JP6790024B2 - サイドエアバッグ装置及び、これを備えた車両用シート - Google Patents

サイドエアバッグ装置及び、これを備えた車両用シート Download PDF

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Description

本発明は、サイドエアバッグ装置を備えた車両用シートに関する。
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、サイドエアバッグ装置及び、これを備えた車両用シートに関するものである。
下記特許文献1に記載されたサイドエアバッグ装置は、主エアバッグと補助エアバッグとを備えている。そして、主エアバッグに先行して補助エアバッグを膨張展開させることにより、乗員を早期に拘束するようにしている。特許文献1に記載された発明以外にも、主エアバッグに加えて補助エアバッグを備えたサイドエアバッグ装置が提案されている。このようなサイドエアバッグ装置においては、設置領域における制約が大きいため、装置のコンパクト化の要請が強い。
また、展開速度の向上や展開挙動、展開形状の安定化による適切な乗員保護性能が要求される。
特開2009−023494号公報
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、速やか且つ適切に乗員を拘束可能なサイドエアバッグ装置及び、これを備えた車両用シートを提供することを目的とする。
また、装置のコンパクト化に寄与するサイドエアバッグ装置及びこれを備えた車両用シートを提供することを他の目的とする。
以下、明細書、特許請求の範囲、および図面においては、次のように方向を規定するものとする。乗員がシートバックに当該乗員の背中の大部分が接触するように正常な着座姿勢で着座した場合に、当該乗員の胴体が向く方向を「前」とし、その反対方向を「後」とする。また当該前後方向に対して直交する方向で、乗員の右手方向を「右」とし、左手方向を「左」とする。この左右方向において、シートのサイドフレームより乗員側の領域を「内」とし、サイドフレームから見て乗員とは反対の領域を「外」を示すものとする。
上記目的を達成する本発明に係る車両用シートは、座面を形成するシートクッションと、背もたれを形成するとともに、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部を有するシートバックとを有する車両用シートに適用される。当該車両用シートは、前記サイドサポート部の内部に配置され、水平断面を上方から見たときに車両進行方向に沿って延びるフレーム側壁部と;前記サイドサポート部の内部に配置され、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと、前記フレーム側壁部の車両幅方向内側に設けられ、前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備えたサイドエアバッグ装置とを備える。
ここで、前記エアバッグは、前記サイドサポート部の前方に向かって展開する第1チャンバと;前記インフレータを収容し、前記第1チャンバの車幅方向内側で当該第1チャンバに先行して展開を開始する第2チャンバとを備える。前記第1チャンバと前記第2チャンバの仕切り部には、前記膨張ガスが前記第2チャンバから前記第1チャンバに流れ込む内部ベントホールが設けられる。前記第2チャンバは、上部領域及び下部領域と、当該上部領域及び下部領域との間に位置する中間領域とを含む。そして、前記上部領域及び下部領域の少なくとも一方が、前記中間領域よりも車両前方に突出して展開するように構成する。
ここで、「上部領域」は、例えば、AM50ダミーの上腕と頭部の間または、胸部と頭部の間の所定の場所を含むように設けられることができ、プリプッシュ機能と乗員保護機能の両方を備えることが可能となる。好ましくは、AM50ダミーの頭部を保護する所定箇所を含むように設けられる。また、「下部領域」は、例えば、AM50ダミーの腰部を保護する所定箇所を含むように設けることができる。
上記のような構成の本発明によれば、エアバッグ装置の作動初期の段階においてサイドサポート部の内部で第2チャンバが展開し、乗員が車両幅方向外側に移動するのを速やかに拘束することが可能となる。
また、サイドサポート部が乗員側に向かって突出変形し、乗員を車両幅方向内側に向かって押しつけるような格好となるため、乗員を背中方向から斜め前方に押し出すような力の発生を回避し又は最小限に抑制することができ、シートベルトを引き出す方向への乗員の移動を避けることが可能となる。すなわち、乗員への加害性を抑え、拘束性能を最大限に発揮することができる。
前記上部領域及び下部領域の両方が、前記中間領域よりも車両前方に突出して展開するように構成することができる。例えば、前記第2チャンバは、乗員側から見た時に、前記中間領域が後方に凹んだコの字又はC字状とすることができる。この時、前記第2チャンバの前記上部領域が乗員の頭部付近に位置することにより、傷害の発生し易い頭部を速やかに拘束することができる。また、前記下部領域が乗員の腰部付近に位置することにより、人間の身体における重心に近い腰部を押すことにより、事故発生時の初期段階における乗員拘束性能が向上する。
