JP2001247317A - 合成石英ガラス及びその製造方法 - Google Patents

合成石英ガラス及びその製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 同心円状に複数のノズルを有するバーナ
ーの中心部のノズルからシリカ製造原料ガス及びフッ素
化合物ガスを反応域に供給し、中心ノズルの外側に配設
されている第二のノズルから酸素ガス、更にその外側に
配設されているノズルから酸素ガス及び/又は水素ガス
を反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料
ガスの火炎加水分解によりシリカ微粒子を生成させると
共に、上記反応域に回転可能に配置された基材に上記シ
リカ微粒子を堆積させて多孔質シリカ母材を作製し、こ
の母材を溶融させて石英ガラスを得る合成石英ガラスの
製造方法において、原料ガス流量に対する第二のノズル
の酸素ガス流量を化学量論比の1.1〜3.5倍の酸素
過剰条件とすることを特徴とする合成石英ガラスの製造
方法。 【効果】 本発明によれば、多孔質シリカ母材製造時の
ガスバランスを酸素過剰条件にすることにより、石英ガ
ラス中のSi−Si結合の生成を抑制し、真空紫外領域
において高い透過性を有する合成石英ガラスを製造する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エキシマレーザー
光のような短波長の紫外線に対して高い透過性を示し、
特に真空紫外領域での透過性が良好である合成石英ガラ
ス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】合成石
英ガラスは、その特徴である低熱膨張性及び高純度品質
により、以前から半導体製造においてシリコンウエーハ
の酸化・拡散工程で用いられる熱処理用炉芯管などに使
用されてきた。また、上記特性に加えて紫外線の高透過
性により、LSI製造時のリソグラフィー装置材料とし
て欠かせないものとなっている。リソグラフィー装置に
おける合成石英ガラスの役割は、シリコンウエーハ上へ
の回路パターンの露光、転写工程で用いられるステッパ
ー用レンズ材料やレチクル(フォトマスク)基板材料で
ある。
【0003】近年、LSIはますます多機能、高性能化
しており、ウエーハ上の素子の高集積化技術が研究開発
されている。素子の高集積化のためには、微細なパター
ンの転写が可能な高い解像度を得る必要があり、それは
光源の短波長化により可能となる。現在、光源として利
用されている紫外線の波長は248nm(KrF)が主
流であるが、193nm(ArF)への移行が急がれて
おり、また将来的には157nm(F2)への移行が有
力視されている。
【0004】一般に石英ガラスは紫外線透過性を有して
はいるが、200nm以下の真空紫外領域では透過性が
低下していき、石英ガラスの本質的な構造による吸収領
域である140nm付近になると光を通さなくなる。本
質吸収領域までの範囲では、ガラス内の欠陥構造に起因
する吸収帯が存在するため、欠陥構造の種類や生成の度
合いにより透過性に大きな差が生じる。リソグラフィー
装置で使用される波長の透過性が低い場合、吸収された
紫外線が石英ガラス中で熱エネルギーに変換されるた
め、照射に従ってガラス内部にコンパクションが発生
し、屈折率の不均一性につながる。このため石英ガラス
中の欠陥構造は、それが使用波長付近に強い吸収を持つ
ものであれば、装置材料としての透過性の低下のみなら
ず耐久性の低下も引き起こすことになる。
【0005】石英ガラス中の代表的な欠陥構造には、S
i−Si結合とSi−O−O−Si結合があり、Si−
Si結合は酸素欠損型欠陥と言われ、163nm及び2
45nmに吸収帯を示す。この酸素欠損型欠陥は、21
5nmに吸収帯を示すSi・欠陥構造(E’センター)
の前駆体でもあるためF2(157nm)ではもちろん
のこと、KrF(248nm)やArF(193nm)
を光源とする場合にも非常に問題となる。一方、Si−
O−O−Si結合は酸素過剰型欠陥と言われ、325n
mに吸収帯を示すものである。その他に、Si−OH結
合やSi−Cl結合も160nm付近に吸収帯を示すた
め、真空紫外領域で高い透過性を有する石英ガラスを製
造するには、酸素欠損型欠陥の抑制に加えてOH基やC
l基を低濃度に制御することが重要となる。
【0006】以上のような見地から真空紫外用の石英ガ
