WO2020241020A1 - サイドエアバッグ装置及び、サイドエアバッグ装置の製造方法 - Google Patents

Abstract

【課題】エアバッグの適切な展開挙動を促進すること。 【解決手段】本発明は、車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備える。前記エアバッグは、前記インフレータを内部に収容し、主に乗員側（内側）で展開するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバに連結され、主に車両前方に向かって展開するメインチャンバとを含む。また、前記エアバッグが収容状態にあるときには、前記プリプッシュチャンバによって第１折り畳み部が形成され、前記メインチャンバによって第２折り畳み部が形成されるように構成される。そして、前記第１折り畳み部と前記第２折り畳み部とが重なる部分において、前記第１折り畳み部と前記プリチャンバの少なくとも一部とを結合する縫製部が形成され、前記縫製部は、前記エアバッグの展開時に破断するように構成される。

Description

サイドエアバッグ装置及び、サイドエアバッグ装置の製造方法

　本発明は、車両用シートに搭載されるサイドエアバッグ装置及び、その製造方法に関する。

　車両の事故発生時に乗員を保護するために、１つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグとしては、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、シートのサイドサポート部に収容され、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、サイドエアバッグ装置に関するものである。

  下記特許文献１に記載されたサイドエアバッグ装置は、インフレータからのガスによって車両前方に膨張・展開して乗員を保護する主エアバッグと、当該主エアバッグに先立って膨張を開始し、乗員を社内側に移動させる補助エアバッグとを備えている。このような主エアバッグと補助エアバッグの存在により、狭い空間における乗員の拘束を確実に行い、乗員の保護性能を向上させるとされている。なお、特許文献１に記載された発明以外にも、主エアバッグに加えて補助エアバッグを備えたサイドエアバッグ装置が提案されている。

　ところで、サイドエアバッグ装置は、シートのサイドサポート部の中に収容されるため、形状及び大きさの制約が多く、コンパクトにパッケージングすることが必要である。また、エアバッグを確実且つ、速やかに展開させることは常に重要な課題である。

　しかしながら、主エアバッグと補助エアバッグを備えたサイドエアバッグ装置においては、最初に展開を開始する補助エアバッグによって主エアバッグの姿勢が乱れ、主エアバッグの展開挙動に悪影響を及ぼす恐れがある。

　また、主エアバッグと補助エアバッグを別々に折り畳んで収容する場合には、折り畳まれた２つのバッグの塊がバラバラに分離しやすく、エアバッグモジュールとしての取り扱いが不便になるため、エアバッグ全体を覆うカバーを用いることがある。しかしながら、別部材としてカバーを設けるということは、製造工程の複雑化やコストアップになるという不都合がある。
 

特開２００９－０２３４９４号公報

　本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、エアバッグの展開速度を向上させることができるサイドエアバッグ装置及び、その製造方法を提供することを目的とする。

　本発明の他の目的は、エアバッグの適切な展開挙動を促進可能なサイドエアバッグ装置及び、その製造方法を提供することにある。特に、エアバッグの展開速度を低下させることなく、最適な展開挙動で確実に乗員を拘束可能なサイドエアバッグ装置及び、その製造方法を提供することにある。

　本発明の更に他の目的は、取り扱い（ハンドリング）が容易なサイドエアバッグ装置及び、その製造方法を提供することにある。
 

　本発明は、車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備える。前記エアバッグは、前記インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバに連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを含む。また、前記エアバッグが収容状態にあるときには、前記メインチャンバによって第１折り畳み部が形成され、前記プリプッシュチャンバによって第２折り畳み部が形成されるように構成される。そして、前記第１折り畳み部と前記第２折り畳み部とが重なる部分において、前記第１折り畳み部と前記プリチャンバの少なくとも一部とを結合する縫製部が形成され、前記縫製部は、前記エアバッグの展開時に破断するように構成される。

　本発明の他の態様は、車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置の製造方法であって、インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバと連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを準備する工程と；前記メインチャンバによって第１折り畳み部を形成する工程と；前記プリプッシュチャンバによって第２折り畳み部を形成する工程と；前記第１折り畳み部と前記第２折り畳み部とが重なる部分において、両方の折り畳み部を結合する縫製部を形成する工程とを含む。そして、前記縫製部は、前記エアバッグの展開時に破断するように構成される。

