JP2001130006A - インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置

Info

Publication number
JP2001130006A
JP2001130006A JP31404799A JP31404799A JP2001130006A JP 2001130006 A JP2001130006 A JP 2001130006A JP 31404799 A JP31404799 A JP 31404799A JP 31404799 A JP31404799 A JP 31404799A JP 2001130006 A JP2001130006 A JP 2001130006A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ink
ink ejection
liquid
seal
seal liquid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP31404799A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasushi Oki
靖 大木
Susumu Hirakata
進 平潟
Yasushi Suwabe
恭史 諏訪部
Hiroaki Sato
博昭 佐藤
Yuji Suemitsu
裕治 末光
Megumi Hasebe
恵 長谷部
Satoru Mori
哲 毛利
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Business Innovation Corp
Original Assignee
Fuji Xerox Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Xerox Co Ltd filed Critical Fuji Xerox Co Ltd
Priority to JP31404799A priority Critical patent/JP2001130006A/ja
Publication of JP2001130006A publication Critical patent/JP2001130006A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】シール液体によってインク吐出口をシールする
方式において、インク吐出によって解除されたシール状
態を素早く復元させると共に、インク吐出口の周囲にイ
ンクミストの付着を防止するインクジェット記録ヘッド
を提供することを目的とする。 【解決手段】インク吐出面28において、インク吐出口
12の周囲には、多孔質性を付与された面にシール液体
22が含浸処理された撥インク親シール性領域18が設
けられている。したがって、インク吐出に伴なうシール
の解除後、撥インク親シール性領域18から素早くシー
ル液体18がインク吐出口12のインク20をシールし
て所定の状態に復元する。また、インク吐出に伴なって
インクミストがインク吐出面28に付着するが、撥イン
ク親シール性領域18はインク20よりもシール液体2
2の方がぬれやすいので、インク吐出口12の周囲にイ
ンク液溜りが発生することはない。この結果、安定した
インク吐出が行なわれる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被印字面にインク
ドロップなどの液滴を吐出して印字を行うインクジェッ
ト記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】被印字面に液滴、特にインクドロップを
吐出して印字を行うインクジェット記録方式の代表的な
ものとして、ノズルを用いる方式があり、そのノズルを
用いる記録方式には、従来、オンデマンド型と連続流型
とがある。オンデマンド型は、記録情報に対応してノズ
ルから間欠的にインクを吐出させて印字を行う方式で、
代表的なものとして、圧電素子方式とサーマル方式とが
ある。圧電素子方式は、インク室に付設した圧電素子
に、パルス電圧を印加して圧電素子を変形させることに
より、インク室内のインク液圧を変化させ、ノズルから
インクドロップを吐出させて、記録紙上にドットを記録
するものである。サーマル方式は、インク室内に設けた
加熱素子によりインクを加熱し、これにより発生したバ
ブルによりノズルからインクドロップを吐出させて、記
録紙上にドットを記録するものである。一方、連続流型
は、インクに圧力を加えてノズルから連続的にインクを
吐出させると同時に、ピエゾ振動子などにより振動を加
えて突出インク柱を液滴化し、さらに液滴に対して選択
的に帯電、偏向を行うことによって、記録を行うもので
ある。
【0003】これらのインクジェット記録装置において
は、非動作時のインクの乾燥、増粘に起因するノズルの
目詰まりを防止することが大きな課題である。この課題
を解決するために種々のインク材料が開発されている
が、インク溶媒の蒸発を低減することは依然として困難
である。市販のインクジェット記録装置では、非印字
時、長期休止時には、樹脂製のキャッピング手段等によ
り、ノズルと外気とを遮蔽してインクの乾燥を遅延させ
ようとしている。しかし、このキャッピング手段では、
ノズル内の気密状態をより効果的に高めるためには、複
雑な手順と装置が必要となる。また、キャッピング手段
では、ノズル内部を空気から完全に遮蔽することができ
ず、保存中に、ノズル内部のインクの乾燥、増粘が徐々
に進行し、ノズルの目詰まりが発生してしまうことがあ
る。このように、実際には市販されているインクジェッ
ト記録装置では、長期休止によるノズルの目詰まりを回
復するために、様々なメンテナンス動作が必要となって
いる。
【0004】長期休止後の目詰まりに起因する問題を回
避する手段としては、インクに不溶のシール液体と、シ
ール液体の膜を張る手段によって、インク吐出口を密封
してインクを空気から遮蔽し、インクの乾燥を防ぐ手段
が知られている。
【0005】シール液体による密封方式を採用する方法
として、特開昭49−115548号公報(以下、従来
例1という)には、シール液体とぬれ機構により印字装
置の非動作時にインク吐出口を密封し、動作時にはシー
ル液体の供給路に設けた開閉器によってシール液体の供
給を止める方法が記載されている。
【0006】また、特開昭54−69436号公報(以
下、従来例2という)には、シール液体による密封方式
におけるインク滴の吐出安定性を改善するために、シー
ル液体膜の形成・解除を行う方法が開示されている。
【0007】さらに、特開平5−177841号公報
(以下、従来例3という)では、必要に応じてシール液
体によってノズルをシールする方法や、キャリッジ走査
に連動してシール液体によるシールを開閉する方法が述
べられている。
【0008】また、印字時に記録媒体から跳ね返ってく
る微小のインク滴(以下、「インクミスト」と称す
る。)や、インク吐出時に発生するインクミストがイン
ク吐出口の周囲に付着し、インク吐出に影響を与えると
いう問題に対しては、特開平6-155752号公報
(以下、従来例4という)に撥水材料をインク吐出面、
特にインク吐出口近傍にコーティングして撥水領域とす
ることによってインクミストの付着を防止する方法が開
示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来例1
〜3に示したシール液体によるノズルの密封方法では、
インク吐出時にインク吐出口をシール液体がシールして
いるとシール液体の状態によってインク吐出が影響を受
け、その結果、印字画像の画質低下を招く。すなわち、
図8(b)に示すように、インク吐出面28に一定の膜
厚とされインク吐出口12のインク20をシールしてい
るシール液体22(Aの状態)が、インク吐出によって
インク20と共にシール液体22の一部が飛翔し、イン
ク20に対するシール状態が解除される(Bの状態)。
この後、シール液体22の表面張力およびぬれ性によっ
て再びインク吐出口12のインク20をシールする(C
→D→A)。インク吐出によってインク吐出口上のシー
ル液体22の状態が変動する(A→B→C→D→A)た
め、この間に(図8(a)に示すB〜Dのタイミング
で)インク吐出信号が入力されるとインク吐出圧が変化
してインク吐出が不安定になる。
【0010】この問題を回避し、インク吐出の安定性を
確保するためには、非印字状態ではシール液体によりイ
ンクをシールし、印字状態ではシールを解除するように
切り替えることが必要である。この切替のために、ポン
プや電磁石、支持体による開閉などの外力が必要であ
り、ヘッドの構造の複雑化、およびそれに伴う印字装置
の大型化を招くこととなる。
【0011】また、従来例1〜3ではインクの乾燥を防
ぐことに対しては有効であるが、印字時に記録媒体から
跳ね返ってくるインクミストや、インク吐出時に発生す
るインクミストがインク吐出口の周囲に付着・堆積して
インク液溜りが発生し、インク吐出の際にインクがイン
ク液溜りに接触すると、インク滴の吐出方向を不安定に
する懸念がある。また、異なる色のインクミストがイン
ク吐出口の周囲に付着した場合には、吐出するインク滴
と混色し、画像品質を低下させる問題がある。さらに、
