JP2001233667A - 電源用MnZn系フェライト - Google Patents
電源用MnZn系フェライトInfo
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Abstract
であると同時に強度の高い、電源用MnZn系フェライトを
提供する。 【解決手段】 ZnO:10.0〜15.0 mol%、Fe2O3 : 52.0
〜54.0 mol%、MnO:残部の成分組成になる基本成分中
に、Bi2O3 : 0.0050〜0.0200mass%、SiO2 : 0.0050〜
0.0500mass%およびCaO : 0.0200〜0.2000mass%と共
に、Ta2O5 : 0.0050〜0.1000mass%、ZrO2 : 0.0100〜
0.1500mass%、Nb2O5 : 0.0050〜0.0500mass%およびHf
O2 : 0.0050〜0.0500mass%のうちから選んだ少なくと
も一種を含有させた組成とする。
Description
用トランス等の磁心材料として好適な、強度が高くかつ
低損失な電源用MnZnフェライトに関するものである。
れ、このフェライトはさらに、Baフェライト、Srフェラ
イト等の硬質磁性材料とMnZn系フェライト、NiZn系フェ
ライト等の軟質磁性材料に分けられる。軟質磁性材料と
は、非常に僅かな磁場に対しても十分に磁化する材料で
あり、電源、通信機器、計測制御機器、磁気記録および
コンピュータなどの幅広い分野で使用されている。そし
て、かような軟磁性材料に必要とされる特性としては、
保磁力が小さく透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大き
いこと、低損失であることなどが挙げられる。
は、金属系のものがある。この金属系軟磁性材料は、飽
和磁束密度が高いため、この点酸化物系と比べると有利
ではあるが、その反面電気抵抗が低いため、高周波域で
使用する際には渦電流に起因する損失(磁気損失)が大
きくなってしまう。特に近年では、電子機器の小型化・
高密度化の要請から使用周波数の高周波化が進んでお
り、スイッチング電源等に用いられている 100 kHz程度
の周波数帯域では、従来の金属系材料では抵抗が低く、
渦電流損による発熱が大きくなるため、その使用はほと
んど不可能である。このような背景から、高周波帯域で
用いられる電源用トランスの磁心材料としては、MnZn系
フェライトを用いることが主流となっている。
て用いられる電源用MnZn系フェライトに対しては、特に
低損失であることが要求される。磁性材料の低損失化に
ついては、損失を支配する要因として磁気異方性定数K
1 ならびに磁歪定数λが知られており、MnZn系フェライ
トにおいても、これらのパラメータが損失を最小とする
ようなMnO−ZnO−Fe2O3 三元系の組成が、従来から選
択されている。
は、電源用トランスの動作温度(80℃前後)において、
磁気異方性定数K1 ならびに飽和磁歪定数λs がともに
小さい三元系の組成領域である。また、MnZn系フェライ
トの損失は大きな温度依存性を有しており、損失は室温
から温度が高まるにつれて低下し、最小温度を境に増加
に転じる。電源用トランスの動作温度が50〜80℃であっ
ても、周囲の電子部品の温度上昇や使用環境温度によっ
て、トランスの温度がしばしば 100℃近くなる場合もあ
り得る。このような条件を想定し、またMnZn系フェライ
トの損失の温度依存性を考慮して、現行の電源用トラン
ス磁心材料では、損失が最小となる温度が90〜100 ℃付
近となるように材料設計されている。
どは主組成によって決まり、これらが損失に影響を及ぼ
すが、MnZn系フェライトの場合は、微量添加成分によっ
ても損失が変わってくる。すなわち、焼結体の密度を向
上させるとか、粒界抵抗を高め、焼結体全体の比抵抗を
高めて渦電流損失を低減させることにより、全損失を低
減させることができる。たとえば、特開昭58−15037 号
公報や特開平3−184307号公報に開示されているよう
に、数百ppm 程度の微量添加で損失を低減させ得る添加
成分もある。
フェライトのMnO−ZnO−Fe2O3 三元系の組成によって
は、このような添加成分の添加量を増やしていくにつれ
て、焼結体の曲げ強度、抗折強度といった強度が著しく
