JP2001296902A - 制御装置、温度調節器および熱処理装置 - Google Patents

制御装置、温度調節器および熱処理装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】干渉のある制御対象の制御において、干渉を低
減するとともに、オートチューニングを正しく実行でき
るようにして制御パラメータの設定を可能とする。 【解決手段】個別的に対応する複数のヒータおよび複数
の温度センサを備えるとともに、複数のPID制御手段
1〜6nを備え、平均温度・傾斜温度算出手段5で複
数の温度センサの検出温度の平均温度および検出温度に
基づく傾斜温度を算出し、各PID制御手段61〜6n
は、それぞれ平均温度または各傾斜温度が目標値になる
ように操作信号を出力し、配分手段7によって、各PI
D制御手段61〜6nによる制御が、他のPID制御手
段の制御に影響を与えないように、各ヒータに各PID
制御手段61〜6nからの操作信号を配分するようにし
ている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制御対象の温度や
圧力などの物理状態を制御する制御装置、制御対象の温
度を制御する温度調節器および温度調節器を用いた熱処
理装置に関し、さらに詳しくは、制御対象の物理状態を
制御する状態制御手段を複数備え、各状態制御手段によ
る制御が、他の状態制御手段による制御に影響を与え
る、いわゆる干渉のある制御対象の制御に好適な技術に
関する。
【0002】
【従来の技術】この種の制御対象、例えば、半導体プロ
セスの熱処理装置として、図28に示される熱酸化装置
があり、この熱酸化装置18は、シリコンのウェハを酸
化するものであって、熱処理炉としての反応管19に必
要なガスを流しながら酸化膜の生成を行うものである。
この熱酸化装置18は、反応管19を外囲する均熱管2
0の周囲に分割して配置された複数、この例では、3つ
の第1〜第3のヒータ211〜213とそれに個別的に対
応する第1〜第3の温度センサ221〜223とを有し、
温度制御は、マイクロコンピュータ23によって、ヒー
タおよび温度センサの各組に対応する領域(以下「ゾー
ン」という)毎に個別に行われている。
【0003】すなわち、第1のヒータ211および第1
の温度センサ221が配置された上側の第1のゾーンで
は、第1の温度センサ221の検出出力に基づいて、目
標温度になるように第1のヒータ211が操作され、第
2のヒータ212および第2の温度センサ222が配置さ
れた中間の第2のゾーンでは、第2の温度センサ222
の検出出力に基づいて、目標温度になるように第2のヒ
ータ212が操作され、第3のヒータ213および第3の
温度センサ223が配置された下側の第3のゾーンで
は、第3の温度センサ223の検出出力に基づいて、目
標温度になるように第3のヒータ213が操作される。
【0004】しかしながら、各ゾーンは熱的に連続して
いるので、一つのゾーンのヒータによる熱量は、そのゾ
ーンのみならず、他のゾーンの温度センサにも影響を与
える、いわゆる干渉を生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このような干渉がある
ために、特に、過渡時や外乱時に温度のバラツキが顕著
となって均一な温度制御が困難であり、また、各ゾーン
を異なる目標温度に制御するといったことが容易でな
い。
【0006】さらに、温度調節器における最適なPID
制御のパラメータを決定するためのオートチューニング
が正しく実行できないという難点もある。
【0007】以下、オートチューニングが正しく実行で
きない理由について、制御のシュミレーションソフト
(MATLAB)を使用した例を用いて説明する。
【0008】先ず、正常にオートチューニングをできる
例として、図29に示される干渉のない独立な第1,第
2の制御対象241,242を制御する場合について説明
する。この例は、独立に二つの制御対象241,242
制御するものであり、第1のPID制御手段251
は、オートチューニングを実行し、第2のPID制御手
段252では、目標値をグランドとしてPID制御を実
行している。なお、261,262は、目標値とフィード
バック量との制御偏差を出力する加算器である。
【0009】図30は、このシステムにおける第1の制
御対象241からの第1のフィードバック量PV1(破
線)、第1のPID制御手段251からの第1の操作量
MV1(実線)、第2の制御対象242からの第2のフ
ィードバック量PV2(二点鎖線)および第2のPID
制御手段252からの第2の操作量MV2(一点鎖線)
を、スコープに表示した波形を示すものであり、第1の
操作量MV1がオンオフするリミットサイクルが生じて
おり、第1のフィードバック量PV1の周期と振幅とを
使って第1のPID制御手段251のPID制御のパラ
メータを決定することができる。
【0010】なお、フィードバック量PV1,PV2
は、例えば温度制御における温度センサで検出された検
出温度に相当し、操作量MV1,MV2は、制御対象を
加熱するヒータおよびそのヒータの通電をオンオフする
電磁開閉器からなる操作手段に与えられる操作量であ
る。
【0011】次に、図31に示されるように、2入力
(MV1,MV2)2出力(PV1,PV2)の干渉の
ある制御対象27に独立な制御を実行した場合について
説明する。
【0012】この制御対象27は、図32に示されるよ
うに、第1のPID制御手段251からの第1の操作量
MV1が、第1の加算器28に与えられるとともに、第
1の減衰器29で0.9に減衰されて第2の加算器30
に与えられる一方、第2のPID制御手段252からの
第2の操作量MV2が、第2の加算器30に与えられる
とともに、第2の減衰器31で0.9に減衰されて第1
の加算器28に与えられ、各加算器28,30の加算出
力が、第1,第2の遅れ要素32,33にそれぞれ与え
られる構成とされており、この例では、各操作量MV
1,MV2が0.9の割合で他方に加えられて互いに干
渉を生じるものである。
【0013】このような干渉のある制御対象27では、
第1のPID制御手段251で、オートチューニングを
実行し、第2のPID制御手段252では、目標値をグ
ランドとしてPID制御を実行すると、図33に示され
るように、第1の操作量MV1(実線)に、オンオフの
リミットサイクルが生じない場合があり、かかる場合に
は、第1のフィードバック量PV1(破線)の振動の振
幅および周期を正しく測定できず、PID制御のパラメ
ータも計算することができないことになる。
【0014】このように第1の操作量MV1がオンオフ
しない原因は、オートチューニングをしない側の第2の
PID制御手段252が干渉してオートチューニング側
の第1のフィードバック量PV1の変化が生じないよう
に勝手に動作してしまうからである。これは、第2の操
作量MV2(一点鎖線)が、第1のフィードバック量P
V1の変化とは逆向きの動きをしていることからも分か
る。
【0015】このように、干渉のある制御対象では、P
IDの制御パラメータを設定するためのオートチューニ
ングが実行できず、試行錯誤的な設定にならざるを得
ず、このため、設定に時間を要するとともに、所望の制
御特性を得るのが困難である。
【0016】本発明は、上述の点に鑑みて為されたもの
であって、干渉のある制御対象であっても、その干渉を
低減するとともに、制御パラメータの設定を可能とする
ことを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明では、上述の目的
を達成するために、次のように構成している。
【0018】すなわち、本発明の制御装置は、制御対象
の物理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの情
報を、前記物理状態の勾配を示す情報に変換するととも
に、物理状態の代表状態を示す情報に変換する変換手段
と、前記変換手段からの各情報が個別的に与えられる複
数の状態制御手段と、前記各状態制御手段からの操作信
号を、複数の操作手段に、各状態制御手段による制御
が、他の状態制御手段による制御に与える影響をなくす
又は小さくするように配分する配分手段と、前記勾配を
示す情報が与えられる状態制御手段と代表状態を示す情
