JP4361884B2 - 制御方法および制御装置 - Google Patents
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Description
図10(a)中の破線で囲まれている部分に着目すると、計測された複数の温度TC1,TC2,TC3に基づき温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換が行なわれていることが理解できる。すなわち、図10(a)の温度調節計は、温度差(TC2−TC3)および温度変化率dTC3/dtを算出する状態量変換部1041を備えていることになる(図10(b))。
以上のように、実際の状態量そのものだけではなく、状態量差を制御系に取り込む努力は従来から行なわれており、特に状態量差を制御対象として制御系を構成するケースでは、制御系に前記状態量変換部が設けられる。
PV1’=0.5PV1+0.5PV2 ・・・(1)
PV2’=PV2−PV1 ・・・(2)
また、状態量変換部3003の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
MV1’=MV1+(−0.5Kp2/0.5Kp1)MV2 ・・・(4)
MV2’=(Kp1/Kp2)MV1+MV2 ・・・(5)
また、クロスコントローラ4005の入出力の関係をマトリックスで表現すると、以下のようになる。
実際のアクチュエータには出力の上下限があり、コントローラはこの上下限を考慮した操作量算出をしなければならない。つまり、アクチュエータの出力が上限値あるいは下限値に達して状態量の変化に限界が生じている状態においては、コントローラは必要以上に操作量の算出結果を高くしたり低くしたりしてはならない。PID等のコントローラがアクチュエータの物理的な上下限を考慮しない場合、積分ワインドアップという問題が生じる。
また、通常のコントローラでは、制御対象の特性に合わせてパラメータの調整を行なわなければならない。パラメータ調整の例としては、PIDコントローラにおけるPIDパラメータ調整がある。従来、このようなパラメータ調整を実現するための調整方法や自動調整機能などが考案されているが、この調整方法や自動調整機能は基本的にコントローラとアクチュエータと制御対象と計測手段とが物理的に対応していることが必要条件になる。
また、本発明の制御方法の1構成例において、前記フィルタ手順は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うようにしたものである。
以下、本発明では、状態量平均値のような基準となる絶対的な状態量を基準状態量、基準状態量との相対量(例えば状態量差)が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量と称する。また、基準状態量に対する設定値を基準状態量設定値、基準状態量の計測値を基準状態量計測値、追従状態量に対する設定値を追従状態量設定値、追従状態量の計測値を追従状態量計測値、基準状態量と追従状態量との相対量に対する設定値を追従状態量相対設定値、基準状態量と追従状態量との相対量の計測値を追従状態量相対計測値、基準状態量に対してコントローラの内部に設定される内部設定値を基準状態量内部設定値、追従状態量に対してコントローラの内部に設定される内部設定値を追従状態量内部設定値と称する。状態量としては、例えば温度、圧力、流量などがある。
SP’=ASP+(1−A)PV ・・・(7)
ただし、係数Aは0より大きい実数とする。このとき、A=1とすれば、SP’=SPとなり、状態量設定値SPは全く変換されないことを意味する。
SP=SPm+ΔSPm ・・・(8)
PV=PVm+ΔPVm ・・・(9)
SP’=A(SPm+ΔSPm)+(1−A)(PVm+ΔPVm)
=ASPm+(1−A)PVm+AΔSPm+(1−A)ΔPVm
・・・(10)
SP’=ASPm+(1−A)PVm+BΔSPm+(1−B)ΔPVm
・・・(11)
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+BiΔSPim
+(1−Bi)ΔPVim ・・・(12)
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+BiΔSPim
+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・・(13)
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)
+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・・(14)
SPi’=PVi+Am(SPm−PVm)
+Bi{ΔSPim−(PVi−PVm)} ・・・(15)
SPi’=PVi+Am(SPm−PVm)
+Bi{(SPi−SPm)−(PVi−PVm)} ・・・(16)
SPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)
+(1−Bi)(PVi−PVm)
=AmSPm+(1−Am)PVm
+Bi(SPi'''+ΔSPi'''−SPm)
+(1−Bi)(PVi'''+ΔPVi'''−PVm)
=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi'''−SPm''')
+(1−Bi)(PVi'''−PVm''') ・・・(17)
以上の原理により、基準状態量の感度と、基準状態量と追従状態量との相対量の感度とを、各々個別にシフトできる状態量内部設定値SP’が得られる。
SPi’=SPm+BiΔSPim+(1−Bi)(PVi−PVm) ・・(18)
SPi’=SPm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)
・・・(19)
SPi’=PVi+(SPm−PVm)+Bi{ΔSPim−(PVi−PVm)}
・・・(20)
SPi’=PVi+(SPm−PVm)
+Bi{(SPi−SPm)−(PVi−PVm)} ・・・(21)
図4(a)、図4(b)に示すシミュレーション結果は、係数Bの値を大きくして、状態量差に対する制御の効果が過剰になる設定としたものであり、図3(a)、図3(b)の場合に比べて追従状態量計測値PV1,PV2,PV3が揃うようになるが、これらの状態量計測値PV1,PV2,PV3に上下動が発生する。このように、係数Bを大きな値にするには実質的な限界があり、限界に近づくと制御応答が乱れる。
また、本発明では、基準状態量に関する係数Amを1.0よりも小さな値に設定する手法が、基準状態量設定値SPmと基準状態量計測値PVmとの偏差SPm−PVmの絶対値を小さな値に修正しようとする手法であり、状態量の上下動を直接的に操作する手法ではないことに着眼する。係数Amを1.0よりも小さな値に設定する手法により状態量の上下動を緩和できる理由は、基準状態量の設定値追従性(即応性)が抑制されることにより、全体的に操作量MVの変動が遅くなり、操作量MVの上下動幅が小さくなるからである。ゆえに、この手法は、制御の即応性を犠牲にして、状態量の上下動を抑制する手法ということになる。
なお、制御の即応性を左右する周波数帯が低周波領域であり、状態量の上下動の周波数帯が高周波領域であることは、図4(a)、図4(b)に示したように、本来の制御応答(追従状態量計測値PV1,PV2,PV3の大まかな動き)に比べると、計測値PV1,PV2,PV3の上下動がかなり短い周期で発生していることからも明らかである。
図6は、本発明の実施の形態となる制御装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態は、制御ループが3個で、基準状態量として3個の制御ループの状態量平均値を採用し、追従状態量として3個の制御ループの各状態量を採用する場合の例であるが、2個以上の制御ループであれば同様の原理で、同様の制御系を構成できる。
SPm=(SP1+SP2+SP3)/3 ・・・(22)
PVm=(PV1+PV2+PV3)/3 ・・・(23)
SP1’=AmSPm+(1−Am)PVm+B1(SP1−SPm)
+(1−B1)(PV1−PVm) ・・・(24)
SP2’=AmSPm+(1−Am)PVm+B2(SP2−SPm)
+(1−B2)(PV2−PVm) ・・・(25)
SP3’=AmSPm+(1−Am)PVm+B3(SP3−SPm)
+(1−B3)(PV3−PVm) ・・・(26)
SP1”={1/(1+Tf1s)}SP1’ ・・・(27)
式(27)において、Tf1は予め設定されたフィルタ時定数、sはラプラス演算子である。
SP2”={1/(1+Tf2s)}SP2’ ・・・(28)
式(28)において、Tf2は予め設定されたフィルタ時定数である。
SP3”={1/(1+Tf3s)}SP3’ ・・・(29)
式(29)において、Tf3は予め設定されたフィルタ時定数である。
MV1=(100/Pb1){1+(1/Ti1s)+Td1s}(SP1”
−PV1) ・・・(30)
式(30)において、Pb1は比例帯、Ti1は積分時間、Td1は微分時間である。なお、PID制御演算部4−1は、算出した操作量MV1がアクチュエータA1の出力の下限値OL1より小さい場合、操作量MV1=OL1とし、算出した操作量MV1がアクチュエータA1の出力の上限値OH1より大きい場合、操作量MV1=OH1とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
MV2=(100/Pb2){1+(1/Ti2s)+Td2s}(SP2”
−PV2) ・・・(31)