前記内部ベントホールについては、少なくとも前記第2チャンバの前記上部領域及び下部領域に形成し、更に好ましくは、中間領域に形成する。このような構成により、第2チャンバから第1チャンバへの膨張ガスの流れがスムーズになる。
前記第2チャンバの前記上部領域及び前記下部領域の前端部が、前記第1チャンバの前端部の位置と概ね一致するように構成することができる。この場合、第1チャンバ及び第2チャンバを含むエアバッグ全体の展開形状・展開挙動が安定するというメリットがある。
また、前記第2チャンバの前記上部領域及び前記下部領域の前端部が、前記第1チャンバの前端部よりも前方に突出するように構成することができる。この場合、エアバッグの展開初期の段階で、第2チャンバにより乗員の頭部及び腰部を広い範囲で確実に拘束することが可能となる。
更には、前記第1チャンバの前端部が、前記第2チャンバの前記上部領域及び前記下部領域の前端部よりも前方に突出する構成とすることができる。この場合、第2チャンバの容量が小さくなり、第1チャンバの速やかな展開を促進することができる。
前記第2チャンバ内部で前記インフレータを包囲し、前記膨張ガスの流れを規制する整流部材を更に備えることができる。整流部材により、第2チャンバへの膨張ガスの流れを制御することができる。特に、前記整流部材の上端部及び下端部に前記インフレータから放出された前記膨張ガスを上下方向に導く開口を備えることにより、第2チャンバの上部領域及び下部領域に速やかにガスを供給することができる。
前記第2チャンバは、同一形状の2枚のパネルを重ね合わせ、周囲を縫製することによって作製することができる。この場合、上部領域及び下部領域の形成を簡素な構造で達成することが可能となる。すなわち、各上部領域及び下部領域を予め形取った2枚のパネルを使用することで、容易に第2チャンバを作製することができる。また、これら2枚のパネルの前縁部に縦方向に延びるバッフルプレートを介在させることにより、第2チャンバの幅(厚み)を増すことができるほか、当該バッフルプレートに排気用のベントホールを容易に形成することができる。
前記第1チャンバと前記第2チャンバとは、垂直方向において上端部と下端部が概ね一致するように成形することができる。このような形状、構成とすることにより、第1チャンバ及び第2チャンバを含むエアバッグの全体の形状が安定するというメリットがある。
前記第2チャンバを、車両側方から見て前記フレーム側壁部に重なって展開するように設けることができる。この場合、フレーム側壁部が第2チャンバ展開時の反力を受け止めた状態で、確実にシート中心側に向かって展開する。展開後においても、乗員からの圧力をフレーム側壁部で受け止めることができ、乗員をシート中心方向に対して確実に拘束することが可能となる。
一方、第1チャンバが車両側方から見てフレーム側壁部に重ならないように展開するように構成することができる。この場合、第1チャンバがサイドフレームや第2チャンバによって展開を阻害されることなく、速やか且つスムーズに展開可能となる。
なお、本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側(外側)に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプを含むものとする。シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
図1は、本発明に係る車両用シートに使用される車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。 図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。 図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグユニットが収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。 図4は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1−A1方向の断面の一部に対応する。 図5(A)は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグが展開した状態を車幅方向の外側(乗員の反対側)から観察した様子を示す。図5(B)は、エアバッグの展開状態を示す正面図であり、進行方向前方から後方を見た様子である。 図6は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の構造を示す断面図であり、(A)が図5(A)のA1−A1方向、(B)が図5(A)のA2−A2方向、(C)が図5(A)のA3−A3方向の断面に各々対応する。 図7は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置に使用されるエアバッグの圧縮前の状態を示す平面図であり、(A)が内側(乗員側)から見た様子、(B)が外側(乗員の反対側)から見た様子を示す。 図8は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置に使用されるエアバッグの第2チャンバを構成するパネル構造を示す説明図である。 