JP4361852B2 - 制御装置 - Google Patents

制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4361852B2
JP4361852B2 JP2004271936A JP2004271936A JP4361852B2 JP 4361852 B2 JP4361852 B2 JP 4361852B2 JP 2004271936 A JP2004271936 A JP 2004271936A JP 2004271936 A JP2004271936 A JP 2004271936A JP 4361852 B2 JP4361852 B2 JP 4361852B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
state quantity
control
value
deviation
relative
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004271936A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006085599A (ja
Inventor
雅人 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Azbil Corp
Original Assignee
Azbil Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Azbil Corp filed Critical Azbil Corp
Priority to JP2004271936A priority Critical patent/JP4361852B2/ja
Publication of JP2006085599A publication Critical patent/JP2006085599A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4361852B2 publication Critical patent/JP4361852B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Feedback Control In General (AREA)

Description

本発明は、プロセス制御技術に関するものであり、特に少なくとも2個の制御ループを有する制御系において状態量差などを制御対象とする制御装置に関するものである。
図11(a)に、従来の制御装置である温度調節計の構成を示す(例えば特許文献1参照)。炉1001内には、熱処理ワーク1016が搬入され、またヒータ1011と、制御温度TC1を検出する検出手段1012と、ワーク1016の表面温度TC2を検出する検出手段1013と、ワーク1016の最深温度TC3を検出する検出手段1014とが配設されている。1002は電力調整器を示している。制御部1003は、制御温度TC1と実行プログラムパターン設定値1033とを比較する比較器1031と、比較器1031の出力により制御されるPID等の制御演算部1032と、ワーク1016の表面温度TC2と最深温度TC3との差を検出する温度差検出器1034と、予め定められた温度差を設定する温度差設定器1035と、温度差検出器1034の出力と温度差設定器1035の出力とを比較する比較器1036と、最深温度TC3の温度変化率を検出する変化率検出器1038と、変化率検出器1038の出力と予め定められた温度変化率を設定する変化率設定器1039の出力とを比較する比較器1040と、比較器1036の出力と比較器1040の出力に基づいて傾斜演算し実行プログラムパターン設定値1033を制御する傾斜演算器1037とを有している。
温度差設定器1035には許容可能な最大の温度差が設定され、また変化率設定器1039には許容可能な最大の温度変化率が設定される。図11(a)の構成により、熱処理ワーク1016内の温度差、温度変化率の一方もしくは両方が指定された温度許容値以内に入るように、実行プログラムパターン設定値1033中の傾斜が常時修正される。
図11(a)中の破線で囲まれている部分に着目すると、計測された複数の温度TC1,TC2,TC3に基づき温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換が行なわれていることが理解できる。すなわち、図11(a)の温度調節計は、温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換部1041を備えていることになる(図11(b))。
図12(a)に、従来の他の制御装置である温度調整装置の構成を示す(例えば特許文献2参照)。図中の2002は縦型熱処理装置2020の反応管であり、この反応管2002の内部には、ウエハボ−ト2021に搭載された半導体ウエハの近傍の温度を検出する温度センサAが設けられると共に、反応管2002の外面の温度を検出する温度センサBが設けられている。偏差回路部2031は、温度センサAの目標値から後述する補正値を引いた偏差、すなわち温度センサBの目標値を出力する。偏差回路部2032は、温度センサBの目標値から温度センサBの検出値を引いた偏差をPID調節部2004に出力する。PID調節部2004は、入力された偏差に基づいてPID演算を行い、その演算結果を電力制御部2005に出力し、電力制御部2005は、PID調節部2004の出力値に基づいて縦型熱処理装置2020の加熱源であるヒ−タ2006への電力供給量を制御する。一方、補正値出力部2007は、温度センサBの検出値が目標値に収束したとき、この収束した時点の温度センサAの検出値と温度センサBの検出値との差(A−B)を補正値とし、温度センサBの目標値を補正値分だけ修正する。図12(a)の構成により、温度センサAの検出値が目標値に収束する。
図12(a)中の破線で囲まれている部分に着目すると、計測された複数の温度A,Bに基づき温度差(A−B)を算出する状態量変換が行なわれていることが理解できる。すなわち、図12(a)の温度調整装置は、温度差(A−B)を算出する状態量変換部2008を備えていることになる(図12(b))。
以上のように、実際の状態量そのものだけではなく、状態量差を制御系に取り込む努力は従来から行なわれており、特に状態量差を制御対象として制御系を構成するケースでは、制御系に前記状態量変換部が設けられる。
ここで、2個の制御ループにおいて、状態量PV1,PV2そのものではなく、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とを制御対象とすることを考える。この場合の制御装置を図13に示す。図13の制御装置は、状態量平均値PV1’に対する設定値SP1’と状態量平均値PV1’との差を出力する減算器3001と、状態量差PV2’に対する設定値SP2’と状態量差PV2’との差を出力する減算器3002と、減算器3001,3002の出力に基づいてそれぞれ操作量MV1,MV2を算出するコントローラC1,C2と、制御対象プロセスP1,P2に対してそれぞれ操作量MV1,MV2に応じた操作を行うアクチュエータA1,A2と、状態量変換部3003とを有する。
状態量変換部3003は、制御対象プロセスP1,P2の状態量PV1,PV2に対してそれぞれ0.5を乗算する乗算器3004,3005と、状態量PV1,PV2に対してそれぞれ−1,1を乗算する乗算器3006,3007と、乗算器3004と3005の出力を加算する加算器3008と、乗算器3006と3007の出力を加算する加算器3009とから構成される。このような状態量変換部3003により、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とは次式のようになる。
PV1’=0.5PV1+0.5PV2 ・・・(1)
PV2’=PV2−PV1 ・・・(2)
また、状態量変換部3003の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
Figure 0004361852
コントローラC1は状態量平均値PV1’を対象とし、コントローラC2は状態量差PV2’を対象とする。コントローラC1は、設定値SP1’と状態量平均値PV1’との偏差に基づき操作量MV1を算出し、コントローラC2は、設定値SP2’と状態量差PV2’との偏差に基づき操作量MV2を算出する。このとき、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とがそれぞれ制御可能な状態になるために、コントローラC1で算出される操作量MV1はアクチュエータA1に送られ、コントローラC2で算出される操作量MV2はアクチュエータA2に送られるように構成される。これにより、アクチュエータA1は状態量平均値PV1’を制御するために動作し、アクチュエータA2は状態量差PV2’を制御するために動作することになる。このように、図11(b)や図12(b)に示したものと同様の状態量変換部3003を適用するだけで、状態量平均値PV1’を直接制御するコントローラC1と状態量差PV2’を直接制御するコントローラC2とを含むマルチループの制御系を構成でき、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とを所望の値に制御することができる。
しかし、アクチュエータA1の動作により状態量PV1に変化が与えられると、この変化は状態量変換部3003の作用により状態量差PV2’にも影響を与える。同様に、アクチュエータA2の動作により状態量PV2に変化が与えられると、この変化は状態量変換部3003の作用により状態量平均値PV1’にも影響を与える。すなわち、図13に示した制御装置では、状態量変換部3003により人工的にループ間干渉が発生する構成となってしまう。
状態量平均値PV1’を算出するために状態量PV1,PV2に乗算する係数は共に0.5であるため、制御対象プロセスP1のプロセスゲインKp1と制御対象プロセスP2のプロセスゲインKp2とが同程度だと仮定すると、アクチュエータA1が動作することによる状態量平均値PV1’への影響度と、アクチュエータA2が動作したときのループ間干渉による状態量平均値PV1’への影響度(アクチュエータA2により状態量平均値PV1’が乱れる影響度)とは、同程度ということになる。同様に、状態量差PV2’を算出するために状態量PV1,PV2に乗算する係数の絶対値は共に1であるため、アクチュエータA2が動作することによる状態量差PV2’への影響度と、アクチュエータA1が動作したときのループ間干渉による状態量差PV2’への影響度(アクチュエータA1により状態量差PV2’が乱れる影響度)とは、同程度ということになる。したがって、状態量変換部を単純に適用するだけでは、本質的に人工的なループ間干渉が強くなる傾向にあるので、制御性が劣化しやすくなるという問題が発生する。
