JP3796653B2 - フッ素含有合成石英ガラス及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、400nm以下の波長領域、特に真空紫外領域での透過率が良好なフッ素含有合成石英ガラス及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
周知のように、近年の半導体集積回路の高集積化はめざましい。この傾向に伴い、半導体素子製造時のリソグラフィプロセスでの露光光源の短波長化が進み、現在ではKrFエキシマレーザ(248nm)を使用するリソグラフィが主流になりつつある。
【0003】
今後、更なる高集積化を実現するためにArFエキシマレーザ(193nm)への移行は必至であるが、将来的にはF2エキシマレーザ(157nm)への移行も有力視されている。
【0004】
従来、リソグラフィ装置に用いられるステッパーレンズ、プリズム等の投影光学系及びフォトマスク(レチクル)には使用光源に対して高い光透過性を持ち、熱膨張係数が小さい、高純度石英ガラスが使用されている。しかし、従来の石英ガラスでは200nm以下のいわゆる真空紫外領域では徐々に透過率が低下し、140nm付近で吸収端を示すため、フォトマスク等の光学部材に使用することは難しいと考えられていた。そのため、真空紫外領域の露光光源を用いたリソグラフィには石英ガラスよりも高い透過率を示すCaF2単結晶の応用も検討されてきた。しかし、CaF2は石英ガラスに比べて、熱膨張係数が高い、素材強度が低い、劈開等により加工性が悪い、製造コストが高い等の理由からリソグラフィ、特にフォトマスクへの適用は困難と考えられている。
このため、真空紫外領域でも高い光透過性を有する石英ガラスの開発が急務とされている。
【0005】
真空紫外領域での透過率低下は、主に石英ガラス中の構造欠陥による吸収に起因する。真空紫外領域に吸収帯を持つ構造欠陥としては、主にSi−Si結合、Si−OH結合、Si−O−O−Si結合及びSi−Cl結合が知られている。従って、ArF及びF2エキシマレーザを使用するリソグラフィ技術の実用化には、石英ガラス中の前記構造欠陥の生成を抑制し、真空紫外領域で高い透光性を持つ石英ガラスの製造が重要となる。
【0006】
特にSi−Si結合は酸素欠損型欠陥と呼ばれ、163nm及び245nmに吸収帯を持つため、F2エキシマレーザに加え、KrFエキシマレーザを露光光源とする場合にも問題となる。また、同欠陥はエキシマレーザの照射によってE’センターと呼ばれる215nmに吸収を持つ欠陥を生じさせる(ソラリゼーション)と共に、吸収したエネルギーにより発生したコンパクションが屈折率の変動を引き起こすため、石英ガラスの耐久性の低下を引き起こす原因にもなる。
同様に177nmに吸収を持つSi−O−O−Si結合(酸素過多型欠陥)は、エキシマレーザの照射によってNBOHC(非架橋酸素ラジカル)を生成し、透過率及び耐久性の低下の原因になる。
【0007】
これら構造欠陥を抑制するための従来の研究では、シリカ製造原料ガスの火炎加水分解反応により作製した多孔質シリカ母材をフッ素雰囲気下で溶融ガラス化する方法が提案されている。
この方法では、石英ガラス中の上記構造欠陥を低減させ、Si−F結合を生成させる。同結合の導入による新たな吸収は140nm以上の真空紫外領域に見られない。これはSi−F結合のバンドギャップが石英ガラス(Si−O結合)よりも大きいからである。
更に、Si−F結合は結合エネルギーが大きく非常に安定なため、エキシマレーザ照射によるE’センター等の新たな構造欠陥の生成もみられない。
従って、真空紫外線用の光学材料に好適な石英ガラスを得るには、石英ガラス内にSi−F結合を高濃度で均一に生成させればよい。
【0008】
しかしながら、従来の方法では、濃度的にも均一性の面からも好適な石英ガラスを得ることが非常に困難であることを本発明者らは見出した。
即ち、従来の方法ではフッ素原子濃度を2重量%以上の高濃度で均一にドープすることが非常に難しく、低濃度では透過性の低下を十分抑制することができない。多孔質シリカ母材の径が大きくなればなるほど高濃度なドープが非常に難しい。
その上、多孔質シリカ母材のガラス化はその表面から内部に向かって進行するため、同時にフッ素ドープを行う場合、多孔質シリカ母材のガラス化によって内部へのフッ素の拡散が抑制されるため、製造された石英ガラスの径方向にフッ素原子濃度の分布を生じさせる。
