JP2000063650A - 難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および射出成形品 - Google Patents

難燃性ポリカーボネート樹脂組成物および射出成形品

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JP2000063650A
JP2000063650A JP10228857A JP22885798A JP2000063650A JP 2000063650 A JP2000063650 A JP 2000063650A JP 10228857 A JP10228857 A JP 10228857A JP 22885798 A JP22885798 A JP 22885798A JP 2000063650 A JP2000063650 A JP 2000063650A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ポリカーボネート樹脂の耐衝撃性、強度、熱安
定性を維持しつつ、難燃性にすぐれ、且つ帯電防止性能
を有する成形品を成形できる樹脂組成部および射出成形
品を提供する。 【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂50〜100
重量%、(B)スチレン系樹脂50〜0重量%からなる
樹脂100重量部に対して、(C)難燃剤1〜50重量
部および(D)アニオン系帯電防止剤0.1〜5重量部
を含有しており、硫酸ナトリウムの含有量が0.05重
量%以下であるポリカーボネート樹脂組成物。必要によ
り、(F)フルオロオレフィン樹脂、(G)ゴム状弾性
体、(H)無機充填剤を含有させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は難燃性ポリカーボネ
ート樹脂組成物および射出成形品に関し、さらに詳しく
は、難燃性、熱安定性を低下させることなく、耐衝撃性
が改良され、すぐれた帯電防止性能を有する難燃性ポリ
カーボネート樹脂組成物および射出成形品に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝
撃特性、耐熱性、電気的特性などにより、OA(オフィ
スオートメーション)機器、家庭電化機器、電気・電子
機器、自動車分野、建築分野等様々な分野において幅広
く利用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹
脂は、成形加工温度が高い、溶融流動性が悪いという問
題点を有している。このため、成形温度が比較的高く、
特に、各種添加剤を配合した場合に成形時の熱安定性が
低下したり、その性能が十分生かされない場合がある。
一方、ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹
脂ではあるが、OA機器、家庭電化機器、電気・電子機
器分野を中心として、高度の難燃性を要求される分野が
あり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られてい
る。また、ポリカーボネート樹脂は、一般のプラスチッ
クと同様に電気抵抗が大きく、摩擦、接触によって容易
に帯電する。この帯電により、放電時の電撃ショック、
塵埃の付着による外観不良が発生したり、特に前記のO
A機器、電気・電子機器分野の成形品にあっては、IC
の誤作動などが発生し、その対策が求められている。
【0003】ポリカーボネート樹脂の帯電防止のために
は、ポリアルキレンオキシドのような吸水性、親水性の
化合物や帯電防止剤を樹脂に添加したり、成形品に塗布
するなどの方法がなされているが、ポリカーボネート樹
脂の成形温度が比較的高いことなどから、十分な帯電防
止効果を達成するまでには至っていない。特に、難燃剤
の含有による難燃性を付与したポリカーボネート樹脂に
おいて、帯電防止性を他の特性を犠牲にすることなく、
十分に付与する具体的な提案は少ない。
【0004】一方、近時、成形品が前記のように、複写
機、フアックスなどのOA機器、電気・電子機器などの
部分品やハウジングなどの場合には、形状が複雑になる
こと、リブやボスなどの凹凸が成形品に形成されるこ
と、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化すること
などの理由から、ボリカーボネート樹脂の溶融流動性、
すなわち射出成形性を高めた組成物が求められている。
この成形性の改善としては、耐衝撃性などの物性も考慮
して、ゴム状重合体変性スチレン系樹脂との配合組成物
が多く提案されている。しかし、帯電防止性を具体的に
向上する方法は示されていない。
【0005】ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良
のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹
脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン樹脂
(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート
樹脂に配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その
耐熱性、耐衝撃性の特性を生かし、多くの成形品分野に
用いられてきている。一方、これらの用途の中でも、O
A機器、電気・電子機器などに用いる場合には、その製
品の安全性を高めるために、あるレベル以上の難燃性が
求められている。
【0006】これらを目的として、多くの方法が提案さ
れている。具体的には、特開昭61−55145号公報
には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)AB
S樹脂、(C)AS樹脂、(D)ハロゲン化合物、
(E)リン酸エステル、(F)ポリテトラフルオロエチ
レン成分からなる熱可塑性樹脂組成物が記載されてい
る。特開平2−32154号公報には、(A)芳香族ポ
リカーボネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹
脂、(D)リン酸エステル、(E)ポリテトラフルオロ
エチレン成分からなる難燃性高衝撃性ポリカーボネート
成形用組成物が記載されている。特開平8−23956
5号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート、(B)
ゴム状弾性体を含有する耐衝撃ポリスチレン樹脂、
(C)ハロゲン非含有リン酸エステル、(D)コアシエ
ルタイプグラフトゴム状弾性体、(D)タルクを含むポ
リカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0007】これらは、いずれも、ポリカーボネートの
溶融流動性の改良による成形性、耐衝撃性、難燃性の改
良を目的としたもので、すぐれた効果を生かし、各種成
形品として用いられてきている。ところが、OA機器、
電気・電子機器、家庭電化製品などにあっては、その部
分品、ハウジングなどの用途で、機器の軽量化、薄肉
化、あるいは形状因子、即ち、成形品にリブやボスなど
の細かな凹凸、格子状構造など複雑且つ大型化などに対
応できる成形性が求められてきている。
【0008】これらの、ABS樹脂、ゴム変性ポリスチ
レン樹脂(HIPS)などとポリカーボネート樹脂から
なる組成物は、熱安定性が不十分である問題を抱えてい
るとともに、難燃性を維持しながら、帯電防止性能を付
与することは非常に困難である。これに対して、酸化防
止剤などの添加剤を添加することなどが、提案されてい
るが総合的な問題解決までには至っていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状の
下、ポリカーボネート樹脂による、薄肉化、複雑化する
OA機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車など
に用いられる成形品の成形において、成形性、耐衝撃
性、強度を維持しつつ、難燃性を付与する場合おいて、
難燃性、耐熱安定性を低下させることなく、帯電防止性
の付与された成形品を成形可能なポリカーボネート樹脂
組成物およびこの組成物を用いた射出成形品の提供を目
的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の目的を達成する
ため、本発明者らは、難燃性ポリカーボネート樹脂の帯
電防止性と各種添加剤について鋭意検討した。その結
果、難燃剤を含有するポリカーボネート樹脂、特にゴム
変性スチレン系樹脂を含有してなる樹脂組成物に、特定
の添加剤を選択使用すること、組成物中の特定化合物成
分を特定範囲以下に制御することにより、特に難燃性を
低下させることなく、耐衝撃性が大幅に向上した帯電防
止性にすぐれた成形品が得られることを見出し、本発明
を完成した。
【0011】すなわち、本発明は、 (1)(A)ポリカーボネート樹脂50〜100重量
%、(B)スチレン系樹脂50〜0重量%からなる樹脂
100重量部に対して、(C)難燃剤1〜50重量部お
よび(D)アニオン系帯電防止剤0.1〜5重量部を含
有しており、硫酸ナトリウムの含有量が0.05重量%
以下である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (2)さらに、(E)アルキレングリコール、グリセリ
ンおよびこれらの脂肪酸エステル化物から選ばれた少な
