JP2001273899A - リチウム二次電池用正極材料 - Google Patents
リチウム二次電池用正極材料Info
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Abstract
電池用正極において、初充電における負極の不可逆容量
分を補ったり、高温サイクル時に起こる副反応によるリ
チウム損失分を充当する機能を果たす化合物を含有させ
ることにより、リチウムマンガン酸化物を正極活物質と
して安定に機能させ、高温サイクル特性の向上を図るこ
とである。 【解決手段】 立方晶スピネル構造を有するリチウムマ
ンガン酸化物および化合物(A)を含有する正極材料であ
って、該リチウムマンガン酸化物のMnサイトの一部が
他元素で置換されており、該化合物(A)が、該正極材料
からなる正極を有するリチウム二次電池において、該電
池の充放電の最大電圧範囲に対応する対極リチウム基準
での上限電位までの初期充電時にはリチウムイオンを放
出し、下限電位までの初期放電時には実質的にリチウム
イオンを吸蔵しない化合物であることを特徴とするリチ
ウム二次電池用正極材料。
Description
正極材料に関し、更には該正極材料を含む正極、該正極
を有するリチウム二次電池に関する。
て、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な炭素材料等を
用いることにより、安全性が大幅に向上し、リチウム二
次電池が実用段階に入った。
ては、マンガンとリチウムの複合酸化物でありスピネル
構造を有するLiMn2O4 が提案され、研究が盛んに
行われている。高電圧・高エネルギー密度であり、加え
てコバルトやニッケルに比較して埋蔵量が多く、安価と
いうメリットも有している。またこれまで問題とされて
きた常温下における充放電サイクル寿命においては、実
用段階レベルまで改善されてきている。しかし、マンガ
ン系リチウム二次電池は高温安定性に劣るといった問題
を抱えているため、高温環境下において使用されるよう
な需要に対しては実用レベルに達していない。
目的とした種々の検討が行われ、報告されている。例え
ば、J.Electrochem.soc.,Vol.145,No.8(1998)2726-2732
ではMnの一部をGaやCrのような他元素で置換した
もの、Electrochemical Society Proceedings Volume97
-18.494 ではMnの一部をCoで置換したり、酸素の一
部をFで置換して結晶構造の安定性向上を図ったものが
高温サイクル特性の改善効果があるという結果を示して
いる。しかしこれらは負極として金属リチウムを使用し
た時の結果であって、炭素材料のような実用的な負極材
料との組み合わせでは、十分な効果が得られていないの
が実情である。
ては高温環境下でマンガンが溶出しやすいことが高温サ
イクル劣化の問題点として指摘されており、例えば正極
活物質表面を処理したり、正極材中にMn溶出抑制効果
のある物質を添加するといった検討も鋭意行われてい
る。しかしながら、これら従来の技術では未だ高温環境
下でのサイクル特性は実用レベルまで達していない。
極表面における表面皮膜形成やリチウムイオンを吸蔵放
出し得る負極活物質構造中へのリチウムイオントラップ
が起こる。更に、リチウムマンガン酸化物を正極活物質
として使用した時には、高温下においてリチウムイオン
の不可逆な消費反応が促進される。皮膜形成やトラッ
プ、高温下での不可逆反応に消費されたリチウムイオン
は正極へ戻ることができなくなる。その結果、電池内で
の正極・負極のバランスが崩れたり、正極活物質自身の
不安定化を引き起こすことになる。こうしたリチウムイ
オンの不可逆な消費が、特にリチウムマンガン酸化物を
正極活物質として用いた時の高温サイクル劣化要因では
ないかと考えられている。
ンを補う手段として、特開平5−290846号公報に
おいて、二段の放電曲線を有する組成式Li1+xMnYB2-YO4
(Xは正数、1.6 ≦Y ≦1.9)で表されるものを正極活物質
として用い、この外部に取り出されない低電位の放電容
量分を初充電容量に充当する提案がある。しかしなが
ら、この手段では不可逆容量分の容量増加があっても、
サイクル特性をかえって悪化させてしまう欠点がある。
また、特開平10−208730号公報において、正極
活物質としてリチウム含有金属酸化物を有する正極合剤
層中に、前記リチウム含有金属酸化物のリチウムイオン
放出電位よりも卑な電位にリチウムイオン放出電位を有
する第三物質が、初充電において負極と反応して消費さ
れるリチウムイオン(初充電以後の充放電サイクルに関
与しないリチウムイオンの量、すなわち負極の不可逆容
量)に相当する量を少なくとも添加する提案がある。こ
の手段では初充電での負極の不可逆容量分を加味したこ
とにより優れた放電容量を得ることができるが、リチウ
ムマンガン酸化物を正極活物質として使用した時の高温
サイクル特性の改善には必ずしもつながらない。更に、
WO97/48140号公報において、リチウムマンガ
ン酸化物とリチウム銅酸化物を組み合わせて用いること
が提案されているが、高温サイクル特性の改善にとって
は充分ではなかった。この理由としては、リチウムマン
ガン酸化物自身の結晶構造安定化に対する対策が不十分
であったためと推察している。
とするところは、リチウムマンガン酸化物を含むリチウ
ム二次電池用正極において、初充電における負極の不可
逆容量分を補ったり、高温サイクル時に起こる副反応に
よるリチウム損失分を充当する機能を果たす化合物を含
有させることにより、リチウムマンガン酸化物を正極活
物質として安定に機能させ、かつ高温サイクル特性の向
上を図ることである。
解決すべく鋭意検討した結果、前記した従来技術で高温
サイクル特性が実用レベルまで達成できていない理由と
して、高温下においては複数の劣化因子が連動して作用
しているためではないかと考えた。
において負極表面における表面皮膜形成や負極活物質構
造中へのリチウムイオントラップが起こる。この皮膜形
成やトラップにより消費されたリチウムイオンは正極へ
戻ることができないことになる。その結果、正極活物質
構造中のLiサイトは常に空いた部分が存在することに
なり、結晶構造の不安定化を招いている可能性が考えら
れる。
極活物質として使用した時には、高温時における副反応
が問題とされており、マンガン溶出現象などといった形
で観測されている。前記(i)による結晶構造の不安定
化は、高温時における電池内の副反応を助長し、二次電
