JP2001157949A - 損耗センサ付き切削工具の信号処理装置および信号処理方法 - Google Patents
損耗センサ付き切削工具の信号処理装置および信号処理方法Info
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Abstract
具の寿命を判定するには、抵抗値信号からセンサライン
の摩耗を示す真の信号成分を取り出さなければならない
という課題があった。 【解決手段】損耗センサの出力を所定のサンプリング周
期ごとにサンプリングする(ステップS1)。そして得
られたデータをメジアンフィルタに通してノイズを除去
する(ステップS2)。さらにノイズが除去されたデー
タを分離フィルタに通す(ステップS3)。分離フィル
タでは、ノイズが除去されたデータから、時系列的に減
少するデータが分離されて取り除かれる。その結果、セ
ンサの抵抗値変化を表わす真のデータが得られる。その
データにカウンタ関数処理を行って(ステップS4)。
何本のセンサラインが摩耗により切断したかを判別し、
所定本数のセンサラインが摩耗したときに寿命と判別す
る(ステップS5)。
Description
する切削工具の寿命を判定するための信号処理装置およ
び信号処理方法に関するものである。特に、この発明
は、切削工具の刃先に備えられた損耗センサか得られる
信号を処理する装置および方法に関する。
検知するインプロセス工具損耗診断は、従来、間接的な
モニタリング法を基に行われていた。たとえば、(1)
切削工具が取り付けられている工作機械の切削加工中に
おける動力の変化や切削音の変化により摩耗を予測する
こと、(2)切刃近傍や工具ホルダ等にアコースティッ
クエミション(AE)を検知するセンサを設け、このA
Eセンサにより検知する異常信号をもとに、折れ損やチ
ッピングを判断する方法、が用いられていた。
具の摩耗や折損に付随して起こる切削力や切削音の変
化、振動の発生等の付随的な物理現象を介して摩耗を推
定するので、その測定感度が悪く、しかも信頼性に乏し
いという課題があった。また、外乱等により測定結果に
ノイズが含まれ、切削工具の寿命予測精度が悪いという
課題もあった。そこでこれらの課題を解決する提案が、
実開平3−120323号公報に記載されている。この
公報には、スローアウェイチップの逃げ面に、切刃稜に
沿って導電膜でセンサラインを設けることが開示されて
いる。センサラインの幅は、摩耗許容幅に対応させるこ
とも開示されている。従って、この公報に開示のスロー
アウェイチップによれば、切刃稜の摩耗に伴いセンサラ
インも摩耗し、センサラインが途切れたときに切刃稜が
寿命に達したと判別することができる。
スローアウェイチップではない通常の切削工具におい
て、その逃げ面に薄膜回路を設け、逃げ面の摩耗に伴っ
て薄膜回路が摩耗することに伴い電気抵抗が変化するこ
とを検知して、切削工具の寿命を自動的に判定する方法
が提案されている。
ってセンサラインを設け、そのセンサラインの抵抗値の
変化を検知して、切刃稜の損耗を検知するというやり方
自体は、インプロセス工具診断の仕方として好ましい。
ところで、切削加工中に得られるセンサラインからの抵
抗値信号は、ノイズや誤データが含まれた非常に不安定
な信号である。このため、センサラインからの抵抗値信
号に基づき切削工具の摩耗量や折損等の損耗を判定する
には、抵抗値信号からセンサラインの摩耗を示す真の信
号成分を取り出さねばならないという課題があった。
なされたもので、損耗センサ付き切削工具から得られる
計測データ(センサデータ)に対して信号処理をし、信
頼性の高い処理データを得ることのできる信号処理装置
および信号処理方法を提供することを目的とする。
明は、切削工具の刃先に切削による摩耗や折損を検知す
るセンサが設けられた損耗センサ付き工具において、摩
耗量に応じて変化するセンサからの抵抗値信号を、比較
