WO2019069796A1

WO2019069796A1 - エアバッグ装置

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Publication number: WO2019069796A1
Application number: PCT/JP2018/036067
Authority: WO
Inventors: 森田　和樹; 圭祐本間; 竜ノ佑立和名
Original assignee: オートリブディベロップメントエービー; 森田　和樹; 圭祐本間; 竜ノ佑立和名
Priority date: 2017-10-05
Filing date: 2018-09-27
Publication date: 2019-04-11
Also published as: US11235731B2; JP6876817B2; JP7054422B2; CN111094078A; JP2021098517A; JPWO2019069796A1; CN111094078B; US20200331420A1

Abstract

【課題】エアバッグの展開形状を適切に制御することにより、乗員の拘束性能を向上させることを課題とする。また、ステアリングホイールやインストルメントパネルに接近している乗員へのダメージを低減することを他の課題とする。【解決手段】本発明に係るエアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器と；前記膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；前記エアバッグの内部に設けられ、前記膨張ガスの流れを制御するディフューザとを備える。そして、前記乗員に向かう方向を第１の方向としたときに、前記ディフューザは、前記第１の方向において前記ガス発生器と前記エアバッグとの間に配置され、前記ガス発生器から放出された膨張ガスを受ける受け面と；一端が前記受け面の縁に連結され、他端が前記ガス発生器に直接または間接的に連結された複数の帯状の連結部材とを備えている。

Description

エアバッグ装置

　本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、特に、乗員の前方で展開するフロントエアバッグ装置に関する。

　車両の事故発生時に乗員を保護するために１つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、自動車のステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆるドライバエアバッグや、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグや、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員の側部（シートの側部）で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。

　ドライバエアバッグ装置や助手席の乗員を保護する助手席用エアバッグ装置のような所謂フロントエアバッグ装置においては、エアバッグの速やかな展開によって乗員を拘束することと、当該エアバッグに進入してきた乗員のダメージを低減することが要求される。

　ところで、体格の小さな運転手の場合など、運転姿勢によっては運転手がステアリングホイールに接近する場合がある。このような状況においては、エアバッグがステアリングホイールから運転手側に飛び出して展開した際に、運転手に大きなダメージを与える恐れがある。また、ステアリングホイールと保護すべき運転手との間に十分なスペースを確保できないために、エアバッグがステアリングホイールに平行な面内で速やかに広がらない場合がある。その結果、運転手の胸部や頭部の速やかな拘束に悪影響を及ぼし、傷害値が悪化する恐れがある。このような問題は、助手席用のエアバッグ装置においても、インストルメントパネルに接近して着座している乗員に対して同様に起こり得るものである。

　本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、エアバッグの展開挙動・形状を適切に制御することにより、乗員の拘束性能を向上させることを目的とする。

　本発明の他の目的は、ステアリングホイールやインストルメントパネルに接近している乗員へのダメージを低減することにある。

　上記目的を達成するために、本発明に係るエアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器と；前記膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；前記エアバッグの内部に設けられ、前記膨張ガスの流れを制御するディフューザとを備える。そして、前記乗員に向かう方向を第１の方向としたときに、前記ディフューザは、前記第１の方向において前記ガス発生器と前記エアバッグとの間に配置され、前記ガス発生器から放出された膨張ガスを受ける受け面と；一端が前記受け面の縁に連結され、他端が前記ガス発生器に直接または間接的に連結された複数の帯状の連結部材とを備えている。

　前記連結部材は、前記受け面の前記第１の方向への移動を規制し、前記受け面に当たった前記膨張ガスが、隣接する前記連結部材の間に形成される開口から前記エアバッグ内に導かれるように構成することができる。ここで、前記連結部材の幅より前記開口の幅の方を大きくすることにより、ディフューザが所謂インナーエアバッグとは異なる機能を有することが可能となり、ガスの流れる向きや量を調整することが容易になる。

　「乗員に向かう方向」とは、例えば、ドライバエアバッグの場合には、ステアリングホイールのリムを含む面に垂直な方向や、当該垂直な方向から若干傾斜した方向を含む意味である。助手席用エアバッグの場合には、インストルメントパネルの表面（エアバッグカバー）に垂直な方向や、当該垂直な方向から若干傾斜した方向を含む意味である。