そこで、ループ間の非干渉化を実現するために、非特許文献1に開示されたクロスコントローラを適用することが容易に想到できる。非特許文献1に開示された制御装置の構成を図14に示す。図14の制御装置は、設定値SP1と状態量PV1との差を出力する減算器4001と、設定値SP2と状態量PV2との差を出力する減算器4002と、減算器4001,4002の出力に基づいてそれぞれ操作量MV1,MV2を算出するコントローラ4003,4004と、操作量MV1,MV2をそれぞれ変換した操作量MV1’,MV2’を出力するクロスコントローラ4005とを有する。
クロスコントローラ4005は、ループ間干渉による影響分を予め打ち消す処理を操作量MV1,MV2に対して行うものであり、操作量MV1に係数M12を乗算する乗算器4007と、操作量MV2に係数M21を乗算する乗算器4008と、操作量MV1と乗算器4008の出力との差を操作量MV1’として出力する減算器4009と、操作量MV2と乗算器4007の出力との差を操作量MV2’として出力する減算器4010とから構成される。ここでは説明を簡単にするため、プロセス時定数やプロセスむだ時間などの動的特性は無視することにする。操作量MV1’,MV2’に対する制御対象プロセス4006のプロセスゲインをそれぞれKp1,Kp2とすると、非特許文献1によれば、非干渉化のためのクロスコントローラ4005は以下のように設計できる。
MV1’=MV1+(−0.5Kp2/0.5Kp1)MV2 ・・・(4)
MV2’=(Kp1/Kp2)MV1+MV2 ・・・(5)
また、クロスコントローラ4005の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
Figure 0004361852
すなわち、前述の係数M12は−Kp1/Kp2、係数M21は0.5Kp2/0.5Kp1となる。コントローラ4003により算出された操作量MV1は、クロスコントローラ4005により操作量MV1’に変換された後に図示しないアクチュエータを介して制御対象プロセス4006に送られ、コントローラ4004により算出された操作量MV2は、クロスコントローラ4005により操作量MV2’に変換された後にアクチュエータを介して制御対象プロセス4006に送られる。
図14に示したクロスコントローラ4005を図13の制御装置に適用した構成を図15に示す。状態量変換部3003とクロスコントローラ4005とを用いることにより、状態量平均値PV1’のみを専用的に制御するコントローラC1を中心とする第1制御ループと、状態量差PV2’のみを専用的に制御するコントローラC2を中心とする第2制御ループとを有するマルチループの制御系を実現できる。状態量平均値PV1’のみを専用的に制御するコントローラC1の応答特性を安定性重視の方向(低感度)で調整し、状態量差PV2’のみを専用的に制御するコントローラC2の応答特性を即応性重視の方向(高感度)で調整すれば、状態量平均値PV1’が設定値SP1’に追従するよりも前に、状態量差PV2’が設定値SP2’に追従するようになるので、状態量差PV2’を所望の値に維持しながら、状態量平均値PV1’を所望の値に変更するような制御が可能になる。
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
特開平8−095647号公報 特開平9−199491号公報 広井和男,「ディジタル計装制御システムの基礎と応用」,工業技術社,1987年10月,p.152−156,ISBN4−905957−00−1
[第1の課題]
実際のアクチュエータには出力の上下限があり、コントローラはこの上下限を考慮した操作量算出をしなければならない。つまり、アクチュエータの出力が上限値あるいは下限値に達して状態量の変化に限界が生じている状態においては、コントローラは必要以上に操作量の算出結果を高くしたり低くしたりしてはならない。PID等のコントローラがアクチュエータの物理的な上下限を考慮しない場合、積分ワインドアップという問題が生じる。
以下、この積分ワインドアップについて具体的に説明する。例えば、状態量が温度であり、アクチュエータがヒータである場合、一般的にヒータ出力には下限値0%、上限値100%という制約が与えられる。コントローラで算出される操作量MVが上昇して100%に達すると、ヒータ出力も100%に達する。このとき、温度設定値SPに対して温度計測値PVが低い場合、仮にコントローラがヒータ出力の上限値100%を無視していると、コントローラは100%よりも大きな操作量MVを算出することになる。ところが、ヒータ出力は100%で飽和するため、ヒータ出力の上昇に応じた温度計測値PVの上昇は限界に達し、その結果、コントローラは操作量MVをさらに大きな値へと上げていくことになる。
そして、操作量MVの算出値が上昇し続けて例えば500%に達した時点で、温度設定値SPが温度計測値PVよりも低い値に変更されたと仮定する。温度設定値SPの変更により、コントローラは、操作量MVを500%から下げていくことになるので、ヒータ出力の上限値100%よりも低い操作量MVがコントローラから出力されるようになるまでに長い時間がかかる。したがって、温度設定値SPを温度計測値PVよりも低い値に変更したにもかかわらず、コントローラからは長時間にわたって操作量100%が出力され、結果的に温度降下の開始が大きく遅れることになる。以上のように操作量MVの算出結果が必要以上に高くなり、設定値SPが小さい値に変更されたときに操作量MVの降下が遅れる現象が積分ワインドアップと呼ばれる現象であり、コントローラがアクチュエータの物理的な上下限を考慮して操作量を算出しないことに起因する。
図15に示した制御装置では、コントローラC1,C2において算出される操作量MV1,MV2がクロスコントローラ4005により操作量MV1’,MV2’に変換される。言い換えれば、コントローラC1,C2が算出する操作量MV1,MV2は、複数のアクチュエータA1,A2への合成操作量として算出されるわけであり、コントローラC1,C2の操作量MV1,MV2とアクチュエータA1,A2の出力とが1対1に対応しなくなる。したがって、コントローラC1,C2がアクチュエータA1,A2の出力の上下限を考慮した操作量MV1,MV2の算出を行ったとしても、アクチュエータA1,A2に実際に出力されるのは操作量MV1,MV2を合成した操作量MV1’,MV2’なので、結果としてアクチュエータA1,A2の出力の上下限を考慮していない操作量出力がアクチュエータA1,A2に対して行われる可能性がある。このため、図15に示した制御装置では、前述のPIDコントローラと同様の積分ワインドアップが発生するという問題点があった。
[第2の課題]
また、通常のコントローラでは、制御対象の特性に合わせてパラメータの調整を行なわなければならない。パラメータ調整の例としては、PIDコントローラにおけるPIDパラメータ調整がある。従来、このようなパラメータ調整を実現するための調整方法や自動調整機能などが考案されているが、この調整方法や自動調整機能は基本的にコントローラとアクチュエータと制御対象と計測手段とが物理的に対応していることが必要条件になる。
以下、従来のパラメータ調整について具体的に説明する。例えば、状態量が温度であり、アクチュエータがヒータであり、制御対象が炉であり、計測手段が熱電対などの温度センサである場合を考える。このとき、図16に示すように、2個の制御ループを想定し、コントローラ5003,5004と、アクチュエータであるヒータ5005,5006と、制御対象である炉5007,5008と、計測手段である温度センサ5009,5010とを備えるものとする。図16において、5001は温度設定値SP1と温度計測値PV1との差を出力する減算器、5002は温度設定値SP2と温度計測値PV2との差を出力する減算器である。
図16の構成においては、多少のループ間干渉は許容するものの、コントローラ5003はヒータ5005に操作量MV1を出力し、ヒータ5005は主に炉5007を加熱し、温度センサ5009は炉5007付近の温度を計測して、コントローラ5003は温度計測値PV1を制御するように制御演算を実行しなければならない。同様に、コントローラ5004はヒータ5006に操作量MV2を出力し、ヒータ5006は主に炉5008を加熱し、温度センサ5010は炉5008付近の温度を計測して、コントローラ5004は温度計測値PV2を制御するように制御演算を実行しなければならない。このように、コントローラ5003,5004とヒータ5005,5006と炉5007,5008と温度センサ5009,5010とが物理的に対応していることが、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用するための必要条件になる。逆に言えば、コントローラ5003がヒータ5005とヒータ5006とに同等のレベルで配分される操作量MV1,MV2を1個の合成操作量として算出し、同じくコントローラ5004がヒータ5005とヒータ5006とに同等のレベルで配分される操作量MV1,MV2を1個の合成操作量として算出すると、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用することは不可能になる。
図15に示した制御装置では、コントローラC1,C2において算出される操作量MV1,MV2がクロスコントローラ4005により操作量MV1’,MV2’に変換される。言い換えれば、コントローラC1,C2が算出する操作量MV1,MV2は、複数のアクチュエータA1,A2への合成操作量として算出されるわけであり、コントローラC1,C2の操作量MV1,MV2とアクチュエータA1,A2の出力とが1対1に対応しなくなる。すなわち、コントローラとアクチュエータと制御対象と計測手段とが物理的に対応するという基本的な条件が成立しなくなる。したがって、図15に示した制御装置では、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用することは不可能であり、PIDパラメータ調整等のコントローラのパラメータ調整が非常に難しくなるという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の状態量間の相対状態量を所望の値に維持しつつ、複数の状態量の平均値等の絶対量を所望の値に変更する制御を行う制御系において、積分ワインドアップを防止することができ、かつ従来考案されているパラメータ調整方法や自動調整機能などを適用することができる制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、n(nは2以上の自然数)個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御装置において、前記個のPID制御ループの状態量の加重平均値であって特定の基準となる絶対的な状態量を基準状態量とし、状態量差である相対的な状態量を相対状態量としたとき、前記n個のPID制御ループに入力される各状態量計測値とこれに対応する各状態量設定値との制御偏差を前記状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、前記算出されたn個の制御偏差を、前記基準状態量に対応する制御偏差または前記相対状態量に対応する制御偏差に変換するためのn×nの状態量変換行列により線形結合して前記基準状態量に対応する制御偏差または前記相対状態量に対応する制御偏差のいずれかに変換する制御偏差変換部と、前記変換されたn個の制御偏差にそれぞれ対応し、制御の優先度を与える重み係数を乗算する重み係数設定部と、PID制御演算部が算出するn個の操作量と前記n個のPID制御ループの各アクチュエータの出力とを1対1に対応させるために、前記重み係数が乗算されたn個の制御偏差を前記状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部と、前記再変換されたn個の制御偏差に基づき各PID制御ループの操作量を算出して、算出したn個の操作量をそれぞれ対応するPID制御ループのアクチュエータに出力するPID制御演算部と、前記変換される前の制御偏差の絶対値をPID制御ループ毎に算出し、絶対値が大きなPID制御ループほど前記加重平均値の加重を大きく適応修正することにより前記状態量変換行列および前記逆行列を適応的に修正する行列修正部とを備えることにより、基準状態量と相対状態量に優先度を与えて制御するための制御偏差を算出するものである。
