JP2001163902A - 水性エマルジョンおよびその製造方法 - Google Patents

水性エマルジョンおよびその製造方法

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JP2001163902A JP2000285440A JP2000285440A JP2001163902A JP 2001163902 A JP2001163902 A JP 2001163902A JP 2000285440 A JP2000285440 A JP 2000285440A JP 2000285440 A JP2000285440 A JP 2000285440A JP 2001163902 A JP2001163902 A JP 2001163902A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温粘度安定性の優れた(温度依存性が小さ
く、高温放置安定性に優れた)、しかも耐水性のより改
善された、さらにまた低温放置安定性にも優れた水性エ
マルジョンを得、さらに重合安定性に優れた水性エマル
ジョンの製造方法を提供すること。 【解決手段】 分子内にエチレン単位を1〜15モル%
含有する、けん化度95モル%以上のビニルアルコール
系重合体を分散剤とし、ビニルエステル系単量体の重合
体を分散質とする水性エマルジョンであって、該エマル
ジョンを製膜して得た皮膜を20℃の水中に24時間浸
漬した時、溶出率が1.5%以下および吸水率が30%
以下を示し、かつ20℃におけるエマルジョン粘度と、
60℃における粘度の比、T60 /T20 が2以下であ
る水性エマルジョン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた耐水性およ
び高温粘度安定性および低温放置安定性を有する水性エ
マルジョンおよび重合安定性に優れた水性エマルジョン
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリビニルアルコール(以下、P
VAと略記することがある)はエチレン性不飽和単量
体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量
体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられてお
り、これを保護コロイドとして用いて乳化重合して得ら
れるビニルエステル系水性エマルジョンは紙用、木工用
およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用およ
び不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ
材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用い
られている。このような水性エマルジョンは、PVA系
重合体のけん化度を調整することにより、一般的に粘度
が低く、ニュートニアン流動に近い粘性を有し、比較的
耐水性の良好なものから、一般的に粘度が高く、比較的
エマルジョン粘度の温度依存性が小さいものが得られる
ことから、種々の用途に賞用されてきた。しかしなが
ら、該水性エマルジョンのあるものは、流動性(高速塗
工性)が不足している、また耐水性が悪い、エマルジョ
ン粘度の温度依存性が大きい、低温時のエマルジョン粘
度の上昇が著しいなどの欠点を有しており、これらの性
質は乳化重合に用いたPVA系重合体に依るところが大
であることが知られている。
【0003】すなわち、乳化重合用分散剤としてのPV
A系重合体は、一般的には鹸化度98モル%程度のいわ
ゆる“完全鹸化PVA”と鹸化度88モル%程度の“部
分鹸化PVA”があり、前者を使用した場合、比較的耐
水性および流動性(高速塗工性)は良好なものの、低温
放置時のエマルジョン粘度の上昇が著しく、ゲル化し易
いという欠点があり、他方、後者のPVA系重合体を使
用した場合、エマルジョンの低温時の粘度上昇やゲル化
性向は改善されるものの耐水性に劣る欠点を有してい
る。このような欠点を改良するために、両者のPVA系
重合体の併用、両者の中間的な鹸化度のPVA系重合体
の使用等が行われているが、耐水性、エマルジョン粘度
の低温放置安定性を同時に満足することはできなかっ
た。そこで、エチレン単位を含有するビニルアルコール
系重合体が提案(特開平8−81666号公報、特開平
6−80709号公報、特開平10−226774号公
報等)され、耐水性と低温放置安定性が大幅に改善され
た。しかしながら、このエマルジョンでも高温粘度安定
性が十分満足すべきものではない、すなわち温度依存性
があり、高温放置安定性も満足すべきものとはいえな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの従
来技術の欠点を解消したものであり、高温粘度安定性の
優れた(温度依存性が小さく、高温放置安定性に優れ
た)、しかも耐水性のより改善された、さらにまた低温
放置安定性にも優れた水性エマルジョンを提供するこ
と、および重合安定性に優れた水性エマルジョンの製造
方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、分
子内にエチレン単位を1〜15モル%含有する、けん化
度95モル%以上のビニルアルコール系重合体を分散剤
とし、ビニルエステル系単量体の重合体を分散質とする
水性エマルジョンであって、該エマルジョンを製膜して
得た皮膜を20℃の水中に24時間浸漬した時、溶出率