また、フッ素ドープ濃度によりガラス化する温度が変化するため、場合によっては一部に未溶融部分が残り、ガラス化が不完全になる。この傾向は、ドープ濃度を高くするほど顕著である。
【0009】
ガラス化できた場合でも、石英ガラス内でのフッ素原子濃度に分布が生じるため、透過率、屈折率等の不均一を誘起する。その結果、透過率が高くても、これをレチクル用の基板材料に使用した場合、転写する像が一部ぼやけてしまい、材料としての使用が困難になる。この傾向は石英ガラスの吸収端に近いほど顕著にあらわれるため、リソグラフィ技術の高精細化には克服しなければならない問題である。
【0010】
フッ素化合物ガスの多孔質シリカ母材内への拡散を考慮すると、母材のかさ密度が低いこと、母材の径が小さいこと、ドープ時間が長いことが均一なドープに対して有効であると考えられ、そのため従来は低いかさ密度の母材に長時間かけてフッ素ドープを行う方法がとられていた。
しかしながら、かさ密度が低い母材をガラス化しても得られる製品量は少量であり、またドープ時間が長いということは製造時間の延長だけでなく、ドーパントであるフッ素化合物ガスの消費量を増加させるので、製造コストを含めた生産性はフッ素を含有していない他の紫外線用合成石英ガラスと比較して非常に低いものとなっている。
【0011】
従って、真空紫外領域で高い透過性を有する石英ガラスを製造するため、従来よりもフッ素を高濃度かつ均一にドープする方法の確立が望まれていた。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、フッ素を高濃度かつ均一にドープした合成石英ガラス、及びかかる合成石英ガラスをドープ時間を短縮し、製造コストを低減して製造することができる合成石英ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは上記目的を達成するため、種々の検討を行った結果、多孔質シリカ母材作製時にシリカ製造原料ガスと共にフッ素化合物ガスをバーナーから供給してフッ素含有多孔質シリカ母材を作製し、これをフッ素化合物ガスを含む雰囲気下で加熱ガラス化することにより、従来よりもフッ素原子が高濃度かつ均一にドープされた合成石英ガラスが短時間で製造できることを知見した。
【0014】
加えて、この方法では従来よりもかさ密度の高い多孔質シリカ母材の使用が可能となり、生産性が飛躍的に向上し、ドープ時間も短縮されたため製造コストを大幅に低減させることが可能となった。その結果、真空紫外領域で高い光透過性を有しかつ透過率分布が均一な合成石英ガラスを低コストで製造できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0015】
即ち、本発明は、下記フッ素含有合成石英ガラスの製造方法及び合成石英ガラスを提供する。
(1)シリカ製造原料ガス、水素ガス、酸素ガス及びフッ素化合物ガスを母材中心軸とフッ素化合物ガス流の中心軸とがなす角度が120〜150°であって、かつ両中心軸の交点が多孔質シリカ母材の先端側にあるように配置したバーナーから反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料ガスの火炎加水分解反応によりフッ素を含有したシリカ微粒子を生成させると共に、上記反応域に配置された回転可能な基材に上記シリカ微粒子を堆積させてフッ素含有多孔質シリカ母材を作製し、この多孔質シリカ母材をフッ素化合物ガスを含む雰囲気下で、加熱ガラス化することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
(2)(1)記載の製造方法によって製造された合成石英ガラスを更に水素ガス雰囲気中で加熱処理することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
(3)多孔質シリカ母材のかさ密度が、0.1g/cm3以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の合成石英ガラスの製造方法。
(4)(1)乃至(3)のいずれか1項記載の製造方法によって製造され、OH基濃度が0.002重量%以下、フッ素原子濃度が0.01重量%以上であり、水素原子濃度1×10 17 分子/cm 3 以上、かさ密度0.1g/cm 3 以上であることを特徴とする合成石英ガラス。
【0016】