報が与えられる状態制御手段との状態制御のバランスを
調整する調整手段とを備えている。
【0019】ここで、物理状態とは、温度、圧力、流
量、速度あるいは液位などの様々な物理量の状態をい
う。
【0020】また、物理状態の勾配とは、温度勾配、圧
力勾配、流量勾配、速度勾配などの様々な物理量の勾配
をいう。
【0021】さらに、物理状態の代表状態とは、制御対
象の物理状態を代表的に示す状態をいい、例えば、温度
であれば、制御対象の平均温度、ある位置(例えば中央
位置)における温度などをいう。
【0022】また、状態制御のバランスを調整すると
は、勾配を示す情報に基づく状態制御と代表状態を示す
情報に基づく状態制御のいずれに重点をおいた(いずれ
を優先させた)状態制御を行うか、あるいは、状態制御
の強さや速さなどを調整することをいう。
【0023】本発明によると、複数の検出手段からの情
報を、物理状態の勾配を示す情報と代表状態を示す情
報、すなわち、干渉のない独立の情報に変換して制御を
行うとともに、配分手段によって各状態制御手段による
制御が、他の状態制御手段による制御に与える影響をな
くす又は小さくするように配分するので、干渉のある制
御対象の制御において、その干渉を低減することが可能
となる。
【0024】また、調整手段によって、勾配を示す情報
に基づく状態制御と代表状態を示す情報に基づく状態制
御との状態制御のバランスを調整できることになり、用
途や制御対象の特性などに応じて適切な状態制御を行え
ることになる。
【0025】また、本発明の制御装置は、制御対象の物
理状態をそれぞれ検出する複数の検出手段からの情報と
前記複数の検出手段に個別的に対応する複数の目標情報
との偏差を、前記物理状態の勾配を示す情報の偏差に変
換するとともに、物理状態の代表状態を示す情報の偏差
に変換する変換手段と、前記変換手段からの前記勾配を
示す情報の偏差または前記代表状態を示す情報の偏差を
制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複数の状態
制御手段と、前記各状態制御手段からの操作信号を、複
数の操作手段に、各状態制御手段による制御が、他の状
態制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さく
するように配分する配分手段と、前記勾配を示す情報の
偏差を制御偏差として操作信号を出力する状態制御手段
と前記代表状態を示す情報の偏差を制御偏差として操作
信号を出力する状態制御手段との状態制御のバランスを
調整する調整手段とを備えている。
【0026】ここで、目標情報とは、物理状態の制御目
標の情報をいい、例えば、目標温度、目標圧力、目標流
量などをいう。
【0027】本発明の制御装置によると、複数の検出手
段からの情報を、物理状態の勾配あるいは代表状態を利
用した情報、すなわち、干渉のない独立の情報に変換し
て制御を行うとともに、配分手段によって各状態制御手
段による制御が、他の状態制御手段による制御に与える
影響をなくす又は小さくするように配分するので、干渉
のある制御対象の制御において、その干渉を低減するこ
とが可能となる。
【0028】また、調整手段によって、勾配を示す情報
に基づく状態制御と代表状態を示す情報に基づく状態制
御との状態制御のバランスを調整できることになり、用
途や制御対象の特性などに応じて適切な状態制御を行え
ることになる。
【0029】また、本発明の温度調節器は、制御対象の
温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られ
る検出温度を、複数の検出温度に基づく傾斜温度に変換
するとともに、代表的な代表温度に変換する変換手段
と、前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御
量として操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手
段と、前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御
対象を加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷
却)手段に、各温度制御手段による制御が、他の温度制
御手段による制御に与える影響をなくす又は小さくする
ように配分する配分手段と、前記傾斜温度を制御量とし
て操作信号を出力する温度制御手段と前記代表温度を制
御量として操作信号を出力する温度制御手段との温度制
御のバランスを調整する調整手段とを備えている。
【0030】本発明によると、複数の温度検出手段から
得られる検出温度を、傾斜温度と代表温度、すなわち、
干渉のない独立の情報に変換して制御を行うとともに、
配分手段によって各温度制御手段による制御が、他の温
度制御手段による制御に与える影響をなくす又は小さく
するように配分するので、干渉のある制御対象の制御に
おいて、その干渉を低減することが可能となる。また、
例えば、制御対象を複数のゾーン毎に区分して温度制御
を行う場合に、特定のゾーンの検出温度を代表温度とし
てそのゾーンに着目した制御を行うことができる。
【0031】さらに、調整手段によって、傾斜温度に基
づく温度制御と代表温度に基づく温度制御との温度制御
のバランスを調整できるものであり、用途や制御対象の
特性などに応じて適切な温度制御を行えることになる。
【0032】また、本発明の温度調節器は、制御対象の
温度をそれぞれ検出する複数の温度検出手段から得られ
る検出温度と前記複数の温度検出手段に個別的に対応す
る複数の目標温度との偏差を、傾斜温度の偏差に変換す
るとともに、代表的な代表温度の偏差に変換する変換手
段と、前記変換手段からの傾斜温度の偏差または前記代
表温度の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力
する複数の温度制御手段と、前記各温度制御手段からの
操作信号を、複数の操作手段に、各温度制御手段による
制御が、他の温度制御手段による制御に与える影響をな
くす又は小さくするように配分する配分手段と、前記傾
斜温度の偏差が与えられる温度制御手段と前記代表温度
の偏差が与えられる温度制御手段との温度制御のバラン
スを調整する調整手段とを備えている。
【0033】本発明によると、複数の温度検出手段から
得られる検出温度と目標温度を、傾斜温度の偏差および
代表温度の偏差、すなわち、干渉のない独立の情報に変
換して制御を行うとともに、配分手段によって各温度制
御手段による制御が、他の温度制御手段による制御に与
える影響をなくす又は小さくするように配分するので、
干渉のある制御対象の制御において、その干渉を低減す
ることが可能となる。また、例えば、制御対象を複数の
ゾーン毎に区分して温度制御を行う場合に、特定のゾー
ンの検出温度を代表温度としてそのゾーンに着目した制
御を行うことができる。
【0034】さらに、調整手段によって、傾斜温度に基
づく温度制御と代表温度に基づく温度制御との温度制御
のバランスを調整できるものであり、用途や制御対象の
特性などに応じて適切な温度制御を行えることになる。
【0035】本発明の一実施態様においては、前記調整
手段は、設定に応じて、前記温度制御手段の制御パラメ
ータおよび操作信号を制限するリミッタの少なくとも一
方を調整するものである。
【0036】本発明によれば、設定によって、PIDの
制御パラメータやリミッタのリミット値を調整して傾斜
温度に基づく温度制御と代表温度に基づく温度制御との
温度制御のバランスを適切な状態に調整できることにな
る。
【0037】本発明の他の実施態様においては、前記代
表温度が複数の検出温度に基づく平均温度であり、前記
調整手段は、設定に応じて、平均温度を制御量として操
作信号を出力する温度制御手段または平均温度の偏差が
与えられる温度制御手段の操作信号を制限するリミッタ
の上限値を調整するものである。
【0038】本発明によると、平均温度に基づく温度制
御手段の操作信号を制限するリミッタの上限値を、例え
ば、小さく調整することにより、平均温度による制御よ
りも傾斜温度に基づく制御をより優先した制御を行える
ことになる。
【0039】本発明の好ましい実施態様においては、本
発明に係る温度調節器と、制御対象としての熱処理炉ま
