JP2001154015A - 光学フィルタ及びその製造方法 - Google Patents

光学フィルタ及びその製造方法

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JP2001154015A JP2000177107A JP2000177107A JP2001154015A JP 2001154015 A JP2001154015 A JP 2001154015A JP 2000177107 A JP2000177107 A JP 2000177107A JP 2000177107 A JP2000177107 A JP 2000177107A JP 2001154015 A JP2001154015 A JP 2001154015A
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Tomoyoshi Koizumi
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 十分な近赤外光吸収性を有しつつ、耐湿性に
極めて優れた光学フィルタを提供する。 【解決手段】 本発明の光学フィルタは、下記式(1
0)で表されるリン酸エステル化合物及び銅イオンより
成る成分を含有し、リン原子の含有量が銅イオン1モル
に対して0.4〜1.3モルであり、銅イオンの含有量
が2〜60重量%である近赤外光吸収層を備える。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光学フィルタに関
し、詳しくは、近赤外光の吸収特性を有する光学フィル
タに関する。
【0002】
【従来の技術】近赤外光吸収特性を有する従来の光学フ
ィルタとして、例えば、特開平6−118228号公報
等には、リン酸エステル化合物、及び、銅イオンを主成
分とするイオン性金属成分を含有して成るものが開示さ
れている。この光学フィルタは、近赤外光を効率よく吸
収する一方で、可視光の透過率が高いという特性を有し
ており、可視光の透過と近赤外光の遮断とが必要とされ
る用途、例えば、窓用の熱線吸収部材や、視感度補正フ
ィルタ、ディスプレイの前面板等に適用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、光学フィル
タの可視光透過性を高めるため、また、取り扱いやすさ
や、かさばらないといった観点から、このような光学フ
ィルタとしては厚さの薄いものが有用である。近赤外光
吸収性は銅イオンによって発現されるものであり、厚さ
を薄くしたときに十分な近赤外光吸収性を有する光学フ
ィルタを得るためには、銅イオンの含有量(濃度)を十
分に高める必要がある。
【0004】しかし、銅イオンの含有量を高めると、光
学フィルタの耐環境性が悪化する傾向にあることが判明
した。具体的には、環境中の湿気(水分)の影響によ
り、長期間の使用において光学フィルタが徐々に白化
(白濁)していき、やがて、可視光が透過できなくなる
程に透光性を失ってしまう(いわゆる「失透」)ことが
あった。特に、高温多湿な環境や時期によっては、この
ような失透が加速される傾向にあり、光学フィルタとし
ての寿命が短くなってしまうおそれがあった。
【0005】そこで、本発明は、このような事情に鑑み
てなされたものであり、十分な近赤外光吸収性を有しつ
つ、耐湿性に極めて優れた光学フィルタを提供すること
を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは、リン酸エステル化合物及び銅化合
物、又はリン酸エステル銅化合物を含有する光学フィル
タの組成において、リン原子と銅イオンとの含有比が光
学フィルタの耐湿性に大きな影響を及ぼすことを見出
し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の光
学フィルタは、下記(A)成分及び下記(B)成分; (A)成分:下記式(1)で表されるリン酸エステル化
合物及び銅イオンより成る成分、(B)成分:前記リン
酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られるリ
ン酸エステル銅化合物、のうち少なくとも一つの成分を
含有して成る近赤外光吸収層を備え、その近赤外光吸収
層におけるリン原子の含有量が銅イオン1モルに対して
0.4〜1.3モルであり、近赤外光吸収層における銅
イオンの含有量が2〜60重量%、好ましくは2〜20
重量%、特に好ましくは2〜15重量%であることを特
徴とする。
【0007】
【化3】
【0008】[式(1)中、Rは、下記式(2)、
(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)若し
くは(9)で表される基、アルキル基、アリール基、ア
ラルキル基、又はアルケニル基を示し、nは1又は2で
あり、nが1のときにRは同一であっても異なっていて
もよい。
【0009】
【化4】
【0010】(式(2)〜(9)中、R11〜R17は炭素
数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のアリー
ル基又はアラルキル基を示し(ただし、芳香環を構成す
る炭素原子に結合した水素原子が、炭素数1〜6のアル
キル基又はハロゲンによって少なくともひとつ置換され
ていてもよい)、R21〜R25は水素原子又は炭素数が1
〜4のアルキル基を示し(ただし、R23、R24、R25
全て水素原子の場合を除く)、R31及びR32は炭素数が
1〜6のアルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜10
のアルキレン基を示し、R51及びR52は炭素数が1〜2
0のアルキル基を示し、R61は水素原子又はメチル基を
示し、mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示
し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜4の整数を示
す。)]
【0011】このような光学フィルタにおいては、リン
酸エステル化合物のリン酸基が配位結合及び/又はイオ
ン結合により銅イオンに結合し、この銅イオンはリン酸
エステルに囲まれた状態で近赤外光吸収層中に溶解又は
分散されており、この銅イオンのd軌道間の電子遷移に
よって近赤外光が選択吸収される。また、近赤外光吸収
層中におけるリン原子の含有量が銅イオン1モルに対し
て0.4〜1.3、すなわち、銅イオンに対するリン原
子の含有比(以下、「P/Cu」という)がモル比で
0.4〜1.3であると、光学フィルタの耐湿性、及び
近赤外光吸収層における銅イオンの分散性の観点から非
常に好適であることが確認された。
【0012】P/Cuがモル比で0.4未満であると、
リン酸エステル化合物に対して配位する銅イオンが過剰
となり、銅イオンが近赤外光吸収層中に均一に分散しに
くくなる傾向にある。また、近赤外光吸収層は、上記
(A)成分及び/又は上記(B)成分が樹脂中に含有さ
れた樹脂組成物から形成されてもよい。こうすると、そ
の樹脂特有の特性を光学フィルタに付与することがで
き、この場合にも、P/Cuがモル比で0.4未満であ
ると、樹脂中に銅イオンを均一に分散させがたくなる。
一方、P/Cuがモル比で1.3を超えると、光学フィ
ルタの厚さを薄くして銅イオンの含有量を高めたとき
に、失透が起こりやすくなる傾向にあり、高温多湿の環
境では特にこの傾向が顕著となる。
【0013】さらに、P/Cuがモル比で0.8〜1.
3モルであるとより好ましい。このモル比が0.8以上
であると、樹脂中への銅イオンの分散性を確実に且つ十
分に高めることができる。
【0014】また、近赤外光吸収層における銅イオンの
含有割合が上記下限値未満であると、光学フィルタ又は
近赤外光吸収層の厚さが1mm程度より薄くされたとき
に、十分な近赤外光吸収性を得ることが困難な傾向とな
る。一方、銅イオンの含有割合が上記上限値を超える
と、銅イオンを近赤外光吸収層中に分散させることが困
難となる傾向にある。また、上述の如く、近赤外光吸収
層が上記(A)成分及び/又は上記(B)成分を含有す
る樹脂組成物で形成される場合にも同様な傾向を示す。
【0015】さらに、リン酸エステル化合物は、上記式
(9)におけるR61がメチル基であり、且つ、上記式
(9)におけるpが2又は3であり、且つ、上記式
(9)におけるrが1のものであると、すなわち、下記
式(10)で表されるリン酸エステル化合物、又は、下
記式(11)で表されるリン酸エステル化合物であると
より好ましい。
【0016】
【化5】
【0017】このように、式(9)で表されるようなメ
タクリロイルオキシアルキル基におけるアルキレンオキ
サイド基がエチレンオキサイド基又はプロピレンオキサ
イド基であると、上記pが4以上であるアルキレンオキ
サイド基を有するリン酸エステル化合物に比して、近赤
外光吸収性が高められる。したがって、光学フィルタの
近赤外光に対する選択吸収性及び可視光に対する選択透
過性を向上させることができる。また、これらアルキレ
ンオキサイド基の繰返し数であるrが1であると、光学
フィルタの可視光透過率の経時的な劣化が殆ど無い。よ
って、光学フィルタの耐湿性の向上を一層図りうる。こ
れに対し、rが2以上、更にはrが4を超える整数であ
るアルキレンオキサイド基を有する光学フィルタは、耐
湿性、剛性、耐熱性等の経時的な劣化が比較的起こりや
すい傾向にある。
【0018】また、本発明による光学フィルタの製造方
法は、上記(A)成分及び(B)成分のうち少なくとも
一つの成分を含有して成る近赤外光吸収層を有する光学
フィルタを製造する方法であって、上述の式(1)で表
されるリン酸エステル化合物と銅塩と水とを混合し又は
接触させる工程を備えることを特徴とする。つまり、式
(1)で表されるリン酸エステル化合物及び銅塩を混合
又は接触させる際に水を共存させる工程を備えるもので
ある。また、この工程は、銅塩として酢酸銅、酢酸銅一
水和物、安息香酸銅等の有機酸の銅塩無水物や水和物を
用いるときに特に好適である。
【0019】こうすれば、(A)成分及び/又は(B)
成分を例えば樹脂中に含有させて樹脂組成物を調製する
際に、単量体組成物の安定性を向上できる。これによ
り、単量体組成物を重合して得られる重合体(光学フィ
ルタの近赤外光吸収層)の透明性を向上できる利点があ
る。
【0020】さらに、近赤外光吸収層におけるリン原子
の含有量が銅イオン1モルに対して0.4〜1.3モル
となるように、且つ、近赤外光吸収層における銅イオン
の含有量が2〜60重量%となるように、式(1)で表
されるリン酸エステル化合物と、銅塩と、水とを混合し
又は接触させると好適である。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の光学フィルタにつ
いて詳細に説明する。本発明の光学フィルタは、上記
(A)成分及び上記(B)成分のうち少なくとも一つの
成分を含有して成る近赤外光吸収層を備えるものであ
る。まず、近赤外光吸収層の構成成分である(A)成分
と(B)成分を説明する。
【0022】〈(A)成分〉(A)成分は、銅イオン及
び上記式(1)で表されるリン酸エステル化合物より成
るものである。銅イオンを供給するための銅塩の具体例
としては、酢酸銅、酢酸銅一水和物、蟻酸銅、ステアリ
