以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
以下においては、図1等において水平面上の一方向を示す矢印X方向を「幅方向」といい、矢印X方向と直交する水平面上の矢印Y方向を「長さ方向」といい、矢印XおよびYと直交する矢印Z方向を「上下方向」または「高さ方向」という。また、長さ方向に関し、一方側を「前」、他方側を「後」という。
図1は、本発明の一実施形態である蓄電池用ラック(以下、適宜に「ラック」とだけいう)10を含む蓄電装置1を斜め前方から見た状態で示す斜視図である。図1に示す蓄電装置1は、ラック10に複数の蓄電池2が上下方向に多段に収納されて構成されている。また、図2は、蓄電装置1を斜め後方から見た状態で示す斜視図である。さらに、図3は、蓄電池が収納されていない状態のラック10を示す図1と同様の斜視図である。
本実施形態のラック10に収納される蓄電池2は、筐体内に例えば多数の円筒型二次電池が直列接続、並列接続、または、直列および並列を組み合わせた接続状態で収納されている。本実施形態のラック10は、このような蓄電池2を例えば20個、所定の間隔で上下方向に並べて収納することが想定されている。ただし、1つのラック10に収納する蓄電池2の数は、これに限定されるものではなく、各蓄電池2の外形寸法、定格容量、各蓄電池に対する冷却性能を確保するために必要な冷媒通路の寸法等に応じて、適宜に変更され得るものである。
図1ないし図3に示すように、ラック10は、底部枠(底部)12と、天井枠(天井部)14と、4本の支柱16,18,20,22とを備える。ラック10には、例えば19インチラック等の従来からある標準的なラックを用いることができる。ラック10は、重量がある蓄電池2を多数収納した場合でも耐えうる強度を有することが好ましく、例えばスチール製のものが好適に用いられる。
底部枠12および天井枠14はいずれも長方形状フレームとして形成されている。底部枠12は、4本の底部フレームをボルト等の締結部材で連結することによって構成されてもよいし、あるいは、予め一体形成されていてもよい。また、底部枠12の中央部には、補強フレーム13が幅方向に沿って配置されている。補強フレーム13の両端は、ボルト等の締結部材によって底部枠12に連結されている。
本実施形態において天井枠14は、底部枠12と同様に、4本の底部フレームをねじ又はボルト等の締結部材で連結することによって構成されてもよいし、あるいは、予め一体形成されていてもよい。なお、本実施形態では、天井枠14が天井板を含まない形態である例を示すが、これに限定されるものではなく、埃等の堆積を低減するために天井枠14の上面を閉じる天井板が別部材で又は一体に設けられてもよい。また、天井枠14についても、底部枠12と同様に、中央に補強フレームを架設して、フレーム構造体11の強度を高めてもよい。
4本の支柱16,18,20,22は、底部枠12および天井枠14の四隅のコーナー部に対応して立設されている。各支柱16,18,20,22は、上下方向に沿って延伸する長尺状の部材であり、例えばいわゆるL字やコの字アングルが用いられる。また、各支柱16,18,20,22の下端および状態は、例えばねじ又はボルト等の締結部材によって底部枠12および天井枠14にそれぞれ締結されている。これにより、底部枠12、天井枠14および4本の支柱16,18,20,22は、直方体の12辺に対応するフレーム部分を含むフレーム構造体11を構成している。
4本の支柱のうち前方に位置する2本の支柱16,20は、多数の取付穴が所定ピッチで上下方向に沿って形成されている取付部17,21を有する。また、ラック10において後方に位置する2本の支柱18,22は、多数の取付穴が所定ピッチで形成されている取付部を有している。以下において、ラック10の2本の支柱16,20を前方支柱といい、他の2本の支柱18,22を後方支柱ということがある。
図3に示すように、前方支柱16,20の取付部17,21は、上下方向に延在し且つ長さ方向に張り出した細幅の取付板24をそれぞれ有する。取付板24には、多数の取付穴26が所定ピッチで形成されている。また、ラック10の後方支柱18,22において互いに対向する側面にも、上記と同様の所定ピッチで多数の取付穴28がそれぞれ形成されている。図3では後方支柱22の側面に形成されている取付穴28のみが示されている。