が1.5%以下および吸水率が30%以下を示し、かつ
20℃におけるエマルジョン粘度と、60℃における粘
度の比、T60 /T20 が2以下である水性エマルジョ
ンである。 ここで溶出率、吸水率とは後述する方法で
測定される値であるが、溶出率が1.5%以下、吸水率
が30%以下を示すことは耐水性に優れていることを意
味している。溶出率は1.1%以下であることがより好
適であり、また吸水率は27%以下であることがより好
適である。また20℃におけるエマルジョン粘度T 20
と60℃における粘度T60 の比、T60 /T20 とは
後述する方法で測定される値であるが、 T60 /T20
が2以下を示すことは、エチレン含有PVAを分散剤と
して使用したビニルエステル系重合体エマルジョンは6
0℃近辺で高い粘度を示すが、本発明では60℃近辺で
粘度の上昇を抑えることができること、すなわち温度依
存性が小さいことを意味している。60℃近辺で粘度の
上昇を抑えることができるということは、エマルジョン
の重合中にエマルジョンの高温保存、運搬、使用中の粘
度の上昇を抑えることができることになり、作業性、取
り扱い性は格段と向上することになる。また、本発明に
おいては、20℃で調整し、1週間放置後のエマルジョ
ン粘度H20 と60℃で調整し、1週間放置後のエマル
ジョン粘度H60 の比、 H60 /H20 が、2.5以
下のエマルジョンがより好ましい態様である。ここでH
60 /H20 とは後述する方法で測定される値である
が、 H60 /H20 が2.5以下を示すということ
は、高温放置安定性に優れていることを意味し、1週間
程度60℃の高温下におかれても、粘度の上昇を抑える
ことができ、作業性、取り扱い性が損なわれることがな
い。
【0006】本発明の水性エマルジョンは、(1)分散
剤として分子内にエチレン単位を1〜15モル%含有す
る、けん化度95モル%以上のビニルアルコール系重合
体を用い、(2)過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよ
び過硫酸カリウムから選ばれる少なくとも一種の重合開
始剤をビニルエステル系単量体に対してモル比で0.0
01〜0.01使用し、さらに(3)重合初期にビニル
エステル系単量体を単量体全量の5〜20重量%仕込
み、かつ上記重合開始剤を初期仕込みのビニルエステル
系単量体に対してモル比で0.005〜0.025一括
添加する重合操作を行うことによって得られる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の水性エマルジョンの分散
剤として用いられる分子内にエチレン単位を1〜15モ
ル%含有し、けん化度95モル%以上のPVA系重合体
は、ビニルエステルとエチレンとの共重合体をけん化す
ることにより得ることができる。
【0008】ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビ
ニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビ
ニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好
ましい。
【0009】エチレン単位の含有量としては、1〜15
モル%であることが必要であり、好ましくは3〜13
%、さらに好ましくは5〜12%である。エチレン単位
の含有量が1モル%未満の場合には、後述する比較例1
からも明らかなように、上述の耐水性(溶出率と吸水
率)と高温粘度安定性を同時に満足する水性エマルジョ
ンが得られないし、また低温放置安定性も悪い。また、
15モル%を越える場合には、水溶性が低下し、安定な
水性エマルジョンが得られない懸念が生じる。
【0010】また、該分散剤は本発明の目的を損なわな
い範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合
したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体
としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル
酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリル
アミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメ
チルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミ
ド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウ
ム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、
N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ
化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラ
フルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリ
ルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、チオ
ール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合
物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量