また、本発明は、n(nは2以上の自然数)個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御装置において、前記個のPID制御ループの状態量の加重平均値であって特定の基準となる絶対的な状態量を基準状態量とし、状態量差である相対的な状態量を相対状態量としたとき、前記n個のPID制御ループに入力されるn個の各状態量計測値を、基準状態量計測値または相対状態量計測値に変換するためのn×nの状態量変換行列により線形結合して前記基準状態量計測値または相対状態量計測値のいずれかに変換する状態量変換部と、前記変換された基準状態量計測値とこれに対応する基準状態量設定値との制御偏差または前記変換された相対状態量計測値とこれに対応する相対状態量設定値との制御偏差のいずれかを前記変換された状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、前記算出されたn個の制御偏差にそれぞれ対応し、制御の優先度を与える重み係数を乗算する重み係数設定部と、PID制御演算部が算出するn個の操作量と前記n個のPID制御ループの各アクチュエータの出力とを1対1に対応させるために、前記重み係数が乗算されたn個の制御偏差を前記状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部と、前記再変換されたn個の制御偏差に基づき各PID制御ループの操作量を算出して、算出したn個の操作量をそれぞれ対応するPID制御ループのアクチュエータに出力するPID制御演算部と、前記n個のPID制御ループに入力される各状態量計測値とこれに対応する各状態量設定値との制御偏差の絶対値をPID制御ループ毎に算出し、絶対値が大きなPID制御ループほど前記加重平均値の加重を大きく適応修正することにより前記状態量変換行列および前記逆行列を適応的に修正する行列修正部とを備えることにより、基準状態量と相対状態量に優先度を与えて制御するための制御偏差を算出するものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記状態量変換行列は、前記変換された制御偏差に、異なるPID制御ループの状態量計測値間の相対的な関係を与える相対制御偏差が含まれるように予め設定され、前記相対制御偏差に乗算される前記重み係数は、前記相対制御偏差に対する制御の優先度が高くなるように予め設定されるものである。
また、本発明の制御装置の1構成例において、前記状態量変換行列は、前記変換された状態量計測値に、異なるPID制御ループの状態量計測値間の相対的な関係を与える相対状態量計測値が含まれるように予め設定され、前記相対状態量計測値に対応する制御偏差に乗算される前記重み係数は、前記相対状態量計測値に対する制御の優先度が高くなるように予め設定されるものである。
本発明によれば、n個の制御ループの各状態量計測値とこれに対応する各状態量設定値との制御偏差を状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、算出されたn個の制御偏差をn×nの状態量変換行列により各制御偏差を線形結合した値に変換する制御偏差変換部と、変換されたn個の制御偏差にそれぞれ対応する重み係数を乗算する重み係数設定部と、重み係数が乗算されたn個の制御偏差を状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部とを設けることにより、複数の状態量間の状態量差などの相対状態量を所望の値に維持しつつ、基準状態量を所望の値に変更する制御を実現することができる。また、本発明では、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する制御系を構成することができるので、積分ワインドアップを防止することができ、従来考案されているパラメータ調整方法や自動調整機能などを適用してコントローラを調整することができる。さらに、本発明では、状態量変換行列および逆行列を適応的に修正する行列修正部を設けることにより、相対状態量が小さくなるように制御する際に、操作量飽和などの制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生した場合であっても、本来の目的である、状態量差を小さくするという効果が損なわれることを回避できる。
また、本発明によれば、n個の制御ループの各状態量計測値をn×nの状態量変換行列により各状態量計測値を線形結合した値に変換する状態量変換部と、変換された状態量計測値とこれに対応する状態量設定値との制御偏差を変換された状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、算出されたn個の制御偏差にそれぞれ対応する重み係数を乗算する重み係数設定部と、重み係数が乗算されたn個の制御偏差を状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部とを設けることにより、複数の状態量間の状態量差などの相対状態量を所望の値に維持しつつ、基準状態量を所望の値に変更する制御を実現することができる。また、本発明では、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する制御系を構成することができるので、積分ワインドアップを防止することができ、従来考案されているパラメータ調整方法や自動調整機能などを適用してコントローラを調整することができる。さらに、本発明では、状態量変換行列および逆行列を適応的に修正する行列修正部を設けることにより、相対状態量が小さくなるように制御する際に、操作量飽和などの制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生した場合であっても、本来の目的である、状態量差を小さくするという効果が損なわれることを回避できる。
また、本発明では、相対制御偏差に乗算する重み係数を、相対状態量に対する制御の優先度が高くなるように予め設定しておくことにより、相対状態量を優先的に制御しながら、基準状態量も同時に制御することができる。また、制御系の制約により相対制御偏差の制御に乱れがあるときに、制約を受けていない制御ループの制御演算部が相対制御偏差の乱れを整える制御をより強く要求されるように、状態量変換行列および逆行列を修正することにより、制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生した場合であっても、状態量差を小さくするという効果が損なわれることを回避できる。
また、本発明では、相対状態量計測値に対応する制御偏差に乗算する重み係数を、相対状態量に対する制御の優先度が高くなるように予め設定しておくことにより、相対状態量を優先的に制御しながら、基準状態量も同時に制御することができる。また、制御系の制約により相対状態量計測値の制御に乱れがあるときに、制約を受けていない制御ループの制御演算部が相対状態量計測値の乱れを整える制御をより強く要求されるように、状態量変換行列および逆行列を修正することにより、制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生した場合であっても、状態量差を小さくするという効果が損なわれることを回避できる。
[発明の原理]
以下、本発明では、例えば状態量平均値のような基準となる絶対的な状態量を基準状態量、例えば状態量差のような相対的な状態量を相対状態量と称する。また、基準状態量に対する設定値を基準状態量設定値、基準状態量の計測値を基準状態量計測値、相対状態量に対する設定値を相対状態量設定値、相対状態量の計測値を相対状態量計測値、基準状態量設定値と基準状態量計測値との差を基準制御偏差、相対状態量設定値と相対状態量計測値との差を相対制御偏差と称する。状態量としては、例えば温度、圧力、流量などがある。
本発明では、外部から与えられる状態量を、前述の従来技術における状態量変換部により、状態量平均値のような基準状態量と、状態量差のような相対状態量とに変換する。この状態量変換部の入出力の関係をマトリックスで表現したとき、外部から与えられる状態量を基準状態量と相対状態量とに変換する行列を状態量変換行列と称する。
次に、本発明では、変換した状態量について状態量設定値との制御偏差を算出する。算出した制御偏差をそのままコントローラに入力すると、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応しなくなるので、制御偏差を状態量変換行列の逆行列により再変換した上でコントローラに入力することを考える。
状態量変換行列の逆行列により制御偏差を単純に再変換すると、各状態量を独立に制御する通常の制御系と等価なものに戻るだけなので、逆行列により再変換する前に、制御偏差に重み係数を与えるようにする。これにより、再変換された後は、重みに応じて基準状態量に関する偏差成分と相対状態量に関する偏差成分に偏りが残る。よって、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応しながらも、基準状態量と相対状態量に対する偏りが優先度として反映される。
このように、本発明では、外部から与えられる状態量を状態量変換行列により変換し、変換した状態量と設定値との制御偏差を求め、制御偏差に重み係数を乗算して、この乗算結果を状態量変換行列の逆行列により再変換し、再変換した制御偏差を操作量MVの算出に用いる構成とする。これにより、本発明では、基準状態量については重みを小さく与え、逆に相対状態量については重みを大きく与えれば、基準状態量計測値PVmが基準状態量設定値SPmに追従するよりも前に、相対状態量計測値ΔPVが相対状態量設定値ΔSPに追従するようになるので、相対状態量を所望の値に維持しながら、基準状態量を所望の値に変更するような制御が可能になる。すなわち、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する形式で、状態量差のような相対状態量を優先的に制御しながら、状態量平均値のような基準状態量も同時に制御する制御装置を提供することができる。