本発明によれば、上記の方法を利用することにより、従来よりも真空紫外光の透過率が高く、かつ均一な石英ガラスを従来よりも低コストで製造することができるようになったものである。
【0017】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明におけるフッ素含有合成石英ガラスの製造方法は、シリカ製造原料ガス、水素ガス、酸素ガス及びフッ素化合物ガスをバーナーから反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料ガスの火炎加水分解反応によりフッ素を含有したシリカ微粒子を生成させると共に、上記反応域に配置された回転可能な基材に上記シリカ微粒子を堆積させてフッ素含有多孔質シリカ母材を作製し、この多孔質シリカ母材をフッ素化合物ガスを含む雰囲気下で加熱ガラス化することを特徴とする。
【0018】
上記の方法によれば、多孔質シリカ母材作製時にフッ素をドープするのであるが、このときに母材外周から中心部にいくに従ってフッ素原子濃度が高くなるようにする。
この母材をガラス化する際に再度フッ素ドープを行うと、ガラス化時のドープでは中心よりも外側にドープされ易いので、結果として径方向に均一なドープが可能となる。
このような二段階のドープにより、石英ガラス中のフッ素原子濃度が2重量%を超える石英ガラスを容易に得ることができる。
その結果、高濃度で均一な石英ガラスが得られ、酸素欠損型欠陥等の構造欠陥の生成が激減し、エキシマレーザ耐性の優れた合成石英ガラスの製造が可能となる。更にこの方法では、ガラス化時のドープを母材外側に集中して行えばよいので、高いかさ密度を有する母材をガラス化することができる。
【0019】
ここで、石英ガラスへのドープは、分子拡散から考えると密度の小さいほうが均一にドープされ易い。従来の方法では、ガラス化時に初めてドープが行われるのであるが、母材の表面から進行するガラス化と共にドープが行われるため、ドープ中に表面のかさ密度が上昇し、ドープ速度が次第に低下していく。そのため、母材中心部へのドープ濃度が低下してしまっていた。均一で高濃度なフッ素ドープを行うためには、かさ密度が低く径の小さい母材をガラス化温度まで徐々に昇温し、長時間かけてフッ素をドープしなければならない。
これに対して、本発明では、従来よりもかさ密度が高く、母材径の大きい母材を短時間でガラス化することができる。
【0020】
本発明における多孔質シリカ母材を製造する方法自体は公知の方法であり、バーナーのガス流量などは通常の条件によって操作し得、シリカ製造原料ガスも公知の有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0021】
具体的には、原料となる有機ケイ素化合物は、四塩化ケイ素(SiCl4)、ジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)等の塩素系シラン化合物、下記一般式(I)〜(III)で示されるシラン化合物、シロキサン化合物が用いられる。
(R1)nSi(OR2)4-n (I)
(式中、R1,R2は同一又は異種の脂肪族一価炭化水素基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
【化1】
(式中、R3は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基を示し、mは1以上、特に1又は2である。)
【化2】
(式中、R3は水素原子又は脂肪族一価炭化水素基を示し、pは3〜5の整数である。)
【0022】
ここで、R1,R2,R3の脂肪族一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜6のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等の炭素数2〜4のアルケニル基等が挙げられる。
【0023】
具体的に上記一般式(I)で示されるシラン化合物としては、Si(OCH3)4、Si(OCH2CH3)4、CH3Si(OCH3)3等が挙げられ、一般式(II)で示されるシロキサン化合物としては、ヘキサメチルジシロキサン等が挙げられる。
これらの中では、Si−Cl結合の紫外線吸収を考慮すると、Clを含まないアルコキシシランが好ましい。
【0024】
また、フッ素化合物としては、テトラフルオロシラン、トリフルオロメタン、テトラフルオロメタン等が用いられる。
