JP2001521740A - 遺伝子治療用の高温誘導性発現ベクター及びその使用方法 - Google Patents

遺伝子治療用の高温誘導性発現ベクター及びその使用方法

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JP2001521740A JP2000519075A JP2000519075A JP2001521740A JP 2001521740 A JP2001521740 A JP 2001521740A JP 2000519075 A JP2000519075 A JP 2000519075A JP 2000519075 A JP2000519075 A JP 2000519075A JP 2001521740 A JP2001521740 A JP 2001521740A
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ユージーン・ダブリュー・ガーナー
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Abstract

(57)【要約】 標的細胞で導入遺伝子を発現させる方法と組成物を提供する。治療用遺伝子または他の興味ある遺伝子を哺乳類宿主細胞内で発現させるために誘導性増殖システムを使用した発現コンストラクトと、そのための方法を提供する。生理学的条件下に導入遺伝子の高レベルな誘導発現が、その宿主細胞の基礎温度と比して高温な条件による誘導からもたらされる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) 1.発明の分野 本発明は概して遺伝子治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、導入
遺伝子の発現量を増加させるための方法と組成物に関する。
【0002】 2.関連技術の説明 現在、遺伝子治療は、様々な癌と数多くの他の疾患の治療に広く適用できると
考えられている。ウイルスベクターは遺伝子送達系として使用される一方法であ
る。実に多様なウイルス発現系が開発され、体細胞に遺伝子を導入するというそ
れらの能力について評価が行なわれている。とりわけレトロウイルスとアデノウ
イルスに基づくベクター系はこの十年間広範に研究されてきた。最近、より一般
的に使用されているレトロウイルスベクターとアデノウイルスベクターの代替候
補として、アデノ関連ウイルス(AAV)が登場した。陽イオン脂質とリポソー
ムを含む脂質ベクターも治療用遺伝子を含有するプラスミドDNAの送達に使用
される。
【0003】 遺伝子治療による疾患と障害の治療的処置には、細胞への新しい遺伝情報の移
入と安定な、または一過性の挿入が伴う。望ましい機能をコードする遺伝子の正
常な対立遺伝子を再導入することによる遺伝子欠損の矯正により、この概念が臨
床的に実施可能であることが証明されている(Rosenbergら,New
Eng.J.Med.,323:570(1990))。実際、遺伝子導入効率
、遺伝子発現の調節、ウイルスベクターを使用することの潜在的危険に関わる基
本的諸問題を解決するために、広範な遺伝障害を対象とする前臨床試験と臨床試
験が現在進行中である。ウイルスベクターを使用する臨床遺伝子導入試験の大半
では、標的細胞への遺伝子導入をエクスビボで行なった後、それらの標的細胞が
インビボに投与される。ウイルスベクターはインビボで与えることもできるが、
反復投与により中和抗体が誘導されうる。
【0004】 遺伝子治療の将来的な臨床適用が直面する主な問題は、患者の選択された組織
で異種遺伝子をどのようにして臨床的に有意義な量で発現させるかという問題で
ある。遺伝子調節配列はこの問題に有望な解答を与える。プロモーターやエンハ
ンサーなどの遺伝子調節配列は細胞タイプ特異的活性を有し、一定の誘導因子に
より応答配列を介して活性化されうる。プロモーターのような調節配列を使用し
て遺伝子を発現させることにより、ベクターコンストラクト中の異種遺伝子の制
御され制限された発現が容易になる。例えば熱ショックプロモーターは熱ショッ
ク後に異種遺伝子を発現させるために使用できる。
【0005】 米国特許第5,614,381号、第5,646,010号およびWO89/
00603は、42℃を超える温度での熱ショックを使って導入遺伝子を発現さ
せることに言及している。これらの温度は、その個体を傷つけることなく一定期
間維持することができないので、ヒトの治療では実施不可能である。
【0006】 遺伝子治療は細胞毒療法や放射線療法などの様々な従来の癌治療法と組み合わ
せて使用できるだろう。高温(ハイパーサーミア)はインビトロで放射線の細胞
致死作用を増進し(Harisiadisら,Cancer,41:2131−
2142(1978))、インビボで動物の腫瘍における腫瘍反応を有意に増進
し、無作為化臨床試験での成果を向上させることが明らかにされている。しかし
、高温処置の使用に伴う主な問題は、加温システムが大きく深い腫瘍を十分に加
熱できないことである。
【0007】 したがって、そのような発現を誘導する条件にさらされた身体の領域で治療用
遺伝子の発現が優先的に活性化されるように患者を処置するために、42℃以下
の温度で全身または局所に使用できるベクターを開発することが有益だろう。
【0008】 (発明の要約) 本発明は細胞内でポリヌクレオチドの誘導発現を達成する方法を提供する。特
に、哺乳類細胞内でポリヌクレオチドの誘導発現を達成する方法における熱ショ
ックプロモーターの使用を教示する。本発明は、42℃以下の温度で使用できる
熱ショック制御ベクターを提供することにより、先行技術の欠点を克服するもの
である。これらの方法は治療用遺伝子の誘導発現による患者の処置に使用できる
【0009】 一態様として、本発明は哺乳類細胞内で導入遺伝子の発現を達成する方法であ
って、まず、(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結さ
れた誘導性プロモーターと(ii)選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連
結された第二のプロモーターとの両方を含んでなる発現コンストラクトを用意す
ることからなる方法を提供する。この第二プロモーターは同じコンストラクトに
よって発現されるトランス活性化因子によって活性化される。次に、この方法に
は、その発現コンストラクトを当該細胞に導入する段階が含まれる。最後に、そ
の細胞は上記誘導性プロモーターを活性化する条件にさらされ、選択されたポリ
ヌクレオチドの発現が起こる。
【0010】 本発明の好ましい態様では、誘導性プロモーターが熱ショックプロモーターで
あり、その熱ショックプロモーターを活性化する条件が高温条件である。この高
温条件は、基礎温度付近から約42℃の間の温度からなりうる。ここに細胞の基
礎温度とは、その細胞がその自然の状態で通常見出される際の温度と定義され、
例えば哺乳動物の皮膚の細胞は33℃ほどの低温であるのに対し、ある生物の肝
臓の細胞は39℃もの高温になりうる。特定の態様では、高温の適用として、細
胞の温度を、基礎温度(最も典型的には37℃)から約42℃またはそれ以下ま
で上昇させる。また高温条件は、約38℃から約41℃まで、または約39℃か
ら約40℃までの範囲であってもよい。熱ショックプロモーターは、随意に、熱
ショックタンパク質(HSP)プロモーターHSP70、HSP90、HSP6
0、HSP27、HSP72、HSP73、HSP25およびHSP28の群か
ら選択されるプロモーターに由来するものであってもよい。ユビキチンプロモー
ターも本発現コンストラクト中の熱ショック誘導性プロモーターとして使用でき
る。随意に、HSP70に由来しHSP70Bプロモーターの最初のおよそ40
0bpを含んでなる最小熱ショックプロモーターを本発明に使用してもよい。
【0011】 これに代わる一態様では、誘導性プロモーターが低酸素応答配列(HRE)を
含んでなる。この低酸素応答配列は随意に少なくとも一つの低酸素誘導性因子1
(HIF−1)結合部位を含有してもよい。
【0012】 本発明の一態様として、第二プロモーターを、ヒト免疫不全ウイルス1(HI
V−1)プロモーターとヒト免疫不全ウイルス2(HIV−2)プロモーターか
らなる群より選択してもよい。好ましい態様としてトランス活性化因子は転写の
トランスアクチベーター(TAT)であってもよい。
【0013】 選択されたポリヌクレオチドはタンパク質またはポリペプチドをコードしうる
。例えば、選択されたポリヌクレオチドは次に挙げるタンパク質のいずれをコー
ドしてもよい:オルニチンデカルボキシラーゼアンチザイムタンパク質、p53
、p16、neu、インターロイキン1(IL1)、インターロイキン2(IL
2)、インターロイキン4(IL4)、インターロイキン7(IL7)、インタ
ーロイキン12(IL12)、インターロイキン15(IL15)、FLT−3
リガンド、顆粒球マクロファージ刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺
激因子(G−CSF)、γ−インターフェロン(IFNγ)、α−インターフェ
ロン(IFNα)、腫瘍壊死因子(TNF)、単純ヘルペスウイルスチミジンキ
ナーゼ(HSV−TK)、I−CAM1、ヒト白血球抗原B7(HLA−B7)
、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター(TIMP−3)。このような態様
では、選択されたポリヌクレオチドが、第二プロモーターに関してセンス方向に
配置される。
【0014】 また、選択されたポリヌクレオチドの発現が転写を伴うが翻訳を伴わず、リボ
ザイムを生成するものであってもよい。この態様でも、選択されたリボヌクレオ
チドは、第二プロモーターに関してセンス方向に配置される。
【0015】 これに代わるさらにもう一つの態様では、選択されたポリヌクレオチドの発現
が転写を伴うが翻訳を伴わず、アンチセンス核酸として働くmRNA分子をもた
らす。このような態様では、選択されたポリヌクレオチドが、発現コンストラク
ト中で該第二プロモーターに関してアンチセンス方向に配置された標的遺伝子ま
たはその断片でありうる。
【0016】 本発現コンストラクトはさらに、ハイグロマイシン耐性、ネオマイシン耐性、
ピューロマイシン耐性、ゼオシン(zeocin)、gpt、DHRF、緑色蛍
光タンパク質またはヒスタジノールなどの選択可能マーカーをコードする遺伝子
を含みうる。また、本発現コンストラクトはさらに、(i)上記第二プロモータ
ーに作動可能に連結された第二の選択されたポリヌクレオチドと(ii)上記第
一および第二の選択されたポリヌクレオチドの間に配置された内部リボソームエ
ントリー部位(IRES)を含んでもよい。
【0017】 細胞は腫瘍細胞でも、腫瘍内に位置する細胞でも、哺乳動物内に位置する細胞
でもよい。発現コンストラクトの細胞への導入はインビトロまたはインビボで行
なわれる。ある態様では、発現コンストラクトの細胞への導入が、リポソーム、
レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、単純
ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスからなる群より選択される送達媒体によ
って媒介される。
【0018】 本発明のもう一つの態様として、治療有効量の、選択された遺伝子の産物を、
対象に与える方法が提供される。この方法では、トランス活性化因子をコードす
る遺伝子に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含んでなる第一発現コン
ストラクトを用意すると共に、選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結さ
れた第二プロモーターを含んでなる第二発現コンストラクトを用意し、その第二
プロモーターは第一発現コンストラクトによってコードされるトランス活性化因
子によって活性化される。これら第一および第二の発現コンストラクトは上記対
象の望ましい細胞に導入され、選択されたポリヌクレオチドの発現が誘導される
ように、その細胞が、誘導性プロモーターを活性化する条件にさらされる。好ま
しい態様では、第一発現コンストラクトと第二発現コンストラクトが同じベクタ
ー上に存在する。また、誘導性プロモーターは好ましくは熱ショックプロモータ
ーであり、活性化条件は、基礎温度より高くしかも42℃未満である温度からな
る。
【0019】 これら発現コンストラクトの一方または両方の導入はインビボでもエクスビボ
でも行いうる。選択されたポリヌクレオチドの発現産物は随意に、その対象の病
原体、例えばウイルス、細菌、菌類、寄生虫などに対して有害であってもよい。
また、選択されたポリヌクレオチドの発現産物は、その対象の細胞の成長を抑制
するものであってもよい。これに代わる本発明のさらにもう一つの態様では、選
択されたポリヌクレオチドの発現産物が、その対象中の欠損タンパク質を補充す
る。また、選択されたポリヌクレオチドの発現産物が、神経の再生を促進するも
のであってもよい。
【0020】 さらなる態様として、ヒトなどの哺乳動物の癌を処置する方法であって、(a
)(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結された誘導性
プロモーター(好ましくは熱ショックプロモーター)と(ii)選択されたポリ
ヌクレオチドに作動可能に連結された第二プロモーターとを含んでなり、その第
二プロモーターがそのトランス活性化因子によって活性化される発現コンストラ
クトを用意し、(b)該発現コンストラクトを腫瘍細胞に導入し、(c)選択さ
れたポリヌクレオチドがその腫瘍細胞の成長を抑制するのに十分な量で発現され
るように、その腫瘍細胞を、その誘導性プロモーターを活性化する条件にさらす
という各段階を含んでなる方法が提供される。その誘導性プロモーターが熱ショ
ックプロモーターである場合、その活性化条件は、およそ基礎温度より高く約4
2℃より低い温度からなる。
【0021】 さらにこの方法は、外部ビーム放射線療法、小線源照射療法、化学療法、外科
手術からなる群より選択される確立された形の癌治療法による該腫瘍細胞の処置
を含んでもよい。癌は随意に、脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、リンパ節、小腸、膵
臓、血球、結腸、胃、胸部、子宮内膜、前立腺、精巣、卵巣、外陰、子宮頸、皮
膚、頭頚部、食道、骨髄および血液の癌からなる群より選択できる。
【0022】 本発明の具体的一態様では、選択されたポリヌクレオチドがオルニチンデカル
ボキシラーゼアンチザイムタンパク質である。腫瘍細胞中の発現コンストラクト
の誘導性プロモーターを活性化する条件に細胞をさらした後、その腫瘍細胞を放
射防護剤WR−33278またはWR−1065で処置する。最後にその腫瘍細
胞を放射線療法で処置する。
【0023】 ヒトなどの哺乳動物で免疫反応を惹起する方法も、本発明によって提供される
。惹起される免疫反応は体液性免疫反応と細胞性免疫反応のどちらを構成しても
よい。一態様としてこの方法は、(a)(i)トランス活性化因子をコードする
遺伝子作動可能に連結された誘導性プロモーター(好ましくは熱ショックプロモ
ーター)と(ii)選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結された第二プ
ロモーターとを含んでなり、その第二プロモーターがそのトランス活性化因子に
よって活性化される発現コンストラクトを用意し、(b)該発現コンストラクト
をその哺乳動物中の細胞に導入し、(c)選択されたポリヌクレオチドがその哺
乳動物で免疫反応を惹起するのに十分な量で発現されるように、その誘導性プロ
モーターを活性化する条件にその細胞をさらすことからなる。その誘導性プロモ
ーターが熱ショックプロモーターである場合、その活性化条件は、およそ基礎温
度より高く約42℃より低い温度からなる。
【0024】 ある態様では、惹起される免疫反応が、その発現コンストラクトを含有する哺
乳動物中の細胞に向けられる。この方法は、随意に、化学療法、外部ビーム放射
線療法、小線源照射療法および外科手術からなる群より選択される確立された形
の癌治療法によるその細胞の処置を伴ってもよい。
【0025】 もう一つの態様として、(a)トランス活性化因子をコードする遺伝子、(b
)その遺伝子に作動可能に連結された誘導性プロモーター、(c)選択されたポ
リヌクレオチドおよび(d)その選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結
された第二プロモーターを含んでなる発現コンストラクトが提供される。本コン
ストラクトの第二プロモーターは上記トランス活性化因子によって活性化される
。好ましい態様では、その誘導性プロモーターが熱ショックプロモーターであり
、選択されたポリヌクレオチドの発現を、約37℃より高く約42℃未満の温度
からなる高温条件によって誘導できる。これに代わる態様として、本発現コンス
トラクトの誘導性プロモーターは低酸素応答配列を含んでもよい。また本発現コ
ンストラクトは、やはり第二プロモーターに作動可能に連結されていて、IRE
Sにより、第一の選択されたポリヌクレオチドで隔てられた、第二の選択された
ポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0026】 本発現コンストラクトを含む細胞も提供される。提供される発現コンストラク
トは、随意に、哺乳動物の遺伝物質を改変する方法でも使用できる。
【0027】 本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだ
ろう。しかし、この詳細な説明と具体例は、本発明の好ましい態様を示している
と同時に、例示を目的とする記載に過ぎないと理解すべきである。本発明の精神
とその範囲に含まれる種々の変更と変形は、当業者には、この詳細な説明から明
らかになるからである。
【0028】 (図面の簡単な説明) 下記の図面は本明細書の一部を構成し、本発明の特定の側面をいっそう具体的
に説明するべく添付するものである。本発明は、これらの図面の一つまたはそれ
以上を、ここに示す特定態様の詳細な説明と組み合わせて参照することによって
、より良く理解できる。 図1は、熱ショックプロモーター活性を定量するために使用した基本ベクター
を示す図。このプラスミドは、HSP70Bプロモーター(StressGen
社)に由来する最小プロモーターを含有する。Enhanced Green
Fluorescence Protein(EGFP)、β−gal、IL−
2などのリポーター遺伝子はマルチクローニングサイトに容易に挿入されて、そ
の最小HSP70Bプロモーターの制御下に発現されるようになる。このプラス
ミドは、細菌系で増殖するための標準的配列と共に、哺乳類細胞で選択できるよ
うにネオマイシン耐性遺伝子とアンピシリン耐性遺伝子も含有する。S8プラス
ミドはここに示すプラスミドとそのマルチクローニング部位に挿入されたEGF
