JP3651280B2 - インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録方法、およびインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを吐出させて画像の記録を行うインクジェット記録ヘッド、該インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関し、特にインク中に含まれる気泡が、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口近傍への流入を防止可能なインクジェット記録ヘッド、該インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録ヘッド内のインク中には周囲環境の大気が、気体のインクに対する溶解度に依存して溶解し、溶存気体として存在している。
従って、周囲環境の温度変化や圧力変化により、溶存気体が過飽和状態になるとインクジェット記録ヘッド内で気泡化する。
【0003】
気泡の発生は、インクジェット記録ヘッドの印字性能に関し以下▲1▼および▲2▼に示す如く、様々な悪影響を及ぼす。
▲1▼気泡がインク流路に滞留し、気泡のサイズが、インクジェット記録ヘッド内に設けられたインク流路のサイズと同程度以上になると、インク供給が不十分となり、最悪の場合印字不能に陥る。
【0004】
▲2▼圧力室に配された発熱素子や電歪素子等の圧力発生手段によりインクを加圧して、吐出口からインクドロップを吐出させるインクジェット記録方式では、気泡が圧力室に存在すると、本来インクに作用すべき圧力が気泡の圧縮により吐出口付近のインクに十分に伝わらずインクの吐出不良を起こす事がある。
【0005】
これらインクジェット記録ヘッド内のインク中に存在する気泡に起因する問題点を解消する手段として、特開昭62−113556号、同63−295265号公報等で提案されている所謂バキューム吸引方式がある。これは、インクジェット記録ヘッド本体の各ノズル(吐出口)面のインクが露出する端面全域をキャップで覆い、キャップ内部を負圧状態として、インクジェット記録ヘッド内の気泡をインクごと吸引除去するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
バキューム吸引方式には、以下に示す▲1▼〜▲5▼の課題がある。
▲1▼キャップ内部を負圧状態にするためのポンプ機構が必要になるため、装置の小型化の障害となり、また高コスト化につながる。
▲2▼気泡を吸引すると同時に大量のインクを吸引するので、排インクを保持する排インクタンクが必要になるため、装置の小型化の障害となる。
【0007】
▲3▼排インクをインクジェット記録ヘッドに戻して、再度印字に使用する事も可能ではあるが、そのための機構が複雑になるので通常は廃棄されており、印字コストの上昇につながっている。
▲4▼キャップで密閉しインクジェット記録ヘッド内の気泡をインクごと吸引するため、吸引終了後のノズル面にはインクが付着する。ノズル面に付着したインクは、ワイパ部材により拭き取られる(ワイピング工程)。しかしながら、このワイピング工程が新たな問題を引き起こす事が知られている。即ち、ノズル面には通常撥液処理薄層や親液処理薄層の類が設けられるが、これら処理薄層がワイピングによって摩耗したり、あるいは、剥離することがあるという問題である。また、ノズル面に密着して摺動させる結果、不要物(ゴミ、汚れたインク等)をノズル内に押し込んでしまうことがあるという問題もある。
【0008】
▲5▼停止状態、特に長時間(数日以上)停止状態にあったプリンタを起動して記録動作をさせる場合、気泡除去のための上記一連の工程が複雑で時間を要するので、1枚目のプリントを得るまでの待機時間が長くなるという問題がある。
従って本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、インクジェット記録ヘッド内の気泡に起因する問題点を、バキューム吸引方式を用いることなく解決し得るインクジェット記録ヘッド、該インクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 画像記録材料にインクを吐出するインク吐出口と、インク吐出口に連通するインク流路と、画像信号に応じてインクを吐出するインク吐出手段と、からなるインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路壁面に、対向する一対の電極を配設し、前記電極の少なくとも一方であって、かつ前記電極の対向面の少なくとも一部に、インクに対して比誘電率の高い材料からなり、かつ、その形状が、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が減少するような形状を有する誘電体を設けることを特徴とするインクジェット記録ヘッドである。
<2> 画像記録材料にインクを吐出するインク吐出口と、インク吐出口に連通するインク流路と、画像信号に応じてインクを吐出するインク吐出手段と、からなるインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路壁面に、対向する一対の電極を配設し、前記電極の少なくとも一方であって、かつ前記電極の対向面の少なくとも一部に、インクに対して比誘電率の低い材料からなり、かつ、その形状が、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が増加するような形状を有する誘電体を設けることを特徴とするインクジェット記録ヘッドである。