的大局的な不連続変化信号として捉え、その不連続変化
時点で、切削工具の摩耗を判断するものである。具体的
には、請求項1ないし請求項7記載の構成になってい
る。すなわち、請求項1記載の発明は、切削工具の刃先
に切削による摩耗や折損を検知するセンサが設けられた
損耗センサ付き工具のための信号処理装置であって、損
耗センサの出力を所定のサンプリング周期ごとにサンプ
リングして計測データを得る手段と、得られた計測デー
タからノイズを除去するノイズ除去手段と、ノイズが除
去されたデータから、時系列的に減少するデータを分離
する減少データ分離手段と、減少データが分離された処
理データに基づいて、損耗センサ付き切削工具の摩耗量
や折損を判定する手段と、を含むことを特徴とする信号
処理装置である。
段は、サンプリングされた所定数のデータ群ごとの中央
値を出力するメジアン処理手段を含むことを特徴とす
る、請求項1記載の信号処理装置である。請求項3記載
の発明は、前記損耗センサは、切削工具の切刃稜に沿っ
て平行に延びる複数本のセンサラインを含み、前記寿命
判定手段は、前記処理データをセンサラインの数と対応
づけることにより、切削工具の摩耗量や折損を判定する
ことを特徴とする、請求項1または2記載の信号処理装
置である。
は、処理データの初期データから複数本のセンサライン
によって得られる初期抵抗値を検知し、前記センサライ
ンが1本切れるごとに増加する抵抗しきい値を決め、処
理データが抵抗しきい値を超えるごとに、切断したセン
サラインの数が増加したことを出力することを特徴とす
る、請求項3記載の信号処理装置である。請求項5記載
の発明は、前記損耗センサ付き切削工具は、損耗センサ
が設けられたスローアウェイチップと、そのスローアウ
ェイチップを保持するホルダとを有し、スローアウェイ
チップの摩耗量や折損が検知できることを特徴とする、
請求項1ないし4のいずれかに記載の信号処理装置であ
る。
切削による摩耗や折損を検知するセンサが設けられた損
耗センサ付き工具のための信号処理方法であって、損耗
センサの出力を所定のサンプリング周期ごとにサンプリ
ングし、サンプリングしたデータからノイズを除去し、
ノイズが除去されたデータから、時系列的に減少するデ
ータを分離し、減少データが分離された時系列的に減少
することのない処理データに基づいて、損耗センサ付き
切削工具の摩耗量や折損を判定する方法である。
は、切削工具の切刃稜に沿って平行に延びる複数本のセ
ンサラインを含み、前記処理データとして、時系列的に
段階的に増加し、その増加がセンサライン数に対応され
た処理データを得ることを特徴とする方法である。請求
項1および6の構成では、サンプリングされた計測デー
タから、ノイズが除去される。このノイズ除去は、請求
項2記載のように、メジアンフィルタ等を用いたメジア
ン処理を行うことにより簡単に行うことができる。
分離フィルタ等によってデータ分離処理が施される。デ
ータ分離処理では、時系列的に減少するデータが分離さ
れて除去される。通常、切削時間の増加に伴い、切削工
具の刃先が摩耗し、それに伴ってセンサも摩耗するか
ら、抵抗値は増加していく。しかし、計測データの中に
時系列的に減少するデータが含まれるのは、削り屑等の
作用による誤データであると推測できる。なぜなら、切
削工具の刃先は、被削材と接触しており、切削時の切り
屑に晒された状態である。このため、切削工具の刃先に
は、被削材の切り屑がぶつかったり溶着等したりして、
その結果センサの抵抗値を下げる作用をすると考えられ
る。そこでこの発明では、時系列的に減少するデータ
は、データ分離処理によって取り除き、時系列的に増加
するデータだけを処理データとして取り出すことにし
た。
削工具の摩耗量や折損が判定される。判定では、請求項
3,4または7のように、処理データをセンサラインの
数と対応づけて判定することにより、良好な判定が行え
る。センサラインの数が複数本の場合は、センサライン