　また、「ガス発生器に直接又は間接的」とは、ガス発生器のリテーナにボルト等によって直に固定される場合や、他の部材を介して、固定される場合を含むものである。ガス発生器が作動したときに、膨張ガスによって連結部材が外れない固定強度で連結部材が固定される必要がある。

　前記エアバッグを乗員側から見た時に、前記第１の方向に垂直な面内において、真上を時計の１２時とし、真下を時計の６時とした場合に、前記開口を１２時、３時、６時、９時の方向に形成し、１２時、６時の方向の前記開口の面積が、３時、９時の方向の前記開口の面積よりも大きくなるように設定することができる。

　ここで、１２時、３時、６時、９時の方向とは、ステアリングホイールを時計の文字盤に見立てた場合の位置である。すなわち、車両直進時のステアリングの向きにおいて、上又は進行方向を１２時とし、この１２時の位置を基準にして時計回りに９０度回転した位置を３時、１８０度回転した位置を６時、２７０度回転した位置を９時とする。

　なお、本発明のディフューザでは、受け面が帯状の連結部材によってガス発生器側に連結される構造であるが、これは、所謂インナーバッグのような袋状の整流部材とは全く異なるものである。構造的に言うと、本発明の場合には、受け面の縁部から壁状の領域が存在せず、パラシュート状に展開するものである。このように、ディフューザをパラシュートに例えると、「受け面」は傘体に相当し、「連結部材」は吊紐又は吊索に相当する。

　上記のような本発明によれば、エアバッグ装置が作動したときに、ガス発生器から放出されたガスは、エアバッグ全体に充填される前にディフューザの受け面に当たり、その後、連結部材の開口に向かって流れることになる。これにより、エアバッグは展開初期の段階で平面方向（第１の方向と垂直な面の方向）に速やかに展開する。このため、乗員がエアバッグ装置（ステアリングホイールやインストルメントパネル）に接近している状況においても、乗員の胸部や腹部に速やかにエアバッグを入り込ませることができ、広い面積で乗員を拘束することが可能となる。

　また、膨張したエアバッグによる乗員側に直接向かう圧力が、ディフューザの受け面で一旦受け止められるため、乗員がエアバッグ装置（ステアリングホイールやインストルメントパネル）に接近している状況においても、当該乗員への傷害値を最小限に抑えることが可能となる。

　前記受け面は円形とすることができる。

　前記エアバッグの展開時に、前記ディフューザの前記受け面がパラシュートのように湾曲するとともに、前記連結部材によって前記受け面に放射状に延びる凹凸が形成されるように構成することができる。このとき、受け面の中心から放射状に延びるリブ状の凹凸の溝に沿ってガスが流れることになるため、連結部材の太さや受け面との連結位置を調整することにより、膨張ガスの流れる方向をより正確に制御することが可能となる。

　前記ディフューザは、前記ガス発生器を包囲して膨張ガスを前記第１の方向に導く基部を更に備え、前記基部に対して前記連結部材の他端が連結される構成とすることができる。ここで、前記基部と前記連結部材が一体に成形することができる。

　前記エアバッグを収容するハウジングと、前記ガス発生器を前記ハウジングに対して保持するリテーナとを更に備えることができる。そして、前記リテーナが前記ガス発生器を包囲して膨張ガスを前記第１の方向に導く壁状部を有する構造とすることができる。なお、この時、前記リテーナに対して前記連結部材の他端が連結することができる。

　前記第１の方向に垂直な面において、前記受け面の中心位置と、前記エアバッグの中心位置とが概ね一致するように構成することが好ましい。これによって、前記ディフューザによって制御されるガス均一に分散させることができ、エアバッグの展開挙動（展開形状）を正確に制御することが可能となる。

　前記エアバッグの前記第１の方向への移動を規制するテザーを更に備え、前記テザーの一端が前記エアバッグの乗員側の面に連結されることができる。ここで、前記テザーが２本以上とし、これら２本以上のテザーが、前記開口からのガス流出を実質的に阻害しない位置において前記エアバッグに連結することが好ましい。

