JP2000348904A - 薄膜サーミスタ素子および薄膜サーミスタ素子の製造方法 - Google Patents

薄膜サーミスタ素子および薄膜サーミスタ素子の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 経時変化を少なく抑え、高温耐久性などを向
上させて、高い信頼性を得ることができるとともに、抵
抗値等のバラツキを小さく抑えて、高い精度を得ること
ができる薄膜サーミスタ素子を形成する。 【解決手段】 アルミナから成る下地基板12上に、サ
ーミスタ薄膜13と、Pt薄膜から成る1対のくし形電
極14,15とが形成されて成っている。上記サーミス
タ薄膜13は、例えばMn−Co−Niの複合酸化物か
ら成り、ビックスバイト型結晶構造を有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理機器や、
通信機器、住宅設備機器、自動車用電装機器などの温度
センサに用いられる薄膜サーミスタ素子およびその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】温度検知に用いられる素子として、酸化
物半導体材料を用いたサーミスタ素子は、従来、例えば
Mn,Co,Ni,Feなどの遷移金属を主成分とした
スピネル型結晶構造を有する酸化物焼結体チップの端面
に、Agなどの電極を塗布や焼き付けにより形成して構
成されている。
【0003】上記のようなサーミスタ素子は、熱電対や
白金測温抵抗体と比較すると、 (1)抵抗の温度変化が大きいため温度分解能が高い (2)簡単な回路での計測が可能である (3)材料が比較的安定でかつ外界の影響を受けにくい
ため経時変化が少なく信頼性が高い (4)大量生産が可能であり安価である などといった特徴を有するため、多く用いられている。
【0004】ところで、近年、電子機器の小型軽量化や
高性能化に伴い、サーミスタ素子にも素子サイズの超小
型化(例えば1mm×0.5mmサイズ以下)や、測定
温度での抵抗値やB定数(温度に対する抵抗の変化率)
の高精度化(例えばバラツキが3%以下)などが求めら
れている。ところが、上記のような酸化物焼結体を用い
たサーミスタは、加工上の問題から大幅に小型化するこ
とが困難である。しかも、小型化するほど、加工精度の
問題から抵抗値やB定数のバラツキが大きくなってしま
うといった欠点があった。
【0005】そこで、上記のようなサーミスタ素子に対
して、サーミスタ材料や電極の形成に薄膜技術を用いた
薄膜サーミスタ素子の開発が盛んになされている。この
種の薄膜サーミスタ素子は、例えばMn,Ni,Co、
Feなどから成る複合酸化物の焼結体をターゲットとし
たスパッタリング法によりサーミスタ薄膜を形成をした
後、このサーミスタ薄膜上に所定の電極パターンを形成
することによって製造される。ところが、上記のように
スパッタリングによって形成されたサーミスタ薄膜で
は、良好な結晶性が得られにくく、安定性が低いため、
抵抗値やB定数の経時変化が大きく、特に、高温耐久性
が低いという問題点がある。この問題点に関しては、ス
パッタリングによって形成されたサーミスタ薄膜を例え
ば200〜800℃の大気中で熱処理し、スピネル型構
造への結晶化を行う技術が知られている(特開昭63−
266801号公報、特開平3−54842号公報、お
よび増田陽一郎他:八戸工業大学紀要、第8巻、pp.2
5〜34)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにスパッタリングにより形成された酸化物半導体の
サーミスタ薄膜を例えば400℃以上の温度で熱処理し
たとしても、安定性を大幅に向上させることは困難で、
経時変化を少なく抑え、高温耐久性を向上させることが
困難であるという問題点を有していた。
【0007】また、熱処理によって結晶成長させた場
合、得られる多結晶体における結晶粒径のバラツキが大
きくなりがちであり、例えば同一ロットで製造されたサ
ーミスタ素子であっても、抵抗値やB定数などの電気特
性のバラツキが大きいという問題点をも有していた。
【0008】本発明は、上記の点に鑑み、経時変化を少
なく抑え、高温耐久性などを向上させて、高い信頼性を
得ることができるとともに、抵抗値等のバラツキを小さ
く抑えて、高い精度を得ることができる薄膜サーミスタ
素子およびその製造方法の提供を目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、請求項1の発明は、サーミスタ薄膜と、上記サーミ
スタ薄膜に設けられた1対の電極とを有する薄膜サーミ
