JP4361884B2 - 制御方法および制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、プロセス制御技術に関するものであり、特に少なくとも2個の制御ループを有する制御系において計測される状態量差などの相対量を制御対象とする制御方法および制御装置に関するものである。
図10(a)に、従来の制御装置である温度調節計の構成を示す(例えば特許文献1参照)。炉1001内には、熱処理ワーク1016が搬入され、またヒータ1011と、制御温度TC1を検出する検出手段1012と、ワーク1016の表面温度TC2を検出する検出手段1013と、ワーク1016の最深温度TC3を検出する検出手段1014とが配設されている。1002は電力調整器を示している。制御部1003は、制御温度TC1と実行プログラムパターン設定値1033とを比較する比較器1031と、比較器1031の出力により制御されるPID等の制御演算部1032と、ワーク1016の表面温度TC2と最深温度TC3との差を検出する温度差検出器1034と、予め定められた温度差を設定する温度差設定器1035と、温度差検出器1034の出力と温度差設定器1035の出力とを比較する比較器1036と、最深温度TC3の温度変化率を検出する変化率検出器1038と、変化率検出器1038の出力と予め定められた温度変化率を設定する変化率設定器1039の出力とを比較する比較器1040と、比較器1036の出力と比較器1040の出力に基づいて傾斜演算し実行プログラムパターン設定値1033を制御する傾斜演算器1037とを有している。
温度差設定器1035には許容可能な最大の温度差が設定され、また変化率設定器1039には許容可能な最大の温度変化率が設定される。図10(a)の構成により、熱処理ワーク1016内の温度差、温度変化率の一方もしくは両方が指定された温度許容値以内に入るように、実行プログラムパターン設定値1033中の傾斜が常時修正される。
図10(a)中の破線で囲まれている部分に着目すると、計測された複数の温度TC1,TC2,TC3に基づき温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換が行なわれていることが理解できる。すなわち、図10(a)の温度調節計は、温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換部1041を備えていることになる(図10(b))。
図11(a)に、従来の他の制御装置である温度調整装置の構成を示す(例えば特許文献2参照)。図中の2002は縦型熱処理装置2020の反応管であり、この反応管2002の内部には、ウエハボ−ト2021に搭載された半導体ウエハの近傍の温度を検出する温度センサAが設けられると共に、反応管2002の外面の温度を検出する温度センサBが設けられている。偏差回路部2031は、温度センサAの目標値から後述する補正値を引いた偏差、すなわち温度センサBの目標値を出力する。偏差回路部2032は、温度センサBの目標値から温度センサBの検出値を引いた偏差をPID調節部2004に出力する。PID調節部2004は、入力された偏差に基づいてPID演算を行い、その演算結果を電力制御部2005に出力し、電力制御部2005は、PID調節部2004の出力値に基づいて縦型熱処理装置2020の加熱源であるヒ−タ2006への電力供給量を制御する。一方、補正値出力部2007は、温度センサBの検出値が目標値に収束したとき、この収束した時点の温度センサAの検出値と温度センサBの検出値との差(A−B)を補正値とし、温度センサBの目標値を補正値分だけ修正する。図11(a)の構成により、温度センサAの検出値が目標値に収束する。
図11(a)中の破線で囲まれている部分に着目すると、計測された複数の温度A,Bに基づき温度差(A−B)を算出する状態量変換が行なわれていることが理解できる。すなわち、図11(a)の温度調整装置は、温度差(A−B)を算出する状態量変換部2008を備えていることになる(図11(b))。
以上のように、実際の状態量そのものだけではなく、状態量差を制御系に取り込む努力は従来から行なわれており、特に状態量差を制御対象として制御系を構成するケースでは、制御系に前記状態量変換部が設けられる。
ここで、2個の制御ループにおいて、状態量PV1,PV2そのものではなく、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とを制御対象とすることを考える。この場合の制御装置を図12に示す。図12の制御装置は、状態量平均値PV1’に対する設定値SP1’と状態量平均値PV1’との差を出力する減算器3001と、状態量差PV2’に対する設定値SP2’と状態量差PV2’との差を出力する減算器3002と、減算器3001,3002の出力に基づいてそれぞれ操作量MV1,MV2を算出するコントローラC1,C2と、制御対象プロセスP1,P2に対してそれぞれ操作量MV1,MV2に応じた操作を行うアクチュエータA1,A2と、状態量変換部3003とを有する。
状態量変換部3003は、制御対象プロセスP1,P2の状態量PV1,PV2に対してそれぞれ0.5を乗算する乗算器3004,3005と、状態量PV1,PV2に対してそれぞれ−1,1を乗算する乗算器3006,3007と、乗算器3004と3005の出力を加算する加算器3008と、乗算器3006と3007の出力を加算する加算器3009とから構成される。このような状態量変換部3003により、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とは次式のようになる。
PV1’=0.5PV1+0.5PV2 ・・・(1)
PV2’=PV2−PV1 ・・・(2)
また、状態量変換部3003の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
Figure 0004361884
コントローラC1は状態量平均値PV1’を対象とし、コントローラC2は状態量差PV2’を対象とする。コントローラC1は、設定値SP1’と状態量平均値PV1’との偏差に基づき操作量MV1を算出し、コントローラC2は、設定値SP2’と状態量差PV2’との偏差に基づき操作量MV2を算出する。このとき、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とがそれぞれ制御可能な状態になるために、コントローラC1で算出される操作量MV1はアクチュエータA1に送られ、コントローラC2で算出される操作量MV2はアクチュエータA2に送られるように構成される。これにより、アクチュエータA1は状態量平均値PV1’を制御するために動作し、アクチュエータA2は状態量差PV2’を制御するために動作することになる。このように、図10(b)や図11(b)に示したものと同様の状態量変換部3003を適用するだけで、状態量平均値PV1’を直接制御するコントローラC1と状態量差PV2’を直接制御するコントローラC2とを含むマルチループの制御系を構成でき、状態量平均値PV1’と状態量差PV2’とを所望の値に制御することができる。
しかし、アクチュエータA1の動作により状態量PV1に変化が与えられると、この変化は状態量変換部3003の作用により状態量差PV2’にも影響を与える。同様に、アクチュエータA2の動作により状態量PV2に変化が与えられると、この変化は状態量変換部3003の作用により状態量平均値PV1’にも影響を与える。すなわち、図12に示した制御装置では、状態量変換部3003により人工的にループ間干渉が発生する構成となってしまう。