ここで、上記の2つの着眼点のうち、制御偏差を状態量変換行列の逆行列により再変換する点(以下、第1の着眼点と呼ぶ)について説明する。図15に示した制御装置では、状態量変換部3003を適用することにより発生する人工的なループ間干渉を、クロスコントローラ4005により非干渉化することになる。状態量変換部3003による状態量変換は、一種の信号交差的あるいは信号混合的な処理である。ゆえに、クロスコントローラ4005は、アクチュエータA1,A2に操作量が送られる前に、信号交差処理を元に戻す信号分配的あるいは信号分離的な処理と言える。しかし、図15に示した制御装置の構成では、信号交差的な処理を行う状態量変換部3003と信号分配的な処理を行うクロスコントローラ4005との間にコントローラC1,C2が位置するため、コントローラC1,C2とアクチュエータA1,A2とが1対1に対応しなくなる。そこで、本発明では、信号分配的な処理として状態量変換行列の逆行列により再変換を行う手段をコントローラの直前に配置するものとした。すなわち、制御偏差を状態量変換行列の逆行列により再変換するものとした。
次に、上記の2つの着眼点のうち、状態量変換行列の逆行列により制御偏差の再変換を行う前に、制御偏差に重み係数を乗じる点(以下、第2の着眼点と呼ぶ)について説明する。状態量変換を行なった後に、変換した状態量と設定値との制御偏差を算出すると、この制御偏差は、実質的には状態量変換行列により変換された制御偏差を与えていることになる。したがって、この制御偏差を状態量変換行列の逆行列により単純に再変換すると、信号交差的な処理と信号分配的な処理とを直結しているだけになり、変換のない各状態量を独立に制御する通常の制御系と等価なものになる。逆に言えば、信号交差的な処理と信号分配的な処理との間に、意味のある信号変換を配置すれば、それが後段のコントローラ側に反映されることになる。本発明は、信号交差的な処理と信号分配的な処理との間に、制御偏差に重み係数を乗じる手段を配置するものとした。そして、この重み係数を調整すれば、変換された状態の状態量に関して制御の優先度を与えることが可能になる。すなわち、状態量差のような相対状態量を優先的に制御しながら、状態量平均値のような基準状態量も同時に制御することが可能になる。
ここで、第1の着眼点と第2の着眼点とをまとめると、図1に示すような制御系になる。図1の制御系は制御ループがn(nは2以上の自然数)個の場合であり、1は状態量計測値PV1〜PVnを状態量変換行列Tにより変換する状態量変換部、2−1〜2−nは変換された状態量計測値(基準状態量計測値または相対状態量計測値)PV1’〜PVn’とこれに対応する状態量設定値(基準状態量設定値または相対状態量設定値)SP1’〜SPn’との制御偏差Er1’〜Ern’を算出する制御偏差算出部と、3は制御偏差Er1’〜Ern’に重み係数を乗算する重み係数設定部、4は重み係数が乗算された制御偏差Er1’〜Ern’を状態量変換行列の逆行列T-1により制御偏差Er1〜Ernに再変換する逆行列再変換部、MV1〜MVnは操作量、A1〜Anはアクチュエータ、P1〜Pnは制御対象プロセス、Gp1〜GpnはアクチュエータA1〜AnとプロセスP1〜Pnとを含むブロックの伝達関数である。
制御偏差Er1〜Ernに基づき制御演算を実行するコントローラC1〜Cnの代表例としてはPIDコントローラがある。また、状態量変換行列Tは、制御ループ数がnの場合はn×nの正方行列であり、逆行列T-1が存在する必要がある。なお図1は、本発明の原理を表す図であり、毎制御周期において逆行列を自動算出する処理を実行する必要はない。また逆行列T-1は、オペレータが手作業で算出し、制御を実行する前に予め数値を設定しておいてもよい。
図1の制御系において、基準状態量として全ループの状態量の平均値PVmを採用し、相対状態量として状態量差PV1−PV2,PV2−PV3,PV3−PV4,・・・PV(n−2)−PV(n−1),PV(n−1)−PVnを採用する場合、状態量変換部1の入出力の関係をマトリックスで表現すると式(7)となり、状態量変換行列Tの一般式は式(8)となる。また、逆行列再変換部4の入出力の関係をマトリックスで表現すると式(9)となり、状態量変換行列Tの逆行列T-1の一般式は式(10)となる。
Figure 0004361852
Figure 0004361852
Figure 0004361852
Figure 0004361852
なお、式(7)〜式(10)において、基準状態量計測値PVmは、PVm=PV1’であり、相対状態量計測値PV1−PV2,PV2−PV3,・・・,PV(n−1)−PVnは、PV1−PV2=PV2’,PV2−PV3=PV3’,・・・,PV(n−1)−PVn=PVn’である。W1,W2,・・・,Wnは重み係数である。Eri’は状態量設定値SPi’と状態量計測値PVi’との制御偏差である。ただし、i=1の場合、状態量設定値SPi’は基準状態量設定値SPm=SP1’であり、状態量計測値PVi’は基準状態量計測値PVm=PV1’である。また、i=2〜nの場合、状態量設定値SPi’は相対状態量設定値ΔSPi=SPi’であり、状態量計測値PVi’は相対状態量計測値PV(i−1)−PVi=PVi’である。
以上の説明では、外部から与えられる状態量計測値PViを状態量変換行列Tにより状態量計測値PVi’に変換しているが、各状態量に対して状態量設定値SPiを与え、状態量設定値SPiと状態量計測値PViとの制御偏差Eri0=SPi−PViを算出した後に、この制御偏差Eri0を状態量変換行列Tにより制御偏差Eri’に変換してもよい。制御偏差Eri0を変換する場合の制御系を図2に示す。図2において、5−1〜5−nは状態量設定値SP1〜SPnと状態量計測値PV1〜PVnとの制御偏差Er10〜Ern0を算出する制御偏差算出部、6は制御偏差Er10〜Ern0を制御偏差Er1’〜Ern’に変換する制御偏差変換部である。制御偏差変換部6の入出力の関係をマトリックスで表現すると式(11)となる。
Figure 0004361852
発明者は、以上の原理を用いて、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する形式で、状態量差のような相対状態量を優先的に制御しながら、状態量平均値のような基準状態量も同時に制御できる制御装置を提案した(特願2004−128246号)。この先行出願の制御装置において、基準状態量は、各制御ループの状態量の単純平均値であったり、固定加重の加重平均値であったり、単純に特定の1つの状態量であったりする。これらは広い上位概念で捉えれば、いずれも固定加重の加重平均値と言える。そして、各状態量が制約なしに制御され得る場合、基準状態量として固定加重の加重平均値を利用することは有効であり、特に単純平均値はバランスの良い公平な基準状態量になる。
しかし、操作量飽和などの制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生する場合、固定加重であることが不都合に作用することもある。以下、先行出願の制御装置の問題点を図3(a)、図3(b)を用いて説明する。ここでは、温度制御ループがI,II,IIIの3つあり、制御ループ間の温度差(相対状態量)を小さくすることを制御の目的とする。図3(a)は、制御ループI,II,IIIの追従状態量設定値SPが全て30で整定している状態で外乱が印加されたときの制御系の外乱応答を示し、図3(b)は、外乱印加時に各制御ループI,II,IIIのコントローラから出力される操作量MVを示している。
ループIII のコントローラの操作量MVの出力上限値を実験的に16%に設定して、出力飽和を発生し易くした。このために、基準状態量が制御ループI,II,IIIの温度(状態量計測値PV)の単純平均値である場合に、外乱応答途中でループIII の操作量MVが飽和し、昇温速度が頭打ちになったとする。すると、ループIII だけが昇温不足になり、図3(a)のようにループIII の温度がループI,II の温度から離れるようになる。基準状態量がループI,II,IIIの温度の単純平均値であることから、ループIII の温度とループI,II の温度に乖離が生じると、ループIII の温度よりもループI,II の温度に近い方の値が基準状態量計測値となる。したがって、各ループI,II,IIIのコントローラは、ループI,II の温度をループIII の温度に近づけることで温度差を小さくしようとするのではなく、ループIII の温度をループI,II の温度に近づけることで温度差を小さくしようとする。
しかしながら、前述のようにループIII の操作量MVは既に飽和し、昇温速度が頭打ちになっているため、ループIII の温度がループI,II の温度に速やかに近づくような作用は起こらない。したがって、温度差を優先的に制御しながら、基準状態量も同時に制御できるという効果が得られなくなる。以上のように、先行出願の制御装置では、制御上の制約次第で、本来の効果が大きく損なわれるという問題点がある。
これに対して、本発明では、基準状態量が各制御ループの状態量の固定加重の加重平均値であるところに、前述の問題点の発生要因があることに着眼する。すなわち、前述の問題点は、例えばループIII の温度が操作量飽和等の原因によりループI,II の温度から離れる場合、各制御ループの目指すべき基準状態量計測値がループIII の温度よりもループI,II の温度に近い方の値になるために、もともと制約を受けているループIII のコントローラが、状態量差を整える制御をより強く要求されることに起因する。
本発明は、上記着眼点に基づき、何らかの制約により状態量差の制御を乱す要因となっている制御ループが存在している場合に、適応的に加重平均の加重を修正し、制約を受けていない制御ループのコントローラに対して、状態量差を整える制御をより強く要求できるようにすることで、前述の課題を解決する。具体的には、状態量差の制御を最も乱す要因になっている制御ループの状態量計測値に基準状態量計測値が近づくように、状態量変換部1又は制御偏差変換部6(状態量変換行列T)における加重平均の加重を適応修正する。
本発明では、n個の制御ループにおいて、各ループの状態量差が小さくなるように制御することを想定する。操作量飽和などの制御上の制約が事実上予期せぬ形で発生している制御ループを、確実に把握できるとは限らない。しかし、このような制約が状態量差の制御を乱す要因になっているものとすれば、制約を受けている制御ループの応答が遅れていて他のループへの追従が不十分になっている状況が最も想定される。そこで、応答が遅れている制御ループに他の制御ループが合わせるように加重平均の加重を適応修正すればよい。
具体的には、制御偏差Eriの絶対値が最も大きなループの状態量に対する加重が1となり、他の制御ループの状態量に対する加重が0となるように、状態量変換部1又は制御偏差変換部6(状態量変換行列T)を適応修正する。この場合、加重が急変すると制御動作が不連続になりやすい。例えば、各制御ループの応答波形にオーバーシュートが発生しない場合には、偏差の絶対値が最も大きなループの状態量に対する加重を急に1に変えたとしても、制御応答に極端な不連続が発生する確率は低い。しかし、応答波形にオーバーシュートが発生する場合に、偏差の絶対値が最も大きなループの状態量に対する加重を急に1に変えると、偏差の絶対値が最も大きなループが状態量設定値SPiの上側と下側とで突然入れ代わるような状況が発生し得るため、極端な不連続が発生する。したがって、加重の修正処理に時間遅れフィルタを適用して、加重が徐々に変化するようにするのが好ましい。