くとも1種を、(A)および(B)からなる樹脂100
重量部に対して0.1〜5重量部含有する上記(1)記
載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (3)難燃剤がハロゲン非含有リン酸エステルである上
記(1)または(2)記載の難燃性ポリカーボネート樹
脂組成物。 (4)さらに、(F)フルオロオレフィン樹脂を、
(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対し
て、0.05〜5重量部含有する上記(1)〜(3)の
いずれかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (5)フルオロオレフィン樹脂がフィブリル形成能を有
する上記(4)記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物。 (6)スチレン系樹脂がゴム質重合体変性スチレン系樹
脂であり、(A)ポリカーボネート樹脂50〜95重量
%、(B)スチレン系樹脂50〜5重量%からなる上記
(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性ポリカーボネ
ート樹脂組成物。 (7)さらに、(G)ゴム状弾性体を、(A)または
(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重
量部含有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の難
燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (8)(G)ゴム状弾性体が、コアシェルタイプグラフ
トゴム状弾性体である上記(7)記載の難燃性ポリカー
ボネート樹脂組成物。 (9)さらに、(H)無機充填剤を、(A)および
(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜50重
量部含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の難
燃性ポリカーボネート樹脂組成物。 (10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の難燃性
ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる射出成
形品、および (11)射出成形品が、OA機器、電気・電子機器また
は家庭電化機器のハウジングまたは部分品である上記
(10)記載の射出成形品を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の構
成成分(A)〜(C)について説明する。 (A)ポリカーボネート樹脂(PC) 本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する
(A)成分であるポリカーボネート樹脂(PC)として
は、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、二
価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造
される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。
すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶
液法あるいは溶融法、すなわち、二価フエノールとホス
ゲンの反応、2価フエノールとジフェニルカーボネート
などとのエステル交換法により反応させて製造されたも
のを使用することができる。
【0013】2価フェノールとしては、様々なものが挙
げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロ
キシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−
3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒ
ドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)
シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキ
シド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビ
ス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニ
ル)ケトンなどが挙げられる。
【0014】特に好ましい2価フエノールとしては、ビ
ス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノ
ールAを主原料としたものである。また、カーボネート
前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエス
テル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホ
スゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニ
ルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカー
ボネートなどである。この他、二価フェノールとして
は、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げ
られる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用
いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造
を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−ト
リス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,
α”−トリス(4−ビドロキシフェニル)−1,3,5
−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメ
リット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがあ
る。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−
t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、
p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0016】また、本発明に用いるポリカーボネート樹
脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキ
サン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有
するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレ
フタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステ
ル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカー
ボネートの重合を行うことによって得られるポリエステ
ル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々
のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもでき
る。本発明において用いられる(A)成分のポリカーボ
ネート樹脂は、機械的強度および成形性の点から、その
粘度平均分子量は、10,000〜100,000のも
のが好ましく、特に14,000〜40,000のもの
が好適である。
【0017】(B)スチレン系樹脂 本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を構成する
(B)成分のスチレン系樹脂としては、スチレン、α−
メチルスチレンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜
100重量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリル
などのシアン化ビニル系単量体0〜60重量%、および
これらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸
メチルなどの他のビニル系単量体0〜50重量%からな
る単量体または単量体混合物を重合して得られる重合体
がある。これらの重合体としては、ポリスチレン(GP
PS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹
脂)などがある。
【0018】また、スチレン系樹脂としてはゴム質重合
体変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。この変性
スチレン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチ
レン系単量体がゴム質重合体にグラフト重合した耐衝撃
性スチレン系樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂とし
ては、たとえば、ポリブタジエンなどのゴム質重合体に
スチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIP
S)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンと
が重合したABS樹脂、ポリブタジエンにメタクリル酸
メチルとスチレンが重合したMBS樹脂などがあり、ゴ
ム変性スチレン系樹脂は、二種以上を併用することがで
きるとともに、前記のゴム未変性でありスチレン系樹脂
との混合物としても使用できる。
【0019】ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム質重合体
の含有量は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜
30重量%である。ゴム質重合体の割合が2重量%未満
であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重量%
を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、
ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。上記
ゴム質重合体の具体例としては、ポリブタジエン、アク
リレートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム
質重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン(SBS)
ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエ
ン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・ス
チレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プ
ロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましい
ものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジ
エンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル
結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42
モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば
1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結
合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いても
よく、また、これらの混合物であってもよい。
【0020】(C)難燃剤 成形品がOA機器、電気・電子機器などに用いられる場
合には、難燃性が要求される。この場合には、各種難燃
剤を含有することによって要求に対応することが必要と
なる。難燃剤としては、有機リン系化合物、ハロゲン非
含有リン系化合物、ハロゲン系化合物、チッソ系化合
物、金属水酸化物、赤リン、アンチモン化合物などを例
示できる。ハロゲン系化合物としては、テトラブロモビ
スフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートまたはハ
ロゲン化ポリカーボネート共重合体オリゴマー、デカブ
ロモジフェニルエーテル、ハロゲン化ポリスチレン、ハ
ロゲン化ポリオレフィンなどがある。また、チッソ系化
合物としては、メラミン、アルキル基または芳香族基置
換メラミンなど、金属水酸化物としては、水酸化マグネ
シウム、水酸化アルミニウムなど、アンチモン化合物と
しては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどを例
示できる。
【0021】しかしながら、ハロゲン系の難燃剤は、成
形品の焼却時に有害物質を排出する恐れがあり、好まし
い難燃剤は、ハロゲン非含有の有機リン系難燃剤であ
る。有機リン系難燃剤としては、リン原子を有し、ハロ
ゲンを含まない有機化合物であれば特に制限なく用いる
ことができる。好ましくは、リン原子に直接結合するエ
ステル性酸素原子を1つ以上有するリン酸エステル系化
合物が用いられる。
【0022】リン酸エステル系化合物としては、たとえ
ば、次式(1)
【0023】
【化1】
【0024】(ここで、R1 、R2 、R3 、R4 は、そ
れぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2
価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1
以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。)で示さ
れるリン酸エステル系化合物である。式(1)におい
て、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいア
ルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。
また置換されている場合の置換基としては、アルキル
基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ア
リールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組
み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基な
ど、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオ
ウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホ
ニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
【0025】また、式(1)において、2価以上の有機
基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合し
ている水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基
を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニ
レン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から
誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフ
ェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニ
ルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフ
タレン等がある。
【0026】ハロゲン非含有リン酸エステル系化合物
は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの
混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフ
ェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェ
ート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチル
ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジ
ルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オ
クチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキ
シル)ホスフェート、ジイソプピルフェニルホスフェー
ト、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピ
ルフェニル)ホスフェート、トリナブチルホスフェー
ト、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノン
ビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾ
ルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベン
ゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェー
トなどを例示できる。
【0027】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物の(C)成分として好適に用いることができる市販の
ハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえ
ば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニル
ホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェー
ト〕、PFR〔レゾルシノール(ジフェニルホスフェー
ト)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テスラキス
(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX2
01L〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジ
メチルフェニル)リン酸エステル、PX202〔4,
4’−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフ
ェニル)リン酸エステル、CR733S〔フェニルレゾ
ルシンポリホスフェート〕などを挙げることができる。
【0028】ここで、難燃剤の含有量は、前記(A)お
よび(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜5
0重量部、好ましくは、2〜30重量部、特に、3〜1
5重量部である。ここで、2重量部未満であると、目的
とする難燃性を得ることが難しく、また、50重量部を
越えると、耐熱性の低下、衝撃強度の低下が起こる場合
がある。したがって、この含有量は、成形品の要求特性
を考慮して、難燃剤の種類、他のゴム状弾性体や無機充
填剤の含有量などをもとに総合的に判断して決定され
る。
【0029】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物には、燃焼時の滴下防止を目的にさらに、(F)フル
オロオレフィン樹脂を含有することができる。ここで
(F)フルオロオレフィン樹脂としては、フルオロエチ
レン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジ
フルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合
体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まな
いエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましく
は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、
その平均分子量は、500,000以上であることが好
ましく、特に好ましくはは500,000〜10,00
0,000である。本発明で用いることができるポリテ
トラフルオロエチレンとしては、現在知られているすべ
ての種類のものを用いることができる。
【0030】なお、ポリテトラフルオロエチレンのう
ち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに
高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリ
ル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTF
E)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格にお
いて、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具
体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポン
フロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリ
フロンF−103、ポリフロンF201(ダイキン工業
株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリ
マーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0031】また、上記タイプ3に分類されるもの以外
では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会
社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100
(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらの
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用
いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記の
ようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエ
チレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレン
を水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウム
パーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psi
の圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100
℃で重合させることによって得られる。
【0032】ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量
は、、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量
部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1
〜2重量部である。ここで、0.05重量部未満である
と、目的とする難燃性における溶融滴下性が十分でない
場合があり、5重量部を越ても、これに見合った効果の
向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場
合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される
難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V−
1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮
して適宜決定することができる。
【0033】(D)アニオン系帯電防止剤 アニオン系帯電防止剤としては、特に制限はなく、アル
キルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩、アル
キルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、ポ
リオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシ
エチレンアルキルリン酸エステル塩などを例示できる。
中でも、カルボン酸やスルホン酸系のアルカリ金属塩が
ある。たとえば、オクチル、ノニル、デシル、ドデシ
ル、ウンデシルなどのアルキル基を有するスルホン酸、
アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスル
ホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、ホスホニウム塩が
あげられる。具体的には、ドデシルベンゼンスルホン酸
ナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム
塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩が好ま
しく用いられる。これらのアニオン系帯電防止剤は2種
以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、基本的に、(A)ポリカーボネート樹脂50〜1
00重量%、好ましくは、60〜95重量%、(B)ス
チレン系樹脂50〜0重量%、好ましくは、40〜5重
量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)難燃剤
1〜50重量部、好ましくは、2〜30重量部、および
(D)アニオン系帯電防止剤0.1〜5重量部、好まし
くは0.2〜3重量部を含有しており、硫酸ナトリウム
の含有量が0.05重量%以下、好ましくは0.02重
量%以下を満足するものである。
【0035】ここで、(A)成分のポリカーボネート樹
脂が50重量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、
(B)成分のスチレン系樹脂は、溶融流動性を必要とす
る場合に配合するものであり、5重量%未満では、成形
性の改良効果が不十分である。(C)成分の難燃剤が、
1重量部未満では、難燃性の改良効果が少なく、50重
量部を越えると、耐熱性、強度、耐衝撃性が不十分とな
る場合がある。したがって、この難燃剤の配合量は、成
形品の要求難燃性能、成形性、他の含有成分の組成によ
つて適宜決定することができる。
【0036】また、アニオン系帯電防止剤が、0.1重
量部未満であると、帯電防止効果が不十分であり、5重
量部を越えると難燃性が低下する場合があり好ましくな
い。また、本発明のアニオン系帯電防止剤は、その原因
は明らかではないが、本発明の難燃性ポリカーボネート
樹脂組成物の、耐衝撃性の向上と言うまったく異質の効
果を発揮するものである。
【0037】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、これら各成分をそれぞれの割合で含有するととも
に、組成物中の硫酸ナトリウムの含有量が、0.05重
量%以下、好ましくは0.02重量%以下であるところ
に大きな特長がある。この硫酸ナトリウムの量は、0.
05重量%を越えると難燃剤を含有しているにも関わら
ず、難燃性を発現することができない。この、硫酸ナト
リウムは、一般的には、アニオン系帯電防止剤の合成時
の触媒の選択や合成後の蒸留などの各種精製手段の採用
により、低減、調整することができる。しかし、これが
難燃性に大きく寄与することについては知られていなか
った。本発明は、基本的には上記必須成分と組成物中の
硫酸ナトリウムの含有量によって、本発明の目的である
帯電防止と難燃性を達成できるものである。
【0038】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、上記(D)成分のアニオン系帯電防止剤の分散性
の向上を目的に、さらに、(E)アルキレングリコー
ル、グリセリンおよびこれらの脂肪酸エステル化物から
選ばれた少なくとも1種を、前記(A)および(B)か
らなる樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部含有
させることができる。これら(E)成分の含有は、上記
の一般的な効果に加えて、難燃性を確保するための難燃
剤の含有量の低減、熱安定性の向上、すなわち、成形時
のヤケの発生の防止の効果を合わせ有している。ここ
で、アルキレングリコールとしては、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、エチレン−プロピレングリ
コールなどがある。これらのグリコール、グリセリンと
炭素数約5〜34であり、好ましくは14〜26の脂肪
酸、具体的にはカプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、
パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸とのエステル化
物である。これらエステル化物としては、モノエステ
ル、エステルオリゴマー、ポリマーであってもよい。具
体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモ
ノベヘネートなどがある。
【0039】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物には、さらに、(G)成分としてのゴム状弾性体を、
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の耐衝撃性の一層の
向上のために含有することができる。その含有量は、前
記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対し
て、1〜30重量部、好ましくは2〜15重量部であ
る。このゴム状弾性体の含有量は、目的の成形品に要求
される耐衝撃性、耐熱性、剛性などを総合的に考慮して
決定される。ゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、
ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・スチレン(S
BS)ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブ
タジエン・アクリルゴム、イソプレン・スチレンゴム、
イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴ
ム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シロキサンゴ
ム等が挙げられる。
【0040】このうち、好ましくは、コア(芯)とシェ
ル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部
分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は
硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状
態)のものである。このゴム状弾性体は、ポリカーボネ
ート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大
部分がもとの形態を保っている。配合されたゴム状弾性
体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層
剥離を起こさない効果が得られる。
【0041】このコアシェルタイプグラフトゴム状弾性
体としては、種々なものを挙げることができる。市販の
ものとしては、例えばハイブレンB621(日本ゼオン
株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社
製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メ
タブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン
株式会社製)等が挙げられる。
【0042】これらの中で、例えば、アルキルアクリレ
ートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを
主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下
に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて
得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレ
ートやアクリルメタクリレートとしては、C2〜C10
アルキル基を有するものが好適である。具体的には、例
えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エ
チルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレー
ト等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を
主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、
アルキルアクリレート類70重量%以上と、これと共重
合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレ
ート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30
重量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられ
る。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメ
タクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイ
ソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜
添加して反応させてもよい。
【0043】ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル
系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチ
レン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アク
リル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メ
チル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等
が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上
を組み合わせて用いてもよいし、また、他のビニル系重
合体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等
のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸
ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよ
い。この重合反応は、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化
重合などの各種方法によって行うことができる。特に、
乳化重合法が好適である。
【0044】このようにして得られるコアシェルタイプ
グラフトゴム状弾性体は、前記ゴム状重合体を20重量
%以上含有していることが好ましい。このようなコアシ
ェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には
60〜80重量%のn−ブチルアクリレートと、スチレ
ン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのM
AS樹脂弾性体が挙げられる。中でも、ポリシロキサン
ゴム成分が5〜95重量%とポリアクリル(メタ)アク
リレートゴム成分95〜5重量%とが、分離できないよ
うに相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.
01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル
単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共
重合体がある。この共重合体は、それぞれのゴム単独で
のグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この
複合ゴム系グラフト共重合体は、市販品としての、三菱
レーヨン株式会社製メタブレンS−2001などとし
て、入手できる。
【0045】また、本発明の難燃性ポリカーボネート樹
脂組成物には、さらに、(H)無機充填剤を、成形品の
剛性、さらには難燃性をさらに向上させるために含有さ
せることができる。ここで、無機充填剤としては、タル
ク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸
カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チ
タン酸カリウム繊維などをあげることができる。なかで
も、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填剤
が好ましい。タルクとしては、、マグネシウムの含水ケ
イ酸塩であり、一般に市販されているものを用いること
ができる。タルクには、主成分であるケイ酸と酸化マグ
ネシウムの他に、微量の酸化アルミニウム、酸化カルシ
ウム、酸化鉄を含むことがあるが、本発明の樹脂組成物
を製造するには、これらを含んでいてもかまわない。ま
た、タルクなどの無機充填剤の平均粒径は0.1〜50
μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無
機充填剤、特にタルクを含有させることにより、剛性向
上効果に加えて、難燃剤としてのハロゲン非含有リン酸
エステルの配合量を減少させることができる。
【0046】ここで、(H)無機充填剤の含有量は、、
前記(A)と(B)成分の樹脂100重量部に対して、
1〜50重量部、好ましくは、2〜30重量部である。
ここで、1重量部未満であると、目的とする剛性、難燃
性改良効果が十分でない場合があり、50重量部を越え
ると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成
形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形
性を考慮して適宜決定することができる。
【0047】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、成形性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目
的で、上記(A)、(C)、(D)からなる必須成分
に、(B)、(E)〜(H)から選ばれた任意成分の一
種以上とともに、熱可塑性樹脂に常用されている添加剤
成分を必要により添加含有することができる。例えば、
フェノール系、リン系、イオウ系酸化防止剤、他の帯電
防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永
久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾ
フェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安
定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔
料)等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物の特性が維持される
範囲であれば特に制限はない。
【0048】次に、本発明の難燃性ポリカーボネート樹
脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性
ポリカーボネート樹脂組成物は、前記の各成分(A)、
(C)、(D)を上記割合で、さらに必要に応じて用い
られる、(B)、(E)〜(H)の各種任意成分、さら
には他の成分を適当な割合で配合し、混練することによ
り得られる。このときの配合および混練は、通常用いら
れている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブ
ラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバ
リーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー
押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方
法で行うことができる。混練の際の加熱温度は、通常2
40〜300℃の範囲で適宜選択される。なお、ポリカ
ーボネート樹脂とスチレン系樹脂以外の含有成分は、あ
らかじめ、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂ある
いはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわち
マスターバッチとして添加することもできる。
【0049】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレ
ットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出
成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、発
泡成形法などにより各種成形品を製造することができ
る。しかし、上記溶融混練方法により、ペレット状の成
形原料を製造し、ついで、このペレットを用いて、射出
成形、射出圧縮成形による射出成形品の製造に特に好適
に用いることができる。なお、射出成形方法としては、
外観のヒケ防止のため、あるいは軽量化のためのガス注
入成形を採用することもできる。
【0050】本発明の難燃性ポリカーボネート樹脂組成
物から得られる射出成形品(射出圧縮を含む)として
は、複写機、ファクス、テレビ、ラジオ、テープレコー
ダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、
情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、電気
・電子機器、家庭電化機器のハウジウングや各種部分
品、さらには、自動車部品など他の分野にも用いられ
る。
【0051】
【実施例】本発明について実施例および比較例を示して
より具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるも
のではない。実施例1〜7および比較例1〜5表1に示
す割合で各成分を配合〔(A)、(B)成分は重量%、
他の成分は、(A)および(B)からなる樹脂100重
量部に対する重量部で示す。〕し、押出機(機種名:V
S40、田辺プラスチック機械株式会社製)に供給し、
260℃で溶融混練し、ペレット化した。なお、すべて
の実施例および比較例において、酸化防止剤としてイル
ガノックス1076(チバガイギー株式会社製)0.2
重量部およびアデカスタブC(旭電化工業株式会社社
製)0.1重量部をそれぞれ配合した。得られたペレッ
トを、80℃で12時間乾燥した後、成形温度260℃
で射出成形して試験片を得た。得られた試験片を用いて
性能を各種試験によって評価し、その結果を表1に示し
た。
【0052】なお、用いた材料および性能評価方法を次
に示す。 (A)ポリカーボネート:タフロン A1900(出光
石油化学株式会社製):ビスフェノールAポリカーボネ
ート樹脂、MI=20g/10分:280℃、2.16
Kg荷重、粘度平均分子量:19000 (B)スチレン系樹脂:耐衝撃ポリスチレン樹脂(HI
PS):IDEMITSU PS HT44(出光石油
化学社株式会社製):ポリブタジエンにポリスチレンが
グラフト重合したもの、ゴム状弾性体7重量%含有、M
I:8g/10分(200℃、5Kg荷重) (C)難燃剤 P−1:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェー
ト):リン酸エステルPFR(旭電化工業株式会社製) P−2:レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフ
エェニルホスフェート):リン酸エステルFP−500
(旭電化株式会社製) P−3:トリフェニルホスフェート:TPP(大八化学
株式会社製) D)アニオン系帯電防止剤 AS−1:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ア
ルコール不溶分:1重量%) AS−2:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ア
ルコール不溶分:7重量%) (E)ポリエチレングリコール、分子量=8000 (F)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) PTFE:F201L(ダイキン化学工業株式会社
製):分子量400万〜500万 (G)ゴム状弾性体:コアシェルタイプグラフトゴム状
弾性体 メタブレンS2001(三菱レーヨン株式会社製):複
合ゴム系グラフト共重合体(ポリジメチルシロキサン含
有量:50重量%以上) (H)タルク FFR(浅田製粉株式会社製)、平均粒径:0.7μm
【0053】〔性能評価方法] (1)IZOD(アイゾット衝撃強度):ASTM D
256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位:k
J/m2 (2)SFL(スパイラルフロー長さ):出光法(成形
温度240℃、金型温度60℃、肉厚3mm、幅10m
m、射出圧力110MPa)、単位:cm (3)帯電防止性:表面抵抗率 1/8インチ厚みの平板を用い、23℃、湿度50%の
雰囲気下で測定した。単位:Ω/□ (4)難燃性:UL94燃焼試験に準拠(1.5mm) V−0〜V−2が実用上の難燃性能を満足する。OUT
は規格外不合格
【0054】
【表1】
【0055】表1の結果から明らかなように、本発明の
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物からの成形品は、比
較例1と近似組成である実施例2から明らかなように、
表面抵抗率が低下するのみでなく、その原因は明らかで
はないが、耐衝撃性が大幅に向上している。また、比較
例4と近似組成である実施例3から明らかなように、帯
電防止効果はほぼ同等であるが、耐衝撃性が改善されて
いる。特に、同じ帯電防止剤、難燃剤含有量でありなが
ら、本発明外の比較例4は、難燃性試験に不合格であ
る。したがつて、難燃性、耐衝撃性を維持しながら、帯
電防止性にすぐれた成形品が本発明によって得られるこ
とが明らかになった。
【0056】また、比較例5より硫酸ナトリウム含有量
が増大すると、難燃性でなくなるとともに、耐衝撃性が
格段に低下することが明らかとなった。これらのすぐれ
た効果により、特に、帯電防止性と難燃性が要求され
る、電子・電気分野のハウジングや各種部分品としての
性能を十分に満足される射出成形品を提供できるもので
ある。したがって、これらの分野への適用の拡大が期待
される。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、ポリカーボネート樹脂
