JP2019006668A - MnZnNiCo系フェライトおよびその製造方法 - Google Patents

MnZnNiCo系フェライトおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電子部品の電源の小型化、高効率化のために、トランス動作温度(約80℃)まで高い飽和磁束密度を維持したまま、室温〜100℃の広い温度範囲で鉄損の絶対値が小さいMnZnNiCo系フェライト材料を提案する。【解決手段】MnZnNiCo系フェライト材料の基本成分を、Fe2O3、ZnO、NiO、CoOおよびマンガン酸化物とした上で、副成分として、前記基本成分に対しSiO2、CaOおよびNb2O5を所定量含み、さらに、Cl、SrおよびBaをそれぞれ、前記基本成分に対し所定量以下に抑制する。【選択図】なし

Description

本発明は、特にスイッチング電源向けのトランスの磁心に適したMnZnNiCo系フェライトおよびその製造方法に関するものである。
磁性材料は、大きく分けて、酸化物系磁性材料と金属系軟磁性材料とがある。
そして、酸化物系磁性材料は、Ba系フェライトやSr系フェライト等の硬質磁性材料と、MnZn系フェライトやNiZn系フェライト等の軟質磁性材料とに分類される。
上記金属系軟磁性材料は、酸化物系のものと比べて飽和磁束密度が高いという特長を有する反面、電気抵抗が小さい。そのため、高周波領域で使用する場合には、発生する渦電流に起因して鉄損が大きくなってしまうという問題がある。故に、電子機器の小型化・高密度化の要請から使用周波数の高周波化が進んでいる近年において、例えば、100kHz程度の高周波数帯域において用いられるスイッチング電源等においては、金属系軟磁性材料を用いることはほとんどない。
一方、上記酸化物磁性材料のうち、軟質磁性材料は、わずかな磁場に対しても容易に磁化する材料であるため、電源や、通信機器、計測制御機器、磁気記録およびコンピュータなどの広い分野に用いられ、特に、高周波数帯域で用いられる電源用トランスの磁心材料には、鉄損が小さいMnZn系フェライトが主に用いられてきた。
このMnZn系フェライトには、電気抵抗率が0.01〜0.05Ω・m程度と低いため渦電流損が高いという問題があった。そのため、電気抵抗をさらに高めて渦電流損を低減し、全体として鉄損をさらに低減して発熱量を抑えた磁性材料が望まれていた。
この問題に対して、例えば、特許文献1には、MnZn系フェライトに、副成分として酸化カルシウムや酸化ケイ素などの酸化物を微量添加して粒界に偏析させ、粒界抵抗を高めて、全体としての抵抗率を数Ω・m以上と高めることにより解消する技術が開示されている。
さらに、上記電源用としてのMnZn系フェライトは、特に、飽和磁束密度Bsが高いこと、キュリー温度Tcが高いこと、および磁気損失Pcvが低いことが要求されているが、これら飽和磁束密度Bsや、キュリー温度Tcは、ほぼ主成分の組成により決まることが知られている。また、MnZn系フェライトを含む酸化物フェライト化合物は、フェリ磁性を示し、磁気モーメントを有する金属原子の種類ならびにそれが占める位置により飽和磁束密度、キュリー温度が変化することが知られている。
また、酸化物系フェライトの飽和磁束密度は、温度の上昇と共に減少し、磁気が消失する温度であるキュリー温度でゼロとなるので、キュリー温度が高いほど、室温からトランス動作温度までの飽和磁束密度を高く維持できることが知られている。なお、飽和磁束密度に関する技術としては、例えば、特許文献2に、Fe23量を増やすことにより飽和磁束密度を高めることができる旨開示されている。
しかしながら、近年、電子機器の電源部分は、小型化の要請に応えるために、各種部品が、さらに高密度に積載される傾向にある。そして、かかる高密度な積載状態では、各種部品の発熱により、フェライトコアが使用される温度、すなわちトランスの動作温度は、80℃にも達する。
そして、上記特許文献2に記載された技術では、80℃という高温での動作に関しては特に言及がなされていない。
ここで、フェライトの鉄損を支配する因子の1つに、磁気異方性定数K1がある。鉄損は、この磁気異方性定数K1の温度変化にともなって変化し、K1=0となる温度で極小となる。したがって、フェライトの鉄損の温度変化を小さくするには、磁気異方性定数K1の温度依存性(鉄損温度係数)を小さくする必要がある。
磁気異方性定数K1は、主相であるフェライトのスピネル化合物を構成する元素の種類によりほぼ決定され、MnZn系フェライトの場合、Coイオンを導入することによりその温度依存性を小さくし、鉄損温度係数の絶対値を小さくすることができる(例えば、非特許文献1および2参照)。これにより、室温〜100℃付近での鉄損が小さく、かつ、その前後の温度範囲でも鉄損が比較的小さいフェライト材料を得ることが可能となる。