　また、前記第１の方向に垂直な面において、前記受け面の中心位置と、前記２本以上のテザーの仮想の外接円の中心位置とを概ね一致させることが好ましい。

　上記のように、ディフューザの受け面と、エアバッグに対するテザーの連結部との関係を規定することにより、エアバッグの展開挙動（展開形状）が更に安定することになる。

図１（Ａ）は、本発明に係るエアバッグ装置の展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、ドライバがステアリングホイールに対して通常の距離を保って座っている状態を示す。図１（Ｂ）は、ステアリングホイールの外観形状を示す平面図である。図２は、本発明に係るエアバッグ装置の展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、ドライバがステアリングホイールに対して通常よりも接近して座っている状態を示す。図３は、本発明の第１実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）の平面図である。図４は、本発明の第１実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの展開状態（作動状態）を示す写真であり、（Ａ）が斜め上方、（Ｂ）が真上、（Ｃ）が下方（インフレータ側）、（Ｄ）が側方から観察した様子を各々示す。なお、（Ｃ）において、インフレータは省略する。図５は、本発明の第１実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。図６は、本発明の第１実施例に係るドライバエアバッグに採用されたディフューザの構造及び機能を示す断面図であり、（Ａ）が図５のＡ－Ａ方向の断面、（Ｂ）が図５のＢ－Ｂ方向の断面を示す。図７は、本発明の第２実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）の平面図である。図８は、本発明の第２実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。図９は、本発明の第３実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）の平面図である。図１０は、本発明の第３実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。図１１は、本発明の第４実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）の平面図である。図１２は、本発明に係るエアバッグ装置の好ましい態様を示すものであり、（Ａ）が受け面とエアバッグとの位置関係を示すの平面図、（Ｂ）がエアバッグに対するテザーの連結部とディフューザの受け面との位置関係を示す平面図である。図１３は、本発明に係るエアバッグ装置の好ましい態様を示すものであり、（Ａ）がエアバッグの展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、（Ｂ）がエアバッグに対するテザーの連結部とディフューザの受け面との位置関係を示す平面図である。図１４は、本発明の第５実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの連結部材（基部含む）の平面図である。図１５は、本発明の第６実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの連結部材（基部含む）の平面図である。図１６は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面の平面図、（Ｂ）が連結部材の平面図である。図１７は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。図１８は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置に採用されるディフューザの構造及び機能を示す断面図であり、図１７のＡ－Ａ方向の断面を示す。図１９は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置に採用されるリテーナの構造を示す斜視図（Ａ）及び、平面図（上面図）（Ｂ）である。図２０は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置のインフレータ周辺の構造を示す断面図であり、（Ａ）が図１９のＡ１－Ａ１方向の断面、（Ｂ）が図１９のＡ２－Ａ２方向の断面を示す。

本発明の実施形態に係るエアバッグ装置。について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図に表示する「前」とは車両の前方（進行方向）、「後」とは車両の後方（進行方向と反対側）を示す。
　また、「１２時」、「３時」、「６時」、「９時」とは、ステアリングホイール（あるいは、エアバッグの展開方向と垂直な面）をドライバ側から見たときに、時計の時刻を示す位置に対応する。

　図１（Ａ）は、本発明に係るエアバッグ装置１０の展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、ドライバＰがステアリングホイール１４に対して通常の距離を保って座っている状態を示す。図１（Ｂ）は、ステアリングホイール１４の外観形状を示す平面図である。図２は、本発明に係るエアバッグ装置１０の展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、ドライバＰがステアリングホイール１４に対して通常よりも接近して座っている状態を示す。

　本発明に係るエアバッグ装置１０は、膨張ガスを発生するインフレータ１６と；膨張ガスによって膨張展開することで乗員Ｐを拘束するエアバッグ１２と；エアバッグ１２の内部に設けられ、膨張ガスの流れを制御するディフューザ２０とを備える。そして、乗員Ｐに向かう方向を第１の方向Ｄ１（ステアリングホイール１４のリムを含む面に垂直な方向）としたときに、ディフューザ２０は、第１の方向Ｄ１においてインフレータ１６とエアバッグ１２との間に配置され、インフレータ１６から放出された膨張ガスを受ける受け面２２と；一端が受け面２２の縁に連結され、他端がガス発生器１６に直接または間接的に連結された複数の帯状の連結部材２４とを備えている。

　連結部材２０は、例えば、エアバッグ１２と同一の生地で円形に成形された受け面２２の第１の方向Ｄ１への移動を規制し、受け面２２に当たった膨張ガスが、連結部材２４の隙間（開口）からエアバッグ１２内に導かれるようになっている。