図9(A),(B)は、本発明の第1実施例に係るサイドエアバッグ装置に使用されるエアバッグの第1チャンバを構成するパネル構造を示す説明図である。 図10は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の展開状態を示す説明図(断面図)であり、(A)が展開初期、(B)が展開後期の状態を示す。 図11は、本発明の第2実施例に係るエアバッグ装置におけるエアバッグの展開状態を示す説明図であり、図5(A)のA1−A1方向の断面に対応する。 図12は、本発明の第2実施例に係るサイドエアバッグ装置に使用されるエアバッグの圧縮前の状態を示す平面図であり、(A)が内側(乗員側)から見た様子、(B)が外側(乗員の反対側)から見た様子を示す。 図13は、本発明の変形例を示す平面図である。
本発明の実施形態に係るサイドエアバッグ装置を搭載した車両用シートについて、添付図面に基づいて説明する。なお、乗員がシートバックに当該乗員の背中の大部分が接触するように正常な着座姿勢で着座した場合に、当該乗員の胴体が向く方向を「前」とし、その反対方向を「後」とする。また当該前後方向に対して直交する方向で、乗員の右手方向を「右」とし、左手方向を「左」とする。この左右方向において、シートのサイドフレームより乗員側の領域を「内」とし、サイドフレームから見て乗員とは反対の領域を「外」を示すものとする。
図1は、本発明に係る車両用シートに使用される車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグ装置(20)の図示は省略する。図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、エアバッグ装置(20)の図示は省略する。図3は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、車両用シートのドアに近い側面(ニアサイド)にエアバッグ装置20が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
本発明は、車両シートと、当該シートに収容されるサイドエアバッグ装置(20)とを備えた車両用シートである。本実施例に係る車両シートは、部位として観たときには、図1及び図2に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と、シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とによって構成されている。
シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮14によって覆われている。シートクッション2の底側には着座フレーム2fが配置され、その上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッドが設けられ、当該パッドの表面は皮革、ファブリック等の表皮14(図4)によって覆われている。着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
シートバックフレーム1fは、図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト3が構成される。
図4は、本発明に係る車両用シートの構造を示す断面図であり、図3のA1−A1方向の断面の一部に対応する。サイドフレーム10は、樹脂又は金属によって成形され、図4に示すようにL字断面形状又はコの字断面形状とすることができる。サイドフレーム10は、水平断面を上方から見たときに車両進行方向に沿って延びるフレーム側壁部10aを備えている。そして、このフレーム側壁部10aの内側(シート中心側)にエアバッグモジュール(サイドエアバッグ装置)20が固定される。
図4に示すように、シートバック1は、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部12を備える。サイドサポート部12の内部には、ウレタンパッド16が配置されていない隙間にサイドエアバッグ装置20が収容される。サイドエアバッグ装置20は、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグ(34,36)と;エアバッグ(34,36)に対して膨張ガスを供給するインフレータ30とを備える。
シートバック1の表皮14の継ぎ目18,22,24は内側に織り込まれて縫製によって連結されている。なお、前方の継ぎ目18は、エアバッグが展開した時に開裂するようになっている。
また、サイドサポート部12には、第2チャンバ36(図5,図6参照)の膨張によってサイドサポート部12が乗員側に折れ曲がる際の起点となる起点領域26が形成されている。起点領域26としては、切り込み、凹部又は薄肉領域の何れか又は組み合わせとすることができる。起点領域26は、サイドサポート部12内部のウレタン16部分にのみ形成されていても良い。また、起点領域26を省略することも可能である。