かかる技術に関しては、例えば、特許文献3には、Fe23、ZnO、MnOを主成分とし、CoOを0.01mol%以上0.5mol%未満含有するMnZnCo系フェライトは、従来以上に広い温度範囲でK1=0となり、高い透磁率と低い損失が広い温度範囲で実現できることが開示されている。
また、特許文献3に記載されたフェライトでは、同文献の第1図に示されているように、コア損失の極小温度が低温度側に移行した事例が紹介されている。
特公昭36−002283号公報 特開平11−329822号公報 特公平04−033755号公報
「The Effect of Cobalt subusutitutions on some properties of manganese zinc ferrites」,A.D.Giles and F.F.Westendorp:J.Phys.D:Appl.Phys.9(1976)2117 「Low−loss Power Ferrites for frequencies up to 500kHz」,T.G.W.Stijintjes and J.J.Roelofsma;Adv.Cer.16(1986)493
しかし、特許文献3に記載のようにCoを加えることは、含有される不純物の影響によって、焼成温度や焼成雰囲気の酸素濃度の僅かな変動に起因して、鉄損温度係数や鉄損が極小となる温度が変動したり鉄損値が大きく劣化したりするという別の問題が生じることがある。
また、上記したような従来技術(特許文献1〜3)では、電子部品の電源の小型化、高効率化のために必要な、トランス動作温度まで高い飽和磁束密度を維持したまま、室温〜100℃の広い温度範囲で低損失を示す、と言った特性を有するフェライト材料はいずれも実現できていない。
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、電子部品の電源の小型化、高効率化のために、トランス動作温度(80℃)まで475mT以上の高い飽和磁束密度を維持したまま、室温〜100℃の広い温度範囲で鉄損の絶対値が小さいMnZnNiCo系フェライト材料を提供することにある。
発明者らは、従来技術が抱える上記問題点を解決するため、基本成分であるFe23、ZnO、NiO、CoOおよびMnOといった基本成分の含有量が、飽和磁束密度や鉄損、およびそれらの温度特性に及ぼす影響について調査すると共に、添加成分である種々の金属酸化物が、飽和磁束密度や鉄損、およびそれらの温度特性に及ぼす影響について鋭意研究を重ねた。
その結果、MnZnNiCo系フェライトにおける上記基本成分を適性範囲に制御した上で、その範囲に応じて、添加成分である副成分の選択とその量を適正範囲に制御すること、さらに、特定の元素の含有量を低減する必要があることを見出した。
特に、フェライト原料である酸化鉄として、Cl含有量が 500mass ppm以下の酸化鉄を用いると共に、最終焼結体中のCl含有量を80mass ppm以下に抑制することが、本発明の効果の発現に極めて有効であることを見出し、本発明を完成させた。また、かかる効果の発現には、Srの含有量が10.0mass ppm以下、Baの含有量が10.0mass ppm以下である必要があることも併せて見出した。
本発明は、上記の知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたもので、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.基本成分、副成分および不可避的不純物からなるMnZnNiCo系フェライトであって、
基本成分を、
Fe23:53.00〜57.00mol%、
ZnO:4.00〜11.00mol%、
NiO:0.50〜4.00mol%および
CoO:0.10〜0.50mol%
残部はMnO
として含み、
副成分を、前記基本成分に対し、
SiO2:50〜500mass ppm、
CaO:200〜2000mass ppmおよび
Nb25:50〜500mass ppm
として含み、
さらに、前記不可避的不純物におけるCl、SrおよびBaをそれぞれ、前記基本成分に対し
Cl:80mass ppm以下、
Sr:10.0mass ppm以下および
Ba:10.0mass ppm以下
に抑制して含むことを特徴とするMnZnNiCo系フェライト。
2.80℃における磁化力1200A/mでの飽和磁束密度が475mT以上であって、最大磁束密度が200mTで周波数が100kHzのとき、鉄損極小温度が60〜100℃の温度範囲にあり、60および100℃における鉄損が400kW/m3以下で、鉄損極小温度での鉄損が350kW/m3以下であることを特徴とする前記1に記載のMnZnNiCo系フェライト。