<3> 前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録ヘッドを用い、該インクジェット記録ヘッドのインク流路にインクを供給し、画像信号に応じてインク吐出手段によりインク吐出口からインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクジェット記録ヘッド内の一対の電極間に電圧を印加し、インク流路に不均一な電界を生じさせることを特徴とするインクジェット記録方法である。
<4>一対の電極に印加する電圧が、交流電圧であることを特徴とする前記<3>に記載のインクジェット記録方法である。
<5> 画像記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記画像記録媒体に対しインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドに画像信号を入力する画像信号入力手段と、を備えるインクジェット記録装置において、前記インクジェット記録ヘッドが前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を実施の形態を挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明のインクジェット記録ヘッド(以下、「記録ヘッド」と略す場合がある)の一例として、第1の実施の形態の記録ヘッド1の動作状態を表す拡大断面図である。
記録ヘッド1の内部には、インク室(不図示)からインク吐出口4までを繋ぐインク流路9が形成され、インク吐出口4方向にインクの流れが生ずるようになっている。
【0011】
インク流路9のインク吐出口4手前側壁には、インク吐出手段5が配されている。なお、本実施の形態においては、インク吐出手段5として、発熱素子や電歪素子、また静電吸引方式等、従来公知のインクジェット記録におけるあらゆるインク吐出手段を採用することができる。
【0012】
記録ヘッド1内のインク流路9にはインク3が満たされ、インク吐出手段5から吐出エネルギーを得たインク3がインク吐出口4でドロップ化し、インク滴となって、画像記録材料(不図示)に着弾することで画像を記録する。
【0013】
インク流路壁面には、対向する一対の電極2a,2bが配設される。インク流路壁面とは、インク流路側壁10の外壁面及び内壁面の両方を表すが、本発明においては、製造性や電極の腐食等を考慮するとインク流路側壁10の外壁面に配設することが好ましい。
電極2a,2bの少なくとも一方であって、かつ前記電極2a,2bの対向面11の少なくとも一部には、誘電体8が設けられる。前記電極2a,2bの対向面11とは、電極2a,2bがインク流路側壁10の外壁面に配設される場合には、インク流路側壁10の内壁面を表し、電極2a,2bがインク流路側壁10の内壁面に配設される場合には、電極2a,2bの表面を表す。
【0014】
本実施の形態の記録ヘッド1を用いてインクジェット記録を行う際、一対の電極2a,2b間には所定の電源手段により電圧が印加され、その結果インク流路9中に不均一電界である気泡流入防止電界が形成される。本実施の形態における気泡流入防止電界は、インク吐出口4側の電界が強く、インク室(不図示)側が弱く形成される。
【0015】
気泡流入防止電界の作用について、電極2a,2b周辺の模式拡大図である図2を用いて説明する。図2では、上方の電極2aを正電極とするケースを模式的に示している。
【0016】
電極2a,2b間に印加された電圧により形成された気泡流入防止電界の影響を受けて、インク流路9に流入した気泡6の表面には、誘電分極による電荷の偏りが生じ、気泡6表面の正電極側(電極2a側)には正電荷が、負電極側(電極2b側)には負電荷が分布する。これは気泡6を取り囲むインク3の誘電率が気泡6の誘電率より大きいことに起因する。その結果、気泡6は両方の電極2a,2bから斥力を受け、合力として強電界側から弱電界側へ向かう力(誘電泳動力と呼ばれる)を受ける。したがって、気泡流入防止電界は、気泡6に対し常に強電界側から弱電界側に向かう作用力を発生するものである。このように、気泡流入防止電界が気泡6に作用し、気泡6は弱電界側、即ちインクの流れ方向と反対側への力を受け、インクの流れ方向への進行が妨げられ、インク吐出口4付近への気泡6の侵入が防止される。
【0017】
インク3としては、水性インク、油性インク、WAX系ホットメルトインク、樹脂系ホットメルトインク等様々なものを用いることができる。これは、いずれのインクの誘電率も、印加する電圧の周波数によって異なるものの通常真空の誘電率の数倍〜80倍であるのに対し、インクジェット記録ヘッド1中に発生する気泡6の成分は、空気、酸素、水素、窒素等であり、いずれの場合も誘電率は真空の誘電率とほぼ等しくなり、既述の気泡流入防止電界が有効に作用するからである。
【0018】
図2では、気泡流入防止電界の作用を簡単に説明するために、誘電体を用いずに、電極2a,2b間の間隙をインクの流れ方向で連続的に変化させることにより、強電界側と弱電界側とからなる強い気泡流入防止電界を強制的に形成させているが、本発明のインクジェット記録ヘッドは、電極の対向面に厚みの異なる誘電体を設けることによって、強電界側と弱電界側とからなる強い気泡流入防止電界を強制的に形成させている。このように誘電体の形状を変える方が、電極の配設される形状を変えるより容易であるという利点がある。