状態量平均値PV1’を算出するために状態量PV1,PV2に乗算する係数は共に0.5であるため、制御対象プロセスP1のプロセスゲインKp1と制御対象プロセスP2のプロセスゲインKp2とが同程度だと仮定すると、アクチュエータA1が動作することによる状態量平均値PV1’への影響度と、アクチュエータA2が動作したときのループ間干渉による状態量平均値PV1’への影響度(アクチュエータA2により状態量平均値PV1’が乱れる影響度)とは、同程度ということになる。同様に、状態量差PV2’を算出するために状態量PV1,PV2に乗算する係数の絶対値は共に1であるため、アクチュエータA2が動作することによる状態量差PV2’への影響度と、アクチュエータA1が動作したときのループ間干渉による状態量差PV2’への影響度(アクチュエータA1により状態量差PV2’が乱れる影響度)とは、同程度ということになる。したがって、状態量変換部を単純に適用するだけでは、本質的に人工的なループ間干渉が強くなる傾向にあるので、制御性が劣化しやすくなるという問題が発生する。
そこで、ループ間の非干渉化を実現するために、非特許文献1に開示されたクロスコントローラを適用することが容易に想到できる。非特許文献1に開示された制御装置の構成を図13に示す。図13の制御装置は、設定値SP1と状態量PV1との差を出力する減算器4001と、設定値SP2と状態量PV2との差を出力する減算器4002と、減算器4001,4002の出力に基づいてそれぞれ操作量MV1,MV2を算出するコントローラ4003,4004と、操作量MV1,MV2をそれぞれ変換した操作量MV1’,MV2’を出力するクロスコントローラ4005とを有する。
クロスコントローラ4005は、ループ間干渉による影響分を予め打ち消す処理を操作量MV1,MV2に対して行うものであり、操作量MV1に係数M12を乗算する乗算器4007と、操作量MV2に係数M21を乗算する乗算器4008と、操作量MV1と乗算器4008の出力との差を操作量MV1’として出力する減算器4009と、操作量MV2と乗算器4007の出力との差を操作量MV2’として出力する減算器4010とから構成される。ここでは説明を簡単にするため、プロセス時定数やプロセスむだ時間などの動的特性は無視することにする。操作量MV1’,MV2’に対する制御対象プロセス4006のプロセスゲインをそれぞれKp1,Kp2とすると、非特許文献1によれば、非干渉化のためのクロスコントローラ4005は以下のように設計できる。
MV1’=MV1+(−0.5Kp2/0.5Kp1)MV2 ・・・(4)
MV2’=(Kp1/Kp2)MV1+MV2 ・・・(5)
また、クロスコントローラ4005の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
Figure 0004361884
すなわち、前述の係数M12は−Kp1/Kp2、係数M21は0.5Kp2/0.5Kp1となる。コントローラ4003により算出された操作量MV1は、クロスコントローラ4005により操作量MV1’に変換された後に図示しないアクチュエータを介して制御対象プロセス4006に送られ、コントローラ4004により算出された操作量MV2は、クロスコントローラ4005により操作量MV2’に変換された後にアクチュエータを介して制御対象プロセス4006に送られる。
図13に示したクロスコントローラ4005を図12の制御装置に適用した構成を図14に示す。状態量変換部3003とクロスコントローラ4005とを用いることにより、状態量平均値PV1’のみを専用的に制御するコントローラC1を中心とする第1制御ループと、状態量差PV2’のみを専用的に制御するコントローラC2を中心とする第2制御ループとを有するマルチループの制御系を実現できる。状態量平均値PV1’のみを専用的に制御するコントローラC1の応答特性を安定性重視の方向(低感度)で調整し、状態量差PV2’のみを専用的に制御するコントローラC2の応答特性を即応性重視の方向(高感度)で調整すれば、状態量平均値PV1’が設定値SP1’に追従するよりも前に、状態量差PV2’が設定値SP2’に追従するようになるので、状態量差PV2’を所望の値に維持しながら、状態量平均値PV1’を所望の値に変更するような制御が可能になる。
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
特開平8−095647号公報 特開平9−199491号公報 広井和男,「ディジタル計装制御システムの基礎と応用」,工業技術社,1987年10月,p.152−156,ISBN4−905957−00−1
[第1の課題]
実際のアクチュエータには出力の上下限があり、コントローラはこの上下限を考慮した操作量算出をしなければならない。つまり、アクチュエータの出力が上限値あるいは下限値に達して状態量の変化に限界が生じている状態においては、コントローラは必要以上に操作量の算出結果を高くしたり低くしたりしてはならない。PID等のコントローラがアクチュエータの物理的な上下限を考慮しない場合、積分ワインドアップという問題が生じる。
以下、この積分ワインドアップについて具体的に説明する。例えば、状態量が温度であり、アクチュエータがヒータである場合、一般的にヒータ出力には下限値0%、上限値100%という制約が与えられる。コントローラで算出される操作量MVが上昇して100%に達すると、ヒータ出力も100%に達する。このとき、温度設定値SPに対して温度計測値PVが低い場合、仮にコントローラがヒータ出力の上限値100%を無視していると、コントローラは100%よりも大きな操作量MVを算出することになる。ところが、ヒータ出力は100%で飽和するため、ヒータ出力の上昇に応じた温度計測値PVの上昇は限界に達し、その結果、コントローラは操作量MVをさらに大きな値へと上げていくことになる。
そして、操作量MVの算出値が上昇し続けて例えば500%に達した時点で、温度設定値SPが温度計測値PVよりも低い値に変更されたと仮定する。温度設定値SPの変更により、コントローラは、操作量MVを500%から下げていくことになるので、ヒータ出力の上限値100%よりも低い操作量MVがコントローラから出力されるようになるまでに長い時間がかかる。したがって、温度設定値SPを温度計測値PVよりも低い値に変更したにもかかわらず、コントローラからは長時間にわたって操作量100%が出力され、結果的に温度降下の開始が大きく遅れることになる。以上のように操作量MVの算出結果が必要以上に高くなり、設定値SPが小さい値に変更されたときに操作量MVの降下が遅れる現象が積分ワインドアップと呼ばれる現象であり、コントローラがアクチュエータの物理的な上下限を考慮して操作量を算出しないことに起因する。
図14に示した制御装置では、コントローラC1,C2において算出される操作量MV1,MV2がクロスコントローラ4005により操作量MV1’,MV2’に変換される。言い換えれば、コントローラC1,C2が算出する操作量MV1,MV2は、複数のアクチュエータA1,A2への合成操作量として算出されるわけであり、コントローラC1,C2の操作量MV1,MV2とアクチュエータA1,A2の出力とが1対1に対応しなくなる。したがって、コントローラC1,C2がアクチュエータA1,A2の出力の上下限を考慮した操作量MV1,MV2の算出を行ったとしても、アクチュエータA1,A2に実際に出力されるのは操作量MV1,MV2を合成した操作量MV1’,MV2’なので、結果としてアクチュエータA1,A2の出力の上下限を考慮していない操作量出力がアクチュエータA1,A2に対して行われる可能性がある。このため、図14に示した制御装置では、前述のPIDコントローラと同様の積分ワインドアップが発生するという問題点があった。
[第2の課題]
また、通常のコントローラでは、制御対象の特性に合わせてパラメータの調整を行なわなければならない。パラメータ調整の例としては、PIDコントローラにおけるPIDパラメータ調整がある。従来、このようなパラメータ調整を実現するための調整方法や自動調整機能などが考案されているが、この調整方法や自動調整機能は基本的にコントローラとアクチュエータと制御対象と計測手段とが物理的に対応していることが必要条件になる。