インクミストがインク吐出口の周囲に付着し続けると、
シール液体上にインク液溜りが露出し、シール液体の流
動抵抗になるので、インク滴の吐出性能が変化するとい
った問題を生じる。
【0012】このようなインクミスト対策としては、従
来例4に示されたインク吐出口近傍の撥水領域が有効で
あるが、撥水領域はインクに対してはぬれ性が低いもの
の、シール液体には必ずしもぬれ性は高くなかった。し
たがって、インク吐出時にシールが解かれた後に、イン
ク吐出口の周囲がシール液体とぬれにくいため、再度イ
ンク吐出口に対するシールが復帰するまでに時間を要す
ことになり、その間にインクが増粘してインク吐出性能
が低下するという問題があった。
【0013】本発明は、前記のような従来技術の有する
問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、シール
液体によってインク吐出口を密封する方式において、外
力や開閉器などの付加装置を用いることなく、インク吐
出時のシール液体の状態を常に一定の状態に保つことに
より、吐出されるインク滴の大きさを一定に保ちつつイ
ンク吐出口の目詰まりを防止すると共に、インクミスト
に対して吐出安定性を確保することが可能なインクジェ
ット記録ヘッドおよびこのようなインクジェット記録ヘ
ッドを備えたインクジェット記録装置を提供することに
ある。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明で
は、インクを記録紙に対して吐出するインク吐出口と、
前記インク吐出口が形成されたインク吐出面と、前記イ
ンク吐出面に塗布され、前記インクよりも小さい表面エ
ネルギを有し前記インク吐出口をシールするシール液体
と、画像信号に応じて前記インク吐出口からインクを吐
出するインク吐出手段と、を備えるインクジェット記録
ヘッドにおいて、前記インク吐出面の少なくともインク
吐出口の周囲の表層にシール液体を含ませる表面処理を
施したことを特徴とする。
【0015】請求項1記載の発明の作用について説明す
る。
【0016】インク吐出面においてインク吐出口の周囲
で表面処理された部分は、シール液体が表層に含まれて
いるため、当該部分はシール液体と親和性が高く、シー
ル液体がぬれやすい。したがって、インク吐出時にイン
ク吐出口上からシール液体が除去された後、インク吐出
口の周囲にあったシール液体が素早くインク吐出口に露
出するインクをシールする。このように、インク吐出口
(インク)に対するシール状態が素早く所定の状態に復
帰するため、安定したインク吐出が可能となる。
【0017】なお、インク吐出時以外は、常時シール液
体によってシールされているため、インク目詰まりを確
実に防止することができる。
【0018】さらに、インク吐出面においてインク吐出
口の周囲にインクミストが付着すると、インク滴の吐出
方向が安定しなくなるが、インク吐出口の周囲にはシー
ル液体を表層近くに含む表面処理が施されており、シー
ル液体よりも表面エネルギが大きいインクがぬれにく
い。したがって、インクミストがインク吐出口の周囲に
付着・堆積することを防止できる。この結果、さらに安
定したインク吐出を図ることができる。
【0019】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
発明において、前記表面処理は、少なくとも表層が多孔
質性を有するインク吐出面に、シール液体を含浸処理す
ることであることを特徴とする。
【0020】請求項2記載の発明の作用について説明す
る。
【0021】少なくとも表層が多孔質性を有するインク
吐出面にシール液体を含浸処理させるため、インク吐出
面はシール液体と親和性が高く、シール液体がぬれやす
い。したがって、インク吐出時にインク吐出口上からシ
ール液体が除去された後、インク吐出口の周囲(含浸処
理部分)にあったシール液体が素早くインク吐出口に露
出するインクをシールする。この結果、インク吐出時の
シール状態が素早く所定状態に復帰するため、安定した
インク吐出が行なわれる。
【0022】また、含浸処理されたインク吐出面上では
インクよりもシール液体の方がぬれやすいので、インク
がぬれにくい。したがって、インクミストが当該インク
吐出面上に付着しても、インク吐出面上で付着し続ける
ことができず、インク吐出口の周囲は常にインク液溜り
が存在しない状態になる。この結果、インク吐出口の周
囲に付着したインクミストによってインク吐出の安定性
が損なわれることを防止できる。
【0023】さらに、インク吐出面を構成する部材は、
シール液体を含浸することによってシール液体のぬれや
すく、インクがぬれにくい(以下、撥インク親シール性
という)性質を獲得できるため、インク吐出面を構成す
る部材(材料)の選択肢が広がる。
【0024】請求項3記載の発明では、請求項1記載の
発明において、前記表面処理は、前記インク吐出面にシ
ール液体の主成分である液体をコーティングして加熱処
理することであることを特徴とする。
【0025】請求項3記載の発明の作用について説明す
る。
【0026】表面処理は、インク吐出面にシール液体の
主成分である液体をコーティングして加熱処理すること
によって行なわれるため、インク吐出面の表層(コーテ
ィング層)がシール液体と親和性が高く、シール液体が
ぬれやすい。したがって、インク吐出時にインク吐出口
上からシール液体が除去された後、インク吐出口の周囲
(加熱処理部分)にあったシール液体が素早くインク吐
出口に露出するインクをシールする。この結果、インク
吐出が安定する。
【0027】また、加熱処理されたインク吐出面上では
インクよりもシール液体の方がぬれやすいので、インク
がぬれにくい。したがって、インクミストが当該インク
吐出面上に付着しても、インク吐出面上で付着し続ける
ことができないため、インク吐出口の周囲は常にインク
液溜りが存在しない状態になる。この結果、インク吐出
口の周囲に付着したインクミストによってインク吐出の
安定性が損なわれることを防止できる。
【0028】さらに、インク吐出面を構成する部材は、
シール液体の主成分である液体をコーティングして加熱
処理することによって撥インク親シール性を獲得できる
ため、インク吐出面を構成する部材(材料)の選択肢が
広がる。
【0029】請求項4に記載の発明では、インクを記録
紙に対して吐出するインク吐出口と、前記インク吐出口
が形成され、インクよりも小さい表面エネルギを有する
シール液体が塗布されるインク吐出面と、画像信号に応
じて前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出
手段と、を備えるインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記インク吐出面において少なくともインク吐出口の周
囲の表層に前記シール液体を含ませる表面処理を施した
ことを特徴とする。
【0030】請求項4記載の発明の作用について説明す
る。
【0031】シール液体を供給することにより、上記請
求項1記載の発明と同様に、インク吐出口(インク)に
対するシール状態がすぐ所定状態に復帰すると共にイン
クミストの付着を防止するため、安定したインク吐出を
行なうことができる。
【0032】請求項5に記載の発明では、請求項1〜4
のいずれか1項記載のインクジェット記録ヘッドを備え
たことを特徴とする。
【0033】請求項5記載の発明の作用について説明す
る。
【0034】上記の記録ヘッドを備えたインクジェット
記録装置とすることによって、インク吐出口の目詰まり
が防止され、メンテナンス工程を軽減あるいは省略する
ことができる。したがって、記録装置を小型化すること
が可能となる。また、メンテナンスに伴なう廃インクを
減少させることができるため、ランニングコストを低減
できると共に、インクタンクの小型化によってキャリッ
ジの往復速度を向上させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
一実施の形態を説明する。
【0036】本実施形態に係るインクジェット記録ヘッ
ドの基本的な構成例を図1の(a)〜図1の(c)に示
す。図1(a)は側断面図を、図1(b)は正面図を各
々示している。図1(c)は記録ヘッド(インク吐出
口)からのインク吐出の様子を概略的に示している。ま
た、図1(c)の参照として、液体シールによりシール
されていない吐出口からのインク吐出の様子を図2に概
略的に示す。
【0037】本実施形態のインクジェット記録ヘッド1
0(以下、単に「ヘッド10」という場合がある)は、
インク吐出面28に設けられたインク吐出口12、イン
ク吐出面28においてインク吐出口12の周囲に設けら
れたシール液体流動促進手段18、インク吐出手段14
が設けられたインク室16を備えている。ヘッド10に
は、例えば毛管力や圧力差によって生じる作用により、
ヘッド10外部のインクタンクとインク供給路(いずれ
も不図示)によってインク20が供給されている。
【0038】インク吐出口12は、インク吐出状態にな
い場合は、シール液体22によりシールされているの
で、インク吐出口12に露出しているインクは空気と接
触していない。インク室16の側面部に設けられている
インク吐出手段14は、画像信号に応じて、インク室1
6に充填されているインク20に圧力等を加えインク吐