　上記のような本発明においては、主にメインチャンバによって形成される第１折り畳み部と、主にプリプッシュチャンバによって形成される第２折り畳み部とが重なる部分に、破断可能な縫製部が形成されているため、エアバッグの作動前の段階では第１折り畳み部と第２折り畳み部とが連結されており、エアバッグ全体を包囲するカバー等を用いなくても、両方の折り畳み部がバラバラになることがなく、取り扱いが容易になる。

　また、エアバッグの展開初期の段階で、メインチャンバが展開を開始するまでの間は、メインチャンバはプリプッシュチャンバに連結された状態を維持することになる。そのため、互いのチャンバ同士の相対的な姿勢（位置関係）及び、ブラケット等との位置関係を良好に保つことができる。例えば、ブラケットを反力面として利用するエアバッグにおいては、当該ブラケットに対するエアバッグの位置を適切に保つことができ、当該反力面を効果的に活用することができる。このように、本発明においては、エアバッグの展開速度が向上すると共に、エアバッグの展開形状の安定化が図れ、乗員の拘束性能が向上する。

　本発明の更に他の態様は、車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備える。前記エアバッグは、前記インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバに連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを含む。また、前記エアバッグが収容状態にあるときには、前記メインチャンバによって第１折り畳み部が形成され、前記プリプッシュチャンバによって第２折り畳み部が形成されるように構成される。前記エアバッグ及び前記インフレータを保持し、前記シートのシートフレームに固定されるブラケットを更に備え、前記ブラケットは、前記車両の進行方向（前方）を向く第１の面を含む。そして、少なくとも前記第２の折り畳み部の前記インフレータに近い部分は、前記ブラケットの前記第１の面上に配置される。

　本発明の上記態様においては、第１折り畳み部と第２折り畳み部とを破断可能な縫製部で連結する構造を採用しないが、少なくとも第２の折り畳み部のインフレータに近い部分がブラケットの第１の面上に配置されているため、エアバッグの展開初期の段階では、プリプッシュチャンバに対応する第２の折り畳み部が、ブラケットの前面を反力面として先行して展開することになる。このため、プリプッシュチャンバがある程度展開するまでは、メインチャンバ（第１の折り畳み部）は大きく展開することなく、プリプッシュチャンバに接近した状態を維持する。その結果、メインチャンバとプリプッシュチャンバとの相対的な姿勢（位置関係）及び、ブラケットとの位置関係を良好に保つことが可能となる。

　前記第２折り畳み部は、蛇腹折り状に成形することができる。また、前記第１折り畳み部は、ロール状に成形することができる。

　前記縫製部は、少なくとも、前記ロール状の前記第１折り畳み部の最外周層と、前記蛇腹折り状の前記第２折り畳み部の前記第１折り畳み部に最も近い層とを連結することが好ましい。

　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部を貫通することが好ましい。縫製部が第１折り畳み部を貫通することにより、ロール状の当該折り畳み部の展開前の姿勢を確実に保持することが可能となる。

　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロール中心からずれて貫通することが好ましい。縫製部がロール状の第１折り畳み部の中心を避けて貫通することにより、当該第１折り畳み部の展開遅延を生じるような事態を回避することができる。

　前記縫製部がエアバッグクッションを袋状に形成する外周縫製にかからないようにできれば、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロール中心の近傍で貫通するようにすることが好ましい。縫製位置を適切にコントロールすれば、外周縫製部に不要なダメージを与えることなく、折り畳み部の展開前の姿勢保持をより確実に行いながら、展開の遅延を生じるような事態を回避することができる。

　前記縫製部は、主にプリプッシュチャンバを含むＺ折り部分を除き、ロール部分のみに貫通することが好ましい。このように構成することにより、第１及び第２折り畳み部同士が適切な強度で連結され、エアバッグの展開遅延を生じるという事態を回避できる。

　前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するブラケットを更に備えることができる。

　前記ブラケットは、前記車両の進行方向（前方）を向く第１の面を含み、前記第１の折り畳み部及び前記第２折り畳み部が、前記ブラケットの前記第１の面上に配置されるように構成することができる。
　なお、第１の「面上」に配置されるとは、上下の関係での「上」に配置さることを意味するものではなく、当該面に寄り掛かる、接する、面する等の意味である。

　前記プリプッシュチャンバ及び前記メインチャンバは、前記ブラケットの前記第１の面を反力面として前方に向かって展開することが好ましい。

　なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向（車両の進行方向）を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。左右方向において、シートのサイドフレームより乗員側の領域を「内」とし、サイドフレームから見て乗員とは反対の領域を「外」を示すものとする。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。