が1本切れるごとにセンサラインの抵抗値は段階的に増
加する。それゆえ処理データが段階的に増加する場合
に、その増加した時点をもってセンサラインが1本切れ
たと判別することができる。従って、段階的な抵抗値の
変化から、計測時点における切断センサライン数を判別
でき、切削工具の摩耗量を知ることができる。そして所
定数のセンサラインが切れたときに、切削工具の寿命を
検知できる。
ーアウェイチップに適用するのが好ましいが、スローア
ウェイチップに限らず、刃先を交換しない形式の切削工
具に対しても適用可能である。
発明の具体的な実施形態について説明をする。以下の実
施形態では、ホルダ等に装着されて切削刃として機能す
るスローアウェイチップについて説明する。しかしなが
ら、この発明は、スローアウェイチップ型でない通常の
切削工具に対しても、同様に適用可能であることを予め
申し述べておく。
して、損耗センサが設けられたスローアウェイチップ1
を示す図である。スローアウェイチップ1は、略直方体
状の母材2を有する。母材2の上面にはすくい面3が形
成され、母材2の下面は着座面4とされている。母材2
の各側面は、逃げ面5となっていて、すくい面3と逃げ
面5との交差稜によって切刃稜6が形成されている。さ
らに、すくい面3および隣接する2つの逃げ面5の交差
部分は切削に使用されるコーナ部7を形成している。
導電性膜のセンサライン10が設けられている。センサ
ライン10は、部分拡大図AまたはBに示すように、コ
ーナ部7を形成する隣接する2つの逃げ面5上に、コー
ナ部7を取り巻くように切刃稜6に沿って平行に延びて
いる。センサライン10は、部分拡大図Aに示すよう
に、1本のベルト状のセンサラインで形成されていても
よいし、部分拡大図Bに示すように、平行に延びるたと
えば3本の細線101,102,103で構成されてお
り、3本の細線101,102,103は、両端におい
て平行結合されていてもよい。
5の摩耗の進行に伴って、センサライン10は、切刃稜
6に近い部分から徐々に摩耗し、細くなっていく。ま
た、センサライン10が3本の細線のときは、切刃稜6
に近い細線101から順次細線102,103と断線し
ていく。よって、センサライン10の両端の電気抵抗値
も、それに応じて不連続に増加するものと考えられる。
この電気抵抗値の増加回数を信号処理により求めれば、
それが断線した細線数に対応するので、逃げ面5の摩耗
幅をインプロセスで検知することができる。また、セン
サライン10がベルトタイプであれば、抵抗値が無限大
になったとき、切刃稜の寿命を判定できる。
具面上に設けた導電性材料の電気抵抗の変化により摩耗
量を直接検知する考え方は、従来より提案されている。
ところが、従来のやり方では、工作物を含んだ系の抵抗
値から直接摩耗量を測定しようとしたため、工作物とセ
ンサ間の断続的な短絡や接触抵抗等に起因する不安定な
抵抗値信号から、精度の高い摩耗量検出をすることが困
難であった。そこでこの発明では、以下の実施例で詳述
するように、摩耗量に応じて抵抗値信号に比較的大局的
な不連続変化を生じさせることにより、低S/N比の信
号でも、より確実な情報を検知しようという考えに立脚
して構成されている。つまり、抵抗値そのものを利用す
るのではなく、その信号のパターン変化を検出するとい
う考えに立って、損耗を検知するものである。こうする
ことにより、測定分解能は多少犠牲にはなるが、不安定
な信号からより確実な情報を検出することが可能とな
る。
センサライン10は、着座面4に設けられた接触領域1
1,12につながっている。接触領域11,12には検
知回路のプローブ等が接触されて、センサライン10の
抵抗値が検知される。以下の説明では、センサライン1
0が、部分拡大図Bに示す3本の細線101,102,
103を有する構成について説明する。なお、部分拡大
図Aに示す1本のベルト状のラインをセンサライン10
とした場合、ベルト状のセンサライン10の幅は、コー