（第１実施例）
　図３は、本発明の第１実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザ２０の構造を示し、（Ａ）が受け面２２の平面図、（Ｂ）が連結部材２４（基部含む）の平面図である。図４は、ディフューザ２０の展開状態（作動状態）を示す写真であり、（Ａ）が斜め上方、（Ｂ）が真上、（Ｃ）が下方（インフレータ１６側）、（Ｄ）が側方から観察した様子を各々示す。なお、図４（Ｃ）において、インフレータ１６は省略する。図５は、ディフューザ２０の展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。更に、図６は、本発明の第１実施例に係るドライバエアバッグに採用されたディフューザの構造及び機能を示す断面図であり、（Ａ）が図５のＡ－Ａ方向の断面、（Ｂ）が図５のＢ－Ｂ方向の断面を示す。

　図３（Ｂ）に示すように、ディフューザ２０の連結部材２４は、帯状又は部分的に扇形の連結部２４ａ，２４ｂ，２４ｃ，２４ｄ，２４ｅ，２４ｆ，２４ｇ，２４ｈを備えている。各連結部２４ａ～２４ｈは、受け面２２の対応するアルファベットａ～ｈの部分に縫製等によって連結固定される。また、連結部２４ａと２４ｂ、２４ｃと２４ｄ、２４ｅと２４ｆは、各々、対向する点線で示すライン５０，５２，５４，５６に沿って互いに縫製される。

　図３（Ａ）の連結（縫製）箇所ａ～ｈからわかるように、連結部２４ａ～２４ｈと受け面２２との縫製長さ（ａ＋ｂ）、（ｃ＋ｄ）、（ｅ＋ｆ）、（ｇ＋ｈ）は、縫製されていない部分の長さよりも短く、これによって、ガスが流れ出る開口（１００，１０２，１０４，１０６）を広く確保している。特に、１２時の方向に位置する開口（未縫製長さ）１０４と、６時の方向に位置する開口（未縫製長さ）１００は、３時と９時の方向の開口（未縫製長さ）１０６、１０２よりも大きくなっている。また、開口１００，１０４の高さ（深さ）Ｈ１が、開口１０２，１０６の高さ（深さ）Ｈ２よりも大きくすることで、１２時と６時方向の開口面積を大きくしている。

　３時方向の開口１０６及び９時方向の開口１０２に関しては、開口の下方（インフレータ側）であり、基部２８の上方に、立ち壁のような領域Ａが形成されており、この領域Ａの幅Ｗと高さＨ３とを変更することによって、開口１０２，１０６の面積、すなわち、排出されるガスの流量を調整可能となっている。なお、領域Ａは基部２８の延長領域と認識することもできる。

　本実施例においては、エアバッグ１２の内部において、ドライバの頭部方向（１２時）と腹部方向（６時）に多くのガスが流れ、当該方向のエアバッグ１２の展開が促進される。なお、１２時方向の開口１０４に比べて、６時方向の開口１００を広くすることもでき、その場合には、エアバッグ１２の展開時において、乗員の胸部から腹部方向への速やかな展開が更に促進される。

　連結部材２４の中央には、インフレータ１６を挿入する穴１６ａが形成されたリテーナ４０が設けられている。また、図４乃至図６に示すように、インフレータ１６の周囲を包囲するように、垂直方向に延びる側壁状の基部２８が、連結部２４ａ～２４ｈと一体に成形されている。連結部材２４のリテーナ４０の包囲する折り目に沿って上下左右の連結部２４ａ～２４ｆを立ち上げることによって、基部２８が形成される。

　インフレータ１６は円筒状であり、その側面にガスの排出口（図示せず）が複数形成され、中心から放射方向にガスが放出されるようになっている。基部２８は、このようなインフレータ１６の側壁から放出されたガスを上方（Ｄ１方向）、すなわち受け面２２の方向に導くようになっている。

　なお、本発明のディフューザでは、受け面が帯状の連結部材によってガス発生器側に連結される構造であるが、これは、所謂インナーバッグのような袋状の整流部材とは全く異なるものである。構造的に言うと、本発明の場合には、受け面の縁部から壁状の領域が存在せず、パラシュート状に展開するものである。

　本実施例においては、エアバッグ装置１０が作動したときに、インフレータ１６から放出されたガスは、エアバッグ１２全体に充填される前にディフューザ２０の受け面２２に当たる。この時、ディフューザ２０は、図４に示すように、受け面２２がパラシュートのように湾曲するとともに、連結部２４ａ～２４ｈによって受け面２２に放射状に延びる凹凸が形成される。受け面２２の中で、連結部２４ａ～２４ｈが縫製されていない箇所は、鳥のクチバシのように斜め下側を向いた開口を（１００，１０２，１０４，１０６）形成する。そして、受け面２２で反射したガスは、中心から放射状に延びる溝状の開口（１００，１０２，１０４，１０６）に沿ってエアバッグ１２の内部に流れることになる。

