JP2001224336A - 食感の改善された食肉加工食品 - Google Patents

食感の改善された食肉加工食品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】肉汁感とソフトな食感を有し、かつ、加熱時の
歩留まり(保水性)が向上した食肉加工食品を提供す
る。 【解決手段】食肉加工食品に乳清蛋白質、増粘多糖類及
びアルカリ性塩類を含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食肉加工食品に関す
る。詳細には、肉汁感とソフトな肉感を有し、かつ、加
熱時も歩留まり(保水性)が向上した食肉加工食品に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ハム、ソーセージ等の食肉製
品、ハンバーグ、鶏のからあげ、しゅうまいやギョーザ
等の食肉を使用した惣菜類等の食肉加工食品について、
食肉の結着性、加熱時の歩留まりの著しい低下、及び食
感等が問題となっている。
【0003】これら食肉の結着性向上や加熱時の歩留ま
りの向上を目的として、ピロリン酸塩類やポリリン酸塩
類などのいわゆる重合リン酸塩類を添加することが一般
的になされている。しかし、重合リン酸塩の使用に伴う
廃水問題等が論じられ、重合リン酸塩を含まない食肉加
工食品が要望されている。
【0004】その一方、食肉加工食品の食感について、
例えばソーセージ類では、肉感のとぼしいネチャつく食
感となり、鶏のからあげ等では、硬く、パサパサとした
肉汁感のない食感となっていることも問題となってい
る。上述の重合リン酸塩を使用した食肉加工食品では、
強い弾力を有するため、近年の食感のソフト化指向に合
わず、肉汁感があり、ソフトな肉感の食肉加工食品が要
望されていた。
【0005】これを解決するための方法として、ソーセ
ージ等の食肉製品では、使用する食肉原料の配合割合を
増やしたり、塩可溶性蛋白質の増加を目的として、食塩
の添加量を増やす方法等が行われてきたが、前者はコス
トが高くなる為経済的に有効でなく、後者は塩辛くなっ
てしまい、かつ、減塩指向の中でナトリウムの過剰摂取
が問題となり、いずれも有効な方法とはいえず、さら
に、両方法とも肉汁感やソフトな肉感を有する食感は十
分に達成できなかった。
【0006】また、大豆蛋白質や卵蛋白質等の強いゲル
化能を有する、いわゆる食肉以外の異種蛋白質を添加す
る方法もあるが、これでは硬い食感となり、肉汁感があ
りソフトな肉感は達成できなかった。
【0007】更に、畜肉をクエン酸ナトリウム水溶液と
一定時間接触させ、クエン酸ナトリウムを肉中に浸透さ
せた後、ボイルすることを特徴とするボイル肉の食感改
善方法(特開平6−121654号)や、生肉にリン酸
三ナトリウムを含浸させた後、加熱するという肉の処理
方法(特開昭58−23767号)がある。しかし、こ
れらの方法でも、調味液を吸水浸透させ、中心温度80
℃程度までフライする鶏のからあげ等のフライ食品で
は、フライ歩留まりが悪く、肉汁感を有し、ソフトな肉
感のものとはならず、いずれも有効な方法とは言えなか
った。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑みて開発されたものであり、近年の食感のソフト化
指向の中で、重合リン酸塩添加による特有の強い弾力の
食感ではなく、肉汁感がありソフトな食感となり、か
つ、加熱時の歩留まりが良い食肉加工食品を提供する事
を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、乳清蛋白質、増粘
多糖類及びアルカリ性塩類を含むことにより、出来上が
った食肉加工食品は、重合リン酸塩では出すことのでき
ない肉汁感があり、ソフトな肉感を有する食感となり、
かつ、加熱歩留まりがよくなることを見つけた。
【0010】本発明はかかる知見に基づいて完成された
ものである。すなわち、本発明は、乳清蛋白質、増粘多
糖類及びアルカリ性塩類を含むことを特徴とする、食感
の改善された食肉加工食品に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、乳清蛋白質、増粘多糖
類及びアルカリ性塩を含むことにより、出来上がった食
肉加工食品は、食感が肉汁感があり、ソフトな肉感を有
するものであり、かつ、加熱時の歩留まりも向上したも
のである。
【0012】本発明で食肉加工食品とは、ハム、ソーセ