たは熱処理盤と、前記熱処理炉または熱処理盤を加熱
(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段と、
前記熱処理炉または熱処理盤の温度を検出する複数の温
度検出手段とを備えている。
【0040】本発明によると、本発明の温度調節器によ
って熱処理炉あるいは熱処理盤の温度制御を行うので、
干渉を低減した温度制御が可能になるとともに、用途や
制御対象の特性などに応じて適切な温度制御が行える。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、図面によって本発明の実施
の形態について詳細に説明する。
【0042】図1は、本発明の一つの実施の形態に係る
温度調節器を用いた温度制御システムの概略構成図であ
る。
【0043】この実施の形態の温度制御システムは、制
御対象3を加熱する複数のヒータ1 1〜1nと、複数の
ヒータ11〜1nに個別的に対応して制御対象3の温度
を検出する複数の温度センサ21〜2nと、これら温度
センサ21〜2nの検出出力に基づいて、各ヒータ11
1nを図示しない電磁開閉器などを介して操作して制御
対象3の温度を制御する本発明に係る温度調節器4とを
備えている。
【0044】制御対象3は、熱的に連続して干渉を生じ
るものであり、各ヒータ11〜1nと対応する各温度セ
ンサ21〜2nとがそれぞれ近接して配置されて複数の
ゾーンがそれぞれ形成されている。
【0045】この温度制御システムは、例えば、上述の
図28に示される熱酸化装置18に適用できるものであ
り、制御対象3を、熱処理炉としての反応管19とし、
第1〜第3のヒータ11〜13を、反応管19の周囲に分
割して配置された第1〜第3のヒータ211〜213
し、第1〜第3の温度センサ21〜23を、各ゾーンの温
度を検出する第1〜第3の温度センサ221〜223とし
て適用することができるものである。
【0046】図2は、図1の温度調節器4のブロック図
であり、この実施の形態の温度調節器4は、複数の温度
センサ21〜2nの検出温度の平均温度および検出温度
に基づく傾斜温度を後述のようにして算出する平均温度
・傾斜温度算出手段(以下「モード変換器」ともいう)
5と、この算出手段5で算出された平均温度または各傾
斜温度がそれぞれ入力される複数の温度制御手段として
のPID制御手段61〜6nと、各PID制御手段61
6nからの操作信号(操作量)を後述のように所定の配
分比で加熱手段を構成する各ヒータ11〜1nに配分す
る配分手段(以下「前置補償器」ともいう)7とを備え
ている。平均温度・傾斜温度算出手段5、PID制御手
段61〜6nおよび配分手段7は、例えば、マイクロコ
ンピュータによって構成される。
【0047】従来では、上述の図28に示されるよう
に、各ゾーン毎に温度を検出して対応するヒータを個別
に制御していたけれども、この実施の形態では、干渉を
なくすために、平均温度・傾斜温度算出手段5で算出さ
れる代表温度としての平均温度および複数の各傾斜温度
を制御量として温度制御を行うようにしている。
【0048】変換手段としての平均温度・傾斜温度算出
手段5は、複数の温度センサ21〜2nからの情報を、
一つの平均温度と複数の傾斜温度との情報に変換するも
のであり、その理由は、干渉がなく、独立で分かりやす
い情報にするためであり、例えば、次のような演算を行
うものである。
【0049】すなわち、第1の温度センサ21の検出出
力をS1,第2の温度センサ22の検出出力をS2,…
第nの温度センサ2nの検出出力をSnとすると、下記
に示される平均温度Tav,第1の傾斜温度Tt1,第
2の傾斜温度Tt2,…第n−1の傾斜温度Ttn-1
算出する。
【0050】 Tav=(S1+S2+…Sn)÷n Tt1=(S1+S2+…Sn-1)÷(n−1)−Sn Tt2=(S1+S2+…Sn-2)÷(n−2)−Sn-1 ・ ・ Ttn-1=S1−S2 ここで、Tavは、複数の温度センサ21〜2nの検出
温度の平均温度であり、傾斜温度Tt1は、複数の温度
センサ21〜2nを、温度センサ21〜2n-1と温度セン
サ2nとの二つに区分した場合の温度センサ21〜2n-1
の平均検出温度と温度センサ2nの検出温度との差であ
り、傾斜温度Tt2は、複数の温度センサ21〜2
n-1を、温度センサ21〜2n-2と温度センサ2n-1との二
つに区分した場合の温度センサ21〜2n-2の平均検出温
度と温度センサ2n-1の検出温度との差であり、以下同
様にして、傾斜温度Ttn-1は、温度センサ21と温度セ
ンサ2 2との検出温度の差である。
【0051】以上の式をまとめて、モード変換行列Gm
と称する行列を用いて下記のように表すことができる。
【0052】
【数1】
【0053】T=Gm・S ただし、T=[Tav Tt1 Tt2 ……Ttn-1T S=[S1 S2 S3 ……SnT この実施の形態では、これら平均温度Tavと複数の傾
斜温度Tt1〜Ttn- 1とを制御量として温度制御を行
うものである。
【0054】なお、傾斜温度は、この実施の形態に限ら
れるものではなく、例えば、下記のモード変換行列Gm
に示されるように隣り合う温度センサの検出温度の温度
差や複数の温度センサを二つのグループに区分して各グ
ループの平均検出温度の温度差などの種々の傾斜温度を
用いることができる。
【0055】
【数2】
【0056】また、傾斜温度は、複数の温度センサを大
きく二つのグループに区分した各グループの平均検出温
度の温度差、各グループをさらに二つに区分した各グル
ープの平均検出温度の温度差、さらに各グループを二つ
に区分した各グループの平均検出温度の温度差といった
ように、マクロな傾斜温度からミクロな傾斜温度までを
算出して用いるようにしてもよい。
【0057】要するに、温度の傾斜を意味する情報と平
均の情報とに分離して制御できるようにすればよい。
【0058】第1のPID制御手段61は、平均温度・
傾斜温度算出手段5からの平均温度と目標平均温度の制
御偏差に基づいて、平均温度が目標平均温度になるよう
に操作信号を配分手段7に出力し、第2のPID制御手
段62は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの第1の
傾斜温度と第1の目標傾斜温度との制御偏差に基づい
て、第1の傾斜温度が第1の目標傾斜温度になるように
操作信号を配分手段7に出力し、第3のPID制御手段
3は、平均温度・傾斜温度算出手段5からの第2の傾
斜温度と第2の目標傾斜温度との制御偏差に基づいて、
第2の傾斜温度が第2の目標傾斜温度になるように操作
信号を配分手段7に出力し、以下同様にして、第nのP
ID制御手段6nは、平均温度・傾斜温度算出手段5か
らの第n−1の傾斜温度と第n−1の目標傾斜温度との
制御偏差に基づいて、第n−1の傾斜温度が第n−1の
目標傾斜温度になるように操作信号を配分手段7に出力
する。
【0059】すなわち、第1のPID制御手段61は、
平均温度を制御し、第2〜第nの各PID制御手段62
〜6nは、第1〜第n−1の傾斜温度をそれぞれ制御す
るものである。
【0060】次に配分手段7について説明する。
【0061】この配分手段7は、各PID制御手段61
〜6nからの操作信号(操作量)を、各ヒータ11〜1n
に配分するのであるが、その際に、各PID制御手段6
1〜6nそれぞれによる平均温度または各傾斜温度の制
御が、他のPID制御手段6 1〜6nそれぞれによる平
均温度または傾斜温度の制御に与える干渉をなくすよう
に配分するものである。
【0062】例えば、第1のPID制御手段61の操作
信号によって平均温度を変化させる場合に、その操作信
号によって傾斜温度が変化せず、また、第2のPID制
御手段62の操作信号によって第1の傾斜温度を変化さ
せる場合に、その操作信号によって平均温度および他の
傾斜温度が変化せず、同様に、各PID制御手段の操作
信号によって他のPID制御手段による制御が影響され
ないように配分するのである。
【0063】この配分手段7による配分について、さら
に詳細に説明する。
【0064】ここで、分かり易くするために、n=2、
すなわち、ゾーンが2つであって、第1,第2のヒータ
1,12、第1、第2の温度センサ21,22、平均温度
を制御する第1のPID制御手段61および両温度セン