　本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側（外側）に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプを含むものとする。シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
 

図１は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。 図２は、図１に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体（シートフレーム）を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置の図示は省略する。 図３は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、サイドエアバッグ装置が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を概略的に示す。 図４は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図３のＡ１－Ａ１方向の断面の一部に対応する。 図５は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグが展開した状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。 図６は、本発明に係るサイドエアバッグ装置に採用可能なエアバッグの構造を示す側面図であり、（Ａ）図が車両外側（乗員と反対側）から観察した様子を示し、（Ｂ）図が車両内側（乗員側）から観察した様子を示す。 図７（Ａ），（Ｂ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。 図８（Ａ），（Ｂ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。 図９（Ａ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。また、図９（Ｂ）は同図（Ａ）のＡ３－Ａ３方向の断面図である。 図１０（Ａ），（Ｂ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。 図１１（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の動作を示す概略断面図であり、（Ｃ）は図５のＡ２－Ａ２方向の断面に対応する。 図１２（Ａ）は、本発明の第２実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。また、図１２（Ｂ）は同図（Ａ）のＡ４－Ａ４方向の断面図である。 図１３（Ａ），（Ｂ）は、本発明の第２実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。 図１４（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）は、本発明の第２実施例に係るサイドエアバッグ装置の動作を示す概略断面図であり、（Ｃ）は図５のＡ２－Ａ２方向の断面に対応する。

  以下、本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置について、添付図面に基づいて説明する。

　図１は、本発明に係る車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置（エアバッグモジュール）２０の図示は省略する。図２は、図１に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体（シートフレーム）を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグ装置（エアバッグモジュール）２０の図示は省略する。図３は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、左側座席のドアに近い側面（ニアサイド）にエアバッグ装置（エアバッグモジュール）２０が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。

　本実施例に係る車両用シートは、部位として観たときには、図１及び図２に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション２と；背もたれを形成するシートバック１と、シートバック１の上端に連結されるヘッドレスト３とによって構成されている。

　図２に示すように、シートバック１の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム１ｆが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド１６（図４参照）が設けられ、当該パッド１６の表面は皮革、ファブリック等の表皮１４によって覆われている。シートクッション２の底側には着座フレーム２ｆが配置され、シートバック１と同様に、その上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮１４（図４）によって覆われている。着座フレーム２ｆとシートバックフレーム１ｆとは、リクライニング機構４を介して連結されている。

　シートバックフレーム１ｆは、図２に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム１０と、このサイドフレーム１０の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト３が構成される。

　図４は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図３のＡ１－Ａ１方向の断面の一部に対応する。サイドフレーム１０は、樹脂又は金属によって成形され、図４に示すようにＬ字断面形状又はコの字断面形状とすることができる。サイドフレーム１０はの内側（シート中心側）及び、前方側にエアバッグモジュール（サイドエアバッグ装置）２０が固定される。

　図４に示すように、シートバック１は、車幅方向側部（端部）において車両進行方向（車両前方）に膨出したサイドサポート部１２を備える。サイドサポート部１２の内部には、ウレタンパッド１６が配置され、ウレタンパッド１６の隙間にサイドエアバッグ装置２０が収容される。サイドエアバッグ装置２０は、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグ３３と；エアバッグ３３に対して膨張ガスを供給するインフレータ３０とを備える。

　シートバック１の表皮１４の継ぎ目１８，２２，２４は内側に織り込まれて縫製によって連結されている。なお、前方の継ぎ目１８は、エアバッグが展開した時に開裂するようになっている。

　圧縮されたエアバッグ３３は、ブラケット５２，５４を介してサイドフレーム１０に固定される。エアバッグ３３は、ファブリック製の柔軟なカバーによって覆われていても良い。なお、図４において、符号２５はドアトリムを示すものとする。

　ブラケット（５２，５４）は、縦方向に延びる平板状の第１プレート５４と、インフレータ３０に連結された２本のスタッドボルト３２が貫通し、サイドフレーム１０に直接固定される第２プレート５２とを備えている。このようなブラケットは、長手方向に垂直な断面で見たときに、第１プレート５４と第２プレート５２とが概ね直交するように配置され、これら第１プレート５４と、第２プレート５２とは、互いに溶接等によって連結される。

