JP2001351688A - 電池・キャパシタ複合素子 - Google Patents

電池・キャパシタ複合素子

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リチウムイオン電池と電気二重層キャパシタ
の両機能を素子レベルで複合(ハイブリッド化)させる
とともに、各機能の構成要素を互いに共通化することに
よる構成の合理化を可能にする。 【解決手段】 電気二重層キャパシタ2を電池1内の構
成の一部たとえば密閉容器11、セパレータ17、電解
液、集電体の一部または全部を共用させる形でその電池
1内に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は電池・キャパシタ
複合素子に関し、とくにリチウムイオン電池と電気二重
層キャパシタを並列接続状態で組み合わせた複合素子に
適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば携帯電話などの内蔵電池として
使用されているリチウムイオン電池は、エネルギー密度
が高く放電寿命は長いが、出力電流密度が低く大電流用
途には適していないという特性があった。回路的に見る
とリチウムイオン電池は内部インピーダンスが高く、こ
のことがそのリチウムイオン電池の利用分野を狭めた
り、あるいは使いにくくしたりする阻害要因となってい
た。
【0003】他方、その電池の負荷となる携帯電話など
の電子機器は、たとえば間欠通電などの省電力化によっ
て総平均的な消費電力は低減化されつつあるが、その反
面、間欠的に大電流を必要とするパルス性の負荷特性を
持つようになってきた。
【0004】このパルス性負荷に対応するためには、リ
チウムイオン電池に大容量キャパシタを並列接続して見
かけ上の内部インピーダンスを低くすることが有効であ
る。そこで、電池と大容量キャパシタを並列接続状態で
包装し一体化した電池・キャパシタ集合素子が提供され
ている(たとえば特開平10−294135公報参
照)。
【0005】この電池・キャパシタ集合素子は、図8に
その構造モデルを示すように、それぞれ単独で構成され
た電池1とキャパシタ2の各電極端子18,19と2
8,29をリード線31で共通外部端子32,33に接
続するとともに、全体を包装体で囲って一体化すること
により、外見的に単一の素子3’として使用できるよう
にしたものである。
【0006】図8において、電池1はリチウムイオン電
池であって、そのセル要素は、コバルト酸リチウムを主
剤とする正極合剤13と黒鉛を主剤とする負極合剤15
をセパレータ17を介して電解液中で対峙させることに
より形成される。このセル要素は、正極集電体14や負
極集電体16などとともに、電池容器11内に密閉収納
されている。
【0007】キャパシタ2は電気二重層キャパシタであ
って、静電容量を形成するセル要素は、一対の電極23
と25をセパレータ27を介して電解液中で対峙させる
ことにより形成される。このセル要素は、上記電池1の
場合と同様、電極集電体24,26などとともに、キャ
パシタ容器21内に密閉収納されている。
【0008】上記電池1とキャパシタ2は包装により合
体されて、外見的に単一構成の電池・キャパシタ集合素
子3’を形成する。負荷4への接続はその集合素子3’
の共通外部端子32,33にて行う。
【0009】上述した電池・キャパシタ集合素子3’
は、図9にその等価回路を示すように、電池1の方は高
い内部抵抗Rbを呈するが、この電池1に並列接続され
たキャパシタ2の方は、その電池1に比べて、大幅に低
い内部抵抗Rpを呈することができる。したがって、両
者が並列接続された上記集合素子3’は、キャパシタ2
側の低内部抵抗Rpにより、電池1を単独で使用する場
合よりも大幅に低い内部抵抗を呈し、低内部インピーダ
ンスZiの電池として使用することができる。これによ
り、パルス性負荷への適合性を高めることができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た技術には、次のような問題のあることが本発明者によ
りあきらかにされた。すなわち、上述した電池・キャパ
シタ集合素子3’は、外見上は単一の構成体であるが、
その構成要素である電池1とキャパシタ2はそれぞれ、
あらかじめ単体の形で個別に構成された独立完成品であ