ージ等の食肉製品、からあげ、とんかつ、ハンバーグ、
及び、肉ギョーザ、肉シューマイ等の食肉を使用した惣
菜類等をいう。
【0013】本発明で食肉とは、牛肉、豚肉などの畜
肉、鶏肉等の家禽肉など食肉に適する動物肉をいい、食
用に適した肉類であれば特に制限は無い。
【0014】本発明で用いる乳清蛋白質は、牛乳由来の
乳清を原料としたものが好ましく、更に、乾物換算で蛋
白質含有量が80%以上のものがより好ましい。例え
ば、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質単離物
(WPI)等が挙げられるが、簡便には商業的に入手す
ることができ、かかるものとして例えば、三栄源エフ・
エフ・アイ株式会社製のミルプロWG−900、ミルプ
ロL−1(製品名)を挙げることができる。
【0015】これら乳清蛋白質の中でも、特に低ゲル強
度のものが好ましい。本発明でいう低ゲル強度の乳清蛋
白質とは、乳清蛋白質15%水溶液を80℃に加熱した
後、4℃に冷却後のゲル強度が、カード値で4N/cm
2以下のものをいう。具体的なゲル強度の測定方法は次
のものが挙げられる。乳清蛋白質30gを170mlの
イオン交換水に添加し、1400〜1500rpmで3
分間攪拌、溶液の泡を除去し、無通気性のケーシングチ
ューブに充填し、80℃40分間ボイル後、4℃で一晩
静置したものを約3センチの厚さに切断し、カードメー
ターにて測定(重り200g、プランジャー φ3m
m)カード値を測定する方法等がある。
【0016】本発明で増粘多糖類とは、食品添加物とし
て使用可能である限り特に限定されるものではないが、
カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガ
ム、ジェランガム、グァーガム又はタマリンドシードガ
ムから選ばれる1種以上が好ましく、中でも、カラギー
ナン、ローカストビーンガム又はキサンタンガムから選
ばれる1種以上が特に好ましい。
【0017】本発明でアルカリ性塩類とは、食品添加物
として使用可能である限り特に限定されるものではない
が、アルカリ性を呈する有機酸、又は無機酸の塩類が好
ましく用いられる。中でも、炭酸水素ナトリウム、炭酸
ナトリウム、炭酸カリウム、又はクエン酸ナトリウムか
ら選ばれる1種以上が特に好ましい。
【0018】本発明において、乳清蛋白質、増粘多糖類
及びアルカリ性塩類は、食肉と他の原料を含む全原料を
一緒に混合してよいし、乳清蛋白質、増粘多糖類及びア
ルカリ性塩類を含む調味液に浸透させた食肉を使用して
食肉加工食品を製造してもよい。後者の場合、特に鶏の
唐揚げやローストチキン等、食肉にブロック肉を使用す
る場合に有効である。なお、食肉加工食品に使用される
原料とは、乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカリ性塩の
他に、砂糖、食塩、調味料、香辛料、色素、香料日持ち
向上剤等が挙げられる。
【0019】本発明で調味液とは、食肉を熱加工する前
段階で漬け込む液のことをいい、一般にピックル液と呼
ばれるものである。乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカ
リ性塩類の他に砂糖、食塩、調味料、香辛料、色素、香
料日持ち向上剤等の他の原料も含んでいてもよい。
【0020】また、調味液は、pH6〜10.5とする
のが好ましく、更には、pH6.5〜10とするのがよ
り好ましい。pHが6を下まわると食肉への調味液の浸
透性が低下し、pHが10.5を越えるとアルカリ味が
強くなってしまい食肉加工食品の風味に影響し使用しに
くい。
【0021】本発明で使用する乳清蛋白質、増粘多糖類
及びアルカリ性塩の添加量については、食肉加工食品の
種類により添加量が変わるため、特に限定されるもので
はないが、乳清蛋白質の場合、食肉加工食品に対し、
0.5〜10重量%、好ましくは、1〜5%が望まし
い。 0.5%よりも少ないと充分な効果が発揮され
ず、10%を越えると乳臭くなってしまい、食肉加工食
品の味に影響がでて使用しにくい。
【0022】増粘多糖類の添加量は、食肉加工食品に対
し、0.05〜2重量%、好ましくは、0.1〜1%が
望ましい。0.05%より少ないと充分な効果が発揮さ
れず、2%を越えると、のりっぽくなり易く使用しにく
い。
【0023】アルカリ性塩類については、食肉加工食品
に対し、0.1〜3重量%、好ましくは、0.2〜1.