サ21,22の検出温度の差である傾斜温度を制御する第
2のPID制御手段62を備える場合に適用して図3に
基づいて説明する。
【0065】この図3は、上述の図31,図32の従来
例で説明した2入力2出力の干渉のある制御対象27に
適用した例であり、図2に対応する部分には、同一の参
照符号を付す。
【0066】平均温度・傾斜温度検出手段5は、第1,
第2の温度センサ21,22の検出出力に相当する制御対
象27からのフィードバック量PV1,PV2を、図4
に示されるように加算器8で加算して減衰器9で1/2
に減衰して平均温度Tavを出力する一方、両温度セン
サ21,22の検出出力に相当するフィードバック量PV
1,PV2を減算器10で減算して傾斜温度Ttを出力
するものである。
【0067】第1のPID制御手段61は、平均温度・
傾斜温度算出手段5からの平均温度Tavと目標平均温
度の制御偏差に基づいて、平均温度が目標平均温度にな
るように操作信号(操作量)Havを配分手段7に出力
し、第2のPID制御手段6 2は、平均温度・傾斜温度
算出手段5からの傾斜温度Ttと目標傾斜温度との制御
偏差に基づいて、傾斜温度が目標傾斜温度になるように
操作信号(操作量)Htを配分手段7に出力する。
【0068】配分手段7は、各PID制御手段61,62
の操作信号(操作量)Hav,Htを以下のような配分
比で各ヒータ11,12に配分する。
【0069】すなわち、図5は、図3のシステムの制御
系のブロック線図である。平均温度を制御する第1のP
ID制御手段61から与えられる操作量Havを、配分
手段7で干渉をなくす、すなわち、非干渉化するための
係数である非干渉化係数(配分比)k1,k2で第1,第
2のヒータ11,12にそれぞれ配分するとともに、第2
のPID制御手段62から与えられる操作量Htを、非
干渉化係数(配分比)k3,k4で第1,第2のヒータ1
1,12にそれぞれ配分し、これによって、各ヒータ
1,12に熱量H1,H2がそれぞれ与えられるとする。
【0070】また、第1のヒータ11に与えられた熱量
1は、伝達係数(干渉係数)l1で第1の温度センサ2
1に伝わる一方、伝達係数(干渉係数)l2で第2の温度
センサ22に伝わり、同様に、第2のヒータ12に与えら
れた熱量H2は、伝達係数(干渉係数)l3で第1の温度
センサ21に伝わる一方、伝達係数(干渉係数)l4で第
2の温度センサ22に伝わるとする。
【0071】そして、第1の温度センサ21で検出され
た検出温度T1と第2の温度センサ2 2で検出された検出
温度T2とから平均温度Tavおよび傾斜温度Ttが算
出されて各PID制御手段61,62に入力されるという
制御ループが構成されている。
【0072】以上のことから平均温度Tavは、次のよ
うに示される。
【0073】 Tav=(T1+T2)/2 ={(l1・H1+l3・H2)+(l2・H1+l4・H2)}/2 ={(l1+l2)H1+(l3+l4)H2}/2 ={(l1+l2)(k1・Hav+k3・Ht) +(l3+l4)(k2・Hav+k4・Ht)}/2 =〔{(l1+l2)k1+(l3+l4)k2}Hav +{(l1+l2)k3+(l3+l4)k4}Ht〕/2 ここで、平均温度Tavは、平均温度の操作量Havの
みの関数で、傾斜温度の操作量Htの影響をなくすよう
に、すなわち、非干渉化を図るために、Htの項を0と
する。
【0074】 すなわち、(l1+l2)・k3+(l3+l4)・k4=0 したがって、k4=−{(l1+l2)/(l3+l4)}
3 となる。
【0075】同様に、傾斜温度Ttは、次のように示さ
れる。
【0076】 Tt=T1−T2 =(l1・H1+l3・H2)−(l2・H1+l4・H2) =(l1−l2)H1+(l3−l4)H2 =(l1−l2)(k1・Hav+k3・Ht) +(l3−l4)(k2・Hav+k4・Ht) ={(l1−l2)k1+(l3−l4)k2}Hav +{(l1−l2)k3+(l3−l4)k4}Ht ここで、傾斜温度Ttは、傾斜温度の操作量Htのみの
関数で、平均温度の操作量Havの影響をなくすよう
に、すなわち、非干渉化を図るために、Havの項を0
とする。
【0077】 すなわち、(l1−l2)k1+(l3−l4)k2=0 したがって、k2=−{(l1−l2)/(l3−l4)}
1 となる。
【0078】以上のことから傾斜温度に影響を与えずに
平均温度を制御し、また、平均温度に影響を与えずに傾
斜温度を制御する、すなわち、平均温度と傾斜温度との
干渉をなくした非干渉制御を行うためには、非干渉化係
数(配分比)k1〜k4で配分すればよく、この非干渉化
係数(配分比)k1〜k4を算出するためには、第1のヒ
ータ11の熱量が第1,第2の温度センサ21,22に伝
わる伝達係数(干渉係数)l1,l2および第2のヒータ
2の熱量が第1,第2の温度センサ21,22に伝わる
伝達係数(干渉係数)l3,l4を知る必要がある。
【0079】なお、非干渉化係数(配分比)k1〜k
4は、k1とk2、k3とk4との比率がそれぞれ分かれ
ば、PID制御のゲインによって対応できるので、絶対
値は必ずしも必要でない。
【0080】伝達係数(干渉係数)l1〜l4は、次のよ
うにして求めることができる。すなわち、ヒータを一つ
だけ変動させて他のヒータは、一定値に固定、例えば、
オンのままあるいはオフのままとし、ヒータの変化量に
対する各温度センサの変化量の比率を伝達係数とするの
である。
【0081】例えば、第2のヒータ22をオフのままの
状態で、第1のヒータ11を、ある温度振幅で変動させ
たときに、第1,第2の温度センサ21,22の検出温度
にどの程度の温度振幅の変動が生じるかによって伝達係
数l1,l2を計測することができ、例えば、ヒータを温
度振幅1で変動させたきに、温度センサの温度振幅が1
0であれば、伝達係数は、10(=10/1)となる。
【0082】ここで、図3の配分手段7における非干渉
化係数(配分比)を用いた配分についてさらに具体的に
説明する。制御対象27の特性は、上述の図32に示さ
れており、この特性から伝達係数は、l1=1,l2
0.9,l3=0.9,l4=1である。
【0083】したがって、上述の非干渉化係数の式に代
入すると、 k4=−{(l1+l2)/(l3+l4)}k3 =−{(1+0.9)/(0.9+1)}k3 =−k3 また、k2=−{(l1−l2)/(l3−l4)}k1 =−{(1−0.9)/(0.9−1)}k1 =k1 となる。
【0084】そこで、仮に各ヒータに配分される熱量の
合計が、Havと等しくなるように、すなわち、k1
2=1となるように設計し、分かり易さのために、k3
=1という条件を加える。
【0085】これによって、 k2=k1=1/2 また、k4=−k3=−1となり、配分比(非干渉化係
数)が決定される。
【0086】つまり、図5に示されるように、平均温度
の操作量Havは、1/2ずつ各ヒータ11,12に配分
し、傾斜温度の操作量Htは、第1のヒータ11には、
そのまま、第2のヒータ12には、符号を変えて配分す
ればよい。
【0087】ここで、配分比(非干渉化係数)は、次の
ようにして求めることもできる。
【0088】すなわち、上述のモード変換行列Gmと上
述の伝達係数(干渉係数)の行列Pとから配分比(非干
渉化係数)の行列(以下「前置補償行列」ともいう)G
cは、以下のように逆行列として求めることもできる。
【0089】Gc=(Gm・P)-1 この実施の形態に適用すると、制御対象のある時間の特
性である伝達係数(干渉係数)の行列Pを、
【0090】
【数3】
【0091】とすると、配分比(非干渉化係数)の行列
である前置補償行列Gcは、
【0092】
【数4】
【0093】確かめとして、Gm・P・Gc=1となる
かどうかを計算する。
【0094】
【数5】
【0095】なお、この実施の形態では、配分比(非干
渉化係数)を、伝達係数を用いて算出したけれども、本
発明の他の実施の形態として、伝達係数に代えて、周波
数特性も表す伝達関数を用いて算出するようにしてもよ
い。
【0096】図3のシステムでは、配分手段7は、図6
に示されるように、平均温度の操作信号(操作量)Ha
vは、各減衰器11,12でそれぞれ1/2に減衰して
加算器13および減算器14にそれぞれ配分され、傾斜
温度の操作信号(操作量)Htは、加算器13および減
算器14にそれぞれ配分され、加算器13の出力H1