ナ部7の寿命基準量(逃げ面5の摩耗限界)に一致させ
るのが好ましい。たとえば、スローアウェイチップ1の
逃げ面5の摩耗が0.2mmで寿命となる場合には、セ
ンサライン10の幅を0.2mmとして形成する。そし
てコーナ部7によって切削加工が行われ、加工時間の増
加とともに切刃稜6および逃げ面5の摩耗が進行する。
そして逃げ面5の摩耗幅が寿命基準量以上に達すると、
この寿命基準量に一致された幅のセンサライン10も摩
耗により断線するという構成になる。この場合は、セン
サライン10の両端の抵抗値は、有限値から無限値に変
化するから、いわゆる2値化情報によって、コーナ部7
の寿命を検知することができる。
耗センサ付きスローアウェイチップ1のための信号処理
装置の構成を示すブロック図である。NC旋盤に搭載さ
れた損耗センサ付きスローアウェイチップ1のセンサ信
号(抵抗値)は、ホルダ13内の信号線等を経由して、
ディジタルマルチメータ20へ与えられる。ディジタル
マルチメータ20では、抵抗値がディジタル信号に変換
され、それがコンピュータ21へ出力される。コンピュ
ータ21は信号処理装置の中枢であって、後述する所定
の信号処理を行う。そしてコンピュータ21の出力はN
C旋盤の加工制御装置22へ与えられる。その結果、加
工制御装置22によって、被削材15を回転させるモー
タ23や、被削材15に対する切込み深さや切込み長さ
を制御するターレット24が、必要に応じて停止制御さ
れる。
により行われる制御の内容を示すフローチャートであ
る。制御では、ディジタルマルチメータ20から与えら
れるディジタル信号に変換された計測抵抗値が、所定の
サンプリング周期ごとにサンプリングされる(ステップ
S1)。この実施形態では、スローアウェイチップ1の
1つのコーナ部7の寿命が約3000秒前後であること
を考慮して、サンプリング周期は1秒にされている。も
ちろん、対象となる切削工具や被削材の種類に応じて、
サンプリング周期は適当な時間に設定すればよい。この
実施形態のようにサンプリング周期を1秒とすれば、処
理データが少なくてすみ、信号処理を容量の小さなメモ
リを使って、比較的高速で行うことができるという利点
がある。すなわち、比較的安価なコンピュータ21(マ
イクロプロセッサ)により、信号処理装置を構成するこ
とが可能である。
ータの一例を、図4に示す。サンプリングされたデータ
は、抵抗値が小刻みに変動するノイズ成分の混じった信
号である。ステップS2では、サンプリングされたデー
タは、メジアンフィルタを通すことにより、ノイズが除
去される。ステップS3では、ノイズが除去されたデー
タを分離フィルタを通すことによって、時系列的に減少
するデータが取り除かれる。
れた処理データは所定のカウンタ関数に当てはめられ、
センサライン10を構成する3本の細線101,10
2,103のうち何本の細線が切断したかが検知され
る。その結果、細線の切断本数からスローアウェイチッ
プの計測時点の摩耗量を判断することができ、そして細
線101,102,103が3本切断したときには、セ
ンサライン10が完全に切断されて寿命となるから(ス
テップS5でYES)、その旨がNC旋盤の加工制御装
置22へ与えられる。
づき、モータ23を停止して被削材15の回転を停止
し、かつ、ターレット24を移動させて被削材15から
スローアウェイチップ1を離す等の必要な処理を行う。
また、スローアウェイチップ1の切刃稜の寿命が尽きた
ことがNC旋盤の管理者等に報知される。次に、図3の
ステップS2,S3,S4の各処理について、順次具体
的に説明をする。メジアン処理(ステップS2) メジアン処理とは、サンプリングされた所定数のデータ
群ごとに、中央値を出力する処理である。この処理は、
「メジアンフィルタ」と呼ばれる公知のフィルタを用い
て行うことができる。
群のデータ数mを、m=5と仮定する。メジアンフィル
タでは、図5Aに示すように、サンプリングされた5つ