る。これにより、上記集合素子3’の外形サイズおよび
重量は、共に独立完成品である電池1とキャパシタ2を
単純合算したものに、両者を合体させるための包装分を
若干加えたものとなる。このため、上記集合素子3’の
小型・軽量化をはかる場合は、上記電池1と上記キャパ
シタ2の完成品状態を個別に小型・軽量化する必要があ
る。しかし、その個別の完成品状態がすでに限界近くま
で小型・軽量化されていた場合、それ以上の小形・軽量
化の余地は、もはやない。
【0011】つまり、上述した集合素子3’では、それ
ぞれに独立して構成された完成品の電池1とキャパシタ
2を最小構成単位にして組み立てられているため、その
小形・軽量化は個々の構成単位レベルで行うしかなく、
個々の構成単位レベルでの小形・軽量化の限界がそのま
ま上記集合素子3’での小形・軽量化の限界となってい
た。したがって、個々の構成単位レベルを越えた小形・
軽量化は望み得なかった。このことは、小形・軽量化以
外での構成の合理化、たとえば部品点数や生産コストの
低減化をはかる場合でも同様であって、個々の構成単位
レベルにてそれぞれに達成できる以上の構成の合理化は
望み得なかった。
【0012】この発明は、以上のような問題に鑑みてな
されたもので、その目的は、電池と電気二重層キャパシ
タの両機能の組み合わせによってパルス性負荷への適合
性を高めるとともに、小形・軽量化あるいは低コスト化
等の構成の合理化を、電池およびキャパシタがそれぞれ
単独で達成可能な以上に行うことができるようにした電
池・キャパシタ複合素子をを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明では、正極活物質と負極活物質をセパレータ
を介して電解液中で対峙させることにより形成される電
池と、少なくとも一方がイオン分極性電極をなす一対の
電極をセパレータを介して電解液中で対峙させることに
より形成される電気二重層キャパシタとを同一セル内で
組み合わせてなる電池・キャパシタ複合素子であって、
上記電気二重層キャパシタと上記電池をそれぞれのセル
要素の一部が共用される形で複合形成する構成とした。
このような構成とすれば、電池と電気二重層キャパシタ
の両機能を素子レベルで複合(ハイブリッド化)させる
ことができるとともに、各機能の構成要素を互いに共通
化することによる構成の合理化が可能になる。
【0014】これにより、電池と電気二重層キャパシタ
の両機能の組み合わせによってパルス性負荷への適合性
を高めるとともに、小形・軽量化や低コスト化等の構成
の合理化を、電池およびキャパシタがそれぞれ単独で達
成可能な以上に行うことができる(請求項1)。
【0015】また、前記電池がリチウムイオン電池であ
って、このリチウムイオン電池の電解液と電気二重層キ
ャパシタの電解液とが共用されている構成とすれば、リ
チウムイオン電池の高エネルギー密度と電気二重層キャ
パシタの低内部インピーダンスの両利点を併せ持つ複合
素子を簡単かつ低コストに提供することができる(請求
項2)。
【0016】前記電気二重層キャパシタの一対の電極
と、前記電池の正負電極活物質とが、共通の集電体によ
って並列接続をなしている構成とすれば、リード線等に
よる接続を行うことなく、最初から電池とキャパシタが
内部で並列接続された電池・キャパシタ複合素子を得る
ことができる(請求項3)。
【0017】前記電池と電気二重層キャパシタの各セル
要素がそれぞれ層状に形成されているとともに、その2
つのセル要素の間に共通の集電体が挟まれる積層構造が
形成された構成とすれば、その積層構造の中で電池とキ
ャパシタの集電体を共通化するという構成の合理化が達
成される(請求項4)。
【0018】前記電池の正極活物質として、リチウムイ
オン電池の正極活物質材料と電気二重層キャパシタのイ
オン分極性電極材料の混合体を使用することによって上
記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させた構成と
すれば、リチウムイオン電池の高エネルギー密度と電気
二重層キャパシタの低内部インピーダンスの両利点を併
せ持つ複合素子を、その電池が元々備える構造を利用し
て簡単かつ低コストに構成することができる(請求項
5)。
【0019】前記電池の負極活物質として、リチウムイ