　ブラケットの第１プレート５４は、車両進行方向に面する第１の面５４ａを有し、収容状態におけるエアバッグ３３が、この第１の面５４ａに沿って配置される。この時、圧縮されたエアバッグ３３が車両進行方向に膨張・展開するときに第１プレート５４の第１の面５４ａが反力面となり、エアバッグ３３が前方に向かって確実且つ速やかに展開することになる。

　一方、ブラケットの第２プレート５２は、乗員側に面する第２の面５２ａを有し、エアバッグ３３の主にプリプッシュチャンバ３６の一部が当該第２の面５２ａ上に配置される。

　図５は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグが展開した状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。図６は、エアバッグ３３の構造を示す側面図であり、（Ａ）図が車両外側（乗員と反対側）から観察した様子を示し、（Ｂ）図が車両内側（乗員側）から観察した様子を示す。
　図５及び図６に示すように、エアバッグ３３は、サイドサポート部１２の前方に向かって展開するメインチャンバ３４と；メインチャンバ３４に先行して展開するプリプッシュチャンバ３６とを備える。

　メインチャンバ３４とプリプッシュチャンバ３６の仕切り部（境界部分）には、膨張ガスがプリプッシュチャンバ３６からメインチャンバ３４に流れ込む内部ベントホール（図示せず）が設けられている。

　メインチャンバ３４の前端部には、外部にガスを排気するための排気ベントＶ１，Ｖ２が形成されている。なお、メインチャンバ３４と同様に、プリプッシュチャンバ３６の前端部に、外部にガスを排気するための排気ベント少なくとも１つ形成することも可能である。

　メインチャンバ３４は、前方チャンバ３４Ｆと後方チャンバ３４Ｒとに仕切られており、図示しないベントホールを介して、後方チャンバ３４Ｒから前方チャンバ３４Ｆに膨張ガスが流れるようになっている。各チャンバ３４（３４Ｆ，３４Ｒ），３６は、縫製Ｓ１，Ｓ２，Ｓ３によって区画形成されている。

（第１実施例）
　図７（Ａ），（Ｂ）、図８（Ａ），（Ｂ）、図９（Ａ）、図１０（Ａ），（Ｂ）は、本発明の第１実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。なお、図７～図１０では、説明の便宜上インフレータ３０の図示を省略する。また、図中、「前」、「後」、「上」、「下」は、エアバッグ装置が実際にシートに搭載された場合（展開した場合）の方向を示すものである。

　エアバッグ３３を折り畳む際には、まず、インフレータ３０をプリプッシュチャンバ３６の開口４０から挿入し、少なくともガス排出孔（図示せず）が完全にプリプッシュチャンバ３６の内部に位置するように、当該インフレータ３０をセットする。

　本実施例においては、インフレータ３０をセットしたエアバッグ３３に対して、最初に図７（Ａ）に示すように、エアバッグ３３の下方を概ね前後方向に延びる折り線１０２に沿って上方に折り畳む。

　次に、図７（Ｂ）に示すように、エアバッグ３３の上方を、概ね前後方向に延びる折り線１０４に沿って下方に折り畳む。

　その後、図８（Ａ）に示すように、エアバッグ３３を表裏反転させる。続いて、図８（Ｂ）に示すように、エアバッグ３３の前方の下側の角部付近から、後ろ斜め上方に向かって、主にメインチャンバ３４に対応する部分のロールを開始し、初期ロール部１０６を形成する。

　次に、図９（Ａ）に示すように、主にメインチャンバ３４に対応する部分を完全に巻き上げ、ロール状の第１折り畳み部１０６Ｘを形成する。そして、図９（Ｂ）にも示すように、第１折り畳み部１０６Ｘを貫通するように、エアバッグの膨張展開時に破断可能な縫製部１０８を形成し、第１折り畳み部１０６Ｘ（メインチャンバ３４）とプリプッシュチャンバ３６のメインチャンバ３４側の端部とを連結する。

　縫製部１０８は、第１折り畳み部１０６Ｘを少し潰した状態でミシンによって縫い付けることで形成され、第１折り畳み部１０６Ｘの長手方向に平行に延びるようになっている。ここで、縫製部１０８は、第１折り畳み部１０６Ｘの中心からズレた位置を貫通するように形成される。