池特性の低下に大きく寄与しているものと推察される。
し、高温サイクル特性を向上させるためには、少なくと
も A.リチウムマンガン酸化物の結晶構造安定性の向上 B.負極による不可逆容量分を補う役割を果たす化合物
の正極中への含有の2点を組み合わせた形での改善を図
ることが必須条件であると考えた。
発明を完成するに至った。
7)に存する。
ムマンガン酸化物および化合物(A)を含有する正極材料
であって、該リチウムマンガン酸化物のMnサイトの一
部が他元素で置換されており、該化合物(A)が、該正極
材料からなる正極を有するリチウム二次電池において、
該電池の充放電の最大電圧範囲に対応する対極リチウム
基準での上限電位までの初期充電時にはリチウムイオン
を放出し、下限電位までの初期放電時には実質的にリチ
ウムイオンを吸蔵しない化合物であることを特徴とする
リチウム二次電池用正極材料。
ムマンガン酸化物および化合物(A)を含有する正極材料
であって、該リチウムマンガン酸化物のMnサイトの一
部が他元素で置換されており、該化合物(A)が、下記容
量確認試験にて初期放電容量Qs(D)mAh/gと初期充電容
量Qs(C)mAh/gを測定した場合、初期放電容量Qs(D)mAh
/gが初期充電容量Qs(C)mAh/gの1/10以下であるこ
とを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。 [容量確認試験] (a)化合物(A)を75重量%、アセチレンブラック2
0重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量
%の割合からなる正極シート(9mmφ、8mg)を作
製する。 (b)これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極
とする。 (c)この正極を試験極、Li金属を対極として電池セ
ルを組み、0.5mA/cm2の定電流充電を上限4.35V
で行い、正極活物質単位重量当たりの初期充電容量Qs
(C)mAh/gを求める。 (d)次いで0.5mA/cm2の定電流放電を下限3.2V
で行い、正極活物質単位重量当たりの初期放電容量Qs
(D)mAh/gを求める。
金属元素とを含有する化合物であることを特徴とする上
記(1)または(2)に記載のリチウム二次電池用正極
材料。
合酸化物であることを特徴とする上記(1)又は(2)
のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料。
ことを特徴とする上記(1)または(2)のいずれかに
記載のリチウム二次電池用正極材料。
あることを特徴とする上記(1)または(2)のいずれ
かに記載のリチウム二次電池用正極材料。
れ、かつジグザグ層状構造もしくはラムスデライト型構
造をとることを特徴とする上記(1)または(2)のい
ずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料。
イトの一部が他元素で置換されたリチウムマンガン酸化
物、およびLi2CuO2を含有するリチウム二次電池用
正極材料。
イトの一部が他元素で置換されたリチウムマンガン酸化
物、およびLiFeO2を含有するリチウム二次電池用
正極材料。
ウムマンガン酸化物のBET比表面積が、0.3〜1.
5m2/gであることを特徴とする上記(1)〜(9)
のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料。
ウムマンガン酸化物のMnサイトを置換する他元素が、
Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Z
n、Mg、Ga、Zrからなる群から選ばれることを特
徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のリチ
ウム二次電池用正極材料。
ウムマンガン酸化物のMnサイトが、Al、Ti、V、
Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Z
rからなる群から選ばれる他元素とLiとで置換されて
いることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれか
に記載のリチウム二次電池用正極材料。
リチウムマンガン酸化物のMnサイトの他元素による置
換割合が、Mnの2.5〜30モル%であることを特徴
とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のリチウ
ム二次電池用正極材料。
ウムマンガン酸化物と化合物(A)の含有量が、重量比で
1:1〜20:1であることを特徴とする上記(1)〜
(13)のいずれかに記載のリチウム二次電池用正極材
料。
に記載のリチウム二次電池用正極材料を含むことを特徴
とするリチウム二次電池用正極。
に記載のリチウム二次電池用正極材料を含む正極、負極
及び電解質を有することを特徴とするリチウム二次電
池。
に記載のリチウム二次電池用正極材料を含む正極、炭素
材料からなる負極及び電解質を有することを特徴とする
リチウム二次電池。
て本発明を説明するが、本発明の趣旨を超えない限り、
以下に限定されるものでないことはいうまでもない。
ン酸化物とは、リチウムとマンガンとを主成分とする複
合酸化物である。本発明においては、リチウムマンガン
酸化物は活物質として用いられている。なお、本発明に
おいて活物質とは該電池の起電反応のもとになる主要物
質であり、Liイオンを吸蔵・放出できる物質を意味す
る。リチウムマンガン酸化物は、活物質としてLiを可
逆的に吸蔵・放出できるものであればよく、立方晶スピ
ネル構造を有するリチウムマンガン酸化物(以下「スピ
ネル型リチウムマンガン酸化物」ということもある)は
LiMn2O4で表されるが、前記構造を維持する範囲で
Li/Mn組成比の変化した固溶体であったり、陽イオ
ン欠陥や酸素欠陥等の不定比性を持っていてもよい。ま
た、酸素サイトの一部が硫黄やハロゲン元素で置換され
ていてもよい。
るリチウムマンガン酸化物は、Mnサイトの一部が他の
元素で置換されていることを特徴とする。Mnサイトの
一部が他の元素で置換されていることにより、結晶構造
の安定性を向上させることができ、これと化合物(A)と
の組み合わせで高温サイクルの特性の向上を図ることが
できる。
には例えば低酸素欠損品や低カチオン欠損品といった結
晶欠陥の少ないものやMnサイトの一部が他の元素で置