なお、加重の適応修正の方法としては、偏差の絶対値が最も大きなループの状態量に対する加重を1とする方法に限らず、例えば偏差の絶対値が最も大きなループの状態量に対する加重を0.8として、残りの0.2の加重を他のループの状態量に対する加重として均等割りするといったように、偏差の絶対値が大きなループほど加重が大きくなるようにすれば、それなりに課題解決の効果は得られる。
状態量変換部1又は制御偏差変換部6の状態量変換行列Tを適応修正すると、これに伴い逆行列再変換部4の逆行列T-1も修正することになる。したがって、逆行列算出を必要に応じて実行するか、あるいは状態量変換行列Tと逆行列T-1のペアを予め複数用意しておいて、制御偏差の絶対値が最も大きなループに対応するペアを適宜選択することにより、実質的な適応修正を実現することになる。
[実施の形態]
図4は、本発明の実施の形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、図2で説明した原理に基づくものであり、制御ループが3個で、基準状態量として3個の制御ループの状態量平均値を採用し、相対状態量として各状態量の差を採用する場合の例であるが、2個以上の制御ループであれば同様の原理で、同様の制御系を構成できる。
図4の制御装置は、第1の状態量に関する第1の制御系の構成として、状態量設定値SP1入力部21−1と、状態量計測値PV1入力部22−1と、制御偏差Er10算出部23−1と、操作量MV1出力部24−1と、PID制御演算部(PIDコントローラ)25−1とを備える。また、図4の制御装置は、第2の状態量に関する第2の制御系の構成として、状態量設定値SP2入力部21−2と、状態量計測値PV2入力部22−2と、制御偏差Er20算出部23−2と、操作量MV2出力部24−2と、PID制御演算部25−2とを備える。また、図4の制御装置は、第3の状態量に関する第3の制御系の構成として、状態量設定値SP3入力部21−3と、状態量計測値PV3入力部22−3と、制御偏差Er30算出部23−3と、操作量MV3出力部24−3と、PID制御演算部25−3とを備える。
さらに、図4の制御装置は、制御偏差変換に関する構成として、状態量変換行列Tによる制御偏差変換を実行する制御偏差変換部26と、基準制御偏差Ermに重み係数W1を乗じる重み係数W1設定部27−1と、相対制御偏差ΔEr1に重み係数W2を乗じる重み係数W2設定部27−2と、相対制御偏差ΔEr2に重み係数W3を乗じる重み係数W3設定部27−3と、状態量変換行列Tの逆行列T-1による逆行列再変換を実行する逆行列再変換部28と、制御偏差変換を実行するための状態量変換行列Tを記憶する状態量変換行列T記憶部29と、逆行列再変換を実行するための逆行列T-1を記憶する逆行列T-1記憶部30とを備える。
さらに、図4の制御装置は、加重適応修正に関する構成として、各制御系の制御偏差の絶対値を比較し、制御偏差の絶対値が最も大きな制御系を探索する最大偏差制御系探索部31と、最大偏差制御系の状態量に対する加重が最大になるような状態量変換行列Tと逆行列T-1を、状態量変換行列T記憶部29と逆行列T-1記憶部30に設定する行列修正部32とを備える。
図5は本実施の形態における制御系のブロック線図である。A11は第1の状態量を制御するアクチュエータ、A12は第2の状態量を制御するアクチュエータ、A13は第3の状態量を制御するアクチュエータ、P11は第1の状態量に係る制御対象プロセス、P12は第2の状態量に係る制御対象プロセス、P13は第3の状態量に係る制御対象プロセス、Gp11はアクチュエータA11とプロセスP11とを含むブロックの伝達関数、Gp12はアクチュエータA12とプロセスP12とを含むブロックの伝達関数、Gp13はアクチュエータA13とプロセスP13とを含むブロックの伝達関数である。
状態量設定値SP1入力部21−1と、状態量計測値PV1入力部22−1と、制御偏差Er10算出部23−1と、操作量MV1出力部24−1と、PID制御演算部25−1と、制御偏差変換部26と、逆行列再変換部28と、アクチュエータA11と、プロセスP11とは、第1の制御系(第1の制御ループ)を構成している。状態量設定値SP2入力部21−2と、状態量計測値PV2入力部22−2と、制御偏差Er20算出部23−2と、操作量MV2出力部24−2と、PID制御演算部25−2と、制御偏差変換部26と、逆行列再変換部28と、アクチュエータA12と、プロセスP12とは、第2の制御系(第2の制御ループ)を構成している。そして、状態量設定値SP3入力部21−3と、状態量計測値PV3入力部22−3と、制御偏差Er30算出部23−3と、操作量MV3出力部24−3と、PID制御演算部25−3と、制御偏差変換部26と、逆行列再変換部28と、アクチュエータA13と、プロセスP13とは、第3の制御系(第3の制御ループ)を構成している。
次に、本実施の形態の制御装置の動作を図6を用いて説明する。まず、状態量計測値PV1は、図示しない第1の検出手段によって検出され、状態量計測値PV1入力部22−1を介して制御偏差Er10算出部23−1に入力される(図6ステップS101)。状態量計測値PV2は、図示しない第2の検出手段によって検出され、状態量計測値PV2入力部22−2を介して制御偏差Er20算出部23−2に入力される(ステップS102)。状態量計測値PV3は、図示しない第3の検出手段によって検出され、状態量計測値PV3入力部22−3を介して制御偏差Er30算出部23−3に入力される(ステップS103)。
状態量設定値SP1は、制御装置のオペレータによって設定され、状態量設定値SP1入力部21−1を介して制御偏差Er10算出部23−1に入力される(ステップS104)。状態量設定値SP2は、オペレータによって設定され、状態量設定値SP2入力部21−2を介して制御偏差Er20算出部23−2に入力される(ステップS105)。状態量設定値SP3は、オペレータによって設定され、状態量設定値SP3入力部21−3を介して制御偏差Er30算出部23−3に入力される(ステップS106)。
続いて、制御偏差Er10算出部23−1は、状態量設定値SP1と状態量計測値PV1との制御偏差Er10を次式のように算出して、制御偏差変換部26と最大偏差制御系探索部31に出力する(ステップS107)。
Er10=SP1−PV1 ・・・(12)
制御偏差Er20算出部23−2は、状態量設定値SP2と状態量計測値PV2との制御偏差Er20を次式のように算出して、制御偏差変換部26と最大偏差制御系探索部31に出力する(ステップS108)。
Er20=SP2−PV2 ・・・(13)
制御偏差Er30算出部23−3は、状態量設定値SP3と状態量計測値PV3との制御偏差Er30を次式のように算出して、制御偏差変換部26と最大偏差制御系探索部31に出力する(ステップS109)。
Er30=SP3−PV3 ・・・(14)
次に、最大偏差制御系探索部31は、制御偏差Er10,Er20,Er30の絶対値|Er10|,|Er20|,|Er30|を求めて、この各制御系の制御偏差の絶対値に基づき、制御偏差の絶対値が最も大きな制御系j(以下、最大偏差制御系jと呼ぶ)を特定する(ステップS110)。
行列修正部32は、最大偏差制御系jの状態量に対する加重が1となり、他の制御系の状態量に対する加重が0となるような状態量変換行列Tを選択して、選択した状態量変換行列Tを状態量変換行列T記憶部29に設定する(ステップS111)。
行列修正部32は、第1の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(15)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
後述する制御偏差変換の際に、式(15)の状態量変換行列Tを用いると、基準制御偏差Ermは制御偏差Er10と等しくなる。これは、3個の制御ループの状態量の加重平均値を基準状態量とする場合に、第1の制御系の状態量に対する加重を1とし、他の制御系の状態量に対する加重を0としたことに相当する。
行列修正部32は、第2の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(16)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
行列修正部32は、第3の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(17)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
2つの制御系が同時に最大偏差制御系jとなる場合、例えば第1の制御系と第2の制御系が最大偏差制御系jとなる場合には、式(15)、式(16)のうちどちらか1つを選択すればよく、3つの制御系が同時に最大偏差制御系jとなる場合には、式(15)、式(16)、式(17)のうちどれか1つを選択すればよい。
なお、式(15)〜式(17)の状態量変換行列Tは、加重の修正と共に相対状態量の修正の役割も担っている。すなわち、状態量変換行列Tは、最大偏差制御系jの状態量と他の制御系の状態量との差が相対状態量になるように予め設定されている。例えば、制御偏差変換の際に、式(15)の状態量変換行列Tを用いると、相対制御偏差ΔEr1はEr10−Er20となり、相対制御偏差ΔEr2はEr10−Er30となる。最大偏差制御系jに応じて相対状態量を修正する理由は、最大偏差制御系jの状態量を基準として相対状態量を定めた方が、相対状態量を良好に制御できるからである。
続いて、行列修正部32は、最大偏差制御系jの状態量に対する加重が1となり、他の制御系の状態量に対する加重が0となるような逆行列T-1を選択して、選択した逆行列T-1を逆行列T-1記憶部30に設定する(ステップS112)。
行列修正部32は、第1の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(18)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
行列修正部32は、第2の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(19)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
行列修正部32は、第3の制御系が最大偏差制御系jである場合、予め定められた式(20)のような状態量変換行列Tを選択する。
Figure 0004361852
次に、制御偏差変換部26は、状態量変換行列T記憶部29に設定された状態量変換行列Tを用いて次式のように制御偏差変換を実行して、基準制御偏差Ermと相対制御偏差ΔEr1,ΔEr2とを算出し、基準制御偏差Ermを重み係数W1設定部27−1に出力し、相対制御偏差ΔEr1,ΔEr2をそれぞれ重み係数W2設定部27−2、重み係数W3設定部27−3に出力する(ステップS113)。
Figure 0004361852