Pとからなる。 図2は、S8プラスミドを安定にトランスフェクトしたDU−145に関する
細胞蛍光活性化細胞選別(FACS)ヒストグラム。蛍光は左から右に向かって
増加する。上側のヒストグラムは熱ショックにさらされていないトランスフェク
トDU−145細胞から得られるものである。下側のヒストグラムは42℃の熱
ショックに1時間さらしたトランスフェクトDU−145細胞から得られるもの
である。 図3は、三種類のS8トランスフェクトMCF7細胞集団に関するFACSヒ
ストグラム。S8コンストラクトをトランスフェクトしたMCF7細胞をFAC
Sで選別した。元の集団はポリクローナル選択細胞株に由来した。その細胞株の
活性化型(すなわちEGFPを発現する細胞)集団を非活性化型集団から分離し
た。その選別後に、陽性集団を生育し、次に、より純粋に陽性な細胞株を得るた
めに再び選別を行なった。この場合は、ポリクローナルMCF7−S8−P細胞
を2回選別して、高度に陽性な集団MCF7−S8−PS2を得た。 図4は、様々な細胞株でのEGFPの発現をFACSでアッセイした結果を示
すグラフ。細胞株にプラスミドS8をトランスフェクトした。次に、それらの細
胞をクローン化するか、ポリゴナル(polygonal)株を生育した。場合
によっては、それらの細胞株をEGFP発現に関してFACSで選別した。総平
均蛍光を定量してグラフ化した。 図5は、2回選別した安定トランスフェクトDU−145細胞(DU−S8−
PS2)における熱ショック後のEGFPの発現を示すグラフ。DU−S8−P
S2細胞を40℃または42℃で加熱し、様々な時間、回復させた。次にその細
胞をFACSで分析した。 図6は、熱ストレスへのばく露の16時間後の安定トランスフェクトDU−1
45細胞におけるEGFPの発現レベルを示すグラフ。一つの細胞集団(DU−
S8−PS2)にS8プラスミドを安定にトランスフェクトした。もう一つの集
団(DU−V9−PS2)にはV9プラスミド(V9プラスミドのEGFPがH
SP70BではなくCMVプロモーターに作動可能に連結されている点以外はS
8と同じプラスミド)を安定にトランスフェクトした(図7参照)。それらの細
胞を様々な温度で加熱し、16時間、回復させた。非トランスフェクトDU−1
45細胞を対照として含めた。 図7は、Enhanced Green Fluorescence Pro
tein(EGFP)をコードする遺伝子に作動可能に連結されたCMVプロモ
ーターを含有するプラスミドV9の概略図。 図8は、熱ショック反応の増幅を可能にする第二プロモーターを含有するベク
ターのための基本ベクターデザインを示す図。このプラスミドはHSP70Bプ
ロモーターに作動可能に連結されたマルチクローニング部位(MCS)を含有す
るが、第二プロモーターに作動可能に連結された治療用遺伝子も含有する。また
このプラスミドはネオマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、細菌での
増殖に必要な標準的配列も含有する。プラスミドpC8では、第二プロモーター
がHIV−1末端反復配列(LTR)であり、治療用遺伝子がIL2である。p
f12では、tatがMCSに挿入され、第2プロモーターはHIV−1 LT
Rであり、治療用遺伝子はIL2である。もう一つのプラスミドp007は、H
IV−2 LTRが第二プロモーターとして使用されること以外はpf12と同
じである。 図9は、HIV−1プロモーターまたはHIV−2プロモーターによって駆動
される治療用遺伝子IL−2を含有する増幅因子コンストラクトを示す図。増幅
因子部分はCMVプロモーターまたはHSP70プロモーターによるTAT発現
によって制御される。これらのプラスミドはネオマイシン耐性遺伝子と、細菌で
の増殖用の配列も含有する。これらのコンストラクトは実施例2と実施例3の増
幅因子試験で使用した。図9Aは、CMV−TAT−HIV−1−IL2発現カ
セットを含有するX14と呼ばれるプラスミドを示し、図9BはCMV−TAT
−HIV−2−IL2発現カセットを含有するY15と呼ばれるプラスミドを示
し、図9CはHSP−TAT−HIV−1−IL2発現カセットを含有するpf
l2と呼ばれるプラスミドを示し、図9DはHSP−TAT−HIV−2−IL
2発現カセットを含有するp007と呼ばれるプラスミドを示す。 図10は、StressGen Biotechnology社のp1730
RのBamH1−HindIII断片のDNA配列。この断片は、上記の具体例
、実施例1と3のコンストラクトで使用した約0.4kbの最小HSP70Bプ
ロモーター断片を含有する。
【0029】 (具体的態様の説明) 1.本発明 遺伝子治療は、インビボでの治療用遺伝子発現をどのように調節し、かつ増進
するかという2つの主な技術的課題に直面する。本発明は、高温処置を誘導性発
現コンストラクトと組み合わせることにより、これらの問題の両方に対処するも
のである。本発明者らは特異的誘導性遺伝子発現の効率の増加を実証した。
【0030】 治療用遺伝子を極めて高いレベルで発現させうることと、発現のレベルを制御
できることは、遺伝子治療の開発における重要な目標である。本発明者らはこれ
らの目標と取り組むために新しいベクターセットを作成した。本発明者らは対象
遺伝子を発現させるために増幅因子法を使用する。これらの増幅因子は、リポー
ター遺伝子を駆動する他のプロモーターの転写活性化因子であるタンパク質を発
現させるヒトHSP70Bプロモーターからなる。これら追加のプロモーターと
それらに作動可能に連結したリポーター遺伝子はHSP70Bプロモータ配列お
よびトランス活性化タンパク質をコードする遺伝子と同じベクターに含まれるこ
とが好ましい。
【0031】 リポーター遺伝子としてヒトIL−2を用いた哺乳類細胞のトランスフェクシ
ョン試験で、本発明者らは、その増幅因子コンストラクトを使用することにより
、構成性CMVプロモーターまたはHSP70Bのみによってもたらされるリポ
ーター遺伝子発現と比較して、使用した全ての温度条件で、遺伝子発現が劇的も
増加することを明らかにした(下記の具体例、実施例3を参照されたい)。ヒト
免疫不全ウイルス(HIV)tat遺伝子の上流にHSP70Bプロモーターと
、インターロイキン2(IL−2)遺伝子の上流にHIV1またはHIV2末端
反復配列とを含有するコンストラクトは37℃でプロモーター活性を示し、それ
は熱ショックによってさらに増幅された。同時トランスフェクション実験により
、哺乳類細胞で、HSP、HSP/HIV1およびHSP/HIV2プロモータ
ー発現コンストラクトの活性が、CMVプロモーター発現コンストラクトの活性
のそれぞれ0.4倍、6.9倍および83.3倍であることが示された。これら
のデータは、この最小熱ショックプロモーターが、単独ではCMVプロモーター
活性より活性が低いものの、第二のプロモーターと共に使用することにより、温
度依存性をいくらか維持したままで、遺伝子発現を著しく増幅させうることを示
している。
【0032】 他のタンパク質を条件付きで発現させるためのトランス活性化タンパク質の発
現を駆動するために熱ショックプロモーターを使用することは、先の研究によっ
て検討されている(Schweinfestら,Gene,71(1):207
−210,1988;EPO 01 18393;WO 89/00603、米
国特許第5,614,381号;米国特許第5,646,010号;EP 0
299 127)。ここに記載する発明は、これらの先行する方法論とは、例え
ば、1)異なる熱ショックプロモーターを使用する点(Schweinfest
らはDrosophilaプロモーターを使用している)、2)異なる送達方法
を使用する点(本発明者らは両プロモーターを一つのコンストラクトに組み込ん
だが、他の研究者らは同時トランスフェクションを使用している)、3)誘導に
異なる温度を使用する点(先の研究では42℃を越える温度が使用されたが、本
発明は42℃またはそれ未満の温度で有利に機能する)、4)工業生産よりも遺
伝子治療に関連して使用される点で異なる。さらに本発明者らはHIV−1プロ
モーターまたはHIV−2プロモーターを使用でき、本発明はこれら2つのプロ
モーターがもたらす発現レベルの明確な相違を明らかにする。
【0033】 本発明の好ましい側面として、熱ショック誘導性配列を用いて哺乳類細胞内で
導入遺伝子の発現を達成する方法が提供される。熱ショック配列はトランス活性
化遺伝子の発現を駆動するために使用される。したがって、発現コンストラクト
を高温にさらすと、そのトランス活性化配列の発現が誘導される。このトランス
活性化遺伝子は第二のプロモーターに作用し、そのプロモーターが活性型になっ
て対象の治療用遺伝子の発現を駆動する。ある特定の態様では、HSP70プロ
モーターに由来するプロモーターを使用する。このプロモーターのとりわけ有用
な側面は、周囲温度での発現の基礎レベルが低く、誘導性であることである。さ
らに本発明は治療有効量の遺伝子産物を対象に与える方法と、細胞の成長を抑制
する、または免疫反応を惹起する方法も提供する。 本発明の目標を満たすために使用する組成物と方法を以下にさらに詳しく説明
する。
【0034】 2.熱ショック応答 熱ショック応答または熱ストレス応答は植物から霊長類に及ぶ生物で起こる普
遍的な反応である。これは、熱ショックの結果としてばかりではなく、虚血、低
酸素、グルコース欠乏、イオノフォアグルコースおよびアミノ酸類似体、エタノ
ール、遷移系列金属、薬物、ホルモン、細菌感染、ウイルス感染などといった他
の様々なストレスの結果としても起こりうる応答である。さらに、熱ショックタ
ンパク質遺伝子の過剰発現が腫瘍細胞の増進された増殖とストレスに関係しうる
という証拠もある(Finchら,Cell Growth and Diff
erentiation 3(5):269−278,1992)。この応答は
、様々に誘導され局在する、分子サイズの異なるよく保存されたタンパク質のフ
ァミリーの合成を特徴とする。これらのタンパク質は最も系統的に保存されてい
るものに属し、それらの分子量に従って特徴づけられる。
【0035】 ストレスタンパク質コード遺伝子の転写活性化は、環境的および/または生理
学的外傷に反応して数分以内に起こる。この迅速な応答は、熱ショックタンパク
質の大多数にイントロンがないことに、その理由が帰されている。このイントロ
ンの欠如により、熱ショックタンパク質は、高温で起こるイントロンプロセッシ
ングの遮断を回避できる。熱ショックタンパク質は、このようにして極めて高い
効率で、しばしば他のタンパク質を犠牲にして、翻訳される。
【0036】 ストレス遺伝子の活性化は、既存の熱ショック転写因子(HSF)の不活性型
または活性型からの転換によって媒介される。このDNA結合タンパク質の分子
量には大きな相違がある(例えばヒトでは83kDa、酵母では150kDa)
。熱ショック配列はHSP70の保存された上流調節配列であり、そこにHSF
が結合する。熱ショックタンパク質の主な機能はタンパク質の折りたたみを容易
にし凝集を防止することにあるが、これらのタンパク質が環境的傷害に対する防
護機構を生物に与える上で何らかの役割を果たし、外傷に続いて起こる回復を助
けることは明らかである。
【0037】 大半の真核配列特異的転写因子と同様に、HSFも、熱ショック遺伝子の上流
に多数のコピーとして見出される高度に保存された応答配列を介して作用する。
その熱ショック応答配列は隣接した3つの5塩基対配列の逆方向反復からなり、
それらのコンセンサスはnGAAnと定められ、さらに最近になってAGAAn
と定められた。HSFの調節は、合成または安定性の改変よりも、主として活性
の変化からなる。
【0038】 3.高温療法 放射線療法や化学療法と組み合わせて使用される場合、悪性腫瘍の補助処置と
しての高温療法の有効性は、多くの臨床試験によって示されている(Hahn,
G.M.,Hyperthermia and Cancer,第二版,ニュー
ヨーク,Plenum,1982;Scottら,Int.J.Rad.Oc.
Biol.Phys.10(11)2219−2123,1984;Lindh
olmら,Rec.Res.in Cancer Res.107:152−1
56,1988)。熱の適用、適応症および禁忌の理論的根拠は、望ましい生理
学的応答が熱の使用によってもたらされるという実験的証拠と管理下臨床試験に
基づいて展開される。Lehmanは他の応用例での熱の治療的使用に関して包
括的な論文を書いている(Therapeutic Heat and Col
d,Rehabilitation Medicine Library,Wi
lliams & Wilkins発行,1990。参考文献として本明細書の
一部を構成する)。特に内科的および外科的な治療的介入に関して熱の使用が議
論されている第9章を参照されたい。
【0039】 「高温(ハイパーサーミア)」とは処置を施されている対象の周囲温度よりも
高い温度条件を指すものとする。したがって、ここにいう高温温度は、通例約3
7℃から約42℃の範囲に及ぶだろう。好ましい態様ではその温度が約38℃か
ら約42℃の範囲に及び、他の態様では、その温度が約38℃から約41℃まで
であり、他の態様ではその温度が約40℃だろう。補助療法で高温療法の実施に
現在利用できる装置を使えば、高温処置の温度を42℃まで約0.5℃以内に維
持できる。したがって、本発明の治療的処置は、37.0℃、37.2℃、37
.4℃、37.6℃、37.8℃、38.2℃、38.4℃、38.6℃、38
.8℃、39.2℃、39.4℃、39.6℃、39.8℃、40.2℃、40
.4℃、40.6℃、40.8℃、41.2℃、41.4℃、41.6℃、41
.8℃または42.0℃で行いうる。本発明以前は、高温療法が有効であるには
、安全性を考慮して正常組織内の温度を42℃未満に制限しつつ、腫瘍内温度を
約43℃を超える温度に30〜60分維持する必要があった。腫瘍内で42℃を
超える均一な温度を達成することは極めて難しく、しばしば不可能である。
【0040】 哺乳動物中の組織は、超音波技術、電磁気技術、例えば伝播波(例:マイクロ
波)法、抵抗(例:高周波)法、誘導(高周波または磁気)法を含む、いくつか
の技術を使って加熱できる(Hahn,G.M.,Hyperthermia
and Cancer,第二版,ニューヨーク,Plenum,1982;Le
hman,L.B.,Postgard Med,88(3):240−243
,1990;共に参考文献として本明細書の一部を構成する)。いくつかの単純
な応用では、循環させた熱風または水を使って組織温度を上昇させうる。
【0041】 Le Veenに付与された米国特許第4,230,129号(参考文献とし
て本明細書の一部を構成する)は、体組織を加熱し、腫瘍の温度変化をシンチレ
ーション検出器を用いてリアルタイムでモニターする方法に言及している。この
方法は、脂肪組織での有意な熱吸収を避けるため、患者の身体への高周波(RF
)エネルギーのカップリングに備えている。これは、エネルギーが患者の体内の
同一の狭い領域に絶えず適用されることがないようにアプリケーターの軌道運動
でRFエネルギーを腫瘍に集中させることによって得られる。Le Veenに
付与された米国特許第3,991,770号(これも参考文献として本明細書の
一部を構成する)には、腫瘍を含有する人体の一部を高周波電磁場においてその
腫瘍組織を加熱し、隣接する正常組織を損傷することなくその腫瘍の壊死を引き
起こすことにより、ヒトの腫瘍を処置する方法が記載されている。
【0042】 本発明の好ましい態様では、特定の腫瘍部位での誘導遺伝子発現を達成するた
めに、ここに開示する遺伝子治療用ベクターと組み合わせて高温を適用する。さ
らに、その高温/遺伝子治療処置法を、他の従来の治療法、例えば後述の化学療
法や放射線療法などと組み合わせて使用して、癌を効率よく処置することもでき
る。当技術分野では他の高温誘導法も知られている。高温の局所的および/また
は全身的適用の方法と装置は当業者にはよく知られており、例えば米国特許第5
,284,144号、第4,230,129号、第4,186,729号、第4
,346,716号、第4,848,362号、第4,815,479号、第4
,632,128号など(いずれも参考文献として本明細書の一部を構成する)
に開示されている。
【0043】 4.発現コンストラクトの作成 一定の態様では、本発明は、治療用遺伝子をコードする発現コンストラクトを
作成するために、遺伝物質の操作を伴う。このような方法には、例えば対象遺伝
子をコードする異種DNAとその発現のための手段を含有する発現コンストラク
トの使用、適当なヘルパー細胞でそのベクターを複製すること、そこから生産さ
れたウイルス粒子を得ること、細胞をその組換えウイルス粒子に感染させること
が含まれる。その遺伝子は、例えばがん細胞を処置するため、ウイルス感染に対
抗するための免疫調節遺伝子を発現させるため、または遺伝的欠損の結果として
の遺伝子の機能を代償するための治療用遺伝子だろう。遺伝子治療用ベクターに
関して、その遺伝子は異種DNAであり、ベクターの骨格となるウイルスゲノム
DNA以外の供給源に由来するDNAを含むものとする。最後に、ウイルスは生
ワクチンウイルスとして作用し、それに対する抗体を産生するために、対象とな
る抗原を発現させうる。遺伝子は細菌、ウイルス、酵母、寄生虫、植物または動
物などの原核もしくは真核供給源に由来しうる。異種DNAは2以上の供給源に
由来してもよい(すなわち多重遺伝子コンストラクトまたは融合タンパク質)。
異種DNAは、ある供給源に由来する調節配列と、異なる供給源から得た遺伝子
とを含んでもよい。
【0044】 a)治療用遺伝子 本発明の選択されたポリヌクレオチドは随意に治療用遺伝子であってもよい。
多種多様な治療用遺伝子はいずれもここに記載するベクターと方法での使用に適
している。特定の傷害、医学的状態または疾患への本発明の適用に適した治療用
遺伝子は、当業者には識別できるだろう。
【0045】 本発明の一態様では、選択されたポリヌクレオチドがオルニチンデカルボキシ
ラーゼアンチザイムタンパク質をコードする遺伝子である。オルニチンデカルボ
キシラーゼ(ODC)アンチザイムタンパク質は、細胞内ポリアミン貯蔵量のフ
ィードバック調節の重要な成分である(Hayashiら,Trends in Biochemical Sciences 21(1):27−30,19
96,参考文献として本明細書の一部を構成する)。このタンパク質のレベルは
アンチザイムメッセージの翻訳を刺激する細胞内ポリアミンのレベルに直接関係
する。アンチザイムタンパク質はオルニチンデカルボキシラーゼ(ポリアミン合
成における最初の酵素であり、しばしば律速酵素である)を分解の標的とする。
このタンパク質はポリアミン取り込みも抑制する。したがって低レベルの内因性
ポリアミン類は低レベルのアンチザイムにつながり、それが結果としてODCに
よるポリアミン合成とポリアミンの取り込みを極限まで増加させる。逆に高レベ
ルの内因性ポリアミンは高レベルのアンチザイムタンパク質をもたらし、それが
結果としてODCによるポリアミン合成を最小限に抑え、ポリアミンの取り込み
を抑制する。
