JP2008143744A - MnCoZnフェライトおよびトランス用磁心 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基本成分と添加成分と不純物とからなるフェライトであって、基本成分組成が、Fe2O3:51.0〜53.0mol%、ZnO:13.0〜18.0mol%、CoO:0.04〜0.60mol%および残部MnOからなり、添加成分として、全フェライトに対してSiO2:0.005〜0.040mass%、CaO:0.020〜0.400mass%を含有し、さらに不純物として含有するPおよびBの量が、全フェライトに対してP:3massppm未満、B:3massppm未満であり、平均粉砕粒径が1.00〜1.30μmであるMnCoZnフェライト。
【選択図】なし
Description
Fe2O3:51.0〜53.0mol%
Fe2O3は、基本成分の中で最も重要な成分であり、このFe2O3の量が少ない場合には、低温度域における直流磁場印加下での実効透磁率が低下する。そのため、Fe2O3は、51.0mol%以上含有する必要がある。逆に、多過ぎる場合には、高温度域における直流磁場印加下での実効透磁率が低下するため、上限は53.0mol%とする必要がある。なお、上記Fe2O3の含有量は、フェライトに含まれるFeをすべてFe2O3として換算した値である。
ZnOは、基本成分の1つであり、直流磁場印加下での実効透磁率を上昇させる効果があり、最低でも13.0mol%は含有させる必要がある。しかし、ZnOの含有量が適正量を超えると、低温における直流磁場印加下での実効透磁率が低下し、また、強磁性体が磁性を失う温度であるキュリー温度が低下するため、高温における直流磁場印加下での実効透磁率も低下する。よって、ZnOの上限は、18.0mol%とする。
CoOは、正の磁気異方性を有する成分であり、このCoOの添加によって初めて、直流磁場印加下でも、−40〜85℃という広い温度領域において、高い実効透磁率を実現することができる。この効果を得るためには、CoOは、最低でも0.04mol%含有する必要がある。しかし、適正量よりも多くなると、逆に、全温度域における直流磁場印加下での実効透磁率を低下させるようになることから、上限は、0.60mol%とする。
本発明に係るフェライトは、MnCoZn系であり、基本成分の残部は、MnOである。このMnOは、33A/mの直流磁場印加下で、2300以上という高い実効透磁率を得るためには必須の成分である。なお、上記MnOの含有量は、フェライトに含まれるMnをすべてMnOとして換算した値である。
SiO2:0.005〜0.040mass%
SiO2は、フェライトの結晶組織を均一化する効果と、結晶粒内に残留する空孔を減少させて結晶粒界の生成を促し、結晶粒成長を抑制する効果を有する成分であり、初透磁率を適度に低下させて、直流磁場印加下でも高い実効透磁率を実現するためには必須の添加成分である。上記効果を得るためには、SiO2は最低でも0.005mass%含有する必要がある。しかし、SiO2の添加量が多すぎる場合には、反対に異常粒が出現し、直流磁場印加下での実効透磁率の値を著しく低下させる。よって、SiO2の含有量は、0.040mass%以下に収める必要がある。
CaOは、MnCoZnフェライトの結晶粒界に偏析する成分であり、これによって、結晶粒成長を抑制する効果を有することから、適量を添加することによって初透磁率μiを適度に低下させ、ひいては、直流磁場印加下での高い実効透磁率の実現に寄与することができる。そのためには、CaOは、最低でも0.020mass%を含有する必要がある。しかし、添加量が多過ぎると、異常粒が出現し、直流磁場印加下での実効透磁率を逆に著しく低下させることから、0.400mass%以下に収める必要がある。
P:3massppm未満
Pは、Fe2O3の原料となる酸化鉄中に不可避に含まれる成分である。このPは、フェライトの結晶粒成長を促進して初透磁率を上昇させ、ひいては直流磁場印加下での実効透磁率の低下を招く有害成分である。Pの含有量が3massppm未満であれば、上記弊害は無視できるが、3massppm以上となると、フェライトの結晶粒成長が促進されて、初透磁率が上昇し、直流磁場印加下での実効透磁率の低下が起こるようになる。さらに過多に含有する場合には、異常粒成長を誘発し、直流磁場印加下での実効透磁率を著しく低下させる。よって、フェライト結晶粒の成長を抑制し、異常粒成長を防止するためには、Pの含有量は、3massppm未満に制限する必要がある。
Bは、フェライトの製造工程において、不可避に混入してくる不純物であり、一旦混入した場合には、焼成等の途中工程で除去するのが難しい成分である。また、発明者らの調査では、Bは、フェライトの異常粒成長と密接な関係があり、異常粒成長を完全に防止するためには、その含有量は3massppm未満に規制する必要がある。
MnZnフェライトは、所望の組成が得られるよう秤量した各種原料粉を混合し、一旦仮焼したのちこれを粉砕し、この粉砕粉をさらにバインダー等を加えて造粒したのち成形し、その後、焼成して最終製品とする、いわゆる、粉末冶金的手法を用いて製造されるのが普通である(参考文献:平賀,奥谷,尾島:「フェライト」、丸善株式会社(1986),44)。