スタ素子であって、上記サーミスタ薄膜が、ビックスバ
イト型結晶構造を有していることを特徴としている。
【0010】このような結晶構造を有するサーミスタ薄
膜は、スピネル型結晶構造のサーミスタ薄膜に比べて結
晶状態が比較的安定であるため、抵抗値やB定数(温度
に対する抵抗の変化率)などの電気特性の経時変化が少
ないとともに、高温耐久性が高く、また、抵抗値やB定
数などのバラツキが小さい。したがって、このような結
晶構造を持たせることにより、高信頼性で高精度なサー
ミスタ素子を得ることができる。
【0011】また、請求項2の発明は、上記のようなサ
ーミスタ薄膜が、スパッタリング法による膜形成とアニ
ールとが交互に行われて形成され、また、上記スパッタ
リング法による膜形成がなされた後に、熱処理が施され
ていることを特徴としている。
【0012】これらにより、より高信頼性で高精度なサ
ーミスタ素子を容易に得ることができる。
【0013】また、請求項3ないし請求項5の発明は、
サーミスタ薄膜と、上記サーミスタ薄膜に設けられた1
対の電極とを有する薄膜サーミスタ素子の製造方法であ
って、上記サーミスタ薄膜を、スパッタリング法による
膜形成工程とアニール工程とを交互に行うとともに、所
定の熱処理を施すことにより、ビックスバイト型結晶構
造を有するように形成することを特徴とし、より具体的
には、例えば、下地基板を保持する基板ホルダと、上記
基板ホルダに対向して設けられたターゲットとのうちの
少なくとも一方を回転させるとともに、上記基板ホルダ
における、回転中心から偏心した位置に上記下地基板を
保持させる一方、上記ターゲットにおける、上記回転中
心から偏心した位置の一部だけが露出するように上記タ
ーゲットをシールドカバーで覆うことにより、上記基板
が上記ターゲットの露出部に対向する回転位置で、上記
基板上に上記スパッタリング法による膜形成が行われる
一方、上記基板が上記ターゲットの上記シールドカバー
で覆われた位置に対向する回転位置で、上記アニールが
行われることを特徴とし、また、さらに、上記熱処理
が、1100℃以下で行われることを特徴としている。
【0014】これらにより、前記のような高信頼性で高
精度なサーミスタ素子を容易に製造することができる。
【0015】ここで、上記スパッタリング法による膜形
成時の基板温度や熱処理温度は、形成するサーミスタ薄
膜の組成や成膜時間などに応じて種々に設定されるが、
例えば、膜形成は基板が200〜600℃に加熱された
状態で行い、また、熱処理は、より好ましくは600〜
1000℃の大気中で行うことなどによって、上記のよ
うなサーミスタ素子を容易に製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の薄膜サーミスタ素子11
は、図1に示すように、アルミナから成る下地基板12
上に、サーミスタ薄膜13と、Pt薄膜から成る1対の
くし形電極14,15とが形成されて成っている。上記
サーミスタ薄膜13は、例えばMn−Co−Niの複合
酸化物から成り、ビックスバイト型結晶構造を有してい
る。
【0017】上記のようなサーミスタ薄膜13は、例え
ば図2に示すようなスパッタ装置21によって形成する
ことができる。このスパッタ装置21には、下地基板1
2を保持する基板ホルダ22と、例えば直径が8インチ
のMn−Co−Niから成る複合酸化物の焼結体ターゲ
ット23とが50mmの間隔で対向して設けられてい
る。上記焼結体ターゲット23は、中心角が90°の切
り欠き24aを有するシールドカバー24によって、そ
の一部だけが露出するように覆われている。また、焼結
体ターゲット23には、高周波電源25(13.56M
Hz)が接続されている。一方、基板ホルダ22は、図
示しない駆動装置によって、所定の回転速度で回転する
ようになっている。上記基板ホルダ22および焼結体タ
ーゲット23は、例えばアルゴンと酸素との混合ガスが
充填された図示しないチャンバ内に設けられている。
【0018】上記基板ホルダ22に下地基板12を保持
させて加熱し、焼結体ターゲット23に高周波電圧を印
加するとともに基板ホルダ22を所定の回転速度で回転
させると、下地基板12がシールドカバー24の切り欠
き24a上を通過する際には、焼結体ターゲット23か
ら飛来する粒子がスパッタリングされてサーミスタ薄膜
13が形成される。一方、下地基板12がシールドカバ
ー24上を通過する際には、サーミスタ薄膜13の酸化
およびアニールが行われる。すなわち、スパッタリング
と、酸化およびアニールとが交互に行われて、サーミス
タ薄膜13が形成される。
【0019】上記のようにして形成されたサーミスタ薄
膜13を所定の温度で熱処理することにより、ビックス