【0025】
本発明で用いられるバーナーは、同心円上に複数のノズルを有し、中心部のノズルからシリカ製造原料ガスとフッ素化合物、その外側の第二のノズルから酸素ガス、更にその外側の1又は複数のノズルから酸素ガス及び/又は水素ガスを反応域に供給して火炎加水分解を可能とするものであればいずれのものでもよく、公知のバーナーを使用することができ、例えば図1に示すものが挙げられる。
【0026】
ここで、図1において、1は中心管ノズルであり、これからシリカ製造原料ガス及びフッ素化合物ガスが供給される。2はこの中心管ノズル1を取り囲む第一リング管(第二のノズル)で、これから酸素ガスが供給される。3は第一リング管2を取り囲む第二リング管、4は第二リング管を取り囲む第三リング管で、第二リング管3からは水素ガスが、第三リング管4からは酸素ガスが供給される。
【0027】
なお、補助バーナー等、複数のバーナーを使用してもよく、補助バーナーからは酸水素炎のみを供給してもよいし、フッ素化合物ガスを供給するようにしてもよい。
【0028】
多孔質シリカ母材製造時に外側よりも中心部によりフッ素がドープされるようにするためには、フッ素化合物ガスを母材中心に向けて供給するのが効果的である。
【0029】
更に、フッ素原子濃度の分布をつけるには、フッ素化合物ガス流と母材の中心軸がなす角度を大きくするのが好ましい。
具体的には、図2においてθ=120〜150°が好適である。即ち、図2において、11は多孔質シリカ母材であり、12はフッ素化合物をシリカ母材11に向けて供給するバーナーであり、Aは多孔質シリカ母材11の中心軸、Bはバーナー12から供給されるフッ素化合物ガス流の中心軸であり、θは中心軸Aと中心軸Bとのなす角度である。
なお、多孔質シリカ母材の外側よりも中心部にフッ素をドープするためには、中心軸Aと中心軸Bの交点が多孔質シリカ母材1の先端側にあることが望ましい。
【0030】
また、上記多孔質シリカ母材のかさ密度は0.1g/cm3以上、より好ましくは0.1〜0.7g/cm3、更に好ましくは0.3〜0.7g/cm3であることがよく、これにより生産性良く石英ガラスを得ることができる。
【0031】
こうして製造された多孔質シリカ母材は、フッ素雰囲気下の高温ガラス化炉内で加熱ガラス化される。
ガラス化の方法も公知の方法、条件を採用し得、例えばフッ素化合物ガスと不活性ガス混合雰囲気下、1,200〜1,700℃まで加熱し、ガラス化する。フッ素化合物ガスとしては、SiF4、CHF3、CF4などが、不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、窒素などが選択されうる。この場合、フッ素化合物濃度は、0.01vol%以上とすることが好ましい。
ガラス化後は同ガラス化炉内で急冷、徐冷又は放冷にて室温まで冷却される。
【0032】
続いて、得られたフッ素含有石英ガラスを水素ガス雰囲気下で加熱処理し、水素ドープを行うことが好ましい。これはエキシマレーザの照射によって生成する可能性のあるE’センター等の構造欠陥を水素原子で補完するために行うものである。本発明のガラス化方法で、これら常磁性欠陥の前駆体(つまりSi−Si結合など)はかなり低減されてはいるが、水素加熱処理によりなお一層紫外線耐性が強化される。
【0033】
水素加熱処理の方法も公知の方法、条件を採用し得、例えば水素ガス及びヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを混合して、1〜10MPa下、300〜600℃で保持してフッ素含有石英ガラスに1〜3vol%の水素をドープすることが好ましい。
【0034】
なお、前記多孔質シリカ母材のフッ素雰囲気下でのガラス化工程及びその後の水素ドープの工程は連続した工程として行うことも可能である。
【0035】
上記の一連の工程を経て製造された合成石英ガラスは、OH基濃度を0.002重量%以下、特に0.0001重量%以下とするのが好ましい。これは石英ガラス中のSi−OH結合に起因した吸収による透過率の低下を抑制するためである。
【0036】
また、作製された合成石英ガラス中のフッ素原子濃度は0.01重量%以上であることが望ましい。より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは2重量%以上である。更に、水素原子濃度は、1×1017分子/cm3以上、より好ましくは3×1017分子/cm3以上、更に好ましくは1×1018分子/cm3以上である。