以下、従来のパラメータ調整について具体的に説明する。例えば、状態量が温度であり、アクチュエータがヒータであり、制御対象が炉であり、計測手段が熱電対などの温度センサである場合を考える。このとき、図15に示すように、2個の制御ループを想定し、コントローラ5003,5004と、アクチュエータであるヒータ5005,5006と、制御対象である炉5007,5008と、計測手段である温度センサ5009,5010とを備えるものとする。図15において、5001は温度設定値SP1と温度計測値PV1との差を出力する減算器、5002は温度設定値SP2と温度計測値PV2との差を出力する減算器である。
図15の構成においては、多少のループ間干渉は許容するものの、コントローラ5003はヒータ5005に操作量MV1を出力し、ヒータ5005は主に炉5007を加熱し、温度センサ5009は炉5007付近の温度を計測して、コントローラ5003は温度計測値PV1を制御するように制御演算を実行しなければならない。同様に、コントローラ5004はヒータ5006に操作量MV2を出力し、ヒータ5006は主に炉5008を加熱し、温度センサ5010は炉5008付近の温度を計測して、コントローラ5004は温度計測値PV2を制御するように制御演算を実行しなければならない。このように、コントローラ5003,5004とヒータ5005,5006と炉5007,5008と温度センサ5009,5010とが物理的に対応していることが、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用するための必要条件になる。逆に言えば、コントローラ5003がヒータ5005とヒータ5006とに同等のレベルで配分される操作量MV1,MV2を1個の合成操作量として算出し、同じくコントローラ5004がヒータ5005とヒータ5006とに同等のレベルで配分される操作量MV1,MV2を1個の合成操作量として算出すると、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用することは不可能になる。
図14に示した制御装置では、コントローラC1,C2において算出される操作量MV1,MV2がクロスコントローラ4005により操作量MV1’,MV2’に変換される。言い換えれば、コントローラC1,C2が算出する操作量MV1,MV2は、複数のアクチュエータA1,A2への合成操作量として算出されるわけであり、コントローラC1,C2の操作量MV1,MV2とアクチュエータA1,A2の出力とが1対1に対応しなくなる。すなわち、コントローラとアクチュエータと制御対象と計測手段とが物理的に対応するという基本的な条件が成立しなくなる。したがって、図14に示した制御装置では、従来考案されている調整方法や自動調整機能などを適用することは不可能であり、PIDパラメータ調整等のコントローラのパラメータ調整が非常に難しくなるという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、複数の状態量間の相対量を所望の値に維持しつつ、複数の状態量の平均値等の絶対量を所望の値に変更する制御を行う制御系において、積分ワインドアップを防止することができ、かつ従来考案されているパラメータ調整方法や自動調整機能などを適用することができる制御方法および制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御方法において、特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、前記追従状態量を制御するための複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する算出手順と、前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で、前記追従状態量を制御するPIDコントローラに入力するフィルタ手順とを備え、前記算出手順は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御するようにしたものである。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記フィルタ手順は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うようにしたものである。
また、本発明の制御装置は、少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の装置において、特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、追従状態量毎に設けられ、追従状態量を制御するための操作量を算出して、算出した操作量を対応するPID制御ループの制御対象に出力するPIDコントローラと、追従状態量毎に設けられ、複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する追従状態量内部設定値算出部と、追従状態量毎に設けられ、前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で前記PIDコントローラに入力するフィルタ部とを備え、前記追従状態量内部設定値算出部は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御するものである。
本発明によれば、少なくとも2個の制御ループを有する制御系において、特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する算出手順を実行し、この算出手順において追従状態量内部設定値SPi’を基準状態量に対する第1の要素と相対量に対する第2の要素との和として算出することにより、基準状態量と追従状態量との状態量差などの相対量を所望の値に維持しつつ、状態量平均値などの基準状態量を所望の値に変更する制御を実現することができる。また、本発明では、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する制御系を構成することができるので、積分ワインドアップを防止することができ、従来考案されているパラメータ調整方法や自動調整機能などを適用してコントローラを調整することができる。また、内部入力値の第2の要素として、相対量に対する制御演算用入力値の要素に第1の係数Biを掛けた値を使用することにより、相対量を優先的に制御しながら、基準状態量も同時に制御することができる。さらに、本発明では、追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上でコントローラに入力することにより、制御ループ間の状態量差に対する制御の効果が強くなるように係数Biを大きくした場合でも、制御の即応性を犠牲にすることなく、状態量差を小さくするという効果が得られ、かつ状態量の上下動を緩和することができる。
[発明の原理]
以下、本発明では、状態量平均値のような基準となる絶対的な状態量を基準状態量、基準状態量との相対量(例えば状態量差)が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量と称する。また、基準状態量に対する設定値を基準状態量設定値、基準状態量の計測値を基準状態量計測値、追従状態量に対する設定値を追従状態量設定値、追従状態量の計測値を追従状態量計測値、基準状態量と追従状態量との相対量に対する設定値を追従状態量相対設定値、基準状態量と追従状態量との相対量の計測値を追従状態量相対計測値、基準状態量に対してコントローラの内部に設定される内部設定値を基準状態量内部設定値、追従状態量に対してコントローラの内部に設定される内部設定値を追従状態量内部設定値と称する。状態量としては、例えば温度、圧力、流量などがある。
本発明では、外部から与えられる状態量設定値SPとは別に、コントローラの内部に設定される状態量内部設定値SP’を用いて、操作量MVを算出するものとする。このとき、状態量内部設定値SP’は、基準状態量に対する要素SPmと、基準状態量と追従状態量との相対量に対する要素ΔSPとに分離しておく(SP’=SPm+ΔSP)。また、本発明では、状態量計測値との内挿外挿演算(SP’=ASP+(1−A)PV)により、実際に与えられている設定値SPmやΔSPをそのまま適用する場合よりも、実質的にコントローラの特性を低感度側にシフトさせたり、高感度側にシフトさせたりできることに着目し、基準状態量の感度と、基準状態量と追従状態量との相対量の感度とを、各々個別にシフトできる状態量内部設定値SP’に変換する。