ラック10がEIA規格(米国規格協会)に適合した19インチラックである場合、幅寸法が約482.6mm(19インチ)までの機器を収納可能である。すなわち、ラック10に収納される蓄電池2の幅寸法は約480mm程度であることが好適である。また、EIA規格の場合、収納される機器の高さ寸法は1U(=1.75インチ(44.45mm))という単位で規定され、EIA規格に応じた機器の高さ寸法は1Uの倍数になっている。このようなEIA規格のラックにおいて、取付穴のピッチは、ワイドピッチとユニバーサルピッチの2種類がある。ワイドピッチは取付穴のピッチが31.75mm(1.25インチ)と12.7mm(0.5インチ)の繰り返しである。ユニバーサルピッチでは、ワイドピッチにおける31.75mmピッチの2つの取付穴の中間位置に取付穴が追加されている。すなわち、この場合は取付穴のピッチは15.9mm、15.9mm、12.7mmの繰り返しになる。本実施形態では、上記取付穴26,28がユニバーサルピッチで形成されている場合を例示する。
なお、ラックがJIS規格(日本工業規格)に適合した19インチラックである場合、幅寸法が約480mmまでの機器を収納可能であり、収納される機器の高さ寸法は1J(=50mm)の倍数になっている。また、このようなJIS規格のラックでは、取付穴が50mmピッチで形成されている。また、50mmピッチの2つの取付穴の中間位置の取付穴が追加される場合があり、この場合には取付穴が25mmピッチで形成されることになる。
図4は、フレーム構造体11にサイドパネル、バックパネル、および、ファンパネルが取り付けられたラック10の斜視図である。
図1、図2および図4に示すように、ラック10は、サイドパネル30を備える。サイドパネル30は、前方支柱16および後方支柱18の一方の支柱組に架設されるとともに、前方支柱20および後方支柱22の他方の支柱組に架設されている。これにより、サイドパネル30は、ラック10において幅方向に対向する側壁面を構成している。本実施形態では、ラック10の幅方向両側に各4枚のサイドパネル30が取り付けられている例が示される。
また、ラック10は、バックパネル60およびファンパネル70を備えてもよい。バックパネル60は、後述するように、後方支柱18,22間においてサイドパネル30の後壁面に取り付けられてもよいし、あるいは、後方支柱18,22に取り付けられてもよい。バックパネル60には、ラック10に収納される蓄電池2(図1参照)の電力入出力端子に電気的に接続されるコネクタ(図示せず)が取り付けられる。
ファンパネル70は、ラック10の後面において、バックパネル60と後方支柱22とにねじ等で取り付けられている。図2に示すように、ファンパネル70には、例えば円形の取付穴72が形成されている。この取付穴72にファン74(図10参照)が取り付けられる。ファン74は、後述するようにサイドパネル30によってラック10に蓄電池2が載置収納されたとき、各蓄電池2間に形成される冷媒通路に空気等の冷却媒体を流す機能を有する。冷却媒体である空気が各蓄電池2間の冷媒通路を流れる様子については後述する。
続いて、図5ないし図9を参照して、サイドパネル30について詳細に説明する。図5はサイドパネル30の正面図であり、図6はサイドパネル30を前方から見た側面図である。また、図7は図5中のA-A線断面図であり、図8は図5中のB-B線断面図である。さらに、図9は、蓄電装置1を前方から見た一部正面図である。
ラック10において、前方から見て右側に取り付けられるサイドパネル30と、左側に取り付けられるサイドパネル30とは、鏡面対称の形状を有する。したがって、以下においては、ラック10の右側に取り付けられるサイドパネル30を例に説明する。
図5ないし図8に示すように、サイドパネル30は、例えば、1枚の金属板を折り曲げ形成することによって形成できる。サイドパネル30は、複数の支持部32を有する。各支持部32は、上下方向と直交する幅方向に突出するとともに、互いに平行に形成されている。本実施形態では、1枚のサイドパネル30に5つの支持部32が形成されている例が示される。すなわち、本実施形態では、ラック10において幅方向両側に対向して取り付けられる一対のサイドパネル30によって、5つの蓄電池2を載置できるように構成されている。
5つの支持部32のうち4つの支持部32は、金属板をコ字状に切り込みを形成した部分を幅方向内側に90度だけ折り曲げることによって形成されている。また、サイドパネル30において最下部に位置する支持部32は、金属体の下端部を幅方向内側に所定幅で折り曲げることによって形成されている。