　なお、縫製部１０８の縫製位置は、ある程度の自由度はあるものの、少なくとも、ロール状の第１折り畳み部１０６Ｘの最外周層と、プリプッシュチャンバ３６（第２折り畳み部１１０Ｘ）の第１折り畳み部１０６Ｘに最も近い層とを連結する必要がある。ここで、縫製部１０８の縫製が、たとえば、メインチャンバとプリプッシュチャンバの外周縫製部分に侵入する部分を可能な限り小さくするように（好ましくは外周縫製部分に入らないように）できれば、当該縫製部が、ロール状の第１折り畳み部１０６Ｘの中心位置またはその近傍の位置を貫通するように形成されてもよい。

　次に、図１０（Ａ）に示すように、エアバッグ３３を再び表裏反転させ、主にプリプッシュチャンバ３６に対応する部分を、折り線１１０に沿って蛇腹状に折り畳むことで第２折り畳み部１１０Ｘを形成する。エアバッグ３３が完全に折り畳まれた状態が、図１０（Ｂ）である。このように折り畳まれたエアバッグ３３に対して、ブラケット５２、５４を取り付ける。具体的には、第２プレート５２にインフレータ３０のスタッドボルト３２を差し込むことになる。

（エアバッグの展開挙動）
　図１１（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）は、本発明に係るサイドエアバッグ装置の動作を示す概略断面図であり、図（Ｃ）は図５のＡ２－Ａ２方向の断面に対応する。まず、図１１（Ａ）に示すのは、エアバッグ装置にブラケット５２，５４をセットした状態であり、エアバッグ３３が展開する前の状態である。

　この状態では、主にプリプッシュチャンバ３６で構成される第２折り畳み部１１０Ｘは、蛇腹折り（Ｚ折り）されている。この時、縫製部１０８は、この蛇腹折りされている第２折り畳み部１１０Ｘには入っておらず、図９（Ｂ）で示したように、プリプッシュチャンバ３６のメインチャンバ側の端部までしか到達しないようにされている。エアバッグ装置が作動すると、インフレータ３０からのガスによって、最初に第２の折り畳み部１１０Ｘを形成するプリプッシュチャンバ３６が展開を開始する。プリプッシュチャンバ３６が展開すると、（Ｂ）に示すように、プリプッシュチャンバ３６がブラケット５４の前面５４ａを反力面として展開して、メインチャンバ３４を形成する第１折り畳み部１０６Ｘを前方に押し出す格好となる。このとき、縫製部１０８は、まだ破断していない。

　更にエアバッグ３３の展開が進むと、（Ｃ）に示すように、縫製部１０８が破断して、第１折り畳み部１０６Ｘのロールが解かれて、メインチャンバ３４が前方に大きく展開することになる。

　本実施例においては、主にメインチャンバ３４によって形成される第１折り畳み部１０６Ｘと、主にプリプッシュチャンバ３６によって形成される第２折り畳み部１１０Ｘとが重なる部分に、好ましくは、主にメインチャンバ３４によって形成される第１折り畳み部１０６Ｘと、主にプリプッシュチャンバ３６によって形成される第２折り畳み部１１０Ｘの第１折り畳み部１０６Ｘの端部側とが重なる部分に、破断可能な縫製部１０８が形成される。このように、第１折り畳み部１０６Ｘと第２折り畳み部１１０Ｘとの重なり部分で、縫製部１０８が形成することにより、エアバッグ３３の作動前の段階（Ａ）では、第１折り畳み部１０６Ｘと第２折り畳み部１１０Ｘとが連結されており、両方の折り畳み部１０６Ｘ，１１０Ｘを一体として扱うことができる。また、第１折り畳み部１０６Ｘと第２折り畳み部１１０Ｘとの連結が必要以上に維持されることなく、エアバッグ３３の展開速度を低下させる事態を回避できることになる。

　また、エアバッグ３３の展開初期の段階でプリプッシュチャンバ３６が展開を開始した時点まで、すなわち、メインチャンバ３４が展開を開始するまでの間は、メインチャンバ３４はプリプッシュチャンバ３６に連結された状態を維持することになる（Ｂ）。そのため、互いのチャンバ３４，３６同士の相対的な姿勢（位置関係）及び、ブラケット５４との位置関係を良好に保つことができる。すなわち、展開する際に反力面として利用されるブラケット５４ａに対する位置を適切な状態に保つことができ、当該反力面を効果的に活用することができる。