第1のヒータ11に、減算器14の出力H2が第2のヒー
タ12に与えられる。
【0097】この配分手段7によれば、平均温度の操作
量Havによって平均温度を変化させる場合には、各ヒ
ータ11,12に操作量が等しく配分されるので、傾斜温
度に影響を与えることなく、すなわち、干渉することな
く、平均温度のみを変化させることができる。また、傾
斜温度の操作量Htによって傾斜温度を変化させる場合
には、一方のヒータ11には、その操作量が1倍で与え
られる一方、他方のヒータ12には、−1倍で与えられ
るので、両ヒータに与える総熱量を変化させることな
く、すなわち、平均温度に影響を与えることなく、傾斜
温度のみを変化させることができる。
【0098】図7は、図3のシステムにおいて、第1の
PID制御手段61でオートチューニングを行った場合
の平均温度・傾斜温度算出手段5からの平均温度Tav
(破線)、第1のPID制御手段61からの平均温度の
操作量Hav(実線)、平均温度・傾斜温度算出手段5
からの傾斜温度Tt(二点鎖線)、第2のPID制御手
段62からの傾斜温度の操作量Ht(一点鎖線)をスコ
ープに表示した波形を示しており、平均温度の操作量H
avがオンオフするリミットサイクルが生じており、平
均温度Tavの周期と振幅とを使ってPID制御のパラ
メータを決定することができる。なお、平均温度Ta
v、傾斜温度Tt、平均温度の操作量Hav、傾斜温度
の操作量Htが、上述の図30,図33の従来例のPV
1、PV2、MV1、MV2にそれぞれ対応する。
【0099】なお、第1のPID制御手段61のPID
制御のパラメータが決定された後には、そのパラメータ
を設定し、次は、傾斜温度を制御する第2のPID制御
手段62のオートチューニングを行ってPID制御のパ
ラメータを決定する。
【0100】このように、平均温度と傾斜温度とを制御
量として制御することにより、干渉のない制御が可能と
なり、PID制御のパラメータを決定するためのオート
チューニングが可能となり、最適な制御パラメータを設
定して所望の制御特性を得ることができる。
【0101】このようにしてPID制御のパラメータが
設定された後の通常の制御では、平均温度が目標平均温
度になるように、傾斜温度が目標傾斜温度になるように
制御が行われる。
【0102】次に、この実施の形態と従来例とのシミュ
レーションの結果を以下に説明する。このシミュレーシ
ョンでは、以下のような制御対象のモデリングを行っ
た。すなわち、熱干渉系の最も簡単な例として、図8に
示すように2組のヒータ11,12と温度センサ21,22
と、その間を熱伝導体50でつないだ熱処理装置を考え
る。制御目的は、2点の温度を任意の設定温度で均一化
することである。図9に制御対象の電気的な等価回路を
示す。R1,R2は、温度センサから周囲の空気への熱抵
抗、C1,C2は、温度センサ近傍の熱容量である。
【0103】制御対象の入力は、2つのヒータ熱量であ
り、ヒータ11の熱量p1の一部は熱伝導体50を伝わっ
て、熱抵抗R3で温度センサ22の温度θ2に干渉し、ヒ
ータ12の熱量p2の一部は、同様に熱抵抗R3で温度セ
ンサ21の温度θ1に干渉する。また、熱量p2の一部の
熱エネルギーは、熱抵抗R4で熱処理装置が固定されて
いる機械装置本体に熱伝導する。ただし、機械装置本体
の熱容量は、非常に大きいので、周囲温度と一致すると
近似した。
【0104】制御対象の等価回路のパラメータは、R1
=R2=10[℃/W]、R3=1[℃/W]、R4=0.
2[℃/W]、C1=C2=10[J/℃]とした。外乱
は、100Wのステップ状とし、従来例とこの実施の形
態と同じ条件で印加した。
【0105】下記の表1のパラメータによる従来のPI
D制御の応答波形を図10に、下記の表2のパラメータ
によるこの実施の形態の応答波形を、図11に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】図10,図11を比較すると、従来の制御
方式で2°Cの温度差が発生していたものが、この実施
の形態では、2つのセンサ間の温度差を0.8°Cまで
改善していることが分かる。
【0109】このような特性の差を生み出せる理由は、
この実施の形態では、傾斜温度と平均温度で独立にPI
Dパラメータを設定できる点にある。この例では、表2
に示すように比例ゲインKpに差をつけ平均温度よりも
傾斜温度の収束を優先するように、傾斜温度制御の比例
ゲインKpを平均温度制御の比例ゲインKpよりも大き
な値に設定した。その結果、簡単なPID制御のパラメ
ータの設定であるにも拘わらず、高精度な温度均一化を
期待できるものである。
【0110】さらに、この実施の形態と従来例との目標
値応答および外乱応答の比較結果を、図12〜図15に
示す。なお、ここでは、CHR(Chien, Hrones and Re
swick)の調整則の目標値応答オーバーシュート無しを
平均温度制御に、外乱応答オーバーシュート20%を傾
斜温度制御に使用した。
【0111】図12および図13が、この実施の形態の
目標値応答および外乱応答の波形であり、図14および
図15が、従来例の目標値応答および外乱応答の波形を
示している。
【0112】図14の従来例の目標値応答では、整定時
間も29秒と長く、オーバーシュートも認められたけれ
ども、この実施の形態の目標値応答では、図12に示さ
れるように整定時間も9秒と短く、オーバーシュートも
認められなかった。
【0113】また、図15の従来例の外乱応答では、整
定時間も32秒と長く、オーバーシュートもやや認めら
れたのに対して、この実施の形態の外乱応答では、図1
3に示されるように、整定時間も6秒と短く、オーバー
シュートも認められなかった。
【0114】すなわち、この実施の形態では、平均温度
制御は、弱くて遅い制御を、傾斜温度制御は、強くて速
い制御を行ったので、目標値応答および外乱応答のいず
れの場合も、オーバーシュートがなく整定時間も短く満
足できるものとなった。
【0115】上述の例では、簡単にするために、n=2
の場合について説明したけれども、ゾーンが3つの場
合、すなわち、ヒータ、温度センサおよびPID制御手
段が3つのn=3の場合にも同様に適用できるものであ
る。
【0116】すなわち、上述の図5に対応する図16の
ブロック線図に示されるように、第1〜第3のヒータ1
1〜13と、各ヒータ11〜13に個別的に対応する第1〜
第3の温度センサ21〜23とが、第1〜第3の各ゾーン
にそれぞれ配置されており、第1のゾーンと第2のゾー
ンとが隣接し、第2のゾーンと第3のゾーンとが隣接し
ているとし、簡単化のために、隣接するゾーン間でのみ
干渉があるとし、第1のヒータ11から第2の温度セン
サ22への伝達係数(干渉係数)をl1、第2のヒータ1
2から第1,第3の温度センサ21,23への伝達係数
(干渉係数)をl2,l3、第3のヒータ13から第2の
温度センサ22への伝達係数(干渉係数)をl4とし、第
1のヒータ11から第1の温度センサ21といった相対す
る伝達係数(干渉係数)は、1.0とする。
【0117】また、干渉をなくすための非干渉化係数
(配分比)について、平均温度を制御する第1のPID
制御手段61の操作量Havを第2,第3のヒータ12
3に配分するための非干渉化係数(配分比)をk1,k
2、第1の傾斜温度Tt1を制御する第2のPID制御手
段62の操作量Ht1を第1,第3のヒータ11,13に配
分するための非干渉化係数(配分比)をk3,k4、第2
の傾斜温度Tt2を制御する第3のPID制御手段63
操作量Ht2を第1,第2のヒータ11,12に配分する
ための非干渉化係数(配分比)をk5,k6とし、第1の
PID制御手段61から第1のヒータ11といった相対す
る非干渉化係数は1.0とする。なお、この例では、第
1の傾斜温度Tt1は、第2,第3の温度センサ22
3の検出温度T2,T3の平均の検出温度と第1の温度
センサ21の検出温度T1との差としており、また、第2
の傾斜温度Tt2は、第2の温度センサ22の検出温度T
2と第3の温度センサ23の検出温度T3との差としてい
る。
【0118】このとき、平均温度Tavは、次のように
示される。
