JP2001021007A - 無段変速機用ベルト - Google Patents
無段変速機用ベルトInfo
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Abstract
となく、該金属エレメントの傾きによる金属リング集合
体の耐久性低下を防止する。 【解決手段】 金属ベルトがドリブンプーリを離れると
きに金属エレメント32が金属リング集合体31に対し
て進行方向前方に倒れるため、リングスロット35のサ
ドル面44の進行方向後端aが金属リング集合体31の
内周面に強く当接して集中応力σHが発生し、金属リン
グ集合体31の寿命を短くする。これを防止するため
に、サドル面44の進行方向後端aの曲率半径rを進行
方向前端bの曲率半径rよりも大きくして前記集中応力
σHを緩和する。金属エレメント32をファインブラン
キング加工により形成する際に、サドル面44の進行方
向後端aの曲率半径は打ち抜きだれによって自動的に大
きくなるため、特別の機械加工が不要である。
Description
グを複数枚積層した金属リング集合体と、金属リング集
合体が嵌合するリングスロットを有する多数の金属エレ
メントとから構成され、ドライブプーリおよびドリブン
プーリに巻き掛けられて両プーリ間で駆動力の伝達を行
う無段変速機用ベルトに関する。
1にリングスロット35を嵌合させて支持された金属エ
レメント32が進行方向前方に傾くと、サドル面44の
進行方向後端aが金属リング集合体31の内周面に当接
するため、その部分に大きい応力σH(ヘルツ応力)が
発生して金属リング集合体31の耐久性に悪影響を与え
る問題がある。前記金属エレメント32の進行方向前方
への傾きは、金属エレメント32がプーリとの接触面に
おいて受ける接線方向の摩擦力Fと、金属エレメント3
2相互間の押し力Eとにより発生するもので、この傾向
はドリブンプーリの出口部分において特に顕著なものと
なる。以下、その理由を説明する。
摩擦力Fにより発生する矢印M方向のモーメントは、金
属エレメント32を揺動中心C回りに進行方向前方に倒
すように作用する。一方、金属エレメント32間の押し
力Eにより発生する半径方向の摩擦力μEは、金属エレ
メント32に矢印M′方向のモーメントを発生させ、こ
のモーメントは金属エレメント32を揺動中心C回りに
進行方向後方に倒すように作用する。
リ6あるいはドリブンプーリ11の出口部分において、
金属エレメント32がプーリ6,11から受ける接線方
向の摩擦力Fが大きくなり、その値はプーリ6,11が
変形して軸推力が集中する等の理由により、接線方向の
摩擦力Fがプーリ6,11の巻き付き域の全域に亘り平
均的に分布したと仮定したときの値の4倍に達すること
が知られている。また図10(B)に示すように、金属
エレメント32間の押し力Eは、ドライブプーリ6の出
口部分において大きな値を持つが、ドリブンプーリ11
の出口部分において0になる。従って、金属エレメント
32を進行方向前方に傾ける接線方向の摩擦力Fが最大
であり、且つ金属エレメント32の進行方向前方への傾
きを抑制する押し力Eが0になる位置、即ちドリブンプ
ーリ11の出口部分において金属エレメント32は進行
方向前方に最も傾き易くなる。
出口部分において金属エレメント32が進行方向前方に
大きく傾くと、金属エレメント32のリングスロット3
5のサドル面44の進行方向後端aが金属リング集合体
31の内周面に強く当接し(図8参照)、その部分に発
生する応力σHによって金属リング集合体31の疲労寿
命が短くなる問題がある。
ル面の形状に特徴を有する金属エレメントとして、実開
昭59−79653号公報、実開昭63−17353号
公報、特開平6−10993号公報、実開昭60−10
7444号公報に記載されたものが公知である。