バイト型結晶構造を有するサーミスタ薄膜13が得られ
る。
【0020】
【実施例】以下、より具体的なサーミスタ薄膜13の形
成条件(スパッタリングおよび熱処理条件)、および得
られたサーミスタ薄膜13と薄膜サーミスタ素子11の
特性について説明する。
【0021】実施例1〜8、およびそれぞれに対応する
比較例1〜8について、下記(表1)に示す条件でサー
ミスタ薄膜13を形成し、さらに、同表に示す条件で大
気中で熱処理した。上記実施例1〜8と比較例1〜8と
の主な相違は、基板ホルダ22の回転の有無、すなわ
ち、実施例1〜8では、前記のようにスパッタリング
と、酸化およびアニールとが交互に行われる一方、比較
例1〜8では、シールドカバー24が設けられず、スパ
ッタリングが連続して行われることである。ここで、下
地基板12としては、50mm×50mm×0.3mm
の大きさで、表面の凹凸が0.03μm以下になるよう
に研磨したアルミナ基板を用いた。また、基板ホルダ2
2には、上記下地基板12とともに、結晶性を評価する
ためのガラス基板31を保持させた。
【0022】
【表1】 上記のようにしてガラス基板31上に形成され、熱処理
されたサーミスタ薄膜13について、 (1)X線マイクロアナライザによる組成分析 (2)X線解析(XRD)による結晶構造の観察 を行った。その結果を下記(表2)に示す。
【0023】
【表2】 具体的には、例えば実施例1および比較例1において
は、X線マイクロアナライザによる組成分析によれば、
熱処理後のサーミスタ薄膜13の膜組成は、Mn:C
o:Ni=73:19:8(実施例1)、または、7
1:20:9(比較例1)であった。ここで、これらの
実施例1および比較例1の場合には、焼結体ターゲット
23としてMn−Co−Ni複合酸化物(組成Mn:C
o:Ni=75:20:5)の焼結体を用いたが、形成
されるサーミスタ薄膜13の組成は上記のように焼結体
ターゲット23とは若干異なったものとなった。なお、
他の実施例および比較例においても、焼結体ターゲット
23の組成を適宜選択することにより、同表に示すよう
な膜組成のサーミスタ薄膜13を形成することができ
る。
【0024】また、X線解析によれば、実施例1〜8に
おいては、熱処理後のサーミスタ薄膜13はビックスバ
イト型結晶構造を有している一方、比較例1〜8におい
てはスピネル型結晶構造を有していることがわかった。
【0025】次に、上記のようにして下地基板12上に
形成され、熱処理されたサーミスタ薄膜13上の全面
に、厚さが0.1μmのPt薄膜およびレジストパター
ンを形成し、Ar(アルゴンガス)によるドライエッチ
ングを用いたフォトリソグラフィプロセスによりパター
ニングして、くし形電極14,15を形成した。次い
で、ダイシング装置を用い、基板周辺部を除いて1×
0.5mmサイズにカットすることにより、前記図1に
示した構成の薄膜サーミスタ素子11を1000個作製
し、抵抗値およびB定数(温度に対する抵抗の変化率)
を測定して、平均値、およびバラツキ((最大値−最小
値)/平均値)を求めた。また、上記薄膜サーミスタ素
子11を室温で100日間放置する経時変化試験、およ
び300℃の大気中に1000時間放置する高温耐久性
試験を行った後に、再度、抵抗値およびB定数を測定し
て、上記試験前後の変化率を算出した。上記抵抗値およ
びB定数の平均値、バラツキ、経時変化、高温耐久性変
化を上記(表2)に併せて示す。
【0026】上記実施例1〜8および比較例1〜8から
明らかなように、サーミスタ薄膜13にビックスバイト
型結晶構造の酸化物薄膜を形成することにより、スピネ
ル型結晶構造の酸化物薄膜を形成する場合よりも抵抗値
およびB定数のバラツキが小さく、しかも経時変化が少
なく、高温耐久性が高い、高精度で高信頼性のサーミス
タ素子を得ることができる。なお、上記のようにビック
スバイト型結晶構造のサーミスタ薄膜であれば、複合酸
化物の組成は上記(表2)に示したものに限らず、他の
組成とした場合においても同様に優れた結果が得られ
た。
【0027】また、サーミスタ薄膜の形成条件や熱処理
条件も、上記のものに限らず、焼結体ターゲットの組成
などに応じて種々設定すればよい。なお、概ね酸素分圧
が高い方が、上記のようなビックスバイト型結晶構造が
形成されやすい。また、熱処理温度が例えば1100℃
を越えるなどの場合にはスピネル型結晶構造が形成され
やすくなる。
【0028】また、サーミスタ薄膜の全域にわたって上
記のような結晶構造を有するものに限らず、ビックスバ
イト型結晶相中に部分的にスピネル型結晶相やNaCl
型結晶相が含まれていてもよい。