【0119】 Tav=(T1+T2+T3)/3 ={(H1+l2・H2)+(l1・H1+H2+l4・H3) +(l3・H2+H3)}/3 ={(1+l1)H1+(1+l2+l3)H2+(1+l4)H3}/3 ={(1+l1)(Hav+k3・Ht1+k5・Ht2) +(1+l2+l3)(k1・Hav+Ht1+k6・Ht2) +(1+l4)(k2・Hav+k4・Ht1+Ht2)}/3 =〔{(1+l1)+(1+l2+l3)k1+(1+l4)k2}Hav +{(1+l1)k3+(1+l2+l3)+(1+l4)k4}Ht1 +{(1+l1)k5+(1+l2+l3)k6+(1+l4)}Ht2〕/3 ここで、平均温度Tavは、平均温度の操作量Havの
みの関数で、傾斜温度の操作量Ht1,Ht2の操作量の
影響をなくすように、すなわち、非干渉化を図るため
に、Ht1,Ht2の項を0とする。
【0120】すなわち、(1+l1)k3+(1+l2
3)+(1+l4)k4=0 (1+l1)k5+(1+l2+l3)k6+(1+l4)=
0 となる。
【0121】これを以下のように簡略化する。
【0122】 la+lb・k3+lc・k4=0 …… ld+le・k5+lf・k6=0 …… 第1の傾斜温度Tt1についても同様にして、第1の傾
斜温度の操作量Ht1のみの関数で、平均温度の操作量
Havおよび第2の傾斜温度の操作量Ht2の影響を受
けないという条件を適用して、以下のような同様の方程
式が得られる。
【0123】 lg+lh・k1+li・k2=0 …… lj+lk・k5+ll・k6=0 …… また、第2の傾斜温度Tt2についても同様に、以下の
方程式が得られる。
【0124】 lm+ln・k1+lo・k2=0 …… lp+lq・k3+lr・k4=0 …… 伝達係数l1〜l4、したがって、la〜lrは、n=2
の場合と同様にして求められるので、非干渉化係数k1
〜k6を未知数とする上記〜の6つ方程式が得られ
ることになり、これら方程式を解くことにより、配分手
段で配分するための非干渉化係数(配分比)k1〜k6
求まることになる。
【0125】例えば、行列式で求めるとすれば、以下の
ようになる。
【0126】
【数6】
【0127】
【数7】
【0128】以上のようにして、本発明は、n=3以上
の制御系にも同様に適用することができるものである。
【0129】なお、配分比(非干渉化係数)の行列であ
る前置補償行列Gcは、上述のように、モード変換行列
Gmと伝達係数(干渉係数)の行列Pとから求めること
もでき、第1のPID制御手段61から第1のヒータ11
といった相対する非干渉化係数も含めて求めることがで
きる。ここで、制御対象のある時間の特性である伝達係
数(干渉係数)の行列Pを、
【0130】
【数8】
【0131】仮に、l1=l2=l3=l4=0.9と
すると、
【0132】
【数9】
【0133】前置補償行列Gcは、
【0134】
【数10】
【0135】確かめとして、Gm・P・Gc=1となる
かどうかを計算する。
【0136】
【数11】
【0137】図17は、本発明の他の実施の形態の温度
調節器のブロック図であり、上述の図3の実施の形態に
対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0138】この実施の形態では、平均温度制御と傾斜
温度制御との制御のバランスを微調整するファインチュ
ーニング器80を備えており、ユーザが、ファインチュ
ーニング器80に制御バランス係数を、例えば通信によ
って設定することにより、ファインチューニング器80
では、制御バランス係数に応じた平均温度制御補正値と
傾斜温度制御補正値とを出力し、その補正値で各PID
制御手段61,62のパラメータを変更するものである。
変更するパラメータとしては、例えば、PIDの制御パ
ラメータや操作量を制限する後述のリミッタのリミット
値である。
【0139】この制御バランス係数によって、傾斜温度
の制御は強く速く、平均温度の制御は弱く遅く、あるい
は、傾斜温度の制御は弱く遅く、平均温度の制御は強く
速くなどを決定するのである。強さの程度は、用途や制
御対象の特性により最適な条件が変化するので、ユーザ
が、その変化に合わせてこの制御バランス係数を変更
し、用途や制御対象の特性に合った制御条件の微調整
(ファインチューニング)を行うのである。
【0140】強く調整する例としては、比例ゲインを大
きくすることやリミット値を大きくする場合であり、逆
に弱く調整する例としては、比例ゲインを小さくするこ
とやリミット値を小さくする場合である。また、速く調
整する例としては、積分時定数や微分時定数を短くする
場合であり、逆に遅く調整する例としては、積分時定数
や微分時定数を大きくする場合である。
【0141】すなわち、この実施の形態では、ユーザ
が、用途や制御対象の特性に応じて制御バランス係数を
設定することにより、それに応じたPIDの制御パラメ
ータ等がファインチューニング器80で演算されて対応
するPID制御手段61,62の制御パラメータ等が変更
されるものである。したがって、ファインチューニング
器80による演算処理は、変更するパラメータおよび制
御バランス係数などに応じて規定されることになる。
【0142】この図17では、n=2の場合について説
明したけれども、n=3以上であっても同様に適用でき
るものであり、また、制御バランス係数によるパラメー
タの変更は、複数のPID制御手段の少なくとも一つに
ついて行えばよい。
【0143】本発明の他の実施の形態として、図18に
示されるように、制御バランス係数を、平均温度制御補
正値と同じものとし、この平均温度制御補正値に応じ
て、ファインチューニング器81で傾斜温度制御補正値
を決定するようにしている。つまり、平均温度制御のパ
ラメータを元に傾斜温度制御のパラメータを変更するの
である。用途や制御対象の特性などによっては、逆に傾
斜温度制御のパラメータを元に平均温度制御のパラメー
タを変更する場合もある。
【0144】傾斜温度制御と平均温度制御とは、後述の
ようにトレードオフの条件になることがある。例えば、
傾斜温度制御の一つのパラメータを強めた場合には、平
均温度制御の方のパラメータは弱くするのが最適である
という関係や傾斜温度制御の特性を改善するためには平
均温度制御のパラメータを弱めるといった操作である。
【0145】このようにファインチューニング器80,
81によってオートチューニングで不充分なとき、原理
を詳しく知らない人でも、傾斜温度制御を優先するか、
あるいは、平均温度制御を優先するかを調整してより最
適な状態にPID制御手段の条件を近づけることがで
き、ユーザが非常に使いやすくなる。
【0146】図19は、本発明のさらに具体的な実施の
形態の一例を示す温度調節器のブロック図であり、上述
の実施の形態に対応する部分には、同一の参照符号を付
す。
【0147】上述の図17および図18の実施の形態で
は、制御バランス係数に応じてPIDの制御パラメータ
を調整したけれども、この実施の形態では、制御バラン
ス係数によって平均温度制御のPID制御手段61の操
作量を制限するリミッタ82の上限値を変更するように
している。
【0148】ここで、平均温度制御と傾斜温度制御との
関係について、さらに詳細に説明する。操作量が飽和す
るような大きな外乱が全体に加わるような場合、例え
ば、熱処理盤にウェハを載置したような場合に、リミッ
タ82で平均温度制御の操作量を制限することで、温度
を均一化(傾斜温度=0)する均一化制御性能を向上さ
せることができる。
【0149】その理由を以下に詳述する。例えば、熱処
理盤に、外乱としてウェハを載置するような面内温度均
一化の外乱応答時に、操作量の飽和がある場合は、平均
温度制御と傾斜温度制御とはトレードオフとなってい
る。
【0150】説明の準備として、2入出力系の例で、2
組ある操作量MVについて、図20を用いて述べる。平
均用PIDコントローラ61から出力される信号が平均
MV、傾斜用PIDコントローラ62から出力される信
号が傾斜MVである。平均MVと傾斜MVは、前置補償
器(配分手段)7を通過し、さらに、飽和リミッタ83
1,832を通過し、ch1MVとch2MVとのch毎
のMVとなる。前置補償器7は、簡単のため図20に示
されるように、1と−1とで構成している。したがっ
て、ch1MV=平均MV−傾斜MVとなっており、c
h2MV=平均MV+傾斜MVの意味になっている。c
h毎に各MVは、当然0%以下と100%以上は出力で
きないのでリミットされている。