【0046】 放射線防護剤WR−33278(N,N''−(ジチオジ−2,1−エタンジイ
ル)ビス−1,3−プロパンジアミン)はジスルフィド含有ポリアミン類似体で
あり、細胞にはポリアミン運搬体を使って取り込まれる(Mitchellら,
Carcinogenesis,16:3063−3068,1995,参考文
献として本明細書の一部を構成する)。この運搬体はアンチザイムによって阻害
される。動物モデルから得られた証拠は、この放射線防護剤が少なくともいくつ
かの正常組織にいくつかの腫瘍よりも高度に取り込まれることを示している(I
toら,International Journal of Radiati
on Oncology,Biology,Physics 28:899−9
03,1994)。WR−33278のような薬剤は、放射線療法の腫瘍抑制有
効性を低下させることなく用量制限的正常組織を毒性から防護する試みとして臨
床放射線療法に使用されてきた(SpencerおよびGoa,Drugs,5
0(6):1001−31,1995,参考文献として本明細書の一部を構成す
る)。WR−33278の取り込み量の相違に関する理論的根拠は、増殖性腫瘍
細胞がしばしば正常組織中の非増殖性細胞よりも高いレベルのポリアミンを含有
することかもしれない。したがって腫瘍は正常組織よりも高いレベルのアンチザ
イムを発現するだろう。
【0047】 本発明者らは、ポリアミン依存的調節に必要な配列を欠くアンチザイムcDN
Aをヒト熱ショック70Bプロモーターの制御下に置いた。本発明者らはヒト前
立腺癌由来のDU−145細胞にこのコンストラクトを安定にトランスフェクト
し、ポリアミン取り込みの熱誘導性の抑制(熱誘導性のアンチザイム活性を示す
)を示すクローンを選択した。この遺伝子療法(アンチザイム発現のHSP70
Bプロモーター調節)の治療への応用は、今後、限局性前立腺癌患者での臨床試
験で使用されるだろう。患者は、全身WR−33278および局所放射線療法と
組み合わせて、腫瘍内に適用されるこの遺伝子治療で処置される。次に、腫瘍内
でのアンチザイムの発現が、局所的高温によって活性化される。これらの前立腺
腫瘍に隣接する用量制限的正常組織は高温に反応してアンチザイムを発現するこ
となく、放射線保護剤WR−33278を取り込み、腫瘍組織は高温に反応して
アンチザイムを発現するので、それらの腫瘍組織は放射線保護剤を取り込まない
だろう。この方法は、前立腺癌の局所的抑制を向上させる目的で前立腺により高
い線量の放射線療法を施すことを可能にする。
【0048】 これに代わる態様として、細胞防護剤エチオール(ethyol)(アミフォ
スチン(amifostine)、WR−2721、S−2−(3−アミノプロ
ピルアミノ)エチルホスホロオルニチン酸とも呼ばれる))のWR33278以
外の他の代謝産物を、ここに記載する発現コンストラクトと共に使用してもよい
。例えば、代わりにWR−1065(2−(3−アミノプロピルアミノ)エタン
チオール)を放射線防護剤として使用できる。
【0049】 本発明のベクターを使って送達できる遺伝子は他にも数多くある。例えば、本
発明のベクターは、腫瘍抑制剤、アンチセンス癌遺伝子、癌処置用のプロドラッ
グ活性化剤、例えばHSV−TK遺伝子など(Rosenfeldら,Anna
ls of Surgery,225:609−618,1997;Esand
iら,Gene Therapy,4:280−287,1997)を移入する
ために使用できる。本発明の発現コンストラクトで随意に使用できるであろう他
の遺伝子には、p53、p16、p21、p27、C−CAM、HLA−B7(
Gleichら,Arch Otolaryngol Head Neck S
urg,124:1097−104,1998;Heoら,Hum.Gene
Ther.9:2031−8,1998;Nabelら,Proc.Nat.A
cad.Sciences USA,90:15388−15393,1996
;Stopeckら,Journal of Clinical Oncolo
gy,15:341−349,1997)、IL2(O'Malleyら,Mo lecular Endocrinology,11:667−673,199
7;Otovaら,Folia Biologica,43:25−32,19
97)、IL4(Kling,Nature Biotechnology,1
5:316−317,1997)、IL7(Tolozaら,Annals o
f Surgical Oncology,4:70−79,1997;Sha
rmaら,Cancer Gene Therapy,3:303−313,1
996)、IL12(HiscoxおよびJiang,In Vivo,11:
125−137,1997;Chenら,Journal of Immuno
logy,159:351−359,1997),GM−CSF(Kreitm
annおよびPastan,Blood,90:252−259,1997;H
omickら,Blood,89:4437−4447,1997;Lanza
ら,Haematologica,82:239−245,1997)、IFN
(Noguchiら,Clinical Infectious Diseas
es,24:992−994,1997;Kanemaruら,Europea
n Archives of Oto−Rhino−Laryngology,
254:158−162,1997;Tanakaら,Journal of
Gastroenterology and Hepatology,11:1
155−1160,1996;Imaiら,Liver,17:88−92,1
997)、I−CAM1およびTNF(Corcioneら,Annals o
f the New York Academy of Science,81
5:364−366,1997)がある(この段落で引用した論文はすべて参考
文献として本明細書の一部を構成する)。
【0050】 現在p53は腫瘍抑制遺伝子であると認識されている(Montenarh,
Crit.Rev.Oncogen,3:233−256,1992)。化学発
癌、紫外線照射、SV40を含む数種類のウイルスによって形質転換された多く
の細胞に高レベルの突然変異型p53が見出されている。p53遺伝子は多種多
様なヒト腫瘍での突然変異不活化の標的によくなり、一般的なヒトの癌で最も頻
繁に突然変異する遺伝子であることが既に論証されている。これはヒトNSCL
Cの50%以上と、広範囲にわたる他の腫瘍で突然変異している。
【0051】 P16INK4は新たに記載された種類のCDK阻害タンパク質群に属し、これに
はp16B、p21WAF1,CIP1,SDI1、p27KIP1も含まれる。p16INK4遺伝子 は多くの腫瘍タイプで頻繁に欠失が起こる染色体領域9p21にマッピングされ
る。p16INK4のホモ接合性の欠失と突然変異はヒト腫瘍細胞株にはよくある。
この証拠は、p16INK4遺伝子が腫瘍抑制遺伝子であることを示唆している。し
かしこの解釈は、p16INK4遺伝子改変の頻度が初代未培養腫瘍では培養細胞株
よりもはるかに低いという観察から疑われてきた。プラスミド発現ベクターのト
ランスフェクションによる野生型p16INK4機能の復活は、いくつかのヒト癌細
胞株によるコロニー形成を減少させた(Okamotoら,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 91:11045−11049,1994;Ar
apら,Cancer Res.,55:1351−1354,1995;共に
参考文献として本明細書の一部を構成する)。
【0052】 C−CAMは事実上すべての上皮細胞で発現される。105kDという見かけ
の分子量を持つC−CAMは、元々は、細胞凝集を中和する特異抗体との反応に
より、ラット肝細胞の原形質膜から単離された。最近の研究は、C−CAMが構
造上、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し、その配列は癌胎児性
抗原(CEA)に高度に相同であることを示している。C−CAMの第一Igド
メインは細胞接着活性にとって必須であることが示されている。
【0053】 細胞接着分子(CAM)は、器官発達と細胞分化を調節する分子相互作用の複
雑なネットワークに関与することが知られている(Edelman,Annu.
Rev.Biochem.,54:135−169,1985)。最近のデータ
は、CAMの異常発現が、いくつかの新生物の腫瘍形成に関与するらしいことを
示している。例えば、主として上皮細胞で発現されるE−カドヘリンの発現量の
低下は数種類の新生物の進行と関係する。また、GiancottiとRous
lahti(Cell,60:849−859,1990;参考文献として本明
細書の一部を構成する)は、遺伝子導入によってα5β1インテグリンの発現量を
増加させることにより、インビボでチャイニーズハムスター卵巣細胞の腫瘍形成
を減少させるうることを実証した。現在、C−CAMはインビトロとインビボで
腫瘍の成長を抑制することが明らかにされている。
【0054】 本発明に従って使用できる他の腫瘍抑制剤。例えば、選択されたポリヌクレオ
チドは、次に挙げる遺伝子のいずれであってもよい:網膜芽腫(Rb)遺伝子;
腺腫性結腸ポリポーシス遺伝子(APC);DCC(deleted in c
olorectal carcinomas)遺伝子;神経繊維腫症1型(NF
−1)遺伝子;神経繊維腫症2型(NF−2)遺伝子;ウィルムス腫瘍抑制遺伝
子(WT−1);多発性内分泌腺腫症2型(MEN−2)遺伝子;BRCA1遺
伝子;フォン・ヒッペルリンダウ症候群(VHL)遺伝子;MCC(mutat
ed in colorectal cancer)遺伝子;p16;p21;
p57;p27およびBRCA2。
【0055】 これに代わる本発明の一態様として、本発明の方法とベクターは、成長因子ま
たはサイトカインの産生を刺激することによって神経再生などの再生過程を促進
するために使用できる。このような態様では、選択されたポリヌクレオチドが神
経栄養因子でありうる。例えば、選択されたポリヌクレオチドは、毛様体神経栄
養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)またはグリア細胞株由来
神経栄養因子(GDNF)(Mitsumotoら,Science,265:
1107−1110,1994;Gashら,Ann.Neurol.,44(
3 Suppl 1):S121−125,1998;共に参考文献として本明
細書の一部を構成する)をコードしうる。また随意に、発現コンストラクトの選
択されたポリヌクレオチドが、チロシンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロ
キシラーゼ1または芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ(Kang,Mov
.Disord.,13 Suppl 1:59−72,1998;参考文献と
して本明細書の一部を構成する)をコードしてもよい。さらにもう一つの態様と
して、この治療用発現コンストラクトは、インスリン様成長因子1(IGF−1
)(Webster,Mult.Scler.3:113−120,1997;
参考文献として本明細書の一部を構成する)などの成長因子を発現してもよい。
【0056】 本ベクターが有効な他の疾患の例には、治療用遺伝子、例えば血管新生阻害剤
や細胞周期阻害剤をコードする遺伝子の移入による、慢性関節リウマチや再狭窄
などの過剰増殖性の疾患と障害があるが、これらに限らない。
【0057】 b)アンチセンスコンストラクト ras、myc、neu、raf、erb、src、fms、jun、trk
、ret、gsp、hst、bclおよびablなどの癌遺伝子も好適な標的で
ある。しかし、治療上の利益を得るには、癌遺伝子の発現が抑制されるようにこ
れらの癌遺伝子がアンチセンス核酸として発現されるだろう。「アンチセンス核
酸」という用語は、癌遺伝子をコードするDNAとRNAの塩基配列に相補的な
オリゴヌクレオチドを指すものとする。アンチセンス核酸は、標的細胞内で発現
されると、それらの標的核酸に特異的に結合し、転写、RNAプロセッシング、
輸送および/または翻訳を妨害する。ポリヌクレオチドによる二本鎖(ds)D
NAのターゲティングは三重らせん形成をもたらし、RNAのターゲティングは
二重らせん形成をもたらすだろう。
【0058】 アンチセンスコンストラクトは、遺伝子のプロモーターと他の制御領域、エキ
ソン、イントロン、さらにはエキソン−イントロン境界に結合するように設計で
きる。アンチセンスRNAコンストラクトまたはアンチセンスRNAをコードす
るDNAは、インビトロまたはインビボで、例えばヒト対象を含む宿主動物内で
、宿主細胞内での遺伝子の転写または翻訳もしくはその両方を抑制するために使
用できる。「相補的ヌクレオチド」からなる核酸配列は、標準的なワトソン−ク
リック相補規則に従って塩基対形成できるものである。すなわち、大きいプリン
類は小さいピリミジン類と塩基対を形成して、シトシンと対を形成したグアニン
(G:C)の組み合わせ、およびチミンと対を形成したアデニン(A:T)(D
NAの場合)またはウラシルと対を形成したアデニン(A:U)(RNAの場合
)の組み合わせだけを形成する。
【0059】 ここで「相補的」とか「アンチセンス配列」という用語は、その全長にわたっ
て実質的に相補的であって極めてわずかな塩基ミスマッチしか持たない核酸配列
を意味する。例えば15塩基長の核酸配列は、それらが13または14箇所で相
補的ヌクレオチドを持ちミスマッチを一つだけまたは二つだけしか持たない場合
に相補的であると呼べる。当然、「完全に相補的な」核酸配列とは、その全長に
わたって完全に相補的であり、塩基ミスマッチを持たない核酸配列になる。
【0060】 アンチセンスの構築については遺伝子配列の全部または一部を使用できるが、
統計的に17塩基長の配列はいずれもヒトゲノムには1回しか現れないはずであ
り、したがってユニークな標的配列を特定するのに十分である。短いオリゴマー
ほど作成が容易でインビボでの接触性は増加するが、ハイブリッド形成の特異性
の決定には非常に多くの他の要因が関与する。オリゴヌクレオチドのその相補的
標的への結合親和力と配列特異性は長さが増すにつれて増加する。8,9、10
、11、12、13,14、15、16、17、18、19、20またはそれ以
上の塩基対を持つオリゴヌクレオチドが使用されると予期される。与えられたア
ンチセンス核酸が対応する宿主細胞遺伝子のターゲティングに有効であるかどう
かは、インビトロでそのコンストラクトを試験して、内因性遺伝子の機能が影響
を受けるかどうか、または相補配列を持つ関連遺伝子の発現が影響を受けるかど
うかを決定するだけで、容易に決定できる。
【0061】 一定の態様では、他の要素を含むアンチセンスコンストラクト(例えばC−5
プロピンピリミジンを含むものなど)の使用が望まれるかもしれない。ウリジン
とシチジンのC−5プロピン類似体を含有するオリゴヌクレオチドは、高い親和
力でRNAを結合し、遺伝子発現の強力なアンチセンス阻害剤であることが明ら
かにされている(Wagnerら,Science,260:1510−151
3,1993;参考文献として本明細書の一部を構成する)。
【0062】 c)リボザイムコンストラクト 目標を定めたアンチセンスの送達に代わるものとして、目標を定めたリボザイ
ムも使用できる。「リボザイム」という用語は、DNA中、あるいはより典型的
にはRNA中の特定の塩基配列を標的としてそれを切断できるRNA型酵素を指
す。本発明では、リボザイムは望ましいリボザイムRNAをコードする発現コン
ストラクトとして細胞に導入される。リボザイムの標的はアンチセンス核酸につ
いて説明したものとほとんど同じである。
【0063】 多くのリボザイムは生理学的条件でホスホジエステル結合の加水分解を触媒す
ることが知られている。本発明のリボザイムは第二の核酸分子(好ましくはmR
NA転写物、また随意に、癌遺伝子のmRNA転写物)の配列特異的切断を触媒
する。一般にリボザイムは、リボザイムの酵素部分に隣接するリボザイムの標的
結合部分を介して標的RNAに結合する。リボザイムの酵素部分は標的RNAを
切断する。標的RNAの戦略的切断は、直接または間接にタンパク質をコードす
るというその能力を破壊する。標的の酵素的切断を行なった後、リボザイムは標
的から解放され、この過程を繰り返す新たな標的を探す。
【0064】 本発明の好ましい態様では、そのリボザイムが植物ウイロイド由来の小さいR
NA分子ハンマーヘッドリボザイムである(Symons,Ann.Rev.B
iochem.61:641−671,1992;Clouet−D'Orva lおよびUhlenbeck,RNA,2:483−491,1996;Has
eloffおよびGerlach,Nature 334:585−591,1
988;Jeffries and Symons,Nucleic Acid
s Res.17:1371−1377,1989;Uhlenbeck,Na
ture 328:596−600,1987;すべて参考文献として本明細書
の一部を構成する)。
【0065】 他の態様では、リボザイムが、グループIイントロン、ヘアピンリボザイム、
VS RNA、肝炎デルタウイルスリボザイムまたはRNアーゼP−RNAリボ
ザイム(RNAガイド配列と結合したもの)であってもよい。ヘアピンモチーフ
の例はHampelら,Nuclei Acids Res.18:299,1
990とHampelおよびTritz,Biochemistry 28:4
929,1989に記述されており、肝炎デルタウイルスモチーフの例はPer
rottaおよびBeen,Biochemistry 31:16,1992
に記述されており、RNアーゼPモチーフ(外部ガイド配列と結合したもの)の
例はYuanら,特許第5,624,824号に記述されており、ニューロスポ
ラVS RNAリボザイムモチーフはSavilleおよびCollins,C
ell 61:685−696,1990、SavilleおよびCollin
s,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:8826−883
0,1991、CollinsおよびOlive,Biochemistry
32:2795−2799,1993に記述されており、グループIイントロン
はCeshらの米国特許第5,354,855号に記述されている。上に挙げた
モチーフは本発明に関する限定であるとみなすべきではなく、ここで使用しうる
リボザイムが標的mRNAに相補的な特異的基質結合部位を含んでなることは当
業者には理解されるだろう。そのようなリボザイムはその分子にRNA切断活性
を付与する酵素部分も含む。酵素部分は基質結合部位の内部またはその周囲に存
在する。
【0066】 d)選択可能マーカー 本発明の一定の態様では、本発明の治療用ベクターが、その発現コンストラク
トにマーカーを含めることにより、その発現をインビトロまたはインビボで同定
しうる核酸コンストラクトを含有する。そのようなマーカーは細胞に同定可能な
