JP2000026496A - 新規アスパルテーム誘導体結晶及びその製造法 - Google Patents

新規アスパルテーム誘導体結晶及びその製造法

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JP2000026496A
JP2000026496A JP10207605A JP20760598A JP2000026496A JP 2000026496 A JP2000026496 A JP 2000026496A JP 10207605 A JP10207605 A JP 10207605A JP 20760598 A JP20760598 A JP 20760598A JP 2000026496 A JP2000026496 A JP 2000026496A
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明弘 岸下
Kazutaka Nagashima
一孝 長嶋
Hirotoshi Ishida
寛敏 石田
Takeshi Nagai
武 永井
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    • C07K5/06104Dipeptides with the first amino acid being acidic
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高甘味度甘味料N−[N−(3,3−ジメチ
ルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルア
ラニンメチルエステルの溶解性の改善。 【解決手段】 例えば、少なくとも6.0°、24.8
°、8.2゜及び16.5゜の回折角度(2θ、CuK
α線)において回折X線の特有のピークを示すN−[N
−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチ
ル]−L−フェニルアラニンメチルエステル(A型結
晶)を水分含量が3重量%未満になるまで乾燥する。こ
のように乾燥処理した結晶は、溶解速度の優れたN−
[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパル
チル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの新規な
結晶(C型結晶)であって、この結晶は粉末X線回折法
で測定した場合に、少なくとも7.1゜、19.8゜、
17.3°及び17.7゜の回折角度(2θ、CuKα
線)において回折X線の特有のピークを示す。C型結晶
は、顆粒にすれば溶解性が更に改善される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高甘味度甘味物質
N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アス
パルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステルの、
溶解性に優れる新規な結晶及びその製造方法並びに溶解
性に優れる前記結晶の顆粒に関する。因みに、L−α−
アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル
は、周知の通り、既に商業化の確立されたアミノ酸系高
甘味度甘味料の一種でAPMまたはアスパルテーム(A
spartame)と略称されている。従って、本発明
に係わる前記甘味物質は、APMまたはアスパルテーム
の誘導体と考えることができ、そこで以下、これを、N
−(3,3−ジメチルブチル)−APMと略記する。ま
た、この甘味物質は、文献によってはNM(ネオテーム
Neotame)と略称されていることもある。
【0002】
【従来の技術】この化合物(N−(3,3−ジメチルブ
チル)−APM)は、甘味効力が、重量比でアスパルテ
ームの少なくとも50倍であり、シュークロース(食卓
砂糖)の約10,000倍であるため、非常に強力な甘
味剤を構成することができる。
【0003】甘味剤は、主として、食品中に使用して人
によって消費されることを目的とするものであるので、
不純物や分解物を事実上含まない高純度のものを得るこ
とができるような方法によって調製されなければならな
い。更に、このような方法は、工業規模で使用可能とす
るために、再現性があり比較的低いコストであるように
確立されていなければならない。
【0004】既に知られているN−(3,3−ジメチル
ブチル)−APMの結晶構造は、WO95/30689
にIRスペクトルデータとして記載されている。また、
本発明者等は、この結晶は、単結晶構造解析の結果、1
水和物であり、粉末X線回折法で測定した場合に、少な
くとも6.0゜、24.8゜、8.2°及び16.5゜
の回折角度(2θ、CuKα線)において回折X線の特
有のピークを示すことを確認した。そして、本発明者等
は、便宜上この結晶をA型結晶と称することにした。
【0005】しかしながら、上記のA型結晶は、水に対
する溶解速度が遅く、製品品質の面から商業上、工業上
問題となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前項記載の従来技術の
背景下に、本発明の課題は、溶解性の改善された、高甘
味度甘味料であるN−(3,3−ジメチルブチル)−A
PMの新規な結晶及びその製造方法並びに溶解性の更に
改善された前記結晶の顆粒を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決するために鋭意検討した結果、乾燥しているA型
結晶の水分含量は、通常、3〜6重量%(結晶水を含
む)であるが、このA型結晶を更に乾燥し、水分含量を
3%未満とすることにより、結晶水が脱離した溶解性の
改善されたN−(3,3−ジメチルブチル)−APMの
新規な結晶が得られること、またこの新規な結晶は顆粒
の形態にすることにより溶解性が更に改善されることを
見いだし、このような知見に基づいて本発明を完成する
に至った。因みに、この新規な結晶は、C型結晶と称す
ることにした。
【0008】すなわち、本発明は、CuKα線を用いる
粉末X線回折法で測定した場合に、A型結晶とは異なる
回折角度において、即ち、少なくとも7.1゜、19.