体を、エチレンと共重合し、それをけん化することによ
って得られる末端にメルカプト基またはカルボキシル基
を有する変性物も用いることができる。
【0011】本発明の水性エマルジョンの分散剤として
用いるエチレン変性PVA系重合体のけん化度は、95
モル%以上であることが必要であり、より好ましくは、
96モル%以上、さらに好ましくは97モル%以上であ
る。けん化度が95モル%未満の場合には、耐水性に優
れた水性エマルジョンが得られない。本発明の目的とす
る水性エマルジョンを得るためには、該PVA系重合体
の重合度(粘度平均重合度)は、100〜3000が好
ましく、300〜3000がより好ましい。
【0012】本発明の水性エマルジョンにおける分散質
を構成するビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニ
ル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニ
ルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好ま
しい。
【0013】本発明では、単量体として、ビニルエステ
ル系単量体が主に用いられるが、ビニルエステル系単量
体とエチレンを併用することも好適な態様である。これ
らの単量体を乳化重合することにより、ビニルエステル
系重合体またはビニルエステル−エチレン系共重合体を
分散質とする水性エマルジョンが得られる。
【0014】また、本発明の目的を損なわない範囲で、
エチレン性不飽和単量体およびジエン系単量体を共重合
しても構わない。このような単量体としては、プロピレ
ン、イソブチレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ
化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリド
などのハロゲン化オレフィン、アクリル酸、アクリル酸
メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリ
ル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリ
ル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸およびその
エステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタク
リル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−
エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸
2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸およびそのエ
ステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル
酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物、さら
には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロ
ールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミ
ド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸お
よびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体、
スチレン、α−メチルスチレン、p−スチレンスルホン
酸およびナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量
体、その他N−ビニルピロリドンなど、また、ブタジエ
ン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体が
挙げられる。
【0015】本発明の水性エマルジョンは、前述したと
おりビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、
(1)分散剤として分子内にエチレン単位を1〜15モ
ル%含有する、けん化度95モル%以上のビニルアルコ
ール系重合体を用い、(2)過酸化水素、過硫酸アンモ
ニウムおよび過硫酸カリウムから選ばれる少なくとも一
種の重合開始剤をビニルエステル系単量体に対してモル
比で0.001〜0.01使用し、さらに(3)重合初
期にビニルエステル系単量体を単量体全量の5〜20重
量%仕込み、かつ上記重合開始剤を初期仕込みのビニル
エステル系単量体に対してモル比で0.005〜0.0
25一括添加する重合操作を行うことにより得られる。
【0016】本発明の水性エマルジョンを製造するにあ
たっては、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよび過硫
酸カリウムから選ばれる少なくとも一種の重合開始剤を
用いることは重要であり、この中でも、特に過酸化水素
が好ましい。また、本発明においては、重合開始剤を使
用する全ビニルエステル系単量体に対してモル比で0.
001〜0.01使用して乳化重合することも極めて重
要であり、好ましくは0.002〜0.007であり、
さらに好ましくは0.0025〜0.005である。理
由は明確ではないが、上記量の開始剤を用いることで、
耐水性のより改善された、しかも高温粘度安定性に優
