WO2016159179A1 - ヒト血清アルブミンを含む神経幹細胞増殖培地 - Google Patents

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Abstract

 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の、未分化性及び複分化能を維持したまま細胞増殖を促進する、ヒト血清アルブミンを含む神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞増殖培地、並びに当該培地を用いた神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞増殖方法等を提供する。

Description

ヒト血清アルブミンを含む神経幹細胞増殖培地
発明の技術分野
 本発明は、ヒト血清アルブミンを含む、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞増殖培地、及び当該培地を用いた神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞増殖方法等に関する。
 神経幹細胞は、自己複製能を有し、複分化能(multipotency)を有する未分化な細胞であり、神経系の多様な細胞(神経細胞及び神経前駆細胞(neural progenitor)、並びにグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト等)及びグリア前駆細胞等)を生み出す能力を有する細胞である。神経幹細胞及び神経前駆細胞は、神経細胞等の通常成体で増殖し難い細胞を供給することができるため、再生医療における生体材料の提供源として注目を集めており、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病などの難治性神経疾患や神経損傷に対する治療応用への期待が寄せられている。このような神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を用いた難治性神経疾患や神経損傷に対する治療、並びにこれらの治療法の開発研究などには、多量の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を必要とするため、インビトロでの神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養方法の開発及び改良は重要な課題の一つである。
 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養方法としては、これまでにいくつかの方法が報告されている。
 非特許文献1には、神経幹細胞のインビトロでの培養方法として、ニューロスフィア(neurosphere)培養が記載されている。該文献では、上皮細胞成長因子(EGF)および塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を含む無血清培地中で神経幹細胞を浮遊培養することにより、神経幹細胞の未分化状態を維持し複分化能を保持したまま増殖させることが可能であることが示されている。
 また、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を接着単層培養する方法としては、ラミニン、ポリLオルニチン、フィブロネクチン等の基質でコートされた培養器上で、EGF及び/又はbFGFを含む培地を用いて神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養する方法等が挙げられる(非特許文献2)。
 上記の接着単層培養においては、神経幹細胞は対称分裂を行い、自己複製することが報告されており、ニューロスフィア培養と比較して均一な細胞集団を提供可能であるという利点を有する。
 これらの培養方法は神経幹細胞及び神経前駆細胞をインビトロで培養できるという大きな利点を有するが、細胞の増殖が遅く培養に時間がかかるという欠点がある。従って、神経幹細胞や神経前駆細胞の未分化性及び複分化能を維持したまま増殖を促進させるための、改良された培地及び培養条件の開発が望まれる。
 ところで、血清アルブミンを含む培地については、これまでいくつかの記載がなされている。特許文献1には、幹細胞を内胚葉前駆細胞に分化させる培地として浸透圧を調節した培地を開示しており、ヒト血清アルブミンを添加した培地中でヒト人工多能性幹(iPS)細胞株を培養すると、内胚葉分化誘導の効率が促進されることが記載されている。また非特許文献3には、糖化反応(メイラード反応)の最終糖化生成物(AGE)が神経幹細胞の分化に及ぼす効果を検討するため、AGE修飾されたウシ血清アルブミンタンパク質を含む培地を用いて神経幹細胞の培養を行っている。当該培地中でニューロスフィア培養を行うとグリア細胞の一種アストロサイトへの分化が促進されることが報告されている。さらに、非特許文献4には、浸透圧維持並びに成長因子及び脂肪酸保持のためにウシ血清アルブミンを添加した初代脳腫瘍細胞培養用培地について記載されている。これらに加え、ウシ血清アルブミンは安価で入手しやすいため、培地中の浸透圧を調製するため、又は脂肪酸などの難溶性の化合物を可溶化するため、培地中に添加することもある。
 しかしながら、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能の維持や増殖促進にヒト血清アルブミンが及ぼす影響については全く明らかになっていない。
米国特許出願公開第20130224857号明細書
Science,1992,255(5052),1707-10. PLoS Biology,2005,3(9),e283 International Journal of Molecular Sciences,2014,15(1),159-170 BioTechniques,2013,55(2),83,85-86,88
 本発明の目的は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の、未分化性及び複分化能を維持したまま細胞増殖を促進する培地を提供することであり、また、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能を維持したまま細胞増殖を促進させる方法を提供することである。
 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒト血清アルブミンが、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能の維持並びに増殖促進に働くことを見出し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1] ヒト血清アルブミンを含む神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞用培地。
[2] 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持用である、上記[1]に記載の培地。
[3] 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進用である、上記[1]又は[2]に記載の培地。