のデータが与えられると、その5つのデータを、図5B
に示すように小さい順に並べる。そして小さい順に並べ
た5つのデータの中央値(4)をそのデータ群の代表値
として出力する。他の例を示せば、図6Aに示す与えら
れた5つのデータからなるデータ群があれば、それを図
6Bに示すように小さい順に並べる。そしてその中央値
(3)をデータ群の代表値として出力する。
ンプリング値からデータ群ごとの中央値を出力すること
により、異常に大きな値や異常に小さな値といった異常
値を取り除くことができる。図7に示すように、サンプ
リングによって、1,2,3,4,…,Nと、時系列的
にディジタルデータが与えられる。メジアンフィルタ
が、m=5で、5つのデータの中央値を出力する構成の
場合、1回目は1〜5のデータ群の中央値、2回目は2
〜6のデータ群の中央値、3回目は3〜7のデータ群の
中央値,…というようにして、データを1つずつずらし
ながら、順に中央値を出力していく。
8に示すような、2つのメモリM1,M2を用いて簡単
に構成することができる。図8において、メモリM1
は、5つのサンプリングデータを新しいものから順に記
憶することのできるメモリで、5つの記憶エリアE1〜
E5を有する。E1には今回(最新)のサンプリングデ
ータd(ti)(iは自然数であり、i=1,2,3,
…,Nである。)が、E2には前回のサンプリングデー
タd(ti-1)が、E3には2回前のサンプリングデー
タd(ti-2)が、E4には3回前のサンプリングデー
タd(ti-3)が、E5には4回前のサンプリングデー
タd(ti-4)が、それぞれ記憶される。そして1回の
処理が終わるごとに、エリアE1〜E5のデータは、1
つずつ右側にシフトされて、E1に最新のサンプリング
データが記憶される。かかるメモリM1は、たとえばF
IFOメモリにより構成できる。
つのサンプリングデータd(ti)〜d(ti-4)を小さ
いもの順にソーティングして並べ変えるためのメモリで
ある。メモリM2にはソーティングされたデータを記憶
する記憶エリアE11〜E15が備えられている。小さ
いもの順にソーティングされたサンプリングデータは、
E11から順にE15へとストアされるから、エリアE
13に、5つのサンプリングデータの中央値が記憶され
る。従ってE13のデータが、代表値として出力され
る。
9の通りである。メジアンフィルタについて、数式を用
いて説明すると次の通りである。サンプリングされた測
定抵抗値をd(t)とすると、メジアンフィルタでフィ
ルタリングされたデータfdは、次のように表わされ
る。
窓、Nはd(t)の総データ数、またΦmはサイズm
(この実施形態ではm=5)のメジアンフィルタで、次
のように示される。
れたデータの一例を、図10に示す。図10は、図4の
A部分の拡大図であり、破線で示すd(t)がサンプリ
ングされた元データ、太い実線で示すfdが、メジアン
フィルタでフィルタリングされてノイズ等が除去された
データである。図10から、メジアン処理によって、ラ
ンダムノイズが除去されて、滑らかなデータが得られて
いることがわかる。分離フィルタ処理(ステップS3) 分離フィルタによる分離処理は、メジアンフィルタリン
グ後のデータから、真の抵抗値を選別するために必須の
処理である。センサライン10の抵抗値を変動させる最
も大きな要因は、被削材を切削する際に生じる断続的な
短絡と考えられる。つまり、スローアウェイチップ1の
コーナ部7は被削材と接触しており、切削時の削り屑に
さらされた状態である。このため、センサライン10近
傍に削り屑がぶつかったり、溶着したりして、抵抗値が
変動する。被削材は、通常、導電性のある金属であるか
ら、その削り屑がコーナ部7に当たったり付着すること
により、センサライン10の抵抗値を下げる。
の摩耗が進むから、センサライン10の抵抗値は増加し
ていく。このことから、時系列的に与えられるデータの