変化を付与して、その発現コンストラクトを含有する細胞の同定を容易にする。
通常、薬物選択マーカーの包含は形質転換体のクローニングと選択を助ける。例
えば、ネオマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT
、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する耐性を付与する遺伝子は有用な選択マ
ーカーである。また、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)などの酵
素も使用できる。免疫学的マーカーも使用できる。使用する選択可能マーカーは
、それが遺伝子産物をコードする核酸と同時に発現されうる限り、重要でないと
考えられる。選択可能マーカーのさらなる例は当業者にはよく知られており、E
GFP、β−gal、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CA
T)などのリポーターが含まれる。
【0067】 e)多重遺伝子コンストラクトとIRES 本発明の一定の態様では、内部リボソーム結合部位(IRES)配列の使用に
より、多重遺伝子(またはポリシストロン性)メッセージを作成する。IRES
配列は5'メチル化Cap依存的翻訳のリボゾームスキャニングモデルを迂回し て、内部の部位で翻訳を開始できる。哺乳類メッセージ由来のIRESの他に、
ピカノウイルス(picanovirus)ファミリーの2つのメンバー(ポリ
オと脳心筋炎)に由来するIRES配列が記述されている(Pelletier
およびSonenberg,Nature,334:320−325,1988
)。IRES配列は異種オープンリーディングフレームに連結できる。複数のオ
ープンリーディングフレームは一緒に転写され、それぞれがIRESによって隔
てられて、ポリシストロン性メッセージを生成しうる。IRES配列のおかげで
、各オープンリーディングフレームはリボゾームに接近できて効率よく翻訳され
る。このように多重遺伝子は、単一のメッセージを転写するために単一のプロモ
ーター/エンハンサーを使用して、効率よく発現されうる。
【0068】 任意の異種オープンリーディングフレームをIRES配列に連結できる。これ
には分泌タンパク質、独立した遺伝子によってコードされる多サブユニットタン
パク質、細胞内または膜結合型タンパク質および選択マーカーの遺伝子が含まれ
る。
【0069】 f)制御領域 本発現コンストラクトが治療用遺伝子をコードする転写物の発現に影響を及ぼ
しうるように、その治療用遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、プロモータ
ーとポリアデニル化シグナルの転写制御下に置かれる。「プロモーター」とは、
その宿主細胞の合成装置または導入された合成装置によって認識される、遺伝子
の特異的転写を開始するのに必要なDNA配列を指す。ポリアデニル化シグナル
とは、その宿主細胞の合成装置または導入された合成装置によって認識される、
翻訳のために適切なプロセッシングとその転写物の核から細胞質への輸送を起こ
すための一連のヌクレオチドのmRNA転写物の末端への付加を指示するのに必
要なDNA配列を指す。「転写制御下」という表現は、そのプロモーターがその
ポリヌクレオチドと正しい位置関係にあってRNAポリメラーゼの開始とそのポ
リヌクレオチドの発現を制御することを意味する。
【0070】 プロモーターという用語は、ここではRNAポリメラーゼII用の開始部位の
付近に集まっている一群の転写制御モジュールを指す。プロモーターがどうのよ
うにして組織化されるかに関する考察の大半は、HSVチミジンキナーゼ(tk
)とSV40初期転写単位のプロモーターを含む数種類のウイルスプロモーター
の分析に由来している。より最近の研究によって強化されたこれらの研究は、プ
ロモーターがそれぞれ約7〜20bpのDNAからなり転写活性化または抑制タ
ンパク質の認識部位を一つまたはそれ以上含有する不連続な機能的モジュールか
ら構成されることを明らかにしている。
【0071】 各プロモーター中の少なくとも一つのモジュールは、RNA合成の開始部位を
位置付ける機能を果たす。これの最もよく知られている例はTATAボックスで
あるが、哺乳類デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモータ
ーやSV40後期遺伝子のプロモーターなど、TATAボックスを欠くいくつか
のプロモーターでは、開始位置に重なった分離した配列自体が開始部位の位置を
固定するのを助ける。
【0072】 その他のプロモーター配列は転写開始の頻度を調節する。いくつかのプロモー
ターは開始部位の下流にも機能的配列を含有することが最近になって明らかにさ
れているが、一般的には、それらは開始部位の30〜110bp上流の領域に位
置する。プロモーター配列間の間隔はしばしば融通が利くので、各配列を逆にし
たり互いを相対的に動かしても、プロモーター機能は保存される。tkプロモー
ターでは、プロモーター配列間の間隔を増やしても50bpの隔たりまでは、活
性の低下が始まらない。プロモーターによって、個々の配列は協調してまたは独
立して機能することにより、転写を活性化できるようである。
【0073】 ヒト細胞を標的にする場合は、ヒト細胞で発現し得るプロモーターに隣接して
その制御下にポリヌクレオチドコード領域を置くことが好ましい。一般的に言う
と、そのようなプロモーターにはヒトまたはウイルスプロモーターが含まれるだ
ろう。プロモーターの一覧を表1に示す。
【表1】 プロモーター 免疫グロブリン重鎖 免疫グロブリン軽鎖 T細胞レセプター HLA DQαおよびDQβ β−インターフェロン インターロイキン2 インターロイキン2レセプター MHCクラスII5 MHCクラスII HLA−DRα β−アクチン 筋クレアチンキナーゼ プレアルブミン(トランスチレティン) エラスターゼI メタロチオネイン コラゲナーゼ アルブミン遺伝子 α−フェタプロテイン(fetaprotein) τ−グロビン β−グロビン c−fos c−HA−ras インスリン 神経細胞接着分子(NCAM) α1−アンチトリプシン H2B(TH2B)ヒストン マウスまたはI型コラーゲン グルコース調節タンパク質(GRP94とGRP78) ラット成長ホルモン ヒト血清アミロイドA(SAA) トロポニンI(TNI) 血小板由来成長因子 デュシェンヌ型筋ジストロフィ SV40 ポリオーマ レトロウイルス パピローマウイルス B型肝炎ウイルス ヒト免疫不全ウイルス サイトメガロウイルス テナガザル白血病ウイルス
【0074】 治療用遺伝子の発現を制御するために使用される個々のプロモーターは、それ
が誘導性プロモーターに連結された遺伝子産物によって活性化されうる限り、決
定的な問題ではないと考えられる。本発明の好ましい態様では、トランス活性化
タンパク質がtatであり、治療用遺伝子に作動可能に連結されたプロモーター
がHIV−1またはHIV−2 LTRである。例えば、AP−1部位を含有す
るプロモーター配列はc−junまたはc−fosタンパク質の誘導発現に応答
するだろう。その他の好適なトランス活性化因子/プロモーターの組み合わせは
当業者にはわかるだろう。
【0075】 トランス活性化因子をコードする遺伝子の発現を制御するプロモーターは誘導
性プロモーターでなければならない。誘導性プロモーターは、誘導物質の存在下
以外では不活性であるか比較的低い活性を示すプロモーターである。本発明の一
部として含まれうるプロモーターの例としては、MT II、MMTV、コラゲ
ナーゼ、ストロメライシン、SV40、マウスMX遺伝子、α−2−マクログロ
ブリン、MHCクラスI遺伝子h−2kb、プロリフェリン、腫瘍壊死因子、甲
状腺刺激ホルモンα遺伝子などが挙げられるが、これらに限るわけではない。こ
れらのプロモーター配列に関連する誘導因子を表2に示す。Egr−1プロモー
ターと多剤耐性遺伝子(MDR1)プロモーターも誘導性プロモーターの選択肢
である。好ましい態様では、誘導性プロモーターが熱ショック誘導性であって、
次に挙げるプロモーターの一つに由来する:HSP70、HSP90、HSP6
0、HSP27、HSP72、HSP73、HSP25、ユビキチンおよびHS
P28.もう一つの好ましい態様では、誘導性プロモーターが低酸素応答配列(
例えばHIF−1に応答するものなど)を含んでなる。本発明の実施には任意の
誘導性プロモーターを使用でき、そのようなプロモーターはすべてここに請求す
る発明の精神と範囲に包含されると解される。
【表2】 配列 誘導因子 MT II ホルボールエステル(TPA) 重金属 MMTV(マウス乳がんウイルス) グルココルチコイド β−インターフェロン ポリ(rI)X ポリ(rc) アデノウイルス5E2 E1a c−jun ホルボールエステル(TPA), H22 コラゲナーゼ ホルボールエステル(TPA) ストロメライシン ホルボールエステル(TPA), IL−1 SV40 ホルボールエステル(TPA) マウスMX遺伝子 インターフェロン, ニューカッスル病ウイルス GRP78遺伝子 A23187 α−2マクログロブリン IL−6 ビメンチン 血清 MHCクラスI遺伝子H−2kB インターフェロン HSP70 E1a,SV40ラージT抗原 プロリフェリン ホルボールエステル−TPa 腫瘍壊死因子 FMA 甲状腺刺激ホルモンα遺伝子 甲状腺ホルモン
【0076】 とりわけ好ましい態様では、tatタンパク質がトランス活性化因子として使
用される。HIV−1とHIV−2のゲノムはサル免疫不全ウイルスと多くの類
似性を有し、それらは詳細に研究されている。全てのレトロウイルスに共通する
gag、env、pol遺伝子に加えて、HIV転写に重要ないくつかの調節遺
伝子があることが発見された。ウイルスtatタンパク質はそのような調節因子
の一つであり、これはHIV−1およびHIV−2プロモーターの活性を著しく
増加させるというその能力を特徴とする(Sodroskiら,J.Virol
.55(3):831−835,1985a;Sodroskiら,Scien
ce,229(4708):74−77,1985b;Sodoroskiら,
Science,228(4706):1430−1434;Sodroski
ら,Science,228(4706):1430−1434,1985c;
Soroskiら,Science,227(4683):171−173,1
985d;これらはすべて参考文献として本明細書の一部を構成する)。tat
はHIV LTR中のトランス活性化応答配列(TAR)と結合し、HIV特異
的RNAの定常状態レベルを増加させると考えられる。またtatは、それが数
種類のトランス活性化因子タンパク質と相互作用できるという点で、むしろ伝統
的な転写因子のように作用できることを示唆する証拠もある。tatとアデノウ
イルストランス活性化因子EIAは相乗的に作用して定常状態RNAのレベルを
増加させる(Laspiaら,Genes Dev.,4(12B):2397
−2408,1990;参考文献として本明細書の一部を構成する)。したがっ
て、HIV−LTR/TATコンストラクトの活性をさらに増加させる一法は、
同じコンストラクトにE1Aを組み込むことである。
【0077】 cDNAインサートを使用する場合は、通例、遺伝子転写物の適切なポリアデ
ニル化を達成するためにポリアデニル化シグナルを含めることが望まれるだろう
。ポリアデニル化シグナルの性質は、本発明の実施の成功にとって決定的な問題
ではないと考えられ、そのような配列はいずれも使用できる。SV40、ウシ成
長ホルモン、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子から得られるような
ポリアデニル化シグナルは、多くの標的細胞で十分に機能することが見出されて
いる。
【0078】 5.遺伝子導入の方法 細胞内で導入遺伝子の発現を達成するために、まず、細胞に本発明の治療用発
現コンストラクトを導入または移入する必要がある。そのような移入には、遺伝
子導入のウイルスまたは非ウイルス法を使用できる。この項では、遺伝子導入の
方法と組成物について述べる。
【0079】 A.非ウイルス型移入 好ましい態様では、本発明の治療用コンストラクト、例えば様々な遺伝子(す
なわちDNA)コンストラクトが、細胞中に送達されなければならない。一定の
好ましい状況では、細胞への発現コンストラクトの導入が非ウイルス型手段によ
って媒介される。
【0080】 本発明では、培養哺乳類細胞への発現コンストラクトの移入に、いくつかの非
ウイルス法が予期される。それらには、リン酸カルシウム沈殿法(Graham
およびVan Der Eb,Virology,52:456−467,19
73;ChenおよびOkayama,Mol.Cell.Biol.,7:2
745−2752,1987;Rippeら,Mol.Cell.Biol.,
10:689−695,1990)、DEAE−デキストラン法(Gopal,
Mol.Cell Biol.,5:1188−1190,1985)、エレク
トロポレーション(Tur−Kaspaら,Mol.Cell Biol.,6
:716−718,1986;Potterら,Proc.Natl.Acad
.Sci.USA,81:7161−7165,1984)、直接微量注入(H
arlandおよびWeintraub,J.Cell Biol.,10 1
:1084−1099,1985)、DNA添加リポソーム(Nicolauお
よびSene,Biochim.Biophys.Acta,721:185−
190,1982;Fraleyら,Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,76:3348−3352,1979)、細胞超音波処理(Fechh
eimerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:846
3−8467,1987)、高速微粒子を用いる遺伝子射撃法(Yangら,P
roc.Natl.Acad.Sci.USA,87:9568−9572,1
990)およびレセプター媒介トランスフェクション(WuおよびWu,J.B
iol.Chem.,262:4429−4432,1987;WuおよびWu
,Biochemistry,27:887−892,1988)が含まれる(
この段落で引用した論文は参考文献として本明細書の一部を構成する)。
【0081】 コンストラクトが細胞に送達されると、治療用遺伝子をコードする核酸は異な
る部位に配置されて、そこで発現されうる。一定の態様では、治療用遺伝子をコ
ードする核酸が細胞のゲノムに安定に組み込まれうる。この組み込みは相同組換
えによるコグネイトな位置と向きをとる(遺伝子置換)か、ランダムで非特異的
な位置に組み込まれうる(遺伝子増強)。さらなる態様では、核酸が独立したエ
ピソーム型DNA断片として細胞中に安定に維持されうる。そのような核酸断片
または「エピソーム」は、宿主細胞周期とは独立した、または宿主細胞周期と同
期した、維持と複製を許すのに足りる配列をコードする。発現コンストラクトが
どのようにして細胞に送達され、その細胞内のどこにその核酸がとどまるかは、
使用する発現コンストラクトのタイプに依存する。
【0082】 本発明の具体的一態様として、発現コンストラクトをリポソームに封入しても
よい。リポソームはリン脂質二重層膜と内部の水性媒質を特徴とする小胞構造で
ある。多重層リポソームは水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を持つ。リ
ン脂質を過剰の水溶液に懸濁すると、それらは自発的に形成する。脂質成分は閉
じた構造の形成に先立って自己再配列を起こし、水と溶解した溶質とを脂質二重
層の間に封入する。陽イオンリポソームへのDNAの添加はリポソームから光学
的に複屈折性を示す液晶凝集小球へのトポロジー遷移を起こす。これらのDNA
−脂質複合体は遺伝子治療用の非ウイルスベクターになりうる。
【0083】 リポソームによる核酸送達とインビトロでの外来DNAの発現はとてもうまく
いっている。Wongら(Gene,10:87−94,1980)は、β−ラ
クタマーゼ遺伝子を用いて、培養ヒヨコ胚、HeLaおよび肝癌細胞でのリポソ
ームによる送達と外来DNAの発現の可能性を実証した。Nicolauら(M
ethods ENzymol.,149:157−176,1987;参考文
献として本明細書の一部を構成)は、ラットで静脈内注射によるリポソームを媒
介とした遺伝子導入を成功させた。また「リポフェクション」法を含めて様々な
市販の方法も含まれる。
【0084】 本発明の一定の態様では、リポソームをセンダイウイルス(HVJ)と複合体
化させうる。これは細胞膜との融合を容易にし、リポソームに封入されたDNA
の細胞進入を促進することが明らかにされている。別の態様では、リポソームを
核非ヒストンタンパク質(HMG−1)と複合体化させるか、HMG−1と一緒
に使用しうる。さらなる態様として、リポソームをHVJとHMG−1の両方と
複合体化させるか、その両方と一緒に使用してもよい。このような発現コンスト
ラクトはインビトロとインビボで核酸の移入と発現に成功裏に使用されているの
で、これらは本発明にも適用できる。
【0085】 治療用遺伝子をコードする核酸を細胞に送達するために使用できる他のベクタ
ー送達系は、レセプター媒介性の送達媒体である。これらは、ほとんど全ての真
核細胞で、レセプター依存性エンドサイトーシスによって高分子が選択的に取り
込まれることを利用するものである。様々なレセプターが細胞タイプ特異的に分
布しているので、送達は高度に特異的でありうる(WuおよびWu,Adv.D
rug Delivery Rev.,12:159−167,1993)。
【0086】 レセプター媒介性の遺伝子ターゲティング媒体は一般的には2つの成分、細胞
レセプター特異リガンドとDNA結合剤からなる。レセプターを媒介とする遺伝
子導入にはいくつかのリガンドが使用されている。最も詳細に特徴づけられてい
るリガンドはアシアロオロソムコイド(ASOR)(WuおよびWu,J.Bi
ol.Chem.,262:4429−4432,1987)とトランスフェリ
ン(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.87(9):3
410−3414,1990)である。最近、ASORと同じレセプターを認識
する合成ネオグリコプロテインが遺伝子送達媒体として使用されており(Fer
kolら,FASEB J.,7:1081−1091,1993;Peral
esら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91:4086−4
090,1994)、また上皮成長因子(EGF)も扁平上皮癌細胞に遺伝子を
送達するために使用されている(Myers,EPO0273085)。
【0087】 別の態様では、送達媒体がリガンドとリポソームからなりうる。例えばNic
olauら(Methods Enzymool.,149:157−176,