出口12からインク滴を吐出させる(図1(c))。こ
の際、シール液体22のインク吐出口12へのシールは
解かれるが、インク吐出口12へのシールを解いている
シール液体22は、インク吐出口12の周囲に設けられ
ているシール液体流動促進手段18により、その流動が
促進され、直ちにインク吐出口12をシールする。この
シール液体の流動は、主に、表面張力やぬれによる流動
である。その後、再び画像信号に応じてインク吐出が行
われても、シール液体22のシール状態は、直前のイン
ク吐出時と同様であるので、本発明のインクジェット記
録ヘッドは、高いインク吐出安定性を有する。
【0039】尚、本明細書では、「インク吐出口へのシ
ールが解かれた状態」とは、インク吐出口12に露出し
ているインク20がシール液体22により覆われていな
い状態をいう。
【0040】説明を簡単にするために、図1(a)およ
び図1(b)には1つのインク吐出口12のみを示した
が、インク吐出口12はインク吐出面28に複数設けら
れていてもよい。一般的に、インク吐出口12の直径は
5μm〜100μmの範囲であるが、特にこれに限定さ
れるものではないなお、図においては、便宜上、インク
吐出口12が上方向に配置された図を示しているが、イ
ンク吐出方向、即ち、記録ヘッド10の配置方向は所望
により適宜選択することができ、一般的にはインク滴は
重力方向(下方)に向けて吐出される。
【0041】本実施形態に使用可能なインク吐出手段1
4には、従来技術によるインクジェット記録ヘッドで用
いられているインク吐出手段、例えば加圧方式、連
続流方式、静電吸引方式等のインク吐出手段を広く利
用することができる他、音響波、圧力波などを集中さ
せる方式なども利用可能である。加圧方式の吐出手段と
しては、サーマルインクジェット方式や圧電方式が利用
できる。
【0042】本実施形態において使用可能なシール液体
22は、インク吐出口12をシールし、インク吐出口1
2のインク20を空気から遮蔽する機能を有する。この
ような機能を維持するシール液体22は、少なくともイ
ンク20に不溶な成分を含み、インク20と相溶せず、
かつ、インク20とは自発的に乳化しないものである。
【0043】シール液体22とインク20が非相溶性で
あるためには、シール液体22のインク20に対する溶
解度がヘッド10、あるいはこのヘッド10が備えられ
たインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」と
いう場合がある)を使用する環境下で0.1重量%以下
であるのが好ましい。
【0044】さらに、シール液体22が不揮発性である
と、ヘッド10の休止中に蒸発せず、シール液体22に
よる吐出口12のシール状態に変化が生じないので好ま
しい。不揮発性とは、具体的にはヘッド10あるいは記
録装置を使用する環境下での蒸気圧が0.1mmHg以
下であることをいう。
【0045】本実施形態で利用できるシール液体22の
動粘度は、目詰まり防止の期間設定、吐出手段14、吐
出口12の直径、記録ヘッド10の吐出周波数、シール
液体22の膜厚、シール液体22を配置する方法などの
設計仕様に対して適宜選択可能であり、動粘度は低粘度
のものから高粘度のものまで広く利用できる。ただし、
一般的には、蒸気圧が低く不揮発性の液体は分子量が大
きいために動粘度が高いものが多い。このため、より長
期間シール液体22を不揮発にして目詰まりに対するシ
ール性能を維持させるには動粘度が高いシール液体を選
択するのが望ましく、より低エネルギで吐出させるため
には動粘度が低い方が望ましいことを考え合わせると、
ヘッド10あるいは記録装置を使用する環境下でのシー
ル液体22の動粘度としては1〜200mm2/sの範
囲が望ましい。
【0046】また、本実施形態において好適に利用でき
るシール液体22の表面張力は、ヘッド10あるいは記
録装置を使用する環境下で15〜70mN/mの範囲で
あり、インク吐出口12のインク20の表面にシール液
体22がぬれ進むためには、50mN/m以下であるこ
とが望ましく、さらに、使用するインク20の表面張力
より小さいことが望ましい。
【0047】シール液体22として、元々これらの性質
に適した液体を使用することもできるし、複数の材料を
混合して粘度や表面張力を好ましい範囲に調整して使用
してもよい。
【0048】水性のインクを用いる場合は、シール液体
22として常温で液体の有機溶媒やオイル類を用いるこ
とができる。例えば、オクタン、ノナン、テトラデカ
ン、ドデカンなどの炭化水素、オレイン酸、リノール酸
などの高級脂肪酸、N−デカノール、ジメチルブタノー
ルなどの非水溶性のアルコール類、フタル酸ジブチル、
マレイン酸ジブチルなどの可塑剤を用いることができ
る。あるいは植物油、鉱物油、シリコーンオイル、フッ
素オイルなどを用いることもできる。これらは、単独で
用いても、あるいは均一に混合し得るものであれば、複
数種を混合して用いてもよい。
【0049】本発明のインクジェット記録ヘッドでは、
シール液体22を図1(a)に示すようにインク吐出面
28上に配置し、インク吐出口12に露出しているイン
ク20が外部の空気に接触しないようにする。その結
果、インク中の水分等が蒸発することがなく、インク吐
出口12の目詰まり等のトラブルが発生しない。
【0050】シール液体22は、印字開始前に、刷毛、
布、ブレードによる塗布などの方法によりインク吐出面
28に供給することができる。また、インク吐出面28
の近傍に管や多孔質部材を配置し、毛管力、表面張力、
または圧力差等によって、シール液体22をインク吐出
面28に継続的に供給する機構を備えていてもよい。こ
れらの方法によりインク吐出面28に供給されたシール
液体22は、インク吐出面上に膜を形成する。シール液
体22は、インク吐出口12に露出しているインク20
に接触するが、インク20と相溶せず、インク20の上
をぬれ広がり、インク表面にもシール液体22の膜を形
成する。
【0051】本実施形態において、インク吐出面28上
のシール液体22の膜厚は、シール性能を維持する期
間、吐出手段14、インク吐出口12の直径、記録ヘッ
ド10の吐出周波数、シール液体22の動粘度、シール
液体22を配置する方法などの設計仕様に対して適宜設
定可能である。ただし、目詰まりに対するシール性能と
より低エネルギで吐出させることを考え合わせると、シ
ール液体22の膜厚は1μm以上200μm以下である
ことが好ましい。シール液体22の膜厚は、例えば、シ
ール液体22の供給量を調節したり、記録ヘッド10の
周縁部等をシール液体22の保持量を規制する形状にす
ることによって制御することができる。
【0052】なお、シール液体22は、予めインクジェ
ット記録ヘッド10に配置されていても、使用時にイン
クジェット記録ヘッド10に適宜供給してもよい。
【0053】シール液体流動促進手段18は、シール液
体22がインク20の吐出によりインク吐出口12への
シールを解いた状態から、完全にインク吐出口12をシ
ールする状態に流動するのを促進する機能を有する。
【0054】インクジェット記録ヘッドに、シール液体
流動促進手段がない場合に、シール液体がシールを解い
た状態から完全にシールしている状態に流動するまでに
所定の時間を要することの原因については、現在その詳
細を解析中であるが、最も大きな要因として、シールを
解いた状態のシール液体が、インク吐出口の周囲でトラ
ップされることが考えられる。インク吐出口は、一般に
インク吐出口の内周面とインク吐出面で角を形成してい
る。その結果、インク吐出口の周囲は、形状上シール液
体を高い接触角で保持しやすく、さらにバリ等でインク
吐出面との接触角がより鋭角になっていると、シール液
体をトラップし、インク吐出口を露出している状態(シ
ール液体が開いた状態)のままにする保持力はますます
高くなっていると考えられる。
【0055】また、このような形状上の要因以外に、イ
ンク吐出面のインク吐出口周囲の材質が、シール液体と
ぬれ性が低い性質を有する場合は、同様に、シール液体
がインク吐出口を完全にシールするまでの流動を妨げる
ことになると考えられる。即ち、一旦シールを解いたシ
ール液体が、再び完全にシール状態へとぬれ広がる際
に、前記のようなインク吐出口の周囲の形状やインク吐
出口周囲の材質等により、エネルギ的な障壁が形成され
やすくなり、そのために、シール液体が再びインク吐出
口を完全にシールするのが妨げられるようになると考え
られる。
【0056】本発明におけるシール液体流動促進手段1
8とは、このようなエネルギ障壁を低くしたり、エネル
ギ障壁を乗り越えやすくするための推進力をシール液体
22に与えたりすることによって、シールを解いている
シール液体22を抵抗なくスムーズに、再びシールして
いる状態に流動させることができる手段である。
【0057】シール液体流動促進手段18の位置は特に
限定されないが、シール液体22の流動はインク吐出口
12の周囲の形状およびその材質に大きく影響を受け
る。したがって、シール液体流動促進手段18がインク
吐出口12の周囲に設けられていると、より効果的に前
記機能を発揮できるので好ましい。さらに、複数のイン
ク吐出口12が設けられている場合は、各々のインク吐
出口12の周囲に設けられているのが好ましい。
【0058】なお、本発明でいう「周囲」とは、少なく
ともインク吐出口12からのインク20の吐出により、