5%が望ましい。0.1%より少ないと充分な効果が発
揮されず、3%をこえるとアルカリ味が強くなってしま
い使用しにくい。
【0024】食肉加工食品の製造方法については、常法
により行えばよく、特に制限されるものではない。例え
ば、ソーセージやハンバーグのような、食肉をミンチ状
又はカッター等で細断しペースト状にして混合する食肉
加工食品を製造する際には、乳清蛋白質、増粘多糖類、
アルカリ性塩類、ミンチ状又はペースト状とした食肉、
及び他の全原料を一緒に混合し、熱加工すればよい。ま
た、ハムやからあげ等のような、食肉をブロック状で加
工する食肉加工食品を製造する際には、食肉にあらかじ
め、乳清蛋白質、増粘多糖類、アルカリ性塩類、及び他
の全原料を混合した調味液をインジェクター等で注入す
ればよい。また、タンブラーやフードミキサー等で食肉
に調味液を吸水分散させてから加工してもよい。
【0025】なお、調味液に原料を溶解させる場合、乳
清蛋白質及び増粘多糖類は溶解性の理由で食塩より前に
調味液に添加し、攪拌溶解した後、食塩を添加するのが
好ましい。
【0026】乳清蛋白質、増粘多糖類、アルカリ性塩
類、食肉及び他の原料を混合した後は、常法により調理
加熱を行なえばよい、例えば、ハム、ソーセージ類の場
合では、乾燥し、スモーキングし、中心温度70℃程度
までスチーム加熱する。とんかつや鶏のからあげの場
合、調味液に吸水分散させたものにバッターリング後、
中心温度75〜80℃程度までフライする。ハンバーグ
の場合、中心温度75〜80℃程度までオーブンで焼
く。
【0027】本発明により得られた食肉加工食品は、食
感は重合リン酸塩使用時のような強い弾力を示さず、肉
汁感がありソフトな肉感を有し、しかも、加熱歩留まり
(保水性)においても優れた食肉加工食品となった。
【0028】
【実施例】以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例
等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら
限定されるものではない。特に記載のない限り、「部」
は「重量部」とする。
【0029】実施例1 鶏のからあげの調製 下記の調味液処方に従い、水に1以外の原料を加え充分
攪拌溶解した後、1を加え溶解し、実施例1、比較例1
の調味液をそれぞれ調製した。約15gにカットした鶏
胸肉100部に、実施例1及び比較例1の調味液それぞ
れ30部を加え、タンブラーで2時間タンブリングを行
ない加水させ、バッターリング後フライ後の評価を表1
に記載する。
【0030】なお、パネル評価は、6名のパネラー(男
性3名、女性3名)の試食による平均値であり、 ◎:非常においしい ○:おいしい △:あまりおいしくない ×:おいしくない とした。
【0031】 処方 実施例1 130%加水用調味液処方 部 1.食塩 1.8 2.乳清蛋白質(ゲル強度9.31 N/cm2) 3 3.カラギーナン 1 4.炭酸水素ナトリウム 1 5.デキストリン 0.2 水にて調整 全量 100 とする
【0032】 処方 比較例1 130%加水用調味液処方 部 1.食塩 1.8 2.ピロリン酸四ナトリウム(無水) 1.0 (重合リン酸塩) 3.デキストリン 4.2 水にて調整 全量 100 とする
【0033】
【表1】
【0034】表1より、パネル評価の結果、実施例1は
比較例1と比べ、ソフトな食感を有し、適度な肉感もあ
りジューシーでおいしいという評価であった。また、フ
ライ時の歩留まりにおいても、比較例と比べて実施例の
方が優れていた。
【0035】実施例2 ローストチキンの調製 下記処方に従い、水に1以外の原料を加え充分攪拌溶解
した後、1を加え溶解し、調味液を調製した。 鶏胸肉
100部に対し、調味液30部を加えタンブラーで2時
間タンブリングを行ない加水させ、170℃のオーブン
で中心75〜80℃程度まで焼成しローストチキンを調
製した。
【0036】 処方 130%加水用調味液 pH9.62 部 1.食塩 1.8 2.砂糖 1.2 3.調味料 0.6 4.乳清蛋白質(ゲル強度0.3N/cm2) 2 5.カラギーナン 1.5 6.クエン酸三ナトリウム 1.1 7.炭酸水素ナトリウム 0.7 8.炭酸カリウム 0.7 水にて調整 全量 100 部とする