653号公報に記載されたものは、金属エレメントのサ
ドル面の進行方向両端部に滑らかな面取りを施してお
り、上記実開昭63−17353号公報に記載されたも
のは、金属エレメントのサドル面の進行方向中央部に階
段状の凸部を形成し、この凸部の頂面に金属リング集合
体の最小巻き付き半径に等しい半径の円弧面を形成して
いる。上記構成の目的は明記されていないが、無段変速
機用ベルトのプーリへの巻き付き部において、サドル面
の進行方向両端部と金属リング集合体の内周面との強い
当りの緩和を意図したものと思われる。これらのもの
は、サドル面の形状が進行方向前後で対称であるため、
ドリブンプーリの出口部分においてサドル面の進行方向
後端部と金属リング集合体の内周面とが当接して発生す
るヘルツ応力を有効に緩和することは困難である。
開昭60−107444号公報に記載されたものは、金
属エレメントのサドル面の進行方向後側が進行方向前側
よりも低くなるように前後非対称形状に構成したもので
あり、その目的はピッチングモーメントによる金属エレ
メントの前後方向の倒れを防止することとされている。
これらのものは、サドル面の形状が複雑であるために加
工コストが嵩むという問題がある。
で、金属エレメントの加工コストを増加させることな
く、該金属エレメントの傾きによる金属リング集合体の
耐久性低下を防止することを目的とする。
に、請求項1に記載された発明によれば、無端状の金属
リングを複数枚積層した金属リング集合体と、金属リン
グ集合体が嵌合するリングスロットを有する多数の金属
エレメントとから構成され、ドライブプーリおよびドリ
ブンプーリに巻き掛けられて両プーリ間で駆動力の伝達
を行う無段変速機用ベルトにおいて、金属リング集合体
の内周面が当接するリングスロットのサドル面は、金属
エレメントの進行方向後方側の角部の半径が進行方向前
方側の角部の半径よりも大きいことを特徴とする無段変
速機用ベルトが提案される。
た金属エレメントが進行方向前方側に倒れたとき、リン
グスロットのサドル面の進行方向後方側に位置する半径
が大きい方の角部が金属リング集合体の内周面に押し付
けられるので、その金属リング集合体の内周面に発生す
るヘルツ応力を最小限に抑えて該金属リング集合体の耐
久性を高めることができる。
請求項1の構成に加えて、金属エレメントは金属板材を
打ち抜き加工して形成されるものであり、前記進行方向
後方側の角部は打ち抜き加工時に打ち抜きだれにより生
じることを特徴とする無段変速機用ベルトが提案され
る。
ル面の進行方向後方側に位置する半径が大きい方の角部
は、金属板材を打ち抜き加工して金属エレメントを形成
するときの打ち抜きだれとして生じるので、特別の加工
を施すことなく前記半径が大きい角部を形成することが
できる。
請求項1の構成に加えて、前記無段変速機用ベルトは車
両の無段変速機に使用されるものであり、金属エレメン
トの前記進行方向は車両の前進走行時における進行方向
であることを特徴とする無段変速機用ベルトが提案され
る。
度は後進走行する頻度に比べて圧倒的に高いため、金属
エレメントの進行方向を車両の前進走行時における進行
方向に一致させることにより、半径が大きい方の角部を
車両の前進走行時に金属リング集合体の内周面に押し付
けて該金属リング集合体の耐久性を高めることができ
る。
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
もので、図1は無段変速機を搭載した車両の動力伝達系
のスケルトン図、図2は金属ベルトの部分斜視図、図3
はファインブランキング装置の全体図、図4は金属リン
グに作用する引張応力の分布を示す図、図5は金属リン
グの自由状態および巻付状態を示す図、図6は最内層の
金属リングに作用するトータルの応力の分布を示す図、
図7は直立状態の金属エレメントの側面図、図8は傾斜