【0029】また、上記の例では下地基板としてアルミ
ナ基板を用いたが、その他のセラミクス基板やガラス基
板などを用いた場合においても、同様に優れた結果が得
られた。
【0030】また、薄膜サーミスタ素子の構造は、上記
のようにサーミスタ薄膜における同一の表面上に1対の
くし形電極が形成されたものに限らず、サーミスタ薄膜
の両面側に、サーミスタ薄膜を挟むように1対の電極を
設けるようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0032】すなわち、ビックスバイト型結晶構造をを
有するサーミスタ薄膜を形成することにより、そのよう
なサーミスタ薄膜は結晶状態が比較的安定であるため、
高温耐久性が高く、しかも、抵抗値やB定数などのバラ
ツキが小さいので、高信頼性で高精度なサーミスタ素子
を得ることができるという効果を奏する。
【0033】また、上記サーミスタ薄膜を、スパッタリ
ング法による膜形成工程とアニール工程とを交互に行う
ことにより、ビックスバイト型結晶構造を有するように
形成することにより、上記のような高信頼性で高精度な
サーミスタ素子を容易に製造することができるという効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜サーミスタ素子の構成を示す斜視
【図2】本発明の薄膜サーミスタ素子の製造装置の構成
を示す斜視図
【符号の説明】
11 薄膜サーミスタ素子 12 下地基板 13 サーミスタ薄膜 14,15 くし形電極 21 スパッタ装置 22 基板ホルダ 23 焼結体ターゲット 24 シールドカバー 24a 切り欠き 25 高周波電源 31 ガラス基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鳥井 秀雄 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 高山 良一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5E034 BA09 BB08 BC02 DA02 DC05 DE16 DE17

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】サーミスタ薄膜と、上記サーミスタ薄膜に
    設けられた1対の電極とを有する薄膜サーミスタ素子で
    あって、 上記サーミスタ薄膜が、ビックスバイト型結晶構造を有
    していることを特徴とする薄膜サーミスタ素子。
  2. 【請求項2】請求項1の薄膜サーミスタ素子であって、 上記サーミスタ薄膜は、スパッタリング法による膜形成
    とアニールとが交互に行われて形成されたサーミスタ薄
    膜であるとともに、上記サーミスタ薄膜が形成された後
    に、熱処理が施されていることを特徴とする薄膜サーミ
    スタ素子。
  3. 【請求項3】サーミスタ薄膜と、上記サーミスタ薄膜に
    設けられた1対の電極とを有する薄膜サーミスタ素子の
    製造方法であって、 上記サーミスタ薄膜を、スパッタリング法による膜形成
    工程とアニール工程とを交互に行うとともに、所定の熱
    処理を施すことにより、ビックスバイト型結晶構造を有
    するように形成することを特徴とする薄膜サーミスタ素
    子の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項3の薄膜サーミスタ素子の製造方法
    であって、 下地基板を保持する基板ホルダと、上記基板ホルダに対
    向して設けられたターゲットとのうちの少なくとも一方
    を回転させるとともに、上記基板ホルダにおける、回転
    中心から偏心した位置に上記下地基板を保持させる一
    方、上記ターゲットにおける、上記回転中心から偏心し
    た位置の一部だけが露出するように上記ターゲットをシ
    ールドカバーで覆うことにより、上記基板が上記ターゲ
    ットの露出部に対向する回転位置で、上記基板上に上記
    スパッタリング法による膜形成が行われる一方、上記基
    板が上記ターゲットの上記シールドカバーで覆われた位
    置に対向する回転位置で、上記アニールが行われること
    を特徴とする薄膜サーミスタ素子の製造方法。
  5. 【請求項5】請求項3の薄膜サーミスタ素子の製造方法
    であって、 上記熱処理が、1100℃以下で行われることを特徴と
    する薄膜サーミスタ素子の製造方法。
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