うち、減少方向のデータは偽のデータであり、増加方向
のデータが真のデータであると推測できる。そこで、分
離フィルタでは、メジアン処理されたデータから、時系
列的に減少するデータを分離して除去し、時系列的に増
加する抵抗値データだけを選び出す処理をする。つま
り、tddをスローアウェイチップの摩耗に伴う真の抵
抗値とすると、
1に、上記分離フィルタにより行われる分離処理のフロ
ーチャートを示す。メジアンフィルタでフィルタリング
されたデータは、順次、分離フィルタに与えられる。分
離フィルタでは、メジアンフィルタからデータfd(t
i)が入力されると(ステップS31)、その入力デー
タfd(ti)を1つ前に採用したデータ、すなわちi
−1番目に採用したデータfd(ti-1)と比較する
(ステップS32)。
であれば(ステップS33でYES)、i番目のデータ
として、入力データfd(ti)を採用する(ステップ
S34)。一方、ステップS33で、NOであれば、i
番目のデータとして、入力データと比較されたデータf
d(ti-1)を採用する(ステップS35)。以上の処
理が順次繰り返されて、時系列的に1〜Nのデータが採
用される。
データtddが得られる。図12において、破線で示し
たのは、図10に示すメジアンフィルタリング後のデー
タfdである。このデータfdが分離フィルタに通され
ることにより、実線のデータtddが得られるのであ
る。カウンタ関数処理(ステップS4) 図1に示すように、スローアウェイチップ1のセンサラ
イン10が3本の細線101,102,103により構
成されている場合は、断線した細線数を計数すれば、予
めわかっている細線形状および細線数から計測時点での
摩耗量が推定できる。つまり断線に伴ってステップ状に
増加する抵抗値のステップ数をカウントすればよい。
は、図13に示すように、細線が切断するごとに、セン
サライン10の抵抗値が変化する。すなわち、細線が3
本共つながっていて、摩耗していない切削初期は、上述
した式(3)から初期抵抗Rが求められる。細線10
1,102,103の抵抗がすべて等しいと仮定する
と、1本ずつ断線するにつれて、図13に示すように、
断線した瞬間には、センサライン10の抵抗値は3R/
2、3R、∞と変化していく。そこで、これらをしきい
値とする。
(3)のデータが、上記しきい値を超えた時点で、カウ
ンタを1つずつ増加させれば、カウンタのカウント値に
よって、センサライン10を構成する細線の断線数を検
知することができる。この処理をフローチャートで示す
と、図14となる。図14において、ステップS41で
は、分離フィルタで処理されたスローアウェイチップ1
の真の抵抗値tdd(ti)が時系列的に順に入力され
る。入力されたデータは、3つのしきい値10R、3R
および3R/2と順に比較される。この比較順序は、大
きなしきい値から順に行われる(ステップS42,S4
4,S46)。
ン10は徐々に摩耗して、その抵抗値が増加していくか
ら、図4の処理においては、ステップS41→S42→
S44→S46→リターンの処理が繰り返され、ある時
点において、ステップS46でYESと判断される。そ
の結果、カウンタが「+1」される(ステップS4
7)。そして処理がリターンする。さらに切削加工時間
が経過すると、ステップS44で、抵抗値tdd
(ti)がしきい値3Rを超えることが判断される時点
がくる。そうすると、カウンタの値がさらに「+1」さ
れる(ステップS45)。これにより、カウンタの値は
「2」となる。
ESと判断されるときが来、この時点でカウンタが「+
1」されて(ステップS43)、カウンタの値は「3」
となる。以上の処理を数式で示すと次の通りである。す
なわち、しきい値をShiとすると、
数をso(ti)とすると、次のような出力が最終的に
出る。
ータと一緒に示せば、図15のようになる。図15か
ら、センサライン10の細線101,102,103が
