メタリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Caが0.5%、リンが1.2%存在することがわかった。BET比表面積測定(株式会社島津製作所製、Flow Sorb II 2300)の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。また、この粉末のDWAは83%であった。
(高密度ポリエチレンマスターバッチの作製)
上記と同様な手段で得られた光触媒性スラリーの一部を媒体流動乾燥機(株式会社大川原製作所製、スラリードライヤー)で乾燥して、二酸化チタン微粒子の表面にカルシウムを含む縮合リン酸塩を有する光触媒性粉体5kgを取得した。この光触媒性粉体20質量部、ステリン酸亜鉛(日本油脂株式会社製、ジンクステアレートS)2質量部、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、ジェイレクスF6200FD)78質量部とを二軸押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM30型)を用いて170℃(滞留時間約3分)で溶融混練し、ペレット化を行い、直径2〜3mmφ、長さ3〜5mmの重さ0.01〜0.02gの円柱状の光触媒性粉体が20%含有した高密度ポリエチレンのコンパウンドを20kgを造った。
(紡糸)
上記で得られた光触媒性粉体を含有した高密度ポリエチレンコンパウンド10kgと高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン株式会社製、ジェイレクスF6200FD)10kgをV型ブレンダー(池本理化工業株式会社、RKI−40)で10分間混合し、混合ペレットを作製した。次に、得られた混合ペレットとポリエステル樹脂ペレット(帝人株式会社製、FM−OK)をそれぞれ溶融押出紡糸機(中央化学機械製作所株式会社製、ポリマーメイド5)に投入し、紡糸パック温度300℃で光機能性粉体含有高密度ポリエチレンとポリエステル樹脂の質量比が1:1となるような光触媒含有高密度ポリエチレン(鞘)/ポリエステル樹脂(芯)の芯鞘構造からなる太さ12デニールの繊維を35kg作製した。
(光触媒活性評価)
次に、この得られた繊維10gを5Lテドラーバッグ(株式会社ガステック製)内に置き、硫化水素60ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯(株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B)を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cm2にて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管(株式会社ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素はほとんど検知されなかった。
(耐候性試験)
上記の繊維にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cm2の光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、着色は見られなかった。
(塗工剤の作製1)
次に、前述の光触媒性スラリーに純水を加え粉末換算でが0.5%となる様にスラリーを希釈した。このスラリーに粉末に対して対してウレタン樹脂が70%となるように水分散系ウレタン樹脂(VONDIC1040NS、大日本インキ化学工業株式会社製) を添加して光触媒性粉体とウレタン樹脂を含有した塗工剤を得た。
次に、上記の塗工剤にポリエステル不織布(6デニール、高安株式会社製)を含浸させ、取り出した後、ローラーで絞り、80℃で2時間乾燥し、光触媒性粉体を坦持したポリエステル不織布を得た。
(光触媒活性評価)
次に、このポリエステル不織布10gを5Lテドラーバッグ内に置き、硫化水素60ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cm2にて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管(株式会社ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素濃度はほとんど検知されなかった。
(耐候性試験)
上記のポリエステル不織布にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cm2の光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、着色は見られなかった。
(塗工剤の作製2)
前述の光触媒性スラリーに炭酸ジルコニウムアンモニウム溶液(日本軽金属株式会社製、ZrO2として20質量%含有)と純水を加え、コーティング剤を調整した。このとき、光触媒性粉体が1.5質量%、ZrO2/光触媒性粉体(質量比)は20%であった。
次に、厚さ15mmのアクリル樹脂板からなる透明遮音壁にGE東芝シリコーン株式会社製のトスガード510でハードコート処理して透明なハードコート処理樹脂板を作製した。このとき全光線透過率を東京電色株式会社製ヘーズメーターTC−III型で測定したところ86%であった。この透明樹脂板に上述のコーティング液をバーコート法で塗布し、表面に光触媒性皮膜を備えた透明遮音壁を得た。この時、この板のDWHは37%、光触媒性皮膜の厚さは0.3μm、光触媒性皮膜付き透明樹脂板の全光線透過率は86%、T2/T1は0.97、鉛筆硬度は4Hであった。また、水接触角を測定したところCLが2°、CDが5°であった。また、スガ試験機株式会社 サンシャインキセノンロングライフ・ウェザーメーターでBP温度:63±3℃、降雨:12/60分により促進暴露試験を実施した。4000時間後においても、波長365nmにおける紫外線強度が6μW/cm2となるように昼白色蛍光灯で光を24時間照射した後の水との接触角は8°、黄変度は6であった。
参考例2
参考例1に記載した塩化カルシウム200gを塩化マグネシム(ナイカイ塩業株式会社製、食添用)300gに変えた以外は、参考例1と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。
得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.7であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.0であった。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、11質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は48%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、メタリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Mgが0.4%、リンが1.1%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。また、この粉末のDWAは61%であった。