これらの添加成分は、いずれも高い融点を持つ化合物であり、MnCoZnフェライトに添加した場合には、結晶粒を小さくする働きを有することから、粗大な結晶粒の生成を抑制し、直流磁場印加下での実効透磁率を上昇させる効果がある。この効果は、上記添加成分の単独添加でも、複合添加でも得ることができる。しかし、添加量が上記適正範囲より少ない場合は、その効果が得られず、一方、多過ぎる場合には、異常粒の発生を引き起こし、直流磁場印加下での実効透磁率を大きく低下させる。よって、上記任意の添加成分の添加量は、それぞれ上記の範囲内に収めることが望ましい。
本発明のMnCoZnフェライトは、まず基本成分が本発明が規定する所定の比率となるようFe2O3,ZnO,CoOおよびMnOの粉末原料を秤量し、これらを十分に混合したのち仮焼し、得られた仮焼粉を粉砕する。そして、上述した添加成分を加える場合には、それらを本発明が規定する所定の比率となるよう仮焼粉に加えて、さらに粉砕する。この粉砕作業においては、添加した成分の濃度に偏りがないよう、粉末に充分な均質化を施すとともに、仮焼粉の平均粒径を、本発明が規定する大きさまで微細化する必要がある。その後、粉砕した仮焼粉の粉末に、ポリビニルアルコール等の有機物バインダーを添加し、造粒し、圧力を加えて所定の形状に成形し、その後、適宜の条件下で焼成し、製品とする。
これに対して、Fe2O3が53.0mol%より多い比較例(試料番号1−1)は、85℃でのμが2300未満に低下している。反対に、Fe2O3を51.0mol%未満しか含まない比較例(試料番号1−2)は、−40℃でのμが2300未満に低下している。
また、CoOを含まない比較例(試料番号1−4)は、−40℃および85℃におけるμが2300に達していない。反対に、CoOを多量に含む比較例(試料番号1−6)は、全温度域でのμが低下し、−40℃,70℃および85℃で、μが2300未満に低下している。
また、ZnOを多量に含む比較例(試料番号1−7)は、−40℃,70℃および85℃でのμが2000未満に低下している。また、ZnO量が不足している比較例(試料番号1−8)でも、全温度域でμが低下し、やはり−40℃,70℃および85℃におけるμが2300未満にまで低下している。
また、SiO2およびCaOに着目すると、これらの一方でも適量範囲よりも少ない比較例(試料番号1−10,1−11)では、粗大な結晶粒が出現したため、全温度域で、μが発明例と比較して低下し、−40℃,85℃でのμが2300未満である。また、反対に、どちらか一方でも適量よりも多く含有している比較例(試料番号1−13,1−14,1−15)では、異常粒が出現した結果、実効透磁率は全温度域において、大幅に劣化している。
これに対して、PあるいはBのいずれか一方でも、3massppm以上含む比較例(試料番号2−1〜2−7)は、いずれも粗大な結晶粒が出現したため、33A/mの直流磁場印加下での実効透磁率は低下し、2300を切っている。さらに、Pおよび/またはBを30massppm以上含む比較例(試料番号2−4,2−6,2−7)では、異常粒成長が認められ、実効透磁率は全温度域において、大幅に低下している。
これに対して、平均粉砕粒径が本発明の範囲よりも細かい比較例3−1,3−2では、異常粒成長の発生により、実効透磁率が全温度域で大幅に低下している。逆に、平均粉砕粒径が本発明の範囲よりも大きい比較例3−7,3−8では、粉砕粉の反応性が低く、粒成長が過度に抑制された結果、フェライト結晶粒の粒径が小さく、初透磁率μiが過度に低下したため、やはり実効透磁率が全温度域で低下している。
これに対して、これら4成分のうちの1種類でも適正範囲を超えて多量に含有している比較例(試料番号4−16〜4−18)は、いずれも異常粒成長が発生し、実効透磁率は全温度域において大幅に低下している。
Claims (4)
- 基本成分と添加成分と不純物とからなるフェライトであって、基本成分組成が、Fe2O3:51.0〜53.0mol%、ZnO:13.0〜18.0mol%、CoO:0.04〜0.60mol%および残部MnOからなり、添加成分として、全フェライトに対してSiO2:0.005〜0.040mass%、CaO:0.020〜0.400mass%を含有し、さらに不純物として含有するPおよびBの量が、全フェライトに対してP:3massppm未満、B:3massppm未満であり、平均粉砕粒径が1.00〜1.30μmであることを特徴とするMnCoZnフェライト。
- 添加成分としてさらに、全フェライトに対して、ZrO2:0.005〜0.075mass%、Ta2O5:0.005〜0.075mass%、HfO2:0.005〜0.075mass%、Nb2O5:0.005〜0.075mass%のうちから選ばれる1種または2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載のMnCoZnフェライト。
- 33A/mの直流磁場印加時のフェライトの実効透磁率が、−40〜85℃の温度域において常に2300以上の値を示すことを特徴とする請求項1または2に記載のMnCoZnフェライト。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載のMnCoZnフェライトを用いたことを特徴とするトランス用磁心。
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