JPH07205750A - 助手席用エアバッグ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 助手席用エアバッグ装置において、エアバッ
グのウインドシールド側を先に、乗員側を遅らせて展開
させることにより、エアバッグ膨張時の乗員方向への伸
長を減少させ、かつバッグの膨張をスムーズかつスピー
ディに行なわしめる。 【構成】 エアバッグ１のウインドシールド側１０と乗
員側１１とを夫々個別に蛇腹状に折り畳むと共に、上記
エアバッグ乗員側１１の蛇腹のひだを、エアバッグの所
定の展開圧力により破断する制御用縫製１２により縫合
し、エアバッグ乗員側１１の展開を上記ウインドシール
ド側１０に対し非対称に遅らせたことを特徴としてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、エアバッグの展開形状
の改良を図った助手席用エアバッグ装置に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】自動車の助手席に装備するためのエアバ
ッグ装置として、ほぼ四角錐の形状を有し、その頂部に
横に長い長方形の吹込み口を設けたエアバッグと、横長
円筒状のインフレータと、エアバッグケースとからな
り、該エアバッグケースの奥に上記インフレータを設置
し、その入口側に上記のエアバッグを畳んで収納し、そ
の吹込み口をエアバッグケースの開口部壁部に固定した
ものが知られている。

【０００３】図２の一部は、上記エアバッグの一例を示
し、このエアバッグ１は、長さ方向の中央部の幅を両端
よりも広く形成した帯状の本体布４をＵ字形に折曲し、
その左右の側縁にほぼ三角形の側面布５を縫着してほぼ
四角錐の形状に作られ、その頂部に設けた横長の長方形
の吹込み口６の横辺および縦辺にはそれぞれ４つの袋状
の取付け布９が取付けられ、また、側面布５にはベント
ホールＨが開けられている。

【０００４】ところで、従来のエアバッグ装置では、エ
アバッグのウインドシールド側（上部側）と乗員側（下
部側）の折り畳み方が同じであるために、これらウイン
ドシールド側と乗員側とが同時に展開を始め、これによ
りエアバッグの膨張途中にエアバッグが乗員方向に一時
的に伸長する。そのために、上記従来のエアバッグで
は、展開途中でのエアバッグの乗員との接触を避け、ま
たエアバッグを広く膨張させて乗員の拘束性能を上げる
ために、エアバッグの内側に展開形状規制用のストラッ
プを設けたり、エアバッグ装置のマウント位置を調整し
たりすることにより、エアバッグの展開方向やタイミン
グをコントロールしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のエアバッグでは、上記ストラップの存在によってコ
ストが上がると共に、折り畳んだエアバッグがかさ高に
なるという問題があり、展開のタイミングについても、
上記ストラップにテンションがかかるまではエアバッグ
展開の充分な遅延効果を得にくいとの事情がある。

【０００６】また、エアバッグ装置のマウント位置の調
整によるエアバッグの展開方向やタイミングのコントロ
ールは、車両のインスツルメントパネルやシステム全体
の大がかりなチューニングが必要となるという不都合が
ある。

【０００７】本発明は叙上の如き実状に対処し、展開コ
ントロール用の縫製をエアバッグに施すことにより、低
コストで簡単かつコンパクトに、この展開時の方向、タ
イミング、乗員拘束性の夫々を良好に達成することを目
的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】即ち、上記目的を達成す
る本発明エアバッグ装置の特徴は、エアバッグケースに
収納されるエアバッグのウインドシールド側と乗員側と
を夫々個別に蛇腹状に折り畳むと共に、上記エアバッグ
乗員側の蛇腹のひだを、エアバッグの所定の展開圧力に
より破断する制御用縫製により縫合し、エアバッグ乗員
側の展開を上記ウインドシールド側に対し非対称に遅ら
せたところにある。

【０００９】また、上記本発明装置において、上記ウイ
ンドシールド側の蛇腹のひだを、上記制御用縫製より破
断強度の低い第２制御用縫製により縫合し、ウインドシ
ールド側の展開も制御することが可能である。

【００１０】

【作用】上記本発明のエアバッグ装置では、制御用縫製
を施したエアバッグ乗員側が、展開時に上記制御用縫製
の糸が破断することでエネルギーが吸収され、ウインド
シールド側に比べて展開速度が遅くなる。