実施例1
参考例1に記載した塩化カルシウム200gを塩化第二鉄六水和物(関東化学株式会社製、試薬特級)600gに変えた以外は、参考例1と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.7であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は1.9であった。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、11質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は36%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、メタリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Feが0.4%、リンが0.9%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。また、この粉末のDWAは55%であった。
参考例3
参考例1に記載したメタリン酸ソーダを1kgをトリポリリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)2kgに変えた以外は、参考例1と同様の処理をし、光触媒性スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ7.8であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は1.8であった。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は42%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、トリポリリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Caが0.5%、リンが1.3%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。また、この粉末のDWAは55%であった。
参考例4
参考例1に記載した塩化カルシウム200gを塩化アルミニウム六水和物(関東化学株式会社製、試薬特級)500gに、メタリン酸ソーダをピロ硫酸ナトリウム(関東化学株式会社製、試薬特級)に変えた以外は、参考例1と同様の処理をし、光触媒スラリーを得た。得られた光触媒性スラリーのpHを測定したところ6.9であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.0であった。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、120℃にて乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。また、その2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は36%であり、分散性にすぐれたスラリーであった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、ピロ硫酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Alが0.3%、Sが0.6%存在することがわかった。BET比表面積測定の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。また、この粉末のDWAは49%であった。
参考例5
8.3Nm3/hrのガス状四塩化チタンを6Nm3/hrの窒素ガスで希釈した四塩化チタン希釈ガスを1,100℃に予熱し、4Nm3/hrの酸素と15Nm3/hrの水蒸気を混合した酸化性ガスを1,000℃に予熱し、これらの原料ガスを、図2に示すような反応装置を用い、同軸平行流ノズルを通して石英ガラス製反応器にそれぞれ流速35m/秒、50m/秒にて導入した。700℃を越える高温滞留時間を0.2秒となるように冷却空気を反応管に導入後、テフロン(登録商標)製バグフィルターにて二酸化チタン粉末を捕集した。この粉末を、350℃で1時間加熱処理したところ、BET比表面積54m2/g、ルチル含有率33%、アナターゼ含有率67%であった。
次にこの粉末を900g含有する2重量%水スラリー50Lに0.5kgのメタリン酸ソーダ(太平化学産業株式会社製、食添用)を添加して、分散するまで十分攪拌した。
また、あらかじめ計量した純水2000Lに塩化カルシウム(株式会社トクヤマ製、食添用)200gを添加して塩化カルシウム溶液をつくった。
得られたメタリン酸ソーダを含んだ二酸化チタンスラリーと塩化カルシウム溶液を混合し、さらに10%苛性ソーダ水溶液でpHを9に調製し、40℃で1時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレス(コトブキ技研株式会社製)で濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで、十分水洗した後、40℃にて減圧濃縮して光触媒性スラリーを得た。
得られた光触媒性スラリーのpH(株式会社堀場製作所製 D−22)を測定したところ7.8であった。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は2.3であった。
また乾燥粉をICP(株式会社島津製作所製、ICPS−100V)で分析を行ったところ、Caが0.15%、リンが0.3%存在することがわかった。また、この粉末のDWAは62%であった。
比較例1:
参考例1と同様に、あらかじめ計量した純水50Lを攪拌を行いながら加熱して温度を98℃に保持した。そこへTi濃度15%の四塩化チタン水溶液3.6kgを120分かけて滴下した。滴下後に得られた白色懸濁液を、40℃にて減圧濃縮した後、電気透析機にかけて脱塩素を行い、スラリーのpHを4にした。また、大塚電子株式会社製ELS−8000を用いて、電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位を測定したところ、等電点は4.5であった。こうして得られた光触媒性スラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。乾燥粉をX線回折装置にかけて構造解析を行った結果、得られた粉末はブルッカイト型二酸化チタンであった。これは、ブルッカイト含有率89%、アナターゼ含有率11%であった。BET比表面積測定の結果から一次粒子径を求めたところ、0.015μmであった。得られたスラリーの2mm厚みのスラリーの550nmにおける透過率は44%であった。また、この粉末のDWAは11%であった。