8゜、17.3°及び17.7゜の回折角度(2θ)に
おいて回折X線の特有のピークを示すことを特徴とする
N−(3,3−ジメチルブチル)−APMの新規な結晶
(C型結晶)並びにそのような結晶の製造法並びに前記
新規な結晶の顆粒に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のC型結晶は、先に説明し
たように、例えば、A型結晶を水分含量が3重量%未満
となるまで乾燥することにより得ることができる。
【0010】N−(3,3−ジメチルブチル)−APM
の製造方法は各種の合成法など種々のものが知られてい
るが、本発明の結晶はN−(3,3−ジメチルブチル)
−APMそのものの製造方法に依らずに得られることは
言うまでもない。
【0011】A型結晶を乾燥して本発明のC型結晶を得
るための乾燥装置には、特別の制限はなく、通気乾燥
機、流動乾燥機、真空乾燥器、スプレードライヤー、ミ
クロンドライヤー等を広く用いることができるが、好ま
しくは真空乾燥器である。
【0012】N−(3,3−ジメチルブチル)−APM
の本発明者による新規な結晶であるC型結晶の顆粒の製
造にも特別の制限はなく、従来この分野で採用されてい
る公知の顆粒化方法に適宜準じて行うことができる。例
えば、乾式造粒法によることもできるし、湿式造粒法に
よることもできる。具体的には、顆粒の製造法は、混合
造粒、圧扁造粒、押出造粒、流動造粒、転動造粒、解砕
造粒、スプレーコーティング、タブレッティング、その
他のいずれの方法によってもよいが、熱負荷が少なく、
また、製造プロセス等の複雑さを避けるためには、圧扁
造粒等の乾式造粒法によることが、工業上有利である。
【0013】本発明のN−(3,3−ジメチルブチル)
−APMの顆粒には、用途によっては、使い勝手を良く
する目的であるいは甘味質改善の目的で、本発明による
改善された溶解性を損なわない範囲で、従来の高甘味度
甘味料組成物の場合と同じように、糖アルコール類、オ
リゴ糖類、食物繊維などの希釈剤や賦形剤、あるいはま
た他の例えば、アリテーム、サッカリンなどの高甘味度
合成甘味料を配合することができる。この場合の希釈剤
や賦形剤には、スクロース、ブドウ糖などの低甘味度甘
味料も含まれる。
【0014】所定の粒径範囲の顆粒は、上のようにして
製造された顆粒を篩分に付するなど、これまた従来公知
の方法に適宜よることができる。
【0015】N−(3,3−ジメチルブチル)−APM
は、原末よりも例えば粒径100〜〜1400μm、好
ましくは100〜500μmの範囲の顆粒にすることに
より溶解性が一段と改善されることは、例えば後掲検査
例2から明らかである。粒径が上記範囲より小さいとダ
マ化抑制が弱くなり、一方上記範囲を超えると比表面積
が小さくなり、ともに溶解性改善効果が低下する。
【0016】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に詳細に説明
する。
【0017】参考例1:N−(3,3−ジメチルブチ
ル)−APMの調製 ガス状の水素を液体層へ極めて良好に移行することが確
実にできるような撹拌羽根を装備した反応器の中へ、撹
拌しながら連続的に以下のものを投入した。即ち、イオ
ン交換水700ml、酢酸4.21ml、10%パラジウ
ム炭素20g、メタノール1,300ml、アスパルテ
ーム56g、および3,3−ジメチルブチルアルデヒド
25mlである。
【0018】反応器を窒素ガス気流で充填した後、反応
混合物を流速200ml/分で室温において水素化し
た。反応の進行を、反応混合物をサンプリングし、高速
液体クロマトグラフィー(HPLC)で生成物を分析す
ることによりモニターした。6時間の水素化反応の後、
この反応を窒素ガス気流で反応器を満たし、触媒を微細
孔フィルター(0.45μm)で濾過することにより停
止した。
【0019】得られた濾過液(1,494g)を分析し
た結果、収率は81%であった。続いてこの濾過液を2
81gまで濃縮し、メタノールを除去し、10℃で一晩
撹拌しながら結晶を析出させた。最終的に、87gのN
−(3,3−ジメチルブチル)−APM白色湿結晶(収
率77%)を、高純度(99%以上、HPLC)で得
た。
【0020】参考例2:A型結晶の製造 参考例1において調製したN−(3,3−ジメチルブチ
ル)−APMの一部を使用して、N−(3,3−ジメチ
ルブチル)−APMの濃度が3重量%となるようにN−
(3,3−ジメチルブチル)−APM水溶液100gを
調製した(60℃で溶解)。次に、これを60℃から3
0℃まで5分間かけて撹拌しながら冷却した。液温が3
0℃に到達したところで白色結晶が起晶を開始した。液
温を30℃に保持し、一晩熟成させた後に結晶を濾取し
た。
【0021】(a)上記で得られた湿結晶をCuKα線
を用い、粉末X線回折法で回折X線を測定した。得られ
た粉末X線回折図を図1に示す。
【0022】図から明らかなごとく、この湿結晶は少な
くとも6.0゜、24.8゜、8.2°及び16.5゜
に特徴的な回折ピークを示し、A型結晶であった。
【0023】また、(b)この湿結晶を50℃に設定さ
れた真空乾燥器内に設置し、水分含量が5重量%になる
まで乾燥を行った。このようにして得られた乾燥結晶を
CuKα線を用い、粉末X線回折法で測定した結果、や
はりA型結晶であった。
【0024】更に、IRスペクトル(KBr)測定の結
果、WO95/30689に記載の値と一致した。
【0025】実施例1:C型結晶の製造 上述の水分含量が5重量%の乾燥A型結晶を真空乾燥器