【００１１】即ち、上記エアバッグは、ウインドシール
ド側がウインドシールドに沿って先に展開し、乗員側の
折り畳みを引っ張りながらこの乗員側よりも早く膨張を
成長させ、このエアバッグのウインドシールド側が充分
膨張した段階で、エアバッグの乗員側が膨張を始める。
従って、本発明では、エアバッグのウインドシールド側
が先に展開し、次いで乗員側が展開していく段階的な展
開挙動を得ることができ、このことから、エアバッグが
充分に展開した状態で乗員を受容することが可能であ
り、これにより充分な乗員の拘束性能が得られるもので
ある。

【００１２】また、上記本発明においては、上記の如き
展開の方向やタイミングの調整を、上記制御用縫製をエ
アバッグに施すという簡便な手段によって図れると共
に、前記ストラップを省略または減じることにより、エ
アバッグを低コストで、しかもコンパクトなものとする
ことが可能である。

【００１３】

【実施例】以下、さらに添付図面を参照して、本発明の
実施例を説明する。

【００１４】図１は本発明実施例の助手席用エアバッグ
装置の断面図、図２は同分解斜視図であり、図２におい
て、１は展開状態のエアバッグ、２は上面開口型のエア
バッグケース、３は円筒状のインフレータを、また、各
図において矢印Ａは車両のウインドシールド、Ｂは乗員
側、さらに、Ｈはベントホールを夫々示している。

【００１５】エアバッグ１は、この例では、略Ｕ字状に
折曲された本体布４と、この本体布４の両側に夫々縫着
された２枚の側面布５とからなり、展開形状は、図２に
示すように、長方形のガス吹込み口６から乗員を受け止
める正面部７にかけて広がる概略四角錐状を呈してい
る。また、上記エアバッグのガス吹込み口６には、図１
に示す如きリテーナー８によって、このガス吹込み口６
をケース２の開口部２ａに固定する４つのリテーナー取
付部９が形成されている。

【００１６】エアバッグケース２は、図４に示す如くこ
の例では、車両のインストルメントパネルの上面にその
開口部を合わせて取り付けるものであり、車両に取付け
た状態では、このケース２の上方にはウインドシールド
Ｆ（フロントガラス）がくる。

【００１７】一方、本発明のこの実施例では、上記エア
バッグの折り畳みを、図１に示す如くエアバッグのウイ
ンドシールド側１０と乗員側１１とを夫々個別に蛇腹状
に折り畳むと共に、上記エアバッグ乗員側１１の蛇腹の
ひだを、エアバッグの所定の展開圧力により破断する制
御用縫製１２によって一連に縫合し、上記エアバッグ乗
員側１１の展開を上記ウインドシールド側１０に対し非
対称に遅らせるようにしている。

【００１８】また、図３は本発明他の実施例の助手席用
エアバッグ装置を示す断面図であり、この実施例では上
記エアバッグの折り畳みを、エアバッグのウインドシー
ルド側１０と乗員側１１とで、夫々が図示の如く２重ず
つの蛇腹状になるように折り畳むと共に、上記エアバッ
グ乗員側１１の蛇腹のひだを１つずつ、エアバッグの展
開圧力で破断する制御用縫製１２によって縫合し、この
エアバッグ乗員側１１の展開を上記ウインドシールド側
１０に対して非対称に遅らせるようにしている。

【００１９】この実施例では、上記蛇腹のひだを１つず
つ縫合することから、上記制御用縫製１２の糸の太さや
縫製のパターンを変えることによって個々の縫製に強弱
を付け、エアバッグ展開時の制御用縫製１２の破断を順
序づけし、エアバッグの展開形状をさらにコントロール
することもできる。

【００２０】なお、上記２つの実施例では、上記エアバ
ッグのウインドシールド側１０と乗員側１１とを１対１
の割合で、上記蛇腹状に折り分けているが、これ以外の
割合でも本発明の作用は達成される。

【００２１】しかして、上記本発明各実施例のエアバッ
グ装置においては、エアバッグ乗員側１１が、展開時に
上記制御用縫製１２の糸が破断することでエネルギーが
吸収され、ウインドシールド側１０に比べて展開速度が
遅くなる。

【００２２】即ち、上記エアバッグは、図５の（ａ）〜
（ｊ）に順に示すように、ウインドシールド側１０がウ
インドシールドＦに沿って先に展開し、乗員側１１の折
り畳みを引っ張りながらこの乗員側１１よりも早く膨張
を成長させ、このエアバッグのウインドシールド側１０
が充分膨張した段階で、エアバッグの乗員側１１が膨張
を始める。つまり、本発明では、エアバッグのウインド
シールド側１０が先に展開し、次いで乗員側１１が展開
していく段階的な展開挙動を得られることから、同図に
示す如くエアバッグが充分に展開した状態で乗員を受容
することが可能で、これにより充分な乗員の拘束性能を
得ることができる。