【0037】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。また、この実施例に記載されている種々の製造条件は、この発明をその範囲に限定することを意味しない。
【0038】
[実施例1]
H2ガスを2.8m3/Hr、O2ガスを4.0m3/Hr、シリカ製造原料としてのテトラメトキシシランを1,000g/Hr、SiF4を0.06m3/Hrのガス条件でバーナーから供給し、多孔質シリカ母材を酸水素火炎での加水分解により製造した。このとき、母材中心軸とバーナーから供給されるSiF4ガス流の中心軸とのなす角度θを150°となるように調整した。得られた多孔質シリカ母材のかさ密度は、0.4g/cm3であった。
【0039】
上記の多孔質シリカ母材を高温ガラス化炉内においてSiF4雰囲気下で昇温し、溶融ガラス化して合成石英ガラスを得た。この場合、炉内には、SiF4ガスを0.06m3/Hrの流量で炉内に導入し、ガラス化には5時間を要した。
【0040】
この条件で製造した合成石英ガラスを切り出し、直径110mm、厚さ6.3mmで光学用の研磨を両面に施したサンプルを作製した。
【0041】
石英ガラス中のフッ素原子濃度をEPMA(Electron probe micro analysis)法にて測定したところ、サンプルの中央〜外周で2.3〜2.4重量%であった。OH基濃度は、0重量%であった。
【0042】
上記のサンプルについて真空紫外線に対する透過率をサンプルの中央部と外周部で測定したところ、透過率は図3のように155〜300nmの範囲で非常に高い値を示し、中央部と外周部の透過率の差は殆どみられなかった。なお、図3において、中心部と外周部との透過率は殆ど重なっている。また、157.6nmでの透過率は中心、外周部で共に83%であった。
【0043】
[実施例2]
H2ガスを2.5m3/Hr、O2ガスを3.5m3/Hr、シリカ製造原料としてのテトラメトキシシランを800g/Hr、SiF4を0.04m3/Hrのガス条件でバーナーから供給し、多孔質シリカ母材を酸水素火炎での加水分解により製造した。このとき、母材中心軸とバーナーから供給されるSiF4ガス流の中心軸とのなす角度θを130°となるように調整した。得られた多孔質シリカ母材のかさ密度は、0.5g/cm3であった。
【0044】
上記の多孔質シリカ母材を高温ガラス化炉内においてSiF4とヘリウムの混合雰囲気下で昇温し、溶融ガラス化して合成石英ガラスを得た。この場合、炉内には、SiF4ガスとヘリウムガスをそれぞれ0.04m3/Hr、0.02m3/Hrの流量で炉内に導入し、ガラス化には5時間を要した。
【0045】
この条件で製造した合成石英ガラスを切り出し、直径110mm、厚さ6.3mmで光学用の研磨を両面に施したサンプルを作製した。
【0046】
石英ガラス中のフッ素原子濃度をEPMA法にて測定したところ、サンプルの中央〜外周で2.0〜2.1重量%であった。OH基濃度は、0.0001重量%以下であった。
【0047】
上記のサンプルについて真空紫外線に対する透過率をサンプルの中央部と外周部で測定したところ、透過率の差は殆どみられず、155〜300nmの領域で良好な透過率を示した。
【0048】
[実施例3]
H2ガス、O2ガス、シリカ製造原料としてのテトラメトキシシラン及びSiF4を実施例1と同じガス条件でバーナーから供給し、多孔質シリカ母材を作製した。このとき、母材中心軸とバーナーから供給されるSiF4ガス流の中心軸とのなす角度θを150°となるように調整した。得られた多孔質シリカ母材のかさ密度は、実施例1と同じく0.4g/cm3であった。
【0049】
上記の多孔質シリカ母材を実施例1と同じ条件で溶融ガラス化して得られた合成石英ガラスをH2とヘリウムの混合雰囲気下、500℃で100時間加熱処理した。この場合、H2濃度は3vol%であり、加熱処理時の圧力は10MPaであった。
【0050】
この条件で製造した合成石英ガラスを切り出し、直径110mm、厚さ6.3mmで光学用の研磨を両面に施したサンプルを作製した。
【0051】
石英ガラス中のフッ素原子濃度をEPMA法にて測定したところ、サンプルの中央〜外周で2.3〜2.4重量%であった。OH基濃度は、0重量%であった。
ラマン分光法にて水素原子濃度を測定したところ、3×1018分子/cm3であった。
【0052】