換されているものである。結晶欠陥を減らしたり、Mn
サイトの一部が他の元素で置換されていることにより、
結晶構造の安定性を向上させることができ、これと化合
物(A)を組み合わせることで高温サイクル特性の向上を
図ることができる。
の元素で置換されたものを対象とするものであり、この
際の置換する他元素(以下、置換元素と表記する)とし
ては通常、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、
Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等が挙げられ、好ましく
はAl、Cr、Fe、Co、Ni、Mg、Ga、更に好
ましくはAlである。なお、Mnサイトは2種以上の他
元素で置換されていてもよく、また上記他元素と共にL
iが置換されているものが好ましい。
5モル%以上、好ましくはMnの5モル%以上であり、
通常Mnの30モル%以下、好ましくはMnの20モル
%以下である。置換割合が少なすぎるとその高温サイク
ルの改善効果が充分ではない場合があり、多すぎると電
池にした場合の容量が低下してしまう場合がある。
一部が他元素で置換されたリチウムマンガン酸化物と化
合物(A)との複合の形態には特に制限はなく、物理的な
混合とすることもでき、一方の粒子表面に他方の粒子の
被膜を形成させても良い。
ガン酸化物は、従来公知の各種の方法にて製造すること
ができ、例えば、リチウム、マンガン、置換元素を含有
する出発原料を混合後、酸素存在下で焼成・冷却するこ
とによって製造することができる。
有する出発原料を用いずMnサイトが置換されていない
リチウムマンガン酸化物を製造し、該リチウムマンガン
酸化物を、置換金属元素を含有する出発原料の水溶液、
溶融塩あるいは蒸気中で反応させた後、必要に応じて置
換元素をリチウムマンガン複合酸化物粒子内に拡散させ
るため、再度加熱処理を行うことによりMnサイトを置
換元素で置換してもよい。
としては、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiO
H・H2O、CH3COOLi、Li2O、ジカルボン酸
リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキ
ルリチウム、ハロゲン化物等が挙げられる。好ましくは
LiOH・H2O、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リ
チウム、脂肪酸リチウム、Li2CO3が挙げられる。
としては、Mn2O3、MnO2等のマンガン酸化物、M
nCO3、Mn(NO3)2 、MnSO4、酢酸マンガ
ン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸
マンガン等のマンガン塩、オキシ水酸化物、水酸化物、
ハロゲン化物等が挙げられる。Mn2O3として、MnC
O3やMnO2などの化合物を熱処理して作製したものを
用いてもよい。好ましくはMn2O3、MnO2、MnC
O3、ジカルボン酸マンガン、オキシ水酸化物が挙げら
れる。
化物、オキシ水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ジカ
ルボン酸塩、脂肪酸塩、アンモニウム塩、クエン酸塩等
が挙げられ、好ましくは酸化物、水酸化物、炭酸塩、ジ
カルボン酸塩が挙げられる。
混合、ボールミル粉砕、共沈等の方法によって混合され
る。混合の前後、および混合中において粉砕の工程を加
えてもよい。
ガン酸化物の焼成・冷却の方法としては、例えば、仮焼
後600〜900℃程度の温度で酸素雰囲気下で本焼を
行い、次いで500℃以下程度まで10℃/min以下
の速度で徐冷する方法や、仮焼後600〜900℃程度
の温度で空気又は酸素雰囲気下で本焼し、次いで400
℃程度の温度で酸素雰囲気下アニールする方法を挙げる
ことができる。焼成・冷却の条件については、USP
5,866,279に詳しく記載されている。
化物は、BET比表面積が好ましくは0.3m2/g以
上、より好ましくは0.5m2/g以上であり、好まし
くは1.5m2/g以下、より好ましくは1.0m2/g
以下である。比表面積が小さすぎるとレート特性の低
下、容量の低下を招き、大きすぎると電解液等と好まし
くない反応を引き起こし、サイクル特性を低下させる。
立方晶スピネル構造を有するリチウムマンガン酸化物お
よび化合物(A) を活物質として含む正極において、初期
充電容量には寄与するが初期放電容量にはほとんど寄与
しないような充放電曲線を有するものであればよい。即
ち、立方晶スピネル構造を有するリチウムマンガン酸化
物および化合物(A) を含有する正極を有するリチウム二
次電池において、該電池の充放電の最大電圧範囲に対応
する対極リチウム基準での上限電位までの初期充電時に
はリチウムイオンを放出し、該電池の充放電の最大電圧
範囲に対応する対極リチウム基準での下限電位までの初
期放電時には実質的にリチウムイオンを吸蔵しない化合
物である。なお、該電池の充放電の最大電圧範囲に対応
する対極リチウム基準での上限電位までの初期充電と
は、該電池の自然電位から、該電池の充放電の最大電圧
範囲に対応する対極リチウム基準での上限電位までの初
期充電を意味し、また下限電位までの初期放電とは、前
記初期充電を完了した電池を、該電池の充放電の最大電
圧範囲に対応する対極リチウム基準での下限電位までの
初期放電を意味する。化合物(A)の初期充電時のリチウ
ムイオン量は、例えば10〜500mAh/gに相当す
る量である。
は、初期充電時に放出されたリチウムイオンの10%以
下しか吸蔵しないものであり、それ以上吸蔵することが
あるとすれば、それは使用する電圧範囲外で起こること
を意味する。
量当たりの充電容量(リチウム放出量)が立方晶スピネ
ル構造を有するリチウムマンガン酸化物よりも多いこと
が好ましい。また初期充電でリチウムを放出し尽くして
しまうことなく2サイクル以降も少しずつリチウムを放
出するようなリザーバー的な性質を備えていることが好
ましい。
使用する際の最上限電圧から最下限電圧の範囲をさし、
電池の充放電の最大電圧範囲は、用いる正極と負極の種
類によって違うが、例えば正極にリチウムマンガン酸化
物、負極に黒鉛を用いた際には、通常電圧範囲が最上限
4.1〜4.3V付近、最下限は2.7〜3.2V付近
である。対極Liでの正極の電位をV(C)、負極電位
をV(A)とすると電池電圧V(B)は
池充電端で約0.1V付近、放電端で0.5V付近で使