ン酸銅、安息香酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸
銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅等の有機酸の銅塩無水物
や水和物、或いは水酸化銅や、塩化銅、硫酸銅、硝酸
銅、塩基性炭酸銅等の無機酸の銅塩の無水物や水和物が
挙げられる。これらのなかでは、酢酸銅、酢酸銅一水和
物、安息香酸銅、水酸化銅、塩基性炭酸銅が好ましく用
いられる。なお、(A)成分には、銅イオン以外の金属
イオン(以下、「他の金属イオン」という。)が含有さ
れていてもよく、他の金属イオンとしては、ナトリウ
ム、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、マグネシウ
ム、ニッケル等の金属によるイオンが挙げられる。
【0023】また、上記のリン酸エステル化合物は、例
えば、下記第1の方法、第2の方法、第3の方法等のい
ずれかによって製造される。
【0024】〔第1の方法〕:この第1の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、下記式(12)で表される
化合物と五酸化リンとを反応させる方法である。
【0025】
【化6】
【0026】[式(12)中、Rは、上記式(2)、
(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)若し
くは(9)で表される基、アルキル基、アリール基、ア
ラルキル基、又はアルケニル基を示す。]
【0027】すなわち、上記式(12)で表される化合
物としては、下記式(13)、(14)、(15)、
(16)、(17)、(18)、(19)若しくは(2
0)で表されるアルコール、アルキルアルコール、フェ
ノール等を好ましく用いることができる。
【0028】
【化7】
【0029】(式(13)〜(20)中、R11〜R17
炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が6〜20のア
リール基又はアラルキル基を示し(ただし、芳香環を構
成する炭素原子に結合した水素原子が、炭素数1〜6の
アルキル基又はハロゲンによって少なくともひとつ置換
されていてもよい)、R21〜R25は水素原子又は炭素数
が1〜4のアルキル基を示し(ただし、R23、R24、R
25が全て水素原子の場合を除く)、R31及びR32は炭素
数が1〜6のアルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜
10のアルキレン基を示し、R51及びR52は炭素数が1
〜20のアルキル基を示し、R61は水素原子又はメチル
基を示し、mは1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数
を示し、pは2〜97の整数を示し、rは1〜4の整数
を示す。)]
【0030】また、上記式(12)で表される化合物の
なかで、式(13)で表されるアルコールのうちアリー
ル基又はアラルキル基を有する好適な具体例としては、
下記式(21)又は(22)で表されるアルコールが挙
げられる。また、式(15)で表されるアルコールのう
ちアリール基を有する好適な具体例としては、下記式
(23)で表されるアルコールが挙げられる。さらに、
式(17)で表されるアルコールの好適な具体例として
は、下記式(24)で表されるアルコールが挙げられ
る。
【0031】
【化8】
【0032】なお、上述の如く、式(12)で表される
化合物にはフェノールが含まれるが、本発明では、式
(12)で表される化合物を、便宜上、総称して以下
「特定のアルコール」という。ここで、特定のアルコー
ルと五酸化リンとの反応に用いられる有機溶剤として
は、五酸化リンと反応しない有機溶剤であって、例え
ば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、
ベンゼン、トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭
化水素系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエ
タン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、
ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチル
エーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、ア
セトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン等のケト
ン系溶剤等が挙げられ、これらの中では、トルエン、キ
シレンが好ましい。
【0033】この[第1の方法]において、特定のアル
コールと五酸化リンとの反応条件は、特定のアルコール
が式(13)〜(20)で表されるアルコール(ただ
し、芳香環を有するものを除く)の場合、反応温度が0
〜100℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間
が1〜24時間、好ましくは4〜9時間である。また、
特定のアルコールが、フェノール、又は式(13)〜
(17)で表されるアルコールのうち芳香環を有するも
のの場合、反応温度が0〜100℃、好ましくは40〜
80℃であり、反応時間が1〜96時間、好ましくは4
〜72時間である。
【0034】また、この第1の方法においては、例え
ば、特定のアルコール及び五酸化リンをモル比で3:1
となる割合で用いることにより、上記式(1)に示す水
酸基の数が2(式(1)に示すnが2)であるリン酸モ
ノエステル化合物(以下、「モノエステル」という)
と、これら水酸基の数が1(式(1)に示すnが1)で
あるリン酸ジエステル化合物(以下、「ジエステル」と
いう)との割合が略1:1の混合物が得られる。また、
特定のアルコールと五酸化リンとの割合及び反応条件を
適宜選択することにより、モノエステルとジエステルと
の割合は、モル比で99:1〜40:60となる範囲内
で調整される。
【0035】〔第2の方法〕:この第2の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールとオキシ
ハロゲン化リンとを反応させ、得られる生成物に水を添
加して加水分解する方法である。オキシハロゲン化リン
としては、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンを用いるこ
とが好ましく、特に好ましくはオキシ塩化リンである。
また、特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの反
応に用いられる有機溶剤としては、オキシハロゲン化リ
ンと反応しない有機溶剤であって、例えば、ヘキサン、
シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トル
エン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶剤、
クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベ
ンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエ
ーテル系溶剤が挙げられ、これらの中では、トルエン、
キシレンが好ましい。
【0036】そして、特定のアルコールとオキシハロゲ
ン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜110℃、好
ましくは40〜80℃であり、反応時間が1〜20時
間、好ましくは2〜8時間である。また、この第2の方
法においては、例えば、特定のアルコール及びオキシハ
ロゲン化リンをモル比で1:1となる割合で用いること
により、モノエステルを得ることができる。
【0037】さらに、式(14)、(16)、(17)
(ただし、R23が水素原子の場合)、(18)又は(2
0)で表される特定のアルコールを用いる場合には、こ
の特定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの割合及
び反応条件を選択するとともに、反応触媒としては、四
塩化チタン(TiCl4)、塩化マグネシウム(MgC
2)、塩化アルミニウム(AlCl3)等のルイス酸触
媒、副生する塩酸のキャッチ剤としては、トリエチルア
ミン、トリブチルアミン等のアミン類や、ピリジン等が
好ましく用いられる。
【0038】これらの反応触媒や塩酸キャッチ剤を用い
ることにより、モノエステルとジエステルとの混合物が
得られる。そして、この特定のアルコールとオキシハロ
ゲン化リンとの割合及び反応触媒を含む反応に係る条件
を適宜選択することにより、モノエステルとジエステル
との割合は、モル比で99:1〜1:99となる範囲内
で調整される。
【0039】また、上記式(13)、(15)、(1
7)(ただし、R23がアルキル基の場合)又は(19)
で表される特定のアルコールを用いる場合には、この特
定のアルコールとオキシハロゲン化リンとの割合及び反
応条件を選択するとともに、ルイス酸触媒及び塩酸キャ
ッチ剤を併用することにより、モノエステルとジエステ
ルとの混合物が得られ、このとき、その割合がモル比で
99:1〜1:99となる範囲内で調整される。ただ
し、特定のアルコールとしてアルキレンオキサイド基の
繰り返し単位数mが小さいものを用いる場合には、得ら
れるリン酸エステル化合物が水溶性のものとなるため、
アミン類等の塩酸キャッチ剤を用いると、生成されるア
ミン塩酸塩を水による洗浄によって除去することが困難
となる傾向にある。以上において、反応触媒の使用量と
しては、オキシハロゲン化リン1モルに対して0.00
5〜0.2モル、好ましくは0.01〜0.05モルで
ある。
【0040】〔第3の方法〕:この第3の方法は、無溶
媒又は適宜の有機溶剤中で、特定のアルコールと三ハロ
ゲン化リンとを反応させることにより、ホスホン酸エス
テル化合物を合成し、その後、得られたホスホン酸エス
テル化合物を酸化する方法である。三ハロゲン化リンと
しては、三塩化リン、三臭化リンを用いることが好まし
く、特に好ましくは三塩化リンである。
【0041】また、特定のアルコールと三ハロゲン化リ
ンとの反応に用いられる有機溶剤としては、三ハロゲン
化リンと反応しない有機溶剤であって、例えば、ヘキサ
ン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、
トルエン、キシレン、石油スピリット等の炭化水素系溶
剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロ
ロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等
のエーテル系溶剤が挙げられ、これらの中では、ヘキサ
ン、ヘプタンが好ましい。そして、特定のアルコールと
三ハロゲン化リンとの反応条件は、反応温度が0〜90
℃、好ましくは40〜75℃であり、反応時間が1〜1
0時間、好ましくは2〜5時間である。
【0042】また、上記ホスホン酸エステル化合物を酸
化する手段としては、ホスホン酸エステル化合物に、例
えば、塩素ガス等のハロゲンを反応させることによりホ