エアバッグ(34,36)は、ファブリック製の柔軟なカバー20aによって覆われている。第1チャンバ34と第2チャンバ36との関係において、エアバッグ(34,36)は蛇腹状に折り畳むもしくはロールする(「折り畳み」にはロールすることも含む)他、適宜最適な圧縮方法を採用することができる。図4において、符号25はドアトリムを示す。詳細に図示していないが、エアバッグが折り畳まれた収納状態においては、膨張展開時の位置関係を保持するように、平らに広げた平面状態で重なるようにして、第2チャンバと第1チャンバとが一体的に折り畳まれる。第2チャンバと第1チャンバとが個別的に折り畳まれる場合は、折り畳まれた第2チャンバ部分は、折り畳まれた第1チャンバ部分よりも、インフレータに近い位置に配置されるか、もしくは、折り畳まれた第1チャンバ部分とサイドフレームとの間に配置されてもよい。すなわち、折り畳まれた第2チャンバは、折り畳まれた第1チャンバに対して乗員側に配置されてもよい。
図5(A)は、本発明に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグ(34,36)が展開した状態を車幅方向の外側(乗員と反対側)から観察した様子を示す。図5(B)は、エアバッグ(34,36)の展開状態を示す正面図であり、車両前方から見た様子を示す。図6は、本発明の第1実施例に係るエアバッグ装置の構造を示す断面図であり、(A)が図5(A)のA1−A1方向、(B)が図5(A)のA2−A2方向、(C)が図5(A)のA3−A3方向の断面に各々対応する。図7は、エアバッグ(34,36)の圧縮前の状態を示す平面図であり、(A)が内側から見た様子、(B)が外側から見た様子を示す。
図5(A)に示すように、エアバッグ(34,36)は、サイドサポート部12の前方に向かって展開する第1チャンバ34と;第1チャンバ34の車幅方向内側で展開する第2チャンバ36とを備える。
図6(A),(B),(C)に示すように、第2チャンバ36は、基本的に、車両側方から見てフレーム側壁部10aに重なるように展開するようになっている。一方、第1チャンバ34は、車両側方から見てフレーム側壁部10aに重ならないように展開するようになっている。
第1チャンバ34は、前方に位置する比較的容量の小さな前方チャンバ34Fと、後方に位置する比較的容量の大きな後方チャンバ34Rとから構成されている。図6(B)に示すように、前方チャンバ34Fと後方チャンバ34Rとは、内部ベントV34c、V34dによって流体連通しており、後方チャンバ34Rから前方チャンバ34Fに膨張ガスが流れるようになっている。また、図5(B)に示すように、前方チャンバ34Fの前端部には、外部にガスを排気するための排気ベントV34a,V34bが設けられている。
先にも述べたように、図6(A),(B),(C)に示す通り、エアバッグ(34,36)は、シートのサイドサポート部12の前方に向かって展開する第1チャンバ34と;インフレータ30を収容し、第1チャンバ34の車幅方向内側で当該第1チャンバ34に先行して展開を開始する第2チャンバ36とから構成される。また、図5(A)及び図6(A),(B)に示すように、第1チャンバ34と第2チャンバ36の仕切り部(境界部分)には、膨張ガスが第2チャンバ36から第1チャンバ34に流れ込む内部ベントV1,V2が設けられている。
先にも述べたように、図6(A),(B),(C)に示す通り、第2チャンバ36は、車両側方から見てフレーム側壁部10aに重なって展開する。この場合、フレーム側壁部10aが第2チャンバ36展開時の反力を受け止めた状態で、確実にシート中心側に向かって展開する。展開後においても、乗員からの圧力をフレーム側壁部10aで受け止めることができ、乗員をシート中心方向に対して確実に拘束することが可能となる。
一方、第1チャンバ34は車両側方から見てフレーム側壁部に重ならないように展開する。このため、第1チャンバ34がサイドフレーム10や第2チャンバ36によって展開を阻害されることなく、速やか且つスムーズに展開可能となる。
図7に示すように、第2チャンバ36は、上部領域36U及び下部領域36Lと、当該上部領域36U及び下部領域36Lとの間に位置する中間領域36Mとに区分することができる。ここで、上部領域36U及び下部領域36Lの少なくとも一方が、中間領域36Mよりも車両前方に突出して展開するように構成されている。なお、実施例においては、上部領域36U及び下部領域36Lの両方が、中間領域36Mよりも車両前方に突出して展開するように構成されているが、第1チャンバ34の形状等に応じて、何れか一方のみが突出した形態を採ることもできる。
本実施例においては、第2チャンバ36は、乗員側から見た時に、中間領域が後方に凹んだコの字又はC字状とすることができる。エアバッグが展開した場合、第2チャンバ36の上部領域36Uが乗員の頭部付近に位置し、傷害の発生し易い頭部を速やかに拘束することができる。また、下部領域36Lが乗員の腰部付近に位置し、人間の身体における重心に近い腰部を押すことにより、事故発生時の初期段階における乗員拘束性能が向上する。
第2チャンバ36の上部領域36U及び下部領域36Lの前端部は、第1チャンバ34の前端部の位置と概ね一致するように成形されている。この場合、第1チャンバ34及び第2チャンバ36を含むエアバッグが一体的な構造となり、全体の展開形状が安定するというメリットがある。