用されることを考えると、V(C)は上限約4.2〜
4.4V、下限は約3.2〜3.7V付近となる。
囲に対応する対極リチウム基準での上限電位までの初期
充電時にはリチウムイオンを放出し、下限電位までの初
期放電時には実質的にリチウムイオンを吸蔵しないとい
うのは、化合物(A)を正極に用い対極Liで、上限電位
まで充電したときの初期充電容量に対して、下限電位ま
で放電した時の初期放電容量が、10%以下であるとい
う事である。
物(A) とは、初期充電時にはリチウムイオンを放出し、
例えば、放電開始と同時に急激に分極が大きくなり下限
電圧以下でリチウムイオンを吸蔵するかあるいは構造的
に崩壊するなどして吸蔵能力を失う等の性質を有するも
のである。
該正極材料からなる正極を有するリチウム二次電池にお
いて、該電池の充放電の最大電圧範囲に対応する対極リ
チウム基準での上限電位までの初期充電時にはリチウム
イオンを放出し、下限電位までの初期放電時には実質的
にリチウムイオンを吸蔵しない」ということは、例え
ば、化合物(A)に関し下記容量確認試験にて初期放電容
量Qs(D)mAh/gと初期充電容量Qs(C)mAh/gを測定しする
ことにより確認することができ、その場合、初期放電容
量Qs(D)mAh/gが初期充電容量Qs(C)mAh/gの1/10以
下であればよい。 [容量確認試験] (a)化合物(A)を75重量%、アセチレンブラック2
0重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量
%の割合からなる正極シート(9mmφ、8mg)を作
製する。 (b)これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極
とする。 (c)この正極を試験極、Li金属を対極として電池セ
ルを組み、0.5mA/cm2の定電流充電(即ち、正極から
リチウムを放出させる反応)を上限4.35Vで行い、
正極活物質単位重量当たりの初期充電容量Qs(C)mAh/g
を求める。 (d)次いで0.5mA/cm2の定電流放電(即ち、正極に
リチウムを吸蔵させる反応)を下限3.2Vで行い、正
極活物質単位重量当たりの初期放電容量Qs(D)mAh/gを
求める。
初期充電容量Qs(C)mAh/gは、4.35Vでの初期充電
容量を測定し、該正極中の化合物(A)の重量(0.00
8×0.75g)で割ることにより求めることができ
る。同様に上記(d)の正極活物質単位重量当たりの初
期放電容量Qs(D)mAh/gは、3.2Vでの初期放電容量
を測定し、該正極中の化合物(A)の重量(0.008×
0.75g)で割ることにより求めることができる。
は、好ましくはリチウム元素と他の金属元素とを含有す
る化合物が挙げられ、他の金属としてはCu、Fe、C
r、Ti、Mo、V、Mn等が挙げられ、より好ましく
はCu、Fe、Ti、Mo、V、Mn等の遷移金属であ
る。具体的に化合物(A) としては、Li2CuO2、Li
FeO2、Li5FeO4、LiMoO3、LiVTi
O4、LiMnTiO4等のリチウム遷移金属複合酸化物
が好ましく、特に好ましくはLi2CuO2、ジグザグ層
状またはラムスデライト型構造を有するLiFeO2で
ある。
該遷移金属の一部を置換しうる他の元素で置換したもの
であっても良く、酸素量が不定比なものであっても良
い。他元素としてはMn、Co、Ni、Fe、Cr、T
i、Cu、Mg、Al、Zn、Ga、V等が挙げられ、
好ましくはAl、Crを挙げることができる。なお、該
遷移金属2種以上の他元素で置換されていてもよい。ま
た、酸素サイトの一部が硫黄やハロゲン元素で置換され
ていてもよい。更に、酸素量に多少の不定比性があって
もよい。
必ずしも単一相である必要がなく、例えば未反応物や合
成に使用した出発原料との共存物であっても構わない。
常正極に用いる活物質の平均粒径や比表面積から大きく
逸脱するものでなければ問題ないが、リチウムマンガン
酸化物との接触効率を良くするため、平均粒径はリチウ
ムマンガン酸化物の平均粒径より小さく、比表面積はリ
チウムマンガン酸化物の比表面積より大きい方が好まし
い。
ましくは0.3m2/g以上、より好ましくは0.5m2
/g以上、最も好ましくは0.6m2/g以上であり、
好ましくは2.5m2/g以下、より好ましくは2.0
m2/g以下、最も好ましくは1.0m2/g以下であ
る。比表面積が小さすぎると、抵抗増大による特性低下
の原因となり、比表面積が大きすぎると保存安定性が低
下する場合がある。
ム銅酸化物(一般式Li2CuO2)は従来公知の各種の
方法にて製造することができ、例えば、リチウム、銅を
含有する出発原料を混合後、大気下で加熱焼成すること
によって製造することができる。また、リチウム、銅を
含有する出発原料とともに置換元素を含有する出発原料
を混合することにより、Cuの一部が他元素で置換され
たリチウム銅酸化物を製造することができる。具体的に
は、大気中、500〜1000℃の温度範囲で加熱焼成
する方法を挙げることができる。なお、焼成雰囲気とし
ては炭酸ガスの除去処理の行われたものが好ましい。C
uの一部が他元素で置換されたリチウム銅酸化物の製造
の場合は、より均一な置換組成とするために、無置換の
場合よりも長い時間焼成する方が好ましい。
有する出発原料を用いずCuサイトが置換されていない
リチウム銅酸化物を製造し、該リチウム銅酸化物を、置
換金属元素を含有する出発原料の水溶液、溶融塩あるい
は蒸気中で反応させた後、必要に応じて置換元素をリチ
ウム銅複合酸化物粒子内に拡散させるため、再度加熱処
理を行うことによりCuサイトを置換元素で置換しても
よい。
並びに置換元素の化合物としては、前記したリチウムマ
ンガン酸化物の製造方法と同様のものを用いることがで
きる。
は、Cu2O、CuO等の銅酸化物、CuCO3、Cu
(NO3)2、CuSO4、酢酸銅、ジカルボン酸銅、ク
エン酸銅、脂肪酸銅等の銅塩、水酸化銅、ハロゲン化銅
等が挙げられ、好ましくはCu 2O、CuO、CuC
O3、ジカルボン酸銅、クエン酸銅、水酸化銅が挙げら
れる。
ウムマンガン酸化物の製造方法と同様の方法を使用でき
る。
物(A)との複合の形態には特に制限はなく、物理的な混
合とすることもでき、一方の粒子表面に他方の粒子の被
膜を形成させても良い。
比は、重量比で、リチウムマンガン酸化物:化合物(A)
=通常1:1〜20:1、好ましくは2:1〜15:
1、より好ましくは3:1〜10:1である。化合物
(A) の重量比が規定範囲を逸脱して多くなると放電容量