スホロハロリデート化合物を合成し、このホスホロハロ
リデート化合物を加水分解する手段を利用することがで
きる。ここで、ホスホン酸エステル化合物とハロゲンと
の反応温度は0〜40℃が好ましく、特に好ましくは5
〜25℃である。
【0043】また、ホスホン酸エステル化合物を酸化す
る前に、このホスホン酸エステル化合物を蒸留して精製
してもよい。この第3の方法においては、例えば、特定
のアルコール及び三ハロゲン化リンをモル比で3:1と
なる割合で用いることにより、ジエステルが高い純度で
得られる。また、特定のアルコールと三ハロゲン化リン
との割合及び反応条件を選択することにより、モノエス
テルとジエステルとの混合物が得られ、このとき、その
割合はモル比で99:1〜1:99となる範囲で調整さ
れる。
【0044】以上の第1〜第3の方法で得られた第1の
リン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、下記
式(25)−a、下記式(25)−b、下記式(26)
−a〜x、下記式(27)−a〜x、下記式(28)−
a〜v、下記式(29)−a〜nで表される化合物が挙
げられる。これらリン酸エステル化合物は、単独で又は
2種以上組み合わせて用いることができ、それらの銅化
合物における近赤外光吸収特性の観点からは、式(2
5)−b、式(27)−a〜x、式(28)−a〜v、
式(29)−a〜nで表されるリン酸エステル化合物が
好ましく、式(28)−s〜vで表されるリン酸エステ
ル化合物が特に好ましい。
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】〈(B)成分〉(B)成分は、上記リン酸
エステル化合物と銅化合物との反応により得られるリン
酸エステル銅化合物から成るものである。銅化合物とし
ては、前述した銅塩を用いることができ、上記リン酸エ
ステル化合物(以下、「特定のリン酸エステル化合物」
という)と銅塩との反応は、適宜の条件下で両者を接触
させることにより行われる。具体的には、下記(イ)、
(ロ)、(ハ)の方法等を用いることが可能である。
【0060】(イ)特定のリン酸エステル化合物と銅塩
とを混合して両者を反応させる方法。 (ロ)適宜の有機溶剤中において特定のリン酸エステル
化合物と銅塩とを反応させる方法。 (ハ)特定のリン酸エステル化合物が有機溶剤中に含有
されて成る有機溶剤層と、銅塩が溶解又は分散されて成
る水層とを接触させることにより、特定のリン酸エステ
ル化合物と銅塩とを反応させる方法。
【0061】また、この特定のリン酸エステル化合物と
銅塩との反応条件は、反応温度が0〜150℃、好まし
くは20〜120℃であり、反応時間が0.5〜15時
間、好ましくは1〜10時間、より好ましくは1〜7時
間である。
【0062】上記(ロ)の方法において用いられる有機
溶剤としては、用いられる特定のリン酸エステル化合物
を溶解又は分散し得るものであれば、特に限定されず、
例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合
物、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピ
ルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エ
チルセロソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエ
ーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等
のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケト
ン類、酢酸エチル等のエステル類、ヘキサン、ケロシ
ン、石油エーテル等が挙げられる。また、(メタ)アク
リレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、スチレ
ン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物等の重
合性を有する有機溶剤も用いられる。
【0063】一方、上記(ハ)の方法において用いられ
る有機溶剤としては、水に不溶又は難溶であって、用い
られる特定のリン酸エステル化合物を溶解又は分散し得
るものであれば、特に限定されず、例えば、(ロ)の方
法において用いられる有機溶剤として例示したもののう
ち、芳香族化合物、エーテル類、エステル類、ヘキサ
ン、ケロシン、(メタ)アクリル酸エステル類、芳香族
ビニル化合物等が挙げられる。
【0064】また、銅塩として酸塩を用いた場合には、
特定のリン酸エステル化合物と銅塩との反応において、
銅塩から陰イオンである酸成分が遊離される。このよう
な酸成分は、(A)成分及び/又は(B)成分を樹脂に
溶解又は分散せしめた樹脂組成物とするときに、その樹
脂組成物の耐湿性及び熱安定性を低下させる原因となり
得るため、必要に応じて除去することが好ましい。上記
(イ)又は(ロ)の方法によりリン酸エステル銅化合物
を製造する場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅
塩とを反応させた後、生成された酸成分((ロ)の方法
においては生成された酸成分及び有機溶剤)を蒸留によ
って除去することができる。
【0065】さらに、上記(ハ)の方法によってリン酸
エステル銅化合物を製造する場合には、酸成分を除去す
る好ましい方法として、水に不溶又は難溶の有機溶剤に
特定のリン酸エステル化合物が含有されて成る有機溶剤
層に、アルカリを添加することによって中和した後、こ
の有機溶剤層と銅塩が溶解又は分散された水層とを接触
させることより、特定のリン酸エステル化合物と銅塩と
を反応させ、その後、有機溶剤層と水層とを分離する方
法がある。
【0066】ここで、アルカリとしては、水酸化ナトリ
ウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられるが、
これらに限定されるものではない。この方法によれば、
銅塩から遊離される酸成分とアルカリとによって水溶性
の塩が形成され、この塩が水層に移行するとともに、生
成される特定のリン酸エステル銅化合物は有機溶剤層に
移行するため、この水層と有機溶剤層とを分離すること
により、酸成分が除去される。
【0067】さらに、上記式(2)、式(3)、式
(6)、又は式(7)で表されるリン酸エステル化合物
におけるアルキレンオキサイド基の繰り返し単位数m
は、1〜6、好ましくは1〜3の整数である。このmの
値が6を超えると、例えば、樹脂組成物としたときの硬
度が大幅に低下する。一方、mの値が0、すなわちアル
キレンオキサイド基が結合されていない場合には、樹脂
組成物とする場合に、銅イオンを樹脂中に分散させるこ
とが困難となる。
【0068】また、上記式(8)におけるアルキレンオ
キサイド基の繰り返し単位数kは、0〜5、好ましくは
0〜2の整数である。このkの値が5を超える場合に
は、樹脂組成物としたときの硬度が低下する傾向にあ
る。さらに、式(9)におけるアルキレンオキサイド基
の繰り返し単位数rは、1〜4の整数である。このrの
値が4を超えるものは、樹脂組成物としたときの吸湿性
が高くなり、成形品の伸縮が発生しやすい傾向にある。
特に、長期間の使用において、周囲環境の湿度変化によ
る伸びや縮みによって、例えば、表面被覆層がある場合
に、その表面被覆層の劣化が進行することがある。ま
た、rの値が4を超えると、成形品の剛性又は硬度が低
下してしまい、板状部材に必要な所望の機械的強度が得
られにくい傾向にある。さらに、rの値が4を超える場
合には、成形品に対して十分な耐熱性を得られないおそ
れがある。
【0069】またさらに、リン酸エステル化合物及びリ
ン酸エステル銅化合物の熱的安定性の観点から、上記ア
ルキレンオキサイド基の繰り返し単位数mが1であると
特に好適である。このmが1であるアルキレンオキサイ
ド基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エ
ステル銅化合物は、mが2以上の整数であるアルキレン
オキサイド基を有するものに比して、高い熱分解温度を
有する傾向があり、mが1であるアルキレンオキサイド
基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エス
テル銅化合物を含む組成物を熱成形する際に、その成形
温度を高めることができる。よって、成形が容易とな
り、成形加工性をより向上することが可能となる。
【0070】また、mが1であるアルキレンオキサイド
基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エス
テル銅化合物は、mが2以上の整数であるアルキレンオ
キサイド基を有するものに比して、耐湿性に優れる傾向
にある。具体的には、mが1であるアルキレンオキサイ
ド基を有するリン酸エステル化合物の銅塩及びリン酸エ
ステル銅化合物を用いた光学フィルタは、高温多湿の環
境下でも可視光透過率の経時的な劣化が殆ど無いのに対
し、mが2以上の整数であるアルキレンオキサイド基を
有するものは、経時的な劣化が比較的起こりやすい傾向
にある。
【0071】なお、上述したように、特定のリン酸エス
テル化合物としては、モノエステルかジエステルが用い
られるが、上記式(1)において水酸基が結合していな
いトリエステルは、銅イオンと配位結合及び/又はイオ
ン結合が可能な水酸基を有しないため、樹脂組成物とす
る場合等に銅イオンを樹脂中に分散させることが困難で
ある。
【0072】またさらに、式(2)〜(6)におけるR
11〜R17は炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、更
に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2のアルキル
基、又は、炭素数が6〜20のアリール基若しくはアラ
ルキル基である(ただし、芳香環を構成する炭素原子に
結合した水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハ
ロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
い)。
【0073】また、式(7)におけるR51、及び式
(8)におけるR52は炭素数が1〜20、好ましくは1
〜10、更に好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2
のアルキル基である。これらR11〜R17、R51及びR52
の炭素数が20を超えるリン酸エステル化合物は、樹脂
組成物とした場合に、樹脂との相溶性が低下する場合が
あり、樹脂中に銅イオンを分散させ難い。
【0074】また、式(2)におけるR21、式(3)に
おけるR22、及び式(6)におけるR23〜R25は、炭素
数が1〜4のアルキル基である(ただし、R23、R24
25が全て水素の場合を除く)。すなわち、式(2)及
び式(3)におけるアルキレンオキサイド基としては、
プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基等が挙
げられ、式(6)におけるアルキレンオキサイド基とし
てはブチレンオキサイド基等が挙げられる。これらのな
かでは、プロピレンオキサイド基を有するものが好まし