状態の金属エレメントの側面図、図9はサドル面の進行
方向前後端に作用するピーク荷重を示すグラフ、図10
は金属エレメントがプーリから受ける接線方向の摩擦力
Fおよび金属エレメント間の押し力Eの分布を示す図、
図11はドリブンプーリの出口付近における金属エレメ
ントの傾きを示す図である。
後方向、左右方向、半径方向の定義は図2に示されてい
る。半径方向はその金属エレメントが当接するプーリの
半径方向として定義されるもので、プーリの回転軸に近
い側が半径方向内側であり、プーリの回転軸に遠い側が
半径方向外側である。また左右方向は金属エレメントが
当接するプーリの回転軸に沿う方向として定義され、前
後方向は金属エレメントの車両の前進走行時における進
行方向に沿う方向として定義される。
段変速機Tの概略構造を示すもので、エンジンEのクラ
ンクシャフト1にダンパー2を介して接続されたインプ
ットシャフト3は発進用クラッチ4を介して金属ベルト
式無段変速機Tのドライブシャフト5に接続される。ド
ライブシャフト5に設けられたドライブプーリ6は、ド
ライブシャフト5に固着された固定側プーリ半体7と、
この固定側プーリ半体7に対して接離可能な可動側プー
リ半体8とを備えており、可動側プーリ半体8は油室9
に作用する油圧で固定側プーリ半体7に向けて付勢され
る。
リブンシャフト10に設けられたドリブンプーリ11
は、ドリブンシャフト10に固着された固定側プーリ半
体12と、この固定側プーリ半体12に対して接離可能
な可動側プーリ半体13とを備えており、可動側プーリ
半体13は油室14に作用する油圧で固定側プーリ半体
12に向けて付勢される。ドライブプーリ6およびドリ
ブンプーリ11間に、左右の一対の金属リング集合体3
1,31に多数の金属エレメント32を支持してなる金
属ベルト15が巻き掛けられる(図2参照)。それぞれ
の金属リング集合体31は、12枚の金属リング33を
積層してなる。
ギヤ16および後進用ドライブギヤ17が相対回転自在
に支持されており、これら前進用ドライブギヤ16およ
び後進用ドライブギヤ17はセレクタ18により選択的
にドリブンシャフト10に結合可能である。ドリブンシ
ャフト10と平行に配置されたアウトプットシャフト1
9には、前記前進用ドライブギヤ16に噛合する前進用
ドリブンギヤ20と、前記後進用ドライブギヤ17に後
進用アイドルギヤ21を介して噛合する後進用ドリブン
ギヤ22とが固着される。
ナルドライブギヤ23およびファイナルドリブンギヤ2
4を介してディファレンシャル25に入力され、そこか
ら左右のアクスル26,26を介して駆動輪W,Wに伝
達される。
ャフト1、ダンパー2、インプットシャフト3、発進用
クラッチ4、ドライブシャフト5、ドライブプーリ6、
金属ベルト15およびドリブンプーリ11を介してドリ
ブンシャフト10に伝達される。前進走行レンジが選択
されているとき、ドリブンシャフト10の駆動力は前進
用ドライブギヤ16および前進用ドリブンギヤ20を介
してアウトプットシャフト19に伝達され、車両を前進
走行させる。また後進走行レンジが選択されていると
き、ドリブンシャフト10の駆動力は後進用ドライブギ
ヤ17、後進用アイドルギヤ21および後進用ドリブン
ギヤ22を介してアウトプットシャフト19に伝達さ
れ、車両を後進走行させる。
ライブプーリ6の油室9およびドリブンプーリ11の油
室14に作用する油圧を、電子制御ユニットU1 からの
指令で作動する油圧制御ユニットU2 で制御することに
より、その変速比が無段階に調整される。即ち、ドライ
ブプーリ6の油室9に作用する油圧に対してドリブンプ
ーリ11の油室14に作用する油圧を相対的に増加させ
れば、ドリブンプーリ11の溝幅が減少して有効半径が
増加し、これに伴ってドライブプーリ6の溝幅が増加し