【0019】
次に、気泡流入防止電界を形成する誘電体について詳細に説明する。
インク3と気泡6との間に作用する誘電泳動力は、インク流路における不均一な電界中で電界強度が弱くなる方向に作用するため、(1)誘電体8が、インク3に対して比誘電率の高い材料からなる場合には、誘電体8の形状は、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が減少するような形状であれば、特に限定されない。一方、(2)誘電体8が、インク3に対して比誘電率の低い材料からなる場合には、誘電体8の形状は、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が増加するような形状であれば、特に限定されない。
【0020】
図3(a)は、第2の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図であり、図3(b)は、第3の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
図3(a)のように2つの誘電体の大きさをそれぞれ変えることによっても、不均一な電界を形成し、誘電泳動力を作用させることができる。また、図3(b)のように一方の誘電体を、インクの流れ方向に対して垂直な方向に、鋭角状に突出させることによっても不均一な電界を形成し、誘電泳動力を作用させることができる。
【0021】
図4は、気泡流入防止電界の作用について説明するための、電極周辺の模式拡大図である。
図4(a)は、誘電体8が、インク3に対して比誘電率の高い材料からなる場合であり、電圧が印加されると、誘電体8に形成される電界に比べ、インク3中に形成される電界の方が強くなり、一対の誘電体8の距離が狭い部分では強電界、広い部分では弱電界になる。よって図4(a)中の気泡6は、電界強度の弱い方向Aに移動することになる。
【0022】
また、図4(b)では、誘電体8が、インク3に対して比誘電率の低い材料からなる場合であり、電圧が印加されると、一対の誘電体8の距離が狭い部分では弱電界、広い部分では強電界になる。よって図4(b)中の気泡6は電界強度の弱い方向Aに移動することになる。このように、インク3に対して比誘電率の異なる誘電体8を適宜選択し、形状を変えて設けることにより、インク流路内の気泡6を誘電泳動力で移動させることができる。
【0023】
誘電体材料としては、絶縁性セラミック材料が好ましく、例えば、窒化アルミニウムや酸化アルミニウム及びこれらを含む混合物、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニオブ、酸化レニウム等、及びこれらのうち2以上を含む混合物が挙げられる。
また、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、多結晶シリコン、及びこれらのうち2以上を含む混合物、酸化タンタル、窒化タンタル、炭化タンタル、及びこれらのうち2以上を含む混合物、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン、及びこれらのうち2以上を含む混合物、その他の硬質セラミックス及びそれを含む混合物でもよい。また、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、含フッ素樹脂、及びこれらの変性樹脂でもよい。
前記電極2a,2bのそれぞれに、誘電体8を設ける場合には、1種単独の誘電体材料を用いてもよく、異なる誘電体材料を用いてもよい。
【0024】
前記誘電体材料の比誘電率を例示すると、例えば、酸化チタン(170)、炭化ケイ素(10.2)、エポキシ樹脂(3.4〜5.0)、シリコーン樹脂(2.8〜3.1)である。
一方、通常用いられるインクジェット用水性インクの比誘電率は、数十〜80程度であり、従って、該インクより比誘電率の低い材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
これら誘電体材料を用いて、前記電極の対向面11に誘電体8を形成する方法としては、スプレー塗布法、真空蒸着法、RFスパッタ法、DCスパッタ法、CVD法等が挙げられる。
【0025】
また、今後実用化がますます進むと思われる傾斜機能性材料を用いることにより、誘電体を形成することもできる。傾斜機能性材料は、表と裏とで性質が全く異なる材料であり、異なる材料を組み合わせた複合材料であるが、材料が原子レベルで混ざり合うため、素材の境目がなく徐々に特性が変化する特徴がある。この機能性を利用し、誘電率の傾斜機能性を有する誘電体材料を用いることにより、誘電泳動力を得ることができる。
【0026】
次に、インク流路中に誘電泳動力を発生させるための電圧の印加条件について説明する。
インク3中にイオン化した成分が存在する場合や帯電した成分が存在する場合、それら成分は電界の向きに沿ってクーロン力を受けることになり、正に荷電している成分は負極側に、負に荷電している成分は正極側に泳動する(この現象は「電気泳動」と呼ばれる)。その結果、電極2表面あるいは誘電体8表面に不要の堆積物を生じることとなり、同時にインク成分を変化させる結果となる。従って、気泡流入防止電界を正負が交互に反転する交流電界とすることにより、上記電気泳動が生じないようにすることが望ましく、電極2に印加する電圧は、交流電圧であることが望ましい。
【0027】