が低下し、逆に少なくなるとサイクル特性向上効果を得
難くなる恐れがある。
る正極層からなる。正極層は立方晶スピネル構造を有す
るリチウムマンガン酸化物、化合物(A)、後述の結着剤
( バインダー) 、および導電剤からなり、後述の方法に
より溶媒でスラリー化したものを正極集電体に塗布し、
乾燥することにより製造することができる。
ニッケル酸化物のように該電池の充放電の電圧範囲で、
可逆的にリチウムイオンを吸蔵・放出しうる活物質をさ
らに組み合わせたものを正極として用いたものであって
もよい。
以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは5
0重量%以上であり、通常99.9重量%以下、好まし
くは99重量%以下である。
は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオ
ロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、EPDM
(エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体)、SB
R(スチレン−ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニ
トリル−ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニ
ル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロ
セルロース等が挙げられる。
重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましく
は5重量%以上であり、通常80重量%以下、好ましく
は60重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下、
最も好ましくは10重量%以下である。バインダーの割
合が低すぎると、活物質を十分に保持できずに正極の機
械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化さ
せることがあり、一方高すぎると電池容量や導電性を下
げることがある。
剤を含有する。導電剤としては、天然黒鉛、人造黒鉛等
の黒鉛や、アセチレンブラック等のカーボンブラック、
ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料を挙げる
ことができる。正極中の導電剤の割合は、通常0.01
重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、さらに好ま
しくは1重量%以上であり、通常50重量%以下、好ま
しくは30重量%以下、さらに好ましくは15重量%以
下である。導電剤の割合が低すぎると導電性が不十分に
なることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下するこ
とがある。
ンダーを溶解あるいは分散する有機溶剤が使用される。
例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シク
ロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチ
ルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミ
ン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等を挙げる
ことができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加えてS
BR等のラテックスで活物質をスラリー化することもで
きる。
程度である。
ルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が用い
られ、好ましくはアルミニウムである。
層は、活物質の充填密度を上げるためローラープレス等
により圧密されるのが好ましい。
ン酸化物を含む正極を用いると、電解液中、特に高温環
境下で正極が安定化され、高温下でのサイクル特性や保
存特性が優れたリチウム二次電池を提供することができ
る。
ムマンガン酸化物を含む正極と種々の負極、電解質の組
み合わせでリチウム二次電池が製造される。
の活物質としては、リチウムやリチウムアルミニウム合
金合金などのリチウム合金であっても良いが、より安全
性の高いリチウムを吸蔵、放出できる炭素材料が好まし
い。
及び、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ
の炭化物、石油系ピッチの炭化物、あるいはこれらピッ
チを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピ
ッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等の炭
化物等及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネス
ブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等が
挙げられる。
(M=Hg、P、B、Si、GeまたはSb、ただし0
≦x<1)、Sn3O2(OH)2 、Sn3-xMxO2(O
H)2(M=Mg、P、B、Si、Ge、Sb又はM
n、ただし0≦x<3)、LiSiO2、SiO2又はL
iSnO2等を挙げることができ、これら具体例に限定
されない。
混合物として用いてもよい。
を集電体上に形成されてなる。この際使用するバインダ
ーや、必要に応じて使用される導電剤やスラリー溶媒と
しては、正極で使用するものと同様のものを使用するこ
とができる。また、負極の集電体としては、銅、ニッケ
ル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用され、好
ましくは銅が用いられる。
の高分子フィルムが用いられ、ナイロン、セルロースア
セテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアク
リロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレ
ン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィン高分