【0151】トレードオフの原因は、図21に示される
ように、平均MVが100%に既に飽和している場合、
傾斜MVが温度差を0にする制御のための値を出力した
としても、ch毎のMVの飽和の中に埋もれてしまい、
機能しないためである。
【0152】逆に、傾斜MVが制御量である温度差を0
にするように働かせたいならば、図22のように、平均
MVでch毎のMVが飽和しないように平均MVのリミ
ット値で抑制すればよい。そうすれば、傾斜MVの値
は、ch毎MVに反映され、温度差が0に速く収束す
る。つまり、均一化制御が上手く働くのである。その代
わり、ch毎のMVは、100%よりも小さな値になる
ために、平均的な温度の収束時間は長引くのである。こ
れがトレードオフである。
【0153】そこで、この実施の形態では、図19に示
されるように、リミッタ82によって平均温度制御の操
作量を抑制するので、PID制御手段61〜6nからの操
作量が飽和するような大きな外乱を受けた場合に、傾斜
温度制御は、ch毎の操作量の飽和の中に隠れることな
く、表に現れて均一動作が可能となる。 この場合、制
御バランス係数の設定によりリミッタ82における平均
温度制御の操作量の上限値を大きくすれば、平均制御優
先(即応性優先)の制御となり、小さくすれば、平均を
制限して傾斜制御優先(均一性優先)の制御となる。
【0154】図23は、本発明の他の実施の形態のブロ
ック図であり、上述の実施の形態に対応する部分には、
同一の参照符号を付す。
【0155】この実施の形態では、制御バランス係数と
検出された平均温度とに基づいて、ファインチューニン
グ器84で平均温度制御の操作量の上限のリミット値を
演算するものである。
【0156】温度が高く、リミット値の上限値を高くし
たい場合に有効である。すなわち、高温になると、熱処
理によって奪われる熱量は、大きくなる。例えば、高温
の熱処理盤に、ウェハを載置した場合にウェハに奪われ
る熱量は大きくなる。つまり、外乱が大きくなり、平均
温度が飽和しやすくなる。飽和によって平均温度制御の
操作量が小さいと、平均温度の復帰に時間を要する。こ
れを防ぐためには、高温では、平均温度制御の操作量の
上限値を大きくしたい場合があり、かかる場合に有効で
ある。すなわち、ファインチューニング器84では、制
御バランス係数および平均温度・傾斜温度制御手段(モ
ード変換器)5からの平均温度(PV平均)に基づい
て、温度が高くなればリミッタ82の上限値を大きくす
るように動作するのである。
【0157】例えば、(PV平均−室温)×制御バラン
ス係数+リミット値を、新たなリミット値とするもので
あり、リミット値は、室温で100%となるように設定
され、制御バランス係数は、プラス側で即応性優先(平
均制御優先)となり、マイナス側で均一性優先(傾斜制
御優先)となる。
【0158】なお、本発明の他の実施の形態として、図
24に示されるように、制御バランス係数によって傾斜
温度制御の操作量を制限する少なくとも一つのリミッタ
85の上限値を制限して傾斜温度制御を制限して平均温
度制御を優先してもよい。
【0159】また、平均温度制御のリミッタおよび傾斜
温度制御のリミッタの両者のリミット値を変更するよう
にしてもよく、さらには、PIDの制御パラメータを併
せて変更するようにしてもよい。
【0160】上述の実施の形態では、リミッタの上限値
を変更したけれども、本発明の他の実施の形態として、
リミッタの下限値あるいは両者を変更するようにしても
よい。
【0161】なお、本発明は、傾斜温度が0の均一性制
御に限らず、傾斜温度がある値を有する温度勾配を持た
せた制御に適用してもよいのは勿論である。
【0162】上述の各実施の形態では、各PID制御手
段は、平均温度が目標平均温度になるように、あるい
は、傾斜温度が目標傾斜温度になるようにそれぞれ制御
するものであり、目標平均温度および目標傾斜温度は、
ユーザが設定するのであるが、従来では、各ch毎に目
標温度を設定していたユーザにとっては、目標平均温度
や目標傾斜温度の設定は理解しにくいものである。
【0163】そこで、図25に示されるように、各ch
毎の目標温度SPから目標平均温度および目標傾斜温度
を演算するモード変換器5’を設けてもよい。なお、こ
の図25において、上述の図3に対応する部分には、同
一の参照符号を付している。このモード変換器5’は、
制御対象27からのフィードバック量である各chの温
度センサの検出温度から平均温度と傾斜温度とを算出す
るモード変換器5と同じ構成である。
【0164】このようにモード変換器5’を追加するこ
とによって、ユーザは、平均温度や傾斜温度を考慮する
ことなく、従来と同様に各ch毎に目標温度SPを設定
すればよい。
【0165】さらに、本発明の他の実施の形態として、
図26に示されるように、制御対象27からのフィード
バック量である各chの温度センサの検出温度と目標温
度SPとの温度偏差を求め、この各ch毎の温度偏差か
ら制御偏差である平均温度偏差および傾斜温度偏差を演
算するモード変換器5’’を設けてもよい。この構成に
よれば、ユーザは、平均温度や傾斜温度を考慮すること
なく、従来と同様に各chの目標温度を設定できる一
方、モード変換器5’’を一つにすることができ、メモ
リ容量の削減と処理の簡素化を図ることができる。
【0166】すなわち、上述の各実施の形態では、モー
ド変換器5,5’は、複数の温度センサからの検出温度
を、平均温度および傾斜温度に変換するものであったの
に対して、この実施の形態のモード変換器5’’は、複
数の温度センサからの検出温度と目標温度との温度偏差
を、検出された平均温度と目標平均温度との偏差である
平均温度偏差に変換するとともに、検出された傾斜温度
と目標傾斜温度との偏差である傾斜温度偏差に変換する
ものである。
【0167】つまり、上述の各実施の形態では、検出温
度を、平均温度および傾斜温度に変換した後に制御偏差
を求めるのに対して、この実施の形態では、検出温度と
目標温度との温度偏差を求め、その温度偏差を、制御偏
差である平均温度偏差および傾斜温度偏差に変換するも
のである。
【0168】本発明の他の実施の形態として、平均温度
に代えて、例えば、中央のゾーンの温度などを代表温度
とし、代表温度と傾斜温度とを制御量として制御を行っ
てもよい。
【0169】本発明の他の実施の形態として、制御バラ
ンス係数を自動的に切り換えるようにしてもよい、例え
ば、熱処理盤にウェハが載置されるのに応じて制御バラ
ンス係数を切り換えるのである。
【0170】上述の実施の形態では、平均温度は、全体
の平均温度一つだけを用いたけれども、本発明の他の実
施の形態として、例えば、複数に区分した各グループの
各平均温度、すなわち、複数の平均温度を用いるように
してもよい。
【0171】上述の実施の形態では、PID制御に適用
して説明したけれども、本発明は、PID制御に限ら
ず、オンオフ制御、比例制御、積分制御などの他の制御
方式にも適用できるものである。
【0172】また、本発明の熱処理装置は、熱酸化装置
に限らず、拡散炉やCVD装置、例えば、図27に示さ
れるように、枚葉式のCVD装置における熱処理盤の温
度制御にも適用できるものである。なお、図27におい
て、ウェーハ60が載置される熱処理盤61は、同心状
に外円部62、中間部63、中心部64に3分割されて
おり、各部に個別的に対応するヒータ65〜67が設け
られて各ゾーン毎に温度制御するものである。また、本
発明の熱処理装置は、射出成形機のシリンダ部の温度制
御あるいは包装機のヒータ台の温度制御などにも適用で
きるものである。
【0173】上述の実施の形態では、ヒータなどの加熱
手段を用いた温度制御に適用した説明したけれとも、ペ
ルチェ素子や冷却器などを用いた温度制御に適用しても
よいのは勿論であり、さらに、加熱手段と冷却手段とを
併用する温度制御に適用してもよい。
【0174】また、本発明は、温度制御に限らず、圧
力、流量、速度あるいは液位などの他の物理状態の制御
に適用することもできる。
【0175】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、干渉のあ
る制御対象の制御において、その干渉を低減することが
可能となるとともに、最適な制御パラメータの設定も可
能となる。
【0176】しかも、調整手段によって、状態制御のバ