れ、さらに低温放置安定性にも優れた水性エマルジョン
が得られる。特開平8−81666号公報の実施例1に
記載されているように、重合開始剤が0.001未満の
場合、本発明の目的とする水性エマルジョンが得られな
い。このことは後述する比較例5から明らかである。ま
た、重合開始剤が0.01を越えると、本発明の目的と
する耐水性の優れた、しかも高温粘度安定性に優れたエ
マルジョンが得られない。このことは後述する比較例3
から明らかである。
【0017】また、前記重合開始剤は還元剤と併用し、
レドックス系で用いられる場合もある。その場合、通
常、過酸化水素は酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガ
リットなどとともに用いられる。また、過硫酸アンモニ
ウム、過硫酸カリウムは亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水
素ナトリウムなどとともに用いられる。還元剤の使用量
も特に限定されないが、通常、重合開始剤に対して、
0.05〜3当量用い、好ましくは0.1〜2当量、よ
り好ましくは0.3〜1.5当量用いる。
【0018】前記重合開始剤の添加方法としては重合開
始初期に重合開始剤を一括添加する方法を用いる。すな
わち、ビニルエステル系単量体を、単量体全量の5〜2
0%を重合初期に仕込み、重合開始剤を初期仕込みの単
量体に対してモル比で0.005〜0.025一括添加
することが必要となり、好ましくは0.008〜0.0
20であり、より好ましくは0.01〜0.018であ
る。特開平8−81666号の実施例1に記載されてい
るように、重合開始剤の初期仕込量が0.005未満の
場合、本発明の目的とする水性エマルジョンが得られな
い。このことは後述する比較例5から明らかである。ま
た特開平6−80709号の実施例1に記載されている
様に重合開始剤の初期仕込量が0.025をこえる場合
も本発明の目的とする耐水性および高温粘度安定性に優
れたエマルジョンは得られない。このことは後述する比
較例6から明らかである。初期重合は重合開始剤を上記
したとおり所定の量一括添加することにより上記したと
おりの優れた効果が奏せられるが、さらに重合安定性も
良好となり、重合後のろ過残量も少なくなる。初期重合
は、分散剤の水溶液に単量体、重合開始剤を加え、重合
温度50〜70℃、好適には55〜65℃、重合時間1
5〜60分、好適には20〜50分の条件下で行われ
る。初期重合において単量体は一括添加することが好適
である。
【0019】分散剤として使用するエチレン変性PVA系
重合体の使用量については特に制限はないが、単量体1
00重量部に対して好ましくは3〜20重量部、より好
ましくは5〜15重量部の範囲である。該使用量が3重
量部未満および20重量部をこえる場合には、重合安定
性が低下したり、放置安定性が低下することがある。
【0020】初期重合はビニルエステルの残存濃度(生
成ポリマーに対する重量%)が10%以下、好適には5
%以下、さらに好適には1%以下になった時点で終了す
る。初期重合後は、後期重合に入る。後期重合では重合
開始剤は一括添加が好適であるが、連続添加あるいは断
続添加でも良い。単量体は連続添加が好適であるが、一
括添加(ショット添加)でも良い。また後期重合では、
重合温度は初期重合温度よりも5〜30℃高くすること
が好適であり、55〜100℃、好適には60〜95
℃、さらに好適には70〜90℃の範囲内で行われる。
【0021】重合圧力は、初期重合、後期重合とも常圧
で良いが、必要に応じ加圧する必要がある。特にビニル
エステルと他の単量体、例えばエチレンとの共重合体エ
マルジョンを製造する場合は、圧力下で行うことが必要
である。
【0022】上記したとおりの方法を採用することによ
り、特に分散剤としてエチレン単位を1〜15モル%含
有する、けん化度95モル%以上の変性PVAを使用する
こと、重合開始剤をビニルエステル系単量体に対してモ
ル比で0.001〜0.01使用し、さらに重合初期に
ビニルエステル系単量体を単量体全量の5〜20重量%
仕込み、かつ上記重合開始剤を初期仕込みの単量体に対
してモル比で0.005〜0.025一括添加するする
ことにより、重合安定性が優れ、さらに耐水性の一段と
改善された、しかも高温粘度安定性に優れた(温度依存
性が小さく、高温放置安定性に優れた)水性エマルジョ
ンが得られること、さらに得られた水性エマルジョンは
低温放置安定性にも優れていることは驚くべきことであ
り、従来の特開平8−81666号、特開平6−807
09号、特開平10−226774号に記載された発明
からはとうてい予測できないことである。特に本発明に
おいて重合開始剤量を特定量に規定したこと、重合初期
において重合開始剤を一括添加するとともにその使用量
を規定したことにより、本発明の目的とする優れた水性
エマルジョンが得られるようになったことは驚くべきこ
とであり、その工業的意味は大きい。このようにして得
られた本発明の水性エマルジョンは耐水性がより改善さ
れているため、耐水性の要求される各種用途に好適に使
用され、また本発明の水性エマルジョンは、温度依存性
が小さく、特に60℃に温度を上げたときエチレン変性
PVAを分散安定剤とするビニルエステル系重合体エマル
ジョンでは通常粘度が大きく上昇するが、本発明の水性
エマルジョンはその上昇が少ないため、エマルジョン重
合時の粘度上昇を防ぐことができるし、60℃前後の高
温下での保存、運搬、使用においても粘度上昇を防ぐこ
とができるので、作業性、取り扱い性は極めて優れてい
る。