ラスの製造は、Si−OH結合を低減できるスート法、
つまり多孔質シリカ母材を作製してこれを溶融ガラス化
する方法が好ましい。しかしながら、単純にスート法で
合成石英ガラスを製造すると、OH基濃度が数十ppm
を下回るレベルになるとSi−Si結合が多く生成し、
163nm付近において極めて大きな吸収を示すように
なる。このため従来の方法では、生成したSi−Si結
合を水素アニールなどの後工程で処理し、Si−H結合
等に変換する方法がとられていた。
【0007】本発明は上記事情に鑑みなされたもので、
合成石英ガラス中のSi−Si結合の生成を抑制し、合
成石英ガラス製造後の後処理による欠陥構造の修正を軽
減又は不要とすることができ、真空紫外領域において高
い透過性を有する合成石英ガラス及びその製造方法を提
供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った
結果、合成石英ガラス製造工程における多孔質母材の製
造時に、ガスバランスを酸素過剰条件とすることによ
り、石英ガラス中のSi−Si結合の発生を抑制するこ
とができ、真空紫外領域において高い透過性を有する合
成石英ガラスを製造することができることを知見し、本
発明をなすに至ったものである。
【0009】即ち、本発明は、下記に示す合成石英ガラ
スの製造方法を提供する。 (1)同心円状に複数のノズルを有するバーナーの中心
部のノズルからシリカ製造原料ガス及びフッ素化合物ガ
スを反応域に供給し、中心ノズルの外側に配設されてい
る第二のノズルから酸素ガス、更にその外側に配設され
ているノズルから酸素ガス及び/又は水素ガスを反応域
に供給し、この反応域においてシリカ製造原料ガスの火
炎加水分解によりシリカ微粒子を生成させると共に、上
記反応域に回転可能に配置された基材に上記シリカ微粒
子を堆積させて多孔質シリカ母材を作製し、この母材を
溶融させて石英ガラスを得る合成石英ガラスの製造方法
において、原料ガス流量に対する第二のノズルの酸素ガ
ス流量を化学量論比の1.1〜3.5倍の酸素過剰条件
とすることを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。 (2)同心円状に複数のノズルを有するバーナーの中心
部のノズルからシリカ製造原料ガス及びフッ素化合物ガ
スを反応域に供給し、中心ノズルの外側に配設されてい
る第二のノズルから酸素ガス、更にその外側に配設され
ているノズルから酸素ガス及び/又は水素ガスを反応域
に供給し、この反応域においてシリカ製造原料ガスの火
炎加水分解によりシリカ微粒子を生成させると共に、上
記反応域に回転可能に配置された基材に上記シリカ微粒
子を堆積させて多孔質シリカ母材を作製し、この母材を
溶融させて石英ガラスを得る合成石英ガラスの製造方法
において、バーナーから供給される原料ガス流量と水素
ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を化学量論比
の1.1〜3.5倍の酸素過剰条件とすることを特徴と
する合成石英ガラスの製造方法。 (3)原料ガス流量に対する第二のノズルの酸素ガス流
量を化学量論比の1.1〜3.5倍の酸素過剰条件とし
た(2)記載の合成石英ガラスの製造方法。 (4)多孔質シリカ母材の密度が0.1〜1.0g/c
3であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか
1項記載の合成石英ガラスの製造方法。 (5)(1)〜(4)のいずれかの方法によって製造さ
れ、多孔質シリカ母材を溶融ガラス化して得られた合成
石英ガラスのOH基濃度が20ppm以下、フッ素原子
濃度が100ppm以上であることを特徴とする合成石
英ガラス。
【0010】本発明によれば、上記の方法を利用するこ
とにより、石英ガラス中のSi−Si結合の生成を抑制
し、真空紫外領域において高い透過性を有する合成石英
ガラスを製造することができるものである。
【0011】以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明における合成石英ガラスの製造方法は、同心円上
に複数のノズルを有するバーナーの中心部のノズルから
シリカ製造原料ガス及びフッ素化合物ガスを反応域に供
給し、中心ノズルの外側に配設されている第二のノズル
から酸素ガス、更にその外側に配設されているノズルか
ら酸素ガス及び/又は水素ガスを反応域に供給し、この