い。また、これらR21〜R25の炭素数が4を超える場合
には、(A)成分及び/又は(B)成分を溶媒や樹脂中
に高い割合で分散させることが困難となる。
【0075】さらに、式(7)におけるR31、及び式
(8)におけるR32は、炭素数が1〜6、好ましくは1
〜4、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは3のアル
キレン基である。すなわち、アルキレンオキサイド基
(OR31、OR32)としては、メチレンオキシ基、エチ
レンオキシ基、プロピレンオキシ基、ブチレンオキシ
基、ペンチレンオキシ基、ヘキシレンオキシ基などが挙
げられ、特にプロピレンオキシ基及びブチレンオキシ基
が好ましい。
【0076】このR31及びR32の炭素数が6を超える場
合には、(A)成分及び/又は(B)成分を溶媒や樹脂
中に高い割合で分散させることが困難である。またさら
に、式(8)におけるR41は、炭素数が1〜10、好ま
しくは3〜6、更に好ましくは3〜4、特に好ましくは
3のアルキレン基である。さらにまた、式(9)におけ
るR61は水素原子又はメチル基である。
【0077】上記のような(A)成分及び(B)成分の
うち少なくとも一成分を含有して成る近赤外光吸収層を
備える本発明の光学フィルタによれば、特定のリン酸エ
ステル化合物のリン酸基が配位結合及び/又はイオン結
合により銅イオンに結合し、この銅イオンはリン酸エス
テルに囲まれた状態で近赤外光吸収層中に溶解又は分散
されており、この銅イオンのd軌道間の電子遷移によっ
て近赤外光が選択吸収される。
【0078】ここで、(A)成分及び/又は(B)成分
から成る近赤外光吸収層における銅イオンの含有割合
は、近赤外光吸収層全体に対して、好ましくは2〜60
重量%、より好ましくは2〜20重量%、特に好ましく
は2〜15重量%となるように調整される。この銅イオ
ンの含有割合が、2重量%未満であると、光学フィルタ
又は近赤外光吸収層の厚さを1mm程度よりに薄くした
ときに、十分な近赤外光吸収性を得ることが困難な傾向
となる。一方、銅イオンの含有割合が60重量%を超え
ると、銅イオンを近赤外光吸収層中に分散させることが
困難となる傾向にある。また、上述の如く、近赤外光吸
収層が上記(A)成分及び/又は上記(B)成分を含有
する樹脂組成物で形成される場合にも同様な傾向を示
す。
【0079】また、前述の金属イオンの使用割合は、銅
イオンを含む全金属イオンにおける50重量%以下であ
ることが好ましく、より好ましくは30重量%以下、更
に好ましくは20重量%以下である。この割合が50重
量%を超える場合には、銅イオンとリン酸エステル化合
物との結合配位が他の金属イオンの影響を受けるため、
近赤外光吸収性が十分に高められない傾向にある。
【0080】また、近赤外光吸収層中における特定のリ
ン酸エステル化合物と銅イオンとの含有割合は、近赤外
光吸収層中のリン原子の含有量が銅イオン1モルに対し
て0.4〜1.3モル、すなわち、P/Cuがモル比で
0.4〜1.3、好ましくは0.8〜1.3モルとなる
ように調整される。P/Cuがモル比で0.4未満であ
ると、特定のリン酸エステル化合物に対して配位する銅
イオンが過剰となり、銅イオンが近赤外光吸収層中に均
一に分散しにくくなる傾向にある。この傾向は、近赤外
光吸収層が上述した樹脂組成物から形成される場合も同
様である。
【0081】一方、P/Cuがモル比で1.3を超える
と、光学フィルタの厚さを薄くして銅イオンの含有量
を、上記のように近赤外光吸収性層全体に対して2重量
%以上となるように高めた場合に、失透が起こりやすく
なる傾向にあり、高温多湿の環境では特にこの傾向が顕
著となる。したがって、本発明の光学フィルタは、近赤
外光吸収層におけるP/Cuがモル比で0.4〜1.3
とされているので、銅イオンが近赤外光吸収層中へ均一
に分散されて良好且つ十分な近赤外光吸収性が得られる
とともに、厚さを薄くして銅イオンの含有量を高めても
耐湿性に極めて優れた光学フィルタを得ることが可能と
なる。
【0082】特に、このモル比が0.8以上であると、
樹脂中への銅イオンの分散性を確実に且つ十分に高める
ことができる。よって、近赤外光吸収層におけるP/C
uをモル比で0.8〜1.3とすれば、銅イオンが近赤
外光吸収層中へより一層均一に分散されて更に良好な近
赤外光吸収性が得られる共に、耐湿性に更に優れた光学
フィルタを得ることができる。
【0083】さらに、特定のリン酸エステル化合物は、
上記式(9)におけるR61がメチル基であり、且つ、上
記式(9)におけるpが2又は3であり、且つ、上記式
(9)におけるrが1のもの(すなわち、上記式(1
0)で表されるリン酸エステル化合物、又は、上記式
(11)で表されるリン酸エステル化合物)とすると、
上記pが4以上であるアルキレンオキサイド基を含む式
(9)で表されるメタクリロイルオキシアルキル基を有
するリン酸エステル化合物に比して、近赤外光吸収性が
顕著に高められる。
【0084】したがって、光学フィルタの近赤外光に対
する選択吸収性及び可視光に対する選択透過性を向上さ
せることができる。また、これらアルキレンオキサイド
基の繰返し数であるrが1であると、光学フィルタの可
視光透過率の経時的な劣化が殆ど無い。よって、光学フ
ィルタの耐湿性の向上を一層図りうる。これに対し、r
が2以上、更にはrが4を超える整数であるアルキレン
オキサイド基を有する光学フィルタは、耐湿性、剛性、
耐熱性等の経時的な劣化が比較的起こりやすい傾向にあ
る。
【0085】またさらに、式(1)で表されるリン酸エ
ステル化合物のうち、芳香環を有するリン酸エステル化
合物と、芳香環を有しないリン酸エステル化合物とを混
合して用いると、可視光と近赤外光との境界にあたる波
長領域(概ね波長750nm前後)における可視光側の
透過率、及びその波長領域における近赤外光側の吸収率
がともに高められた光学フィルタを得ることができる。
【0086】特に、上記芳香環を有するリン酸エステル
化合物が、上記式(25)−a及び/又は上記式(2
5)−b、好ましくは式(25)−bで表される化合物
であると、近赤外光の選択吸収性、及び可視光の選択透
過性により優れるとともに、後述する液状の組成物を得
る際に、(A)成分及び/又は(B)成分の溶剤への溶
解性を高めることができる。このとき、上記の芳香環を
有するリン酸エステル化合物及び/又はその銅化合物
と、芳香環を有しないリン酸エステル化合物及び/又は
その銅化合物との含有割合が、重量比で10:90〜9
0:10、好ましくは40:60〜90:10、特に好
ましくは60:40〜85:15であると好適である。
【0087】本発明の光学フィルタを構成する近赤外光
吸収層としては、上記(A)成分及び上記(B)成分の
うち少なくとも一つの成分のみから形成されてもよく、
上述の如く上記成分が樹脂中に含有されて成る樹脂組成
物から形成されてもよい。また、上記成分を溶剤中に溶
解又は分散せしめて成る液状組成物を基材等に塗布し、
溶剤を蒸発させて近赤外光吸収層としてもよい。また、
光学フィルタ全体が近赤外光吸収層で形成されていても
もちろんよい。以下、近赤外光吸収層を形成するのに好
適な液状組成物、樹脂組成物、及び、樹脂組成物のひと
つとしての粘着性樹脂組成物について説明する。
【0088】〈液状組成物〉上記の通り、液状組成物
は、上記(A)成分及び上記(B)成分のうち少なくと
も一つの成分が溶剤中に溶解又は分散されたものであ
り、溶媒を蒸発させて生成される薄膜状の近赤外光吸収
層が光学的に透明であれば、液状組成物自体は、透明な
もの、半透明なもの、又は不透明なものであってもよ
い。
【0089】この溶剤としては、水又は有機溶媒を用い
ることができ、有機溶媒としては、メチルアルコール、
エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルア
ルコール等のアルコール類、メチルセルソルブ、エチル
セルソルブ等のグリコールエーテル類、ジエチルエーテ
ル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプ
ロピル、酢酸ブチル、酢酸ブチルセルソルブ等のエステ
ル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合
物、ヘキサン、ケロシン、石油エーテル等が用いられ
る。また、他の溶剤として、後述する樹脂組成物で説明
するような樹脂を構成する単量体(モノマー)、例え
ば、(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エス
テル類、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニ
ル化合物等の重合性を有する有機溶媒を用いることもで
きる。
【0090】また、この液状組成物における上記(A)
成分及び/又は上記(B)成分の含有割合は、使用され
る溶剤の種類や、光学フィルタの用途又は使用目的によ
って異なるが、調合後の粘度の観点から、通常、溶剤1
00質量部に対して、0.1〜1900質量部、好まし
くは1〜900質量部、特に好ましくは5〜400質量
部となる範囲で調整される。
【0091】このような液状組成物を、例えば、可視光
に対する透光性を有する薄いガラス材や樹脂材(薄い樹
脂板、樹脂フィルム等)等に塗布することにより、極め
て簡易に本発明の光学フィルタを得ることができる。ま
た、この液状組成物を種々の大きさや形状を有する物品
等の任意の部位や面に塗布するだけで、そのような面に
薄膜状の光学フィルタを設けることが至って平易とな
り、大面積の面へ光学フィルタを設ける場合に非常に有
用である。しかも、溶剤を樹脂又はモノマーとすれば、
樹脂フィルム等の薄膜状の近赤外光吸収性材料を極めて
簡易に得ることもできる。
【0092】〈樹脂組成物〉上記(A)成分及び上記
(B)成分はともに樹脂との相溶性に優れており、ま
た、上述したように、銅イオンが樹脂中に良好に分散さ
れるので、優れた近赤外光吸収特性を有する樹脂組成物
を得ることができる。この樹脂組成物は、単量体組成物
としてもよいし、単量体組成物を重合することにより重
合体組成物としても構わない。このような樹脂組成物を
構成する単量体(モノマー)としては、(A)成分及び
(B)成分のうち少なくともいずれか一方の成分の分散
性に優れる樹脂であれば特に限定されるものではなく、
例えば、以下に示すアクリル系樹脂、又はアクリル系樹
脂以外の単量体を好ましく用いることができる。
【0093】アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリ
ル酸エステル系単量体から得られる重合体が好ましく用
いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体
例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレー
ト、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メ
タ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリ
レート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オク
チル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリ
レート類、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒド
ロシキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキプ
ロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メ
タ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレー
ト、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フェ
ノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレ
ート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタ
ンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサン
ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ
ールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3
−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メ
タ)アクリロキシエトキシフェニル〕プロパン、2−ヒ
ドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)ア
クリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メ
タ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリ
レート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられ
る。
【0094】なお、上記( )で囲まれた「メタ」の意
味は、アクリル酸若しくはその誘導体、及びメタクリル
酸若しくはその誘導体の両方を記載する必要があるとき
に、記載を簡潔にするため便宜上使用されている記載方
法であり、本明細書においても採用したものである。
【0095】また、別のアクリル系樹脂としては、上記
の(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、この(メ
タ)アクリル酸エステル系単量体との共重合が可能な他
の共重合性単量体との共重合体も用いられる。
【0096】このような共重合性単量体の具体例として
は、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオ
キシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ
エチルフタル酸等の不飽和カルボン酸、N,N−ジメチ
ルアクリルアミド等のアクリルアミド類、スチレン、α
−メチルスチレン、クロルスチレン、ジブロムスチレ
ン、メトキシスチレン、ビニル安息香酸、ヒドロキシメ
チルスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
また、アクリル系樹脂以外の他の樹脂としては、ポリエ
チレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、さら
にはスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、
ジブロムスチレン、メトキシスチレン、ビニル安息香
酸、ヒドロキシメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物
等の重合体が挙げられる。以上の単量体は、単独で又は
2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0097】また、単量体として単官能性のもののみを
用いる場合には、熱可塑性の樹脂が得られ、単量体の一
部又は全部として多官能性のものを用いる場合には、熱
硬化性の樹脂が得られるので、これら樹脂組成物を適宜
選択することにより、使用目的、用途及び加工成形方法
等に応じた光学フィルタを得ることが可能となる。これ
らのうち、熱可塑性のものを用いれば、重合硬化後の再
成形が容易となるので、光学フィルタの成形加工性が向
上される。
【0098】樹脂組成物は、上記(A)成分及び/又は
上記(B)成分を上記樹脂中に含有させることにより調
製され、このとき、(A)成分及び/又は(B)成分の
含有割合は、光学フィルタの用途又は使用目的によって
異なるが、成形性(又は成型性)の観点から、通常、樹
脂100質量部に対して、0.1〜400質量部、好ま
しくは0.3〜200質量部、特に好ましくは1〜10
0質量部となる範囲で調整される。また、樹脂組成物に
おける銅イオンの割合は、樹脂組成物全体に対して、好
ましくは2〜60重量%、より好ましくは2〜20重量
%、特に好ましくは2〜15重量%となるように調整さ
れる。また、樹脂組成物を調製するための具体的な方法
は、特に限定されるものではないが、以下の2つの方法
によると好適である。
【0099】[第1の方法]:この第1の方法は、単量
体中に、(A)成分及び/又は(B)成分を含有させて
単量体組成物を調製し、この単量体組成物をラジカル重
合処理する方法である。この方法において、単量体組成
物のラジカル重合処理の具体的な方法としては、特に限
定されるものではなく、通常のラジカル重合開始剤を用
いるラジカル重合法、例えば、塊状(キャスト)重合
法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等の公知の方
法を利用することができる。
【0100】[第2の方法]:この第2の方法は、樹脂
中に、(A)成分及び/又は(B)成分を添加して混合
する方法である。この方法は、樹脂として熱可塑性樹脂
を用いるときに利用される。具体的には、溶融させた
樹脂中に、(A)成分及び/又は(B)成分を添加して
混練する方法、樹脂を適宜の有機溶剤に溶解、分散又
は膨潤させ、この溶液に(A)成分及び/又は(B)成
分を添加して混合した後、この溶液から有機溶剤を除去
する方法がある。
【0101】上記の方法において、樹脂と(A)成分
及び/又は(B)成分とを混練する手段としては、熱可
塑性樹脂の溶融混練法として一般に用いられている手
段、例えば、ミキシングロールによって溶融混練する手
段、ヘンシェルミキサー等によって予備混合した後、押
出機によって溶融混練する手段が挙げられる。一方、上
記の方法で用いられる有機溶剤としては、上記樹脂を
溶解、分散又は膨潤し得るものであれば、特に限定され
るものではなく、その具体例としては、メチルアルコー
ル、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のア
ルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン
類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素
類、塩化メチレン等の塩素系炭化水素類、ジメチルアク
リルアミド、ジメチルフォルムアミド等のアミド化合物
等が挙げられる。
【0102】以上の樹脂組成物の調製において、(A)
成分を用い、銅塩として有機酸又は無機酸の銅塩を用い
る場合には、特定のリン酸エステル化合物と銅塩とが反
応する結果、銅塩から陰イオンである酸成分が遊離され
る。このような酸成分は、必要に応じて除去されること
が好ましい。そのための方法としては、(a)樹脂組成
物を適宜の有機溶剤に浸漬させることにより、酸成分を
抽出する方法、(b)単量体組成物の重合処理を行う前
に、この単量体組成物を冷却処理することにより、酸成
分を析出させて分離するといった方法が例示される。
【0103】また、上記の樹脂組成物の調製を行う際に
は、水を共存させることが好ましい。すなわち、光学フ
ィルタの製造方法として、前述の式(1)で表される特
定のリン酸エステル化合物と銅塩と水とを混合し又は接
触させる工程を実施する、換言すれば、特定のリン酸エ
ステル化合物及び銅塩を混合又は接触させる際に水を共
存させると好ましい。
【0104】このようにすれば、単量体組成物の安定性
を十分に向上できる。しかも、単量体組成物を重合して
得られる重合体(光学フィルタの近赤外光吸収層)の透
明性を向上させることが可能となる。このとき、水を共
存させる方法としては、単量体組成物を調製する際に水
を更に添加する方法等が挙げられる。より具体的には、
例えば、樹脂を構成する単量体に特定のリン酸エステル
化合物及び銅塩を加えた後に、液体の水又は気体の水
(水蒸気)を添加又は導入するとよい。こうすれば、
(A)成分及び/又は(B)成分を樹脂の単量体に溶解
又は分散させ易い利点がある。
【0105】このような水を添加する方法は、銅塩とし
て酢酸銅、酢酸銅一水和物、安息香酸銅等の有機酸の銅
塩無水物や水和物を用いるときに特に好適である。ま
た、銅塩として水酸化銅、塩基性炭酸銅等を用いた場合
には、上記のような酸成分の除去は必要ないが、単量体
組成物の調整時に常圧又は減圧下で還流脱水することが
好ましい。このようにすれば、上述の如く銅塩として酸
の銅塩無水物や水和物を用いるときに水を共存させた場
合と同様な効果を得ることができる。
【0106】これは、単量体組成物中に水が不足してる
場合には添加し、過剰量存在している場合には除去する
ことで、単量体組成物の安定性を向上させ、単量体組成
物を重合して得られる重合体の透明性を向上できること
によると考えられる。より深考すれば、単量体組成物又
はその重合体中に含まれる水の過不足無い好適な含量範
囲があると推定される。ただし、作用機序はこれに限定
されるものではない。
【0107】そして、このようにして得られた単量体組
成物は、水(水分)を0.1〜5重量%含有することが
好ましい。この水分含量が0.1重量%を下回ると、単
量体組成物の安定性が十分ではない場合があると共にそ
の重合体の透明性を十分に向上できないことがある。一
方、この水分含量が5重量%を上回ると、重合体に白化
が生じることがあり、この場合、重合体の透明性が顕著
に低下してしまう。
【0108】上記(a)の方法において用いられる有機
溶剤としては、遊離される酸成分を溶解することがで
き、用いられる樹脂に対して適度な親和性(樹脂を溶解
しないが、この樹脂中に浸透する程度の親和性)を有す
るものであれば、特に限定されるものではない。このよ
うな溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチル
アルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルア
ルコール等の低級脂肪族アルコール、アセトン、メチル
エチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、
ジエチルエーテル、石油エーテル等のエーテル類、n−
ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、クロロホル
ム、メチレンクロライド、四塩化炭素等の脂肪族系炭化
水素類及びそのハロゲン化物、ベンゼン、トルエン、キ
シレン等の芳香族系炭化水素類等が挙げられる。