3.前記MnZnNiCo系フェライトの焼結密度が4.90〜4.96Mg/m3であることを特徴とする前記1または2に記載のMnZnNiCo系フェライト。
4.基本成分となるFe、Zn、Ni、CoおよびMn原料を、混合し、仮焼して、粉砕した後、さらに副成分となるSi、CaおよびNb原料を混合して、粉砕し、次いで、成形し、焼成する一連の工程を含むMnZnNiCo系フェライトを製造する方法であって、
前記Fe原料が酸化鉄であり、該酸化鉄中のCl含有量が500mass ppm以下の酸化鉄であることを特徴とするMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
5.前記焼成の最高温度を1280〜1360℃の範囲とすることを特徴とする前記4に記載のMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
6.前記MnZnNiCo系フェライトが前記1〜3に記載のいずれかであることを特徴とする前記4または5に記載のMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
本発明によれば、80℃といった高温でも475mT以上と飽和磁束密度が高く、かつ広い温度範囲で磁気損失の小さいMnZnNiCo系フェライトを提供することができる。
また、本発明は、飽和磁束密度が高いので、電源駆動時のトランスの磁束密度変化を大きくすることが可能となる。その結果、電源トランスを小型化し、低鉄損化することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のMnZnNiCo系フェライトは、飽和磁束密度、キュリー温度、鉄損および鉄損の温度特性を最適化する観点から、Fe23、ZnO、NiOおよびCoOを以下の適正量含み、残部がMnOからなる基本成分を有するものである。
まず、本発明のMnZnNiCo系フェライトの基本成分について具体的に説明する。
Fe23:基本成分中53.00〜57.00mol%
Fe23は、80℃の飽和磁束密度を475mT以上とするために、基本成分中のmol比率で53.00mol%以上とする必要がある。一方、Fe23は、基本成分中のmol比率で57.00mol%を超えると、鉄損が大きくなり過ぎる。そのため、上限を57.00mol%とする。好ましくは、54.50〜56.50mol%の範囲である。
ZnO:基本成分中4.00〜11.00mol%
ZnOは、鉄損を小さくし、かつ、鉄損極小温度を60〜100℃に維持するためには、その添加量を基本成分中のmol比率で4.00〜11.00mol%の範囲とする必要がある。好ましくは、6.00〜8.00mol%の範囲である。
NiO:基本成分中0.50〜4.00mol%
NiOは、80℃の飽和磁束密度を475mT以上とし、かつ、鉄損を小さくし、さらに、鉄損極小温度を60〜100℃に維持するためには、その添加量を基本成分中のmol比率で0.50〜4.00mol%の範囲とする必要がある。好ましくは、1.50〜3.50mol%の範囲であり、さらに好ましくは1.00〜3.00mol%の範囲である。
CoO:基本成分中0.10〜0.50mol%
CoOは、特公昭52-4753号公報に記載されたように、透磁率の温度係数を小さくする働きもある。しかしながら、CoOを過剰に含む場合、鉄損の温度係数が室温以上で正となって熱暴走を起すだけでなく、経時変化が大きくなって望ましくない。よって、CoOは、基本成分中のmol比率で0.50mol%を上限とする。一方、CoOは、添加量が少ないと温度係数の改善効果が小さくなって、鉄損値の改善が望めない。よって、CoOは、基本成分中のmol比率で0.10mol%を下限とする。
本発明のフェライトは、MnZnNiCo系フェライトであり、上記Fe23、ZnO、NiOおよびCoO以外の基本成分の残部は、マンガン酸化物(MnO)である。MnOの好ましい範囲は基本成分中のmol比率で31.50〜40.00mol%であり、さらに好ましくは31.80〜39.80mol%である。
以上、本発明のMnZnNiCo系フェライトの基本成分について説明したが、本発明の、MnZnNiCo系フェライトは、上記基本成分のほかに、以下の添加成分を副成分として含有する必要がある。すなわち、本発明のフェライトの基本成分であるFe23、ZnO、MnO、NiOおよびCoOは、スピネル構造を形成するものであるが、これに、スピネルを形成しないSiO2、CaOおよびNb25等の副成分を複合添加して、より鉄損の小さい高性能のMn−Zn系フェライトとすることができる。なお、スピネルを形成しないTa25、ZrO2およびV25等の成分をさらに微量添加してもよい。