低下し、加工時にチッピングが生じたり、最終的に製品
としたとき、あるいは部品として他の電子部品と共に電
子機器に組み込んだ際に、割れが生じることがあった。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、スイッ
チング電源に適用して好適な、低損失であると同時に強
度の高い、電源用MnZn系フェライトを提案することを目
的とする。
述べた課題を解決するために、添加成分の焼結体強度に
及ぼす影響について種々検討を重ねた結果、Bi2O3 を併
せて添加することによって、損失値をほとんど変化させ
ることなしに、強度を効果的に向上させ得ることの知見
を得た。本発明は、上記の知見に立脚するものである。
る基本成分中に、Bi2O3 : 0.0050〜0.0200mass%、SiO2
: 0.0050〜0.0500mass%およびCaO : 0.0200〜0.20
00mass%と共に、Ta2O5 : 0.0050〜0.1000mass%、ZrO2
: 0.0100〜0.1500mass%、Nb2O5 : 0.0050〜0.0500ma
ss%およびHfO2 : 0.0050〜0.0500mass%のうちから選
んだ少なくとも一種を含有させたことを特徴とする電源
用MnZn系フェライトである。
6 N/m2以上の曲げ強度を得ることができる。また、本発
明のMnZn系フェライトにおいて、損失が最小となる温度
は80〜120℃の範囲である。
ェライトの成分組成を上記の範囲に限定した理由につい
て説明する。まず、基本成分組成を、ZnO:10.0〜15.0
mol%、 Fe2O3:52.0〜54.0 mol%、MnO:残部の範囲
に限定した理由について説明する。前述したように、電
源用フェライトに求められる磁気特性としては、飽和磁
束密度が大きいこと、キュリー温度が高いことおよび損
失が小さいことが挙げられるが、このうち飽和磁束密度
およびキュリー温度は、基本成分であるMnO、ZnOおよ
びFe2O3 の配合比でほぼ決定される。すなわち、ZnOの
量が少ない領域では、ZnO量の増加に伴って飽和磁束密
度が増加するが、これと同時にキュリー温度は低下す
る。さらにZnO量が多くなると、飽和磁束密度が低下す
る。同じMnZn系フェライト材料であっても、高透磁率を
目的にした材料では、ZnO量を多くして飽和磁歪の小さ
い成分組成である20 mol%付近の組成を選択し、飽和磁
束密度を犠牲にしても透磁率が高くなる組成としてい
る。ここに、ZnO量が多いこの組成では焼結体密度が高
くて強度的には問題がなく、強度が問題とされるのはZn
O量が15 mol%以下の範囲である。逆に、80〜120 ℃の
温度域における損失を考慮すると、ZnO量が少ない組成
の方が有利であるが、ZnO量が10 mol%より少なくなる
と損失がかえって増大する。従って、ZnO量は10 mol%
以上、15 mol%以下の範囲とした。より好ましくは10 m
ol%以上、14 mol%以下である。
に基本成分によって決まる。損失が最小となる温度を、
80〜120 ℃の範囲にするためには、ZnO:10 mol%に対
してFe2O3 は54.0 mol%程度、ZnO:15 mol%に対して
Fe2O3は52.0 mol%程度となり、この組成範囲から外れ
ると、80〜120 ℃の温度域での損失値が増大する。従っ
て、Fe2O3 量は52.0 mol%から54.0 mol%の範囲とし、
残部をMnOとしたのである。より好ましい Fe2O3量は5
2.5〜53.8 mol%である。
添加成分について説明する。まず、SiO2,CaOを含有さ
せることは、焼結性を高めかつ粒界相を高抵抗化して低
損失を実現する上で不可欠である。すなわち、SiO2は、
焼結を促進させる効果があり、この効果を引き出すため
には0.0050mass%以上含有させる必要があるが、多すぎ
ると異常粒成長を起こすため上限は0.0500mass%とし
た。ただし、この上限付近の含有量では焼結温度を下げ
る等の配慮が必要である。また、含有量が比較的多い場
合は、最適な粒界の制御が難しいので、好ましくは0.00
50〜0.0350mass%の範囲で含有させる。
して損失を小さくする作用があるが、含有量が0.0200ma
ss%未満ではその効果に乏しく、一方0.2000mass%を超
えると焼結性に問題が生じるので、CaO量は0.0200〜0.