【0023】本発明で得られる水性エマルジョンは、上
記の方法で得られる水性エマルジョンをそのまま用いる
ことができるが、必要があれば、本発明の効果を損なわ
ない範囲で、従来公知の各種エマルジョンを添加して用
いることができる。なお、本発明の水性エマルジョンに
おける分散剤としては、前述のけん化度95モル%以上
のPVA系重合体あるいはけん化度95モル%以上のエ
チレン変性PVA系重合体が用いられるが、必要に応じ
て、従来公知のアニオン性、ノニオン性あるいはカチオ
ン性の界面活性剤や、PVA系重合体、ヒドロキシエチ
ルセルロースなどを併用することもできる。
【0024】本発明の水性エマルジョンは、上記のよう
な優れた特性を有していることから、紙管、製袋、合
紙、段ボール用等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、
フラッシュパネル、集成材、ツキ板、合板加工用、合板
二次加工用(練り合わせ)、一般木工等の木工用接着剤
および各種プラスチック用の接着剤、含浸紙用、不織製
品用のバインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工お
よび繊維加工などの分野で好適に用いられる。
【0025】
【実施例】次に、実施例および比較例により本発明をさ
らに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例
において「部」および「%」は、特に断らない限り重量
基準を意味する。また、得られたエマルジョンの耐水
性、放置安定性を、下記の要領で評価した。
【0026】(エマルジョンの評価) (1)皮膜の耐水性 得られた水性エマルジョンを20℃、65%RHの条件
下に、PET上に流延し、7日間乾燥させて500μm
の乾燥皮膜を得た。この皮膜を直径2.5cmに打ち抜
き、それを試料として20℃水に24時間浸漬した場合
の、皮膜の吸水率、溶出率を求めた。 溶出率(%):{1−(浸漬後の皮膜絶乾重量/浸漬前の
皮膜絶乾重量)}×100 吸水率(%):{(浸漬後の皮膜吸水重量/浸漬前の皮膜
絶乾重量)−1}× 100 *浸漬前の皮膜絶乾重量;浸漬前の皮膜重量(含水)−
(浸漬前の皮膜重量(含水)× 皮膜含水率(%)/10
0) *皮膜含水率;皮膜(20℃水に浸漬するサンフ゜ルとは別のサ
ンフ゜ル)を、105℃、4時間で絶乾し、皮膜の含水率をあ
らかじめもとめる。 *浸漬後の皮膜絶乾重量;浸漬後の皮膜を105℃、4時
間で絶乾した重量。 浸漬後の皮膜重量;浸漬後の皮膜を水から引き上げた
後、皮膜についた水をガーゼで拭き取り秤量。 (2)粘度安定性 低温放置安定性:5℃90日間放置後の粘度変化を測定 温度依存性:T60 /T20 (20℃、60℃に調整後
測定) 高温放置安定性: H60 /H20 (20℃、60℃に
調整し、1週間放置後粘度測定) ( H20 、H60
はそれぞれ20℃、60℃に調整し、1週間放置後の粘
度) 粘度はB型粘度計(20rpm)を用いて測定。 (3)重合安定性 重合後、60メッシュ金網でろ過し、ろ過残量(%)
(対エマルジョン)を測定。ろ過残量が少ないほど重合
安定性が優れていることを示す。
【0027】実施例1 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1(重合度1000、けん化度99.0
%、エチレン変性量7.0mol%)26gを仕込み95℃
で完全に溶解した。次に、このPVA水溶液を冷却、窒
素置換後、200rpmで撹拌しながら、60℃に昇温
した後、酒石酸の10%水溶液を4.4gおよび5%過
酸化水素水3g(酢酸ビニルに対し、モル比で0.01
5)をショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合
を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビ
ニルの残存量1重量%)を確認した。次に酒石酸の10
%水溶液を0.9gおよび5%過酸化水素水3gをショ
ット添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連
続的に添加し、重合温度80℃に維持して重合を完結さ
せた。冷却後、60メッシュのステンレス製金網を用い
てろ過した。ろ過残量が少ないほど重合安定性が優れ、
多いほど重合安定性が悪いことを示す。以上の結果、固
形分濃度47.3%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(E
m-1)が得られた。このエマルジョンの評価を前述の方法
により行った。結果を表1に示す。
【0028】実施例2 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸
の10%水溶液を4.4gおよび5%過酸化水素水3g
をショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開
始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニル
の残存量1重量%)を確認した。次に酒石酸の10%水
溶液を0.9g添加し、1%過酸化水素水15gおよび
酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加し
て、重合温度80℃に維持して重合を完結させた。冷却
後、60メッシュのステンレス製金網を用いてろ過し
た。ろ過後のろ過残量により、実施例1と同様の方法で
重合安定性を評価した。以上の結果、固形分濃度47.