て有効半径が減少するため、金属ベルト式無段変速機T
の変速比はLOWに向かって無段階に変化する。逆にド
リブンプーリ11の油室14に作用する油圧に対してド
ライブプーリ6の油室9に作用する油圧を相対的に増加
させれば、ドライブプーリ6の溝幅が減少して有効半径
が増加し、これに伴ってドリブンプーリ11の溝幅が増
加して有効半径が減少するため、金属ベルト式無段変速
機Tの変速比はODに向かって無段階に変化する。
て成形した金属エレメント32は、概略台形状のエレメ
ント本体34と、金属リング集合体31,31が嵌合す
る左右一対のリングスロット35,35間に位置するネ
ック部36と、ネック部36を介して前記エレメント本
体34の上部に接続される概略三角形のイヤー部37と
を備える。エレメント本体34の左右方向両端部には、
ドライブプーリ6およびドリブンプーリ11のV面に当
接可能な一対のプーリ当接面39,39が形成される。
また金属エレメント32の進行方向前側および後側に
は、該進行方向に直交するとともに相互に平行な前後一
対の主面40,40が形成され、また進行方向前側の主
面40の下部には左右方向に延びるロッキングエッジ4
1を介して傾斜面41が形成される。更に、前後に隣接
する金属エレメント32,32を結合すべく、イヤー部
37の前後面に凹凸部43が形成される。
を打ち抜き加工するファインブランキング装置の構造を
説明する。
52から金属エレメント32を打ち抜き加工するもの
で、金属板材52の下面を支持する固定の下側ダイ53
と、シリンダ54,54で昇降して金属板材52の上面
を押圧可能な上側ダイ55と、下側ダイ53の凹部に昇
降自在に収納されてシリンダ56で上向きに付勢された
カウンターパンチ57と、上側ダイ55の凹部に収納さ
れてシリンダ58で昇降するパンチ59とを備える。上
記構造のファインブランキング装置51による金属エレ
メント32の打ち抜き加工は、以下のような手順で行わ
れる。先ず金属板材52を下側ダイ53上に載置した状
態でシリンダ54,54を伸長駆動して上側ダイ55を
下降させ、下側ダイ53および上側ダイ55間に金属板
材52を挟持する。続いて、シリンダ58を伸長駆動し
てパンチ59を下降させると、パンチ59およびカウン
ターパンチ57間に挟持された金属板材52の一部がシ
リンダ56による反力を受けながら下降し、下側ダイ5
3および上側ダイ55との間に発生する剪断力で金属エ
レメント32が打ち抜かれる。図3には金属エレメント
32が打ち抜かれる途中の状態が示されており、その金
属エレメント32は下向きになった進行方向後面側が下
側ダイ53およびカウンターパンチ57に対向してい
る。
過程で、下側ダイ53およびカウンターパンチ57の境
界部に臨む金属エレメント32の周縁部(○で囲った部
分)に打ち抜きだれが発生し、その断面は鋭いエッジを
持たない円弧形状となる。図7に示すように、一般に金
属エレメント32を打ち抜き加工した後にバレル加工等
によりバリの除去を行う結果、金属エレメント32のリ
ングスロット35のサドル面44の進行方向両端部のう
ち、前記打ち抜きだれが発生しない進行方向前端bの曲
率半径rはバリの除去に伴う面取り加工によって0.0
2mm程度になるのに対し、前記打ち抜きだれが発生す
る進行方向後端aの曲率半径rは0.04mm程度の大
きな値を持つようになる。
状態)にあって、ドライブプーリ6の有効半径がドリブ
ンプーリ11の有効半径よりも大きくなった状態を示し
ており、同図における金属ベルト15の厚さは該金属ベ
ルト15の張力に起因する最内層の金属リング33の引
張応力の大小を模式的に表している。金属ベルト15が
ドリブンプーリ11からドライブプーリ6に戻る戻り側
の弦部(A領域)において前記応力は一定値σTLOW で
あり、金属ベルト15がドライブプーリ6からドリブン