【0109】一方、上記(b)の方法においては、
(A)成分を構成する銅塩として、遊離される酸成分が
単量体に溶解しにくいもの、或いは有機酸又は無機酸塩
以外の銅塩を用いることが好ましく、具体的には、安息
香酸等の芳香環を有するカルボン酸の銅塩や水酸化銅が
挙げられる。
【0110】〈粘着性樹脂組成物〉アクリル系樹脂以外
の樹脂を含む組成物のなかで、ポリビニルブチラール系
樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、又はその共重合
体の部分鹸化物を含む組成物は、ガラス材又はプラスチ
ック材から成る基材に対する接着性に優れており、且
つ、それ自体が柔軟性を有し、さらに温度依存性が小さ
いという特性を有している。
【0111】したがって、上記(A)成分及び/又は上
記(B)成分を含むこのような樹脂組成物は、粘着性樹
脂組成物であり、接着剤を用いなくとも基材への接着が
確実であり、よって、成形加工性に優れた光学フィルタ
を簡易に得ることができるとともに、得られた光学フィ
ルタの温度変化に対する耐性を向上させることができ
る。
【0112】また、以上の樹脂組成物には、他の成分と
して樹脂と相溶性を有する種々の可塑剤を含有させるこ
とができ、これにより、銅イオンの樹脂成分中への分散
性を高めることができる。このような可塑剤の具体例と
しては、リン酸トリクレジル、リン酸トリフェニル等の
リン酸エステル系可塑剤、ジオクチルフタレート、ジブ
チルフタレート等のフタル酸系可塑剤、ジブチルセバケ
ート、ブチルリシノレート、メチルアセチルリシノレー
ト、ブチルサクシネート等の脂肪酸系可塑剤、ブチルフ
タリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジ
ブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブ
チラート、ポリエチレングリコール等のグリコール系可
塑剤等が挙げられる。また、ベンゾトリアゾール系、ベ
ンゾフェノン系又はサリチル酸系の紫外線吸収剤、その
他の抗酸化剤、安定剤等を更に含有させることもでき
る。
【0113】次に、上記のような近赤外光吸収層を備え
る光学フィルタ(上述したように、光学フィルタ全体が
近赤外光吸収層であってもよい)を適用した好適な用途
について例示する。
【0114】〈ディスプレイ前面板〉本発明による光学
フィルタを、プラズマ・ディスプレイ・パネル( Plasm
a Display Panel ;以下単にPDPという)等の電子デ
ィスプレイの前面板、いわゆるディスプレイ前面板に適
用すると極めて好適である。これら電子ディスプレイに
備わる発光体の中には、波長800nm〜1100nm
の近赤外光を発生するものがあり、電子ディスプレイの
前面から出射された近赤外光が、電子ディスプレイ周辺
で使用されるTV等の近赤外光リモートコントロールシ
ステム(赤外線リモコン)の誤動作を引き起こすといっ
た問題がある。特に、PDPにおいては、発光体電極間
に封入されている希ガス(Xe,Ne)の放電励起が利
用されており、他の電子ディスプレイに比して高強度の
近赤外光が発光される。このような事情から、近赤外光
の吸収特性及び可視光の透過性に優れたディスプレイ前
面板が望まれている。
【0115】そこで、例えば、ディスプレイ前面板を構
成する基板(ガラス、樹脂製の基板等)に本発明の光学
フィルタを貼合することにより、近赤外光の選択吸収性
及び可視光の選択透過性に優れたディスプレイ前面板を
得ることが可能となる。しかも、光学フィルタの耐湿性
が向上されるので、そのようなディスプレイ前面板の失
透を長期にわたって防止でき、このディスプレイ前面板
の製品寿命を伸長させることが可能となる。また、
(A)成分及び/又は(B)成分そのもの、又は上述の
液状組成物を基板上に塗布して乾燥させれば、ディスプ
レイ前面板の表面に薄膜状の近赤外光吸収層から成る光
学フィルタが形成されることとなる。以下、このような
ディスプレイ前面板の一例について説明する。
【0116】図1(a)は、本発明の光学フィルタを用
いたディスプレイ前面板の一例を示す摸式断面図であ
り、図1(b)はその積層構造を示す分解斜視図であ
る。ディスプレイ前面板1は、PDPの前面に取り付け
られる光学的に透明な板状を成す透明部材11の一方の
面に、本発明の光学フィルタ16が貼合され、更に、導
電性を有する細線が縦横に編み込まれてメッシュ状を成
すシールドメッシュ13が、樹脂製(例えば、ポリエチ
レンテレフタレート(PET)製)の透明フィルム14
で覆われるように貼付されたものである。また、透明部
材11の他方面の全域には反射低減膜12が形成されて
いる。さらに、シールドメッシュ13と接していない透
明フィルム14の面には反射防止膜15が形成されてい
る。
【0117】透明部材11に形成された光学フィルタ1
6としては、以下の3種類の形態が好適である。 [第1の形態]:透明部材11上に、(A)成分及び/
又は(B)成分が貼合又は塗布されたもの、或いは、上
述の液状組成物又は粘着性樹脂組成物が、貼合又は塗布
されて、乾燥されて薄膜となったもの。 [第2の形態]:上述の樹脂組成物から成る薄い板状又
はフィルム状のもの。 [第3の形態]:薄い透明体(板、フィルム等)に、
(A)成分及び/又は(B)成分が貼合又は塗布された
もの、上述の液状組成物又は粘着性樹脂組成物が貼合又
は塗布されたもの、或いは、上述の樹脂組成物から成る
フィルムが貼合されたもの。
【0118】上記樹脂組成物に用いられる樹脂として
は、アクリル系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、スチレ
ン系樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂が好ま
しく、可視光透過性、耐候性、成形加工性等の観点から
は、アクリル系樹脂が特に好ましい。アクリル系樹脂か
ら成る樹脂組成物を用いると、ディスプレイに表示され
た映像が暗くならずに観賞し易く、また、耐久性に優れ
るとともに、加工形状の制約が少ないディスプレイ前面
板1を得ることができる。
【0119】ここで、上記各形態の光学フィルタ16を
含む透明部材11を備えるディスプレイ前面板1におい
ては、波長800nm〜1000nmの波長領域におけ
るディスプレイ前面板1としての近赤外光の透過率が2
0%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10
%以下となるように、本発明による光学フィルタ中の
(A)成分及び/又は(B)成分の種類、濃度、層厚
(塗布又は積層される場合はその層の厚さ、樹脂に分散
される場合は樹脂層の厚さ)が調整されている。このよ
うにすれば、例えば、赤外線通信等で主に利用されてい
る波長950nm近傍の近赤外光が十分に減衰されるの
で、ディスプレイの周囲に赤外線リモコン等がある場合
でもそれらが誤動作するおそれが少ない。
【0120】また、シールドメッシュ13を、例えば、
銅やニッケルといった遷移金属で被覆されたプラスチッ
ク繊維で編成すると、数MHz〜1GHz程度の周波数
範囲の電磁波を有効に且つ確実に遮へいすることができ
る。また、反射低減膜12及び反射防止膜15は、例え
ば、二酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の低屈折率材料
から成る薄膜と、二酸化チタンや酸化イットリウム等の
高屈折率材料の薄膜とを交互に積層することにより形成
できる。
【0121】図2は、図1に示すディスプレイ前面板1
の使用状態を示す斜視図である。図2に示すように、デ
ィスプレイ前面板1は、反射防止膜15が形成された面
を前方にして、PDP2のパネル面21を覆うように配
置される。そして、PDP2のパネル面21から発せら
れた近赤外光は、光学フィルタ16により吸収されて強
度が20%以下、好ましくは15%以下、更に好ましく
は10%以下に減じられる。一方、PDP2のパネル面
21から近赤外光と同時に発せられる可視光は、ディス
プレイ前面板1に備わる光学フィルタ16によって殆ど
吸収されない。したがって、図2に示すPDP2の周辺
に、近赤外光で作動するような機器が置かれていても、
PDP2のパネル面21から出射される近赤外光がそれ
ら機器の誤動作を起こすことを有効に防止できるととも
に、パネル面21に映し出される映像等を支障なく観賞
できる。
【0122】また、PDP2のパネル面21からは電磁
波が放出されるが、このような電磁波は、図1(a)及
び(b)に示すシールドメッシュ13によって有効に遮
蔽されるので、PDP2の観賞中にこのような電磁波に
曝されることがない。さらに、このシールドメッシュ1
3は、金属並の導電性を有するため、ディスプレイ前面
板1に静電気が殆ど帯電せず、静電気によりディスプレ
イ前面板1に埃等が付着することが防止される。またさ
らに、シールドメッシュ13が、プラスチック繊維を主
成分としているものであると、ディスプレイ前面板1を
軽量化することが可能である。しかも、シールドメッシ
ュ13は柔軟性に富むので、ディスプレイ前面板1が凹
凸形状を有する場合でも容易に貼合できる利点がある。
【0123】また、ディスプレイ前面板1側からパネル
面21へ入射する外光(主に自然光や電灯からの光)
は、ディスプレイ前面板1の反射防止膜15に入射する
と、反射防止膜15を形成する屈折率の異なる多層の作
用によって反射することが防止される。これにより、P
DP2の周囲が明るくても、外光の反射によってパネル
面21の映像等が見え難くなることを防止できる。この
とき、外光のごく一部は反射防止膜15を透過するが、
この透過光は反射低減膜12によって反射が低減され
る。よって、外光の反射によってパネル面21に写った
映像等が見え難くなることを一層防止できる。
【0124】ところで、近赤外光や赤外光は熱線であ
り、熱線の吸収が必要とされる部材に本発明の光学フィ
ルタを貼合又は形成させても好適である。以下、具体的
な適用例として、熱線吸収性コーティング、熱線吸収性
複合体、及び熱線吸収性粘着剤を用いた熱線吸収体につ
いて説明する。
【0125】〈熱線吸収性コーティング〉上記(A)成
分及び/又は上記(B)成分を適宜の溶剤に溶解又は分
散させたもの、すなわち、上述した液状組成物をコーテ
ィングが必要な面に塗布し、溶剤を蒸発させると、その
面の一部又は全部に薄膜を形成させることができる。こ
の薄膜が本発明の光学フィルタ(近赤外光吸収層)であ
り、近赤外光吸収性及び耐湿性に優れた熱線吸収性コー
ティングとなる。このように形成される薄膜状の光学フ
ィルタが光学的に透明であれば、液状組成物自体は、透
明なもの、半透明なもの又は不透明なものであってもよ
い。
【0126】また、(A)成分及び/又は(B)成分の
溶剤への溶解性又は分散性を高めるために、或いは、熱
線吸収性コーティングを施した面、すなわち、光学フィ
ルタが形成された面の平坦性等を高めるために、液状組
成物に溶解補助剤等を添加剤として加えてもよい。この
ような添加剤としては、例えば、レベリング剤、消泡剤
としての各種の界面活性剤が好ましく用いられる。熱線
吸収性コーティングのための液状組成物における上記
(A)成分及び/又は上記(B)成分の含有割合は、使
用される液状媒体の種類や、熱線吸収性コーティング剤
の用途又は使用目的によって異なるが、調合後の粘度の
観点から、通常、液状媒体100質量部に対して、0.