1987)は、リポソームに組み込まれたラクトシルセラミド(ガラクトース末
端アシアロガングリオシド)を使用して、肝細胞によるインスリン遺伝子の取り
込み量の増加を観察した。このように、リポソームを使った、または使わない、
かなり多くのレセプター−リガンド系によって、治療用遺伝子をコードする核酸
も、前立腺、上皮または腫瘍細胞などの細胞タイプに特異的に送達することが可
能である。例えば、ヒト前立腺特異抗原(Wattら,Proc.Natl.A
cad.Sci、83(2):3166−3170,1986)は、前立腺組織
での核酸の送達を媒介するレセプターとして使用できる。
【0088】 本発明のもう一つの態様として、発現コンストラクトは単に裸の組換えDNA
またはプラスミドからなりうる。コンストラクトの移入は、細胞膜を物理的また
は化学的に細胞膜を透過性にする上述の方法のいずれかによって行いうる。これ
は特にインビトロでの移入に適用できるが、インビボでの使用にも同様に適用で
きる。Dubenskyら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,
81:7529−7533,1984)は、CaPO4沈殿物の形でポリオーマ ウイルスDNAをマウス成体またはマウス新生仔の肝臓と脾臓にうまく注射して
、活発なウイルス複製と急性感染を実証した。BenvenistyとNesh
if(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83:9551−95
55,1986)も、CaPO4沈殿したプラスミドの直接腹腔内注射がトラン スフェクトされた遺伝子の発現をもたらすことを実証した。CAMをコードする
DNAもインビボで同様の方法で移入してCAMを発現させうると考えられる。
【0089】 裸のDNA発現コンストラクトを細胞に移入するための本発明のもう一つの態
様は粒子射撃法に関係する。この方法はDNAをコーティングした微粒子を高速
度に加速して、それらが細胞膜を貫いて細胞を殺すことなく細胞に進入するよう
にできるということによっている(Kleinら,Nature,327:70
−73,1987;参考文献として本明細書の一部を構成する)。小さい粒子を
加速するための装置はいくつか開発されている。そのような装置の一つは、高電
圧放電によって電流を生成して、その電流を推進力とすることによっている(Y
angら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87:9568−
9572,1990)。使用された微粒子は、タングステンビーズや金ビーズな
どの生物学的に不活性な物質からなっている。
【0090】 B.ウイルスベクターを媒介とする移入 遺伝子導入を達成するもう一つの方法は、例えば後述するような本発明のアデ
ノウイルスベクターでの形質転換による、感染性ウイルス粒子を送達媒体とする
ウイルス形質導入によるものである。また、レトロウイルスやウシパピローマウ
イルスも使用でき、これらはどちらも、対象遺伝子による宿主細胞の持続的形質
転換を可能にする。したがって、ある例では、治療上有意義な遺伝子を細胞に送
達するために細胞のウイルス感染が使用される。一般的には、単にウイルスを生
理学的条件下で適当な宿主細胞にさらして、ウイルスを取り込ませることになる
。アデノウイルスを例に挙げるが、この方法は、後述するように、他のウイルス
ベクターでも有利に行いうる。そのような方法は当技術分野の通常の技術を有す
るものにはよく知られている。
【0091】 a)アデノウイルス アデノウイルスは、その中サイズのDNAゲノム、操作の容易さ、高い力価、
広い標的細胞域および高い感染性ゆえに、遺伝子導入ベクターとしての使用にと
りわけ適している。ほぼ36kBのウイルスゲノムが100〜200塩基対(b
p)の逆方向末端反復配列(ITR)に挟まれていて、その中にウイルスDNA
複製とパッケージングに必要なシス作用性配列が含まれている。異なる転写単位
を含有するそのゲノムの初期(E)領域と後期(L)領域は、ウイルスDNA複
製の開始によって分割される。
【0092】 E1領域(E1AとE1B)はウイルスゲノムと数個の細胞性遺伝子の転写の
調節を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2AとE2B)の発現はウイ
ルスDNA複製用のタンパク質の合成をもたらす。これらのタンパク質はDNA
複製、後期遺伝子発現および宿主細胞停止に関与する(Renan,1990)
。ウイルスキャプシドタンパク質の大半を含む後期遺伝子群(L1、L2、L3
、L4およびL5)の産物は、主要後期プロモーター(MLP)によって生じる
単一の初期転写物がかなりのプロセッシングを受けて初めて発現される。MLP
(16.8地図単位の位置にある)は感染の後期に特に効率がよく、このプロモ
ーターから生じるmRNAはすべて、それらを翻訳にとって好ましいmRNAに
する5'三分節リーダー(tripartite leader;TL)配列を 有する。
【0093】 アデノウイルスを遺伝子治療用として最適化するには、大きいDNA断片を含
ませることができるように、運搬能を最大にする必要がある。また、一定のアデ
ノウイルス産物に付随する毒性と免疫反応を低下させることも極めて望ましい。
これら2つの目標は、アデノウイルス遺伝子の除去がどちらの目的にもかなうと
いう点で、ある程度、共通する部分がある。本発明の実施により、治療用コンス
トラクトを比較的容易に操作できるという性質は保ったまま、これらの目的の両
方を達成することが可能である。
【0094】 ウイルスDNA複製に必要なシス配列はすべて線状ウイルスゲノムの両端にあ
る逆方向末端反復配列(ITR)(100〜200bp)中に局在しているので
、大きなDNA置換が可能である。ITRを含有するプラスミドは非欠損アデノ
ウイルスの存在下に複製できる。したがってこれらの配列をアデノウイルスベク
ターに含むことによって複製が可能になるはずである。
【0095】 また、ウイルスを封入するためのパッケージングシグナルは、ウイルスゲノム
の左端にある194〜385bp(0.5〜1.1地図単位)の間に局在する。
このシグナルは、バクテリオファージラムダDNA中のタンパク質認識部位(こ
の場合、左端近くにあるが付着端配列の外側にある特異配列が頭部構造へのDN
Aの挿入に必要なタンパク質への結合を媒介する)によく似ている。AdのE1
置換ベクターにより、ウイルスゲノムの左端にある450bp(0〜1.25地
図単位)断片が293細胞でのパッケージングを指図できることが実証されてい
る。
【0096】 アデノウイルスゲノムの一定の領域を哺乳類細胞のゲノムに組み込み、それら
がコードしている遺伝子を発現させうることは、先に示されている。これらの細
胞株は、その細胞株によってコードされるアデノウイルス機能が欠損したアデノ
ウイルスベクターの複製を助けることができる。また、「援助(helping
)」ベクター、例えば野生型ウイルスまたは条件的欠損突然変異株などによる、
複製欠損アデノウイルスベクターの補完も報告されている。
【0097】 複製欠損アデノウイルスベクターはヘルパーウイルスによってトランスに補完
できる。しかし、複製機能を与えるのに必要なヘルパーウイルスの存在がどんな
調製物も汚染してしまうので、この観察だけでは複製欠損ベクターの単離は可能
にならない。そこで、複製欠損ベクターの複製および/またはパッケージングに
特異性を付加する追加の配列が必要だった。本発明が備えるようなその配列は、
アデノウイルスのパッケージング機能に由来する。
【0098】 アデノウイルスにとってのパッケージングシグナルは従来のアデノウイルス地
図の左端に存在することが明らかにされている。その後の研究により、ゲノムの
E1A(194〜358bp)領域に欠失を持つ突然変異体は、初期(E1A)
機能を補完した細胞株中でさえ不十分にしか生育しないことが示された。補償ア
デノウイルスDNA(0〜353bp)を突然変異体の右端に結合しなおすと、
そのウイルスは正常にパッケージングされた。さらなる突然変異分析により、短
い反復した位置依存的配列がAd5ゲノムの左端に同定された。その反復配列は
、それがゲノムのどちらかの端に存在するのであれば、1コピーで効率のよいパ
ッケージングに足りるが、それをAd5 DNA分子の内部に向けて移動させた
場合は、そうでないことが見出された。
【0099】 突然変異型のパッケージングシグナルを使用することにより、様々な効率でパ
ッケージングされるヘルパーウイルスを作成することが可能である。通例、それ
らの突然変異は点変異または欠失である。低効率パッケージングのヘルパーウイ
ルスをヘルパー細胞中で生育させると、ウイルスは野生型ウイルスと比較すると
低い割合ではあるもののパッケージングされて、ヘルパーの増殖を可能にする。
しかし、これらのヘルパーウイルスを野生型パッケージングシグナルを含むウイ
ルスと一緒に細胞中で生育すると、野生型パッケージングシグナルが突然変異型
よりも優先して認識される。制限量のパッケージング因子なら、ヘルパーと比較
して野生型シグナルを含有するウイルスが選択的にパッケージングされる。その
選択性が十分に大きいなら、ほぼ均一に近い株が得られるはずである。
【0100】 b)レトロウイルス レトロウイルスは、逆転写の過程により感染細胞内でそのRNAを二本鎖DN
Aに変換する能力を特徴とする一群の一本鎖RNAウイルスである。次に、その
結果生じたDNAは、細胞の染色体にプロウイルスとして安定に組み込まれ、ウ
イルスタンパク質の合成を指示する。組み込みの結果、ウイルス遺伝子配列は受
容細胞とその子孫に保持されることになる。レトロウイルスゲノムは、それぞれ
キャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、エンベロープ成分をコードする3つ
の遺伝子、gag、polおよびenvを含有する。gag配列の上流に見出さ
れるΨと呼ばれる配列は、ウイルス粒子へのゲノムのパッケージングのシグナル
として機能する。2つの末端反復(LTR)配列がウイルスゲノムの5'末端と 3'末端に存在する。これらは強力なプロモーター配列とエンハンサー配列を含 有し、宿主細胞ゲノムへの組込みにも必要である。
【0101】 レトロウイルスベクターを構築するために、一定のウイルス配列に代えて、プ
ロモーターをコードする核酸をウイルスゲノムに挿入して、複製欠損性のウイル
スを作成する。ウイルス粒子を産生するために、gag、polおよびenv遺
伝子を含有するがLTR成分とΨ成分を含有しないパッケージング細胞株を構築
する。レトロウイルスLTR配列とΨ配列と共にヒトcDNAを含有する組換え
プラスミドをこの細胞株に(例えばリン酸カルシウム沈殿法によって)導入する
と、そのΨ配列によって組換えプラスミドのRNA転写物のウイルス粒子へのパ
ッケージングが可能になり、次いでそれらのウイルス粒子が培養培地に分泌され
る。組換えレトロウイルスを含有する培地を集め、随意に濃縮して、遺伝子導入
に使用する。レトロウイルスベクターは多種多様な細胞タイプに感染できる。し
かし、多くのタイプのレトロウイルスの組み込みと安定な発現には、宿主細胞の
分裂が必要である。
【0102】 最近、レトロウイルスベクターの特異的ターゲティングが可能なように設計さ
れた方法が、ウイルスエンベロープへのガラクトース残基の化学的付加によるレ
トロウイルスの化学修飾に基づいて開発された。この修飾によりアシアログリコ
プロテインレセプターを介した肝細胞などの細胞の特異的感染が可能になりうる
が、これは望ましいはずである。
【0103】 レトロウイルスエンベロープタンパク質と特定の細胞レセプターに対するビオ
チニル化抗体を使用するもう一つの組換えレトロウイスのターゲティング法が設
計された。これらの抗体はストレプトアミジンを使ってビオチン成分を介して連
結された(Rouxら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86
:9079−9083,1989)。主要組織適合複合体クラスIおよびクラス
II抗原に対する抗体を使って、それらの表面抗原を有する種々のヒト細胞の感
染が、インビトロで、エコトロピックウイルスで実証された。
【0104】 c)アデノ関連ウイルス AAVは約4700塩基対の線状一本鎖DNAを使用する。逆方向末端反復配
列がゲノムの両側にある。ゲノム内に2つの遺伝子が存在して、いくつかの別個
の遺伝子産物をもたらす。第一のcap遺伝子は、3つの異なるビリオンタンパ
ク質(VP)(VP−1、VP−2、VP−3と呼ばれる)を産生する。第二の
rep遺伝子は4つの非構造タンパク質(NS)をコードする。これらrep遺
伝子産物の一つまたはそれ以上がAAV転写のトランス活性化を担っている。
【0105】 AAV中の3つのプロモーターはそのゲノムでの(地図単位で表した)それら
の位置によって名付けられる。これらは左から右にp5、p19およびp40で
ある。転写によって6つの転写物が生成し、3つのプロモーターのそれぞれで2
つが開始されて、それぞれのペアの一つがスプライスされる。地図単位42〜4
6に由来するスプライス部位は各転写物で同じである。4つの非構造タンパク質
はより長い転写物から派生するようであり、3つのビリオンタンパク質はすべて
最小の転写物から生じる。
【0106】 AAVはヒトのどんな病的状態とも関係しない。興味深いことに、効率のよい
複製に、AAVは単純ヘルペスウイルスIおよびII、サイトメガロウイルス、
仮性狂犬病ウイルス、そしてもちろんアデノウイルスなどのウイルスからの「援
助(helping)」機能を必要とする。これらヘルパーのうち最もよく特徴
づけられているものはアデノウイルスであり、このウイルスに関する多くの「初
期」機能はAAV複製を助けることが示されている。AAV repタンパク質
の低レベルな発現がAAV構造の発現を阻止していると考えられ、ヘルパーウイ
ルス感染がこの遮断を取り除くのだと思われる。
【0107】 AAVベクターの末端反復配列はAAVまたは修飾AAVゲノムを含有するp
201(Sarnulskiら,J.Viol.,61(10):3096−3
101,1987;参考文献として本明細書の一部を構成する)などのプラスミ
ドの制限エンドヌクレアーゼ消化によって、あるいは当業者に知られている他の
方法、例えばAAVの公表された配列に基づく末端反復配列の化学的または酵素
的合成(ただしこれに限るわけではない)などによって得ることができる。通常
の当業者は、欠失分析などの周知の方法により、機能(すなわち安定で部位特異
的な組み込み)を可能とするのに必要なAAV ITRの最小の配列または部分
を決定できる。また通常の当業者は、その配列の軽微な修飾のいずれが、安定で
部位特異的な組み込みを指図するという末端反復配列の能力を保ったまま、許容
されうるかも決定できる。
【0108】 AAV系ベクターはインビトロでの遺伝子送達用媒体として安全で効果的であ
ることがわかっており、これらのベクターは、エクスビボとインビボの両方で、
有望な遺伝子治療における広範な応用のために、開発中であり、前臨床段階と臨
床段階で試験されている。
【0109】 肺での、AAVを媒介とする効率のよい遺伝子の移入と発現は、嚢胞性線維症
の治療に関する臨床試験につながった(CarterおよびFlotte,An
n.N.Y.Acad.Sci.,770:79−90,1995;Flott
eら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:10613−1
0617,1993)。同様に、骨格筋へのジストロフィン遺伝子のAVV媒介
遺伝子送達による筋ジストロフィーの治療、脳へのチロシンヒドロキシラーゼ遺
伝子送達によるパーキンソン病の治療、肝臓への第IX因子遺伝子送達による血
友病Bの治療、そしてもしかすると心臓への血管内増殖因子遺伝子による心筋梗
塞の治療の見込みは、これらの器官におけるAAV媒介性の導入遺伝子発現が極
めて効率的であることが最近明らかにされているので、有望であると思われる(
Fischerら,J.Viol.,70:520−532,1996;Flo
tteら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:10613
−10617,1993;Kaplittら,Nat.Genet.,8:14
8−153,1994;Kaplittら,Arm Thord.Surg.,
62:1669−1676,1996;Koeberlら,Proc.Natl
.Acad.Sci.USA,94:1426−1431,1997;McCo
wnら,Brain Res.,713:99−107,1996;Pingら
,Microcirculation,3:225−228,1996;Xia
oら,J.Virol.,70:8098−8108,1996)。
【0110】 d)他のウイルスベクター 他のウイルスベクターも本発明の発現コンストラクトとして使用できる。ワク
シニアアウイルス(Ridgeway,Vectors:A sruvey o
f molecular cloning vectors and thei
r uses(Rodriguez RL,Denhardt DT編,ストー
ンハム,Butterworth社,1988)の467−492頁;Baic
hwalおよびSugden,Gene Transfer(Kucherla
pati R編,ニューヨーク,Plenum Press社,1986)の1
17−148頁;Couparら,Gene,68:1−10,1988)、カ
ナリア痘瘡ウイルス、レンチウイルスなどのウイルスに由来するベクターを使用
できる。
【0111】 6.細胞標的 本発明の方法とベクターは、哺乳動物内の多種多様な細胞、器官および組織を
標的とするのに使用できる。
【0112】 いくつかの態様では、ここに記載する発現コンストラクトが癌の処置に使用さ
れる。標的とする細胞は腫瘍細胞、腫瘍内の細胞、または腫瘍近くの細胞のいず
れでもよい。腫瘍は随意に脳、肺、肝臓、脾臓、腎臓、膀胱、リンパ節、小腸、
膵臓、結腸、胃、胸部、子宮内膜、前立腺、精巣、外陰、子宮頸、卵巣、皮膚、
頭頚部、食道、骨髄または血液にあってよい。通常の当業者は与えられた腫瘍タ
イプで発現させるべき適切な治療用遺伝子を容易に認識するだろう。
【0113】 これに代わる態様では、癌以外の医学的状態が治療される。例えば、本発明は
著しく効果的なタンパク質代償療法に備えている。そのような場合、特定のタイ
プの細胞、組織または器官を、その対象内で発現不足であるタンパク質の発現の
標的にでき、そのタンパク質の活性がその特定の細胞タイプ、組織または器官に
限定される場合はとりわけそうである。ここでも通常の当業者はどの細胞が最も
適当な標的になるかを認識できるだろう。
【0114】 発現コンストラクトは対象細胞にインビトロ、エクスビボまたはインビボ法で
導入できる。単離された細胞のトランスフェクションまたは形質導入の方がしば
しば効果的なので、ほとんどの遺伝子治療は現在、エクスビボで行なわれている
。導入方法の選択は標的とされる細胞タイプ、組織または器官ならびに選択した
その送達媒体に依存するだろう。通常の当業者はそのような選択を容易にこなし