式(31)において、Pb2は比例帯、Ti2は積分時間、Td2は微分時間である。PID制御演算部4−2は、算出した操作量MV2がアクチュエータA2の出力の下限値OL2より小さい場合、操作量MV2=OL2とし、算出した操作量MV2がアクチュエータA2の出力の上限値OH2より大きい場合、操作量MV2=OH2とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
MV3=(100/Pb3){1+(1/Ti3s)+Td3s}(SP3”
−PV3) ・・・(32)
式(32)において、Pb3は比例帯、Ti3は積分時間、Td3は微分時間である。PID制御演算部4−3は、算出した操作量MV3がアクチュエータA3の出力の下限値OL3より小さい場合、操作量MV3=OL3とし、算出した操作量MV3がアクチュエータA3の出力の上限値OH3より大きい場合、操作量MV3=OH3とする操作量上下限処理を積分ワインドアップの対策として行う。
Gp1=1.2exp(−2.0s)/{(1+70.0s)(1+10.0s)}
・・・(33)
Gp2=1.6exp(−2.0s)/{(1+60.0s)(1+10.0s)}
・・・(34)
Gp3=2.0exp(−2.0s)/{(1+50.0s)(1+10.0s)}
・・・(35)
操作量MV1,MV2,MV3に応じて追従状態量計測値PV1,PV2,PV3は、次式のように定まる。
PV1=Gp1MV1 ・・・(36)
PV2=Gp2MV2 ・・・(37)
PV3=Gp3MV3 ・・・(38)
図4(a)、図4(b)に示したシミュレーション結果は、先行出願の制御方法において、状態量差に対する制御の効果が過剰になる設定(Am=1.0、B1=7.0、B2=7.0、B3=7.0)としたものであり、上下動発生の限界を超えた制御により得られた結果であるため、追従状態量計測値PV1,PV2,PV3に高周波の小さな上下動が発生している。
Claims (4)
- 少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の制御方法において、
特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、
前記追従状態量を制御するための複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する算出手順と、
前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で、前記追従状態量を制御するPIDコントローラに入力するフィルタ手順とを備え、
前記算出手順は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、
基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御することを特徴とする制御方法。 - 請求項1記載の制御方法において、
前記フィルタ手順は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うことを特徴とする制御方法。 - 少なくとも2個の並列なPID制御ループを有する制御系の装置において、
特定の基準となる状態量を基準状態量とし、この基準状態量との相対量が予め規定された値を維持するように制御される状態量を追従状態量としたとき、
追従状態量毎に設けられ、追従状態量を制御するための操作量を算出して、算出した操作量を対応するPID制御ループの制御対象に出力するPIDコントローラと、
追従状態量毎に設けられ、複数の制御演算用入力値のうち追従状態量設定値SPiを追従状態量内部設定値SPi’に変換する追従状態量内部設定値算出部と、
追従状態量毎に設けられ、前記追従状態量内部設定値SPi’をローパスフィルタリング処理した上で前記PIDコントローラに入力するフィルタ部とを備え、
前記追従状態量内部設定値算出部は、前記制御演算用入力値として、予め設定された基準状態量設定値SPmと、計測された基準状態量計測値PVmと、予め設定された追従状態量設定値SPiと、計測された追従状態量計測値PViとが入力されたとき、前記追従状態量計測値PViの前記基準状態量計測値PVmへの追従性の度合を規定する第1の係数Biと、前記基準状態量計測値PVmの前記基準状態量設定値SPmへの応答性の度合を規定する第2の係数Amとを用いて、前記追従状態量内部設定値SPi’をSPi’=AmSPm+(1−Am)PVm+Bi(SPi−SPm)+(1−Bi)(PVi−PVm)により算出することにより、
基準状態量計測値PVmの基準状態量設定値SPmへの追従性と、追従状態量計測値PViと基準状態量計測値PVmの差分である相対量PVi−PVmの追従状態量設定値SPiと基準状態量設定値SPmの差分である相対量SPi−SPmへの追従性を分離して制御することを特徴とする制御装置。 - 請求項3記載の制御装置において、
前記フィルタ部は、時間遅れ演算により前記ローパスフィルタリング処理を行うことを特徴とする制御装置。
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