子よりなるものが用いられる。セパレータの化学的及び
電気化学的安定性は重要な因子である。この点からポリ
オレフィン系高分子が好ましく、電池セパレータの目的
の一つである自己閉塞温度の点からポリエチレン製であ
ることが望ましい。
状維持性の点から超高分子量ポリエチレンであることが
好ましく、その分子量の下限は好ましくは50万、さら
に好ましくは100万、最も好ましくは150万であ
る。他方分子量の上限は、好ましくは500万、更に好
ましくは400万、最も好ましくは300万である。分
子量が大きすぎると、流動性が低すぎて加熱された時セ
パレーターの孔が閉塞しない場合があるからである。
イオン伝導体には、例えば公知の有機電解液、高分子固
体電解質、ゲル状電解質、無機固体電解質等を用いるこ
とができるが、中でも有機電解液が好ましい。有機電解
液は、有機溶媒と溶質から構成される。
ないが、例えばカーボネート類、エーテル類、ケトン
類、スルホラン系化合物、ラクトン類、ニトリル類、塩
素化炭化水素類、エーテル類、アミン類、エステル類、
アミド類、リン酸エステル化合物等を使用することがで
きる。これらの代表的なものを列挙すると、ジメチルカ
ーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボ
ネート、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネー
ト、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラ
ン、1,4−ジオキサン、4−メチル−2−ペンタノ
ン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエ
タン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジオキソラン、4
−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、
スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロ
ピオニトリル、ベンゾニトリル、ブチロニトリル、バレ
ロニトリル、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルム
アミド、ジメチルスルホキシド、リン酸トリメチル、リ
ン酸トリエチル等の単独もしくは二種類以上の混合溶媒
が使用できる。
ために高誘電率溶媒が含まれることが好ましい。ここ
で、高誘電率溶媒とは、25℃における比誘電率が20
以上の化合物を意味する。高誘電率溶媒の中で、エチレ
ンカーボネート、プロピレンカーボネート及びそれらの
水素原子をハロゲン等の他の元素又はアルキル基等で置
換した化合物が電解液中に含まれることが好ましい。高
誘電率化合物の、電解液に占める割合は、好ましくは2
0重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好
ましくは40重量%以上である。該化合物の含有量が少
ないと、所望の電池特性が得られない場合があるからで
ある。
限定されるものではないが、従来公知のいずれもが使用
でき、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiB
F4、LiB(C6H5)4 、LiCl、LiBr、CH3
SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF3)2、
LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、L
iN(SO3CF3)2等が挙げられ、これらのうち少な
くとも1種以上のものを用いることができる。また、C
O2 、 N2O、CO、SO2 等のガスやポリサルファイ
ドSx 2-など負極表面にリチウムイオンの効率よい充放
電を可能にする良好な皮膜を生成する添加剤を任意の割
合で上記単独又は混合溶媒に添加してもよい。
の高分子に公知のものを用いることができ、特にリチウ
ムイオンに対するイオン導電性の高い高分子を使用する
ことが好ましく、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポ
リプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等が好ま
しく使用され、またこの高分子に対して上記の溶質と共
に、上記の溶媒を加えてゲル状電解質として使用するこ
とも可能である。
無機物に公知の結晶質、非晶質固体電解質を用いること
ができる。結晶質の固体電解質としては例えば、Li
I、Li3N、Li1+xMxTi2-x(PO4)3(M=A
l,Sc,Y,La)、Li0.5- 3xRE0.5+xTiO
3(RE=La,Pr,Nd,Sm)等が挙げられ、非
晶質の固体電解質としては例えば、4.9 LiI−34.1L
i2O−61B2O5,33.3Li2O−66.7SiO2 等の酸
化物ガラスや0.45LiI−0.37Li2S−0.26B2S3,
0.30LiI−0.42Li2S−0.28SiS2等の硫化物ガラ
ス等が挙げられる。これらのうち少なくとも1種以上の
ものを用いることができる。
具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限さ
れるものではない。
1.04Mn1.85Al0.11O4なる、Mnサイ トの一部がLiとAlで置換された立方晶スピネル構造
を有するリチウムマンガン酸化物を使用し、これに組成
Li2CuO2なるリチウム銅酸化物(化合物(A))を、
重量比でリチウムマンガン酸化物:リチウム銅酸化物=
9:1となるように混合したものを正極活物質として用
いた。なお、ここで用いたリチウムマンガン酸化物の比
表面積は0.94m2/gであった。
とした正極を後述する電池評価法において対極Li金属
で容量確認したところ、自然電位(2.8V)から上限
電位(4.35V)までの初期充電容量が308mAh/
g、次いで下限電位(3.2V)までの初期放電容量が
23mAh/g であった。(初期充電時にはリチウムイオン
を放出し、初期放電時には実質的にリチウムイオンを吸
蔵していない。) 実施例2 リチウムマンガン酸化物としてLi1.04Mn1.85Al
0.11O4なる、Mnサイトの一部がLiとAlで置換さ
れた立方晶スピネル構造を有するリチウムマンガン酸化