オン電池の負極活物質材料と電気二重層キャパシタのイ
オン分極性電極材料の混合体を使用することによって上
記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させた構成と
すれば、この場合も、リチウムイオン電池の高エネルギ
ー密度と電気二重層キャパシタの低内部インピーダンス
の両利点を併せ持つ複合素子を、その電池が元々備える
構造を利用して簡単かつ低コストに構成することができ
る(請求項6)。
【0020】前記イオン分極性電極の材料として活性炭
を用いれば、充放電がイオンの物理的な吸脱着によって
行われるため低インピーダンスな電気二重層キャパシタ
を前記電池の内部に組み込むことができる(請求項
7)。
【0021】前記電池の前記正極活物質は正極集電体の
一方の面に塗布されると共に、前記キャパシタの前記分
極性電極は該正極集電体の他方の面に塗布された正極側
シートと、前記電池の前記負極活物質は負極集電体の一
方の面に塗布されると共に、前記キャパシタの前記分極
性電極は該負極集電体の他方の面に塗布された負極側シ
ートとを前記セパレータを介して巻回した構成とする
(請求項8)。
【0022】前記電池の前記正極活物質は第1の正極集
電体シートの一方の面に塗布されるとともに、前記キャ
パシタの前記分極性電極は第2の正極集電体シートの一
方の面に塗布され、これら各第1,2正極集電体シート
の他方の未塗布面同士を対向させて積層した正極側シー
トと、前記電池の前記負極活物質は第1の負極集電体シ
ートの一方の面に塗布されるとともに、前記キャパシタ
の前記分極性電極は第2の負極集電体シートの一方の面
に塗布され、これら各第1,2負極集電体シートの他方
の未塗布面同士を対向させて積層した負極側シートとを
前記セパレータを介して巻回した構成とする(請求項
9)。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の好適な実施形態
について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、各
図間にて同一符号を付した部分は同一または相当部分を
示すものとする。図1はこの発明の技術が適用された電
池・キャパシタ複合素子の構造モデルを示す。
【0024】同図に示す電池・キャパシタ複合素子3は
リチウムイオン電池1と電気二重層キャパシタ2を素子
レベルで複合させたものであって、電池1とキャパシタ
2は共に電池の外形容器をなす密閉容器11内にて形成
されている。
【0025】密閉容器11内には、正極活物質をなす正
極合剤13、正極集電体14、負極活物質をなす負極合
剤15、負極集電体16、セパレータ17、正極端子1
8、負極端子19、分極性電極23,25などが電解液
とともに密閉収納されている。
【0026】正極合剤13はコバルト酸リチウムを主剤
とし、シート状または箔状の正極集電体14の表面に接
触した状態で層状に形成されている。負極合剤15は黒
鉛を主剤とし、シート状または箔状の負極集電板16の
表面に接触した状態で層状に形成されている。この正極
合剤13と負極合剤15がセパレータ17を介して電解
液中で対峙させられてリチウムイオン電池1のセル要素
を形成している。
【0027】分極性電極23,25はそれぞれ活性炭を
用いて構成されている。一方の分極性電極23は上記正
極集電体14の表面に接触した状態で層状に形成されて
いる。他方の分極性電極25は上記負極集電体16の表
面に接触した状態で層状に形成されている。この正極側
と負極側の2つの分極性電極23と25がセパレータ1
7を介して電解液中で対峙させられて電気二重層キャパ
シタ2を形成している。
【0028】ここで、集電体14,16、セパレータ1
7および電解液は、上記リチウムイオン電池1の電池と
電気二重層キャパシタ2とで同一のものが共用されてい
る。電解液は、LiBFやLiPF等のLiイオン
を含んだ有機電解液が使用されている。この電解液はリ
チウムイオン電池1の電解液として機能すると同時に、
電二重層キャパシタ2の電解液としても機能する。ま
た、電気二重層キャパシタ2の一対の電極23,25
と、リチウムイオン電池1の一対の電極合剤13と15
はそれぞれ、共通の電極集電体14,16を介して互い
に並列接続をなしている。
【0029】正極合剤13と正極側イオン分極性電極2