反応域においてシリカ製造原料ガスの火炎加水分解によ
りシリカ微粒子を生成させると共に、上記反応域に回転
可能に配置された基材に上記シリカ微粒子を堆積させて
多孔質シリカ母材を作製し、この母材を溶融させて石英
ガラスを得るものである。かかる方法自体は公知の方法
であり、常法によって操作し得、シリカ製造原料も公知
の有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0012】具体的には、原料となる有機ケイ素化合物
は、四塩化ケイ素(SiCl4)、ジメチルジクロロシ
ラン((CH32SiCl2)等の塩素系シラン化合
物、下記一般式(I)〜(III)で示されるシラン化
合物、シロキサン化合物が用いられる。 (R1nSi(OR24-n (I) (式中、R1,R2は同一又は異種の脂肪族一価炭化水素
基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
【化1】 (式中、R3は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基を示
し、mは1以上、特に1又は2である。)
【化2】 (式中、R3は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基を示
し、pは3〜5の整数である。)
【0013】ここで、R1,R2,R3の脂肪族一価炭化
水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n
−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のア
ルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロ
アルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜4のア
ルケニル基等が挙げられる。
【0014】具体的に上記一般式(I)で示されるシラ
ン化合物としては、Si(OCH34、Si(OCH2
CH34、CH3Si(OCH33等が挙げられ、一般
式(II)で示されるシロキサン化合物としては、ヘキ
サメチルジシロキサン等が挙げられる。これらの中で
は、Si−Cl結合の紫外線吸収を考慮すると、Clを
含まないアルコキシシランが好ましい。
【0015】また、フッ素化合物としては、テトラフル
オロシラン、トリフルオロメタン、テトラフルオロメタ
ン等が用いられる。
【0016】本発明で用いられるバーナーは、同心円上
に複数のノズルを有し、中心部のノズルからシリカ製造
原料ガスとフッ素化合物、その外側の第二のノズルから
酸素ガス、更にその外側の1又は複数のノズルから酸素
ガス及び/又は水素ガスを反応域に供給して火炎加水分
解を可能とするものであればいずれのものでもよく、公
知のバーナーを使用することができ、例えば図1に示す
ものが挙げられる。
【0017】ここで、図1において、1は中心管ノズル
であり、これからシリカ製造原料ガス及びフッ素化合物
ガスが供給される。2はこの中心管ノズル1を取り囲む
第一リング管(第二のノズル)で、これから酸素ガスが
供給される。3は第一リング管2を取り囲む第二リング
管、4は第二リング管を取り囲む第三リング管で、第二
リング管3からは水素ガスが、第三リング管4からは酸
素ガスが供給される。
【0018】而して、本発明は、上記方法において、原
料ガス流量に対する第二のノズルの酸素流量が化学量論
比の1.1〜3.5倍、好ましくは1.5〜2.5倍の
酸素過剰条件とすること、及び/又は、原料ガス流量及
び水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量が化学
量論比の1.1〜3.5倍、好ましくは1.5〜2.5
倍の酸素過剰条件とすることを特徴とするものである。
【0019】ここでいう量論比とは、例えば原料をテト
ラメトキシシランとした場合、以下のように定義され
る。テトラメトキシシランを酸水素火炎中でシリカ微粒
子にすると、式(i)及び式(ii)の反応が起こる。 (CH3O)4Si+6O2→SiO2+6H2O+4CO2 (i) H2+1/2O2→H2O (ii)
【0020】よって、原料ガス流量に対する第二のノズ
ルの酸素流量は、原料ガス1.0molに対して第二の
ノズルの酸素ガスが6.0mol供給されていれば量論
となる(即ち量論比に対して1.0倍)。原料ガス1.