2%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(Em-2)が得られ
た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行っ
た。結果をあわせて表1に示す。
【0029】実施例3 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸
の10%水溶液18gおよび酢酸ビニル26gを仕込
み、1%過酸化水素水85gを2.5時間にわたって連
続的に添加し、重合を開始した。重合開始30分後に初
期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量%)を確認し
た。次に酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続的
に添加した。酢酸ビニル添加終了後、1%過酸化水素水
4.8gをショットで添加し、重合温度80℃に維持し
て重合を完結させた。冷却後、60メッシュのステンレ
ス製金網を用いてろ過した。ろ過後のろ過残量により、
実施例1と同様の方法で重合安定性を評価した。以上の
結果、固形分濃度47.6%のポリ酢酸ビニル系エマル
ジョン(Em-3)が得られた。このエマルジョンの評価を前
述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0030】実施例4 実施例1において用いたPVA−1を用いる代わりにP
VA−2(重合度1700、けん化度98.0%、エチ
レン変性量5.0mol%)を用いた他は実施例1と同様に
して固形分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジ
ョン(Em-4)が得られた。このエマルジョンの評価を前述
の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0031】比較例1 実施例1において用いたPVA−1を用いる代わりにP
VA−3(重合度1700、けん化度98.5%、クラ
レ製PVA−117)を用いた他は実施例1と同様にし
て固形分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョ
ン(比較Em-1)が得られた。このエマルジョンの評価を
前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0032】実施例5 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、亜硫酸
水素ナトリウム10%水溶液を20gおよび酢酸ビニル
26gを仕込み、4%過硫酸アンモニウム23.5gを
ショット添加して重合を開始し、30分後に初期重合終
了(酢酸ビニルの残存量1重量%)を確認した。次に酢
酸ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加し、
重合温度を80℃に維持して重合を完結させた。冷却
後、60メッシュのステンレス製金網を用いてろ過し
た。ろ過後のろ過残量により、実施例1と同様の方法で
重合安定性を評価した。以上の結果、固形分濃度47.
3%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(Em-5)が得られ
た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行っ
た。結果をあわせて表1に示す。
【0033】実施例6 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、亜硫酸
水素ナトリウム10%水溶液を20gおよび酢酸ビニル
26gを仕込み、1%過硫酸カリウム27.9gをショ
ット添加して重合を開始し、30分後に初期重合終了
(酢酸ビニルの残存量1重量%)を確認した。次に酢酸
ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加して重
合温度80℃に維持して重合を完結させた。冷却後、6
0メッシュのステンレス製金網を用いてろ過した。ろ過
後のろ過残量により、実施例1と同様の方法で重合安定
性を評価した。以上の結果、固形分濃度47.3%のポ
リ酢酸ビニル系エマルジョン(Em-6)が得られた。このエ
マルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあ
わせて表1に示す。
【0034】比較例2 実施例1において用いたPVA−1を用いる代わりにP
VA−4(重合度1700、けん化度88.0%、クラ
レ製PVA−217)を用いた他は実施例1と同様にし
て固形分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョ
ン(比較Em-2)が得られた。このエマルジョンの評価を
前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0035】比較例3 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸
の10%水溶液を12gおよび5%過酸化水素水30g
をショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開