SiO2:前記基本成分に対して50〜500mass ppm
SiO2は、CaOと共に粒界に高抵抗相を形成して、鉄損の低減に寄与する。しかし、添加量が50mass ppm未満ではその添加効果は小さい。一方、500mass ppmを超えて含有すると、焼結時に異常粒成長を起こして鉄損を大幅に増大させる。したがって、SiO2は、前記基本成分に対して50〜500mass ppmの範囲で添加する必要がある。なお、焼結体組織中の異常粒の発生を確実に防止するには50〜300mass ppmの範囲が好ましい。
CaO:前記基本成分に対して200〜2000mass ppm
CaOは、SiO2と共存した場合、粒界抵抗を高めて低鉄損化に寄与するが、添加量が200mass ppm未満では、その効果は小さい。一方、2000mass ppmより多くなると、鉄損は逆に増大する。したがって、CaOは、前記基本成分に対して200〜2000mass ppmの範囲で添加する必要がある。より低鉄損なフェライトを得るためには、CaOは、200〜1500mass ppmの範囲が好ましい。
Nb25:前記基本成分に対して50〜500mass ppm
Nb25は、SiO2およびCaOの共存下で、比抵抗の増大に有効に寄与するが、含有量が50mass ppmに満たないと、その添加効果に乏しい。一方、500mass ppmを超えると、逆に鉄損の増大を招くことになる。したがって、Nb25は、前記基本成分に対して50〜500mass ppmの範囲で添加する必要がある。より低鉄損なフェライトを得るためには、Nb25は、50〜300mass ppmの範囲が好ましい。
次に本発明における不可避的不純物について説明する。
本発明におけるMnZnNiCo系フェライトの上述した以外の成分は、不可避的不純物である。この不可避的不純物は、Cl、Sr、Ba、P、Al、ホウ素および硫黄等が例示される。そして、以下に記載するように、Cl、SrおよびBaは、特に、所定量以下に抑制される成分である。なお、不可避的不純物の含有量は少なければ少ないほどよく、0mass %であっても良いが、工業的には0.01mass %以下程度が好ましい。
Cl:80mass ppm以下
焼結体組織中の異常粒の発生や、結晶粒の粒度分布ばらつきなどを抑制し、焼結体コアの密度向上による飽和磁束密度の低下を抑制するには、原料酸化鉄中のClを500mass ppm以下に低減すると共に、焼成後の最終焼結体、すなわち、MnZnNiCo系フェライト中に残存するCl量を80mass ppm以下に抑制する必要がある。
Sr:10.0mass ppm以下、Ba:10.0mass ppm以下
上述したように、本発明のMnZnNiCo系フェライトは、基本成分であるFe23、ZnO、MnO、NiOおよびCoOの組成を上記範囲に制御することに加えて、副成分としてSiO2、CaOおよびNb2Oを、適正量、複合添加することが必要である。しかし、60〜100℃の温度域で、低鉄損を安定して実現するには、さらに微量成分として含有されるClに加えて、SrおよびBaの含有量を制限することが必要である。
ここで、SrやBaは、スピネル構造を取らず、六方晶系フェライト、いわゆるハードフェライトを形成するときに用いられる元素である。これらSrやBaが、最終焼結体であるMnZnNiCo系フェライトの磁気特性、特に60〜100℃の温度域での鉄損や透磁率に影響を及ぼす機構については、まだ明確に解明されたわけではないが、発明者らは以下のように考えている。すなわち、本発明のMnZnNiCo系フェライトのように磁気異方性に大きな影響を及ぼすCoが含有されている場合は、Coとの相互作用が発現して鉄損値が低減しにくくなるからと考えられる。
本発明のように、60〜100℃の温度域で低鉄損を実現するには、SrおよびBaの含有量は、それぞれ10.0mass ppm以下とする必要があり、10.0mass ppmを超えて含有されていると、所定の低鉄損値が得られない。よって、SrおよびBaの含有量は10.0mass ppm以下の範囲に抑制する。さらに低鉄損を実現するには、SrおよびBaの含有量は7.0mass ppm以下の範囲に抑えるのが好ましい。
また、SrおよびBaについては、主成分の原料である酸化鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、および酸化マンガン(MnO)に含まれることがある。そのため、SrおよびBaの含有量の異なる種々の酸化鉄、酸化亜鉛および酸化マンガン原料の使用量を調整することで、SrおよびBaの含有量を調整しても良い。