シール液体22が流動する範囲のことをいう。
【0059】シール液体流動促進手段18の例として
は、インク吐出面28においてインク吐出口12の周囲
に、シール液体22に対してぬれ性が高く、インク20
とのぬれ性が低くなるような表面処理を施したものが考
えられる。このような表面処理を施すと、前記エネルギ
障壁を越えやすくなる推進力をシール液体22に与える
ため、積極的にシール液体22の流動を促進することが
できる。
【0060】また、含浸処理されたインク吐出面28上
ではインク20よりもシール液体22の方がぬれやすい
ので、インク20がぬれにくい。したがって、インクミ
ストが当該インク吐出面28上に付着しても、インク吐
出面28上で付着し続けることができないため、インク
吐出口28の周囲に常にインク液溜りが存在しない状態
となる。すなわち、インク吐出口28の周囲にインクミ
ストが付着することによってインク吐出安定性が損なわ
れることが防止できる。
【0061】本実施形態においては、シール液体流動促
進手段18の具体例として、シール液体22によってイ
ンク20とのぬれ性が低く、かつシール液体22とのぬ
れ性が高くなるような表面処理(以下、「撥インク親シ
ール処理」と称する。)したシール液体流動促進手段に
ついて詳細に説明する。
【0062】このシール液体流動促進手段はインク吐出
口周囲にインクとのぬれ性が低い領域(以下、「撥イン
ク性領域」と称する。)や、インクとぬれ性が低く、か
つシール液体22とぬれ性が高い領域(以下、「撥イン
ク親シール性領域」と称する。)を、シール液体22で
含浸処理あるいは加熱処理によって形成することによ
り、シール液体22をスムーズに流動させ、シールして
いる状態に復帰させるものである。
【0063】以下に、シール液体によって撥インク親シ
ール処理されたインク流動促進手段18を設ける一方法
として、シール液体22で含浸処理することにより撥イ
ンク親シール性領域(以下、撥インク親シール性領域1
8という場合がある)を設ける方法について詳しく説明
する。
【0064】インク吐出面28上のシール液体22をス
ムーズに流動させ、インク20をシールしている状態に
復帰させるためには、含浸処理された撥インク親シール
性領域18の表面とインク20の間に次のような関係に
保つことが必要である。
【0065】シール液体22を含浸処理したシール液体
流動促進手段18の表面エネルギ(Ec:シール液体2
2がシール液体流動促進手段18の表面に薄層を形成す
るため、シール液体22の表面エネルギ(Es)と同程
度)とインク20の表面エネルギ(Ei)を用いて関係
を示すと、シール液体22を含浸処理したシール液体流
動促進手段18に対してインク20がぬれにくくなるた
めには、Es<Eiの条件を満たしている必要がある。
よって、シール液体流動促進手段18の表面張力(臨界
表面張力)γc、つまりシール液体22の表面張力γs
よりインク20の表面張力γiが大きい材料を選択した
場合(γs<γi)には、上記条件を満たすことになる
ため(例えば、「表面張力」小野著、共立出版)、シー
ル液体を含浸処理したシール液体流動促進手段18上に
は、インク20はぬれ広がらない。
【0066】このように、シール液体流動促進手段18
の表面にシール液体22を含浸させた場合、シール液体
22がシール液体流動促進手段18の表層部に存在する
ため、シール液体流動促進手段18の表面エネルギがシ
ール液体22の表面エネルギに代用されることとなり、
シール液体22とインク20のみの表面エネルギ(表面
張力)のみの関係を考慮すれば良くなる。よって、シー
ル液体流動促進手段18に用いる材料の選択性が広が
り、低コストで作製することが可能になる。
【0067】シール液体22をシール液体流動促進手段
18の表面に含浸させるためには、シール液体流動促進
手段18の全体を多孔質部材で形成したり、シール液体
流動促進手段18の表面部のみ多孔質性を付与すること
で、シール液体22を保持しやすくすることができる。
【0068】シール液体流動促進手段18の全体を多孔
質部材で形成する場合の材料例としては、ポリオレフィ
ン樹脂、フッ素系ポリマー樹脂、ポリスルホン系樹脂、
ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系
樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ
スチレン系樹脂、ポリケトン系樹脂、シリコーン系樹脂
等を材料としたシール液体が保持可能な細孔分布をもっ
た各種多孔質性樹脂、もしくは、ニッケル、タンタル、
チタン、白金、銅等の金属や、Cu-SN、Fe-Cr-Ni、Cu-
SN-Pb、Fe-C、Fe-Cu、Fe-C-Cu、Al-Cu等の合金などの
各種焼結金属や所望の細孔分布をもつように粒子径を選
んで焼結させた多孔質性シリカ、多孔質性マグネシア、
多孔質性アルミナ等、各種多孔質セラミックスを用いる
ことができる。
【0069】シール液体流動促進手段18の形状を加工
する手段としては、各材料に応じて各種ドライエッチン
グや放電加工、レーザ加工、および機械加工などの各種
微細加工技術を用いることができる。また、上記原材料
を各種フォーム成形や燒結成形、印刷成形を用いて所望
のシール液体流動促進手段18の形状に作製しても良
い。
【0070】シール液体流動促進手段18の表面のみを
多孔質性部材にするには、各種改質処理による多孔質性
の付与技術を用いればよい。この場合は、材料として、
ステンレス、ニッケル、アルミニウム、白金、金、コバ
ルト、チタン、銅、鉄等の各種金属、ポリオレフィン系
樹脂、フッ素系ポリマー樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポ
リエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテー
ト系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、
ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ
アミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹
脂、ポリケトン系樹脂、シリコーン系樹脂などの各種樹
脂、シリカ、アルミナ、マグネシアシリカ等のセラミッ
クスや、半導体材料として用いられるシリコンなどの各
種無機化合物を単体あるいは組み合わせて用いれば良
く、適切な表面改質処理法を選ぶことで作製できる。
【0071】また、シール液体流動促進手段18に撥イ
ンク性材料をディップコートやポッテイング、スプレー
等の塗布方法によって塗布し、乾燥させた後、表面を改
質処理して、シール液体22を含浸させても良い。
【0072】このように、撥インク親シール性領域18
に撥インク材料をコーティングする場合には、撥インク
親シール性領域18を多孔質部材で形成する方法に比
べ、撥インク親シール性領域18に用いる材料の選択性
を広げることができるという利点がある。
【0073】撥インク性を示す材料としては、例えば、
フッ素樹脂系の化合物が好ましく用いられる。前記フッ
素樹脂系の化合物としては、例えば、ポリテトラフルオ
ロエチレン(PTFE)、具体的にはポリフロンTFE
(ダイキン工業社製)やTefloN TFE(Du
PoNt社製);テトラフルオロエチレン−パーフルオ
ロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、具体的
にはネオフロンPFA(ダイキン工業社製)やTefl
oN PFA(DuPoNt社製);テトラフルオロエ
チレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FE
P)、具体的にはネオフロンFEP(ダイキン工業社
製)やTefloN FEP(Du PoNt社製);
テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−
パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EP
E)、具体的にはネオフロンEPA(ダイキン工業社
製)やテフロンEPE(三井デュポンフロロケミカル社
製);テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(E
TFE)、具体的にはアフロンCOP(旭硝子社製)や
Tefzel(Du PoNt社製);ポリクロロトリ
フルオロエチレン(PCTFE)、具体的にはネオフロ
ンCTFE(ダイキン工業社製)やKel−F(3M社
製);クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体
(ECTFE)、具体的にはHAlAr(Ausimo
Nt N.V.製);ポリビニリデンフルオライド(P
VdF)、具体的にはKFポリマー(呉羽化学工業社
製);ポリビニルフルオライド(PVF)、具体的には
TedlAr(DuPoNt社製)などが挙げられる。
また、最近では主鎖に環状構造を有する透明フッ素樹
脂;具体的にはサイトップ(旭硝子社製)やTeflo
N AF(Du PoNt社製)なども挙げられる。さ
らには、その他フッ素原子を含有する樹脂、例えば、フ
ッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂、フッ素
化ポリアミド樹脂、フッ素化アクリル樹脂、フッ素化ポ
リウレタン樹脂、フッ素化シロキサン樹脂およびそれら
の変性樹脂なども挙げられる。一方、シリコン原子を含
む撥水処理剤やシリコン系樹脂を用いてもよい。
【0074】さらに、フッ素原子を含有する樹脂を用い
てもよく、例えば、フッ素化エポキシ樹脂、フッ素化ポ
リイミド樹脂、フッ素化ポリアミド樹脂、フッ素化アク
リル樹脂、フッ素化ポリウレタン樹脂、フッ素化シロキ
サン樹脂及びそれらの変性樹脂、シリコン原子を含む撥
水処理剤やシリコン系樹脂等を用いてもよい。
【0075】なお、前記シール液体流動促進手段18の
表面に多孔質性を付与する改質処理方法としては、陽極
化成法やレーザー、電子線、X線、紫外線等のエネルギ
ビーム照射による改質処理、溶剤による改質処理を用い
ることができる。
【0076】次に、多孔質部材または多孔質性付与面に
対して、シール液体を含有させる方法について説明す
る。
【0077】含浸方法としては、公知の方法でよく、例
えば加圧含浸法、真空含浸法、常圧含浸法などが利用で
きる。但し、多孔質性部材または多孔質性付与面に存在
する空隙部に対して、シール液が含浸している割合(以
下、「シール液体含浸率」と称する。)が低いと良好な
撥インク親シール性能を発揮することが難しい。また、
インク吐出後のインクリフィルやシール液体供給時に、
インクメニスカス位置が一時的に振動(液柱振動)する
ような場合、空隙部にインクが置換されることがある。
その結果、インクメニスカス位置が所定の位置から変動
し、インク吐出状態を安定に保つことが困難になる。よ
って、多孔質性部材または多孔質性付与面におけるシー
ル液体含浸率は高いほうが好ましく、具体的には90%
以上が好ましい。そのため、より好ましい含浸方法とし
ては、短時間で高いシール液体含浸率を実現することが
できる真空含浸法が好ましい。
【0078】真空含浸法の一例として、まず容器にシー
ル液体および含浸処理したい多孔質性部材または多孔質
性付与部材を入れる。次に、容器を減圧可能な装置に入
れ、系全体を減圧にする。なお、減圧度はできるだけ高
いほうが好ましいが、20〜60mmHg程度でも十分で
ある。減圧開始後、気泡が殆ど発生しなくなったら常圧
に戻し、表面に付着したシール液体を取り除くことによ
り、90%以上のシール液体含浸率を達成することがで
きる。
【0079】次に、シール液体によって処理されたシー
ル液体流動促進手段を設けるその他の方法として、シー
ル液体をシール液体流動促進領域の表面に加熱処理する
ことにより、撥インク親シール性領域を設ける方法につ
いて詳しく説明する。
【0080】インク吐出面28上のシール液体22をス
ムーズに流動させ、インク20をシールしている状態に
復帰させるためには、加熱処理したシール液体流動促進
手段18の表面と、シール液体22、インク20の間に
次のような関係に保つことが必要である。
【0081】シール液体22を加熱処理したシール液体
流動促進手段18の表面エネルギ(Ec)とシール液体
22の表面エネルギ(Es)と、インク20の表面エネ
ルギ(Ei)を用いて関係を示すと、シール液体20を
加熱処理したシール液体流動促進手段18に対してイン
ク20がぬれにくくなるためには、Es≦Ec<Eiの
条件を満たしている必要がある。ここで、シール液体2
2を加熱処理して得られたシール液体流動促進手段18
の表面張力(臨界表面張力)γcがシール液体22の表
面張力γs以上で、さらに加熱処理して得られたシール
液体流動促進手段18の表面張力γcよりインク20の
表面張力γiが大きい関係(γs≦γc<γi)にする
ことによって、撥インク親シール性を有するシール液体
流動促進手段18を作製することができる。
【0082】次に加熱処理すると撥インク親シール性を
示す材料、およびその材料を低温度環境下で均一に短時
間で焼付けする方法について説明する。
【0083】インク吐出面28の表面にコーティングし
た後、加熱処理すると撥インク親シール性を示す材料と
しては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイ
ドロジェンシリコーンオイルなどのシリコーン系樹脂化
合物やフッ素樹脂化合物などがある。
【0084】上記のような材料をインク吐出面28の表
面にコーティングする場合、そのままでもインク吐出面
28に焼付けることが可能だが、通常は膜厚均一性の向
上およびコーティングのしやすさの点から、溶媒で10
%程度に希釈して塗布する。
【0085】希釈用の溶媒としては、芳香族炭化水素
(トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素(石油エ
ーテル、ミネラルスピリット、ケロシンなど)、イソプ
ロピルアルコールや揮発性シリコーンオイルなどを用い
ることができる。
【0086】また、コーティング後の膜厚コントロール
方法としては、溶媒濃度のほかにコーティング方法によ
っても異なるが、スプレーコーティングの場合には移動
速度、ディップコートの場合には引き上げ速度、ポッテ
イングの場合にはノズル形状など、適宜パラメータを調
整することによって膜厚をコントロールすることができ
る。
【0087】さらに、上記溶媒を混合した材料に、触媒
を加えることにより、焼付け温度を下げ、かつ焼付け時
間を短縮することができる。触媒の具体的な材料として
は、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテー
ト、テトラブチルチタネート、鉄オクトエートなどが用
いられる。なお、触媒の量は加熱処理用材料の10%程
度で用いられることが多いが、それ以下でも効果があ
る。
【0088】次に、加熱処理することでシール液体流動
促進手段(撥インク親シール性領域)18を形成する手
順について説明する。上記の乾燥固化することにより撥
インク親シール性を示す材料、および希釈するための溶
媒、加熱処理を促進させるための触媒を混合した溶液
を、シール液体流動促進手段18の表面に適当な塗布方
法によって塗布する。
【0089】まず、溶液塗布後のシール液体流動促進手
段18を庫内温度50℃〜70℃の恒温層に入れ、余分
な溶剤を除去する。次に、庫内温度を120℃〜350
℃の範囲で所望の焼付け温度に設定し、シール液体流動
促進手段18表面に焼付けを行う。この際、焼付け温度
はシール液体流動促進手段18の耐熱性によって適宜設
定する必要があるが、触媒の種類、濃度により、低温か
つ短時間で焼付け処理を行うことができる。
【0090】なお、具体的にはメチルハイドロジェンシ
リコーンオイルに、触媒としてジブチル錫ジラウレート
を用いた溶液を120℃で焼付けする場合には、触媒を
用いていない溶液では5時間かかるのに対し、触媒を用
いると3分以内で焼付け可能であり、また焼付け温度1
00℃に下げても5分以内で焼付け可能である。
【0091】このように、加熱処理において触媒を用い
ることにより、低温でかつ短時間に焼付けることができ
るため、簡易に撥インク親シール性を施したシール液体
流動促進手段18を作製することができる。 (作用の説明)本実施形態に係る記録ヘッド10の印字
動作について説明する。
【0092】インク吐出により、インク吐出口12上部
のシール液体22の一部もしくは全部がインク20と共
に飛翔し、撥インク親シール性領域18上のシール液体
22が少ない状態あるいは無い状態となる。インク20
の飛翔後、撥インク親シール性領域18の周囲に存在す
るシール液体22は、撥インク親シール性領域18上へ
流入する。この際、シール液体流動促進流域が親シール
性であるため、素早くインク吐出口12をシールする。
したがって、インク吐出口12から連続的にインク20
を吐出させようとした場合、インク吐出口12をシール
液体22がシールした状態に素早く復帰し、インク20
を安定して吐出することができる。
【0093】シール液体流動促進手段がインク吐出口の
周囲に形成されている含浸処理された、あるいは加熱処
理されたシール液体流動促進領域である場合の態様につ
いて図3を用いて説明する。図3はインク吐出面の拡大
斜視図である。
【0094】図3の(a)において、インク吐出口12
の周囲に形成された撥インク親シール性領域18は、イ
ンク吐出口12の周縁に接するリング部18Bから複数
の直線状の脚部18Cが放射状に伸びる形状に形成され
ている。撥インク親シール性領域18がインク吐出口1
2の周囲に設けられることによって、撥インク親シール
性領域18に接しているシール液体22がシール状態に
戻ろうとする際のエネルギ障壁は、撥インク親シール性
領域18がない場合と比較して低くなる。
【0095】また、これらの撥インク親シール性領域1
8は、毛管力により撥インク親シール性領域18に接す
るシール液体22がシール状態に戻ろうとする流動を促
進する。
【0096】撥インク親シール性領域18の形状は図3
(a)に限定されず、脚部18Cの数が多いほど流動促
進の効果が向上するのでより好ましい。また、脚部18
Cの形状は、直線状に形成されている必要はなく、例え
ば図3(b)のように曲線状に形成されていてもよい。
【0097】撥インク親シール性領域18の大きさは、