なお、図13(A)に示すように、第2チャンバ36の上部領域36U及び下部領域36Lの前端部が、第1チャンバ34の前端部よりも前方に突出するように構成することもできる。この場合、エアバッグの展開初期の段階で、第2チャンバ36により乗員の頭部及び腰部を広い範囲で確実に拘束することが可能となる。
あるいは、図13(B)に示すように、第1チャンバ34の前端部が、第2チャンバ36の上部領域36U及び下部領域36Lの前端部よりも前方に突出する構成とすることもできる。この場合、第2チャンバ36の容量が相対的に小さくなり、第2チャンバ36内のガスが速やかに第1チャンバ34に流れ込み、第1チャンバ34の速やかな展開を促進することができる。
再び図7を参照すると、第1チャンバ34と第2チャンバ36とは、垂直方向において上端部と下端部が概ね一致するように成形されている。このような形状、構成とすることにより、第1チャンバ34及び第2チャンバ36を含むエアバッグの全体の形状、展開挙動が安定するというメリットがある。
図8は、第2チャンバ36を構成するパネル構造を示す説明図である。第2チャンバ36は、同一形状の2枚のパネル136a,136bを重ね合わせ、周囲を縫製することによって作製することができる。このように、上部領域36U及び下部領域36Lを予め形取った2枚のパネルを使用することで、容易に第2チャンバ36を作製することができる。
第2チャンバ36において、第1チャンバ34と連結される外側のパネル136bには、2つのベント開口V1a,V2aが形成されている。ベント開口V1aは、下部領域36Lに対応した位置に形成される。また、ベント開口V2aは、中間領域36Mに対応する位置に形成される。このように、ベント開口V1a,V2aを分散して配置することにより、第2チャンバ36から第1チャンバ34への膨張ガスの流れがスムーズになる。
図9(A),(B)は、第1チャンバ34を構成するパネル構造を示す説明図である。第1チャンバ34は、同一形状の2枚のパネル134a,134bを重ね合わせ、周囲を縫製することによって作製することができる。そして、第2チャンバ36と連結される内側のパネル134aには、2つのベント開口V1b,V2bが形成されている。これらの開口は、それぞれ、第2チャンバ36の、ベント開口V1a,V2a(図8参照)に対応し、重ね合わせられた開口部の周囲を縫製することで内部ベントV1,V2(図5(A)参照)が形成される。
2枚のパネル136a,136bの破線で示された部分には、縦方向に延びるバッフルプレート134cが連結される。これにより、図5(A),(B)及び図6(B),(C)に示すように、第1チャンバ34を前方チャンバ34Fと後方チャンバ34Rとに区画するようになっている。
図10は、第1実施例に係るエアバッグ装置の展開状態を示す説明図(断面図)であり、(A)が展開初期、(B)が展開後期の状態を示す。図10(A)に示すように、上記のような構成の本発明の第1実施例においては、エアバッグ装置20の作動初期の段階においてサイドサポート部12の内部で第2チャンバ36が展開し、シート表皮14が縫製部18から開裂しながらサイドサポート部12の先端側が領域26を起点として車内側に折れ曲がりまたは突出するように変形し、乗員を車両幅方向内側に押すように拘束する。
第2チャンバ36の展開により、サイドサポート部12の前側部分が乗員側に向かって突出変形するため、乗員を背中方向から斜め前方に押し出すような力の発生を回避し又は最小限に抑制することができ、シートベルトを引き出す方向への乗員の移動を避けることが可能となる。すなわち、乗員への加害性を抑え、拘束性能を最大限に発揮することができる。
つづいて、図10(B)に示すように、エアバッグ(34,36)が更に膨張すると、第1チャンバ34が車両前方に向かってフル展開し、衝突時の乗員の保護をする。
本実施例においては、図5(B)及び図7(A)に示すように、第2チャンバ36が前方に突出した上部領域36Uと、下部領域36Lとを備えているため、エアバッグ装置が作動を開始してから早い段階で乗員の頭部及び腰部を拘束することが可能となる。また、第2チャンバ36の容量増大を最小限に抑えながら、エアバッグの全体形状を展開初期の段階で確保することができるという利点がある。
図11は、本発明の第2実施例に係るサイドエアバッグ装置におけるエアバッグの展開状態を示す説明図であり、図5(A)のA1−A1方向の断面に対応する。図12は、第2実施例に係るサイドエアバッグ装置に使用されるエアバッグの圧縮前の状態を示す平面図であり、(A)が内側から見た様子、(B)が外側から見た様子を示す。本実施例は、第1実施例と共通する部分が多いため、同一又は対応する構成要素については共通の符号を付し、重複した説明を避け、相違点を中心に説明する。
本実施例においては、インフレータ30を包囲し、膨張ガスの流れを規制する、例えばチューブ状の整流部材200が第2チャンバ36の内部に設けられている。これによって、第2チャンバ36への膨張ガスの流れを制御可能となっている。そして、整流部材200の上端部及び下端部に、インフレータ30から放出されたガスを上下方向に導く開口を設け、第2チャンバ36の上部領域36U及び下部領域36Lに速やかにガスを供給することができる。
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。例えば、発明を実施するための形態では、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアから遠い側の面)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。