うる。
【0115】 本発明の発現コンストラクトは活性になるのに誘導が必要なので、多くの場合
、本発現コンストラクトは、対象の身体のうち、発現を望む細胞、組織または器
官ちょうどそのものよりも広い部分に送達してもよい。次に、移入された発現コ
ンストラクトの発現を誘導する活性化条件への対象のばく露を制限することによ
って、発現の特異性を達成できる。多くの場合、それが好ましい。例えば、放射
線療法への対象のばく露は、必要な領域だけに限定することが好ましい。高温の
適用も一般的にはその範囲に限定されるだろう。他の態様では、活性化条件が標
的とした細胞そのものに固有の条件でありうる。例えば、発現コンストラクトが
低酸素応答配列を含有する誘導性プロモーターを有する場合は、腫瘍の低酸素環
境が発現を誘発するだろう。そのような場合、その結果生じる発現は、必然的に
、たとえ発現コンストラクトの送達がそうでなくとも、極めて局在化するだろう
【0116】 7.併用療法 本発明の発現コンストラクトは、1またはそれ以上の伝統的臨床治療法と有利
に組み合わせうる。現行の癌研究の一つの目標は、化学療法と放射線療法の有効
性を向上させる方法を発見することである。一つの方法は、そのような伝統的治
療法を遺伝子治療と組み合わせることによる。例えば単純ヘルペスチミジンキナ
ーゼ(HS−tk)遺伝子は、レトロウイルスベクター系で脳腫瘍に送達される
と、抗ウイルス剤ガンシクロビルへの感受性をうまく誘導する。しかし、伝統的
癌療法と組み合わせた遺伝子治療の効果的な使用は、遺伝子がいったん標的細胞
に移入されたら、その遺伝子の臨床的に有意な発現が必要なことによって妨げら
れてきた。
【0117】 本発明の方法と組成物を用いて細胞を殺し、細胞増殖を抑制し、転移を抑制し
、腫瘍サイズを減少させ、腫瘍細胞の悪性表現型をその他の方法で覆し、または
低下させるには、一般的には、本発明の発現コンストラクトを「標的」細胞に導
入し、高温または誘導性プロモーターを活性化する他の条件の適用によって発現
が誘導されるだろう。この遺伝子治療は癌の処置に有効な他の薬剤を含んでなる
組成物と併用できる。これらの組成物は、細胞を殺すか、その増殖を抑制するの
に有効な総量で与えられるだろう。この過程は、発現コンストラクトと薬剤また
は因子とを、その細胞に同時に導入することを伴いうる。これは、その細胞を、
両方の薬剤を含む単一の組成物または医薬製剤と接触させるか、その細胞を2つ
の別個の組成物または製剤(ここに一方の組成物は発現コンストラクトを含み、
他方はその薬剤を含む)に同時にばく露することによって達成できる。
【0118】 あるいは、遺伝子治療/高温処置を他の薬剤処置に先立って、またはその後に
、数分から数週間の範囲の間隔で行なってもよい。他の薬剤と発現コンストラク
トとが細胞に個別に適用される態様では、一般的には、薬剤と発現コンストラク
トが細胞に対して依然として有利な併用効果を発揮できるように、各送達時の間
に有意な期間が経過していないことが保証されるだろう。そのような場合は、互
いに約12〜24時間以内、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に細胞を
両方のモダリティーと接触させるだろうと予想され、約12時間だけの遅延時間
が最も好ましい。場合によって、処置期間をかなり延ばすことが望ましい場合が
あり、その場合は各投与の間に数日(2、3、4、5、6または7日)ないし数
週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過する。
【0119】 発現コンストラクトまたは他の薬剤の2回以上の投与が望ましいことも考えら
れる。発現コンストラクトを「A」とし、他の薬剤を「B」として以下に例示す
るように、様々な組み合わせを使用できる。 A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B B/A/A A
/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B
/A/B A/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A
/A/B B/B/B/A A/A/A/B B/A/A/A A/B
/A/A A/A/B/A A/B/B/B B/A/B/B B/B
/A/B 他の組み合わせも考えられる。ここでも、細胞を殺すために、両方の薬剤を細胞
を殺すのに有効な総量で細胞に送達する。
【0120】 併用療法での使用に適した薬剤または因子は、細胞に適用した時にDNA損傷
を誘発する任意の化学化合物もしくは処置方法である。そのような薬剤と因子に
は、DNA損傷を誘発する放射線と電磁波、例えばγ照射、X線、UV照射、マ
イクロ波、電子発光などが含まれる。
【0121】 本発明の一態様では、遺伝子治療と併用される放射線療法が外部ビーム放射線
を構成する。外部ビーム放射線処置は通例、高エネルギーx線ビームなどの高エ
ネルギー放射線を与える。
【0122】 あるいは、内部放射または密封小線源療法を遺伝子治療と併用してもよい。密
封小線源療法を施す方法には、照射線源の洞内または組織間腔への設置、コロイ
ド溶液の点滴注入、腸管外または経口投与がある。密封線源は金属、線材、管、
針などに封入される。非密閉放射活性源は懸濁液または溶液中に調製される。
【0123】 封入された放射活性元素は体腔に設置されるか、適当なアプリケーターで組織
に直接挿入される。アプリケーターは通常、体腔または組織内に外科的に、もし
くは蛍光透視法を使って設置される。通常、プラスチックまたは金属製の管であ
るアプリケーターは、それを所定の位置に保持するために、腫瘍の中またはその
近くに縫合しうる。その後、アプリケーターに放射活性同位体が設置される(「
後充填法」)。放射性インプラントは舌、唇、胸部、膣、子宮頸、子宮内膜、直
腸、膀胱および脳の癌の処置に使用される。封入された線源は永続的インプラン
トとして患者内に放置してもよい。放射活性物質の小さいビーズの「接種(se
eding)」は、限局性前立腺癌と限局性であるが手術が不可能な肺がんの処
置に使用される方法である。
【0124】 「化学療法剤」とも呼ばれる様々な化学化合物はDNA損傷を誘発するように
機能し、それらはすべてここに開示する併用処置法に有用であると考えられる。
有用であると予想される化学療法剤には、例えばアドリアマイシン、5−フルオ
ロウラシル(5FU)、エトポシド(VP−16)、カンプトセシン、アクチノ
マイシンD,マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、さらには過酸化水
素などが含まれる。本発明は、放射線に基づくものか現実の化合物であるかを問
わず1つまたはそれ以上のDNA損傷剤の併用、例えばX線とシスプラチンの併
用や、シスプラチンとエトポシドの併用なども包含する。
【0125】 例えば、本発明に従って癌を処置する場合は、腫瘍細胞を発現コンストラクト
の他にある薬剤とも接触させ、高温の適用によりその遺伝子発現が誘導されるだ
ろう。これは、高温を腫瘍部位に局所的に、またはその個体の全身に適用するこ
とによって達成しうる。この処置はX線、UV光、γ線、さらにはマイクロ波な
どの放射線による腫瘍の照射と併用できる。あるいは、アドリアマイシン、5−
フルオロウラシル、エトポシド、カンプトセシン、アクチノマイシンD,マイト
マイシンC、より好ましくはシスプラチンなどの化合物を含んでなる医薬組成物
の治療有効量をその対象に投与することによって、腫瘍細胞を薬剤と接触させて
もよい。薬剤は、それを上述のような治療用発現コンストラクトと組み合わせる
ことにより、併用治療用の組成物またはキットとして調製し、使用できる。
【0126】 核酸、具体的にはDNAを直接架橋する薬剤はDNA損傷を容易にして、本発
明の発現コンストラクトとの相乗的な抗新生物性の組み合わせにつながることが
予想される。シスプラチンのような薬剤と他のDNAアルキル化剤を使用できる
。シスプラチンは経口的には吸収されないので、静脈内、皮下、腫瘍内または腹
腔内注射によって送達されなければならない。
【0127】 DNAに損傷を与える薬剤には、DNA複製、有糸分裂、染色体分離を妨害す
る化合物も含まれる。そのような化学療法化合物には、ドキソルビシンとも呼ば
れるアドリアマイシン、エトポシド、ベラパミル、ポドフィロトキシンなどがあ
る。これらの化合物は臨床的に新生物の処置に広く使用されていて、これらの化
合物はアドリアマイシンについては21日間隔で25〜75mg/m2の用量で 静脈内にボーラス注射で、エトポシドについては100mg/m2までの用量で 静脈内に、経口的には静脈内用量の二倍で投与される。
【0128】 核酸前駆体とサブユニットの合成と忠実度を乱す薬剤もDNA損傷をもたらす
。いくつかの核酸前駆体が開発されている。広範な試験を受けていて容易に入手
できる薬剤はとりわけ有用である。5−フルオロウラシル(5−FU)などの薬
剤は、新生物組織によって優先的に使用されるので、この薬剤は新生物細胞への
ターゲティングにとりわけ有用である。毒性は極めて高いものの、5−FUは広
範な担体に適用でき、局所投与も含むが、一般的には450〜1000mg/m 2 /日の用量で静脈内投与が使用される。
【0129】 DNA損傷を引き起こす他の因子で広く使用されてきたものには、γ線、X線
として一般に知られてきたものおよび/または腫瘍細胞への放射性同位体の指向
的送達がある。マイクロ波やUV照射など他の形態のDNA損傷因子も予想され
る。これらの因子はすべて、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製と修復およ
び染色体の組立と維持に対する広範な損傷を与えるに違いない。X線に関する線
量範囲は、長期間(3〜4週間)にわたる50〜200レントゲンの一日線量か
ら、2000〜6000レントゲンの単回線量までにわたる。放射性同位体の用
量範囲は多様で、その同位体の半減期、放射される放射線の強度とタイプ、新生
物細胞による取り込みに依存する。
【0130】 当業者は「Remington's Pharmaceutical Sci ences」の第15版、第33章、特に624〜652頁を参照されたい。処
置する対象の状態に依存して、用量には多少の変動が必然的に起こる。投与の責
任者は、いずれにせよ、個々の対象について適当な用量を決定することになる。
さらに、ヒトへの投与については、製剤がFDA生物製剤局(FDA Offi
ce of Biologics)規格によって要求される滅菌性、発熱原性、
総括安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0131】 本発明の治療用発現コンストラクトの癌患者への局所送達は、処置される臨床
的疾患を抑制するために治療有効遺伝子を送達する好ましい方法である。同様に
、化学療法または放射線療法は、その対象の身体の特定の患部領域に向けること
ができる。あるいは、一定の状況、例えば広範な転移が起こっている場合などで
は、発現コンストラクトおよび/または薬剤の全身送達が適当な場合もある。
【0132】 遺伝子治療と化学療法または放射線療法の併用に加えて、複数の遺伝子治療の
併用も有利だと予想される。例えば、同時のp53とp16突然変異のターゲテ
ィングは向上した抗がん処置をもたらしうる。例えばp2、Rb、APC、DC
C、NF−1、NF−2、BRCA2、p16、FHIT、WT−1、MEN−
I、MEN−II、BRCA1、VHL、FCC、MCC、ras、myc、n
eu、raf、erb、src、fms、jun、trk、ret、gsp、h
st、bclおよびablなど、他の腫瘍関連遺伝子はいずれも、この方法でタ
ーゲティングできる。
【0133】 8.医薬組成物と投与の経路 本発明の治療用組成物はインビトロ、エクスビボまたはインビボで投与できる
と予想される。したがって、複合体を意図した応用に適した医薬組成物として調
製することが望ましいだろう。一般にこれには、基本的に発熱原とヒトまたは動
物にとって有害でありうる他の不純物を一切含まない医薬組成物を調製する必要
がある。また一般的には、複合体を安定にし複合体が標的細胞に取り込まれうる
ように、適当な塩類と緩衝剤を使用することが望まれるだろう。
【0134】 本発明の組成物は、薬学上許容できる担体または水性媒質中に溶解もしくは分
散した、有効量の発現コンストラクトまたは発現コンストラクトを保持するウイ
ルスベクターもしくはリポソームを含んでなる。そのような組成物は接種物と呼
ぶこともできる。「薬学上または薬理学上許容できる」という表現は、動物また
はヒトに適宜投与したときに、副作用、アレルギー反応または他の有害反応をも
たらさない分子状の物質または組成物を指す。ここでいう「薬学上許容できる担
体」には、任意のすべての溶媒、分散媒質、被覆剤、抗菌および抗カビ剤、等張
性吸収遅延剤などがある。医薬活性物質のそのような媒体と薬剤の使用は当技術
分野では周知である。従来の媒体または薬剤が活性成分と配合禁忌である場合以
外は、治療用組成物におけるその使用が予想される。補助活性成分も本組成物に
組み込むことができる。
【0135】 遊離塩基または薬理学上許容できる塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキ
シプロピルセルロースなどの界面活性剤と適当に混合した水中に調製できる。分
散液はグリセロール、液体ポリエチレングリコール、それらの混合物中と、油中
に調製できる。通常の貯蔵および使用条件では、これらの調製物は微生物の成長
を防止するために保存剤を含有する。
【0136】 本発明の治療用組成物には、ヒトへの投与を含む医療用の古典的医薬製剤が含
まれうる。本発明の治療用組成物の投与は、標的組織または細胞がその経路で利
用できる限り、任意の一般的経路によるだろう。これには経口、経鼻、口腔内、
直腸、膣または局所経路が含まれる。あるいは、投与は同所性、皮内、皮下、筋
肉内、腹腔内または静脈内注射によるだろう。そのような組成物は通常、生理学
的に許容できる担体、緩衝剤または他の添加剤を含む医薬上許容できる組成物と
して投与されるだろう。腫瘍への適用には、直接腫瘍内注射、切除腫瘍床の注射
、局所的(例:リンパ)または全身投与が考えられる。患部(例えば腫瘍または
腫瘍部位)へのカテーテルを通して数時間または数日にわたる持続灌流を行なう
ことも望ましいかもしれない。
【0137】 本発明の治療用組成物は注射用組成物の形で液体の溶液または懸濁液として有
利に投与され、また注射に先立って液体に溶解または懸濁するのに適した固形も
調製できる。これらの調製物は乳化してもよい。そのような目的のための典型的
組成物は薬学上許容できる担体を含む。例えばその組成物はリン酸緩衝食塩水1
mlにつき約100mgのヒト血清アルブミンを含有しうる。他の薬学上許容で
きる担体には水溶液、非毒性添加剤があり、塩類、保存剤、緩衝液などを使用で
きる。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物
油、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には水、アル
コール/水溶液、食塩溶液、非経口用媒体、例えば塩化ナトリウム、リンゲルデ
キストロースなどがある。静脈内用媒体には水分および栄養補給剤がある。保存
剤には抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスが含まれる。本医薬
組成物の様々な成分のpHと正確な濃度は周知のパラメーターに従って調節され
る。
【0138】 経口投与に適した他の製剤も考えられる。経口用製剤には、例えば製薬用のマ
ンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナ
トリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの典型的添加剤が含まれる。本組
成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤または散剤の形をと
る。経路が局所である場合は、剤形がクリーム剤、軟膏、塗剤またはスプレー剤
でありうる。
【0139】 治療剤の有効量は意図する目標、例えば(i)腫瘍細胞増殖の抑制、(ii)
腫瘍細胞の除去または致死、もしくは(iii)治療用遺伝子を短期間または長
期間発現させるための遺伝子導入などに基づいて決定される。「単位用量」とい
う用語は、対象での使用に適した物理的に分離した単位であって、各単位がその
投与、すなわち適当な経路と処置法に伴って、望ましい応答をもたらすように計
算された治療用組成物の前もって決定された量を含有するものを指す。投与され
るべき量は、処置の回数と単位用量の両方に応じて、処置される対象、その対象
の状態および望まれる結果に依存する。本発明者らは複数の遺伝子治療法を予想
している。
【0140】 ある態様では、治療用遺伝子をコードするベクターを使って癌患者を処置する
。癌の遺伝子治療に使用されるウイルスベクターの典型的な量は106〜1015 PFU/投与(例えば106、107、108、109、1010、1011、1012
1013、1014または1015)であり、その用量は充実性腫瘍内の異なる部位で
の数回の注射に分割される。治療法には、3〜10週間にわたる遺伝子導入ベク
ターの数サイクルの投与も伴う。継続的な治療効果を得るには、数ヶ月から数年
の長期間にわたるベクターの投与が必要かもしれない。
【0141】 本発明のもう一つの態様として、治療用遺伝子をコードするウイルスベクター
を使ってヒトまたは他の哺乳動物を予防接種できる。この予防接種の場合、一般
的には、導入遺伝子の長期間発現が達成され、宿主免疫反応が発達するように、
所望の効果を生むのに有効なウイルスの量がヒトまたは他の哺乳動物に投与され
るだろう。長期免疫反応を誘導するには、一連の注射、例えば初回注射とその後
2回の追加免疫注射で足りると予想される。典型的用量は所望する結果に応じて
106ないし1015PFU/注射になるだろう。低用量の抗原は一般に抗体媒介 性免疫反応を誘発する。治療用組成物の正確な量は医師の判断にも依存し、個々
人に特有である。
【0142】
【実施例】
以下の実施例は本発明を説明することを意図するものであり、特許請求の範囲
を限定するよう解釈すべきではない。
【0143】 実施例1熱ショックプロモーターはリポーター遺伝子の発現を誘導する ベクターコンストラクト 遺伝子発現を誘導するHSP70プロモーターの能力を研究するため、最小熱
ショック(HS)プロモーターか、又は最小CMVプロモーターを、ネオマイシ
ン及びアンピシリン選択可能なマーカーを含むプラスミド中のリポーター遺伝子
の上流に挿入した。HSP70に由来するプロモーターに作動可能な位置で1つ
の多重クローニングサイトを含むプラスミド(M5)の基本的デザインを図1に
示す。M5は、pcDNA3.0(Invitorogen, Inc.)中のCMVプロモータ ーを、最小HSP70Bプロモーター(配列番号1、図10)、StressGen,Inc.