　これにより、エアバッグ１２は展開初期の段階で平面方向（第１の方向Ｄ１と垂直な面の方向）に速やかに展開し、乗員がステアリングホイール１４に接近している状況においても、乗員の胸部や腹部に速やかにエアバッグ１２を入り込ませることができ、広い面積で乗員を拘束することが可能となる。また、膨張したエアバッグ１２による乗員側に直接向かう圧力が、ディフューザ２０の受け面２２で一旦受け止められるため、当該乗員への障害値を最小限に抑えることが可能となる。

（第２実施例）
　図７は、本発明の第２実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面２２の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）１２４の平面図である。また、図８は、第２実施例に係るディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。なお、上述した第１実施例と機能的に同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。

　第２実施例と第１実施例との相違点は、主に連結部材２０の形状にある。図７（Ｂ）に示すように、本実施例においては、４本の連結部材１２４ａ，１２４ｂ，１２４ｃ，１２４ｄを１２時、３時、６時、９時の方向に配置している。
　本実施例においては、ディフューザ２０の受け面２２に対して４本の細長い連結部１２４ａ，１２４ｂ，１２４ｃ，１２４ｄを連結しているのみである。このため、ディフューザ２０は、パラシュートのように側面が大きく開いた状態となり、受け面２２に当たったガスがディフューザ２０の内部で滞留することなく、スムーズにエアバッグ１２内部に導かれる。

（第３実施例）
　図９は、本発明の第３実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面２２の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）２２４の平面図である。また、図１０は、第３実施例に係るディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。なお、上述した第１及び第２実施例と機能的に同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。

　本実施例と上述した第２実施例との構成は多くの部分で共通し、相違点は連結部材２０の配置のみである。図９（Ｂ）に示すように、本実施例においては、４本の連結部材２２４ａを１２時と３時の中間、２２４ｂを３時と６時の中間、２２４ｃを６時と９時の中間、２２４ｄを９時と１２時の中間に配置している。本実施例によれば、乗員の頭部及び腹部方向に速やかにエアバッグ１２を展開させることが可能となる。

（第４実施例）
　図１１は、本発明の第４実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面２２の平面図、（Ｂ）が連結部材（基部含む）２２４の平面図である。なお、上述した第１乃至第３実施例と機能的に同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。

　本実施例と上述した第３実施例との構成は多くの部分で共通し、受け面３２２の形状のみである。図１１（Ａ）に示すように、本実施例においては、受け面３２２の形状を円形ではなく、八角形としている。これは、正方形の四隅を面取りすることによって成形したものと言うこともできる。

（他の態様）
　図１２は、本発明に係るエアバッグ装置の好ましい態様を示すものであり、（Ａ）が受け面２２とエアバッグ１２との位置関係を示すの平面図、（Ｂ）がエアバッグ１２に対するテザー４１２Ｕ，４１２Ｌの連結部とディフューザの受け面２２との位置関係を示す平面図である。

　図１２（Ａ）に示す態様においては、第１の方向Ｄ１に垂直な面において、ディフューザ２０の受け面２２の中心位置Ｘと、エアバッグ１２の前面側の中心位置Ｘとが概ね一致するように構成される。これによって、ディフューザ２０によって制御されるガスの流れを均一に分散させることができ、エアバッグ１２の展開挙動（展開形状）を安定的且つ正確に制御することが可能となる。

　図１２（Ｂ）に示す態様においては、エアバッグ１２の第１の方向Ｄ１への移動を規制する２本のテザー４１２Ｕ、４１２Ｌを設けている。そして、テザー４１２Ｕ，４１２Ｌの端部をエアバッグ１２の乗員側の面に連結している。図１２（Ｂ）の例においては、２本のテザー４１２Ｕ，４１２Ｌは、エアバッグ１２のフロントパネルの１２時と６時の位置付近に縫製によって連結される。

　図１２（Ｂ）に示す例では、エアバッグ１２の展開形状が乗員側から見て円形ではないが、テザー４１２Ｕ，４１２Ｌの仮想の外接円１２０の中心位置Ｘとディフューザ２０の受け面２２の中心位置Ｘとを一致させている。このような構造を採用することにより、図１２（Ａ）の場合と同様に、ディフューザ２０によって制御されるガスの流れを均一に分散させることができ、エアバッグ１２の展開挙動（展開形状）を正確に制御することが可能となる。