で、継続して水分含量が0.8重量%となるまで乾燥し
た。乾燥結晶(原末)の平均粒径は約50μmであっ
た。
【0026】この乾燥結晶をCuKα線を用い、粉末X
線回折法で回折X線を測定した。得られた粉末X線回折
図を図2に示す。
【0027】図から明らかなごとく、乾燥結晶は少なく
とも7.1゜、19.8゜、17.3°及び17.7゜
において特徴的な回折ピークを示した。先に言及したよ
うに、この結晶は、C型結晶である。
【0028】検査例1:乾燥結晶の溶解速度測定 A型結晶(参考例2の(b))及びC型結晶(実施例
1)の溶解速度を、以下に示す方法で測定した。すなわ
ち、各結晶約300mgを内径8mmφ、深さ12mm
の打錠ウスに入れ、井内盛栄堂製「ハイプレッシャージ
ャッキJ−1型」を用いて300kg/cm2Gで打錠
し、溶解速度測定用試料を調製した。溶解速度測定は、
富山産業株式会社製「DISSOLUTION TES
TER(NTR−6100)」を使用し、打錠面のみが
露出した打錠ウスを20℃に保たれた300mlのイオ
ン交換水に投入し、撹拌回転数を200rpmとして固
有溶解速度を測定した。
【0029】その結果、A型結晶は30分で17mg、
60分で34mg、そして120分で69mgが溶出し
たのに対し、C型結晶は30分で25mg、60分で4
2mg、そして120分で86mgも溶出した。
【0030】以上から明らかなように、本発明のC型結
晶は、A型結晶に比べ、溶解性が著しく改善された有用
な結晶であることが判明した。
【0031】実施例2:C型結晶の顆粒の製造 実施例1におけると同様にして得られたC型結晶(原
末、平均粒径約50μm)を1回に約300mgずつ内
径8mmφ、深さ12mmの打錠ウスに入れ、井内盛栄
堂製「ハイプレッシャージャッキJ−1型」を用いて3
00kg/cm2Gで打錠による乾式圧縮成型をし、解
砕後篩分して所定の粒径範囲(100〜500μm及び
500〜1400μm)の顆粒画分を分画した。
【0032】検査例2:C型結晶(原末)とその顆粒の
溶解速度測定 1L溶出試験機(日本薬局方、パドル法、100rp
m)により、水900ml(20℃)を使用し、これに
サンプル0.5gを投入して溶解時間の測定を行った
(終点は目視確認)。
【0033】すなわち、前記実施例1で得られたC型結
晶(原末、平均粒径約50μm)および上記実施例2で
得られたC型結晶の顆粒(粒径100〜500μm及び
500〜1400μm)のそれぞれについて、上記方法
による溶解時間の測定を行った。
【0034】結果は、原末の溶解時間は55分であった
のに対し、顆粒の溶解時間は粒径100〜500μmで
16分、粒径500〜1400μmで37分に過ぎなか
った。
【0035】上記検査例1および2の結果より、高甘味
度合成甘味料であるN−(3,3−ジメチルブチル)−
APMは、A型結晶を乾燥してC型結晶に変換すること
により溶解性が改善され、またC型結晶は顆粒化するこ
とにより溶解性が更に改善されることが分かる。
【0036】
【発明の効果】高甘味度甘味料であるN−(3,3−ジ
メチルブチル)−APMの結晶の製造において、N−
(3,3−ジメチルブチル)−APMの新規な結晶の発
見により、またそれを顆粒とすることにより製品品質を
著しく向上せしめることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】A型結晶の粉末X線回折図である。
【図2】C型結晶の粉末X線回折図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石田 寛敏 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社中央研究所内 (72)発明者 永井 武 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社中央研究所内 Fターム(参考) 4B047 LB08 LE06 LG17 LP07 4H045 AA10 AA20 BA11 EA02 GA40

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも7.1゜、19.8゜、1
    7.3°及び17.7゜の回折角度(2θ、CuKα
    線)において回折X線の特有のピークを示すことを特徴
    とするN−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α
    −アスパルチル]−L−フェニルアラニンメチルエステ
    ルの新規結晶。
  2. 【請求項2】 少なくとも6.0゜、24.8゜、8.
    2゜及び16.5゜の回折角度(2θ、CuKα線)に
    おいて回折X線の特有のピークを示すN−[N−(3,
    3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−
    フェニルアラニンメチルエステルを水分含量が3重量%
    未満になるまで乾燥することを特徴とする請求項1に記
    載の新規結晶の製造方法。
  3. 【請求項3】 粒径が100〜1400μmの範囲にあ
    ることを特徴とする請求項1に記載のN−[N−(3,
    3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−
    フェニルアラニンメチルエステルの新規結晶の顆粒。
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