始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニル
の残存量1重量%)を確認した。次に酒石酸の10%水
溶液を0.9gおよび5%過酸化水素水30gをショッ
ト添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続
的に添加し、重合温度80℃に維持しながら、重合を完
結させた。冷却後、60メッシュのステンレス製金網を
用いてろ過した。ろ過後のろ過残量により、実施例1と
同様の方法で重合安定性を評価した。以上の結果、固形
分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョン(比
較Em-3)が得られた。このエマルジョンの評価を前述の
方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0036】比較例4 還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた
1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300
g、PVA−1 26gを仕込み95℃で完全に溶解し
た。次に、このPVA水溶液を冷却、窒素置換後、20
0rpmで撹拌しながら、60℃に昇温した後、酒石酸
の10%水溶液を0.15gおよび5%過酸化水素水
0.1gをショット添加後、酢酸ビニル26gを仕込み
重合を開始し、30分後に初期重合の終了(酢酸ビニル
の残存量1重量%)を確認した。次に酒石酸の10%水
溶液を0.1gおよび5%過酸化水素水0.1gをショ
ット添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連
続的に添加し、重合温度を80℃に維持しながら重合を
行ったが、途中でブロック化し、安定に水性エマルジョ
ンが得られなかった。
【0037】実施例7 窒素吹き込み口、温度計、攪拌機を備えた耐圧オートク
レーブにPVA-1の7.5%水溶液100部を仕込み、6
0℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル8
部を仕込んだ後、エチレンを45kg/cm2まで加圧
し、2.5%過酸化水素水溶液0.3部および2%ロン
ガリット水溶液0.45部を圧入し、重合を開始した。
30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量
%)を確認した。次に、80℃に昇温後、酢酸ビニル7
2部、1%過酸化水素水溶液1.5部および2%ロンガ
リット水溶液0.45部を2時間にわたって圧入し、重
合温度80℃に維持しながら、重合を完結させた。冷却
後、実施例1と同様にろ過し、固形分濃度50.2%、
エチレン含量16重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合
体エマルジョン(Em-7)が得られた。評価を前述の方法
により行った。結果を表1に示す。
【0038】比較例5 攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口
を備えた5リットルのガラス製容器にイオン交換水14
00g、エチレン変性PVA(重合度1400、けん化度
98.0モル%、エチレン含有量5.5モル%)225
gを仕込み95℃で完全に溶解した。次に、変性PVA水
溶液を冷却後pHを4に調整し、塩化第一鉄0.05g
を添加し、窒素置換した後、140rpmで攪拌しなが
ら酢酸ビニル350gを仕込み、60℃に昇温した。次
に、0.7%の過酸化水素水を15ml/hrで、6%
のロンガリット水溶液を10ml/hrで連続添加しな
がら、70℃で重合を行い、30分後に初期重合終了
(酢酸ビニルの残存量1重量%)を確認した。次に、酢
酸ビニル1400gを3時間にわたって連続的に添加し
た。添加終了後、内温を80℃に1時間保持し重合を完
結させた。固形分濃度50.4%のポリ酢酸ビニル水性
エマルジョン(比較Em-5)が得られた。このエマルジョ
ンの評価結果を表1に示す。
【0039】比較例6 攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素導入口
を備えた1リットルのガラス製容器中で、PVA(重合度1
200、けん化度90.0モル%、エチレン含有量7.
2モル%)20gを水240gに溶解した。次に、酢酸
ビニル20gを添加し、内温が70℃に達したところで
過酸化水素0.3gおよび酒石酸0.5gを添加し、重
合を開始し、30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残
存量1重量%)を確認した。続いて、酢酸ビニル180
gと過酸化水素0.3gを3時間かけて連続的に添加し
た。添加終了後、内温を80℃に1時間保持し熟成を行
い、ポリ酢酸ビニル水性エマルジョンを得た。このエマ
ルジョンの評価結果を表1に示す。
【0040】比較例7 比較例5において、エチレン変性PVA(重合度140
0、けん化度98.0モル%、エチレン含有量5.5モ
ル%)の代わりにエチレン変性PVA(重合度1000,
けん化度99.7モル%、エチレン含有量7.5モル
%)を使用する以外は比較例5と同様にしてポリ酢酸ビ
ニル水性エマルジョン(比較Em-7)を得た。このエマル