プーリ11に送り出される往き側の弦部(C領域)にお
いて前記応力は一定値σTHIGHである。A領域の応力σ
TLOW はC領域の応力σTHIGHよりも小さく、金属ベル
ト15がドライブプーリ6に巻き付く部分(B領域)に
おいて、その入口側から出口側にかけて応力はσTLOW
からσTHIGHまで増加し、金属ベルト15がドリブンプ
ーリ11に巻き付く部分(D領域)において、その入口
側から出口側にかけて応力はσTHIGHからσTLOW まで
減少する(図6の鎖線参照)。
応力に加えて、曲げに基づく引張応力および圧縮応力が
作用する。図5に示すように自由状態の金属リングは円
形であるが、使用状態の金属リングは前記A領域〜D領
域を有する形状に変形する。戻り側弦部(A領域)およ
び往き側弦部(C領域)では自由状態でR0 であった曲
率半径が∞に増加し、大径側のドライブプーリに巻き付
くB領域では自由状態でR0 であった曲率半径がRDRに
減少し、小径側のドリブンプーリに巻き付くD領域では
自由状態でR0 であった曲率半径がRDNに減少する。
加するA領域およびC領域では、該金属リング33の内
周面に引張曲げ応力が作用し、外周面に圧縮曲げ応力が
作用する。一方、金属リング33の曲率半径が減少する
B領域およびD領域では、該金属リング33の内周面に
圧縮曲げ応力が作用し、外周面に引張曲げ応力が作用す
る。即ち、金属リング33の内周面には、その2つの弦
部(A領域およびC領域)に一定の引張曲げ応力σVST
が作用し、曲率半径が大きい方のドライブプーリ6に巻
き付くB領域では比較的に小さな圧縮曲げ応力σVDRが
作用し、曲率半径が小さい方のドリブンプーリ11に巻
き付くD領域では比較的に大きな圧縮曲げ応力σVDNが
作用する。
内周面の張力に基づいて作用する応力と、曲げに基づい
て該金属リング33の内周面に作用する応力とを加算し
たトータルの応力の変化を示している。同図において、
領域Dの末端(金属エレメント32がドリブンプーリ1
1を離れる部分)において、大きな集中応力σHが作用
しているのが分かる。この集中応力σHは、図7および
図8で説明したように、金属エレメント32がドリブン
プーリ11を離れる部分で進行方向前側に倒れ、サドル
面44の進行方向後端aが最内層の金属リング33の内
周面に強く当接するために発生するものであって、円柱
の一部と見做せるサドル面44の進行方向後端aと、平
面と見做せる最内層の金属リング33の内周面との当接
により発生するヘルツ応力である。
メント32のサドル面44の進行方向後端aおよび進行
方向前端bにそれぞれ荷重センサを設け、前記進行方向
後端aおよび進行方向前端bが最内層の金属リング33
から受ける荷重の変化を検出したものである。図9
(A)に示すサドル面44の進行方向後端aでは、ドラ
イブプーリ6の入口付近に荷重ピークPDRが認められ、
かつドリブンプーリ11の出口付近に荷重ピークPDNが
認められる。一方、、図9(B)に示すサドル面44の
進行方向前端bでは、ドライブプーリ6の入口付近だけ
に荷重ピークPDRが認めらる。
クPDRは、サドル面44の進行方向前端bおよび進行方
向後端aに両方に発生するもので、その原因は金属エレ
メント32がローリングした状態でドライブプーリ6に
噛み込まれるためと考えられる。一方、ドリブンプーリ
11の出口付近の荷重ピークPDNは、サドル面44の進
行方向後端aだけに発生するもので、その原因は金属エ
レメント32がドリブンプーリ11の出口付近で進行方
向前方に倒れるためと考えられる。
リ11を離れる部分において、最内層の金属リング33
が金属エレメント32のサドル面44の進行方向後端a
から受ける集中応力σHについて考察する。
とはドリブンプーリ11および金属エレメント32の摩
擦作用中心が不明確である等の様々な要因により非常に