2000mass%の範囲で含有させるものとした。なお、SiO2
量が少ない場合には、CaO量は0.0200〜0.1250mass%の
範囲で含有させることが好ましい。
しない Ta2O5, ZrO2, Nb2O5, HfO2等を微量含有させる
ことにより、損失の少ない高性能な電源用MnZn系フェラ
イトとすることができる。しかしながら、発明者らの調
査によれば、含有量の増加に伴って強度が低下するこ
と、しかもかかる強度低下は、添加成分の種類によらず
含有量で決まることが明らかとなった。
破面を観察したところ、粒界での割れよりも粒内での割
れが多いことから、焼結が不足しているためではなく、
結晶粒に応力が加わることに起因しているものと考えら
れる。すなわち、これらの添加成分は、粒界抵抗を高め
る効果があるが、それと同時に結晶粒に対して応力を生
み出していると考えられるのである。もっとも、これら
の添加成分を含んだものでも焼成条件次第ではそれらの
応力を少なくすることは可能である。例えば、焼結を進
ませる焼成初期に、昇温に時間をかけると共に、焼成後
の冷却速度を遅らせることにより、添加成分の粒界偏析
を軽減して結晶粒にかかる歪みを最小限にすることがで
きる。ただし、その場合は、焼成時間が長くなり、実際
の生産工程では能率の面から好ましくない。
研究を重ねた結果、上記した粒界抵抗を高める元素と共
に、Bi2O3 を併せて含有させることが、この問題の解決
に極めて有効であることを突き止めた。このように、粒
界抵抗を高める元素と共に、Bi2O3 を複合含有させるこ
とが、本発明の最大の特徴であり、かくして損失を増大
させることなしに、強度の有利な向上が達成されるので
ある。しかしながら、Bi2O3 含有量があまりに少ないと
強度改善効果がなく、逆に多すぎると異常粒成長を引き
起こして損失の急激な増大を招くことから、Bi2O3 量は
0.0050〜0.0200mass%の範囲で含有させるものとした。
適正含有量については次のとおりである。Ta2O5 は、Si
O2, CaOとの共存下で比抵抗の増大に有効に寄与する
が、含有量が0.0050mass%に満たないとその添加効果に
乏しく、一方 0.1000mass %を超えると逆に損失の増大
を招く。従って、Ta2O5 は0.0050〜0.1000mass%の範囲
で含有させるものとした。より好ましい範囲は0.0100〜
0.0800mass%である。ZrO2は、Ta2O5 と同様、SiO2, Ca
Oとの共存下で、粒界の抵抗を高めて高周波域での損失
の低減に有効に寄与する。抵抗増加の割合は Ta2O5と比
べると幾分低いけれども、損失低減の寄与は大きく、特
に最小温度付近から高温側での損失低減に寄与してい
る。ここに、ZrO2量が0.0100mass%未満ではその効果に
乏しく、一方0.1500mass%を超えると逆に比抵抗を高め
る効果が低減し、損失が増大するので、ZrO2量は0.0100
〜0.1500mass%の範囲とした。より好ましくは、0.0100
〜0.1000mass%の範囲である。Nb2O5 は、SiO2, CaOと
粒界相を形成し、粒界抵抗を高めて損失低減に有効に寄
与する。しかしながら、含有量が0.0050mass%未満では
その効果に乏しく、一方0.0500mass%を超えると過剰に
粒界相に析出し、かえって損失の増大を招くので、Nb2O
5 量は0.0050〜0.0500mass%の範囲に限定した。最も顕
著な効果が得られるのは0.0500〜0.0250mass%の範囲で
ある。HfO2は、ZrO2と同様、粒界抵抗を高める働きがあ
る。しかしながら、あまりに少ないと損失改善効果に乏
しく、一方多すぎると損失が増大するので、0.0050〜0.