インク吐出口12の大きさ等によってその好ましい範囲
が異なる。例えば、インク吐出口12の直径が5μm〜
100μm程度である場合は、撥インク親シール性領域
18の大きさはインク吐出口12の中心から1μm〜2
00μm程度のものが好ましい。
【0098】なお、これらの撥インク親シール性領域1
8を溝形状に作製した場合には、毛管力により、撥イン
ク親シール性領域18に接するシ ール液体22がシー
ル状態へ戻ろうとする流動をさらに促進する。
【0099】撥インク親シール性領域18を溝形状に作
製する場合には、各種エッチングや放電加工、レーザー
加工および機械加工等の各種微細加工技術、また焼結成
形や印刷による成形等で所望の形状とした後に、表面改
質処理を行なう。
【0100】以上、本発明の種々の態様を説明したが、
これ以外にも、撥インク親シール性領域18に含まれる
インク吐出口12の端部とインク吐出面28とのなす角
を滑らかにしたり( 図4(a)参照)、インク吐出口1
2の端部とインク吐出面28が接する角を面取り( 図4
(b)参照) してもよい。このように、インク吐出口1
2の周囲からインク吐出口12の端部へと傾斜する面3
0を形成することによっても、シール液体22の流動に
対しエネルギ障壁を低くできるので、シール液体22の
流動を促進することができる。この場合、角を滑らかに
した曲面は、シール液体22の流動方向に対して、曲率
半径がより大きいほうが好ましく、また面取りした角も
それぞれ隣り合う面のなす角度が大きいほうがより好ま
しい。また、シール液体22に重力が無視出来ない程度
に働くような場合は、シール液体22に働く重力を、シ
ール液体流動促進手段18に利用することもできる。例
えば、吐出方向を重力と逆方向へ吐出させるような配置
とすることで、シールを解かれた状態のインク吐出面2
8上のシール液体22は、重力により、インク吐出口1
2の周囲から吐出口端部へと流れ、シール液体22が閉
じる(シールする)のを促進する。
【0101】上述したように、シール液体流動促進手段
18は、各々のインク吐出口12の周囲に設けられてい
るのが好ましいが、必ずしも各インク吐出口12の周囲
のみだけに限定されるものではなく、コストや製法によ
っては、インク吐出面28の全体を親シール性としても
よい。また、複数のインク吐出口12を含む領域毎に、
シール液体流動促進手段18を配置してもよい。
【0102】本発明のインクジェット記録ヘッド10
は、インクジェット記録装置内の所定の位置に配置さ
れ、画像信号を入力されることにより、搬送手段によっ
て搬送されてくる画像記録媒体に、インク滴を飛翔さ
せ、所望の画像を形成する。
【0103】尚、シール液体22は、予めインクジェッ
ト記録ヘッド10に配置されていても、使用時にインク
ジェット記録ヘッドに適宜供給してもよい。
【0104】本発明のインクジェット記録装置は、本発
明のインクジェット記録ヘッドと、画像記録媒体を搬送
する搬送手段と、前記インクジェット記録ヘッドに画像
信号を入力する画像信号入力手段とを備えるインクジェ
ット記録装置である。本発明のインクジェット記録装置
は、本発明に係わるインクジェット記録ヘッドを組み込
んだことにより、従来必須であったバキューム等のメン
テナンス工程を軽減あるいは省略することができるた
め、記録装置の小型化や省電力化ができ、始動時の
メンテナンス待ち時間をなくすことができ、さらに、
メンテナンス動作に伴う騒音を低減することができる。
さらに、バキュームなどのメンテナンスで無駄に消費さ
れる廃インクを少なくすることができるため、ランニ
ングコストが低減できる、廃インク吸収手段を小さく
でき装置の小型化ができる、インクタンクを小型化で
き、キャリッジの往復速度を向上させ、騒音の低減など
ができる、環境に対する負荷が小さいという効果も有
する。
【0105】
【実施例】以下、実施例により本発明をより詳細に説明
するが、本発明は、これに限定されるものではない。 (実施例1)図5(b)に示すように、ヘッド10は内
部に吐出手段14が配置されたインク室16をもち、イ
ンク吐出面28には直径30μmのインク吐出口12が
配置され、インク吐出面28上には、インク吐出口12
の周囲にシール液体流動促進手段18が配置されている
(図5(a)参照)。また、シール液体22はインク吐
出面28上に膜厚20μmとなるように塗布した。
【0106】シール液体22としては複数種類のシリコ
ーンオイルを混合して調製した液体(動粘度30mm2
/s、表面張力20.8mN/m、比重1.0)を用い
た。このシール液体22の25℃の蒸気圧は0.1mm
Hg以下であり、用いたインク20に対しての相溶性も
なかった。
【0107】使用したインク20は、水60重量%、ジ
エチレングリコール38重量%、および染料2重量%か
らなり、動粘度2.0mm2 /s、表面張力40mN/
m、比重1.06である。また、このインク20を使用
する場合、記録ヘッドの最高駆動周波数は10kHz
(周期は100μs)であった。
【0108】吐出手段14はサーマルインクジェット方
式の吐出手段であり、インク室16の壁面にヒータを設
けて構成されている。ヒータは多結晶シリコンからなる
発熱体層の上にタンタルからなる保護層を積層して構成
されている。ヒータは図示しない信号印加手段により画
像信号に応じたタイミングで所定の信号が印加されるよ
うに配線されている。
【0109】シール液体流動促進手段18は、インク吐
出面28として用意したステンレス板上をサンドブラス
ト処理後、フッ素系樹脂プライマーを積層し、厚さ10
μmのPTFE膜をコーティングした。次に、フォトレ
ジストにより吐出口上のPTFE膜を除去した後、PT
FE膜にマスクをして、アルゴンプラズマ粒子を照射
し、平均孔径1.0μmの有する多孔質PTFEに改質
した。その後、エキシマレーザー照射によりこのステン
レス板に直径30μmのインク吐出口を形成した後、シ
ール液体の中に部材を浸漬し、真空含浸法によりシール
液体を多孔質PTFEに含浸させた。なお、シール液体
含浸率は95%程度であった。最後に、このシール液体
流動促進手段18をもったインク吐出面28と、吐出手
段14をもつ部材と張り合わせて記録ヘッド10を作製
した。
【0110】このシール液体22によって含浸処理した
シール液体流動促進手段18を有する記録ヘッド10の
吐出性能を観察するために、ストロボおよび高解像のカ
ラーCCDを用いて、シール液体22がインク吐出によ
り、インク吐出口上部のシールを解いてから、再びシー
ルするまでの時間(ts )を測定した。その結果、シ
ール液体22を含浸処理したシール液体流動促進手段1
8によってインク吐出口の周囲の表層にシール液体が常
に存在するため、ts は最高駆動周波数の1周期であ
る100μsよりも短い80μsであった。従って、最
高駆動周波数の周期で画像信号が入力され、インク20
を連続吐出させても、各インク吐出時のシール液体22
はインク吐出口12を完全にシールした状態となってい
ることが確認できた。また、シール液体22を含浸処理
したシール液体流動促進手段18の表面エネルギを計測
したところ、シール液体22と同等の表面エネルギ(表
面張力)であり、インクの表面エネルギ(表面張力)4
0mN/mに比べて小さかった。
【0111】次に、この記録ヘッドを用いて印字テスト
を行った。印字テストはA4用紙に50枚程度の連続印
字実験を行った。この際、印字のカバレッジは約20%
の画像を印字した。
【0112】その結果、記録媒体から跳ね返ってくるイ
ンクミストは、インク吐出口12の周囲がシール液体2
2によって含浸処理されているため良好な撥インク親シ
ール性を示すため、図5(c)に示すようにインク吐出
口周囲にインク液溜り32を発生することなく、インク
吐出性能が低下することはなかった。
【0113】さらに、このインクジェット記録ヘッドを
キャッピングせずに、気温25℃、相対湿度30%RH
の環境に10日間放置しておいた後、メンテナンスを行
わずに上記の記録動作を行った。全てのインク吐出口1
2に目詰まりが発生しておらず、印字された画像のドッ
トの乱れもなく鮮明な画像が記録された。 (比較例1)実施例1で用いたインクジェット記録ヘッ
ドに代えて、インク吐出面にシール液体によって含浸処
理したシール液体流動促進手段を設けなかった以外は、
実施例1と同様のサーマルインクジェット方式のインク
ジェット記録ヘッド(図6参照)を用い、実施例1と同
様の評価を行った。
【0114】このインクジェット記録ヘッドを用いた場
合、ts は実施例1の5倍である400μsであり、
シール液体22がシール状態に戻るまでの流動は大変遅
いことがわかった。従って、このインクジェット記録ヘ
ッドを用いた場合は、駆動周波数が2.5kHz以上で
ある場合、シール液体22が完全にシール状態とならな
いうちに次のインク吐出が行われることになる。
【0115】次に、この記録ヘッド10を用いて印字テ
ストを行ったところ、印字された画像の所々にドット抜
けやドットずれによる白筋が目立った。これら画像欠陥
が目立つ部分は、インク吐出口12からのインク吐出が
2.5kHz以上の駆動周波数で駆動されている箇所と
一致した。
【0116】また、インク液溜り32がインク吐出口1
2の周囲に発生したことが確認された。これは、インク
吐出面28にシール液体22が含浸された領域がないた
め、インクミストが付着・堆積し、インク吐出口12の