次に、本発明におけるMnZnNiCo系フェライトの製造方法について、説明する。
本発明のMnZnNiCo系フェライトは、まず、Fe、Zn、Ni、CoおよびMn原料となる、Fe23、ZnO、MnO、NiOおよびCoOの粉末原料を、本発明に規定する所定比率となるように秤量し、これらを十分に混合して仮焼し、粉砕して仮焼粉を得る。
この際、Fe原料である酸化鉄(Fe23)中のCl含有量を500mass ppm以下に抑制することが肝要である。そのためには、たとえば塩化鉄の焙焼法で得られた酸化鉄を洗浄するなどの方法で調整する。なお、フェライト用酸化鉄中のCl含有量は、JIS K1462(1981年)で0.15%(=1500mass ppm)以下とされているが、本発明ではさらに低減することが肝要である。
次いで、上記仮焼粉に、前述した副成分を、本発明に規定する所定の比率となるように加えて混合し、さらに粉砕する。この粉砕作業においては、添加した成分の濃度に偏りがないよう、充分に均質化する必要がある。その後、粉砕した仮焼粉の粉末に、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを添加して、造粒し、さらに圧力を加えて所定の形状に成形し、次いで、焼成して焼結体(製品)とする。
なお、前記焼成の好ましい条件は、焼成中の最高温度が1280〜1360℃の範囲(より好ましくは1300〜1350℃)、該最高温度での保持時間が3〜8時間、該最高温度での酸素濃度が1〜5vol%である。また、前記焼成のその他の条件は常法に従えば良い。
かくして得られたMnZnNiCo系フェライトは、従来のMnZn系フェライトではその実現が極めて困難であった、80℃における磁化力1200A/mでの飽和磁束密度が475mT以上で、かつ最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損が最小となる温度(本発明において鉄損極小温度ともいう)が60〜100℃の範囲にあり、さらには60および100℃における鉄損が400kW/m3以下で、鉄損極小温度での鉄損が350kW/m3以下の特性を有し、トランス動作温度(80℃)まで475mT以上の高い飽和磁束密度を維持したまま、室温〜100℃の広い温度範囲で鉄損の絶対値が小さい本発明のMnZnNiCo系フェライトとなる。
その他の、MnZnNiCo系フェライト粉を製造する工程および焼結体(MnZnNiCo系フェライト)を製造する工程は、特に限定はなく、いわゆる常法に従えば良い。
以下、本発明について確認した実施例について説明する。
Fe23、ZnO、MnO、NiOおよびCoOを、表1および表2に示す種々の組成となるように原料を混合した。なお、これら原料は不純物の含有量が異なるものを使用した。
上記混合後、930℃で3時間の仮焼を行い、粉砕し、仮焼粉を得た。この得られた仮焼粉に、副成分としてSiO2、CaOおよびNb25を、表1および表2に示した量となるように添加し、ボールミルで10時間粉砕した。ついで、この粉砕粉にバインダーとしてポリビニルアルコールを添加し、造粒して造粒粉とした後、この造粒粉を、外径:36mm、内径:24mm、高さ:12mmのリング状に成形して成形体とした。その後、この成形体に、酸素分圧を1〜5vol%の範囲に制御した窒素と空気の混合ガス中、表1および表2に示した最高温度で3時間の焼成を施し、リング状試料(フェライト焼結体)を得た。なお、表1および表2における、酸化鉄中のCl量、焼結体中のCl量、Sr量、Ba量は蛍光X線分析により常法に従い測定し、焼結密度は上記リング状試料をアルキメデス法に従い測定した。また、上記焼成において、500〜1300℃までの昇温速度を650℃/hとした。
上記のようにして得たリング状試料に、1次側20巻・2次側40巻の巻線を施し、20〜200℃において、直流BHループトレーサーで1200A/mの磁界をかけたときの磁束密度を測定した。この大きさの磁界では、磁束はほぼ飽和しており、この時の磁束密度の値が飽和磁束密度と考えられるからである。
また、1次側5巻・2次側5巻の巻線を施し、交流BHループトレーサーを用いて、温度を変化させて周波数100kHzで磁束密度200mTまで励磁したときの鉄損を測定した。
上記測定結果に基づき、フェライト焼結体の密度、80℃での飽和磁束密度、鉄損極小温度、および60、100℃における鉄損値を、それぞれ表1および表2に記載した。ここで、表1のNo.1-1〜1-28は、本発明に適合する成分組成を有し焼成の最高温度を1260℃、1280℃、1300℃、1330℃、1360℃および1380℃のいずれかとする発明例を、一方、表2のNo.2-1〜2-26は、本発明の範囲から外れた比較例を示したものである。