0molに対して第二のノズルの酸素ガスが12.0m
ol供給されていれば、量論比の2.0倍ということに
なる。式で表すと、 X=A/6B (1) 但し、X:第二のノズルから供給される酸素ガス流量の
化学量論比に対する倍数 A:第二のノズルから供給される酸素ガス流量(mol
/Hr) B:原料ガス供給流量(mol/Hr)
【0021】同様に、原料ガス流量及び水素ガス総流量
の合計に対する酸素ガス総流量については、下記式で表
すことができる。 Y=C/(6B+0.5D) (2) 但し、Y:バーナーから供給される原料ガス流量及び水
素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量の化学量論
比に対する倍数 C:バーナーから供給される酸素ガスの総流量(mol
/Hr) B:原料ガス供給流量(mol/Hr) D:バーナーから供給される水素ガスの総流量(mol
/Hr)
【0022】なお、例えば、図1の場合、Cは第一リン
グ管2及び第三リング管4から供給される酸素ガスの合
計流量であり、Dは第二リング管3から供給される水素
ガスの流量である。また、上記式(1),(2)は、原
料ガスとしてテトラメトキシシランを用いた場合の計算
式であり、使用する原料ガスが異なれば、その反応式に
応じて式(1),(2)は適切な計算式に補正される。
【0023】原料ガス流量に対する第二のノズルの酸素
ガス流量又はバーナーから供給される原料ガス流量と水
素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量のいずれか
の化学量論比を酸素過剰条件とすることにより本発明の
効果を発揮するが、両者を酸素過剰条件とすることによ
り更に効果を発揮することができる。
【0024】なお、必要に応じて、中心管及び2重管目
からは酸素ガスの他に、アルゴン、窒素、ヘリウム等の
不活性ガスをバーナーから必要に応じて供給してもよ
い。また、補助バーナー等、複数のバーナーを使用して
もよく、補助バーナーからは酸水素炎のみを供給しても
よいし、フッ素化合物ガスを供給するようにしてもよ
い。
【0025】本発明においては、上記のように、酸素ガ
ス量を制御する以外は、公知の火炎加水分解法によって
合成石英ガラスを製造することができる。この場合、原
料ガスの供給速度(量)は4〜40mol/Hrの範囲
とすることができる。
【0026】上記方法において製造された多孔質シリカ
母材は、高温ガラス化炉内でガラス化されるものである
が、ガラス化の方法も、公知の方法、条件を採用し得、
例えば真空で1,200〜1,700℃まで加熱され、
ガラス化される。炉内の雰囲気を真空ではなく、ヘリウ
ムやアルゴンなどの不活性ガス雰囲気としてもよい。ま
た、ガラス化後は同炉内にて急冷もしくは放冷にて室温
まで冷却される。
【0027】なお、多孔質シリカ母材の密度は、ガラス
化反応の容易さの点から0.1〜1.0g/cm3、特
に0.2〜0.5g/cm3であることが好ましい。
【0028】このようにして得られた合成石英ガラス
は、OH基濃度を20ppm以下とすることが好まし
い。20ppmを超えると、160nm付近に吸収をも
つSi−OH結合の影響が大きくなるおそれがある。ま
た、SiF4、CHF3、CF4などのフッ素化合物をバ
ーナーの原料ガス供給部から原料ガスと共に供給し、多
孔質シリカ母材を製造するものであるが、得られた合成
石英ガラス中のフッ素原子濃度は100ppm以上とす
ることが好ましい。フッ素原子濃度が100ppm未満
だとOH基濃度が20ppmを超えてしまい、上記Si
−OH結合の影響が大きくなるおそれがある。
【0029】
【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体
的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるも
のではない。また、この実施例に記載されているガス流
量等の製造条件は、本発明をその範囲に限定することを
意味しない。下記例において、バーナーとしては図1に
示したものを使用した。
【0030】[実施例1]原料にテトラメトキシシラン
を使用し、原料ガス流量に対する第二のノズル(図1中
2)の酸素流量を化学量論比の1.96倍、原料ガス流