　以上のように、本実施例に係るエアバッグ装置によれば、エアバッグ３３の速やかな展開速度を阻害することなく、エアバッグ３３の展開形状の安定化が図れ、乗員の拘束性能が向上する。

（第２実施例）
　次に、本発明の第２実施例について、図９乃至図１２を参照して説明する。なお、第１実施例と第２実施例とは、共通する部分が多く、同一又は対応する構成要素には同一の参照符号を付し、重複した説明は省略する。

　第１実施例においては、エアバッグ３３の第１折り畳み部１０６Ｘと第２折り畳み部１１０Ｘとを破断可能な縫製（１０８）によって連結しているが、第２実施例においては縫製（１０８）を採用しない。

　図１２（Ａ）、図１３（Ａ），（Ｂ）は、本実施例に係るサイドエアバッグ装置の製造工程の一部を示す平面図である。なお、図１２（Ａ）までの製造工程（折り畳み工程）については、図７（Ａ），（Ｂ）、図８（Ａ），（Ｂ）に示す第１実施例と同様である。

　第１実施例と同様に、図８（Ｂ）に示す状態まで折り畳まれたエアバッグ３３は、次に、図１２（Ａ）に示すように、主にメインチャンバ３４に対応する部分が完全に巻き上げられ、ロール状の第１折り畳み部１０６Ｘが形成される。

　次に、図１３（Ａ）に示すように、エアバッグ３３を表裏反転させ、主にプリプッシュチャンバ３６に対応する部分を、折り線１１０に沿って蛇腹状に折り畳むことで第２折り畳み部１１０Ｘを形成する。エアバッグ３３が完全に折り畳まれた状態が、図１３（Ｂ）である。このように折り畳まれたエアバッグ３３に対して、ブラケット５２、５４を取り付ける。具体的には、第２プレート５２にインフレータ３０のスタッドボルト３２を差し込むことになる。

　図１４（Ａ），（Ｂ），（Ｃ）は、第２実施例に係るサイドエアバッグ装置の展開動作を示す概略断面図であり、図（Ｃ）は図５のＡ２－Ａ２方向の断面に対応する。図１４（Ａ）に示すのは、エアバッグ装置にブラケット５２，５４をセットした状態であり、エアバッグ３３が展開する前の状態である。この状態では、主にプリプッシュチャンバ３６で構成される第２折り畳み部１１０Ｘは、蛇腹折り（Ｚ折り）されている。

　エアバッグ装置が作動すると、インフレータ３０からのガスによって、最初に第２の折り畳み部１１０Ｘを形成するプリプッシュチャンバ３６が展開を開始する。（Ｂ）に示すように、プリプッシュチャンバ３６がブラケット５２の内面を反力面として内側（乗員側）に向かって展開するのと同時に、ブラケット５４の前面５４ａを反力面として、メインチャンバ３４を形成する第１折り畳み部１０６Ｘを前方に押し出すように展開する。

　更にエアバッグ３３の展開が進むと、図１４（Ｃ）に示すように、第１折り畳み部１０６Ｘのロールが解かれて、メインチャンバ３４が前方に大きく展開することになる。

　本実施例においては、第１の実施例のように第１折り畳み部１０６Ｘと第２折り畳み部１１０Ｘとを破断可能な縫製部（１０８）で連結する構造を採用しないが、少なくとも第２の折り畳み部１１０Ｘのインフレータに近い部分がブラケット５４の前面５４ａ上に配置されるため、エアバッグの３３展開初期の段階では、プリプッシュチャンバ３６に対応する第２の折り畳み部１１０Ｘが、ブラケット５４の前面５４ａを反力面として先行して展開することになる。そのため、プリプッシュチャンバ３６がある程度展開するまでは、メインチャンバ３４（第１の折り畳み部１０６Ｘ）は大きく展開することなく、プリプッシュチャンバ３４に接近した状態を維持する。その結果、メインチャンバ３４とプリプッシュチャンバ３６との相対的な姿勢（位置関係）及び、ブラケット５４との位置関係を良好に保つことが可能となる。

　本発明について実施例を参照して説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更可能なものである。例えば、上記実施例においては、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ（車両用シートの車両ドアから遠い側の面）や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両（ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両）等にも用いることが可能である。

Claims (19)