このように、本発明では、状態量内部設定値SP’を基準状態量に対する要素SPmと基準状態量と追従状態量との相対量に対する要素ΔSPとに分離し、この状態量内部設定値SP’を状態量設定値SPと状態量計測値PVとの内挿外挿演算により求めて操作量MVの算出に用いる構成とする。これにより、本発明では、状態量平均値のような基準状態量については応答特性を低感度側にシフトさせ、状態量差のような、基準状態量と追従状態量との相対量については応答特性を高感度側にシフトさせれば、基準状態量計測値PVmが基準状態量設定値SPmに追従するよりも前に、追従状態量相対計測値ΔPVが追従状態量相対設定値ΔSPに追従するようになるので、基準状態量と追従状態量との相対量を所望の値に維持しながら、基準状態量を所望の値に変更するような制御が可能になる。
また、本発明の構成によれば、通常の制御系との相違点は、状態量設定値SPが状態量内部設定値SP’に変換されることだけになる。すなわち、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する形式で、基準状態量と追従状態量との相対量を優先的に制御しながら、基準状態量も同時に制御する制御方法を提供することができる。
ここで、上記の2つの着眼点のうち、状態量設定値SPと状態量計測値PVとの内挿外挿演算による状態量内部設定値SP’の算出(以下、第1の着眼点と呼ぶ)について説明する。状態量設定値SPと状態量計測値PVとを参照し、特定の係数Aを用いて、以下の数式によりコントローラの内部に設定される状態量内部設定値SP’に変換することを考える。
SP’=ASP+(1−A)PV ・・・(7)
ただし、係数Aは0より大きい実数とする。このとき、A=1とすれば、SP’=SPとなり、状態量設定値SPは全く変換されないことを意味する。
式(7)において係数Aの値を0<A<1とすれば、変換された状態量内部設定値SP’は、元の状態量設定値SPと状態量計測値PVとの間の数値(内挿関係)になる。したがって、例えばPIDコントローラなどで偏差を算出する場合、図1に示すように、状態量設定値SPと状態量計測値PVとの偏差Er=SP−PVよりも、状態量内部設定値SP’と状態量計測値PVとの偏差Er’=SP’−PVの方が、絶対値が小さい値になる。その結果、コントローラが偏差Erに基づいて操作量MVを算出する場合よりも、偏差Er’に基づいて操作量MV’を算出する場合の方が、操作量の変化は緩くなる。すなわち、係数Aの値を0<A<1とすれば、コントローラの応答特性は安定性重視の方向(低感度)の特性にシフトする。
一方、係数Aの値をA>1とすれば、変換された状態量内部設定値SP’は、元の状態量設定値SPよりも更に状態量計測値PVから離れた数値(外挿関係)になる。したがって、例えばPIDコントローラなどで偏差を算出する場合、図2に示すように、状態量設定値SPと状態量計測値PVとの偏差Er=SP−PVよりも、状態量内部設定値SP’と状態量計測値PVとの偏差Er’=SP’−PVの方が、絶対値が大きい値になる。その結果、コントローラが偏差Erに基づいて操作量MVを算出する場合よりも、偏差Er’に基づいて操作量MV’を算出する場合の方が、操作量の変化は激しくなる。すなわち、係数Aの値をA>1とすれば、コントローラの応答特性は即応性重視の方向(高感度)の特性にシフトする。
次に、上記の2つの着眼点のうち、状態量内部設定値SP’を基準状態量に対する要素と基準状態量と追従状態量との相対量に対する要素とに分離する点(以下、第2の着眼点と呼ぶ)について説明する。基準状態量と、基準状態量と追従状態量との相対量とを同時に制御する場合、状態量設定値SPは、次式のように、基準状態量に対する要素SPmと、基準状態量と追従状態量との相対量に対する要素ΔSPmとに分離できる。
SP=SPm+ΔSPm ・・・(8)
また、状態量設定値SPに合わせて、状態量計測値PVについても、次式のように、基準状態量計測値PVmと、追従状態量相対計測値ΔPVmとに分離できる。
PV=PVm+ΔPVm ・・・(9)
ここで、第1の着眼点と第2の着眼点とをまとめると、式(7)〜式(9)より以下のようになる。
SP’=A(SPm+ΔSPm)+(1−A)(PVm+ΔPVm)
=ASPm+(1−A)PVm+AΔSPm+(1−A)ΔPVm
・・・(10)
このとき、式(10)中のASPm+(1−A)PVmは基準状態量に関する要素であり、AΔSPm+(1−A)ΔPVmは基準状態量と追従状態量との相対量に関する要素である。すなわち、両者は各々個別に内挿関係と外挿関係を与える線形結合式に分離されている形になるので、以下のように個別の係数A,Bにより、内挿関係と外挿関係を与えることが可能になる。
SP’=ASPm+(1−A)PVm+BΔSPm+(1−B)ΔPVm
・・・(11)
式(11)において、Aは基準状態量に関する係数、Bは基準状態量と追従状態量との相対量に関する係数となる。複数の制御ループがある場合、基準状態量と追従状態量との相対量に関する係数Bは特に各制御ループ個別に与えられることが好ましく、その場合、複数の制御ループにおけるi(iは1,2,3・・・・)番目の追従状態量について、以下のような状態量設定値SPiの変換を実施すれば良い。
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+BiΔSPim
+(1−Bi)ΔPVim ・・・(12)
式(12)において、SPi’はi番目の追従状態量に対する内部設定値、ΔSPimは基準状態量とi番目の追従状態量との相対量の設定値である追従状態量相対設定値、ΔPVimは基準状態量とi番目の追従状態量との相対量の計測値である追従状態量相対計測値、Biは基準状態量とi番目の追従状態量との相対量に関する係数である。なお、基準状態量に関する係数Amは、各制御ループ共通に与えても各制御ループ個別に与えてもかまわない。
また式(12)において、ΔSPim=SPi−SPm、ΔPVim=PVi−PVmであることは言うまでもなく、以下のような等価な置換は容易に可能である。
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+BiΔSPim
+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・・(13)
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)
+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・・(14)
なお、追従状態量相対計測値ΔPVimを採用する場合と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmとの差PVi−PVmを採用する場合とでは、単純に制御装置内部の処理が異なるだけである。これに対して、追従状態量相対設定値ΔSPimを採用する場合には、オペレータがユーザインタフェースを通して基準状態量設定値SPmと追従状態量相対設定値ΔSPimとを設定することになり、一方、追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmとの差SPi−SPmを採用する場合には、オペレータがユーザインタフェースを通して基準状態量設定値SPmと追従状態量設定値SPiとを設定することになり、この両者の場合は相違があるので、敢えて別な構成として扱うものとする。
また、式(13)、式(14)は、以下のような等価な数式に整理することも容易に可能である。
SPi’=PVi+Am(SPm−PVm)
+Bi{ΔSPim−(PVi−PVm)} ・・・(15)
SPi’=PVi+Am(SPm−PVm)