重み係数W1設定部27−1は、予め設定された重み係数W1を基準制御偏差Ermに乗算して、この乗算結果を逆行列再変換部28に出力する(ステップS114)。重み係数W2設定部27−2は、予め設定された重み係数W2を相対制御偏差ΔEr1に乗算して、この乗算結果を逆行列再変換部28に出力する(ステップS115)。重み係数W3設定部27−3は、予め設定された重み係数W3を相対制御偏差ΔEr2に乗算して、この乗算結果を逆行列再変換部28に出力する(ステップS116)。
逆行列再変換部28は、逆行列T-1記憶部30に設定された逆行列T-1を用いて次式のように逆行列再変換を実行し、制御偏差Er1,Er2,Er3を算出してPID制御演算部25−1,25−2,25−3に出力する(ステップS117)。
Figure 0004361852
次に、PID制御演算部25−1は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出する(ステップS118)。
MV1=(100/Pb1){1+(1/Ti1s)+Td1s}Er1
・・・(23)
式(23)において、Pb1は比例帯、Ti1は積分時間、Td1は微分時間、sはラプラス演算子である。なお、PID制御演算部25−1は、算出した操作量MV1がアクチュエータA11の出力の下限値OL1より小さい場合、操作量MV1=OL1とし、算出した操作量MV1がアクチュエータA11の出力の上限値OH1より大きい場合、操作量MV1=OH1とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
PID制御演算部25−2は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV2を算出する(ステップS119)。
MV2=(100/Pb2){1+(1/Ti2s)+Td2s}Er2
・・・(24)
式(24)において、Pb2は比例帯、Ti2は積分時間、Td2は微分時間である。PID制御演算部25−2は、算出した操作量MV2がアクチュエータA12の出力の下限値OL2より小さい場合、操作量MV2=OL2とし、算出した操作量MV2がアクチュエータA12の出力の上限値OH2より大きい場合、操作量MV2=OH2とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
PID制御演算部25−3は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV3を算出する(ステップS120)。
MV3=(100/Pb3){1+(1/Ti3s)+Td3s}Er3
・・・(25)
式(25)において、Pb3は比例帯、Ti3は積分時間、Td3は微分時間である。PID制御演算部25−3は、算出した操作量MV3がアクチュエータA13の出力の下限値OL3より小さい場合、操作量MV3=OL3とし、算出した操作量MV3がアクチュエータA13の出力の上限値OH3より大きい場合、操作量MV3=OH3とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
操作量MV1出力部24−1は、PID制御演算部25−1によって算出された操作量MV1をアクチュエータA11に出力する(ステップS121)。アクチュエータA11は、操作量MV1に基づいて第1の状態量を制御するために動作する。
操作量MV2出力部24−2は、PID制御演算部25−2によって算出された操作量MV2をアクチュエータA12に出力する(ステップS122)。アクチュエータA12は、操作量MV2に基づいて第2の状態量を制御するために動作する。
操作量MV3出力部24−3は、PID制御演算部25−3によって算出された操作量MV3をアクチュエータA13に出力する(ステップS123)。アクチュエータA13は、操作量MV3に基づいて第3の状態量を制御するために動作する。
以上のようなステップS101〜S123の処理が例えばオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS124においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
図7は、前記先行出願を適用し、かつ状態量差を制御しない設定とした制御装置のシミュレーション結果を示す図である。図8、図9は、前記先行出願で提案した制御装置のシミュレーション結果を示す図である。図10は、本実施の形態の制御装置のシミュレーション結果を示す図である。図7〜図10は、SP1=SP2=SP3=30で整定している状態で外乱が印加されたときの制御系の外乱応答を示している。シミュレーションの条件は以下の通りである。
まず、アクチュエータA11とプロセスP11とを含むブロックの伝達関数Gp11、アクチュエータA12とプロセスP12とを含むブロックの伝達関数Gp12、アクチュエータA13とプロセスP13とを含むブロックの伝達関数Gp13を次式のように設定する。ここでは、制御ループ間の干渉はないものとする。
Gp11=1.2exp(−2.0s)/{(1+70.0s)(1+10.0s)}
・・・(26)
Gp12=1.6exp(−2.0s)/{(1+60.0s)(1+10.0s)}
・・・(27)
Gp13=2.0exp(−2.0s)/{(1+50.0s)(1+10.0s)}
・・・(28)
PID制御演算部25−1の操作量下限値OL1を0%、上限値OH1を100%とし、PID制御演算部25−2の操作量下限値OL2を0%、上限値OH2を100%とし、PID制御演算部25−3の操作量下限値OL3を0%、上限値OH3を16%とする。操作量MV1,MV2,MV3に応じて状態量計測値PV1,PV2,PV3は、次式のように定まる。
PV1=Gp11MV1 ・・・(29)
PV2=Gp12MV2 ・・・(30)
PV3=Gp13MV3 ・・・(31)
PID制御演算部25−1のPIDパラメータである比例帯Pb1を50.0、積分時間Ti1を35.0、微分時間Td1を20.0とし、PID制御演算部25−2の比例帯Pb2を66.7、積分時間Ti2を35.0、微分時間Td2を20.0とし、PID制御演算部25−3の比例帯Pb3を100.0、積分時間Ti3を35.0、微分時間Td3を20.0とする。
図7に示すシミュレーション結果は、前記先行出願を適用し、W1=W2=W3=1に設定したものであり、相対的な状態量(状態量差)を制御していないので、状態量計測値PV1,PV2,PV3は揃わない。
図8に示すシミュレーション結果は、前記先行出願を適用し、基準状態量を各制御ループの追従状態量の単純平均に固定し、W1=0.7、W2=4.0、W3=4.0に設定したことにより得られたものである。図7の結果と比べると、制御ループ間の状態量差を小さくするという先行出願の制御装置の効果が現れている。しかし、PID制御演算部25−3の操作量上限値OH3が16%という制約があるため、操作量MV1,MV2より先にMV3が飽和し、状態量計測値PV1,PV2にPV3が追従することができず、先行出願の本来の効果が大きく損なわれている。
図9に示すシミュレーション結果は、前記先行出願を適用し、第3の制御系の状態量が基準状態量となるように状態量変換行列Tを式(17)に固定し、逆行列T-1を式(20)に固定し、W1=0.7、W2=4.0、W3=4.0に設定したことにより得られたものである。このため、状態量計測値PV1,PV2がPV3に追従することになり、制御ループ間の状態量差を小さくするという先行出願の効果が損なわれていない。これにより、本シミュレーション条件においては、状態量差を小さくするという効果が全く損なわれずに制御された場合に、状態量計測値PV1,PV2,PV3は図9のレベルまで揃うことが検証できる。
図10に示すシミュレーション結果は、本実施の形態においてW1=0.7、W2=4.0、W3=4.0と設定したことにより得られたものであり、図9と実質的に全く同じ制御結果が得られており、状態量差を小さくするという効果が全く損なわれていないことが検証できる。
なお、本実施の形態で説明した制御装置は、演算装置、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
また、本実施の形態では、図2の構成に基づく制御装置について説明したが、前述のとおり本発明は図1の構成にも適用可能である。この場合、制御装置は、状態量変換部1と、制御偏差算出部2−1〜2−nと、重み係数設定部3と、逆行列再変換部4と、再変換されたn個の制御偏差に基づき各制御ループの操作量を算出して、算出したn個の操作量をそれぞれ対応する制御ループの制御対象に出力する制御演算部とを有する。さらに、この制御装置は、加重適応修正に関する構成として、n個の制御ループの状態量計測値PV1〜PVnとこれに対応する状態量設定値SP1〜SPnとの制御偏差Er10〜Ern0を状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、各制御系の制御偏差Er10〜Ern0の絶対値を比較し、制御偏差の絶対値が最も大きな制御系を探索する最大偏差制御系探索部と、最大偏差制御系の状態量に対する加重が最大になるように状態量変換行列Tと逆行列T-1を適応的に修正する行列修正部とを備えている。これにより、本実施の形態と同様の効果を得ることができる。
本発明は、プロセス制御技術に適用することができる。
本発明の原理を示す制御系のブロック線図である。 本発明の原理を示す別の制御系のブロック線図である。 先行出願の制御装置の問題点を説明するための図である。 本発明の実施の形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態における制御系のブロック線図である。 本発明の実施の形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。 先行出願を適用し、かつ状態量差を制御しない設定とした制御装置の動作のシミュレーション結果を示す図である。 先行出願における制御装置の動作のシミュレーション結果を示す図である。 先行出願における制御装置の動作のシミュレーション結果を示す図である。 本発明の実施の形態における制御装置の動作のシミュレーション結果を示す図である。 従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 従来の他の制御装置の構成を示すブロック図である。 状態量平均値と状態量差とを制御対象とする従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 クロスコントローラを用いた従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 図14のクロスコントローラを図13の制御装置に適用した構成を示すブロック図である。 従来のパラメータ調整について説明するための図である。
符号の説明
23−1…制御偏差Er10算出部、23−2…制御偏差Er20算出部、23−3…制御偏差Er30算出部、25−1、25−2、25−3…PID制御演算部、26…制御偏差変換部、27−1…重み係数W1設定部、27−2…重み係数W2設定部、27−3…重み係数W3設定部、28…逆行列再変換部、29…状態量変換行列T記憶部、30…逆行列T-1記憶部、31…最大偏差制御系探索部、32…行列修正部。