交流電圧(電界)の周波数は、数Hzから数MHzの範囲で適用可能である。しかし、周波数が低すぎると上記電気泳動現象による問題が回避できず、周波数が高すぎると電源が高価になり、それぞれ好ましくない。従って、好ましい周波数範囲としては10Hz〜1MHzであり、より好ましくは50Hz〜500kHzである。交流電圧(電界)の波形は、特に限定されず、三角波、正弦波、矩形波、鋸波等あらゆる波形が選択され得る。
【0028】
交流電圧(電界)の振幅は、気泡のサイズ、インクの粘度、インクの比誘電率、インクの流速、インク流路のサイズ、電極形状等を勘案して決定される。気泡に作用する斥力は、電界強度の2乗の変化率(grad(E2 ))が大きいほど大きくなる。印加電圧の振幅が大きい方が,(grad(E2 ))を大きくするヘッド設計、および、パラメータ設計が容易になるので、振幅としては、0Vを基準として10V以上が好ましく、より好ましくは50V以上である。一方、あまり高電圧を印加すると消費電力が増大し、吐出手段を制御する信号への悪影響が生ずる可能性もあるため、振幅としては、0Vを基準として1000V以下、より好ましくは300V以下である。
【0029】
以上、本発明を実施の形態を挙げて説明してきたが、本発明は上記実施の形態に挙げられたものに限定されるものではなく、例えば、電極の形状や配置する位置、電圧の印加方法等は上記実施の形態で挙げられたもの以外のものも適用しうる。また、本発明は、上記実施の形態に挙げられたインク吐出手段に限定されるものではない。
【0030】
さらに、上記実施の形態においては、すべてインク吐出口、およびインクの吐出方向が左向きであるが、下向き、上向き、右向き、あるいはこれら相互の中間等、如何なる方向に本発明のインクジェット記録ヘッドが向いていても構わない。
【0031】
以上の如き構成の本発明のインクジェット記録ヘッドは、従来よりあるいわゆるインクジェット記録装置、即ち、画像記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記画像記録媒体に対しインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドに画像信号を入力する画像信号入力手段と、を備えるインクジェット記録装置において、好適に用いられる。本発明のインクジェット記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドのインク吐出口付近への気泡の侵入が防止され、気泡によるインク吐出不良等の不具合が生じにくい。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下のように、図5に示すインクジェット記録へッドを作製した。
電極2を、インク流路側壁10の外壁面であって、インク吐出手段5に対してインク室(不図示)側の位置に配設した。誘電体8には、インク3に対して比誘電率の高い酸化チタンを用い、対向する電極2の対向面11の一部に、スパッタ法により前記酸化チタンの膜を形成した。
これは図4(a)に示すように、インク3に対して比誘電率の高い誘電体8を電極の対向面11に設けることにより、電極間の電界強度を不均一にし、誘電泳動力の作用で気泡を移動させようとするものである。
【0033】
このインクジェット記録へッドをインクジェット記録ヘッド評価用実験機に組み込み、印字テストを実施した。
インクは、市販のインクジェット用水性インク(富士ゼロックス(株)製、Jet Wind 300C用ブラックインク)を用い、数日間放置して、室温、大気圧等でインク中の溶存気体が気泡として発生した状態で、気泡流入防止電界形成用の電極2に周波数150Hz、振幅40Vの正弦波交流電圧を印加した。
その結果、気泡6は、電界強度の強い誘電体8近辺から電界強度の弱いインク室側(不図示)に移動し始めた。その後、インク吐出に影響しない所まで気泡6を移動した後に連続30枚の印字テストを行ったところ、印字画像中には印字欠陥は発生しなかった。
【0034】
(比較例1)
比較のために従来のインクジェット記録ヘッドをインクジェット記録ヘッド評価用実験機に組み込んで、実施例1と同様の条件で印字テストを行ったところ、1枚目からドット抜けとドット不良が発生した。ドット抜けはヘッド内部に発生した気泡がインク流路を塞いでインク供給を阻害した結果であることが確認された。
【0035】
(実施例2)
以下のように、図6に示すインクジェット記録へッドを作製した。
電極2を、インク流路側壁10の外壁面であって、インク吐出手段5に対してインク室(不図示)側の位置に配設した。誘電体8には、インク3に対して比誘電率の低いポリ−シリコンを用い、対向する電極2の一方であって、その電極2の対向面11に、スパッタ法によりポリ−シリコン層を形成した。
このポリ−シリコン層は、多層構造からなり、第1層よりも第2層の面積が小さくなるように形成し、インク3の流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が増加するような形状にした。
これは図4(b)に示すように、インク3に対して比誘電率の低い誘電体8を電極の対向面11に設けることにより、電極間の電界強度を不均一にし、誘電泳動力の作用で気泡を移動させようとするものである。
【0036】
このインクジェット記録へッドをインクジェット記録ヘッド評価用実験機に組み込み、印字テストを実施した。
インクは、市販のインクジェット用水性インク(富士ゼロックス(株)製、Jet Wind 300C用ブラックインク)を用い、数日間放置して、室温、大気圧等でインク中の溶存気体が気泡として発生した状態で、気泡流入防止電界形成用の電極2に周波数300Hz、振幅50Vの正弦波交流電圧を印加した。