0500mass%の範囲に限定した。また、比較的高価な元素
であるので、0.0050〜0.0300mass%の範囲で添加するの
が好ましい。本発明のMnZn系フェライトは、低損失であ
るので、電源用として最適である。
を配合したのち、ボールミルを用いて湿式混合を16時間
かけて行い、その後乾燥した。この混合粉を、大気雰囲
気中にて 970℃、2時間仮焼した。ついで、この仮焼粉
に対し、SiO2,CaC03, Bi2O3, Ta2O5 およびHfO2をそれ
ぞれ、SiO2:0.08mass%、CaC03 :0.13mass%、Bi2O
3 :0.0150mass%、Ta2O5 :0.04mass%およびHfO2:0.
02mass%となるように添加し、再度ボールミルを用いて
湿式混合粉砕した後、乾燥した。この粉末に、5mass%
ポリビニルアルコール水溶液を10mass%加えたのち、造
粒してから、外径:36mm、内径:24mm、高さ:12mmのリ
ングおよび長さ:60mm、幅:12mm、厚さ:6mmの直方体
に成形し、酸素分圧を制御した窒素・空気混合ガス雰囲
気中にて1330℃、3時間の焼成を行った。この時、全体
の焼成時間は10時間であった。
に、巻線を施し(1次側:5巻・2次側:5巻)、周波
数:100 kHz 、最大磁束密度:200 mTの条件下における
損失を、交流BHトレーサーにより0〜120 ℃の温度範
囲にわたって測定した。温度に対する損失の変化を図1
に示す。また、直方体試料は、長さ:50mm、幅:10mm、
厚さ:5mmの直方体に加工し、JIS C 2561で定義された
3点曲げ試験を行った。この強度試験結果を、ZnO量と
の関係で図2に示す。また、比較のため、上に述べた組
成でBi2O3 のみを除外した組成で作製した直方体試料の
強度について測定した結果も併せて示す。
成範囲を満足するものはいずれも、約90℃前後で損失が
最小となり、またその絶対値も小さくなっている。ま
た、図2に示したように、ZnOの増加に伴って強度は変
化するが、本発明の組成範囲内のものは、適正なZnO量
範囲において十分に高い強度が得られたのに対し、Bi2O
3 を除外した組成では、強度が不足している。
のモル比となるように調整した主成分組成について、実
施例1と同様に仮焼粉を作製し、表2で示した各種酸化
物を添加したのち、粉砕、成形したものを、酸素分圧を
制御した窒素・空気混合ガス中にて1200〜1350℃の温度
で2〜6時間焼成した。このようにして得られた焼結体
試料に、実施例1と同様に巻き線を施し、周波数:100k
Hz、最大磁束密度:200 mTの条件下での損失を測定し
た。90℃における損失値Pcvを表2に示す。また、実施
例1と同様に直方体の焼結体試料について3点曲げ強度
試験を行い、その強度σ3bも表2に併せて示す。
成範囲を満足するものはいずれも、低損失であり、また
Bi2O3 の添加効果によって強度も 100×106 N/m2以上と
なっている。
グ電源トランス等の磁心材料に適した、低損失でかつ強
度の高い電源用MnZnフェライトを安定して得ることがで
き、その工業的価値は極めて大きい。
件下での損失を、測定温度をパラメータとして示したグ
ラフである。
の関係を示したグラフである。
Claims (1)
- 【請求項1】 下記の成分組成になる基本成分中に、 Bi2O3 : 0.0050〜0.0200mass%、 SiO2 : 0.0050〜0.0500mass%および CaO : 0.0200〜0.2000mass%と共に、 Ta2O5 : 0.0050〜0.1000mass%、 ZrO2 : 0.0100〜0.1500mass%、 Nb2O5 : 0.0050〜0.0500mass%および HfO2 : 0.0050〜0.0500mass% のうちから選んだ少なくとも一種を含有させたことを特
徴とする電源用MnZn系フェライト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000044081A JP2001233667A (ja) | 2000-02-22 | 2000-02-22 | 電源用MnZn系フェライト |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000044081A JP2001233667A (ja) | 2000-02-22 | 2000-02-22 | 電源用MnZn系フェライト |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2001233667A true JP2001233667A (ja) | 2001-08-28 |
Family
ID=18566903
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2000044081A Pending JP2001233667A (ja) | 2000-02-22 | 2000-02-22 | 電源用MnZn系フェライト |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2001233667A (ja) |
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