【0037】このローストチキンは、非常にソフトでジ
ューシーであり、適度な肉感もあって、おいしいもので
あった。
【0038】実施例3 ハンバーグの調製 下記処方に従い、全原料をフードミキサーに投入し、混
合する。成形後、170℃のオーブンで中心75〜80
℃程度まで焼成し、ハンバーグを調製した。
【0039】 処方 1.合挽ミンチ肉(牛:豚 =1:1) 67 2.玉ねぎ 10 3.パン粉 5 4.食塩 0.4 5.砂糖 0.7 6.調味料 1.4 7.香辛料 0.1 8.乳清蛋白質(ゲル強度0.30 N/cm2) 2.5 9.カラギーナン 0.1 10.クエン酸三ナトリウム 0.08 11.炭酸水素ナトリウム 0.05 12.炭酸カリウム 0.05 水にて調整 全量 100 部とする このハンバーグは、肉粒感が口中でバラける様なソフト
さとジューシーさがあり、非常においしいものであっ
た。
【0040】実施例4 ソーセージの調製 下記処方に従い、サイレントカッターで全原料を細断
し、均質なペーストをつくる。羊腸にペーストを充填
し、ソーセージ様に成形した後、乾燥工程、スモーク工
程及びスチーム加熱工程で中心70℃まで加熱しソーセ
ージを調製した。
【0041】 処方 1.豚うで肉ミンチ 72 2.豚脂肪ミンチ 5 3.食塩 1.7 4.砂糖 0.5 5.調味料 0.3 6.香辛料 0.5 7.乳清蛋白質(ゲル強度9.31 N/cm2) 1.5 8.カラギーナン 0.1 9.キサンタンガム 0.02 10.クエン酸三ナトリウム 0.08 11.炭酸水素ナトリウム 0.05 12.炭酸カリウム 0.05 13.澱粉 3
【0042】このソーセージは、肉汁感がありソフトな
肉感を有しており、非常においしいものであった。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカリ性塩
    類を含むことを特徴とする食感の改善された食肉加工食
    品。
  2. 【請求項2】乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカリ性塩
    類を含む調味液に浸透させた食肉を使用することを特徴
    とする食感の改善された食肉加工食品。
  3. 【請求項3】調味液のpHが、6〜10.5である請求
    項2記載の食肉加工食品。
  4. 【請求項4】乳清蛋白質が牛乳由来のものを使用するこ
    とを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の食肉
    加工食品。
  5. 【請求項5】乳清蛋白質が蛋白質含有量80%以上(乾
    物換算)のものを使用することを特徴とする請求項1乃
    至4のいずれかに記載の食肉加工食品。
  6. 【請求項6】乳清蛋白質が低ゲル強度のものを使用する
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の食
    肉加工食品。
  7. 【請求項7】増粘多糖類が、カラギーナン、ローカスト
    ビーンガム又はキサンタンガムから選ばれる1種以上で
    ある請求項1乃至6のいずれかに記載の食肉加工食品。
  8. 【請求項8】アルカリ性塩類が、炭酸水素ナトリウム、
    炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又はクエン酸ナトリウム
    から選ばれる1種以上である請求項1乃至7のいずれか
    に記載の食肉加工食品。
  9. 【請求項9】乳清蛋白質を食肉加工食品に対し、0.5
    〜10重量%含むことを特徴とする請求項1乃至8のい
    ずれかに記載の食肉加工食品。
  10. 【請求項10】増粘多糖類を食肉加工食品に対し、0.
    05〜2重量%含むことを特徴とする請求項1乃至9の
    いずれかに記載の食肉加工食品。
  11. 【請求項11】アルカリ性塩類を食肉加工食品に対し、
    0.1〜3重量%含むことを特徴とする請求項1乃至1
    0のいずれかに記載の食肉加工食品。
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