その結果、気泡6は、電界強度の強い、誘電体8におけるインク流路の開口面積が大きい近辺から、電界強度の弱いインク室側(不図示)に移動し始めた。その後、インク吐出に影響しない所まで気泡6を移動した後に連続30枚の印字テストを行ったところ、印字画像中には印字欠陥は発生しなかった。
【0037】
(比較例2)
比較のために従来のインクジェット記録ヘッドをインクジェット記録ヘッド評価用実験機に組み込んで、実施例2と同様の条件で印字テストを行ったところ、1枚目からドット抜けとドット不良が発生した。ドット抜けはヘッド内部に発生した気泡がインク流路を塞いでインク供給を阻害した結果であることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、インクジェット記録ヘッド内に発生する気泡に起因する問題点を、バキューム吸引方式を用いることなく解決することができる。従って本発明によれば、従来気泡を除去するために実施されていたバキューム吸引等の工程が不要となるため、従来かかっていた印字開始までの時間を大幅に短縮でき、また、廃棄されるインクの量を大幅に低減できる等、バキューム吸引方式を用いる場合の弊害を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、第1の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図2】 図2は、気泡流入防止電界の作用について説明するための、インクジェット記録ヘッドの電極周辺の模式拡大図である。
【図3】 図3(a)は、第2の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。図3(b)は、第3の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図4】 図4は、気泡流入防止電界の作用について説明するための、他のインクジェット記録ヘッドの電極周辺の模式拡大図である。
【図5】 図5は、第4の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【図6】 図6は、第5の実施の形態のインクジェット記録ヘッドの動作状態を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 インクジェット記録へッド
2a,2b 電極
3 インク
4 インク吐出口
5 インク吐出手段
6 気泡
8 誘電体
9 インク流路
10 インク流路側壁
11 電極の対向面
Claims (5)
- 画像記録材料にインクを吐出するインク吐出口と、インク吐出口に連通するインク流路と、画像信号に応じてインクを吐出するインク吐出手段と、からなるインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路壁面に、対向する一対の電極を配設し、前記電極の少なくとも一方であって、かつ前記電極の対向面の少なくとも一部に、インクに対して比誘電率の高い材料からなり、かつ、その形状が、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が減少するような形状を有する誘電体を設けることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
- 画像記録材料にインクを吐出するインク吐出口と、インク吐出口に連通するインク流路と、画像信号に応じてインクを吐出するインク吐出手段と、からなるインクジェット記録ヘッドにおいて、インク流路壁面に、対向する一対の電極を配設し、前記電極の少なくとも一方であって、かつ前記電極の対向面の少なくとも一部に、インクに対して比誘電率の低い材料からなり、かつ、その形状が、インクの流れ方向に進むにしたがいインク流路の開口面積が増加するような形状を有する誘電体を設けることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
- 請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドを用い、該インクジェット記録ヘッドのインク流路にインクを供給し、画像信号に応じてインク吐出手段によりインク吐出口からインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録方法において、前記インクジェット記録ヘッド内の一対の電極間に電圧を印加し、インク流路に不均一な電界を生じさせることを特徴とするインクジェット記録方法。
- 一対の電極に印加する電圧が、交流電圧であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録方法。
- 画像記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬送される前記画像記録媒体に対しインクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドと、前記インクジェット記録ヘッドに画像信号を入力する画像信号入力手段と、を備えるインクジェット記録装置において、前記インクジェット記録ヘッドが請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッドであることを特徴とするインクジェット記録装置。
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