1. 　車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
   　膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；
   　前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備え、
   　前記エアバッグは、前記インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバに連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを含み、
   　前記エアバッグが収容状態にあるときには、前記メインチャンバを含んで第１折り畳み部が形成され、前記プリプッシュチャンバを含んで第２折り畳み部が形成されるように構成され、
   　前記第１折り畳み部と前記第２折り畳み部とが重なる部分において、前記第１折り畳み部と前記プリチャンバの少なくとも一部とを結合する縫製部が形成され、
   　前記縫製部は、前記エアバッグの展開時に破断するように構成されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
2. 　前記第２折り畳み部は、蛇腹折り状に成形されることを特徴とする請求項１に記載のサイドエアバッグ装置。
3. 　前記第１折り畳み部は、ロール状に成形されることを特徴とする請求項２に記載のサイドエアバッグ装置。
4. 　前記縫製部は、少なくとも、前記ロール状の前記第１折り畳み部の最外周層と、前記蛇腹折り状の前記第２折り畳み部の前記第１折り畳み部に最も近い層とを連結することを特徴とする請求項３に記載のサイドエアバッグ装置。
5. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部を貫通することを特徴とする請求項３または４に記載のサイドエアバッグ装置。
6. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロール中心からずれて貫通することを特徴とする請求項５に記載のサイドエアバッグ装置。
7. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロールの中心部の近傍で貫通することを特徴とする請求項５に記載のサイドエアバッグ装置。
8. 　車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置であって、
   　膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；
   　前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備え、
   　前記エアバッグは、前記インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバに連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを含み、
   　前記エアバッグが収容状態にあるときには、前記メインチャンバを含んで第１折り畳み部が形成され、前記プリプッシュチャンバを含んで第２折り畳み部が形成されるように構成され、
   　前記エアバッグ及び前記インフレータを保持し、前記シートのシートフレームに固定されるブラケットを更に備え、
   　前記ブラケットは、前記車両の進行方向（前方）を向く第１の面を含み、
   　少なくとも前記第２の折り畳み部の前記インフレータに近い部分は、前記ブラケットの前記第１の面上に配置されることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
9. 　前記プリプッシュチャンバ及び前記メインチャンバは、前記ブラケットの前記第１の面を反力面として前方に向かって展開することを特徴とする請求項８に記載のサイドエアバッグ装置。
10. 　前記第２折り畳み部は、蛇腹折り状に成形されることを特徴とする請求項８又は９に記載のサイドエアバッグ装置。
11. 　前記第１折り畳み部は、ロール状に成形されることを特徴とする請求項８又は９に記載のサイドエアバッグ装置。
12. 　車両用シートの内部に収容され、当該シートに着座している乗員を保護するサイドエアバッグ装置の製造方法であって、
    インフレータを内部に収容するプリプッシュチャンバと、前記プリプッシュチャンバと連結され、車両前方に向かって展開するメインチャンバとを準備する工程と；
    　主に前記メインチャンバを折り畳む第１折り畳み部を形成する工程と；
    　主に前記プリプッシュチャンバを折り畳む第２折り畳み部を形成する工程と；
    　前記第１折り畳み部と前記第２折り畳み部とが重なる部分において、前記第１折り畳み部と前記プリチャンバの少なくとも一部とを結合する縫製部を形成する工程とを含み、
    　　前記縫製部は、前記エアバッグの展開時に破断することを特徴とするサイドエアバッグ装置の製造方法。
13. 　前記第２折り畳み部は、蛇腹折り状に成形されることを特徴とする請求項１２に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
14. 　前記第１折り畳み部は、ロール状に成形されることを特徴とする請求項１２または１３に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
15. 　前記縫製部は、少なくとも、前記ロール状の前記第１折り畳み部の最外周層と、前記蛇腹折り状の前記第２折り畳み部の前記第１折り畳み部に最も近い層とを連結することを特徴とする請求項１４に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
16. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部を貫通することを特徴とする請求項１４または１５に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
17. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロール中心からずれて貫通することを特徴とする請求項１６に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
18. 　前記縫製部は、前記ロール状の前記第１折り畳み部のロール中心部の近傍で貫通することを特徴とする請求項１６に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
19. 　前記サイドエアバッグ装置は、前記エアバッグ及び前記インフレータを保持するブラケットを備え、
    　前記ブラケットは、前記車両の進行方向（前方）を向く第１の面を含み、
    　前記第１の折り畳み部及び前記第２折り畳み部が、前記ブラケットの前記第１の面上に配置されることを特徴とする請求項１２乃至１８の何れか１項に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法。
     

Images