周囲にインク液溜り32を発生させたものと考えられ
る。この結果、インク吐出性能を低下させたものと考え
られる。 (実施例2)図7(b)に示すように、ヘッド10は内
部に吐出手段14が配置されたインク室16をもち、イ
ンク吐出面28には直径30μmのインク吐出口12が
配置され、インク吐出面上には、各インク吐出口12の
周囲にシール液体流動促進手段18が配置されている
(図7(a)参照)。また、シール液体22はインク吐
出面上に膜厚15μmとなるように塗布した。
【0117】シール液体22としては複数種類のシリコ
ーンオイルを混合して調製した液体(動粘度30mm2
/s、表面張力20.8mN/m、比重1.0)を用い
た。このシール液体の25℃の蒸気圧は0.1mmHg
以下であり、用いたインクに対しての相溶性もなかっ
た。
【0118】使用したインク20は、水60重量%、ジ
エチレングリコール38重量%、および染料2重量%か
らなり、動粘度2.0mm2 /s、表面張力40mN/
m、比重1.06である。また、このインクを使用する
場合、記録ヘッドの最高駆動周波数は10kHz(周期
は100μs)であった。
【0119】吐出手段14はサーマルインクジェット方
式の吐出手段であり、インク室16の壁面にヒータを設
けて構成されている。ヒータは多結晶シリコンからなる
発熱体層の上にタンタルからなる保護層を積層して構成
されている。ヒータは図示しない信号印加手段により画
像信号に応じたタイミングで所定の信号が印加されるよ
うに配線されている。
【0120】シール液体流動促進手段18は、まず厚さ
40μmのシリコン基板に、シール液体の主成分である
ジメチルシリコーンオイルをキシレンで希釈し、また触
媒としてジブチル錫ジラウレートを混合した溶液をプレ
ートにスプレーコーティングした。そして、実際に焼付
ける前に庫内温度50℃〜70℃の恒温層内に入れて溶
媒を除去した後、庫内温度を120℃に上げて5分間加
熱し、撥インク親シール性領域を作製した。なお、焼付
け処理後の膜厚は2μmであった。最後に、このシール
液体流動促進手段をもったインク吐出面と、吐出手段を
もつ部材と張り合わせて記録ヘッドを作製した。
【0121】このジメチルシリコーンオイルによって加
熱処理したシール液体流動促進手段18を有する記録ヘ
ッドの吐出性能を観察するために、ストロボおよび高解
像のカラーCCDを用いて、シール液体がインク吐出に
より、インク吐出口上部のシールを解いてから、再びシ
ールするまでの時間(ts )を測定した。その結果、
ジメチルシリコーンオイルをコーティングして加熱処理
したシール液体流動促進手段によって常にインク吐出口
の周囲の表層にシール液体が存在するため、ts は最
高駆動周波数の1 周期である100μsよりも短い9
0μsであった。従って、最高駆動周波数の周期で画像
信号が入力され、インクを連続吐出させても、各インク
吐出時のシール液体はインク吐出口を完全にシールした
状態となっていることが確認できた。また、シール液体
を加熱処理したシール液体流動促進手段の表面エネルギ
を計測したところ、焼付け処理した撥インク親シール性
領域の表面エネルギ(臨界表面張力)は24mN/mで
あり、インクの表面エネルギ(表面張力)40mN/m
に比べて小さかった。
【0122】次に、この記録ヘッドを用いて印字テスト
を行った。印字テストはA4用紙に50枚程度の連続印
字実験を行った。この際、印字のカバレッジは約20%
の画像を印字した。
【0123】その結果、記録媒体から跳ね返ってくるイ
ンクミストは、インク吐出口12の周囲がシール液体2
2の主成分であるジメチルシリコーンオイルをコーティ
ングして加熱処理しているため良好な撥インク親シール
性を示し、図7(c)に示すようにインク吐出口周囲に
インク液溜り32を発生することなく、インク吐出性能
が低下することはなかった。
【0124】さらに、このインクジェット記録ヘッドを
キャッピングせずに、気温25℃、相対湿度30%RH
の環境に10日間放置しておいた後、メンテナンスを行
わずに上記の記録動作を行った。全てのインク吐出口に
目詰まりが発生しておらず、印字された画像のドットの
乱れもなく鮮明な画像が記録された。 (比較例2)実施例2で用いたインクジェット記録ヘッ
ドに代えて、インク吐出面にジメチルシリコーンオイル
をコーティングして加熱処理したシール液体流動促進手
段を設けなかった以外は、実施例1と同様のサーマルイ
ンクジェット方式のインクジェット記録ヘッド(図6参
照)を用い、実施例1と同様の評価を行った。
【0125】このインクジェット記録ヘッドを用いた場
合、ts は実施例2の約8倍である700μsであ
り、シール液体22がシール状態に戻るまでの流動は大
変遅いことがわかった。従って、このインクジェット記
録ヘッドを用いた場合は、駆動周波数が1.5kHz以
上である場合、シール液体22が完全にシール状態とな
らないうちに次のインク吐出が行われることになる。
【0126】次にこの記録ヘッド10を用いて印字テス
トを行ったところ、印字された画像の所々にドット抜け
やドットずれによる白筋が目立った。これら画像欠陥が
目立つ部分は、インク吐出口12からのインク吐出が
1.5kHz以上の駆動周波数で駆動されている箇所と
一致した。
【0127】また、インク液溜り32がインク吐出口1
2の周囲に発生したことが確認された。これは、インク
吐出面28にジメチルシリコーンオイルをコーティング
して加熱処理した領域がないため、インクミストが付着
・堆積し、インク吐出口12の周囲にインク液溜り32
を発生させたものと考えられる。この結果、インク吐出
性能を低下させたものと考えられる。
【0128】
【発明の効果】本発明によれば、吐出手段によりシール
液体によるシールを解いた後、シール液体流動促進手段
により、シール液体の吐出口を覆う流動が促進され、素
早くインク吐出口のシールが完了する。このために、連
続的にインク吐出する際、シール液体の状態変化に伴う
インク吐出抵抗の変動を防止することが可能となる。シ
ール状態を開閉する機構が不要となり、記録ヘッドが小
型化され、低コストになる。
【0129】さらに、シール液体流動促進手段は撥イン
ク性であるため、インクミストがインク吐出口の周囲に
付着することはなく、インク吐出の安定性を確保するも
のである。また、インク吐出口の周囲にインクミストが
堆積しても、インク吐出面に対してインクがぬれにくい
ため、従来の除去工程(ブレードなどによる除去)で十
分に対応可能である。
【0130】従って、本発明のシール液体流動促進手段
により、吐出されたインクによる印字画像もドット乱れ
や、濃度の低下等が発生せず、鮮明な印字画像を出力す
ることが可能となる。印字終了後は、吐出口を覆うシー
ル液体により、インクの乾燥を持続的に防止する効果を
有する。即ち、外力や開閉器等の付加装置を用いずに、
目詰まりの防止とインクの吐出性能を両立させ、インク
ジェット記録装置の長期休止による諸問題が発生しない
インクジェット記録ヘッドを供給することが可能にな
る。
【0131】また、上記インクジェット記録ヘッドを組
み込んだ本発明のインクジェット記録装置は、従来必須
であったバキューム等のメンテナンス工程を軽減あるい
は省略することができるため、記録装置の小型化や省
電力化ができ、始動時のメンテナンス待ち時間をなく
すことができ、さらに、メンテナンス動作に伴う騒音
を低減することができる。さらに、バキュームなどのメ
ンテナンスで無駄に消費される廃インクを少なくするこ
とができるため、ランニングコストが低減できる、
廃インク吸収手段を小さくでき装置の小型化ができる、
インクタンクを小型化でき、キャリッジの往復速度を
向上させ、騒音の低減などができる、環境に対する負
荷が小さいという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1 】 本発明のインクジェット記録ヘッドの基本
的な構成例を示す図で、(a)は側断面図、(b)はイ
ンク吐出口方向から見た正面図、および(c)はインク
吐出口からのインク吐出の様子を示す概略図である。
【図2】 液体シールによりシールされていないインク
吐出口からのインク吐出の様子を示す概略図である。
【図3】 (a)(b)は、それぞれ本発明のインクジ
ェット記録ヘッドの吐出面のいくつかの態様について拡
大した斜視図である。
【図4】 (a)(b)は、それぞれ本発明のインクジ
ェット記録ヘッドの吐出面のいくつかの態様について拡
大した斜視図である。
【図5】 本発明の実施例1に係るインクジェット記録
ヘッドの基本的な構成を示す図で、(a)はインク吐出
方向から見た正面図、(b)は(a)におけるY−Y線
断面図、(c)はインクミスト付着状態を示す(a)に
おけるY−Y線断面図である。
【図6】 比較例に係るインクジェット記録ヘッドの側
断面図である。
【図7】 本発明の実施例2に係るインクジェット記録
ヘッドの基本的な構成を示す図で、(a)はインク吐出
方向から見た正面図、(b)は(a)におけるX−X線
断面図、(c)はインクミスト付着状態を示す(a)に
おけるX−X線断面図である。
【図8】 (a)は画像信号の入力のタイミングの一例
を概略的に示した図であり、(b)は従来のシール液体
密封方式のインクジェット記録ヘッドに(a)に示すタ
イミングで画像信号が入力された場合のシール液体の状