3とに接触する正極集電体14は正極端子18に接続さ
れている。また、負極合剤15と負極側イオン分極性電
極25とに接触する負極集電体16は負極端子19に接
続されている。この正極端子18と負極端子19は電池
・キャパシタ複合素子3の外部端子として負荷4に接続
される。
【0030】上述した電池・キャパシタ複合素子3で
は、まず、電気二重層キャパシタ2と電池1をそれぞれ
のセル要素の一部を共用させる形で形成したことによ
り、電池1と電気二重層キャパシタ2の両機能を素子レ
ベルで複合させている。これとともに、従来は電池と電
気二重層キャパシタとでそれぞれ別々に使用していた密
閉容器11等の構成要素を互いに共通化させている。こ
れにより、電池と電気二重層キャパシタの両機能の組み
合わせによってパルス性負荷への適合性を高めるととも
に、小形・軽量化や低コスト化等の構成の合理化を、電
池およびキャパシタがそれぞれ単独で達成可能な以上に
行うことができる。
【0031】具体的には、上述したように、リチウムイ
オン電池1の電解液と電気二重層キャパシタ2の電解液
とを共用することにより、その複合素子3の構成を合理
化することができ、これにより、リチウムイオン電池の
高エネルギー密度と電気二重層キャパシタの低内部イン
ピーダンスの両利点を併せ持つ複合素子3を簡単かつ低
コストに提供することができる。
【0032】また、電気二重層キャパシタ2の一対の電
極23,25と、リチウムイオン電池1の正負極合剤1
3,15とを、共通の電極集電体14,16によって並
列接続状態とすることにより、リード線等による接続を
行うことなく、最初から電池1とキャパシタ2が内部で
並列接続された電池・キャパシタ複合素子3を得ること
ができる。
【0033】上記電気二重層キャパシタ2のイオン分極
性電極23,25の材料としては活性炭が使われている
が、活性炭を用いれば充放電がイオンの物理的な吸脱着
によって行われるため低インピーダンスな電気二重層キ
ャパシタを上記電池1の内部に組み込むことができる。
この場合、電気二重層キャパシタの使用可能電圧範囲は
電解液の電気分解が起きない電圧範囲である。このた
め、単独で構成された電気二重層キャパシタでは、その
使用可能電圧範囲を越えた電圧が印加されないように、
たとえば2個を直列接続して使うなどの配慮が必要であ
った。
【0034】しかし、上述した複合素子3の場合は、電
気二重層キャパシタ2の電極電位が電池1の電極電位に
依存し常に同電位となり、図6からわかるように単独で
使用された電気二重層キャパシタの場合と比べ、負極電
位のみが卑な側に移動することになるが、もともと電気
二重層キャパシタの使用可能電圧範囲は、正極側の電位
に支配されており、負極側は余裕があったため問題無
い。つまり、上記複合素子3では、電気二重層キャパシ
タ2の印加可能電圧を単独で使用する場合と比べて高く
することができる。したがって、印加電圧が使用可能電
圧範囲を越えないようにするために2個を直列接続する
などの配慮は不要にすることができる。
【0035】図2は、図1に構造モデルを示した電池・
キャパシタ複合素子の等価回路を示す。同図に示す等価
回路は内部抵抗に注目した回路であって、同図に示すよ
うに、上述した電池・キャパシタ複合素子3では、電池
1の方は高い内部抵抗Rbを呈するが、この電池1に並
列接続されたキャパシタ2の方は、その電池1に比べ
て、大幅に低い内部抵抗Rpを呈する。したがって、両
者が内部で並列接続された上記複合素子3は、キャパシ
タ2側の低内部抵抗Rpによって、電池1単独で使用す
る場合よりも大幅に低い内部抵抗を呈し、低内部インピ
ーダンスZiの電池として使用することができる。これ
により、パルス性負荷に対して高い適合性を得ることが
できる。
【0036】図3は、本発明による電池・キャパシタ複
合素子を円筒形リチウムイオン電池として構成した場合
の実施形態を示す。同図に示す円筒形リチウムイオン電
池は18650型規格品と互換性を有すのものであっ
て、円筒状の金属性密閉容器11内にシート状複合セル
要素10が巻回状態で密閉収納されている。そのシート
状複合セル要素10には、上述したリチウムイオン電池
1と電気二重層キャパシタ2を複合形成する合剤、電
極、集電体およびセパレータが積層されている。
【0037】
【実施例】以下、本発明をその代表的な実施例によって