+Bi{(SPi−SPm)−(PVi−PVm)} ・・・(16)
また、SPi=SPi'''+ΔSPi'''、PVi=PVi'''+ΔPVi'''のように考えると、式(14)は以下のような等価変換も容易に可能である。
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)
+(1−Bi)(PVi−PVm)
=AmSPm+(1−Am)PVm
+Bi(SPi'''+ΔSPi'''−SPm)
+(1−Bi)(PVi'''+ΔPVi'''−PVm)
=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi'''−SPm''')
+(1−Bi)(PVi'''−PVm''') ・・・(17)
式(17)において、SPi'''、ΔSPi'''は追従状態量設定値SPiをさらに別の絶対量と相対量に分離したときの絶対量に対応する要素SPi''' と相対量に対応する要素ΔSPi''' であり、PVi'''、ΔPVi'''は追従状態量計測値PViを同様に別の絶対量と相対量に分離したときの絶対量に対応する要素PVi''' と相対量に対応する要素ΔPVi''' である。ここで、SPm'''=SPm−ΔSPi'''、PVm'''=PVm−ΔPVi'''である。すなわち、基準状態量と追従状態量との相対量に関する要素において、SPmやPVmを別のSPm'''やPVm'''に置換することは、両者の関係が明確である限りは等価な線形結合式であり、実質的に本発明の基本的技術思想の範囲から外れるものではない。
以上の原理により、基準状態量の感度と、基準状態量と追従状態量との相対量の感度とを、各々個別にシフトできる状態量内部設定値SP’が得られる。
続いて、基準状態量と追従状態量との相対量を優先的に制御する原理について説明する。式(14)において、基準状態量に関する係数Amと基準状態量と追従状態量との相対量に関する係数Biとの関係をAm=Bi=1とすれば、SPi’=SPiになる。このときの状態量内部設定値SPi’は状態量設定値SPiから全く変化しておらず、感度についても通常の制御と全く変化はない。
ここで、特に重要なのは基準状態量と追従状態量との相対量に関する係数Biであり、Bi>1とすることで基準状態量と追従状態量との相対量について特に感度が向上するので、相対量を優先的に制御するように制御装置を動作させることができる。したがって、基準状態量に関する係数Amについては常時Am=1としても、本発明における課題解決は達成されることになるので、以下のような状態量内部設定値SPi’への変換でも良い。
SPi’=SPm+BiΔSPim+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・(18)
SPi’=SPm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)
・・・(19)
SPi’=PVi+(SPm−PVm)+Bi{ΔSPim−(PVi−PVm)}
・・・(20)
SPi’=PVi+(SPm−PVm)
+Bi{(SPi−SPm)−(PVi−PVm)} ・・・(21)
ただし、基準状態量と追従状態量との相対量について感度を向上させるだけでは、相対量について十分な制御特性が得られる以前に、高感度化が過度な状態になり制御系が不安定化することもあり得る。このような場合には、基準状態量と追従状態量との相対量に関する係数Biを小さな値に戻すのではなく、基準状態量に関する係数AmをAm<1とすることにより不安定化を解消することも可能であり、基準状態量と追従状態量との相対量の優先度を犠牲にすることも回避できる。したがって、基準状態量に関する係数Amが調整可能な変換式を採用することがより好ましい。
発明者は、以上の原理を用いて、コントローラの操作量と実際のアクチュエータの出力とが1対1に対応する形式で、状態量差のような相対量を優先的に制御しながら、状態量平均値のような基準状態量も同時に制御できる制御方法を提案した(特願2004−128227)。この先行出願の制御方法では、状態量差を積極的に制御する場合、相対量に関する係数B(B1,B2,B3・・・・)を1.0よりも大きな値に設定する。このとき、状態量差に対する制御の効果をより強くする場合は、係数Bを可能な限り大きな値に設定すればよい。
しかし、状態量差に対する制御の効果を過度に強くすると、制御応答の上下動が継続する不安定な状態となるため、係数Bを大きな値にするには実質的な限界がある。以下、係数Bの増大による制御の不安定化とこの不安定化に対する先行出願の対処法について図を用いて説明する。
図3〜図5は、先行出願の制御方法において、制御ループが3個で、基準状態量として3個の制御ループの状態量平均値を採用し、追従状態量として3個の制御ループの各状態量を採用する場合のシミュレーション結果を示す図である。図3(a)、図4(a)、図5(a)は、追従状態量設定値SP1,SP2,SP3を30.0%に変更したときの制御系のステップ応答を示し、図3(b)、図4(b)、図5(b)は、SP1=SP2=SP3=30.0%で整定している状態で外乱が印加されたときの制御系の外乱応答を示している。なお、シミュレーションの詳細な条件については後述する。
図3(a)、図3(b)に示すシミュレーション結果は、先行出願の制御方法において、状態量差を制御しない通常の制御と等価な設定としたものであり、追従状態量計測値PV1,PV2,PV3は揃わない。
図4(a)、図4(b)に示すシミュレーション結果は、係数Bの値を大きくして、状態量差に対する制御の効果が過剰になる設定としたものであり、図3(a)、図3(b)の場合に比べて追従状態量計測値PV1,PV2,PV3が揃うようになるが、これらの状態量計測値PV1,PV2,PV3に上下動が発生する。このように、係数Bを大きな値にするには実質的な限界があり、限界に近づくと制御応答が乱れる。
そこで、先行出願の制御方法では、基準状態量に関する係数Amを1.0よりも小さな値に設定することにより、図4(a)、図4(b)に示した追従状態量計測値PV1,PV2,PV3の上下動の発生を緩和している(図5(a)、図5(b))。しかしながら、このような係数Amの設定は、制御の応答の速さ(即応性)を犠牲にするものであり、状況によっては採用できない等の問題点があった。
本発明では、前述の状態量の上下動の発生要因が、制御演算自体ではなく、追従状態量内部設定値の上下動であることに着眼する。追従状態量内部設定値が上下動することにより、この上下動に追従しようとする制御動作の結果として状態量自体が上下動する。
また、本発明では、基準状態量に関する係数Amを1.0よりも小さな値に設定する手法が、基準状態量設定値SPmと基準状態量計測値PVmとの偏差SPm−PVmの絶対値を小さな値に修正しようとする手法であり、状態量の上下動を直接的に操作する手法ではないことに着眼する。係数Amを1.0よりも小さな値に設定する手法により状態量の上下動を緩和できる理由は、基準状態量の設定値追従性(即応性)が抑制されることにより、全体的に操作量MVの変動が遅くなり、操作量MVの上下動幅が小さくなるからである。ゆえに、この手法は、制御の即応性を犠牲にして、状態量の上下動を抑制する手法ということになる。
先行出願の問題点を解決するには、前述の着眼点に基づき、状態量の上下動を直接的に緩和できるようにすればよい。そこで、本発明では、追従状態量内部設定値に対してローパスフィルタ(時間遅れフィルタ)を適用する。追従状態量内部設定値が制御演算に取り込まれる前にその上下動を緩和することで、状態量自体の上下動も緩和することができる。このフィルタとしては、例えば一般的な1次遅れフィルタがある。制御の即応性を左右する低周波領域のゲインに大きな影響を与えずに、状態量の上下動の周波数帯である高周波領域のゲインを低下させるようにフィルタの時定数を選べば、制御の即応性をほとんど犠牲にせずに、状態量の上下動を緩和することができる。