ジョンの評価結果を表1に示す。前述の実施例および比
較例で使用したPVA、重合開始剤の使用量、重合初期の
単量体の仕込み量(重量%)(/全酢酸ビニル)等を表
2にまとめて示す
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】実施例8〜14および比較例8〜13 Em−1(実施例8)、 Em−2(実施例9)、Em
−3(実施例10)、Em−4(実施例11)、Em−
5(実施例12)、 Em−6(実施例13)、Em−
7(実施例14)、 比較Em−1(比較例8)、比較
Em−2(比較例9)、比較Em−3(比較例10)、
比較Em−5(比較例11)、比較Em−6(比較例1
2)、比較Em−7(比較例13)をそれぞれ木工用接
着剤に使用し、次の条件で評価を行った。その結果を表
3に示す。
【0044】(4)常態接着力(カバ材) 得られた木工用接着剤をカバ材(柾目)に150g/m
2塗布し、はりあわせて7kg/m2の荷重で16時間圧
締し、その後、解圧し、20℃65%RH下で5日間養
生した。この試験片の常態接着強度を20℃、65%R
H下で測定した。 (5)耐温水接着力(カバ材) 得られた木工用接着剤をカバ材(柾目)に150g/m
2塗布し、はりあわせて7kg/m2の荷重で16時間圧
締し、その後、解圧し、20℃65%RH下で5日間養
生した。養生後、60℃の温水に3時間浸漬し、ぬれた
ままの状態で圧縮せん断強度を測定した。 (6)耐水接着力(合板二次加工) 得られた木工用接着剤をラワン合板(1類合板、五枚積
層体)に2000g/m2塗布し、はりあわせて7kg
/m2の荷重で3時間圧締し、その後、解圧し、20℃
65%RH下で5日間養生した。養生後、60℃の温水
に3時間浸漬し、ぬれたままの状態で浸漬剥離試験を実
施した。
【0045】
【表3】
【0046】実施例15〜21および比較例14〜19 Em−1(実施例15)、 Em−2(実施例16)、
Em−3(実施例17)、 Em−4(実施例18)、
Em−5(実施例19)、 Em−6(実施例20)、
Em−7(実施例21)、 比較Em−1(比較例1
4)、比較Em−2(比較例15)、比較Em−3(比
較例16)、比較Em−5(比較例17)、比較Em−
6(比較例18)、比較Em−7(比較例19)をそれ
ぞれ紙加工用接着剤に使用し、次の条件で評価を行っ
た。その結果を表4に示す。
【0047】(7)初期接着力 JT製初期接着力試験機(JT−1)を用い、得られた
紙工用接着剤をクラフト紙に塗布して初期接着力を測定
した(圧締時間10秒間)。 (8)リングクラッシュ強度 紙管用原紙を2枚接着させた加工品を用い、JIS-P8126
にしたがって20℃、65%RH下の強度を測定した。 (9)耐水接着力 得られた紙工用接着剤をクラフト紙に30g/m2塗布
し、はりあわせてハンドロールで3回圧締した。乾燥
後、得られた加工品を30℃の水中に72時間浸漬し、
その後の接着状態を観察した。○紙破、△若干紙破、×
剥離
【0048】
【表4】
【0049】
【発明の効果】本発明の水性エマルジョンは、高温粘度
安定性に優れ(温度依存性が小さく、高温放置安定性に
優れ)、しかも耐水性がより改善され、さらにまた低温
放置安定性にも優れており、紙用、木工用およびプラス
チック用の接着剤、含浸紙用、不織製品用のバインダ
ー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工な
どの分野で好適に用いられる。また、本発明の水性エマ
ルジョンの製造方法は、重合安定性に優れている。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分子内にエチレン単位を1〜15モル%含
    有する、けん化度95モル%以上のビニルアルコール系
    重合体を分散剤とし、ビニルエステル系単量体の重合体
    を分散質とする水性エマルジョンであって、該エマルジ
    ョンを製膜して得た皮膜を20℃の水中に24時間浸漬
    した時、溶出率が1.5%以下および吸水率が30%以
    下を示し、かつ20℃におけるエマルジョン粘度と、6
    0℃における粘度の比、T60 /T20 が2以下である
    水性エマルジョン。
  2. 【請求項2】20℃、1週間放置後のエマルジョン粘度
    20 と60℃、1週間放置後のエマルジョン粘度H60
    の比、H60 /H20 が2.5以下である請求項1記
    載の水性エマルジョン。
  3. 【請求項3】ビニルエステル系単量体を乳化重合するに
    際し、(1)分散剤として分子内にエチレン単位を1〜
    15モル%含有する、けん化度95モル%以上のビニル
    アルコール系重合体を用い、(2)過酸化水素、過硫酸
    アンモニウムおよび過硫酸カリウムから選ばれる少なく
    とも一種の重合開始剤をビニルエステル系単量体に対し
    てモル比で0.001〜0.01使用し、さらに(3)
    重合初期にビニルエステル系単量体を単量体全量の5〜
    20重量%仕込み、かつ上記重合開始剤を初期仕込みの
    ビニルエステル系単量体に対してモル比で0.005〜
    0.025一括添加する重合操作を行う、請求項1また
    は2記載の水性エマルジョンの製造方法。
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