から得たヒト熱ショックタンパク質70B(HSP70B)プロモーターの0 .4kB断片(HindIII-BamH1)で置換した。
【0144】 最小HS及びCMVプロモーターの活性を、プラスミドS8で、ヒトの癌細胞
、MCF7ヒト乳癌細胞、及びDU145ヒト前立腺癌細胞をトランスフェクト
することにより測定した。図1のM5ベクター由来のS8プラスミドは、エンハ
ンスドグリーンフルオレセンスプロテイン(EGFP)をコードする遺伝子に作
動可能に連結した最小HSP70Bプロモーターを含む。S8は、pEGFP−
1(Clonetech, Inc.)からのEGFP遺伝子をM5の多重クローニングサイト に挿入することによって構築した。
【0145】細胞培養及びトランスフェクション ヒトDU−145前立腺癌由来の細胞及びMCF−7ヒト乳癌細胞を、上記S
8ベクターでトランスフェクトした。S8で安定にトランスフェクトした細胞を
単離するために、標準的なリン酸カルシウム沈殿法を用いて培養物をトランスフ
ェクトした。組み込まれたプラスミドを含む細胞を、ネオマイシン存在下におい
て増殖するそれらの能力について選択した。温度コントロールした(±0.1℃
)ウオーターバス中に培養フラスコを完全に沈めることにより、熱ショックを与
えた。 1つの陽性のクローン、クローン4及びポリクローナルラインをMCF7細胞
トランスフェクションからジェネティシンで選択した。1つのポリクローナルラ
インをDU−145細胞トランスフェクションからジェネティシンで選択した。
(それぞれの場合、細胞を2週間ジェネティシンで選択した。)次に、選択した
ラインを分析し、FACSによりソートした。
【0146】陽性セルラインの単離 ヒト熱ショックに反応して高レベルのEGFPを発現する細胞を、従来の連続
希釈法を用い、及び蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)法により選択した
。EGFPの発現をフローサイトメトリーを用いて定量した。エンハンスドグリ
ーンフルオレセンスプロテイン(EGFP)は490ランで励起し、蛍光顕微鏡
下で可視化でき、又はFACSで分析できる。FACA法を用いて、EGFPを
発現する細胞をEGFPを発現しない細胞からソートした。これはジェネティシ
ンで選択したセルラインで行なった。これが必要な理由は、ポリクローナルセル
ラインでは、リポータータンパク質の発現を妨げる方法で組み込まれたS8プラ
スミドを有する集団があるからである。細胞をソートすることによって、これら
の集団は除去するすることができ、更なる分析のための純粋に陽性の集団を残す
【0147】 図2に示すように、EGFPを駆動する最小熱ショックプロモーター(S8)
で安定にトランスフェクトされ、37℃で増殖するDU−145細胞におけるE
GFPからの平均蛍光は10比蛍光単位であった。1時間42℃の熱ショックに
さらした4時間後、平均比蛍光は7−9倍大きくなった。安定にトランスフェク
トされた細胞における比蛍光の変化を測定することによって、次に比遺伝子発現
を定量した。S8プラスミドでトランスフェクトしたMCF7細胞のFACSに
よるソーティングを図3に説明する。
【0148】動力学的研究 熱暴露生き残りの研究を、MCF7細胞が大量の細胞死をおこすことなく加熱
できる最適時間/温度を決めるために行なった。1時間までの40℃及び42℃
の場合、細胞死は無視できることがわかり、3%未満の細胞死であった。44℃
では、僅か30分の間に細胞のほとんど50%が死んだ。 上記の最適生き残り時間を用い、最初の動力学的研究を行なった。トランスフ
ェクトしたMCF7細胞を1時間40℃及び42℃で加熱すると、FACSでア
ッセイした場合、30分間の加熱より多くのEGFPを産性した。加熱後の細胞
の最適回収時間は4時間であった。さらなる回収時間はEGFPのレベルを増加
させなかった。44℃で30分間熱処理した場合、より長い回収時間を要し、8
時間が最大であった。
【0149】様々なセルラインにおける37℃−44℃でのEGFP発現 次の加熱/回収時間を用い、発明者のトランスフェクトしたセルラインのすべ
てにおけるHSP70由来プロモーターにより駆動されるEGFPの誘導性を試
験する動力学的研究で同定した。 40℃−1時間熱処理、4時間回収 42℃−1時間熱処理、4時間回収 44℃−30分熱処理、8時間回収 これらの温度/時間を用いて以下のセルラインをEGFP発現について試験した
。 MCF7:乳癌親セルライン Du145:前立腺癌親セルライン MCF7−S8−P:S8プラスミドでトランスフェクトしたMCF7細胞、ポ
リクローナルライン MCF7−S8−PS1:FACSによりEGFP発現について一度ソートされ
たMCF7−S8−P細胞 MCF7−S8−PS2:FACSによりEGFP発現についてソートされたM
CF7−S8−PS1細胞 MCF7−S8−4:MCF7S8トランスフェクションのクローン4 MCF7−S8−4S1:EGFP発現について一度ソートされたMCF7−S
8−4 Du145−S8−P:S8プラスミドでトランスフェクトされたDu145細
胞、ポリクローナルライン HSP由来プロモーターにより駆動されるEGFPのトランスフェクトされた
ラインからみられる発現を図4に示す。温度が上がるに従い、EGFPの比量も
増加する。これらのデータは、発明者の熱ショックプロモーターが実際に熱に応
答することを示す。しかしがら、37℃でなおEGFPの発現がある。
【0150】 熱ショック後の安定にトランスフェクトされたDU−145細胞におけるEGF
P発現 内的な熱ショックプロモーターの誘導は一過的であり、熱依存性である。最小
HSプロモーターが駆動するEGFP発現(S8)で安定にトランスフェクトさ
れ、FACSで2度選択されたDU−145細胞(DU−S8−PS2細胞)に
様々な時間及び様々な温度で熱ショックを与えた場合、リポーター遺伝子発現は
温度依存的であり、発現は一過性で誘導ストレスの15−24時間後に最大値を
有する(図5)。これらの結果は、そのプロモーターはここで用いた条件下で一
過的に活性化されること、及びEGFPは不安定であることを示す。何故なら蛍
光はこれらの細胞で15−24時間後減少するからである。その最小熱ショック
プロモーター活性は、1時間か2時間の40℃の熱ショックの後、一過的に約3
倍増加する。プロモーター活性は、1時間か2時間の42℃の熱ショックの後、
それぞれ13倍及び25倍増加する。
【0151】熱ショック及びCMVプロモーターの調節下でのEGFP発現の比較 図6に示すデータは、DU−S8−PS2細胞における最小熱ショックプロモ
ーターの活性は、37−43℃の範囲にわたって温度依存性であることを示す。
対照的に、V9,即ちCMVプロモーターがEGFP発現を駆動するベクター(
図7)で安定にトランスフェクトされたDU−145細胞は、最小熱ショックプ
ロモーターでトランスフェクトされ、43℃の熱ショックで誘導された同じ細胞
よりほとんど50%高いレベルのプロモーター活性を発揮する。CMVプロモー
ター活性は、これらの細胞において温度により本質的に影響を受けない。最小H
Sプロモーターの温度依存性はDU−145細胞に特異的ではない。
【0152】実施例2 IL−2の発現はコンストラクトにおけるHIVプロモーター及びtatの使用 により増幅されうる。 最初の増幅剤研究 治療的遺伝子発現を増幅させることができる新規なコンストラクトを含む研究
を行った。増幅剤の考えの原理を証明するために、いくつかのコンストラクトを
製造した。そのコンストラクトは熱ショック誘導性のプロモーターではなく、構
成的なプロモーター、CMVプロモーターを含む。これらのコンストラクトはプ
ラスミドL−27,X14,RR13,Y15及びSS−10である。下の表3
は、各プラスミドに存在するプロモーター/遺伝子及び製造されたIL−2の量
を示す。プラスミドのうち4つは2つの多重クローニングサイトを含むプラスミ
ドから得た。これらの4つのプラスミドにおいて、CMVプロモーターをtat
遺伝子又は多重クローニングサイト(MCS)の上流に挿入し、HIV1又はH
IV2の長い末端反復配列(LTRs)をマウスインターロイキン2(IL−2
)の上流に挿入した。プラスミドX14及びY15を模式的に図9A及び9Bに
示す。L−27プラスミドを対照として用いた。IL−2は、IL−2EASI
Aキット(Medgenix Diagnostics, Fleurus, Belgium)を用い、ELISAによ
り、組織培養上清から測定した。キットの感度は0.1IU/mlと見積もった
。この研究で、SW480細胞を脂質Dosperでトランスフェクトした(実
施例3のトランスフェクションプロトコール参照)。
【0153】
【表3】プラスミド名 プロモーター/遺伝子 IL−2の量(I.U.) 脂質のみ Dosper .48 L−27 CMV/IL−2 15.63 RR13 HIV/IL−2 17.56 CMV/多重クローニングサイト X-14 HIV1/IL−2 173.7 CMV/TAT SS10 HIV2/IL−2 12.83 CMV/多重クローニングサイト Y15 HIV2/IL−2 440.55 CMV/TAT
【0154】 これらの研究から、完全な増幅剤コンストラクトは、CMVプロモーター以上
に発現を増加させることができることがわかる。また、トランス活性化因子の製
造が、この製造の増加に必要である。
【0155】実施例3 熱誘導増幅剤 ベクターコンストラクト 第2のプロモーターを用いて最小HSプロモーターの活性を増加させることが
できるか否かを決定するために、MCF−7細胞を、pC8,pfl2及びp0
07を含む一連のベクターで一過的にトランスフェクトした(図8及び9)。2
つの多重クローニングサイトを含むプラスミドを用いて、最小熱ショックプロモ
ーターをtat遺伝子か多重クローニングサイト(MCS)の上流に挿入し、H
IV1又はHIV2の長い末端反復配列(LTRs)をマウスインターロイキン
2(IL−2)の上流に挿入した。各プラスミドは、ネオマイシン及びアンピシ
リンの選択可能なマーカーをも有する。
【0156】 プラスミドC5からのインターロイキン2(IL−2)コード領域(GenB
ankアクセッションNo.577834参照)を含む0.5kbのEcoRI
断片を、ベクターM5(具体例、実施例1参照)のEcoRI部位に挿入するこ
とによって、先ずプラスミドf11を作った。プラスミドB4527(Tsang et
al., Biotechniques, 20:51-52, 1996, 及びTsang et al., Biotechniques, 22
:68, 1997、これらは本明細書の一部を構成する)からのMCsの上流の0.4 kbのHSP70P断片を含む1kbのBamHI断片を、IL−2コード領域
の上流のHIV1LTRを含むプラスミドDNP−1(Tsang et al., 1996, 及
びTsang et al., 1997)のBamHI中へ挿入することにより、プラスミドC8
を構築した。次に、、HIVtat遺伝子のコード領域を含む0.4kbのNo
tI断片を、C8のNotI部位に挿入することにより、ベクターf12(図9
)を構築した。最小HSP70Bプロモーターを含むその1kBのBamHI断
片を、IL−2コード領域の上流にHIV2LTRを含むプラスミドMNP−7
(Tsang et al., 1996, 及びTsang et al., 1997)に挿入することにより、中間
ベクターD10を構築した。tat遺伝子をコードするその0.4kbのNot
I断片を、D10のNotI部位に挿入することにより、プラスミド007(図
9)を構築した。
【0157】トランスフェクションプロトコール トランスフェクションは、公開された方法に従って行なった(Stopeck, et al
., Cancer Gene Therapy, 5:119-126, 1998)。MCF−7細胞を6ウエル又は 12ウエルプレートにプレートした。翌日、細胞をHanks緩衝食塩水溶液で洗浄 し、1mlのトランスフェクション溶液で置換えた。トランスフェクション溶液
は、血清を含まないOptiMEM(Gibco BRLから)中の、1.25μg又は2.5μg
のプラスミドDNA とDosper(1,3−ジーオレオイルオキシ−2−(6−カルボ キシ−スペルミル)−プロピルアミド、Boehringer Mannheimから)又はDmrie C
(1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチル−ヒドロキシエチルアン モニウムブロマイド、Gibco BRLから)との、4:1脂質対DNA質量比であった。 ウシ胎児血清(FBS)を各ウエルに最終濃度10%(体積/体積)まで直ちに加え
た。Dmrie CはDosperより良い脂質であることがわかった。IL−2定量の前に
細胞を加熱前に24時間そして加熱後24時間インキュベートした。
【0158】熱誘導増幅研究 1セットの実験で、pC8,pf12、又はp007プラスミドでトランスフ
ェクトした細胞を、IL−2発現活性についてアッセイした。IL−2は、IL
−2EASIAキット(Medgenix Diagnostics, Fleurus, Belgium)を用いてE
LISAにより組織培養上清から測定した。そのキットの感度は0.1IU I
L−2/mlと見積もられた。この実験のデータを表4に示す。この表は、MC
F7細胞におけるIL−2発現レベルを示し、同細胞はDosperでトランスフェク
トし、24時間後加熱し、次にトランスフェクションの49時間後ELISAに
よりアッセイした。プラスミドL−27(CMVプラスミドで駆動されるIL−
2を発現する対照のため用いたプラスミド)、007、f12、及びC8をすべ
て試験した。
【0159】
【表4】 IL−2のI.U. 温度 37℃ 39℃ 41℃ 42℃ 44℃ 熱ショック時間 連続 連続 1時間 1時間 0.5時間 脂質単独 2.03 0.50 0.41 0.53 0.53 L−27 14.2 9.88 5.95 9.88 7.80 007 336.76 318.49 334.02 373.74 389.27 F12 8.40 6.88 49.93 60.02 88.13C8 9.19 8.03 11.74 8.73 16.37
【0160】 この研究から、pf12は熱に応答性であり、pC8又はpL−27より大量
の熱ショック増幅剤コンストラクトIL−2を製造することがわかる。37℃で
は、pf12は、CMV駆動対照、L−27より5倍多いIL−2を産性した。
細胞を39℃で一晩熱ショックした場合、pf12は、37℃でのCMV駆動対
照より7倍多いIL−2を産性した。41℃又は42℃で1時間熱ショック処理
すると、37℃でのCMV駆動対照と比べ、26倍も多く増幅剤コンストラクト
からの発現を増加させた。(しかしがら、37℃でのp007プラスミドはすで
にその最大活性に近く、熱で発現レベルを大きくは増加させない。)pf12の
活性も37℃で高いレベルにある。これらの結果は、増幅剤戦略は約37℃及び
約42℃の間の温度での遺伝子発現レベルを増加させ得ることを示す。
【0161】 別の組の実験において、トランスフェクト効率の変化は、CMVプロモーター
がβ−ガラクトシダーゼの上流にあるコントロールプラスミドとのコトランスフ
ェクションにより説明された。これらの実験の一般的なプロトコールは、サブカ
ルチャーの24時間後トランスフェクトし、更に24時間後熱ショック培養し、
培養を交換し、次に、24時間後IL−2の測定のため培地を集めるということ
である。表5に見られるように、CMVプロモーターの活性は熱ショックにより
最小限に影響されるのみであった。最小熱ショックプロモーター活性は37℃に
維持した細胞では非常に小さく、42℃での熱ショックにより20倍以上誘導さ
れた。安定にトランスフェクトされた細胞で見られるように、最小熱ショックプ
ロモーター活性はCMVプロモーターのおよそ半分にすぎなかった。
【0162】
【表5】 インターロイキン−2(IL−2)発現* ベクター プロモーター 37℃ 42℃** 倍(42/37) 比*** L27 CMV−IL2 82.6 93.4 1.1 1.0 C8 HSP−MCS 84.7 70.6 0.8 1.9 HIV1−IL2 f11 HSP−IL2 2.3 54.0 23.7 0.4 (1) f12 HSP−TAT 107.6 347.4 3.2 6.9 (17) HIV1−IL2 007 HSP−TAT 747.5 1642.9 2.2 83.3 (208) HIV1−IL2 * 24時間に細胞タンパク質mgあたり製造されたIL−2のIU値 ** 熱ショックは1時間であった。 *** 42℃での値及びCMV−β−galとのコトランスフェクションを
ベースにする。
【0163】 tat発現がない場合のHIVプロモーターは、CMVプロモーターのそれと
同様であり、熱ショックとほぼ独立であった。しかしがら、最小熱ショックプロ
モーターを用いてtatを発現させる場合、リポーター遺伝子発現は42℃の熱
ショック後、劇的に増加した。熱ショックプロモーター/tat及びHIV1/
IL−2で一過的にトランスフェクトした細胞中では、IL−2産性は37℃に
維持した細胞中での熱ショックプロモーター/MCS及びHIV1/IL−2の
それと同様であった。この活性は、42℃HS後、CMVプロモーター活性それ
自体と比べ3倍以上、ほぼ7倍レベルまで増加した。
【0164】 HSプロモーター/tat及びHIV2/IL−2でトランスフェクトした細
胞は、37℃に維持した及び42℃の熱ショック後の細胞中での実質的なリポー
ター遺伝子発現を示した。IL−2産性により測定した比プロモーター活性は、
CMVプロモーター単独の場合のそれよりも80倍以上大きかった。温度調節を
減少させ、リポーター遺伝子発現は、37℃に維持した細胞における同じ活性に
比べ、42℃熱ショック後約2倍大きかった。
【0165】 リポーター遺伝子発現の温度依存性は第2のプロモーターの存在により影響さ
れなかった。表6に示すように、最小熱ショックプロモーター/tat及びHI
V2/IL−2を含むプラスミドで一過的にトランスフェクトした細胞中でのリ
ポーター遺伝子発現は37及び44℃の間で温度依存的に増加した。これらの結
果は最小熱ショックプロモーターでのみで安定にトランスフェクトした細胞につ
いて図4及び6において見られたのと定性的に類似である。
【0166】
【表6】 IL−2発現(IU/ml)* ベクター プロモーター 37℃ 39℃ 40℃ 41℃ 42℃ 44℃ C8 HSP−MCS 7.2 9.3 6.0 4.8 5.3 7.0 HIV−IL2 fl2 HSP−TAT 40.6 - - - 133.1 - HIV−IL2 007 HSP−TAT 224 222 230 250 375 470 HIV−IL2 MCF7乳癌細胞を示したベクターで一過的にトランスフェクトした;24時間
後1時間熱ショック;熱ショックの24時間後培地を集めIL2を測定した。