物を使用し、これにジグザグ層状構造を主たる相とする
組成LiFeO2なるリチウム鉄酸化物(化合物(A))
を、重量比でリチウムマンガン酸化物:リチウム鉄酸化
物=9:1となるように混合したものを正極活物質とし
て用いた。なお、ここで用いたリチウムマンガン酸化物
の比表面積は0.94m2/gであった。
物質とした正極を後述する電池評価法において対極Li
金属で容量確認したところ、自然電位(3.1V)から
上限電位(4.35V)までの初期充電容量が89mAh/
g、次いで下限電位(3.2V)までの初期放電容量が
6mAh/g であった。但し、この場合は電流密度を0.1
mA/cm2として評価した。(初期充電時にはリチウムイオ
ンを放出し、初期放電時には実質的にリチウムイオンを
吸蔵していない。) 比較例1 リチウムマンガン酸化物としてLiMn2O4なる、Mn
サイトが他元素で置換されていない立方晶スピネル構造
を有するリチウムマンガン酸化物を使用した以外は実施
例1と同様にした。
は混合しなかった以外は実施例1と同様にした。(実施
例1に記載したのと同一のリチウムマンガン酸化物のみ
を正極活物質として用いた。) 比較例3 リチウムマンガン酸化物としてLiMn2O4なる、Mn
サイトが他元素で置換されていない立方晶スピネル構造
を有するリチウムマンガン酸化物を使用し、組成Li2
CuO2なるリチウム銅酸化物(化合物(A))は混合しな
かった以外は実施例1と同様にした。(LiMn2O4な
る、Mnサイトが他元素で置換されていない立方晶スピ
ネル構造を有するリチウムマンガン酸化物のみを正極活
物質として用いた。) 比較例4 実施例1に記載したのと同一のリチウムマンガン酸化物
と、組成LiNi1.8Co0.15Al0.05O2なるリチウム
ニッケル酸化物を、重量比でリチウムマンガン酸化物:
リチウムニッケル酸化物=9:1となるように混合した
ものを正極活物質として用いた。
O2なるリチウムニッケル酸化物単独を正極活物質とし
た正極を後述する電池評価法において対極Li金属で容
量確認したところ、自然電位(3.4V)から上限電位
(4.35V)までの初期充電容量が215mAh/g、次
いで下限電位(3.2V)までの初期放電容量が180
mAh/gであった。(初期充電時にリチウムイオンを放出
し、初期放電時にはリチウムイオンを吸蔵している。)
実施例1、2、比較例1〜4について、下記の試験、評
価を行った。
実施例および比較例の電池評価を行った。
%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割
合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状に
し、9mmφ、12mmφのポンチで打ち抜く。この際
全体重量は各々約8mg、18mgになるように調整す
る。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極と
した。(9mmφのポンチで打ち抜いたものは容量確認
用、12mmφのポンチで打ち抜いたものは高温サイク
ル容量維持率測定用。)なお、この正極を試験極、Li
金属を対極として電池セルを組み、0.5mA/cm2の定電
流充電(すなわち正極からリチウムイオンを放出させる
反応)を上限4.35Vで行い、ついで0.5mA/cm2の
定電流放電(すなわち正極にリチウムイオンを吸蔵させ
る反応)を下限3.2Vで行った際の正極活物質単位重
量当たりの初期充電容量をQs(C)mAh/g 、初期放電容量
をQs(D)mAh/gとする。
002=3.35Å) を、バインダーとしてポリフッ化ビニ
リデン( 以下PVdFと省略する) を重量比で92.
5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリド
ン( 以下NMPと省略する) 溶液中で混合し、負極合剤
スラリーとした。このスラリーを20μm厚さの銅箔の
片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mm
φに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたもの
負極とした。
として電池セルを組み、0.2mA/cm2の定電流で負極に
Liイオンを吸蔵させる試験を下限0Vで行った際の負
極活物質単位重量当たりの初期吸蔵容量をQf mAh/g と
する。
評価した。即ち、正極缶1の上に正極2を置き、その上
にセパレータ3として25μmの多孔性ポリエチレンフ
ィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケット4で押さえ
た後、負極5を置き、厚み調整用のスペーサー6を置い
た後、非水電解液溶液として、1モル/リットルの六フ
ッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエチレン
カーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)
の体積分立3:7の混合溶媒を用い、これを電池内に加
えて充分しみ込ませた後、負極缶7を載せ電池を封口す
る。
質重量のバランスは、ほぼ
(Qf/1.2)/Qs(C) となるよう設定した。
特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1C
を
ルおよび定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50
℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定
電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充
電上限は4.2V、下限電圧は3.0Vとした。
ル試験部分の1サイクル目放電容量Qh(1)に対する、1
00サイクル目の放電容量Qh(100)の割合を高温サイク
ル容量維持率P、即ち、
0℃サイクル試験における100サイクル容量維持率を
表1に、サイクル−放電容量相関図を図1に示す。
の組み合わせであるが、本発明にかなう実施例では、高
温サイクル劣化が認められず、改良されていることが分
かる。また、実施例1(Mnサイトの一部が他元素で置
換されたスピネル型リチウムマンガン酸化物+Li2C
uO2)と比較例1(Mnサイトが置換されていないス
ピネル型リチウムマンガン酸化物+Li2CuO2)を比
較すると実施例1は格段の効果を有している。これはM