図6および図9に示すように、各支持部32の上下方向の間隔Kは、支持部32上に載置された状態で収納される複数の蓄電池2間に形成される冷媒通路4の所定の高さ寸法hと、蓄電池2の高さ寸法Hとの合計値にほぼ等しく設定されている。ここで、蓄電池2の高さ寸法は、例えば約90mm程度である。また、冷媒通路4の所定の高さ寸法は、例えば8~10mm程度とするのが好適である。冷媒通路4の高さ寸法hをこのような高さ寸法より大きく設定してもよいが、その分、多数の蓄電池2をラック10に収納した場合に収容可能な蓄電池2の数が減ることになる。他方、冷媒通路4の高さ寸法hが上記の寸法範囲より狭くなると、冷媒通路4を流れる冷媒としての空気が流量低下によって蓄電池2の冷却性能が低下する。したがって、冷媒通路4の高さ寸法hは、ラック10の収納効率を高くしつつ各蓄電池に対する冷却性能を確保できる必要最小限の寸法に設定するのが良い。
図7に示すように支持部32の突出幅Wは、蓄電池2の長さ方向に延びる下側一方角部を載置したときに蓄電池2を十分に支持できる程度の幅に設定されている。また、このような突出幅Wの支持部32が形成されることで、サイドパネル30には、最下部の支持部32を除く4つの支持部32に対応して開口部34が形成されている。本実施形態では、各サイドパネル30に4つの開口部34が形成されている。各開口部34は、図5に示すように、長さ方向に沿って細長く延びる長方形状をなしている。このような開口部34が形成されることで、蓄電池2を収納したときに、開口部34を介して蓄電池2の側面がラック10の外部に露出した状態になる。これにより、蓄電池2の側面からの放熱性が向上するという利点がある。この場合、蓄電池2の側面全体が露出していなくてもよく、少なくとも一部が露出していればよい。
また、サイドパネル30は、図5および図7に示すように、閉塞部35を有する。閉塞部35は、支持部32に連続して略L字状の断面をなし、上下方向に沿って垂下している。この閉塞部35は、ラック10に収納された各蓄電池2間に形成される冷媒通路4の幅方向両側の開口部を塞ぐ機能を有する。これにより、ラック10に収納された蓄電池2間の冷媒通路を前方および後方に開口する通路として形成することができ、冷媒である空気の流れ方向を規定することができる。なお、本実施形態では冷媒通路4の幅方向両側の開口部の全体を閉塞部35で塞ぐ例を示すが、これに限定されるものではなく、閉塞部が冷媒通路4の幅方向両側の開口部の一部を閉じて他の部分を空気通し部として開口させてもよい。
図5および図8に示すように、サイドパネル30の幅方向前側に取付部36aが形成され、幅方向後側に取付部36bが形成されている。各取付部36a,36bは、金属板を略コ字状に折り曲げて形成され、上下方向に沿って延びている。そして、各取付部36a,36bには、例えば5つの雌ねじ孔(貫通孔)38が上方方向に所定ピッチP1で形成されている。この所定ピッチP1は、前方支柱16,20の取付部17,21に形成された取付穴26のピッチに対応したものに設定されている。すなわち、ラック10がEIA規格に適合した19インチラックである場合、サイドパネル30の雌ねじ孔38のピッチP1は、例えば1U(=44.45mm)ピッチとするのが好ましい。これにより、サイドパネル30を前方支柱16,20の取付穴26を介して挿通したねじによってサイドパネル30を前方支柱16,20に取り付けることができる。なお、ラック10がJIS規格に適合した19インチラックである場合、サイドパネル30の雌ねじ孔38の所定ピッチP1は、例えば50mmに設定するのが好適である。なお、本実施形態では支柱にサイドパネル30を取り付けるための貫通孔を雌ねじ孔として形成した例について説明するが、これに限定されるものではなく、単にボルトを挿通する貫通孔として形成しナットで締結固定してもよい。
図5および図6に示すように、サイドパネル30の前端部は幅方向外側へ略垂直に折り曲げられている。この折り曲げ部は、サイドパネル30の前側壁40を構成している。この前側壁40には、例えば5つの雌ねじ孔42が上下方向に所定ピッチP2で形成されている。この所定ピッチP2は、ラック10に多段(例えば20段)に収納される蓄電池2の収納ピッチと同等に設定することができる。本実施形態に用いられる蓄電池2の高さ寸法Hを例えば90mm、蓄電池2間に形成される冷媒通路4の高さ寸法hを例えば10mmとしたとき、上下方向に隣接する蓄電池2の配置ピッチは100mmになる。したがって、この場合には、サイドパネル30の前側壁40に形成される雌ねじ孔42(被締結部)のピッチP2を100mmに設定すればよい。これにより、後述するように、蓄電池2の前端側壁に固定した固定タブを介して各蓄電池2をサイドパネル30の前側壁40に固定することができる。