　図１３は、本発明に係るエアバッグ装置の更に他の態様を示すものであり、（Ａ）がエアバッグ１２の展開状態を模式的に示す側面図（断面図）であり、（Ｂ）がエアバッグ１２に対するテザー５１０Ｒ，５１０Ｌの連結部とディフューザ２０の受け面２２との位置関係を示す平面図である。

　図１３（Ａ），（Ｂ）に示す例では、テザー５１０Ｒ，５１０Ｌの端部を３時と９時の方向で連結される構造となっている。なお、テザーは必ずしも２本に限定されないが、テザーが１２時と６時の方向を避けて連結する構造とする。このような構造により、ディフューザ２０の受け面２２で反射したガスが１２時と６時方向に多く、且つ速やかにガイドされ、エアバッグ１２が上下方向（１２時－６時方向）に、より速やかに展開することになる。

（第５実施例）
　図１４は、本発明の第５実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの連結部材６２４（基部２８含む）の平面図である。本実施例は、図３（Ｂ）に示した第１実施例の変形バージョンであり、基本的な構造は同じである。簡単に言うと、本実施例に係る連結部材６２４においては、図３（Ｂ）に示した帯状の連結部材２４ｂ，２４ｃ，２４ｆ，２４ｇを省略した構造となっている。上述した第１実施例と共通する構造、作用については重複した説明を省略し、差異について以下説明する。

　図１４に示すように、ディフューザの連結部材６２４は、帯状で先端側が扇形の連結部６２４ａ，６２４ｄ，６２４ｅ，６２４ｈを備えている。各連結部６２４ａ，６２４ｄ，６２４ｅ，６２４ｈは、アルファベットａ，ｄ，ｅ，ｈの部分において受け面（２２）の対応する箇所に縫製等によって連結固定される。また、これらの連結部材（６２４ａ，６２４ｄ，６２４ｅ，６２４ｈ）の基部側は、点線で示すライン６５０，６５２，６５４，６５６に沿って互いに縫製され、立壁状の基部２８が形成される。

　本実施例においては、第１実施例に比べて、１２時方向と６時方向の開口６００，６０４が格段に広くなっている。その結果、エアバッグ１２の内部において、ドライバの頭部方向（１２時）と腹部方向（６時）に更に多くのガスが流れ、当該方向のエアバッグ１２の展開が促進される。なお、１２時方向の開口１０４に比べて、６時方向の開口１００を広くすることができる。

　また、３時方向の開口６０６及び９時方向の開口６０２に関しては、開口の下方（インフレータ側）であり、基部２８の上方に、立ち壁のような領域Ａが形成されており、この領域Ａの幅Ｗと高さＨ３とを変更することによって、開口６０２，６０６の面積、すなわち、排出されるガスの流量を調整可能となっている。このような領域Ａは、基部２８の延長領域と認識することもできる。

　なお、図１３及び図１４に示したようなテザーを本実施例において採用することができることは言うまでもない。

（第６実施例）
　図１５は、本発明の第６実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの連結部材７２４（基部含む）の平面図である。以下に本実施例について説明するが、上述した各実施例と共通又は対応する部分についての構造や作用については、重複した説明を省略し、本実施例の特徴的な構造を中心に説明する。

　本実施例の特徴は、ディフューザの開口７００，７０２，７０４を、２時、６時１０時方向に形成したことにある。図１５に示すように、ディフューザの連結部材７２４は、帯状で先端側が扇形（円弧状）の連結部７２４ａ，７２４ｂ，７２４ｃ，７２４ｄ，７２４ｅ，７２４ｆを備えている。各連結部は、アルファベットａ～ｆの部分において受け面（２２）の対応する箇所に縫製等によって連結固定される。

　連結部７２４ａと７２４ｆ、７２４ｂと７２４ｃ、７２４ｄと７２４ｅは、各々、対向する点線で示すライン７５０，７５２，７５４沿って互いに縫製される。その結果、２時、６時１０時方向に開口７００，７０２，７０４が形成される。６時方向の開口７０２の高さ（深さ）Ｈ１は、２時、１０時方向の開口７００，７０４の高さ（深さ）Ｈ２よりも大きく、開口７０２の面積（ガス流量）が、開口７００と７０４の面積（ガス流量）の合計と同程度に設定されている。その結果、エアバッグ装置が作動したときに、エアバッグ１２の６時方向に多くのガスが流れ込み、乗員の腹部方向へ速やかに展開することになる。