さらに具体的に詳述する。
【0038】(比較例1)正極として厚さ20μmのA
l(アルミニウム)箔の両面にコバルト酸リチウム、導
電剤、バインダーを含むスラリー合剤を塗布し、負極と
して厚さ12μmの銅箔の両面に黒鉛、バインダーから
なるスラリー合剤を塗布し、両者をそれぞれ乾燥後にプ
レスを行って各電極シートを作成した。両電極シートを
セパレータとともに巻回して電極群とした。この電極群
を直径18mm、高さ65mmの円筒缶内に、Liイオ
ンを含む電解液と共に密閉収納して18650型リチウ
ムイオン電池を試作し、これを比較例1とした。
【0039】(比較例2)正極として厚さ20μmのA
l箔の両面に活性炭、導電剤、バインダーを含むスラリ
ー合剤を塗布し、負極として厚さ12μmの銅箔の両面
に活性炭、導電剤、バインダーからなるスラリー合剤を
塗布し、両者をそれぞれ乾燥後にプレスを行って各電極
シートを作成した。両電極シートをセパレータとともに
巻回して電極群とした。この電極群を直径18mm、高
さ65mmの円筒缶内に、Liイオンを含む電解液と共
に密閉収納して、18650型リチウムイオン電池と同
外形の電気二重層キャパシタを試作し、これを比較例2
とした。
【0040】(実施例1)厚さ20μmのAl箔の片面
にコバルト酸リチウム、導電剤、バインダーを含むスラ
リー合剤を塗布したものと、厚さ20μmのAl箔の片
面に活性炭、導電剤、バインダーを含むスラリー合剤を
塗布したものをそれぞれ乾燥後プレスを行って、2種類
の電極シートを作成した。この2種類の電極シートのA
l箔面を背中合わせに重ねて正極側シートとした。ま
た、厚さ12μmの銅箔の片面に黒鉛、バインダーから
なるスラリー合剤を塗布したものと、厚さ12μmの銅
箔の片面に活性炭、導電剤、バインダーからなるスラリ
ー合剤を塗布したものをそれぞれ乾燥後プレスを行っ
て、2種類の電極シートを作成した。この2種類の電極
シートの銅箔面を背中合わせに重ねて負極側シートとし
た。上記正極側シートと上記負極側シートをセパレータ
とともに巻回して電極群を形成した。この電極群を直径
18mm、高さ65mmの円筒缶内に、Liイオンを含
む電解液とともに密閉収納して、18650型リチウム
イオン電池と互換の電池・キャパシタ複合素子を試作し
た。この実施例1の電池・キャパシタ複合素子は、図4
の(A)に示すような電極構造を繰り返しパターンとし
て有する。
【0041】(実施例2)正極側シートは実施例1と同
じに作成した。負極側シートは、厚さ12μmの銅箔の
両面に黒鉛、バインダーからなるスラリー合剤を塗布し
たものを乾燥後プレスを行って電極シートを作成した。
このあと、実施例1と同様、正極側シートと負極側シー
トをセパレータとともに巻回して電極群を形成し、これ
を直径18mm、高さ65mmの円筒缶内に、Liイオ
ンを含む電解液とともに密閉収納して、18650型リ
チウムイオン電池と互換の電池・キャパシタ複合素子を
試作した。この実施例2の電池・キャパシタ複合素子
は、図4の(B)に示すような電極構造を繰り返しパタ
ーンとして有する。
【0042】(実施例3)正極側シートは、厚さ20μ
mのAl箔の両面にコバルト酸リチウム、活性炭、導電
剤、バインダーを含むスラリー合剤を塗布したものを乾
燥後プレスを行って電極シートを作成した。負極側シー
トは、厚さ12μmの銅箔の両面に黒鉛、活性炭、バイ
ンダーからなるスラリー合剤を塗布したものを乾燥後プ
レスを行って電極シートを作成した。このあと、実施例
1,2と同様、正極側シートと負極側シートをセパレー
タとともに巻回して電極群を形成し、これを直径18m
m、高さ65mmの円筒缶内に、Liイオンを含む電解
液とともに密閉収納して、18650型リチウムイオン
電池と互換の電池・キャパシタ複合素子を試作した。こ
の実施例3の電池・キャパシタ複合素子は、図5の
(A)に示すような電極構造を繰り返しパターンとして
有する。
【0043】(実施例4)正極側シートは、実施例3と
同様、厚さ20μmのAl箔の両面にコバルト酸リチウ
ム、活性炭、導電剤、バインダーを含むスラリー合剤を
塗布したものを乾燥後プレスを行って電極シートを作成
した。負極側シートは、実施例2と同様、厚さ12μm
の銅箔の両面に黒鉛、バインダーからなるスラリー合剤
を塗布したものを乾燥後プレスを行って電極シートを作