【００２３】以上、本発明の実施例を、車両のインスト
ルメントパネル上面に取着するエアバッグ装置を例にと
って説明したが、上記本発明の構成を、インストルメン
トパネルの縦面に取着する装置に適用しても上記の如き
作用効果は達成される。

【００２４】また、上記実施例では、エアバッグの乗員
側のみに制御用縫製を施したが、本発明の作用効果を妨
げない範囲において、エアバッグの他の部分、例えばウ
インドシールド側の蛇腹のひだ等にも、この制御用縫製
より破断強度の低い第２制御用縫製（図示せず）を施し
て、この第２制御用縫製によっても当該縫製部分の展開
制御を行うことが可能である。

【００２５】

【発明の効果】以上、説明したように、本発明の助手席
用エアバッグ装置は、エアバッグのウインドシールド側
と乗員側とを夫々個別に蛇腹状に折り畳むと共に、上記
エアバッグ乗員側の蛇腹のひだを、エアバッグの所定の
展開圧力により破断する制御用縫製により縫合し、エア
バッグ乗員側の展開を上記ウインドシールド側に対し非
対称に遅らせたものであり、蛇腹状に折り畳んだエアバ
ッグのウインドシールド側を先に膨張させ、次いで、こ
の膨張するウインドシールド側に乗員側が順次引き出さ
れるようになし、エアバッグの展開挙動を段階的にする
ことにより、膨張前のエアバッグの一時的な伸長を減少
させエアバッグの安定的な膨張を図れるとの顕著な効果
を奏するものである。

【００２６】しかも、上記本発明においては、上記エア
バッグ展開の調整を、上記制御用縫製を施すという簡便
な手段によって図れると共に、従来のストラップを省略
または減じることにより、エアバッグのコストを下げ、
かつコンパクト化するとの効果も有するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明第１実施例の助手席用エアバッグ装置の
断面図である。

【図２】同分解斜視図である。

【図３】本発明第２実施例の助手席用エアバッグ装置の
断面図である。

【図４】本発明第１実施例の助手席用エアバッグ装置を
車両に取付けた状態を示す断面図である。

【図５】（ａ）上記第１，第２の各実施例エアバッグの
展開挙動の第１段階を示す側面図である。 （ｂ）同実施例エアバッグの展開挙動の第２段階を示す
側面図である。 （ｃ）同実施例エアバッグの展開挙動の第３段階を示す
側面図である。 （ｄ）同実施例エアバッグの展開挙動の第４段階を示す
側面図である。 （ｅ）同実施例エアバッグの展開挙動の第５段階を示す
側面図である。 （ｆ）同実施例エアバッグの展開挙動の第６段階を示す
側面図である。 （ｇ）同実施例エアバッグの展開挙動の第７段階を示す
側面図である。 （ｈ）同実施例エアバッグの展開挙動の第８段階を示す
側面図である。 （ｉ）同実施例エアバッグの展開挙動の第９段階を示す
側面図である。 （ｊ）同実施例エアバッグの展開挙動の第１０段階を示
す側面図である。

【符号の説明】

１ エアバッグ ２ エアバッグケース ２ａ ケース開口部 ３ インフレータ ４ 本体布 ５ 側面布 ６ エアバッグのガス吹込み口 ７ 正面部 ８ リテーナー ９ リテーナー取付部 １０ エアバッグのウインドシールド側 １１ エアバッグの乗員側 １２ 制御用縫製

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 櫻井 巧理 大阪府茨木市西中条町５番７号 東洋ゴム 工業株式会社技術開発研究所内 (72)発明者 中山 一弘 大阪府茨木市西中条町５番７号 東洋ゴム 工業株式会社技術開発研究所内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 エアバッグケースの内部にインフレータ
   と折り畳んだエアバッグとを収納してなる助手席用エア
   バッグ装置において、エアバッグのウインドシールド側
   と乗員側とを夫々個別に蛇腹状に折り畳むと共に、上記
   エアバッグ乗員側の蛇腹のひだを、エアバッグの所定の
   展開圧力により破断する制御用縫製により縫合し、エア
   バッグ乗員側の展開を上記ウインドシールド側に対し非
   対称に遅らせたことを特徴とする助手席用エアバッグ装
   置。
2. 【請求項２】 上記ウインドシールド側の蛇腹のひだ
   を、上記制御用縫製より破断強度の低い第２制御用縫製
   により縫合した請求項１記載の助手席用エアバッグ装
   置。