ほぼ断線したと思われる時点で、カウンタ関数so(t
i)が断線数をカウントしていることがわかる。このよ
うに、この実施形態に係る信号処理アルゴリズムの有効
性は、実験によって確認できた。この発明は、以上説明
した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の
範囲内において種々の変更が可能である。例えば、セン
サライン10の細線数は3本に限定されるものではな
く、任意の数でよい。
サンプリングデータ群の数mは、m=5に限定されるも
のではなく、3以上の奇数であることが好ましい。ま
た、データ群を偶数で構成することもできる。データ群
を偶数で構成した場合は、中央値2つを取り出し、その
平均値を代表値として出力する等の処理を行えばよい。
アウェイチップ1を示す図である。
スローアウェイチップ1のための信号処理装置の構成を
示すブロック図である。
示すフローチャートである。
である。
図解的な図である。
な他の例を示す図である。
シフトを説明するための図である。
例を示す図である。
フローチャートである。
たデータの一例を示す図である。
ャートである。
図である。
を説明するための図である。
フローチャートである。
示した図である。
Claims (7)
- 【請求項1】切削工具の刃先に切削による摩耗や折損を
検知するセンサが設けられた損耗センサ付き工具のため
の信号処理装置であって、 損耗センサの出力を所定のサンプリング周期ごとにサン
プリングして計測データを得る手段と、 得られた計測データからノイズを除去するノイズ除去手
段と、 ノイズが除去されたデータから、時系列的に減少するデ
ータを分離する減少データ分離手段と、 減少データが分離された処理データに基づいて、損耗セ
ンサ付き切削工具の摩耗量や折損を判定する手段と、を
含むことを特徴とする信号処理装置。 - 【請求項2】前記ノイズ除去手段は、サンプリングされ
た所定数のデータ群ごとの中央値を出力するメジアン処
理手段を含むことを特徴とする、請求項1記載の信号処
理装置。 - 【請求項3】前記損耗センサは、切削工具の切刃稜に沿
って平行に延びる複数本のセンサラインを含み、 前記判定手段は、前記処理データをセンサラインの数と
対応づけることにより、切削工具の摩耗量や折損を判定
することを特徴とする、請求項1または2記載の信号処
理装置。 - 【請求項4】前記寿命判定手段は、処理データの初期デ
ータから複数本のセンサラインによって得られる初期抵
抗値を検知し、前記センサラインが1本切れるごとに増
加する抵抗しきい値を決め、処理データが抵抗しきい値
を超えるごとに、切断したセンサラインの数が増加した
ことを出力することを特徴とする、請求項3記載の信号
処理装置。 - 【請求項5】前記損耗センサ付き切削工具は、損耗セン
サが設けられたスローアウェイチップと、そのスローア
ウェイチップを保持するホルダとを有し、スローアウェ
イチップの摩耗量や折損が検知できることを特徴とす
る、請求項1ないし4のいずれかに記載の信号処理装
置。 - 【請求項6】切削工具の刃先に切削による摩耗や折損を
検知するセンサが設けられた損耗センサ付き工具のため
の信号処理方法であって、 損耗センサの出力を所定のサンプリング周期ごとにサン
プリングし、 サンプリングしたデータからノイズを除去し、 ノイズが除去されたデータから、時系列的に減少するデ
ータを分離し、 減少データが分離された時系列的に減少することのない
処理データに基づいて、損耗センサ付き切削工具の摩耗
量や折損を判定する方法。 - 【請求項7】前記損耗センサは、切削工具の切刃稜に沿
って平行に延びる複数本のセンサラインを含み、 前記処理データとして、時系列的に段階的に増加し、そ
の増加がセンサライン数に対応された処理データを得る
ことを特徴とする方法。
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