また、図5および図8に示すように、サイドパネル30の後端部は幅方向外側へ略垂直に折り曲げられている。この折り曲げ部は、サイドパネル30の後側壁44を構成している。この後側壁44にも、前側壁40と同様に、例えば5つの雌ねじ孔(図示せず)が上下方向に所定ピッチP2で形成されてもよい。この後側壁44に形成された雌ねじ孔にねじを挿通して締め付けることによってバックパネル60の幅方向両端部を固定することができる。
上記のように構成されるサイドパネル30をラック10の幅方向両側に各4枚ずつ取り付けるとともに、バックパネル60およびファンパネル70をサイドパネル30の後側壁44にねじ等で取り付ける。これにより、図4に示すようなラック10が組み立てられる。この場合、各サイドパネル30が蓄電池5個分に相当する支持部32を有しているため、収納機器ごとに対応したラック(棚)を1つずつフレーム構造体11にねじ又はボルト等の締結部材を用いて組み付ける場合に比べて、組立が格段に容易となる。
そして、上記のように組立てられたラック10に各蓄電池2を前方から挿入して、各蓄電池2の下側角部が幅方向両側にあるサイドパネル30の支持部32上に載置された状態にする。図9に示すように、蓄電池2の筐体における前端部の幅方向両側には、固定タブ50が例えば、溶接、ねじ留め等によって取り付けられている。この固定タブ50に形成された貫通孔にねじ52を挿通して、サイドパネル30の前側壁40に形成された雌ねじ孔42に締め付ける。これにより、各蓄電池2は互いの間に所定高さ寸法hの冷媒通路4が形成された状態でラック10に収納されて、蓄電装置1が組み立てられる。
図10は、冷媒通路4における空気の流れを概略的に示す図である。図10に示すように、ラック10の後壁面を構成するファンパネル70に設置したファン74が駆動されると、ラック10の前面において各蓄電池2間に形成される開口部から冷媒通路4に空気が吸引される。上述したように、冷媒通路4の幅方向両側は、サイドパネル30の閉塞部35によって塞がれている。そのため、ラック10の前方から冷媒通路4に進入した空気は、冷媒通路4内を後方へと流れる。その間に、空気は上下に位置する蓄電池2を冷却する。その後、空気は、バックパネル60に形成された貫通孔62,64を介してファン74からラック10の外部に排気される。
上述したように、本実施形態のラック10によれば、従来からある標準的なラック(例えばEIA規格の19インチラック)を用いて、規格外寸法を有する蓄電池2を、冷媒通路4を確保しながら容積効率良く高エネルギー密度で収納することができる。したがって、当該蓄電池2の寸法に応じた専用のラックを作製する場合に比べて、ラックに要するコストを大幅に削減できる。
また、本実施形態のラック10では、板状をなすサイドパネル30が前方支柱16,20と後方支柱18,22との間に架設されているので、ラック10の構造的強度が向上し、重量がある蓄電池2を上下方向に多数収納することが可能になる。
さらに、図1および図2に示すように、蓄電装置1において所定数の蓄電池2をラック10に収納した状態で、ラック10の上部に余剰空間90を設けることができる。このような余剰空間を利用して、各蓄電池2の電力の入出力制御や状態監視を行うための制御回路機器等を配置することが可能である。このように規格外の蓄電池を収納することによって生まれる余剰空間を有効利用することで、蓄電池関連機器を含む複数の蓄電池2をコンパクトに収納することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において、種々の改良や変更が可能である。
例えば、上記においては、2本の支柱16,18の間、および、2本の支柱20,22の間に、サイドパネル30を架設して取り付ける例について説明したが、これに限定されるものではない。蓄電池用ラックの幅方向の各側面にそれぞれ配置されるサイドパネルがその長さ方向中央部で各1本の支柱(合計2本の支柱)に取り付けられてもよい。この場合、天井部は必ずしも枠状をなしていなくてもよく、例えば両端が左右2本の支柱に連結されたL型アングル、コの字型アングル、パイプ、棒材等で天井部が構成されてもよい。
また、複数の蓄電装置が幅方向に隣り合って設置される場合、隣接する支柱を2基の蓄電装置で共通としてもよい。この場合、2基の蓄電装置について見れば、蓄電池用ラックの支柱の総数は例えば、前方3本、後方3本の合計6本で構成してもよい。
さらに、上記においては蓄電池用ラック10に収納される蓄電池2を等ピッチで収納して全ての冷媒通路4の高さ寸法hを同一に設定したが、これに限定されるものではない。例えば、ファン74の近くに位置する冷媒通路の高さ寸法に対して、ファン74から遠くに位置する冷媒通路の高さ寸法を大きく設定して冷却性能を向上させてもよい。