量及び水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を
化学量論比の2.43倍として密度が0.25g/cm
3の多孔質シリカ母材を作製した。母材製造時には、テ
トラフルオロシランをバーナーの中心ノズル(図1中
1)から1.3mol/Hrの流量で供給した。
【0031】得られた多孔質シリカ母材をHe雰囲気下
で1,500℃まで昇温して合成石英ガラスを得た。ガ
ラス化には30時間を要した。OH基及びフッ素原子濃
度を測定したところ、それぞれ0ppm、1,540p
pmであった。真空紫外領域の透過率を測定したとこ
ろ、160nmから240nmの範囲での吸収は非常に
弱く、157.6nmで78.0%と高い透過性を示し
た。多孔質シリカ母材製造時のガス条件及び得られた合
成石英ガラス物性値を表1に、透過率曲線を図2にそれ
ぞれ示す。なお、透過率曲線測定時のサンプル厚さは
6.3±0.1mmとした。
【0032】[実施例2]原料にテトラメトキシシラン
を使用し、原料ガス流量に対する第二のノズル(図1中
2)の酸素流量を化学量論比の3.03倍、原料ガス流
量及び水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を
化学量論比の3.42倍として密度が0.30g/cm
3の多孔質シリカ母材を作製した。母材製造時には、テ
トラフルオロシランをバーナーの中心ノズル(図1中
1)から0.4mol/Hrの流量で供給した。
【0033】得られた多孔質シリカ母材を真空下で1,
500℃まで昇温して合成石英ガラスを得た。ガラス化
には30時間を要した。OH基及びフッ素原子濃度を測
定したところ、それぞれ5ppm、740ppmであっ
た。真空紫外領域の透過率を測定したところ、Si−S
i結合やSi−OH結合に起因する吸収は非常に弱く、
157.6nmで74.8%と高い透過性を示した。多
孔質シリカ母材製造時のガス条件及び得られた合成石英
ガラス物性値を表1に、透過率曲線を図2にそれぞれ示
す。
【0034】[比較例1]原料にテトラメトキシシラン
を使用し、原料ガス流量に対する第二のノズル(図1中
2)の酸素流量を化学量論比の0.91倍、原料ガス流
量及び水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を
化学量論比の0.98倍として密度が0.20g/cm
3の多孔質シリカ母材を作製した。母材製造時には、テ
トラフルオロシランをバーナーの中心ノズル(図1中
1)から1.3mol/Hrの流量で供給した。
【0035】得られた多孔質シリカ母材を真空下で1,
500℃まで昇温して合成石英ガラスを得た。ガラス化
には30時間を要した。OH基及びフッ素原子濃度を測
定したところ、それぞれ0ppm、1,610ppmで
あった。真空紫外領域の透過率を測定したところ、16
3nm付近に強い吸収が見られた。157.6nmで透
過率は15.6%に低下した。多孔質シリカ母材製造時
のガス条件及び得られた合成石英ガラス物性値を表1
に、透過率曲線を図2にそれぞれ示す。
【0036】[比較例2]原料にテトラメトキシシラン
を使用し、原料ガス流量に対する第二のノズル(図1中
2)の酸素流量を化学量論比の0.91倍、原料ガス流
量及び水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を
化学量論比の0.98倍として密度が0.20g/cm
3の多孔質シリカ母材を作製した。母材製造時には、テ
トラフルオロシランをバーナーの中心ノズル(図1中
1)から0.3mol/Hrの流量で供給した。
【0037】得られた多孔質シリカ母材を真空下で1,
500℃まで昇温して合成石英ガラスを得た。ガラス化
には15時間を要した。OH基及びフッ素原子濃度を測
定したところ、それぞれ60ppm、630ppmであ
った。真空紫外領域の透過率を測定したところ、160
nm付近に強い吸収が見られた。157.6nmで透過
率は0%に低下した。多孔質シリカ母材製造時のガス条
件及び得られた合成石英ガラス物性値を表1に、透過率
曲線を図2にそれぞれ示す。
【0038】
【表1】 *:原料ガス流量に対する第二のノズルの酸素流量の化