　また、２時方向の開口７００及び１０時方向の開口７０４に関しては、これらの開口の下方（インフレータ側）であり、基部２８の上方に、立ち壁のような領域Ａが形成されており、この領域Ａの幅Ｗと高さＨ３とを変更することによって、開口７００，７０４の面積、すなわち、排出されるガスの流量を調整可能となっている。このような領域Ａは、基部２８の延長領域と認識することもできる。

（第７実施例）
　図１６は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置に使用されるディフューザの構造を示し、（Ａ）が受け面２２の平面図、（Ｂ）が連結部材８２４の平面図である。図１７は、本発明の第７実施例に係るディフューザの展開状態（作動状態）を示す図であり、（Ａ）が真上、（Ｂ）が側方から観察した様子を各々示す。図１８は、本発明の第７実施例に係るディフューザの構造及び機能を示す断面図であり、図１７のＡ－Ａ方向の断面を示す。図１９は、本発明の第７実施例に係るリテーナ８４０の構造を示す斜視図（Ａ）及び、平面図（上面図）（Ｂ）である。図２０は、本発明の第７実施例に係るエアバッグ装置のインフレータ周辺の構造を示す断面図であり、（Ａ）が図１９のＡ１－Ａ１方向の断面、（Ｂ）が図１９のＡ２－Ａ２方向の断面を示す。

　図１６（Ｂ）に示すように、ディフューザの連結部材８２４は、帯状又は部分的に扇形の連結部８２４ａ，８２４ｂ，８２４ｃ，８２４ｄを備えている。各連結部８２４ａ～８２４ｄは、受け面２２の対応するアルファベットａ～ｄの部分に縫製等によって連結固定される。

　図１６（Ａ）の連結（縫製）箇所ａ～ｄからわかるように、連結部８２４ａ～８２４ｄと受け面２２との縫製長さａ、ｂ、ｃ、ｄは、縫製されていない部分の長さよりも短く、これによって、ガスが流れ出る開口（８００，８０２，８０４，８０６）を広く確保している。特に、１２時の方向に位置する開口（未縫製長さ）８０４と、６時の方向に位置する開口（未縫製長さ）８００は、３時と９時の方向の開口（未縫製長さ）８０６、８０２よりも大きくなっている。

　本実施例においては、エアバッグ１２の内部において、ドライバの頭部方向（１２時）と腹部方向（６時）に多くのガスが流れ、当該方向のエアバッグ１２の展開が促進される。なお、１２時方向の開口８０４に比べて、６時方向の開口８００を広くすることもでき、その場合には、エアバッグ１２の展開時において、乗員の胸部から腹部方向への速やかな展開が更に促進される。

　連結部材８２４の中央には、インフレータ１６を挿入する穴１６ａが形成されたリテーナ８４０が設けられる。図１９に示すように、インフレータ１６は円筒状であり、その側面にガスの排出口が複数形成され、中心から放射方向にガスが放出されるようになっている。

　リテーナ８４０は、概ね矩形のベース部８４１と、ベース部８４１の中央に設けられた概ね円筒状のリング部８４２とを備えている。ベース部８４１の四隅には、スタッドボルト８６０（図２０参照）が貫通するボルト穴８４４が形成されている。リング部８４２は、インフレータ１６のガス排出口の近傍においてベース部８４１から立ち上がった壁のように成形され、インフレータ１６から排出されたガスを反射して上方（Ｄ１方向、受け面２２の方向）にガイドするようになっている。すなわち、リング部８４２は第１実施例におけるディフューザの基部２８と同様に機能する。このため、本実施例においては、ディフューザの基部は実質的に不要となる。

　図２０に示すように、リテーナ８４０のリング部８４２は、インフレータ１６の側壁に対してθ１の角度で外側に傾いている。リング部８４２の角度θ１や高さは、受け面２２との位置関係や、寸法に応じて適宜設定することが好ましく、例えば、θ１を０度～１５度程度に設定することができる。なお、図２０において、符号１７はインフレータ１６のフランジ、符号８５０はエアバッグ装置のハウジングである。