nサイトが置換されていないスピネル型リチウムマンガ
ン酸化物とLi2CuO2との組み合わせによる相乗効果
によるものである。実際、Mnサイトの他元素による置
換の有無だけの効果の差は比較例2(Mnサイトの一部
が他元素で置換されたスピネル型リチウムマンガン酸化
物のみ)と比較例3(Mnサイトが置換されていないス
ピネル型リチウムマンガン酸化物のみ)のサイクル維持
率の差に出ている通りであるが、これに比べ実施例1と
比較例1ではサイクル維持率に格段の差がある。
を含むリチウム二次電池用正極において、リチウムマン
ガン酸化物を正極活物質として安定に機能させ、高温サ
イクル特性の向上を図ることができる。
質の製造法の試験に用いたコイン型電池の縦断面図
Claims (17)
- 【請求項1】 立方晶スピネル構造を有するリチウムマ
ンガン酸化物および化合物(A)を含有する正極材料であ
って、該リチウムマンガン酸化物のMnサイトの一部が
他元素で置換されており、該化合物(A)が、該正極材料
からなる正極を有するリチウム二次電池において、該電
池の充放電の最大電圧範囲に対応する対極リチウム基準
での上限電位までの初期充電時にはリチウムイオンを放
出し、下限電位までの初期放電時には実質的にリチウム
イオンを吸蔵しない化合物であることを特徴とするリチ
ウム二次電池用正極材料。 - 【請求項2】 立方晶スピネル構造を有するリチウムマ
ンガン酸化物および化合物(A)を含有する正極材料であ
って、該リチウムマンガン酸化物のMnサイトの一部が
他元素で置換されており、該化合物(A)が、下記容量確
認試験にて初期放電容量Qs(D)mAh/gと初期充電容量Qs
(C)mAh/gを測定した場合、初期放電容量Qs(D)mAh/gが
初期充電容量Qs(C)mAh/gの1/10以下であることを
特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。 [容量確認試験] (a)化合物(A)を75重量%、アセチレンブラック2
0重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量
%の割合からなる正極シート(9mmφ、8mg)を作
製する。 (b)これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極
とする。 (c)この正極を試験極、Li金属を対極として電池セ
ルを組み、0.5mA/cm2の定電流充電を上限4.35V
で行い、正極活物質単位重量当たりの初期充電容量Qs
(C)mAh/gを求める。 (d)次いで0.5mA/cm2の定電流放電を下限3.2V
で行い、正極活物質単位重量当たりの初期放電容量Qs
(D)mAh/gを求める。 - 【請求項3】 化合物(A)が、リチウム元素と他の金属
元素とを含有する化合物であることを特徴とする請求項
1または2に記載のリチウム二次電池用正極材料。 - 【請求項4】 化合物(A)が、リチウム遷移金属複合酸
化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の
リチウム二次電池用正極材料。 - 【請求項5】 化合物(A)が、Li2CuO2 であること
を特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電
池用正極材料。 - 【請求項6】 化合物(A)が、リチウム鉄酸化物である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二
次電池用正極材料。 - 【請求項7】 化合物(A)が、LiFeO2で表され、か
つジグザグ層状構造もしくはラムスデライト型構造をと
ることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム
二次電池用正極材料。 - 【請求項8】 立方晶スピネル構造を有し、Mnサイト
の一部が他元素で置換されたリチウムマンガン酸化物、
およびLi2CuO2を含有するリチウム二次電池用正極
材料。 - 【請求項9】 立方晶スピネル構造を有し、Mnサイト
の一部が他元素で置換されたリチウムマンガン酸化物、
およびLiFeO2を含有するリチウム二次電池用正極
材料。 - 【請求項10】 立方晶スピネル構造を有するリチウム
マンガン酸化物のBET比表面積が、0.3〜1.5m
2/gであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか
に記載のリチウム二次電池用正極材料。 - 【請求項11】 立方晶スピネル構造を有するリチウム
マンガン酸化物のMnサイトを置換する他元素が、A
l、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、
Mg、Ga、Zrからなる群から選ばれることを特徴と
する請求項1〜10のいずれかに記載のリチウム二次電
池用正極材料。 - 【請求項12】 立方晶スピネル構造を有するリチウム
マンガン酸化物のMnサイトが、Al、Ti、V、C
r、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr
からなる群から選ばれる他元素とLiとで置換されてい
ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の
リチウム二次電池用正極材料。 - 【請求項13】 立方晶スピネル結晶構造を有するリチ
ウムマンガン酸化物のMnサイトの他元素による置換割
合が、Mnの2.5〜30モル%であることを特徴とす
る請求項1〜12のいずれかに記載のリチウム二次電池
用正極材料。 - 【請求項14】 立方晶スピネル構造を有するリチウム
マンガン酸化物と化合物(A)の含有量が、重量比で1:
1〜20:1であることを特徴とする請求項1〜13の
いずれかに記載のリチウム二次電池用正極材料。 - 【請求項15】 請求項1〜14のいずれかに記載のリ
チウム二次電池用正極材料を含むことを特徴とするリチ
ウム二次電池用正極。 - 【請求項16】 請求項1〜14のいずれかに記載のリ
チウム二次電池用正極材料を含む正極、負極及び電解質
を有することを特徴とするリチウム二次電池。 - 【請求項17】 請求項1〜14のいずれかに記載のリ
チウム二次電池用正極材料を含む正極、炭素材料からな
る負極及び電解質を有することを特徴とするリチウム二
次電池。
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