Claims (4)

  1. n(nは2以上の自然数)個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御装置において、
    前記個のPID制御ループの状態量の加重平均値であって特定の基準となる絶対的な状態量を基準状態量とし、状態量差である相対的な状態量を相対状態量としたとき、
    前記n個のPID制御ループに入力される各状態量計測値とこれに対応する各状態量設定値との制御偏差を前記状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、
    前記算出されたn個の制御偏差を、前記基準状態量に対応する制御偏差または前記相対状態量に対応する制御偏差に変換するためのn×nの状態量変換行列により線形結合して前記基準状態量に対応する制御偏差または前記相対状態量に対応する制御偏差のいずれかに変換する制御偏差変換部と、
    前記変換されたn個の制御偏差にそれぞれ対応し、制御の優先度を与える重み係数を乗算する重み係数設定部と、
    PID制御演算部が算出するn個の操作量と前記n個のPID制御ループの各アクチュエータの出力とを1対1に対応させるために、前記重み係数が乗算されたn個の制御偏差を前記状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部と、
    前記再変換されたn個の制御偏差に基づき各PID制御ループの操作量を算出して、算出したn個の操作量をそれぞれ対応するPID制御ループのアクチュエータに出力するPID制御演算部と、
    前記変換される前の制御偏差の絶対値をPID制御ループ毎に算出し、絶対値が大きなPID制御ループほど前記加重平均値の加重を大きく適応修正することにより前記状態量変換行列および前記逆行列を適応的に修正する行列修正部とを備えることにより、
    基準状態量と相対状態量に優先度を与えて制御するための制御偏差を算出することを特徴とする制御装置。
  2. n(nは2以上の自然数)個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御装置において、
    前記個のPID制御ループの状態量の加重平均値であって特定の基準となる絶対的な状態量を基準状態量とし、状態量差である相対的な状態量を相対状態量としたとき、
    前記n個のPID制御ループに入力されるn個の各状態量計測値を、基準状態量計測値または相対状態量計測値に変換するためのn×nの状態量変換行列により線形結合して前記基準状態量計測値または相対状態量計測値のいずれかに変換する状態量変換部と、
    前記変換された基準状態量計測値とこれに対応する基準状態量設定値との制御偏差または前記変換された相対状態量計測値とこれに対応する相対状態量設定値との制御偏差のいずれかを前記変換された状態量計測値毎に算出する制御偏差算出部と、
    前記算出されたn個の制御偏差にそれぞれ対応し、制御の優先度を与える重み係数を乗算する重み係数設定部と、
    PID制御演算部が算出するn個の操作量と前記n個のPID制御ループの各アクチュエータの出力とを1対1に対応させるために、前記重み係数が乗算されたn個の制御偏差を前記状態量変換行列の逆行列により再変換する逆行列再変換部と、
    前記再変換されたn個の制御偏差に基づき各PID制御ループの操作量を算出して、算出したn個の操作量をそれぞれ対応するPID制御ループのアクチュエータに出力するPID制御演算部と、
    前記n個のPID制御ループに入力される各状態量計測値とこれに対応する各状態量設定値との制御偏差の絶対値をPID制御ループ毎に算出し、絶対値が大きなPID制御ループほど前記加重平均値の加重を大きく適応修正することにより前記状態量変換行列および前記逆行列を適応的に修正する行列修正部とを備えることにより、
    基準状態量と相対状態量に優先度を与えて制御するための制御偏差を算出することを特徴とする制御装置。
  3. 請求項1記載の制御装置において、
    前記状態量変換行列は、前記変換された制御偏差に、異なるPID制御ループの状態量計測値間の相対的な関係を与える相対制御偏差が含まれるように予め設定され、
    前記相対制御偏差に乗算される前記重み係数は、前記相対制御偏差に対する制御の優先度が高くなるように予め設定されることを特徴とする制御装置。
  4. 請求項2記載の制御装置において、
    前記状態量変換行列は、前記変換された状態量計測値に、異なるPID制御ループの状態量計測値間の相対的な関係を与える相対状態量計測値が含まれるように予め設定され、
    前記相対状態量計測値に対応する制御偏差に乗算される前記重み係数は、前記相対状態量計測値に対する制御の優先度が高くなるように予め設定されることを特徴とする制御装置。
JP2004271936A 2004-09-17 2004-09-17 制御装置 Expired - Fee Related JP4361852B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004271936A JP4361852B2 (ja) 2004-09-17 2004-09-17 制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004271936A JP4361852B2 (ja) 2004-09-17 2004-09-17 制御装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006085599A JP2006085599A (ja) 2006-03-30
JP4361852B2 true JP4361852B2 (ja) 2009-11-11