困難であるが、kを実験定数(サドル面応力集中実験定
数)として、次式により推定することができる。
参照)。
(kgf/個) p;平均サドル面圧縮応力(kg/mm2 ) q;金属エレメント1個当たりの軸推力(kgf/個) 上式において、集中応力σHは、平均サドル面圧縮応力
p、金属エレメント1個当たりの伝達力eおよび実験定
数kの増加に伴って増加し、金属エレメント1個当たり
の軸推力qの増加に伴って減少すると仮定した。また実
験定数kはサドル面44の進行方向後端aの曲率半径r
の影響によるヘルツ面圧の増大に比例する係数であるの
で、cを比例定数として、 k=c*(1/r)1/2 で表される。
が打ち抜きだれによって0.04mmに増加しており、
前記進行方向後端aの曲率半径rが0.02mmのもの
と比較すると、実験定数kの値は約70%に減少する。
即ち、サドル面44の進行方向後端aの曲率半径rを例
えば2倍に増加させれば、実験定数kの値を減少させて
最内層の金属リング33が金属エレメント32のサドル
面44の進行方向後端aから受ける集中応力σHを約7
0%に減少させることができる。
aの曲率半径を進行方向前端bの曲率半径よりも大きく
設定することにより、最内層の金属リング33が金属エ
レメント32のサドル面44の進行方向後端aから受け
る応力を減少させ、金属リング集合体31全体としての
寿命を延長することができる。即ち、図6において、集
中応力σHが減少することにより応力振幅σaが減少す
る一方、応力中心σmは増加するが、応力振幅σaの減
少量と応力中心σmの増加量とは等しいので、金属材料
の一般的な特性からして疲労寿命に関しては有利な変化
であり、これにより最内層の金属リング33の疲労寿命
を延長することができる。しかも曲率半径が大きいサド
ル面44の進行方向後端aを金属エレメント32のファ
インブランキング加工と同時に形成することができるの
で、特別の機械加工が不要になって加工コストの削減に
寄与することができる。
明の第2実施例を説明する。
うに、図12に示す第2実施例では金属エレメント32
が表裏反転した状態でファインブラキング加工される。
即ち、図8に示すように、第1実施例の金属エレメント
32はロッキングエッジ41を進行方向前方に向けてお
り、また第2実施例の金属エレメント32はロッキング
エッジ41を進行方向後方に向けている点で相違してい
るが、第2実施例のものも進行方向後端aの曲率半径が
打ち抜きだれにより増加しており、従って第1実施例の
ものと同じ作用効果を発揮することができる。
速機Tは、車両の前進走行時にも後進走行時にも金属ベ
ルト15が同一方向に回転するが、図14に示す第3実
施例の金属ベルト式無段変速機Tは、車両の前進走行時
と後進走行時とで金属ベルト15の回転方向が反対にな
る。
ットシャフト3の外周に支持されたドライブプーリ6
は、フォワードクラッチ61を介してインプットシャフ
ト3に結合可能であり、かつ遊星歯車機構62およびリ
バースブレーキ63を介してインプットシャフト3に結
合可能である。ダブルピニオン式の遊星歯車機構62
は、インプットシャフト3と一体のサンギヤ64と、ド
ライブプーリ6と一体のプラネタリキャリヤ65と、イ
ンプットシャフト3に相対回転自在に支持されたリング
ギヤ66と、プラネタリキャリヤ65に支持されてサン
ギヤ64およびリングギヤ66に噛合するプラネタリギ
ヤ67…とから構成されるもので、前記リバースブレー
キ63はリングギヤ66をケーシングに結合可能であ
る。ドリブンプーリ11が設けられたドリブンシャフト
10は、発進用クラッチ68および減速ギヤ列69を介
してディファレンシャル25に接続される。
クラッチ61が係合してドライブプーリ6をインプット
シャフト3に結合するため、ドライブプーリ6はインプ
ットシャフト3と同方向に回転する。一方、車両の後進