学量論比に対する倍数(式(1)による計算) **:原料ガス流量及び水素ガス総流量の合計に対する
酸素ガス総流量の化学量論比に対する倍数(式(2)に
よる計算)
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、多孔質シリカ母材製造
時のガスバランスを酸素過剰条件にすることにより、石
英ガラス中のSi−Si結合の生成を抑制し、真空紫外
領域において高い透過性を有する合成石英ガラスを製造
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔質シリカ母材製造用バーナーの一例を示す
概略断面図である。
【図2】実施例1,2及び比較例1,2の条件で製造し
た合成石英ガラスの真空紫外透過率曲線を示すグラフで
ある。
【符号の説明】
1 中心管ノズル 2 第一リング管(第二のノズル) 3 第二リング管(第三のノズル) 4 第三リング管(第四のノズル)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/20 502 G03F 7/20 502 (72)発明者 代田 和雄 新潟県中頸城郡頸城村大字西福島28−1 信越化学工業株式会社精密機能材料研究所 内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 同心円状に複数のノズルを有するバーナ
    ーの中心部のノズルからシリカ製造原料ガス及びフッ素
    化合物ガスを反応域に供給し、中心ノズルの外側に配設
    されている第二のノズルから酸素ガス、更にその外側に
    配設されているノズルから酸素ガス及び/又は水素ガス
    を反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料
    ガスの火炎加水分解によりシリカ微粒子を生成させると
    共に、上記反応域に回転可能に配置された基材に上記シ
    リカ微粒子を堆積させて多孔質シリカ母材を作製し、こ
    の母材を溶融させて石英ガラスを得る合成石英ガラスの
    製造方法において、原料ガス流量に対する第二のノズル
    の酸素ガス流量を化学量論比の1.1〜3.5倍の酸素
    過剰条件とすることを特徴とする合成石英ガラスの製造
    方法。
  2. 【請求項2】 同心円状に複数のノズルを有するバーナ
    ーの中心部のノズルからシリカ製造原料ガス及びフッ素
    化合物ガスを反応域に供給し、中心ノズルの外側に配設
    されている第二のノズルから酸素ガス、更にその外側に
    配設されているノズルから酸素ガス及び/又は水素ガス
    を反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料
    ガスの火炎加水分解によりシリカ微粒子を生成させると
    共に、上記反応域に回転可能に配置された基材に上記シ
    リカ微粒子を堆積させて多孔質シリカ母材を作製し、こ
    の母材を溶融させて石英ガラスを得る合成石英ガラスの
    製造方法において、バーナーから供給される原料ガス流
    量と水素ガス総流量の合計に対する酸素ガス総流量を化
    学量論比の1.1〜3.5倍の酸素過剰条件とすること
    を特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
  3. 【請求項3】 原料ガス流量に対する第二のノズルの酸
    素ガス流量を化学量論比の1.1〜3.5倍の酸素過剰
    条件とした請求項2記載の合成石英ガラスの製造方法。
  4. 【請求項4】 多孔質シリカ母材の密度が0.1〜1.
    0g/cm3であることを特徴とする請求項1乃至3の
    いずれか1項記載の合成石英ガラスの製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項記載の方
    法によって製造され、多孔質シリカ母材を溶融ガラス化
    して得られた合成石英ガラスのOH基濃度が20ppm
    以下、フッ素原子濃度が100ppm以上であることを
    特徴とする合成石英ガラス。
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