1〜1900質量部、好ましくは1〜900質量部、特
に好ましくは5〜400質量部となる範囲で調整される
と好適である。
【0127】〈熱線吸収性複合体〉熱線吸収性複合体と
しては、透光性を有する基材の一方の面に、本発明の光
学フィルタが貼合又は形成されたものが有用であり、こ
の光学フィルタ上に透光性を有するもうひとつの基材が
更に貼合されていてもよい。基材を構成する材料として
は、可視光透過性を有するものであれば、特に限定され
るものではなく、熱線吸収性複合体の用途に応じて適宜
選択されるが、硬度、耐熱性、耐薬品性、耐久性等の観
点から、無機ガラス若しくは有機ガラス等のガラス材、
又は、例えば、ポリカーボネイト、アクリロニトリル−
スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、塩化ビ
ニル系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等のプラスチ
ック材料を用いると好適である。
【0128】また、基材は、それぞれ同じ種類の材料で
構成されていてもよく、或いは互いに異なる材料で構成
されていてもよい。さらに、光学フィルタが貼合又は形
成されていない側の基材の面が硬化処理されていると、
その面の損傷防止及び耐久性の観点から好ましい。ま
た、基材には更に他の透光性材料より成る層が設けられ
ていてもよい。このようにすれば、近赤外光吸収性及び
耐湿性に優れた熱線吸収性複合体を得ることができる。
【0129】また、熱線吸収性複合体の基材及び光学フ
ィルタのうち少なくとも一つの面には、反射低減層又は
反射防止層が設けられていてもよい。この反射低減層又
は反射防止層としては、無機酸化物、無機ハロゲン化物
等より成る公知の材料を用いて、真空蒸着、イオンプレ
ーティング、スパッタリングといった種々公知の方法に
よって形成させることができる。また、必要に応じて、
特定波長の可視光を吸収する可視光吸収剤、例えば、波
長500〜600nmを選択的に吸収するコバルトイオ
ンを含む金属イオン含有成分等やその他の添加剤が樹脂
組成物中に混合されていてもよい。
【0130】〈熱線吸収性粘着剤を用いた熱線吸収体〉
熱線吸収性粘着剤としては、粘着性を有する樹脂と上記
(A)成分及び/又は上記(B)成分とを含有して成る
ものが有用である。粘着性を有する樹脂としては、粘着
性を有するアクリル系樹脂を好ましく用いることがで
き、これは、粘着成分を構成するアクリル系樹脂の単量
体を含有する単量体組成物を重合処理することにより得
られる。このようなアクリル系樹脂の単量体としては、
アルキル基の炭素数が4〜12であって、ホモポリマー
のガラス転移点が−70〜−30℃であるアクリル酸ア
ルキルエステルを好適に用いることができ、具体的に
は、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアク
リレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート
等が挙げられる。
【0131】また、粘着性を有するアクリル系樹脂を得
るための単量体組成物には、上記の粘着成分として用い
られるアクリル系樹脂の単量体の他に、凝集成分を構成
する単量体及び改質成分を構成する単量体を含有させる
ことが望ましい。この凝集成分を有する単量体として
は、粘着成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体
と共重合可能なものであって、得られる共重合体のガラ
ス転移点を高める作用を有するものが用いられ、具体的
には、炭素数が1〜3の低級アルキル基を有するアクリ
ル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステ
ル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、
スチレン等が挙げられる。
【0132】また、上記改質成分として用いられる単量
体としては、上記粘着成分として用いられるアクリル系
樹脂の単量体と共重合可能であって、官能基を有するも
のが用いられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル
酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル等のカルボキ
シル基含有化合物、2−ヒドロキシエチルアクリレー
ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の水酸基含
有化合物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−t
ert−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリル
アミド等の酸アミド化合物、グリシジルアクリレート、
グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体
等が挙げられる。
【0133】上記単量体組成物における各単量体の使用
割合は、用いられる単量体の種類、得られるアクリル系
樹脂組成物の使用目的等によって異なるが、通常、粘着
成分として用いられるアクリル系樹脂の単量体が30〜
95質量%、凝集成分として用いられる単量体が5〜5
0質量%、改質成分として用いられる単量体が0.1〜
10質量%である。また、この単量体組成物を重合処理
する方法としては、溶液重合法及び乳化重合法を用いる
ことができる。
【0134】これら重合処理に用いられる触媒として
は、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソ
ブチルニトリル、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム
等の過酸化物が挙げられる。溶液重合法により単量体樹
脂組成物の重合処理を行う場合には、重合溶媒として種
々の有機溶媒を用いることができ、例えば、酢酸エチル
等のエステル類、芳香族炭化水素類、ケトン類等が挙げ
られる。また、乳化重合法により単量体組成物の重合処
理を行う場合には、乳化剤として、通常の乳化重合に使
用されている公知の種々のものを用いることができる。
【0135】そして、上記のように単量体組成物を重合
処理することにより、粘着性を有するアクリル系樹脂が
ポリマー溶液又はラテックスの状態で得られる。このよ
うにして得られたポリマー溶液又はラテックスに、
(A)成分及び/又は(B)成分を混合したものを、基
材上に、例えば、薄く引き伸ばすように貼付又は塗布す
ることにより、粘着性を有する光学フィルタが形成され
る。また、上記混合物には、必要に応じて、特定波長の
可視光を吸収する可視光吸収剤、例えば、波長500〜
600nmを選択的に吸収するコバルトイオンを含む金
属イオン含有成分等や、その他の添加剤を混合してもよ
い。
【0136】ここで、熱線吸収性粘着剤における上記
(A)成分及び/又は上記(B)成分の含有割合は、粘
着性を有するアクリル系樹脂の透光性や粘着性を損なわ
ない範囲でできるだけ多い方が望ましいが、粘着性を有
するアクリル系樹脂100質量部に対して、0.1〜4
00質量部、好ましくは0.3〜200質量部、より好
ましくは1〜100質量部の範囲で調整されると好適で
ある。この熱線吸収性粘着剤を透明基材に塗布すること
により、粘着性を有する光学フィルタが形成された熱線
吸収体を簡易に得ることができる。また、この光学フィ
ルタ上に基材を貼合させると、貼合のために接着剤を用
いることなく、上述の熱線吸収性複合体を簡易に得るこ
ともできる。
【0137】また、以上説明した熱線吸収性コーティン
グ、熱線吸収性複合体及び熱線吸収性粘着剤を用いた熱
線吸収体は、熱線の遮蔽が要求される透光性部材等に適
用されると好ましい。具体例としては、住宅やその他の
建造物の窓材、自動車や電車等の車両の窓材、航空機や
船舶等の車両の窓材といった採光と眺望を得るための部
材が挙げられる。このような窓材は、熱線遮蔽性を得る
ために可視光を吸収するような遮光部材を用いる場合に
比して、同等以上の熱線吸収性を有しつつ、可視光透過
性に優れているので、窓の外部の風景の視認性に優れて
おり、良好な開放感を得られる傾向にある。また、本発
明の光学フィルタが耐湿性に優れているので、この光学
フィルタを有する窓材等が高温多湿に曝される屋外等で
使用されても、失透が起こりにくく、良好な熱線吸収性
を長期間保持できる利点がある。
【0138】また、他の用途としては、植物栽培雰囲気
を覆う温室施設を構築するための農業用被覆材が挙げら
れる。温室施設は内部の保温を目的としているが、夏季
には外部からの熱線によって内部の温度が必要以上に上
昇してしまうおそれがある。そこで、上記の熱線吸収性
コーティングが施された農業用被覆材、或いは、上記の
熱線吸収性複合体及び熱線吸収体から形成された農業用
被覆材を用いれば、温室内等の過剰な温度上昇を有効に
抑制して、温室施設の利用期間を延長でき、稼働率を向
上することが可能となる。また、可視光透過性に優れて
いるので、温室外部からの内部の視認性も向上される。
また、本発明の光学フィルタは耐湿性に優れているの
で、この光学フィルタを有する農業用被覆材が屋外等で
使用されても、失透が起こりにくく、良好な熱線吸収性
を長期間保持できる利点がある。
【0139】
【実施例】以下、本発明に係る具体的な実施例について
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
【0140】〈実施例1〉 (1)上記式(28)−sで表されるリン酸エステル化
合物(以下、「リン酸エステルA」という)を16g、
上記式(28)−tで表されるリン酸エステル化合物
(以下、「リン酸エステルB」という)を14.4g、
ジエチレングリコールジメタクリレートを20g、メチ
ルメタクリレートを48.6g、及び、α−メチルスチ
レンを0.9g混合し、モノマー溶液を得た。 (2)このモノマー溶液に安息香酸銅(安息香酸第二
銅;以下同様)を32g加えて溶解させた後、−20℃
の冷蔵庫内に24時間静置し、安息香酸(融点122
℃)を結晶化させて析出させた。 (3)析出した安息香酸を−20℃の温度環境下でモノ
マー溶液から濾別分離した。 (4)このモノマー溶液に重合開始剤としてt−ブチル
パーオクタノエートを2.0g添加した。このモノマー
溶液をポリ塩化ビニル製ガスケットと2枚のガラス基板
から構成される重合用セルに注入し、45℃で16時
間、60℃で8時間、100℃で3時間と順次異なる温
度で加熱して厚さ0.5mmの板状で淡青色透明の光学
フィルタを得た(なお、この光学フィルタは、全体が近
赤外光吸収層となっている)。 (5)この光学フィルタ中のリン原子の含有量は、銅イ
オン1モルに対して1.13モル(すなわち、P/Cu
がモル比で1.13)であった。また、光学フィルタ中
の銅イオンの含有量は、6.1重量%であった。
【0141】〈実施例2〉リン酸エステルAを17.3
g、リン酸エステルBを15g、メチルメタクリレート
を46.7g用いたこと以外は、上記実施例1と同様に
して厚さ0.5mmの板状で淡青色透明の光学フィルタ
を得た。この光学フィルタ中のP/Cuはモル比で1.