(高密度ポリエチレンマスターバッチの作製)
上記と同様な手段で得られた光触媒性スラリーの一部を媒体流動乾燥機((株)大川原製作所製、スラリードライヤー)で乾燥して、光触媒性粉体5kgを取得した。この光触媒性粉体20質量部、ステリン酸亜鉛(日本油脂(株)製、ジンクステアレートS)2質量部、高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスF6200FD)78質量部とを二軸押出機(池貝鉄工(株)製、PCM30型)を用いて170℃(滞留時間約3分)で溶融混練し、ペレット化を行い、直径2〜3mmφ、長さ3〜5mmの重さ0.01〜0.02gの円柱状の光触媒性粉体が20%含有した高密度ポリエチレンのコンパウンドを20kgを造った。
(紡糸)
上記で得られた光触媒性粉体を含有した高密度ポリエチレンコンパウンド10kgと高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン(株)製、ジェイレクスF6200FD)10kgをV型ブレンダー(池本理化工業(株)、RKI−40)で10分間混合し、混合ペレットを作製した。
次に、得られた混合ペレットとポリエステル樹脂ペレット(帝人(株)製、FM−OK)をそれぞれ溶融押出紡糸機(中央化学機械製作所(株)製、ポリマーメイド5)に投入し、紡糸パック温度300℃で光機能性粉体含有高密度ポリエチレンとポリエステル樹脂の質量比が1:1となるような光触媒含有高密度ポリエチレン(鞘)/ポリエステル樹脂(芯)の芯鞘構造からなる太さ12デニールの繊維を35kg作製した。
(光触媒活性評価)
次に、この得られた繊維10gをテドラーバッグ5L((株)ガステック製)内に置き、硫化水素60ppmを封入した。次いで、昼白色蛍光灯(株式会社日立GEライティング製、ハイホワイトFL20SS−N/18−B)を用い、波長365nmにおける紫外線強度6μW/cm2にて測定し、6時間後の硫化水素の濃度を検知管((株)ガステック製、No.4LL)で測定した。6時間後の硫化水素濃度は12ppmであった。これは、参考例1と比較して多く残存しており、昼白色蛍光灯を光源とする光触媒能は参考例1と比較して劣っていると判断される。
(耐候性試験)
上記の繊維にフェードメータ(ATLAS製、SUNSET CPS+)で50mW/cm2の光をあて24時間後に繊維の着色を調べたが、激しい黄色い着色が認められた。
比較例2:
純水200Lに一次粒子径0.18μmの市販の顔料用アナターゼ(石原産業株式会社製、A100)10kgを加え、さらに1kgのメタリン酸ソーダを添加して、分散するまで十分攪拌した。次に、あらかじめ計量した純水2000Lに塩化カルシウム200gを添加してラボスターラーで攪拌して塩化カルシウム溶液をつくった。得られたメタリン酸ソーダを含んだ二酸化スラリーと塩化カルシウム溶液を混合し、40℃で4時間保持した。その際の電気伝導度は10000μS/cmであった。次に、得られたスラリーをロータリーフィルタープレスで濾過洗浄し、濾過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで十分水洗した後、濃縮して光触媒性スラリーを得た。
次に、得られたスラリーの一部を採取し、乾燥恒量法により固形分濃度を測定したところ、10質量%であった。次に得られた粉末をFT−IRで分析を行った結果、メタリン酸の吸収が観察された。次に、乾燥粉をICPで分析を行ったところ、Caが0.2%、リンが0.4%存在することがわかった。また、この粉末のDWAは12%であった。これは、参考例1と比較して活性が低い。
比較例3:
特開2001−72419号公報の実施例と同様に二酸化チタンを得た。すなわち、20%三塩化チタン溶液(和光純薬製:特級)100gを300mLフラスコ中で窒素雰囲気下で攪拌し、氷水で冷却しながら25%アンモニア水(和光純薬製:特級)141gを約30分で滴下し加水分解を行った。得られた試料を濾過洗浄し乾燥した。次いで、空気中400℃で1時間焼成して、黄色に着色した粒子状二酸化チタンを得た。得られた二酸化チタンは結晶構造がアナターゼ型であった。このDWAは18%であった。これは、参考例1と比較して活性が低い。
本発明の高い光触媒活性を示す光触媒粒子を用いることにより、蛍光灯のような実用的な微弱な光量の光源で十分に光触媒能を発揮しうる有機重合体組成物、スラリー、コーティング剤、光触媒性を示す表面ならびに親水性を示す表面を有する物品が得られる。これらは、光触媒の適用範囲を大幅に広げるものである。
昼白色蛍光灯の光強度スペクトルの例を示す。 参考例5の反応装置図を示す。

Claims (9)

  1. 光触媒粒子が気相法酸化チタンと光触媒として不活性なセラミックスとの複合粒子であり、光触媒として不活性なセラミックスがFeを含むリン酸塩又は縮合リン酸塩であることを特徴とする光触媒粒子であって、アセトアルデヒドを20ppm含有する5Lの乾燥空気中で、直径9cmの平面上に均一に敷かれた3.5gの光触媒粒子に、昼白色蛍光灯で波長365nmの紫外線強度が6μW/cm2となるように光を照射したとき、照射1時間後のアセトアルデヒドの分解率が20%以上となることを特徴とする光触媒粒子。
  2. 分解率が、40%以上となる請求項1記載の光触媒粒子。
  3. 二酸化チタンが、アナターゼ型結晶系を含むものである請求項1又は2に記載の光触媒粒子。
  4. 二酸化チタンが、ルチル型結晶系を含むものである請求項1又は2に記載の光触媒粒子。
  5. 光触媒として不活性なセラミックスが、二酸化チタン粒子の表面に部分的に存在する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
  6. 縮合リン酸塩が、ピロリン酸、トリポリリン酸塩、テトラポリリン酸塩、メタリン酸塩、ウルトラリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の塩である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
  7. 電気泳動光散乱法によって測定されたゼータ電位から求められる等電点が4以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光触媒粒子。
  8. 有機重合体と請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光触媒粒子を組成物全質量中0.01〜80質量%含むことを特徴とする有機重合体組成物。
  9. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の光触媒粒子を含有することを特徴とするスラリー。
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