ランスを調整できることになり、用途や制御対象の特性
などに応じて適切な状態制御を行えることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る温度制御シス
テムの概略構成図である。
【図2】図1の温度調節器のブロック図である。
【図3】温度センサ、ヒータおよびPID制御手段が2
つの場合の構成図である。
【図4】図3の平均温度・傾斜温度算出手段5のブロッ
ク図である。
【図5】図3の制御系のブロック線図である。
【図6】図3の配分手段のブロック図である。
【図7】図3のシステムのオートチューニングの際の波
形図である。
【図8】制御対象のモデルを示す図である。
【図9】制御対象の等価回路図である。
【図10】従来例の応答波形を示す図である。
【図11】実施の形態の応答波形を示す図である。
【図12】実施の形態の目標値応答波形を示す図であ
る。
【図13】実施の形態の外乱応答波形を示す図である。
【図14】従来例の目標値応答波形を示す図である。
【図15】従来例の外乱応答波形を示す図である。
【図16】ゾーンが3つの場合の制御系のブロック線図
である。
【図17】本発明の他の実施の形態のブロック図であ
る。
【図18】本発明のさらに他の実施の形態のブロック図
である。
【図19】本発明の他の実施の形態のブロック図であ
る。
【図20】操作量を説明するための構成図である。
【図21】傾斜温度制御が働かない場合の操作量の変化
を示す図である。
【図22】傾斜温度制御が働く場合の操作量の変化を示
す図である。
【図23】本発明の他の実施の形態のブロック図であ
る。
【図24】本発明のさらに他の実施の形態のブロック図
である。
【図25】本発明の他の実施の形態のブロック図であ
る。
【図26】本発明のさらに他の実施の形態のブロック図
である。
【図27】他の熱処理装置を示す図である。
【図28】熱酸化装置の構成を示す図である。
【図29】干渉のない二つの制御対象を制御するシステ
ムの構成図である。
【図30】図29のシステムのオートチューニングの際
の波形図である。
【図31】干渉のある制御対象を制御するシステムの構
成図である。
【図32】図31の制御対象の構成を示す図である。
【図33】図31のシステムのオートチューニングの際
の波形図である。
【符号の説明】
0〜1n ヒータ 20〜2n 温度センサ 3 制御対象 4 温度調節器 5 平均温度・傾斜温度算出手段 61〜6n PID制御手段 7 配分手段 15 ヒータプレート 18 熱酸化装置 80,81 ファインチューニング器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古川 大富 京都府京都市右京区花園土堂町10番地 オ ムロン株式会社内 (72)発明者 高石 明 京都府京都市右京区花園土堂町10番地 オ ムロン株式会社内 Fターム(参考) 5H004 GB15 GB20 HA01 HB01 JA22 JB08 JB11 JB18 JB20 KA54 KA71 KB02 KB04 KB06 LA15 LA18 5H323 AA27 AA40 BB04 CA06 CB02 CB42 DA01 EE11 FF01 FF10 HH03 KK05 LL01 LL02 LL12 MM06

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 制御対象の物理状態をそれぞれ検出する
    複数の検出手段からの情報を、前記物理状態の勾配を示
    す情報に変換するとともに、物理状態の代表状態を示す
    情報に変換する変換手段と、 前記変換手段からの各情報が個別的に与えられる複数の
    状態制御手段と、 前記各状態制御手段からの操作信号を、複数の操作手段
    に、各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段に
    よる制御に与える影響をなくす又は小さくするように配
    分する配分手段と、 前記勾配を示す情報が与えられる状態制御手段と代表状
    態を示す情報が与えられる状態制御手段との状態制御の
    バランスを調整する調整手段と、 を備えることを特徴とする制御装置。
  2. 【請求項2】 制御対象の物理状態をそれぞれ検出する
    複数の検出手段からの情報と前記複数の検出手段に個別
    的に対応する複数の目標情報との偏差を、前記物理状態
    の勾配を示す情報の偏差に変換するとともに、物理状態
    の代表状態を示す情報の偏差に変換する変換手段と、 前記変換手段からの前記勾配を示す情報の偏差または前
    記代表状態を示す情報の偏差を制御偏差として操作信号
    をそれぞれ出力する複数の状態制御手段と、 前記各状態制御手段からの操作信号を、複数の操作手段
    に、各状態制御手段による制御が、他の状態制御手段に
    よる制御に与える影響をなくす又は小さくするように配
    分する配分手段と、 前記勾配を示す情報の偏差を制御偏差として操作信号を
    出力する状態制御手段と前記代表状態を示す情報の偏差
    を制御偏差として操作信号を出力する状態制御手段との
    状態制御のバランスを調整する調整手段と、 を備えることを特徴とする制御装置。
  3. 【請求項3】 制御対象の温度をそれぞれ検出する複数
    の温度検出手段から得られる検出温度を、複数の検出温
    度に基づく傾斜温度に変換するとともに、代表的な代表
    温度に変換する変換手段と、 前記変換手段からの傾斜温度または代表温度を制御量と
    して操作信号をそれぞれ出力する複数の温度制御手段
    と、 前記各温度制御手段からの操作信号を、前記制御対象を
    加熱(または冷却)する複数の加熱(または冷却)手段
    に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段に
    よる制御に与える影響をなくす又は小さくするように配
    分する配分手段と、 前記傾斜温度を制御量として操作信号を出力する温度制
    御手段と前記代表温度を制御量として操作信号を出力す
    る温度制御手段との温度制御のバランスを調整する調整
    手段と、 を備えることを特徴とする温度調節器。
  4. 【請求項4】 制御対象の温度をそれぞれ検出する複数
    の温度検出手段から得られる検出温度と前記複数の温度
    検出手段に個別的に対応する複数の目標温度との偏差
    を、傾斜温度の偏差に変換するとともに、代表的な代表
    温度の偏差に変換する変換手段と、 前記変換手段からの傾斜温度の偏差または前記代表温度
    の偏差を制御偏差として操作信号をそれぞれ出力する複
    数の温度制御手段と、 前記各温度制御手段からの操作信号を、複数の操作手段
    に、各温度制御手段による制御が、他の温度制御手段に
    よる制御に与える影響をなくす又は小さくするように配
    分する配分手段と、 前記傾斜温度の偏差が与えられる温度制御手段と前記代
    表温度の偏差が与えられる温度制御手段との温度制御の
    バランスを調整する調整手段と、 を備えることを特徴とする温度調節器。
  5. 【請求項5】 前記調整手段は、設定に応じて、前記温
    度制御手段の制御パラメータおよび操作信号を制限する
    リミッタの少なくとも一方を調整する請求項3または4
    記載の温度調節器。
  6. 【請求項6】 前記代表温度が複数の検出温度に基づく
    平均温度であり、前記調整手段は、設定に応じて、平均
    温度を制御量として操作信号を出力する温度制御手段ま
    たは平均温度の偏差が与えられる温度制御手段の操作信
    号を制限するリミッタの上限値を調整する請求項5記載
    の温度調節器。
  7. 【請求項7】 請求項3ないし6のいずれかに記載の温
    度調節器と、制御対象としての熱処理炉または熱処理盤
    と、前記熱処理炉または熱処理盤を加熱(または冷却)
    する複数の加熱(または冷却)手段と、前記熱処理炉ま
    たは熱処理盤の温度を検出する複数の温度検出手段とを
    備えることを特徴とする熱処理装置。
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