　本実施例においては、エアバッグ装置１０が作動したときに、インフレータ１６から放出されたガスは、エアバッグ１２全体に充填される前にディフューザ２０の受け面２２に当たる。この時、ディフューザ２０は、図１７に示すように、受け面２２がパラシュートのように湾曲するとともに、連結部８２４ａ～８２４ｄによって受け面２２に放射状に延びる凹凸が形成される。受け面２２の中で、連結部８２４ａ～８２４ｄが縫製されていない箇所は、鳥のクチバシのように斜め下側を向いた開口を（８００，８０２，８０４，８０６）形成する。そして、受け面２２で反射したガスは、中心から放射状に延びる溝状の開口（８００，８０２，８０４，８０６）に沿ってエアバッグ１２の内部に流れることになる。

　以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。上記実施例においては、ステアリングホイールに収容されるドライバエアバッグ装置について説明したが、本発明はインストルメントパネルに収容される助手席用エアバッグ装置など、保護すべき乗員の正面で展開する形式のエアバッグ装置に適用可能である。

Claims

　膨張ガスを発生するガス発生器と；
　前記膨張ガスによって膨張展開することで乗員を拘束するエアバッグと；
　前記エアバッグの内部に設けられ、前記膨張ガスの流れを制御するディフューザと；を備え、
　前記乗員に向かう方向を第１の方向としたときに、前記ディフューザは、前記第１の方向において前記ガス発生器と前記エアバッグとの間に配置され、前記ガス発生器から放出された膨張ガスを受ける受け面と；一端が前記受け面の縁に連結され、他端が前記ガス発生器に直接または間接的に連結された複数の帯状の連結部材とを備えたことを特徴とするエアバッグ装置。
　前記連結部材は、前記受け面の前記第１の方向への移動を規制し、
　前記受け面に当たった前記膨張ガスが、隣接する前記連結部材の間に形成される開口から前記エアバッグ内に導かれるように構成されたことを特徴とする請求項１に記載のエアバッグ装置。
　前記連結部材の幅よりも前記開口の幅の方が大きいことを特徴とする請求項２に記載のエアバッグ装置。
　前記エアバッグを乗員側から見た時に、前記第１の方向に垂直な面内において、真上を時計の１２時とし、真下を時計の６時とした場合に、
　前記開口は、１２時、３時、６時、９時の方向に形成され、
　１２時、６時の方向の前記開口の面積が、３時、９時の方向の前記開口の面積よりも大きいことを特徴とする請求項１乃至３の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記受け面が円形であることを特徴とする請求項１乃至４の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記エアバッグの展開時に、前記ディフューザの前記受け面がパラシュートのように湾曲するとともに、前記連結部材によって前記受け面に放射状に延びる凹凸が形成されることを特徴とする請求項１乃至５の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記ディフューザは、前記ガス発生器を包囲して膨張ガスを前記第１の方向に導く基部を更に備え、
　前記基部に対して前記連結部材の他端が連結されることを特徴とする請求項１乃至６の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記基部と前記連結部材が一体に成形されることを特徴とする請求項７に記載のエアバッグ装置。
　前記エアバッグを収容するハウジングと、前記ガス発生器を前記ハウジングに対して保持するリテーナとを更に備え、
　前記リテーナは、前記ガス発生器を包囲して膨張ガスを前記第１の方向に導く壁状部を有することを特徴とする請求項１乃至６の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記リテーナに対して前記連結部材の他端が連結されることを特徴とする請求項９に記載のエアバッグ装置。
　前記第１の方向に垂直な面において、前記受け面の中心位置と、前記エアバッグの中心位置とが概ね一致することを特徴とする請求項１乃至１０の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記エアバッグの前記第１の方向への移動を規制するテザーを更に備え、
　前記テザーの一端が前記エアバッグの乗員側の面に連結されていることを特徴とする請求項１乃至１１の何れか１項に記載のエアバッグ装置。
　前記テザーが２本以上であり、
　前記２本以上のテザーが、前記開口からのガス流出を実質的に阻害しない位置において前記エアバッグに連結されていることを特徴とする請求項１２に記載のエアバッグ装置。
　前記第１の方向に垂直な面において、前記受け面の中心位置と、前記２本以上のテザーの仮想の外接円の中心位置とが概ね一致することを特徴とする請求項１３に記載のエアバッグ装置。
　当該エアバッグ装置は、自動車のステアリングホイールに収容されることを特徴とする請求項１乃至１４の何れか１項に記載のエアバッグ装置。