この状態量の上下動の周波数帯は、コントローラの制御演算がPIDであれば、設定されているPIDパラメータに依存して変化する。したがって、フィルタの時定数は、PIDパラメータに基づき大まかに決定することが可能であり、制御の即応性をほとんど犠牲にせずに、状態量の上下動を緩和できる目安としては、微分時間Tdの1.5倍以上2.5倍以下が妥当である。
なお、制御の即応性を左右する周波数帯が低周波領域であり、状態量の上下動の周波数帯が高周波領域であることは、図4(a)、図4(b)に示したように、本来の制御応答(追従状態量計測値PV1,PV2,PV3の大まかな動き)に比べると、計測値PV1,PV2,PV3の上下動がかなり短い周期で発生していることからも明らかである。
[実施の形態]
図6は、本発明の実施の形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、制御ループが3個で、基準状態量として3個の制御ループの状態量平均値を採用し、追従状態量として3個の制御ループの各状態量を採用する場合の例であるが、2個以上の制御ループであれば同様の原理で、同様の制御系を構成できる。
図6の制御装置は、第1の追従状態量に関する第1の制御系の構成として、追従状態量設定値SP1入力部1−1と、追従状態量計測値PV1入力部2−1と、操作量MV1出力部3−1と、PID制御演算部(PIDコントローラ)4−1と、係数B1記憶部5−1と、追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と、内部設定値フィルタ部10−1とを備える。また、図6の制御装置は、第2の追従状態量に関する第2の制御系の構成として、追従状態量設定値SP2入力部1−2と、追従状態量計測値PV2入力部2−2と、操作量MV2出力部3−2と、PID制御演算部(PIDコントローラ)4−2と、係数B2記憶部5−2と、追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と、内部設定値フィルタ部10−2とを備える。また、図6の制御装置は、第3の追従状態量に関する第3の制御系の構成として、追従状態量設定値SP3入力部1−3と、追従状態量計測値PV3入力部2−3と、操作量MV3出力部3−3と、PID制御演算部(PIDコントローラ)4−3と、係数B3記憶部5−3と、追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3と、内部設定値フィルタ部10−3とを備える。
また、図6の制御装置は、基準状態量に関する構成として、追従状態量設定値SP1とSP2とSP3の平均値を基準状態量設定値SPmとして算出する基準状態量設定値SPm算出部7と、追従状態量計測値PV1とPV2とPV3の平均値を基準状態量計測値PVmとして算出する基準状態量計測値PVm算出部8と、係数Am記憶部9とを備える。
図7は本実施の形態における制御系のブロック線図である。図7において、SP1”,SP2”,SP3”はそれぞれ第1、第2、第3の追従状態量の内部設定値SP1’,SP2’,SP3’をフィルタリング処理した追従状態量フィルタリング内部設定値、Er1’は追従状態量フィルタリング内部設定値SP1”と第1の追従状態量の計測値PV1との偏差、Er2’は追従状態量フィルタリング内部設定値SP2”と第2の追従状態量の計測値PV2との偏差、Er3’は追従状態量フィルタリング内部設定値SP3”と第3の追従状態量の計測値PV3との偏差である。
また、図7において、Amは基準状態量に関する係数、B1は第1の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数、B2は第2の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数、B3は第3の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数、A1は第1の追従状態量を制御するアクチュエータ、A2は第2の追従状態量を制御するアクチュエータ、A3は第3の追従状態量を制御するアクチュエータ、P1は第1の追従状態量に係る制御対象プロセス、P2は第2の追従状態量に係る制御対象プロセス、P3は第3の追従状態量に係る制御対象プロセス、Gp1はアクチュエータA1とプロセスP1とを含むブロックの伝達関数、Gp2はアクチュエータA2とプロセスP2とを含むブロックの伝達関数、Gp3はアクチュエータA3とプロセスP3とを含むブロックの伝達関数である。
追従状態量設定値SP1入力部1−1と、追従状態量計測値PV1入力部2−1と、操作量MV1出力部3−1と、PID制御演算部4−1と、追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と、内部設定値フィルタ部10−1と、アクチュエータA1と、プロセスP1とは、第1の制御系(第1の制御ループ)を構成している。追従状態量設定値SP2入力部1−2と、追従状態量計測値PV2入力部2−2と、操作量MV2出力部3−2と、PID制御演算部4−2と、追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と、内部設定値フィルタ部10−2と、アクチュエータA2と、プロセスP2とは、第2の制御系(第2の制御ループ)を構成している。そして、追従状態量設定値SP3入力部1−3と、追従状態量計測値PV3入力部2−3と、操作量MV3出力部3−3と、PID制御演算部4−3と、追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3と、内部設定値フィルタ部10−3と、アクチュエータA3と、プロセスP3とは、第3の制御系(第3の制御ループ)を構成している。
次に、本実施の形態の制御装置の動作を図8を用いて説明する。まず、追従状態量設定値SP1は、制御装置のオペレータによって設定され、追従状態量設定値SP1入力部1−1を介して追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と基準状態量設定値SPm算出部7とに入力される(図8ステップS101)。追従状態量設定値SP2は、オペレータによって設定され、追従状態量設定値SP2入力部1−2を介して追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と基準状態量設定値SPm算出部7とに入力される(ステップS102)。追従状態量設定値SP3は、オペレータによって設定され、追従状態量設定値SP3入力部1−3を介して追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3と基準状態量設定値SPm算出部7とに入力される(ステップS103)。
追従状態量計測値PV1は、図示しない第1の検出手段によって検出され、追従状態量計測値PV1入力部2−1を介してPID制御演算部4−1と追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と基準状態量計測値PVm算出部8とに入力される(ステップS104)。追従状態量計測値PV2は、図示しない第2の検出手段によって検出され、追従状態量計測値PV2入力部2−2を介してPID制御演算部4−2と追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と基準状態量計測値PVm算出部8とに入力される(ステップS105)。追従状態量計測値PV3は、図示しない第3の検出手段によって検出され、追従状態量計測値PV3入力部2−3を介してPID制御演算部4−3と追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3と基準状態量計測値PVm算出部8とに入力される(ステップS106)。
続いて、基準状態量設定値SPm算出部7は、次式のように、追従状態量設定値SP1と追従状態量設定値SP2と追従状態量設定値SP3との平均値を基準状態量設定値SPmとして算出し、この基準状態量設定値SPmを追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3とに出力する(ステップS107)。