同表からわかるように、Fe23、ZnO、MnO、NiOおよびCoOの基本成分とSiO2、CaOおよびNb25の副成分の組成をそれぞれ適切に選んだ上で、フェライト原料である酸化鉄として、Cl含有量が 500mass ppm以下の酸化鉄を用いると共に、最終焼結体中のCl含有量を80mass ppm以下に抑制し、さらに、SrおよびBaを10.0mass ppm以下に制御した発明例のMnZnNiCo系フェライトは、いずれも、80℃の飽和磁束密度が475mT以上となっている。また、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が60〜100℃の範囲になっている。さらに、60および100℃における鉄損は400kW/m3以下で、鉄損極小温度における鉄損は350kW/m3以下となっている。
これらのことから、本発明に従えば、飽和磁束密度を高く維持したまま、60〜100℃の温度域で鉄損の低いMnZnNiCo系フェライト材が得られることが分かる。
一方、本発明の成分組成をいずれか満たさない比較例のMnZnNiCo系フェライトは、いずれも、80℃の飽和磁束密度が475mT以下か、60℃または100℃で鉄損値が400kW/m3を超えている。また、鉄損極小温度での鉄損値は、いずれも、350kW/m3を超えたものしか得られていない。
Figure 2019006668
Figure 2019006668
本発明は、80℃といった高温でも475mT以上と飽和磁束密度が高く、広い温度範囲で磁気損失の小さいMnZnNiCo系フェライトを提供することができるので、車載機器や産業機器などのように、幅広い温度域で高特性が要求される電源トランスコアやチョークコイル等に広く応用することができる。

Claims (6)

  1. 基本成分、副成分および不可避的不純物からなるMnZnNiCo系フェライトであって、
    基本成分を、
    Fe23:53.00〜57.00mol%、
    ZnO:4.00〜11.00mol%、
    NiO:0.50〜4.00mol%および
    CoO:0.10〜0.50mol%
    残部はMnO
    として含み、
    副成分を、前記基本成分に対し、
    SiO2:50〜500mass ppm、
    CaO:200〜2000mass ppmおよび
    Nb25:50〜500mass ppm
    として含み、
    さらに、前記不可避的不純物におけるCl、SrおよびBaをそれぞれ、前記基本成分に対し
    Cl:80mass ppm以下、
    Sr:10.0mass ppm以下および
    Ba:10.0mass ppm以下
    に抑制して含むことを特徴とするMnZnNiCo系フェライト。
  2. 80℃における磁化力1200A/mでの飽和磁束密度が475mT以上であって、最大磁束密度が200mTで周波数が100kHzのとき、鉄損極小温度が60〜100℃の温度範囲にあり、60および100℃における鉄損が400kW/m3以下で、鉄損極小温度での鉄損が350kW/m3以下であることを特徴とする請求項1に記載のMnZnNiCo系フェライト。
  3. 前記MnZnNiCo系フェライトの焼結密度が4.90〜4.96Mg/m3であることを特徴とする請求項1または2に記載のMnZnNiCo系フェライト。
  4. 基本成分となるFe、Zn、Ni、CoおよびMn原料を、混合し、仮焼して、粉砕した後、さらに副成分となるSi、CaおよびNb原料を混合して、粉砕し、次いで、成形し、焼成する一連の工程を含むMnZnNiCo系フェライトを製造する方法であって、
    前記Fe原料が酸化鉄であり、該酸化鉄中のCl含有量が500mass ppm以下の酸化鉄であることを特徴とするMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
  5. 前記焼成の最高温度を1280〜1360℃の範囲とすることを特徴とする請求項4に記載のMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
  6. 前記MnZnNiCo系フェライトが請求項1〜3に記載のいずれかであることを特徴とする請求項4または5に記載のMnZnNiCo系フェライトの製造方法。
JP2018094883A 2017-06-23 2018-05-16 MnZnNiCo系フェライトおよびその製造方法 Active JP6964556B2 (ja)

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