Family

ID=36164031

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004271936A Expired - Fee Related JP4361852B2 (ja) 2004-09-17 2004-09-17 制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4361852B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006085599A (ja) 2006-03-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7376470B2 (en) Control method and apparatus
JP6974143B2 (ja) 制御装置および制御方法
KR101478450B1 (ko) 다변수 비선형 시스템의 제어를 위한 pid 가변 이득설계 방법
Yahagi et al. Direct data-driven tuning of look-up tables for feedback control systems
CN108388136B (zh) 一种具有非线性输入的柔性弦线系统的振动控制方法
JP4358674B2 (ja) 制御方法
JP4361852B2 (ja) 制御装置
KR20170119197A (ko) 궤도 추적 에러의 최대 진폭을 줄이기 위한 제어기 설계 방법 및 이를 이용한 제어기
JP7401331B2 (ja) 制御装置および制御方法
JP4361883B2 (ja) 制御装置
JP4382632B2 (ja) 制御装置
JP4361851B2 (ja) 制御方法
JP4361884B2 (ja) 制御方法および制御装置
JP4317073B2 (ja) 制御装置
JP4358675B2 (ja) 制御方法
JP4361881B2 (ja) 制御方法および制御装置
JP4361827B2 (ja) 制御方法
JPWO2008018496A1 (ja) 制御方法および制御装置
JP5332763B2 (ja) 制御装置および温度調節器
JP2006221235A (ja) 制御装置
JP4999109B2 (ja) 光デバイスの制御方法および光デバイス制御装置
JP7037898B2 (ja) 2自由度制御システムのゲイン調整装置、ゲイン調整方法及びプログラム
JP6922224B2 (ja) 制御装置、制御方法、制御プログラム
TW201723696A (zh) 具智能調節之控制系統
JP6974142B2 (ja) 制御装置および制御方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070330

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090107

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090210

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090402

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090519

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090707

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090811

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090813

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120821

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130821

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130821

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140821

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees