JP3662429B2 - 難燃性樹脂組成物および射出成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は難燃性樹脂組成物に関し、特に射出成形により薄肉成形品や大型成形品の成形に適した熱安定性にすぐれた難燃性樹脂組成物と該組成物を射出成形、特にホットランナー金型を用いて射出成形してなる外観良好な難燃性射出成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、すぐれた耐衝撃特性、耐熱性、電気的特性、寸法安定性などにより、OA(オフィスオートメーション)機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等様々な分野において幅広く利用されている。ポリカーボネート樹脂は、一般的に自己消火性樹脂ではあるが、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器分野を中心として、高度の難燃性を要求される分野があり、各種難燃剤の添加により、その改善が図られている。
【0003】
一方、近時、成形品が複写機、ファックス、パソコンなどのOA機器、電話機、通信機などの情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器などの部品やハウジングなどの場合には、形状が複雑になること、リブやボスなどの凹凸が成形品に形成されること、軽量化、省資源の見地から成形品の薄肉化、大型化、複雑化することなどの理由から、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性、すなわち射出成形性を高めた組成物が求められている。この成形性の改善としては、耐衝撃性などの物性も考慮して、ゴム変性スチレン系樹脂との配合組成物が多く提案されている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良のために、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、耐衝撃性の特性を生かし、多くの成形品分野に用いられてきている。一方、これらの用途の中でも、OA機器、情報機器、電気・電子機器などの場合には、その製品の安全性を高めるために、あるレベル以上の難燃性が求められている。
【0005】
ポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂組成物の難燃性を向上する方法として、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマーなどのハロゲン系難燃剤が難燃剤効率の点から酸化アンチモンなどの難燃助剤とともに用いられてきた。しかし、近時、廃棄・焼却時の安全性、環境への悪影響の観点から、ハロゲンを含まない難燃剤による難燃化方法が市場より求められている。ノンハロゲン系難燃剤として、有機リン系難燃剤、特に有機リン酸エステル化合物を配合したポリカーボネート樹脂組成物は優れた難燃性を示し、多くの方法が提案されている。
【0006】
たとえば特開昭61−55145号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹脂、(D)ハロゲン化合物、(E)リン酸エステル、(F)ポリテトラフルオロエチレン成分からなる熱可塑性樹脂組成物が記載されている。特開平2−32154号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート樹脂、(B)ABS樹脂、(C)AS樹脂、(D)リン酸エステル、(E)ポリテトラフルオロエチレン成分からなる難燃性高衝撃性ポリカーボネート成形用組成物が記載されている。特開平8−239565号公報には、(A)芳香族ポリカーボネート、(B)ゴム状弾性体を含有する耐衝撃ポリスチレン樹脂、(C)ハロゲン非含有リン酸エステル、(D)コアシエルタイプグラフトゴム状弾性体、(D)タルクを含むポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
【0007】
これらは、いずれも、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性の改良による成形性、耐衝撃性、難燃性の改良を目的としたもので、すぐれた効果を生かし、各種成形品として用いられてきている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂と(ゴム変性)スチレン系樹脂からなる良溶融流動性組成物を有機リン系難燃剤で難燃化する場合には、リン酸エステル化合物を比較的多量に配合する必要がある。また、リン酸エステル化合物は難燃性だけでなく、可塑剤としても寄与するものであり、溶融成形性、すなわち射出成形性も向上するものである。
【0008】
しかしながら、難燃剤としてリン酸エステル化合物をポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂組成物に配合した樹脂組成物は射出成形性そのものは十分満足するものであるが、成形品の形状、金型構造によっては熱安定性に劣り、特にホットランナー金型のように、溶融樹脂の滞留がある射出成形にあっては、成形品の表面に焼けやシルバーが発生し易い場合がある。したがって、外観にすぐれた成形品を安定的に成形することが困難で、不良品発生の原因となるなど必ずしも満足できるものでない場合がある。
【0009】
また、リン酸エステル化合物はその種類によっては、ブルーミングの問題もあり、融点の高いリン酸エステル化合物、モノマーや不純物含有率を規定するなどの方法が提案されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂からなる樹脂組成物は比較的成形温度が高いことから、単なるリン酸エステル化合物の選択だけでは熱安定性の問題点を十分解決することは困難である。
【0010】
このため、特開平9−249768号公報には、ビスフェノールAの残基により架橋されたリン酸エステルオリゴマーであって、特定のリン酸エステルモノマーの含有量が1重量%以下で、金属分の含有量合計が30重量ppm以下で、TGAによる、不活性ガス雰囲気中100℃/分の昇温速度で300℃まで加熱し、20分間の重量減少率が15重量%以下である樹脂用の難燃剤が提案されている。しかしながら、難燃剤としてのリン酸エステル化合物をどんなに特定してもポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂の組成物の熱安定性を必ずしも満足させることができない問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状の下、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂からなる組成物、特にゴム変性スチレン系樹脂との組成物の、リン酸エステル化合物による難燃化において、熱安定性にすぐれ、リサイクルが可能で、特にホットランナー金型を用いた射出成形であっても、焼けやシルバーの発生がなく安定成形できる難燃性樹脂組成物、およびこの組成物を用いた射出成形品の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的を達成するため、本発明者らは、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂からなる樹脂のリン酸エステル化合物による難燃化において、成形時の熱安定性と成形品外観について鋭意検討した。その結果、リン酸エステル化合物を難燃剤として含有するポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂を含有してなる樹脂組成物が、特定の条件を満足する場合に、前記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)(A)ポリカーボネート樹脂60〜97重量%および(B)スチレン系樹脂40〜3重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)リン酸エステル化合物1〜30重量部を含有してなり、温度260℃で60分の加熱減量が1重量%以下である難燃性樹脂組成物。
(2)さらに、(D)熱安定剤を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部含有する上記(1)記載の難燃性樹脂組成物。
(3)熱安定剤が亜リン酸エステル化合物である上記(2)記載の難燃性樹脂組成物。
(4)さらに、(E)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物をホットランナー金型により射出成形してなる射出成形品。
(7)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物をホットランナー金型により射出成形してなるOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器もしくは家庭電化機器のハウジングまたはそれらの部品に関するものである。
【0014】
以下、本発明を詳述する。
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(A)成分であるポリカーボネート樹脂(PC)としては、特に制限はなく種々のものが挙げられる。通常、2価フェノールとカーボネート前駆体との反応により製造される芳香族ポリカーボネートを用いることができる。すなわち、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法あるいは溶融法、すなわち、2価フエノールとホスゲンの反応、2価フエノールとジフェニルカーボネートなどとのエステル交換法により反応させて製造されたものを使用することができる。
【0015】
2価フェノールとしては、様々なものが挙げられるが、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)オキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンなどが挙げられる。
【0016】
特に好ましい2価フエノールとしては、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン系、特にビスフェノールAを主原料としたものである。また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル、またはハロホルメートなどであり、具体的にはホスゲン、2価フェノールのジハロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどである。この他、2価フェノールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール等が挙げられる。これらの2価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
なお、ポリカーボネート樹脂は、分岐構造を有していてもよく、分岐剤としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、フロログリシン、トリメリット酸、イサチンビス(o−クレゾール)などがある。また、分子量の調節のためには、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−t−オクチルフェノール、p−クミルフェノールなどが用いられる。
【0018】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂としては、ポリカーボネート部とポリオルガノシロキサン部を有する共重合体、あるいはこの共重合体を含有するポリカーボネート樹脂であってもよい。また、テレフタル酸などの2官能性カルボン酸、またはそのエステル形成誘導体などのエステル前駆体の存在下でポリカーボネートの重合を行うことによって得られるポリエステル−ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、種々のポリカーボネート樹脂の混合物を用いることもできる。本発明において用いられる(A)成分のポリカーボネート樹脂は、構造中に実質的にハロゲンを含まないものが好ましい。また、機械的強度および成形性の点から、その粘度平均分子量は、10,000〜100,000、好ましくは、15,000〜40,000、特に16,000〜30,000のものが好適である。
【0019】
(B)スチレン系樹脂
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(B)成分のスチレン系樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレンなどのモノビニル系芳香族単量体20〜100重量%、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体0〜60重量%、およびこれらと共重合可能なマレイミド、(メタ)アクリル酸メチルなどの他のビニル系単量体0〜50重量%からなる単量体または単量体混合物を重合して得られる重合体がある。これらの重合体としては、ポリスチレン(GPPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)などがある。
【0020】
また、スチレン系樹脂としてはゴム変性スチレン系樹脂が好ましく利用できる。このゴム変性スチレン系樹脂としては、好ましくは、少なくともスチレン系単量体がゴムにグラフト重合した耐衝撃性スチレン系樹脂である。ゴム変性スチレン系樹脂としては、たとえば、ポリブタジエンなどのゴムにスチレンが重合した耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリブタジエンにアクリロニトリルとスチレンとが重合したABS樹脂、ポリブタジエンにメタクリル酸メチルとスチレンが重合したMBS樹脂などがあり、ゴム変性スチレン系樹脂は、二種以上を併用することができるとともに、前記のゴム未変性であるスチレン系樹脂との混合物としても使用できる。
【0021】
ゴム変性スチレン系樹脂中のゴムの含有量は、例えば2〜50重量%、好ましくは、5〜30重量%、特に5〜15重量%である。ゴムの割合が2重量%未満であると、耐衝撃性が不十分となり、また、50重量%を超えると熱安定性が低下したり、溶融流動性の低下、ゲルの発生、着色などの問題が生じる場合がある。上記ゴムの具体例としては、ポリブタジエン、アクリレートおよび/またはメタクリレートを含有するゴム質重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン・アクリルゴム、イソプレン・ゴム、イソプレン・スチレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム等が挙げられる。このうち、特に好ましいものはポリブタジエンである。ここで用いるポリブタジエンは、低シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を1〜30モル%、1,4−シス結合を30〜42モル%含有するもの)、高シスポリブタジエン(例えば1,2−ビニル結合を20モル%以下、1,4−シス結合を78モル%以上含有するもの)のいずれを用いてもよく、また、これらの混合物であってもよい。
【0022】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂にスチレン系樹脂を配合することにより、樹脂組成物の溶融流動性を向上するものである。ここで、両樹脂の配合比は、(A)ポリカーボネート樹脂60〜97重量%、好ましくは70〜95重量%、(B)スチレン系樹脂が40〜3重量%、好ましくは30〜5重量%である。ここで、(A)成分のポリカーボネート樹脂が60重量%未満では、耐熱性、強度が十分でなく、(B)成分のスチレン系樹脂が3重量%未満では成形性の改良効果が不十分である。なお、この場合の(B)スチレン系樹脂としては、前記したゴム変性スチレン系樹脂が好ましく用いられる。これらの配合比は、ポリカーボネート樹脂の分子量、スチレン系樹脂の種類、分子量、メルトインデックス、ゴムの含有量や成形品の用途、大きさ、厚みなどを考慮して適宜決定される。
【0023】
(C)リン酸エステル化合物
本発明の難燃性樹脂組成物を構成する(C)成分の リン酸エステル化合物としては、特に制限はなく、ハロゲンを含まないものが好ましく、たとえば次式(1)
【0024】
【化1】
【0025】
(ここで、R1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Xは2価以上の有機基を表し、pは0または1であり、qは1以上の整数であり、rは0以上の整数を表す。)で示されるリン酸エステル化合物である。
式(1)において、有機基とは、置換されていても、いなくてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などである。また置換されている場合の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基などがある。さらに、これらの置換基を組み合わせた基であるアリールアルコキシアルキル基など、またはこれらの置換基を酸素原子、窒素原子、イオウ原子などにより結合して組み合わせたアリールスルホニルアリール基などを置換基としたものなどがある。
【0026】
また、式(1)において、2価以上の有機基Xとしては、上記した有機基から、炭素原子に結合している水素原子の1個以上を除いてできる2価以上の基を意味する。たとえば、アルキレン基、(置換)フェニレン基、多核フェノール類であるビスフェノール類から誘導されるものである。好ましいものとしては、ビスフェノールA、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジフエニルメタン、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン等がある。
【0027】
リン酸エステル化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーあるいはこれらの混合物であってもよい。具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、ビスフェノールAビスホスフェート、ヒドロキノンビスホスフェート、レゾルシンビスホスフェート、レゾルシノール−ジフェニルホスフェート、トリオキシベンゼントリホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、あるいはこれらの置換体、縮合物などを例示できる。
【0028】
ここで、市販のハロゲン非含有リン酸エステル化合物としては、たとえば、大八化学工業株式会社製の、TPP〔トリフェニルホスフェート〕、TXP〔トリキシレニルホスフェート〕、PFR〔レゾルシノール(ジフェニルホスフェート)〕、PX200〔1,3−フェニレン−テスラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX201〔1,4−フェニレン−テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステル、PX202〔4,4’−ビフェニレン−テスラキス)2,6−ジメチルフェニル)リン酸エステルなどを挙げることができる。
【0029】
(C)成分のリン酸エステル化合物の含有量は、前記(A)ポリカーボネート樹脂および(B)スチレン系樹脂からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部、より好ましくは5〜15重量部である。ここで、含有量が1重量部未満では、成形品の難燃性が十分でなく、30重量部を越えると成形品の耐熱性、耐衝撃性などの強度が低下する場合がある。
【0030】
本発明の難燃性樹脂組成物は、(A)、(B)および(C)からなる樹脂成分を溶融混練することにより得られるものである。混練方法としては、特に限定されず、(1)3成分を同時に混合して各種溶融混練装置に供給して製造する方法。(2)ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂を溶融混練し、次いでリン酸エステル化合物を加え溶融混練する方法。(3)ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂を混練機に供給して溶融混練し、混練機の途中よりリン酸エステル化合物を固体、液体あるいは溶融して供給し混練する方法。(4)ポリカーボネート樹脂にあらかじめリン酸エステル化合物を溶融混練しておいて、次いでスチレン系樹脂を加えて混練する方法などを例示できる。本発明の難燃性樹脂組成物は、これらの溶融混練方法によって一般的には、任意形状のペレットとして、最終成形品成形用の成形原料とされる。
【0031】
本発明の難燃性樹脂組成物の特徴は、温度260℃で60分の加熱減量が1重量%以下に制御されていることにある。加熱減量が1重量%を越えると成形時に発生するガスによると思われるシルバーが成形品表面に発生する場合があるとともに、成形条件によっては焼けが生じる場合もある。また、成形時に金型表面に成形品が付着し離型性が悪くなり、連続成形できず生産性が低下する場合がある。さらに、リサイクルした場合には色調の変化が激しくなる場合がある。したがって、加熱減量は好ましくは0.8重量%以下、特に好ましくは0.6重量%以下である。
【0032】
ここで加熱減量とは、組成物試料をTGA(熱天秤)により分析することにより測定できる。すなわち、約20mgの組成物試料を、窒素またはヘリウムの気流中、100℃/分の昇温速度で、260℃まで昇温加熱し、そのまま60分保持した時の減量重量%であると定義できる。なお、組成物試料はあらかじめ、80℃で8時間乾燥の前処理により、吸湿分などは除かれたものである。
【0033】
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記加熱減量を満足すれば、各種手段の採用により製造することができる。これらの手段としては、原料樹脂とリン酸エステル化合物の選択、組成物を製造する溶融混練装置の選択、溶融混練条件の選択、添加剤の添加あるいはこれらの組み合わせを例示できる。中でも、添加剤として熱安定剤などの添加が好ましい。
【0034】
(D)熱安定剤
熱安定剤としては、難燃性樹脂組成物の熱酸化劣化を防止する添加剤であり、リン系酸化防止剤、フエノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などを例示することができる。なかでもリン系酸化防止剤、特に亜リン酸エステル化合物が好ましく用いられる。亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸の水素がアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基などにより、それぞれ独立に置換されたエステル化合物である。
【0035】
これら亜リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリブトキシエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリキシレニルホスファイト、トリス(イソプロピルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリナフチルホスファイト、クレジルジフェニルホスファイト、キシレニルジフェニルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスファイトなどを例示できる。これらのなかで、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジーt−ブチルフェニル)ホスファイトなどが好ましく用いられる。
【0036】
これら亜リン酸エステル化合物の含有量は、前記(A)ポリカーボネート樹脂およびスチレン系樹脂100重量部に対して、0.01〜2重量部、好ましくは0.1〜1重量部である。ここで亜リン酸エステル化合物の含有量が0.01重量部未満では耐熱酸化安定性改善効果が薄く、2重量部を越えると耐熱性が低下、成形時のガス発生などの不都合が発生する恐れがある場合がある。
【0037】
本発明の難燃性樹脂組成物は、原料であるポリカーボネート樹脂中の低分子量成分の少ない原料を選択することが望ましい。また、スチレン系樹脂としては、その重合方法として、懸濁重合や乳化重合などのような懸濁ないし乳化安定剤を用いる重合方法よりも、これら添加剤を必要としない、塊状重合で得られた樹脂を用いることが好ましい。またスチレン系樹脂においても、低分子成分の含有量の低い樹脂を選択することが好ましいのは、ポリカーボネート樹脂の場合と同様である。さらに、リン酸エステル化合物として、揮発性の高いものの選択を避けることも重要である。
【0038】
本発明の難燃性樹脂組成物を得るためには、前記原料樹脂の選択、熱安定剤の添加に加えて、溶融混練条件として、ベント付き溶融混練成形機、特にベント付き溶融混練押出成形機を用いて、溶融混練時にベントより強制排気し可能な限り揮発成分をあるレベルまで除去することが好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物には、燃焼時の溶融滴下防止を目的にさらに、(E)フルオロオレフィン樹脂を含有することができる。ここで(E)フルオロオレフィン樹脂としては、通常フルオロエチレン構造を含む重合体、共重合体であり、たとえば、ジフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ素を含まないエチレン系モノマーとの共重合体である。好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その平均分子量は、500,000以上であることが好ましく、特に好ましくは500,000〜10,000,000である。
【0039】
なお、ポリテトラフルオロエチレンのうち、フィブリル形成能を有するものを用いると、さらに高い溶融滴下防止性を付与することができる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)には特に制限はないが、例えば、ASTM規格において、タイプ3に分類されるものが挙げられる。その具体例としては、例えばテフロン6−J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)、ポリフロンD−1、ポリフロンF−103、ポリフロンF201L(ダイキン工業株式会社製)、CD076(旭アイシーアイフロロポリマーズ株式会社製)等が挙げられる。
【0040】
また、上記タイプ3に分類されるもの以外では、例えばアルゴフロンF5(モンテフルオス株式会社製)、ポリフロンMPA、ポリフロンFA−100(ダイキン工業株式会社製)等が挙げられる。これらのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。上記のようなフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、例えばテトラフルオロエチレンを水性溶媒中で、ナトリウム、カリウム、アンモニウムパーオキシジスルフィドの存在下で、1〜100psiの圧力下、温度0〜200℃、好ましくは20〜100℃で重合させることによって得られる。
【0041】
ここで、フルオロオレフィン樹脂の含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部、好ましくは、0.1〜2重量部である。ここで、0.05重量部未満であると、目的とする難燃性における耐溶融滴下性が十分でない場合があり、5重量部を越ても、これに見合った効果の向上はなく、耐衝撃性、成形品外観に悪影響を与える場合がある。したがって、それぞれの成形品に要求される難燃性の程度、たとえば、UL−94のV−0、V−1、V−2などにより他の含有成分の使用量などを考慮して適宜決定することができる。
【0042】
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに、(F)成分としてのゴム状弾性体を、難燃性樹脂組成物の耐衝撃性の一層の向上のために含有することができる。その含有量は、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部である。このゴム状弾性体の含有量は、目的の成形品に要求される耐衝撃性、耐熱性、剛性などを総合的に考慮して決定される。ゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエン・スチレンゴム(SBS)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエン・アクリルゴム、イソプレン・スチレンゴム、イソプレン・アクリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シロキサンゴム等が挙げられる。
【0043】
(F)成分のゴム状弾性体としては、コア(芯)とシェル(殻)から構成される2層構造を有しており、コア部分は軟質なゴム状態であって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、弾性体自体は粉末状(粒子状態)であるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体が好ましい。このゴム状弾性体は、ポリカーボネート樹脂と溶融ブレンドした後も、その粒子状態は、大部分がもとの形態を保っている。配合されたゴム状弾性体の大部分がもとの形態を保っていることにより、表層剥離を起こさない効果が得られる。
【0044】
このコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、種々なものを挙げることができる。市販のものとしては、例えばハイブレンB621(日本ゼオン株式会社製)、KM−330(ローム&ハース株式会社製)、メタブレンW529、メタブレンS2001、メタブレンC223、メタブレンB621(三菱レイヨン株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
これらの中で、例えば、アルキルアクリレートやアルキルメタクリレート、ジメチルシロキサンを主体とする単量体から得られるゴム状重合体の存在下に、ビニル系単量体の1種または2種以上を重合させて得られるものが挙げられる。ここで、アルキルアクリレートやアクリルメタクリレートとしては、炭素数2〜10アルキル基を有するものが好適である。具体的には、例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルメタクリレート等が挙げられる。これらのアルキルアクリレート類を主体とする単量体から得られるゴム状弾性体としては、アルキルアクリレート類70重量%以上と、これと共重合可能な他のビニル系単量体、例えばメチルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等30重量%以下とを反応させて得られる重合体が挙げられる。なお、この場合、ジビニルベンゼン、エチレンジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性単量体を架橋剤として適宜添加して反応させてもよい。
【0046】
ゴム状重合体の存在下に反応させるビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよいし、また、他のビニル系重合体、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物や、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル化合物等と共重合させてもよい。この重合反応は、例えば塊状重合、懸濁重合、乳化重合などの各種方法によって行うことができる。特に、乳化重合法が好適である。
【0047】
このようにして得られるコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体は、前記ゴム状重合体を20重量%以上含有していることが好ましい。このようなコアシェルタイプグラフトゴム状弾性体としては、具体的には60〜80重量%のn−ブチルアクリレートと、スチレン、メタクリル酸メチルとのグラフト共重合体などのMAS樹脂弾性体が挙げられる。中でも、ポリシロキサンゴム成分が5〜95重量%とポリアクリル(メタ)アクリレートゴム成分95〜5重量%とが、分離できないように相互に絡み合った構造を有する、平均粒子径が0.01〜1μm程度の複合ゴムに少なくとも一種のビニル単量体がグラフト重合されてなる複合ゴム系グラフト共重合体が好ましい。この共重合体は、それぞれのゴム単独でのグラフト共重合体よりも耐衝撃改良効果が高い。この複合ゴム系グラフト共重合体は、市販品としての、三菱レーヨン株式会社製メタブレンS−2001などとして、入手できる。
【0048】
また、本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに、無機充填剤を、成形品の剛性、さらには難燃性をさらに向上させるために含有させることができる。ここで、無機充填剤としては、タルク、マイカ、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などをあげることができる。なかでも、板状であるタルク、マイカなどや、繊維状の充填剤が好ましい。タルクとしては、、マグネシウムの含水ケイ酸塩であり、一般に市販されているものを用いることができる。また、タルクなどの無機充填剤の平均粒径は0.1〜50μm、好ましくは、0.2〜20μmである。これら無機充填剤、特にタルクを含有させることにより、剛性向上効果に加えて、難燃剤としてのリン酸エステル化合物の配合量を減少させることができる。
【0049】
ここで、無機充填剤の含有量は、、前記(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部である。ここで、1重量部未満であると、目的とする剛性、難燃性改良効果が十分でない場合があり、100重量部を越えると、耐衝撃性、溶融流動性が低下する場合があり、成形品の厚み、樹脂流動長など、成形品の要求性状と成形性を考慮して適宜決定することができる。
【0050】
本発明の難燃性樹脂組成物は、成形性、耐衝撃性、外観改善、耐候性改善、剛性改善等の目的で、上記(A)〜(C)よりなる必須成分に、(D)〜(F)、さらには熱可塑性樹脂に常用されている無機充填剤、各種添加剤成分を必要により含有することができる。例えば、帯電防止剤、ポリアミドポリエーテルブロック共重合体(永久帯電防止性能付与)、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤(耐候剤)、抗菌剤、相溶化剤、着色剤(染料、顔料)等が挙げられる。任意成分の配合量は、本発明の,難燃性樹脂組成物の特性が維持される範囲であれば特に制限はない。
【0051】
次に、本発明の難燃性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の難燃性樹脂組成物は、前記の各成分(A)〜(C)を上記割合で、さらに必要に応じて用いられる、(D)〜(F)の各種任意成分、さらには他の成分を適当な割合で配合し、混練することにより得られる。このときの配合および混練は、通常用いられている機器、例えばリボンブレンダー、ドラムタンブラーなどで予備混合して、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等を用いる方法で行うことができる。しかしながら、前記したように、単軸押出成形機、多軸押出成形機などの連続押出成形機であって、強制ベント排気するタイプの押出成形機の採用が好ましい。また、押出成形機としては、成形原料の流れ方向において複数の原料供給部を備えたものも好適に用いることができる。たとえば、リン酸エステル化合物以外の原料成分を溶融混練し、この混練物にリン酸エステル化合物を、好ましくは溶融状態で供給する方法、ポリカーボネート樹脂とリン酸エステル化合物をまず溶融混練し、ついでスチレン系樹脂と混練する方法などを例示できる。
【0052】
溶融混練の際の加熱温度は、通常240〜300℃の範囲で適宜選択される。なお、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂以外の含有成分は、あらかじめ、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂あるいはこれ以外の他の熱可塑性樹脂と溶融混練、すなわちマスターバッチとして添加することもできる。
本発明の難燃性樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機、あるいは、得られたペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法などにより各種成形品を製造することができる。しかし、本発明難燃性樹脂組成物は、上記溶融混練方法により、ペレット状の組成物成形原料とし、ついで、このペレットを用いる、射出成形、射出圧縮成形による射出成形品の製造に好適に用いることができる。なお、射出成形方法としては、外観のヒケ防止のため、あるいは軽量化のためのガス注入成形を採用することもできる。
【0053】
したがって、本発明の難燃性樹脂組成物は、溶融混練後の成形品、溶融混練後のペレット状の成形原料において、260℃で60分の加熱原料が1重量%以下であるものである。本発明の難燃性樹脂組成物は、この条件を満足することによって、ダイレクトゲートタイプのみでなく、特にホットランナー金型を用いた成形品の成形に好適に用いることができる。すなわち、ホットランナー金型では、ホットランナーでの溶融樹脂の滞留のために、熱履歴を受けやすく樹脂などの分解による、ガスの発生や着色が生じやすく、外観良好な成形品の成形が困難であり、本発明によってこれらの問題が解決できる。したがって、本発明の難燃性樹脂組成物は、ホットランナー金型による、薄肉成形品、大型成形品の成形を可能にすることができる。
【0054】
本発明の難燃性樹脂組成物から得られる射出成形品(射出圧縮を含む)としては、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器もしくは家庭電化機器のハウジウングまたはそれらの各種部品、さらには、自動車部品など他の分野にも用いられる。
【0055】
【実施例】
本発明について実施例および比較例を示してより具体的に説明するが、これらに、何ら制限されるものではない。
実施例1〜3および比較例1、2
表1に示す割合の配合〔(A)、(B)成分は重量%、他の成分は、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対する重量部で示す。〕組成となるように、二軸(同方向回転)スクリュー押出成形機〔TEM−35、東芝機械株式会社製):L/D=32、第一原料供給口(ホッパー)、強制排気ベント穴、第二原料供給口(液体サイドフィード)を備えている。〕を用いて、溶融混練押出しを行った。第一原料供給口からリン酸エステル化合物以外の原料成分を、第二原料供給口からリン酸エステル化合物を供給した。溶融混練温度は、前段部:280℃、後段部:260℃とした。
【0056】
得られたペレットを、80℃で8時間乾燥した後、TGA(熱分析)を用いて、前記記載の条件で、260℃で60分の加熱減量を測定した、結果を表1に示す。また、これらペレットを用いて、射出成形機〔東芝IS650t〕:ホットランナー形式のOAハウジング成形金型により、成形温度240℃、ホットランナー温度260℃、金型温度60℃で射出成形してOAハウジング(CRT用)を得た。成形品外観の評価結果を表1に示す。つぎに、成形温度260℃、金型温度40℃でOAハウジングを同様に成形し、100ショット後の金型表面を目視観察した結果を、表1に示す。
また、成形品であるOAハウジングを粉砕して、100%リサイクル原料として用いて、前者の条件でOAハウジングを成形し、前後の色調変化を測定し、ΔEとして表1に示す。また、別途試験片成形用の一般金型で試験片を成形し、難燃性と衝撃強度を測定し、その結果を表1に示す。
【0057】
比較例3
実施例1において、成形原料のすべてを、第1原料供給口から供給し、さらにベント穴よりの強制排気をしなかった以外は実施例1に準じて行った。評価結果を表1に示す。なお、すべての実施例および比較例において、酸化防止剤としてイルガノックス1076(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)0.2重量部をそれぞれ配合した。
【0058】
なお、用いた成形原料および性能評価方法を次に示す。
(A)ポリカーボネート樹脂PC:タフロン(A1900:出光石油化学株式会社製)、ビスフェノールAポリカーボネート樹脂、MI:20g/10分(300℃、1.2Kg荷重)、粘度平均分子量:19000
(B)スチレン系樹脂HIPS:耐衝撃ポリスチレン樹脂(IDEMITSU PS IT44:出光石油化学社株式会社製)、ポリブタジエンにスチレンがグラフト重合したもの、ゴム含有量:10重量%、MI:8g/10分(200℃、5Kg荷重)
ABS−1:塊状重合で得られたアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(AT−05:三井化学株式会社製)、MI:5g/10分(200℃、5Kg荷重)
【0059】
(C)リン酸エステル化合物
P−1:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート):リン酸エステルPFR(旭電化工業株式会社製)
P−2:トリフェニルホスフェート:TPP(大八化学株式会社製)
(D)亜リン酸エステル化合物
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト:イルガフォス168(チバ・スペシヤルティ・ケミカルズ株式会社製)
(E)フルオロオレフィン樹脂
PTFE:F201L(ダイキン化学工業株式会社製)、分子量400万〜500万
(F)ゴム状弾性体(コアシェルタイプグラフトゴム状弾性体)
複合ゴム系グラフト共重合体(メタブレンS2001:三菱レーヨン株式会社製)、ポリジメチルシロキサン含有量:50重量%以上
【0060】
〔性能評価方法]
(1)成形性(成形品外観):外観観察
(2)成形性(金型付着性):前記
(3)リサイクル性〔色調変化ΔE〕:前記
JIS K7103(黄変度試験方法)に準拠して、色差計で成形品の色相(L,a,b)を測定し、色相変化ΔEとして算出した。
(5)難燃性
UL94燃焼試験に準拠(試験片厚み:1.5mm)
(6)IZOD衝撃強度
ASTM D256に準拠、23℃(肉厚1/8インチ)、単位kJ/m2
【0061】
【表1】
【0062】
表1の結果から明らかなように、本発明の難燃性樹脂組成物からなる成形品は、ホットランナー金型を用いながら、シルバーの発生や焼けが見られない。また、リサイクル時の色調変化ΔEが小さく再利用が可能となる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物は、ノンハロゲンで、かつすぐれた難燃性、衝撃強度を有するとともに、耐熱性向上による成形時の樹脂などの分解が抑制され、成形品外観にすぐれる。とくに、近時多用されているホットランナー金型を用いた成形においても、焼けやシルバーの発生、金型付着性が殆どなく成形できる。したがって、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車部品などの大型化、薄肉化にも十分対応できるものであり、その応用分野の拡大が期待される。
Claims (5)
- (A)ポリカーボネート樹脂60〜97重量%および(B)スチレン系樹脂40〜3重量%からなる樹脂100重量部に対して、(C)一般式(1)
で表わされるリン酸エステル化合物1〜30重量部および(D)フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤又は亜リン酸エステル化合物0.01〜2重量部を含有してなり、ベント付き溶融混練成形機を用いて、揮発成分をベントより強制排気しつつ溶融混練して製造され、かつ温度260℃で60分の加熱減量が1重量%以下である難燃性樹脂組成物。 - さらに、(E)フルオロオレフィン樹脂を、(A)および(B)からなる樹脂100重量部に対して、0.05〜5重量部含有する請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
- 請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物をホットランナー金型により射出成形してなる射出成形品。
- 請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物をホットランナー金型により射出成形してなるOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器もしくは家庭電化機器のハウジングまたはそれらの部品。
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