[4] 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持かつ増殖促進用である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の培地。
[5] 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が多能性幹細胞由来である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の培地。
[6] ヒト血清アルブミンがリコンビナントのヒト血清アルブミンである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の培地。
[7] ヒト血清アルブミンがヒト血漿由来である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の培地。
[8] 培地中に脂肪酸を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の培地。
[9] 培地中の脂肪酸量が50μM以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の培地。
[10] 培地中の脂肪酸量が20μM以下である、上記[1]~[9]のいずれかに記載の培地。
[11] 培地中のヒト血清アルブミン量が0.2mg/mL以上20mg/mL以下である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の培地。
[12] 培地中のヒト血清アルブミン量が0.5mg/mL以上10mg/mL以下である、上記[1]~[11]のいずれかに記載の培地。
[13] 浮遊培養用である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の培地。
[14] 無血清培地である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の培地。
[15] 塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の培地。
[16] 培地中のbFGF量が1ng/mL以上200ng/mL以下である、上記[15]に記載の培地。
[17] ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を増殖させる方法。
[18] ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持方法。
[19] ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を未分化維持させながら増殖促進する方法。
[20] 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が多能性幹細胞由来である、上記[17]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21] ヒト血清アルブミンがリコンビナントのヒト血清アルブミンである、上記[17]~[20]のいずれかに記載の方法。
[22] ヒト血清アルブミンがヒト血漿由来である、上記[17]~[20]のいずれかに記載の方法。
[23] 培地に脂肪酸が含まれることを特徴とする、上記[17]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24] 培地中の脂肪酸量が50μM以下である、上記[17]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25] 培地中の脂肪酸量が20μM以下である、上記[17]~[24]のいずれかに記載の方法。
[26] 培地中のヒト血清アルブミン量が0.2mg/mL以上20mg/mL以下である、上記[17]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27] 培地中のヒト血清アルブミン量が0.5mg/mL以上10mg/mL以下である、上記[17]~[26]のいずれかに記載の方法。
[28] 該培地中で神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を浮遊培養することを特徴とする、上記[17]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29] 上記[1]~[16]のいずれかに記載の培地並びに神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を含んでなる培養組成物。
 本発明によれば、未分化性、複分化能を維持したまま長期に効率よく神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養を行うことが可能となる。その結果、培養により多量の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を得ることが可能となる。また、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養にかかるコストを削減することが可能となる。本発明によれば、特に治療用のヒトの神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養の際に、異種由来の成分の混入を避けることが可能となる。
ヒト血清アルブミン濃度依存的なニューロスフィアの分化抑制傾向を示す。それぞれ最終濃度0.2mg/mL、1mg/mL、2.1mg/mLとなるようにヒト血清アルブミンを添加した培地中で14日間培養後のニューロスフィアを示す。1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地で培養したニューロスフィア(左下)及び2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地で培養したニューロスフィア(右下)は、14日間培養後も良好なニューロスフィア形態を維持した。ヒト血清アルブミンを添加していない培地で培養したニューロスフィア(左上)は、14日間培養後、ニューロスフィア様の形態を失い、多数の突起を有する細胞が観察された。0.2mg/mLヒト血清アルブミン添加培地で培養したニューロスフィア(右上)は、14日間培養後、ニューロスフィア様の形態を一部失ったが、ヒト血清アルブミンを添加していない培地で培養したニューロスフィア(左上)と比較して、分化は抑制傾向にあった。 2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地中にて培養したニューロスフィアにおける、免疫染色の結果を示す。βIIIチューブリン(緑)陽性の神経細胞が多数観察された。 ヒト血清アルブミンを添加した脂肪酸(オレイン酸)を含む培地中で培養したニューロスフィアの形態を示す。60μMで黒色の異形スフィア像が多数確認された。 ヒト血清アルブミンのLong-term self-renewing neuro epithelial-like stem cells(LtNES細胞)の分化抑制傾向を示す。それぞれ最終濃度0.21mg/mL、1mg/mL、2.1mg/mLとなるようにヒト血清アルブミンを添加した培地中で4~5日間培養後のLtNES細胞を示す。1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地において細胞数が最も増加し、0.21、2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地においても細胞は良好な増殖を示した。