(PC)、必要によりスチレン系樹脂(PS)からなる
樹脂に、難燃剤、特定の帯電防止剤を含有させるととも
に、樹脂組成物中の硫酸ナトリウム含有量を特定以下に
抑制することにより、難燃性を維持しながら、帯電防止
性の付与が可能となる。しかも、耐衝撃性が大幅に向上
すると言う、予期せぬ効果が得られる。さらに、難燃剤
としてハロゲン非含有リン酸エステル、さらにはフルオ
ロオレフィン系樹脂を含有させることにより、すぐれた
成形性、耐衝撃性などの物性を維持しつつ、難燃性を付
与できる。さらに、ゴム状弾性重合体、無機充填剤を用
いることにより、成形品に要求される耐衝撃性、剛性、
耐熱性、難燃性に対しての対応範囲を拡大することがで
きるものである。また、難燃剤としてハロゲン非含有リ
ン酸エステルを用いることができるので、環境汚染の問
題をも解決し得るものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/098 C08K 5/098 5/10 5/10 5/42 5/42 5/521 5/521 C08L 21/00 C08L 21/00 25/02 25/02 27/12 27/12 51/04 51/04 // B29K 69:00 B29L 31:34 Fターム(参考) 4F206 AA13K AA16 AA24 AA28K AA45 AB05 AB09 AB11 AB16 AH33 AM34 JA07 JN27 4J002 AC035 AC065 AC085 BB155 BB243 BC032 BC042 BC062 BC113 BD124 BD154 BD164 BN142 BN152 BN162 CG011 CG021 CG031 CG033 CP035 DA018 DA056 DE076 DE126 DE188 DE238 DG048 DG058 DJ008 DJ038 DJ048 DJ058 DL008 ED076 EJ056 EU186 EV237 EV247 EV257 EW046 FA048 FD018 FD107 FD133 FD136 GQ00

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)ポリカーボネート樹脂50〜10
    0重量%、(B)スチレン系樹脂50〜0重量%からな
    る樹脂100重量部に対して、(C)難燃剤1〜50重
    量部および(D)アニオン系帯電防止剤0.1〜5重量
    部を含有しており、硫酸ナトリウムの含有量が0.05
    重量%以下である難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 さらに、(E)アルキレングリコール、
    グリセリンおよびこれらの脂肪酸エステル化物から選ば
    れた少なくとも1種を、(A)および(B)からなる樹
    脂100重量部に対して0.1〜5重量部含有する請求
    項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 難燃剤がハロゲン非含有リン酸エステル
    である請求項1または2記載の難燃性ポリカーボネート
    樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 さらに、(F)フルオロオレフィン樹脂
    を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対
    して、0.05〜5重量部含有する請求項1〜3のいず
    れかに記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 フルオロオレフィン樹脂がフィブリル形
    成能を有する請求項4記載の難燃性ポリカーボネート樹
    脂組成物。
  6. 【請求項6】 スチレン系樹脂がゴム質重合体変性スチ
    レン系樹脂であり、(A)ポリカーボネート樹脂50〜
    95重量%、(B)スチレン系樹脂50〜5重量%から
    なる請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性ポリカーボ
    ネート樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 さらに、(G)ゴム状弾性体を、(A)
    および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜
    30重量部含有する請求項1〜6のいずれかに記載の難
    燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 (G)ゴム状弾性体が、コアシェルタイ
    プグラフトゴム状弾性体である請求項7記載の難燃性ポ
    リカーボネート樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 さらに、(H)無機充填剤を、(A)お
    よび(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜5
    0重量部含有する請求項1〜8のいずれかに記載の難燃
    性ポリカーボネート樹脂組成物。
  10. 【請求項10】請求項1〜9のいずれかに記載の難燃性
    ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなる射出成
    形品。
  11. 【請求項11】射出成形品が、OA機器、電気・電子機
    器または家庭電化機器のハウジングまたは部分品である
    請求項10記載の射出成形品。
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