20であった。また、光学フィルタ中の銅イオンの含有
量は、6.1重量%であった。
【0142】〈実施例3〉モノマー溶液に水を0.7g
添加したこと以外は、実施例2と同様にして厚さ0.5
mmの板状で淡青色透明の光学フィルタを得た。この光
学フィルタのP/Cuはモル比で1.20であった。ま
た、光学フィルタ中の銅イオンの含有量は、6.1重量
%であった。
【0143】〈比較例1〉リン酸エステルAを12g、
リン酸エステルBを11.7g、メチルメタクリレート
を55.3g、安息香酸銅を20g用いたこと以外は、
上記実施例1と同様にして厚さ0.5mmの板状で淡青
色透明の光学フィルタを得た。この光学フィルタ中のP
/Cuのモル比は1.42であった。また、光学フィル
タ中の銅イオンの含有量は、3.9重量%であった。
【0144】〈比較例2〉リン酸エステルAを21.5
g、リン酸エステルBを23.5g、メチルメタクリレ
ートを34g用いたこと以外は、実施例1と同様にして
厚さ0.5mmの板状で淡青色透明の光学フィルタを得
た。この光学フィルタ中のP/Cuのモル比は1.71
であった。また、光学フィルタ中の銅イオンの含有量
は、6.1重量%であった。
【0145】〈比較例3〉リン酸エステルAを14.5
g、リン酸エステルBを14g、メチルメタクリレート
を50.5g用いたこと以外は、上記実施例3と同様に
して厚さ0.5mmの板状で淡青色透明の光学フィルタ
を得た。この光学フィルタ中のP/Cuのモル比は1.
71であった。また、光学フィルタ中の銅イオンの含有
量は、3.9重量%であった。
【0146】〈分光透過率測定〉実施例1〜3並びに比
較例1〜3で作製した光学フィルタについて、分光光度
計「U−4000」((株)日立製作所製)を用い、波
長250〜1200nmにおける分光透過率を測定し
た。図3〜7は、それぞれ実施例1及び2並びに比較例
1〜3の光学フィルタに対する分光透過率スペクトルを
示す。これの結果から、本発明の光学フィルタは十分な
可視光透過性及び近赤外光吸収性を有するものであるこ
とが確認された。また、実施例3の光学フィルタは、実
施例2の光学フィルタと同等又はそれ以上の透明性を有
していた。
【0147】〈耐湿性試験〉実施例1〜3及び比較例1
〜3で作製した光学フィルタを、周囲温度60℃、相対
湿度90%の環境下に放置し、各光学フィルタが白化
(白濁)して失透するまでの時間(hr)を目視で測定
した。結果を表1に示す(各光学フィルタの成分等も併
せて表1に示す)。これらの結果より、P/Cuのモル
比が小さくなるに従って失透し難くなる傾向が認められ
た。
【0148】また、比較例の光学フィルタが最長でも6
60時間で失透したのに対し、実施例の光学フィルタ
は、1100時間以上で失透した。このことから、本発
明による光学フィルタは、極めて耐湿性に優れたもので
あることが確認された。さらに、実施例2の処方に水を
更に添加して製造した実施例3の光学フィルタは、実施
例2に比して失透に至る時間が長かった。このことか
ら、調製時に水を添加する方法の有効性が確認された。
【0149】
【表1】
【0150】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、光
学フィルタにおける近赤外光吸収層の厚さを薄くしたと
きに、銅イオンの含有量を高めて十分な近赤外光吸収性
を得る場合に、特定のリン酸エステル化合物を用い、且
つ、近赤外光吸収層におけるリン原子と銅イオンとの含
有割合が所定の値、すなわち、近赤外光吸収層における
リン原子の含有量が銅イオン1モルに対して0.4〜
1.3モルとされているので、十分な近赤外光吸収性を
有しつつ、耐湿性に極めて優れた光学フィルタを得るこ
とが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は、本発明の光学フィルタを用いた
ディスプレイ前面板の一例を示す摸式断面図であり、図
1(b)はその積層構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すディスプレイ前面板の使用状態の一
例を示す斜視図である。
【図3】実施例1による光学フィルタの分光透過率スペ
クトル図である。
【図4】実施例2による光学フィルタの分光透過率スペ
クトル図である。
【図5】比較例1による光学フィルタの分光透過率スペ
クトル図である。
【図6】比較例2による光学フィルタの分光透過率スペ
クトル図である。
【図7】比較例3による光学フィルタの分光透過率スペ
クトル図である。
【符号の説明】
1…ディスプレイ前面板、2…PDP(ディスプレ
イ)、16…光学フィルタ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 庄司 益宏 福島県いわき市錦町落合16番地 呉羽化学 工業株式会社錦工場内 (72)発明者 小泉 智義 福島県いわき市錦町落合16番地 呉羽化学 工業株式会社錦工場内 (72)発明者 町田 克一 福島県いわき市錦町落合16番地 呉羽化学 工業株式会社錦工場内 Fターム(参考) 2H048 CA04 CA05 CA09 CA12 CA19 CA25 CA26 CA29

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(A)成分及び下記(B)成分のう
    ち少なくとも一つの成分を含有して成る近赤外光吸収層
    を備え、 前記近赤外光吸収層におけるリン原子の含有量が銅イオ
    ン1モルに対して0.4〜1.3モルであり、 前記近赤外光吸収層における銅イオンの含有量が2〜6
    0重量%である、ことを特徴とする光学フィルタ。 (A)成分:下記式(1)で表されるリン酸エステル化
    合物及び銅イオンより成る成分 (B)成分:前記リン酸エステル化合物と銅化合物との
    反応により得られるリン酸エステル銅化合物 【化1】 [式(1)中、Rは、下記式(2)、(3)、(4)、
    (5)、(6)、(7)、(8)若しくは(9)で表さ
    れる基、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は
    アルケニル基を示し、nは1又は2であり、nが1のと
    きにRは同一であっても異なっていてもよい。 【化2】 (式(2)〜(9)中、R11〜R17は炭素数が1〜20
    のアルキル基、炭素数が6〜20のアリール基又はアラ
    ルキル基を示し(ただし、芳香環を構成する炭素原子に
    結合した水素原子が、炭素数1〜6のアルキル基又はハ
    ロゲンによって少なくともひとつ置換されていてもよ
    い)、R21〜R25は水素原子又は炭素数が1〜4のアル
    キル基を示し(ただし、R23、R24、R25が全て水素原
    子の場合を除く)、R31及びR32は炭素数が1〜6のア
    ルキレン基を示し、R41は炭素数が1〜10のアルキレ
    ン基を示し、R51及びR52は炭素数が1〜20のアルキ
    ル基を示し、R61は水素原子又はメチル基を示し、mは
    1〜6の整数を示し、kは0〜5の整数を示し、pは2
    〜97の整数を示し、rは1〜4の整数を示す。)]
  2. 【請求項2】 前記近赤外光吸収層におけるリン原子の
    含有量が銅イオン1モルに対して0.8〜1.3モルで
    ある、ことを特徴とする請求項1記載の光学フィルタ。
  3. 【請求項3】 前記リン酸エステル化合物は、上記式
    (9)におけるR61がメチル基であり、且つ、上記式
    (9)におけるpが2又は3であり、且つ、上記式
    (9)におけるrが1のものであることを特徴とする請
    求項1記載の光学フィルタ。
  4. 【請求項4】 下記(A)成分及び下記(B)成分; (A)成分:下記式(1)で表されるリン酸エステル化
    合物及び銅イオンより成る成分、(B)成分:前記リン
    酸エステル化合物と銅化合物との反応により得られるリ
    ン酸エステル銅化合物、のうち少なくとも一つの成分を
    含有して成る近赤外光吸収層を有する光学フィルタの製
    造方法であって、 上記式(1)で表されるリン酸エステル化合物と、銅塩
    と、水とを混合し又は接触させる工程を備える、ことを
    特徴とする光学フィルタの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記工程においては、 前記近赤外光吸収層におけるリン原子の含有量が銅イオ
    ン1モルに対して0.4〜1.3モルとなるように、且
    つ、該近赤外光吸収層における銅イオンの含有量が2〜
    60重量%となるように、上記式(1)で表されるリン
    酸エステル化合物と、銅塩と、水とを混合し又は接触さ
    せる、ことを特徴とする請求項4記載の光学フィルタの
    製造方法。
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