SPm=(SP1+SP2+SP3)/3 ・・・(22)
基準状態量計測値PVm算出部8は、次式のように、追従状態量計測値PV1と追従状態量計測値PV2と追従状態量計測値PV3との平均値を基準状態量計測値PVmとして算出し、この基準状態量計測値PVmを追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1と追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2と追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3とに出力する(ステップS108)。
PVm=(PV1+PV2+PV3)/3 ・・・(23)
係数Am記憶部9は、基準状態量に関する係数Amを予め記憶しており、係数B1記憶部5−1は、第1の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数B1を予め記憶している。追従状態量内部設定値SP1’算出部6−1は、係数Am,B1と基準状態量設定値SPmと基準状態量計測値PVmと追従状態量設定値SP1と追従状態量計測値PV1とに基づき、追従状態量内部設定値SP1’を次式のように算出して内部設定値フィルタ部10−1に出力する(ステップS109)。
SP1’=AmSPm+(1−Am)PVm+B1(SP1−SPm)
+(1−B1)(PV1−PVm) ・・・(24)
係数B2記憶部5−2は、第2の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数B2を予め記憶している。追従状態量内部設定値SP2’算出部6−2は、係数Am,B2と基準状態量設定値SPmと基準状態量計測値PVmと追従状態量設定値SP2と追従状態量計測値PV2とに基づき、追従状態量内部設定値SP2’を次式のように算出して内部設定値フィルタ部10−2に出力する(ステップS110)。
SP2’=AmSPm+(1−Am)PVm+B2(SP2−SPm)
+(1−B2)(PV2−PVm) ・・・(25)
係数B3記憶部5−3は、第3の追従状態量と基準状態量との状態量差に関する係数B3を予め記憶している。追従状態量内部設定値SP3’算出部6−3は、係数Am,B3と基準状態量設定値SPmと基準状態量計測値PVmと追従状態量設定値SP3と追従状態量計測値PV3とに基づき、追従状態量内部設定値SP3’を次式のように算出して内部設定値フィルタ部10−3に出力する(ステップS111)。
SP3’=AmSPm+(1−Am)PVm+B3(SP3−SPm)
+(1−B3)(PV3−PVm) ・・・(26)
次に、内部設定値フィルタ部10−1は、追従状態量内部設定値SP1’に対して次式の伝達関数式のような1次遅れフィルタリング処理を実行し、追従状態量フィルタリング内部設定値SP1”を算出する(ステップS112)。
SP1”={1/(1+Tf1s)}SP1’ ・・・(27)
式(27)において、Tf1は予め設定されたフィルタ時定数、sはラプラス演算子である。
内部設定値フィルタ部10−2は、追従状態量内部設定値SP2’に対して次式の伝達関数式のような1次遅れフィルタリング処理を実行し、追従状態量フィルタリング内部設定値SP2”を算出する(ステップS113)。
SP2”={1/(1+Tf2s)}SP2’ ・・・(28)
式(28)において、Tf2は予め設定されたフィルタ時定数である。
内部設定値フィルタ部10−3は、追従状態量内部設定値SP3’に対して次式の伝達関数式のような1次遅れフィルタリング処理を実行し、追従状態量フィルタリング内部設定値SP3”を算出する(ステップS114)。
SP3”={1/(1+Tf3s)}SP3’ ・・・(29)
式(29)において、Tf3は予め設定されたフィルタ時定数である。
次に、PID制御演算部4−1は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV1を算出する(ステップS115)。
MV1=(100/Pb1){1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1”
−PV1) ・・・(30)
式(30)において、Pb1は比例帯、Ti1は積分時間、Td1は微分時間である。なお、PID制御演算部4−1は、算出した操作量MV1がアクチュエータA1の出力の下限値OL1より小さい場合、操作量MV1=OL1とし、算出した操作量MV1がアクチュエータA1の出力の上限値OH1より大きい場合、操作量MV1=OH1とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
PID制御演算部4−2は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV2を算出する(ステップS116)。
MV2=(100/Pb2){1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2”
−PV2) ・・・(31)
式(31)において、Pb2は比例帯、Ti2は積分時間、Td2は微分時間である。PID制御演算部4−2は、算出した操作量MV2がアクチュエータA2の出力の下限値OL2より小さい場合、操作量MV2=OL2とし、算出した操作量MV2がアクチュエータA2の出力の上限値OH2より大きい場合、操作量MV2=OH2とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
PID制御演算部4−3は、次式の伝達関数式のようなPID制御演算を行って操作量MV3を算出する(ステップS117)。
MV3=(100/Pb3){1+(1/Ti3s)+Td3s}(SP3”
−PV3) ・・・(32)
式(32)において、Pb3は比例帯、Ti3は積分時間、Td3は微分時間である。PID制御演算部4−3は、算出した操作量MV3がアクチュエータA3の出力の下限値OL3より小さい場合、操作量MV3=OL3とし、算出した操作量MV3がアクチュエータA3の出力の上限値OH3より大きい場合、操作量MV3=OH3とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
操作量MV1出力部3−1は、PID制御演算部4−1によって算出された操作量MV1をアクチュエータA1に出力する(ステップS118)。アクチュエータA1は、操作量MV1に基づいて第1の追従状態量を制御するために動作する。操作量MV2出力部3−2は、PID制御演算部4−2によって算出された操作量MV2をアクチュエータA2に出力する(ステップS119)。アクチュエータA2は、操作量MV2に基づいて第2の追従状態量を制御するために動作する。操作量MV3出力部3−3は、PID制御演算部4−3によって算出された操作量MV3をアクチュエータA3に出力する(ステップS120)。アクチュエータA3は、操作量MV3に基づいて第3の追従状態量を制御するために動作する。
以上のようなステップS101〜S120の処理が例えばオペレータによって制御の終了が指示されるまで(ステップS121においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
図9は、本実施の形態の制御装置のシミュレーション結果を示す図である。図9(a)は、追従状態量設定値SP1,SP2,SP3を30.0%に変更したときの制御系のステップ応答を示し、図9(b)は、SP1=SP2=SP3=30.0%で整定している状態で外乱が印加されたときの制御系の外乱応答を示している。シミュレーションの条件は以下の通りである。
まず、アクチュエータA1とプロセスP1とを含むブロックの伝達関数Gp1、アクチュエータA2とプロセスP2とを含むブロックの伝達関数Gp2、アクチュエータA3とプロセスP3とを含むブロックの伝達関数Gp3を次式のように設定する。ここでは、制御ループ間の干渉はないものとする。