Claims (14)

  1. 座面を形成するシートクッションと、背もたれを形成するとともに、車幅方向側部(端部)において車両進行方向(車両前方)に膨出したサイドサポート部を有するシートバックとを有する車両用シートにおいて、
    前記サイドサポート部の内部に配置され、水平断面を上方から見たときに車両進行方向に沿って延びるフレーム側壁部と;
    前記サイドサポート部の内部に配置され、膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと、前記フレーム側壁部の車両幅方向内側に設けられ、前記エアバッグに対して膨張ガスを供給するインフレータとを備えたサイドエアバッグ装置とを備え、
    前記エアバッグは、前記サイドサポート部の前方に向かって展開する第1チャンバと;前記インフレータを収容し、前記第1チャンバの車幅方向内側で当該第1チャンバに先行して前記サイドサポート部の前方に向かって展開を開始する第2チャンバとを備え、
    前記第1チャンバと前記第2チャンバの仕切り部には、前記膨張ガスが前記第2チャンバから前記第1チャンバに流れ込む内部ベントホールが設けられ、
    前記第2チャンバは、上部領域及び下部領域と、当該上部領域及び下部領域との間に位置する中間領域とを含み、
    前記上部領域及び下部領域の少なくとも一方が、前記中間領域よりも車両前方に突出して展開するように構成され
    前記第2チャンバの前端部が、前記第1チャンバの前端部の位置と概ね一致し、
    前記第1チャンバと前記第2チャンバとは、垂直方向において上端部と下端部が概ね一致するように成形されており
    前記上部領域と前記下部領域の少なくとも一方が、乗員を展開初期の段階で拘束可能に構成されていることを特徴とする車両用シート。
  2. 前記上部領域及び下部領域の両方が、前記中間領域よりも車両前方に突出して展開するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  3. 前記第2チャンバは、乗員側から見た時に、前記中間領域が後方に凹んだコの字又はC字状に展開することを特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
  4. 展開状態において、前記第2チャンバの前記上部領域が乗員の頭部付近に位置し、前記下部領域が乗員の腰部付近に位置することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両用シート。
  5. 前記内部ベントホールが、複数形成されていることを特徴とする請求項2、3又は4に記載の車両用シート。
  6. 前記第1チャンバは、同一形状の2枚のパネルを重ね合わせ、中間部分に縦方向に延びるバッフルプレートを介して、周囲を縫製することによって、前方チャンバと後方チャンバとに区画されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用シート。
  7. 展開状態の前記エアバッグを車両幅方向の側部から見たときに、前記バッフルプレートは前記第2チャンバの前縁部に沿って配置されることを特徴とする請求項6に記載のエアバッグ装置。
  8. 前記第2チャンバの前記上部領域及び前記下部領域の前端部が、前記第1チャンバの前端部よりも前方に突出していることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の車両用シート。
  9. 前記第1チャンバの前端部が、前記第2チャンバの前記上部領域及び前記下部領域の前端部よりも前方に突出していることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の車両用シート。
  10. 前記第2チャンバ内部で前記インフレータを包囲し、前記膨張ガスの流れを規制する整流部材を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の車両用シート。
  11. 前記整流部材は、前記インフレータから放出された前記膨張ガスを上下方向に導く開口を上端部及び下端部に備えたことを特徴とする請求項10に記載の車両用シート。
  12. 前記第2チャンバは、同一形状の2枚のパネルを重ね合わせ、周囲を縫製することによって作製されることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の車両用シート。
  13. 前記第2チャンバは、車両側方から見て前記フレーム側壁部に重なって展開するように設けられ、
    前記第1チャンバは、車両側方から見て前記フレーム側壁部に重ならないで展開するように設けられることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の車両用シート。
  14. 請求項1乃至13の何れか一項に記載の車両用シートに装備されるサイドエアバッグ装置。
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