態変化を示す模式図である。
【符号の説明】
10 インクジェット記録ヘッド 12 インク吐出口 14 インク吐出手段 16 インク室 18 シール液体流動促進手段(撥インク性親シール性
領域) 20 インク 22 シール液体 28 インク吐出面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 諏訪部 恭史 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 佐藤 博昭 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 末光 裕治 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 長谷部 恵 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 (72)発明者 毛利 哲 神奈川県足柄上郡中井町境430 グリーン テクなかい 富士ゼロックス株式会社内 Fターム(参考) 2C056 EA17 EA23 EA24 HA24 JA24 2C057 AF74 AP13 AP22 AP23 AP24 AP57 AP59 AP60 AP61

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを記録紙に対して吐出するインク
    吐出口と、 前記インク吐出口が形成されたインク吐出面と、 前記インク吐出面に塗布され、前記インクよりも小さい
    表面エネルギを有し前記インク吐出口をシールするシー
    ル液体と、 画像信号に応じて前記インク吐出口からインクを吐出す
    るインク吐出手段と、 を備えるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記イン
    ク吐出面の少なくともインク吐出口の周囲の表層にシー
    ル液体を含ませる表面処理を施したことを特徴とするイ
    ンクジェット記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 前記表面処理は、少なくとも表層が多孔
    質性を有するインク吐出面に、シール液体を含浸処理す
    ることであることを特徴とする請求項1記載のインクジ
    ェット記録ヘッド。
  3. 【請求項3】 前記表面処理は、前記インク吐出面にシ
    ール液体の主成分である液体をコーティングして加熱処
    理することであることを特徴とする請求項1記載のイン
    クジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 インクを記録紙に対して吐出するインク
    吐出口と、 前記インク吐出口が形成され、インクよりも小さい表面
    エネルギを有するシール液体が塗布されるインク吐出面
    と、 画像信号に応じて前記インク吐出口からインクを吐出す
    るインク吐出手段と、 を備えるインクジェット記録ヘッドにおいて、前記イン
    ク吐出面において少なくともインク吐出口の周囲の表層
    に前記シール液体を含ませる表面処理を施したことを特
    徴とするインクジェット記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載のイン
    クジェット記録ヘッドを備えたことを特徴とするインク
    ジェット記録装置。
JP31404799A 1999-11-04 1999-11-04 インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置 Pending JP2001130006A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31404799A JP2001130006A (ja) 1999-11-04 1999-11-04 インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31404799A JP2001130006A (ja) 1999-11-04 1999-11-04 インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2001130006A true JP2001130006A (ja) 2001-05-15

Family

ID=18048586

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31404799A Pending JP2001130006A (ja) 1999-11-04 1999-11-04 インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2001130006A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005175016A (ja) * 2003-12-08 2005-06-30 Canon Inc 基板保持装置およびそれを用いた露光装置ならびにデバイス製造方法
JP2005254599A (ja) * 2004-03-11 2005-09-22 Canon Inc インクジェットプリント装置

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005175016A (ja) * 2003-12-08 2005-06-30 Canon Inc 基板保持装置およびそれを用いた露光装置ならびにデバイス製造方法
JP2005254599A (ja) * 2004-03-11 2005-09-22 Canon Inc インクジェットプリント装置
JP4497961B2 (ja) * 2004-03-11 2010-07-07 キヤノン株式会社 インクジェットプリント装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3957851B2 (ja) 液体吐出方法
JPH10217477A (ja) インクジェット記録装置
JP2007144989A (ja) 疎水性コーティング膜の形成方法
US20110199432A1 (en) Liquid Injection Head, Liquid Injection Recording Apparatus, and Method of Filling Liquid Injection Head With Liquid
JPH08276598A (ja) 液体噴射装置および情報処理システム
JP3651280B2 (ja) インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置
JP2001130006A (ja) インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置
JP3684870B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置
JP2008273144A (ja) インクジェットヘッドのメンテナンス装置およびインクジェットヘッドのメンテナンス方法
JP2010143075A (ja) インクジェット描画装置および描画方法
JP2002052742A (ja) インクジェット式記録装置
JPH1034967A (ja) インクジェット記録装置
JP4927648B2 (ja) インクジェットヘッド用導入液、インクジェットヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2001130014A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2000127387A (ja) インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置
JP2000127415A (ja) インクジェット記録ヘッド及びそれを備えたインクジェット記録装置
JP2001130000A (ja) インクジェット記録ヘッドおよびインクジェット記録装置
JP2003094665A (ja) インクジェットヘッド及びインクジェットヘッド製造方法
JP2000309104A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2000309103A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2020082607A (ja) インクジェットヘッド及びインクジェット装置
JP2001113707A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2000301716A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2000263790A (ja) インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP3736144B2 (ja) インクジェット記録ヘッドおよびそれを備えたインクジェット記録装置