走行時にはリバースブレーキ63が係合して遊星歯車機
構62のリングギヤ66をケーシングに結合するため、
インプットシャフト3と一体のサンギヤ64の回転に伴
って、プラネタリキャリヤ65がドライブプーリ6と共
にインプットシャフト3の回転方向に対して逆方向に回
転する。
段変速機Tは、車両の前進走行時と後進走行時とで金属
ベルト15の回転方向が反対になるため、車両の前進走
行時に金属エレメント32の進行方向前端bの曲率半径
よりも進行方向後端aの曲率半径を大きく設定しても、
車両の後進走行時に金属ベルト15の回転方向が反対に
なるために効果を発揮できなくなる。しかしながら、車
両が後進走行する頻度は前進走行する頻度に比べて遙に
小さいため、車両の前進走行時の金属エレメント32の
進行方向を基準として該金属エレメント32の進行方向
前端bの曲率半径よりも進行方向後端aの曲率半径を大
きく設定すれば、車両の走行時間の大部分において本発
明の効果を発揮することができる。
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
ル面44の進行方向後端aを金属エレメント32のファ
インブランキング加工と同時に形成しているが、それを
機械加工によって別途形成することも可能である。
によれば、ドリブンプーリを離れた金属エレメントが進
行方向前方側に倒れたとき、リングスロットのサドル面
の進行方向後方側に位置する半径が大きい方の角部が金
属リング集合体の内周面に押し付けられるので、その金
属リング集合体の内周面に発生するヘルツ応力を最小限
に抑えて該金属リング集合体の耐久性を高めることがで
きる。
金属エレメントのサドル面の進行方向後方側に位置する
半径が大きい方の角部は、金属板材を打ち抜き加工して
金属エレメントを形成するときの打ち抜きだれとして生
じるので、特別の加工を施すことなく前記半径が大きい
角部を形成することができる。
車両が前進走行する頻度は後進走行する頻度に比べて圧
倒的に高いため、金属エレメントの進行方向を車両の前
進走行時における進行方向に一致させることにより、半
径が大きい方の角部を車両の前進走行時に金属リング集
合体の内周面に押し付けて該金属リング集合体の耐久性
を高めることができる。
ルトン図
の分布を示す図
重を示すグラフ
の摩擦力Fおよび金属エレメント間の押し力Eの分布を
示す図
メントの傾きを示す図
ング装置の全体図
レメントの側面図
した車両の動力伝達系のスケルトン図
Claims (3)
- 【請求項1】 無端状の金属リング(33)を複数枚積
層した金属リング集合体(31)と、金属リング集合体
(31)が嵌合するリングスロット(35)を有する多
数の金属エレメント(32)とから構成され、ドライブ
プーリ(6)およびドリブンプーリ(11)に巻き掛け
られて両プーリ(6,11)間で駆動力の伝達を行う無
段変速機用ベルトにおいて、 金属リング集合体(31)の内周面が当接するリングス
ロット(35)のサドル面(44)は、金属エレメント
(32)の進行方向後方側の角部の半径が進行方向前方
側の角部の半径よりも大きいことを特徴とする無段変速
機用ベルト。 - 【請求項2】 金属エレメント(32)は金属板材(5
2)を打ち抜き加工して形成されるものであり、前記進
行方向後方側の角部は打ち抜き加工時に打ち抜きだれに
より生じることを特徴とする、請求項1に記載の無段変
速機用ベルト。 - 【請求項3】 前記無段変速機用ベルトは車両の無段変
速機(T)に使用されるものであり、金属エレメント
(32)の前記進行方向は車両の前進走行時における進
行方向であることを特徴とする、請求項1に記載の無段
変速機用ベルト。
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