上記のサンプルについて真空紫外線に対する透過率をサンプルの中央部と外周部で測定したところ、透過率の差は殆どみられず、155〜300nmの領域で良好な透過率を示した。なお、157.6nmでの透過率は中心、外周部で共に85%であり、実施例1よりも高い透過率を示した。
【0053】
[比較例1]
H2ガス、O2ガス、シリカ製造原料としてのテトラメトキシシランを実施例1と同じガス条件で、SiF4は供給せずに多孔質シリカ母材を作製した。このとき、母材中心軸とバーナーから供給されるシリカ製造原料ガス流の中心軸とのなす角度θは150°であった。得られた多孔質シリカ母材のかさ密度は、実施例1と同じく0.4g/cm3であった。
【0054】
上記の多孔質シリカ母材を高温ガラス化炉内においてSiF4雰囲気下で昇温し、溶融ガラス化して合成石英ガラスを得た。この場合、炉内には、SiF4ガスを0.06m3/Hrの流量で炉内に導入し、ガラス化には5時間を要した。
【0055】
この条件で製造した合成石英ガラスを切り出し、直径110mm、厚さ6.3mmで光学用の研磨を両面に施したサンプルを作製した。
【0056】
石英ガラス中のフッ素原子濃度をEPMA法にて測定したところ、サンプルの中央〜外周で1.4〜2.1重量%となり、中央と外周の差が非常に大きいものとなった。OH基濃度は、0.0001重量%以下であった。
【0057】
上記のサンプルについて真空紫外線に対する透過率をサンプルの中央部と外周部で測定したところ、透過率は図4のように155〜300nmの範囲で比較的高い値を示したものの、中央部と外周部の透過率の差がみられ、特に165nm以下の真空紫外域では透過率の差が非常に大きいものとなった。なお、157.6nmでの透過率は中心部で73%、外周部で78%であった。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、フッ素含有多孔質シリカ母材を作製し、これをフッ素化合物ガスを含む雰囲気下で加熱ガラス化することにより、従来よりも真空紫外光の透過率が高くかつ均一な合成石英ガラスを低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】多孔質シリカ母材製造用バーナーの一例を示す概略断面図である。
【図2】多孔質シリカ母材の中心軸とバーナーから供給されるフッ素化合物ガス流の角度を表す説明図である。
【図3】実施例1の条件で製造した合成石英ガラスの真空紫外透過率曲線である。
【図4】比較例1の条件で製造した合成石英ガラスの真空紫外透過率曲線である。
【符号の説明】
1 中心管ノズル
2 第一リング管(第二のノズル)
3 第二リング管(第三のノズル)
4 第三リング管(第四のノズル)
11 多孔質シリカ母材
12 バーナー
A 多孔質シリカ母材の中心軸
B バーナーから供給されるフッ素化合物ガス流の中心軸
θ AとBがなす角度
Claims (4)
- シリカ製造原料ガス、水素ガス、酸素ガス及びフッ素化合物ガスを母材中心軸とフッ素化合物ガス流の中心軸とがなす角度が120〜150°であって、かつ両中心軸の交点が多孔質シリカ母材の先端側にあるように配置したバーナーから反応域に供給し、この反応域においてシリカ製造原料ガスの火炎加水分解反応によりフッ素を含有したシリカ微粒子を生成させると共に、上記反応域に配置された回転可能な基材に上記シリカ微粒子を堆積させてフッ素含有多孔質シリカ母材を作製し、この多孔質シリカ母材をフッ素化合物ガスを含む雰囲気下で、加熱ガラス化することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
- 請求項1記載の製造方法によって製造された合成石英ガラスを更に水素ガス雰囲気中で加熱処理することを特徴とする合成石英ガラスの製造方法。
- 多孔質シリカ母材のかさ密度が、0.1g/cm3以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の合成石英ガラスの製造方法。
- 請求項1乃至3のいずれか1項記載の製造方法によって製造され、OH基濃度が0.002重量%以下、フッ素原子濃度が0.01重量%以上であり、水素原子濃度1×10 17 分子/cm 3 以上、かさ密度0.1g/cm 3 以上であることを特徴とする合成石英ガラス。
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