成した。このあと、実施例1,2,3と同様、正極側シ
ートと負極側シートをセパレータとともに巻回して電極
群を形成し、これを直径18mm、高さ65mmの円筒
缶内に、Liイオンを含む電解液とともに密閉収納し
て、18650型リチウムイオン電池と互換の電池・キ
ャパシタ複合素子を試作した。この実施例4の電池・キ
ャパシタ複合素子は、図5の(B)に示すような電極構
造を繰り返しパターンとして有する。上述した実施例1
〜4の電極構造はいずれも、円筒缶に収納された状態に
て、電池とキャパシタの両セル要素の間に共通の集電体
が挟まれる積層構造をなすが、これにより、その積層構
造の中で電池とキャパシタの集電体を共通化させること
ができる。
【0044】次に、比較例1,2および実施例1〜4に
ついて、それぞれの特性試験結果を図6および図7を参
照しながら説明する。
【0045】図6は比較例1,2の放電特性を示す。同
図の(A)は比較例1の電池の放電特性を示したもので
あって、図中のグラフ曲線は放電容量比に対する正負電
極電位とセル電圧の変化状態を示す。同図に示すよう
に、セル電圧は正極電位と負極電位の差として現われ、
放電末期になって急速に落ちるリチウムイオン電池の一
般的特性を示している。同図の(B)は比較例2の電気
二重層キャパシタの放電特性を示したものであって、図
中のグラフ曲線は、比較例1の電池を基準にした放電容
量比に対する正負電極電位とセル電圧の変化状態を示
す。同図に示すように、電気二重層キャパシタはキャパ
シタとしては非常に大容量であるが、比較例1のリチウ
ムイオン電池に比べて10〜20分の1程度の放電容量
しか持っていない。しかし、同図の特性図では見えない
が、比較例1の電池よりも格段に低い内部インピターン
スを有していて、放電開始直後から短時間ではあるが、
非常に大きな電流で放電することができる。
【0046】図7は比較例1および実施例1〜4の短時
間放電特性を示す。同図に示す放電特性は、10Aの大
電流放電試験を短時間(3秒)行わせたときのセル電圧
の変化である。同図において、まず、比較例1のリチウ
ムイオン電池のセル電圧は、放電開始と同時に急速下降
している。これは、そのリチウムイオン電池のパルス性
負荷への適合性が十分でないことを示している。
【0047】これに対し、実施例1〜4の電池・キャパ
シタ複合素子ではそれぞれ、若干の差はあるものの、放
電試験時間(3秒)内では、セル電圧の下がり方が緩や
かで比較的安定したセル電圧を保つことができている。
このことは、図2に示した等価回路が各実施例1〜4の
複合素子においてそれぞれ成立していることを裏付け
る。つまり、各実施例1〜4の電池・キャパシタ複合素
子はそれぞれ、電池と電気二重層キャパシタの両機能の
組み合わせによってパルス性負荷への適合性が高められ
ている。
【0048】また、実施例4のように、正極活物質とし
て、リチウムイオン電池の正極活物質材料であるコバル
ト酸リチウムと、電気二重層キャパシタのイオン分極性
電極材料である活性炭との混合体を使用することによっ
ても、上述した複合素子としての効果を得られることが
判明した。
【0049】さらに、実施例3のように、正極のみなら
ず負極活物質として、リチウムイオン電池の負極活物質
材料である黒鉛と、電気二重層キャパシタのイオン分極
性電極材料である活性炭との混合体を使用することによ
っても、上述した複合素子としての効果を得られること
が判明した。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による電池
・キャパシタ複合素子によれば、電気二重層キャパシタ
と電池をそれぞれのセル要素の一部が共用される形で複
合形成する構成としたことにより、電池と電気二重層キ
ャパシタの両機能を素子レベルで複合させることができ
るとともに、各機能の構成要素を互いに共通化すること
による構成の合理化が可能になる。これにより、電池と
電気二重層キャパシタの両機能の組み合わせによってパ
ルス性負荷への適合性を高めるとともに、小形・軽量化
や低コスト化等の構成の合理化を、電池およびキャパシ
タがそれぞれ単独で達成可能な以上に行うことができ
る。
【0051】また、前記電池がリチウムイオン電池であ
って、このリチウムイオン電池の電解液と電気二重層キ
ャパシタの電解液とが共用されている場合には、リチウ