【0167】実施例4 動物での研究 ヒトで見られる腫瘍と類似した組織学的特徴及び転移可能性を有するヒト癌の
マウスモデルを、本発明の治療用組成物で治療できる。本発明の1態様では、H
SP70BプロモーターがTATの発現を駆動しており、HIV−1又はHIV
−2プロモーターがEGFP又はIL−2発現を駆動しているリポーターコンス
トラクトで安定にトランスフェクトしたヒト腫瘍細胞を、SCIDマウスに注入
する。腫瘍を適当な大きさ、例えば直径1cmまで成長させた後、その腫瘍を超
音波を用いて約42℃まで加熱する。腫瘍を除去し、組織スライスを作り、EG
FPからの蛍光を測定するか、或いはELISAを用いて腫瘍組織のIL2レベ
ルを測定することによって、遺伝子発現を定量する。本発明の他の態様を用いて
ヒト腫瘍細胞をSCIDマウスに注入する。その腫瘍が適当な測定可能な大きさ
に成長し、腫瘍にDNA−脂質複合体を注入する。超音波を用いて腫瘍を加熱し
、加熱後に時々遺伝子発現を測定する。これらの処置の有効性は、本発明の治療
用組成物の投与の結果として、腫瘍の大きさの減少、転移活性の減少、細胞増殖
の減少、又は腫瘍増殖の停止により示される。
【0168】 本発明の様々な改変及び変形は、本発明の範囲及び思想から離れることなく当
業者に明らかであろう。本発明を具体的な好ましい態様に関して記載したが、特
許請求する該発明はそのような具体的な態様に不当に限定されるべきでないこと
が理解されるべきである。実際、当業者に自明である本発明を実施するための記
載した様式のさまざまな改変は特許請求の範囲内であることを意図する。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 熱ショックプロモーター活性を定量するために使用した基本ベク
ターを示す図。
【図2】 S8プラスミドを安定にトランスフェクトしたDU−145に関
する細胞蛍光活性化細胞選別(FACS)ヒストグラム。
【図3】 三種類のS8トランスフェクトMCF7細胞集団に関するFAC
Sヒストグラム。
【図4】 様々な細胞株でのEGFPの発現をFACSでアッセイした結果
を示すグラフ。
【図5】 2回選別した安定トランスフェクトDU−145細胞(DU−S
8−PS2)における熱ショック後のEGFPの発現を示すグラフ。
【図6】 熱ストレスへのばく露の16時間後の安定トランスフェクトDU
−145細胞におけるEGFPの発現レベルを示すグラフ。
【図7】 Enhanced Green Fluorescence P
rotein(EGFP)をコードする遺伝子に作動可能に連結されたCMVプ
ロモーターを含有するプラスミドV9の概略図。
【図8】 熱ショック反応の増幅を可能にする第二プロモーターを含有する
ベクターのための基本ベクターデザインを示す図。
【図9AB】 HIV−1プロモーターまたはHIV−2プロモーターによっ
て駆動される治療用遺伝子IL−2を含有する増幅因子コンストラクトを示す図
。図9Aは、CMV−TAT−HIV−1−IL2発現カセットを含有するX1
4と呼ばれるプラスミドを示し、図9BはCMV−TAT−HIV−2−IL2
発現カセットを含有するY15と呼ばれるプラスミドを示す。
【図9CD】 HIV−1プロモーターまたはHIV−2プロモーターによっ
て駆動される治療用遺伝子IL−2を含有する増幅因子コンストラクトを示す図
。図9CはHSP−TAT−HIV−1−IL2発現カセットを含有するpfl
2と呼ばれるプラスミドを示し、図9DはHSP−TAT−HIV−2−IL2
発現カセットを含有するp007と呼ばれるプラスミドを示す。
【図10】 StressGen Biotechnology社のp17
30RのBamH1−HindIII断片のDNA配列。この断片は、上記の具
体例、実施例1と3のコンストラクトで使用した約0.4kbの最小HSP70
Bプロモーター断片を含有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12P 21/00 C12R 1:91) //(C12P 21/00 C12N 15/00 A C12R 1:91) 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,L U,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO ,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG, SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,U G,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 デイビッド・ティ・ハリス アメリカ合衆国85718アリゾナ州ツーソン、 ノース・アルバーノン・ウェイ4110番 (72)発明者 エバン・ハーシュ アメリカ合衆国85718アリゾナ州ツーソン、 カミノ・ラ・ゾレラ2321番

Claims (46)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 哺乳動物細胞において選択さたポリヌクレオチドを発現させ
    る方法であって、 (a)(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結した誘導
    性プロモーター;及び (ii)該選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモータ
    ー(該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される) を含む発現コンストラクトを供し; (b)該発現コンストラクトを該細胞中に導入し;そして (c)該細胞を、該誘導性プロモーターを活性化させる条件(該条件は該選択さ
    れたポリヌクレオチドを発現させる)に置く ことを含む方法。
  2. 【請求項2】 該誘導性プロモーターは熱ショックプロモーターであり、該
    誘導性プロモーターを活性化させる条件は高温条件である請求項1に記載の方法
  3. 【請求項3】 該高温条件が、該細胞についてのおおよそ基礎温度〜約42
    ℃の間の温度を含む請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 該高温条件が、約37℃〜約42℃の間の温度を含む請求項
    3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 該高温条件が、約38℃〜約41℃の間の温度を含む請求項
    4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 該高温条件が、約39℃〜約40℃の間の温度を含む請求項
    5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 該熱ショックプロモーターが、HSP70,HSP90、H
    SP60、HSP27、HSP72、HSP73、HSP25、ユビキチン、及
    びHSP28プロモーターよりなる群から選択されるプロモーターに由来する請
    求項2に記載の方法。
  8. 【請求項8】 該誘導性プロモーターが低酸素反応性の要素を含む請求項1
    に記載の方法。
  9. 【請求項9】 該第2のプロモーターが、HIV−1プロモーター及びHI
    V−2プロモーターよりなる群から選択され、該トランス活性化因子がtatで
    ある請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 該選択されたポリヌクレオチドの発現によりポリペプチド
    、タンパク質、リボザイム、アンチセンス核酸が製造される請求項1に記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 該選択されたポリヌクレオチドが、オルニチンデカルボキ
    シラーゼ、アンチザイムタンパク質、p53、p16、neu、IL1,IL2
    、IL4、IL7、IL12、IL15、FLT−3リガンド、GM−CSF,
    G−CSF,IFNγ、IFNα、TNF,HSV−TK,I−CAM1,HL
    A−B7,及びTIMP−3よりなる群から選択されるタンパク質をコードする
    請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 該発現コンストラクトが選択可能なマーカーをコードする
    遺伝子を更に含む請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 該発現コンストラクトが、 (i)該第2プロモーターに作動可能に連結した第2の選択されたポリヌクレオ
    チド;及び (ii)該第1及び第2ポリヌクレオチドの間に配置された内部リボソームエン
    トリー部位、 を更に含む請求項1に記載の方法。
  14. 【請求項14】 該細胞が腫瘍細胞である請求項1に記載の方法。
  15. 【請求項15】 該発現コンストラクトの該細胞中への導入が、リポソーム
    、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、レンチウイルス、単
    純ヘルペスウイルス、及びワクシニアウイルスよりなる群から選択される運搬ビ
    ークルにより媒介される請求項1に記載の方法。
  16. 【請求項16】 該発現コンストラクトの該細胞中への導入が、インビトロ
    で行なわれる請求項1に記載の方法。
  17. 【請求項17】 該発現コンストラクトの該細胞中への導入が、インビボで
    行なわれる請求項1に記載の方法。
  18. 【請求項18】 選択されたポリヌクレオチドの発現生成物の治療的有効量
    を患者に与える方法であって、 (a)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結した誘導性プロ
    モーターを含む第1の発現コンストラクトを供し; ;及び (b)該選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモーター
    (該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される)を含む
    第2の発現コンストラクトを供し; (c)該第1及び第2の発現コンストラクトを該患者の細胞中に導入し;そして
    (d)該細胞を該誘導性プロモーターを活性化させる条件(該選択されたポリヌ
    クレオチドの発現は該条件により誘導される)に置く、 ことを含む方法。
  19. 【請求項19】 該誘導性プロモーターは熱ショックプロモーターであり、
    該誘導性プロモーターを活性化させる条件は、おおよそ基礎温度〜約42℃の間
    の温度を含む請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 該第1及び第2発現コンストラクトが同じベクター上にあ
    る請求項19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 該発現コンストラクトの細胞中への導入がエクスビボで行
    なわれる請求項20に記載の方法。
  22. 【請求項22】 該発現コンストラクトの細胞中への導入がインビボで行な
    われる請求項18に記載の方法。
  23. 【請求項23】 該選択されたポリヌクレオチドの発現生成物が該患者の病
    原体に有害であり、該病原体はウイルス、細菌、真菌、菌類、寄生虫よりなる群
    から選択される請求項18に記載の方法。
  24. 【請求項24】 該選択されたポリヌクレオチドの発現生成物が該細胞の増
    殖を阻害する請求項に記載の方法。
  25. 【請求項25】 該選択されたポリヌクレオチドの発現生成物が該患者の欠
    損タンパク質を置換する請求項18に記載の方法。
  26. 【請求項26】 該選択されたポリヌクレオチドの発現生成物が神経再生を
    促進する請求項18に記載の方法。
  27. 【請求項27】 哺乳動物細胞において癌を処置する方法であって、 (a)(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結した誘導
    性プロモーター;及び (ii)該選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモータ
    ー(該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される) を含む発現コンストラクトを供し; (b)該発現コンストラクトを腫瘍細胞中に導入し;そして (c)該腫瘍細胞を該誘導性プロモーターを活性化させる条件(該条件は該選択
    されたポリヌクレオチドを発現させ、選択されたポリヌクレオチドの発現生成物
    は該腫瘍細胞の増殖を抑制するのに有効な量発現する)に置く、 ことを含む方法。
  28. 【請求項28】 該誘導性プロモーターは熱ショックプロモーターであり、
    該誘導性プロモーターを活性化させる条件は、おおよそ基礎温度〜約42℃の間
    の温度を含む高温条件である請求項27に記載の方法。
  29. 【請求項29】 外的ビーム照射療法、短距離療法、化学療法、及び外科手
    術よりなる群から選択される、癌の治療のための、少なくとも1つの確立された
    治療形で該腫瘍細胞を処置することを更に含む請求項27に記載の方法。
  30. 【請求項30】 (d)細胞を高温条件に置いた後、腫瘍細胞をラジオプロ
    テクターWR−33278又はWR−1065で処理し;そして (e)最後に、照射療法で該腫瘍細胞を処置すること(該選択されたポリヌクレ
    オチドはオルニチンデカルボキシラーゼアンチザイムタンパク質をコードする)
    を更に含む請求項27に記載の方法。
  31. 【請求項31】 該哺乳動物がヒトである請求項27に記載の方法。
  32. 【請求項32】 該癌が、脳、肺、肝臓、膀胱、脾臓、腎臓、リンパ、結節
    、小腸、膵臓、血液細胞、結腸、胃、乳房、子宮内膜、前立腺、睾丸、卵巣、皮
    膚、外陰、頚部、頭及び首、食道、骨髄、及び血液の癌よりなる群から選択され
    る請求項27に記載の方法。
  33. 【請求項33】 (a)(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作
    動可能に連結した誘導性プロモーター;及び (ii)選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモーター
    (該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される) を含む発現コンストラクトを供し; (b)該発現コンストラクトを哺乳動物細胞中に導入し;そして (c)該細胞を該誘導性プロモーターを活性化させる条件に置く ことを含む哺乳動物細胞において免疫応答を誘発する方法であって、 該条件は該選択されたポリヌクレオチドを発現させ、選択されたポリヌクレオ
    チドの発現生成物は該哺乳動物において免疫応答を誘発するのに効果的な量発現
    され、該免疫応答は体液性免疫応答及び細胞性免疫応答よりなる群から選択され
    る方法。
  34. 【請求項34】 該誘導性プロモーターは熱ショックプロモーターであり、
    該誘導性プロモーターを活性化させる条件は、おおよそ基礎温度〜約42℃の間
    の温度を含む高温条件である請求項33に記載の方法。
  35. 【請求項35】 免疫応答が該細胞に対して行なわれる請求項33に記載の
    方法。
  36. 【請求項36】 化学療法、外的ビーム照射療法、短距離療法、及び外科手
    術よりなる群から選択される、癌の治療のための、確立された治療形で該細胞を
    処置することを更に含む請求項35に記載の方法。
  37. 【請求項37】 該哺乳動物がヒトである請求項33に記載の方法。
  38. 【請求項38】 哺乳動物の遺伝物質を改変する方法であって、 (a)(i)トランス活性化因子をコードする遺伝子に作動可能に連結した誘導
    性プロモーター;及び (ii)該選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモータ
    ー(該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される) を含む発現コンストラクトを供し; (b)該発現コンストラクトを該哺乳動物の細胞中に導入する、 ことを含む方法。
  39. 【請求項39】 (a)トランス活性化因子をコードする遺伝子; (b)該遺伝子に作動可能に連結した誘導性プロモーター; (c)選択されたポリヌクレオチド (d)該選択されたポリヌクレオチドに作動可能に連結した第2のプロモーター
    (該第2のプロモーターは該トランス活性化因子によって活性化される) を含む発現コンストラクト。
  40. 【請求項40】 該誘導性プロモーターは熱ショックプロモーターであり、
    該選択されたポリヌクレオチドの発現は高温条件により誘導され、高温条件は約
    37℃〜約42℃の間の温度を含む請求項39に記載の発現コンストラクト。
  41. 【請求項41】 該熱ショックプロモーターが、HSP70,HSP90、
    HSP60、HSP27、HSP72、HSP73、HSP25、ユビキチン、
    及びHSP28プロモーターよりなる群から選択されるプロモーターに由来する
    請求項40に記載の発現コンストラクト。
  42. 【請求項42】 該誘導性プロモーターが低酸素反応性の要素を含む請求項
    39に記載の発現コンストラクト。
  43. 【請求項43】 該第2のプロモーターが、HIV−1プロモーター及びH
    IV−2プロモーターよりなる群から選択され、該トランス活性化因子がtat
    よりなる群から選択される請求項39に記載の発現コンストラクト。
  44. 【請求項44】 該選択されたポリヌクレオチドの発現によりポリペプチド
    、タンパク質、リボザイム、アンチセンス分子が製造される請求項39に記載の
    発現コンストラクト。
  45. 【請求項45】 該発現コンストラクトが、 (i)該第2プロモーターに作動可能に連結した第2の選択されたポリヌクレオ
    チド;及び (ii)該第1及び第2の選択されたポリヌクレオチドの間に配置された内部リ
    ボソームエントリー部位 を更に含む請求項39に記載の発現コンストラクト。
  46. 【請求項46】 請求項39に記載の発現コンストラクトを含む細胞。
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