Gp1=1.2exp(−2.0s)/{(1+70.0s)(1+10.0s)}
・・・(33)
Gp2=1.6exp(−2.0s)/{(1+60.0s)(1+10.0s)}
・・・(34)
Gp3=2.0exp(−2.0s)/{(1+50.0s)(1+10.0s)}
・・・(35)
PID制御演算部4−1の操作量下限値OL1を0%、上限値OH1を100%とし、PID制御演算部4−2の操作量下限値OL2を0%、上限値OH2を100%とし、PID制御演算部4−3の操作量下限値OL3を0%、上限値OH3を16%とする。
操作量MV1,MV2,MV3に応じて追従状態量計測値PV1,PV2,PV3は、次式のように定まる。
PV1=Gp1MV1 ・・・(36)
PV2=Gp2MV2 ・・・(37)
PV3=Gp3MV3 ・・・(38)
PID制御演算部4−1のPIDパラメータである比例帯Pb1を50.0、積分時間Ti1を35.0、微分時間Td1を20.0とし、PID制御演算部4−2のPIDパラメータである比例帯Pb2を66.7、積分時間Ti2を35.0、微分時間Td2を20.0とし、PID制御演算部4−3のPIDパラメータである比例帯Pb3を100.0、積分時間Ti3を35.0、微分時間Td3を20.0とする。なお、前述の図1〜図3についても、以上の条件でシミュレーションを行っている。
前述のとおり、図3(a)、図3(b)に示したシミュレーション結果は、先行出願の制御方法において、状態量差を制御しない通常の制御と等価な設定としたものであり、追従状態量計測値PV1,PV2,PV3は揃わない。
図4(a)、図4(b)に示したシミュレーション結果は、先行出願の制御方法において、状態量差に対する制御の効果が過剰になる設定(Am=1.0、B1=7.0、B2=7.0、B3=7.0)としたものであり、上下動発生の限界を超えた制御により得られた結果であるため、追従状態量計測値PV1,PV2,PV3に高周波の小さな上下動が発生している。
図5(a)、図5(b)に示したシミュレーション結果は、先行出願の制御方法において、状態量差に対する制御の効果が過剰になる設定(Am=0.3、B1=7.0、B2=7.0、B3=7.0)としたものであり、上下動発生の限界を超えた制御により得られた結果であるが、係数Amを1.0よりも小さな値に設定することにより、図4(a)、図4(b)の場合に比べて追従状態量計測値PV1,PV2,PV3の上下動が緩和されている。ただし、図4(a)、図4(b)の場合に比べて制御の即応性は大幅に犠牲になっている。
図9(a)、図9(b)に示すシミュレーション結果は、本実施の形態においてAm=1.0、B1=7.0、B2=7.0、B3=7.0、Tf1=30.0、Tf2=30.0、Tf3=30.0と設定したことにより得られたものであり、制御ループ間の状態量差を小さくするという効果が得られ、かつ状態量の上下動も緩和されており、さらに図5(a)、図5(b)の場合に比べて制御の即応性が改善されており、図4(a)、図4(b)の場合と大差ない即応性が得られている。
なお、本実施の形態で説明した制御装置は、演算装置、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
本発明は、プロセス制御技術に適用することができる。
本発明の状態量内部設定値によるコントローラの応答特性の変化について説明するための図である。 本発明の状態量内部設定値によるコントローラの応答特性の変化について説明するための図である。 先行出願の制御方法の動作のシミュレーション結果を示す図である。 先行出願の制御方法の動作のシミュレーション結果を示す図である。 先行出願の制御方法の動作のシミュレーション結果を示す図である。 本発明の実施の形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態における制御系のブロック線図である。 本発明の実施の形態における制御装置の動作を示すフローチャートである。 本発明の実施の形態における制御装置の動作のシミュレーション結果を示す図である。 従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 従来の他の制御装置の構成を示すブロック図である。 状態量平均値と状態量差とを制御対象とする従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 クロスコントローラを用いた従来の制御装置の構成を示すブロック図である。 図13のクロスコントローラを図12の制御装置に適用した構成を示すブロック図である。 従来のパラメータ調整について説明するための図である。
符号の説明
4−1、4−2、4−3…PID制御演算部、5−1…係数B1記憶部、5−2…係数B2記憶部、5−3…係数B3記憶部、6−1…追従状態量内部設定値SP1’算出部、6−2…追従状態量内部設定値SP2’算出部、6−3…追従状態量内部設定値SP3’算出部、7…基準状態量設定値SPm算出部、8…基準状態量計測値PVm算出部、9…係数Am記憶部、10−1、10−2、10−3…内部設定値フィルタ部。

Claims (4)

  1. 少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御方法において、
    特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、
    前記追従状態量を制御するための複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する算出手順と、
    前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で、前記追従状態量を制御するPIDコントローラに入力するフィルタ手順とを備え、
    前記算出手順は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、
    基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御することを特徴とする制御方法。
  2. 請求項1記載の制御方法において、
    前記フィルタ手順は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うことを特徴とする制御方法。
  3. 少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の装置において、
    特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、
    追従状態量毎に設けられ、追従状態量を制御するための操作量を算出して、算出した操作量を対応するPID制御ループの制御対象に出力するPIDコントローラと、
    追従状態量毎に設けられ、複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する追従状態量内部設定値算出部と、
    追従状態量毎に設けられ、前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で前記PIDコントローラに入力するフィルタ部とを備え、
    前記追従状態量内部設定値算出部は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、
    基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御することを特徴とする制御装置。
  4. 請求項3記載の制御装置において、
    前記フィルタ部は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うことを特徴とする制御装置。
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