ムイオン電池の高エネルギー密度と電気二重層キャパシ
タの低内部インピーダンスの両利点を併せ持つ複合素子
を簡単かつ低コストに提供することができる。前記電気
二重層キャパシタの一対の電極と、前記電池の正負電極
活物質とが、共通の集電体によって並列接続をなす場合
には、リード線等による接続を行うことなく、最初から
電池とキャパシタが内部で並列接続された電池・キャパ
シタ複合素子を得ることができる。前記電池と電気二重
層キャパシタの各セル要素がそれぞれ層状に形成されて
いるとともに、その2つのセル要素の間に共通の集電体
が挟まれる積層構造が形成された場合には、その積層構
造の中で電池とキャパシタの集電体を共通化するという
構成の合理化が達成される。
【0052】前記電池の正極活物質として、リチウムイ
オン電池の正極活物質材料と電気二重層キャパシタのイ
オン分極性電極材料の混合体を使用することによって上
記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させた場合に
は、リチウムイオン電池の高エネルギー密度と電気二重
層キャパシタの低内部インピーダンスの両利点を併せ持
つ複合素子を、その電池が元々備える構造を利用して簡
単かつ低コストに構成することができる。
【0053】前記電池の負極活物質として、リチウムイ
オン電池の負極活物質材料と電気二重層キャパシタのイ
オン分極性電極材料の混合体を使用することによって上
記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させた場合に
も、リチウムイオン電池の高エネルギー密度と電気二重
層キャパシタの低内部インピーダンスの両利点を併せ持
つ複合素子を、その電池が元々備える構造を利用して簡
単かつ低コストに構成することができる。
【0054】前記イオン分極性電極の材料として活性炭
を用いれば、充放電がイオンの物理的な吸脱着によって
行われるため低インピーダンスな電気二重層キャパシタ
を前記電池の内部に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による電池・キャパシタ複合素子の構
造モデルを示す断面図である。
【図2】図1の構造モデルに対応させた等価回路図であ
る。
【図3】本発明による電池・キャパシタ複合素子の適用
例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1,2にて形成される電極構造
を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例3,4にて形成される電極構造
を示す断面図である。
【図6】比較例1,2の放電特性を示す図である。
【図7】比較例1および実施例1〜4の短時間放電特性
を示す図である。
【図8】従来の電池・キャパシタ集合素子の構造モデル
を示す断面図である。
【図9】図8の構造モデルに対応させた等価回路図であ
る。
【符号の説明】
1 リチウムイオン電池 2 電気二重層キャパシタ 3 電池・キャパシタ複合素子(本発明) 3’ 電池・キャパシタ集合素子(従来) 4 パルス性負荷 10 シート状複合セル要素 11 密閉容器 13 正極合剤 14 集電体(正極) 15 負極合剤 16 集電体(負極) 17 セパレータ 18 正極端子(外部端子) 19 負極端子(外部端子) 21 密閉容器(従来) 23 イオン分極性電極(活性炭) 24 集電体(正極) 25 イオン分極性電極(活性炭) 26 集電体(負極) 27 セパレータ 28 正極端子(従来) 29 負極端子(従来) 31 リード線(従来) 32 共通外部端子(従来) 33 共通外部端子(従来) Zi 等価的な内部インピーダンス Rb 電池の内部抵抗 Rp 電気二重層キャパシタの内部抵抗
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01G 9/28 H01M 10/04 W 9/048 H01G 9/00 301J H01M 4/02 301Z 301D 301F 4/58 301A 10/04 531 9/04 325 Fターム(参考) 5H028 AA05 AA06 AA10 CC08 CC10 CC12 HH00 5H029 AJ01 AK03 AL07 AM02 AM07 BJ02 BJ04 BJ14 DJ07 DJ12 HJ12 5H050 AA01 BA17 CA08 CB08 EA10 EA23 FA02 FA05 FA08 GA09 HA12

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極活物質と負極活物質をセパレータを
    介して電解液中で対峙させることにより形成される電池
    と、少なくとも一方がイオン分極性電極をなす一対の電
    極をセパレータを介して電解液中で対峙させることによ
    り形成される電気二重層キャパシタとを同一セル内で組
    み合わせてなる電池・キャパシタ複合素子であって、上
    記電気二重層キャパシタと上記電池をそれぞれのセル要
    素の一部が共用される形で複合形成したことを特徴とす
    る電池・キャパシタ複合素子。
  2. 【請求項2】 前記電池がリチウムイオン電池であっ
    て、このリチウムイオン電池の電解液と電気二重層キャ
    パシタの電解液とが共用されていることを特徴とする請
    求項1に記載の電池・キャパシタ複合素子。
  3. 【請求項3】 前記電気二重層キャパシタの一対の電極
    と、前記電池の正負電極活物質とが、共通の集電体によ
    って並列接続をなしていること特徴とする請求項1また
    は2に記載の電池・キャパシタ複合素子。
  4. 【請求項4】 前記電池と前記電気二重層キャパシタの
    各セル要素はそれぞれ層状に形成されているとともに、
    その2つのセル要素の間に共通の集電体が挟まれる積層
    構造が形成されていることを特徴とする請求項1から3
    のいずれかに記載の電池・キャパシタ複合素子。
  5. 【請求項5】 前記電池の正極活物質として、リチウム
    イオン電池の正極活物質材料と電気二重層キャパシタの
    イオン分極性電極材料の混合体を使用することによって
    上記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させたこと
    を特徴とする請求項1から3および4のいずれかに記載
    の電池・キャパシタ複合素子。
  6. 【請求項6】 前記電池の負極活物質として、リチウム
    イオン電池の負極活物質材料と電気二重層キャパシタの
    イオン分極性電極材料の混合体を使用することによって
    上記電気二重層キャパシタを上記電池に複合させたこと
    を特徴とする請求項1から3および4,5のいずれかに
    記載の電池・キャパシタ複合素子。
  7. 【請求項7】 前記イオン分極性電極の材料として活性
    炭を用いたことを特徴とする請求項1から6のいずれか
    に記載の電池・キャパシタ複合素子。
  8. 【請求項8】 前記電池の前記正極活物質は正極集電体
    の一方の面に塗布されると共に、前記キャパシタの前記
    分極性電極は該正極集電体の他方の面に塗布された正極
    側シートと、前記電池の前記負極活物質は負極集電体の
    一方の面に塗布されると共に、前記キャパシタの前記分
    極性電極は該負極集電体の他方の面に塗布された負極側
    シートとを前記セパレータを介して巻回したことを特徴
    とする請求項1から4,7のいずれかに記載の電池・キ
    ャパシタ複合素子。
  9. 【請求項9】 前記電池の前記正極活物質は第1の正極
    集電体シートの一方の面に塗布されるとともに、前記キ
    ャパシタの前記分極性電極は第2の正極集電体シートの
    一方の面に塗布され、これら各第1,2正極集電体シー
    トの他方の未塗布面同士を対向させて積層した正極側シ
    ートと、 前記電池の前記負極活物質は第1の負極集電体シートの
    一方の面に塗布されるとともに、前記キャパシタの前記
    分極性電極は第2の負極集電体シートの一方の面に塗布
    され、これら各第1,2負極集電体シートの他方の未塗
    布面同士を対向させて積層した負極側シートとを前記セ
    パレータを介して巻回したことを特徴とする請求項1か
    ら4,7のいずれかに記載の電池・キャパシタ複合素
    子。
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