 本発明は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能を維持したまま細胞増殖を促進する培地(以下、これを本発明の培地ともいう)、及び、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性、複分化能を維持したまま長期に効率よく培養する方法(以下、これを本発明の方法ともいう)を提供する。
 (1)ヒト血清アルブミン
 アルブミンとは、卵白、血清、乳汁などに含まれる凝固しやすいタンパク質の総称である。アルブミンは、弱酸性から弱アルカリ性溶液(希酸、水、希アルカリ)に可溶であるが、50%の硫酸アンモニウムで塩析されず、高濃度の硫酸アンモニウムで沈殿する。分子量数万以下(45,000程度)で多くの物は等電点pI4.5~6の球状タンパク質であることが知られている。代表的なものとしては、オボアルブミン、ラクトアルブミン、血清アルブミン、パルブアルブミンなどが挙げられる。
 血清アルブミンタンパク質は、血清中に多く存在するタンパク質の一つであり、分子量約66,000の可溶性の球状タンパク質である。プレプロアルブミンよりプロアルブミンを経て生成される。血漿タンパク質中の50%から60%を占めることが知られており、血清アルブミンの濃度は血漿や間質液の浸透圧調節に大きな役割を果たす。また、血中の難溶性物質(脂肪酸や薬剤等)と結合して運搬する役目を果たすことも知られている。
 本発明に用いるヒト血清アルブミンは、天然のヒト血清アルブミンであってもよく、非天然であってもよい。ヒト血清アルブミンは、血漿成分から単離精製した血漿由来のヒト血清アルブミンであってもよく、遺伝子組み換え技術により微生物、細胞又は植物などにより産生させたものから単離精製したリコンビナントのヒト血清アルブミンであってもよい。治療などの目的のために神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養する場合、異物の混入を避けるという観点から、本発明に用いるヒト血清アルブミンは、好ましくは、リコンビナントのヒト血清アルブミンであることが望ましい。
 本発明に使用するヒト血清アルブミンは、銅イオン、亜鉛イオンなどの金属イオン、グルタチオン、ピリキサドール、ビリルビン又は脂肪酸などと結合したものであってもよく、金属イオン、グルタチオン、ピリキサドール、ビリルビン及び脂肪酸のいずれとも結合していないものであってもよい。脂肪酸と結合したヒト血清アルブミンを用いて本発明の培地を作製する場合、ヒト血清アルブミンの脂肪酸担持量は、好ましくは10mg/g以下、より好ましくは6mg/g以下であり、ヒト血清アルブミンの脂肪酸担持量は0mg/gであっても構わない。
 ヒト血清アルブミンの脂肪酸担持量の測定は、当分野で通常実施されている方法またはそれに準じた方法を用いて実施することができ、例えば、遊離脂肪酸をメチルエステル化後GC-MSによる検出や、赤外分光による定量に加えてDuncombeの抽出法、アシル-CoAシンセターゼ(ACS)とアシル-CoAオキシダーゼ(ACOD)を使用したACS-ACOD法などが挙げられる。いずれも測定キットとして市販されているものを利用することができる。本発明に使用するヒト血清アルブミンは、脂肪酸担持量が高いHSAを、例えばWO2014/192938等に記載の方法により、結合する脂肪酸量を上記範囲に低減させたものであってもよく、市販の脂肪酸フリーヒト血清アルブミン(例、Essentially fatty acid free(~0.005%)、Sigma Aldrich等)を用いてもよい。組成が不明確な脂肪酸の培地への混入を避けるという観点から、脂肪酸と結合したヒト血清アルブミンを使用する場合、ヒト血清アルブミンは、(1)脂肪酸担持量の低い(通常0.02%以下、好ましくは0.005%以下)ヒト血清アルブミン、(2)(1)のヒト血清アルブミンに組成が明確な脂肪酸(例えばリノール酸)を担持させたヒト血清アルブミンのいずれかを用いることが好ましい。
 上記脂肪酸担持量の低いヒト血清アルブミンを用いた場合であっても、ヒト血清アルブミンは培地中の脂肪酸と結合し得るため、培地中のヒト血清アルブミンの脂肪酸担持量は上記の値から変化し得る。
 糖化反応(メイラード反応)により形成される最終糖化生成物は種々の毒性があることが知られているため、ヒト血清アルブミンは、最終糖化生成物でないことが好ましい。
 本発明に使用するヒト血清アルブミンは、単量体であってもよく、多量体を形成していても良い。好ましくは、ヒト血清アルブミンは単量体である。
 本発明の方法において、培地にヒト血清アルブミンを添加する場合、ヒト血清アルブミンを添加するタイミングは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に制限されない。ヒト血清アルブミンは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されず、培養開始時又は培養途中の任意のタイミングで添加することができる。
 本発明において、培地中のヒト血清アルブミンの量は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、例えば下限値としては0.2mg/mL以上、好ましくは0.5mg/mL以上、更に好ましくは約1mg/mL以上であり、最も好ましくは1mg/mL以上であり、上限値としては20mg/mL以下、好ましくは10mg/mL以下、更に好ましくは約5mg/mL以下であり、最も好ましくは5mg/mL以下である。ここで、「約」とは±10%を許容する意味で用いる。本発明において、培地中のヒト血清アルブミンの量は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、0.2mg/mL~20mg/mL、好ましくは0.5mg/mL~10mg/mL、より好ましくは1mg/mL~5mg/mL、さらに好ましくは約1mg/mL~約2.1mg/mL、最も好ましくは1mg/mL~2.1mg/mLである。ここで、「約」とは±10%を許容する意味で用いる。培地に含まれるヒト血清アルブミンの量が0.2mg/mL未満の場合、神経細胞へと分化する細胞の割合が増加する点で望ましくない。一方、培地に含まれるヒト血清アルブミンの量は多くても問題はないが、通常、培地に含まれる量としては20mg/mL以下が適当である。
 血漿由来のヒト血清アルブミンは、自体公知の方法により入手可能である。例えば、ヒト血清アルブミンは、血漿成分中から単離することにより入手できる。ヒト血漿成分中からヒト血清アルブミンを単離する方法の一例としては、限定されるものではないが、低温エタノール分画法(Cohn Method)が挙げられる。低温エタノール分画法とは、低温下でエタノール濃度、pH等を調整することにより血漿タンパクを分離する方法であり、低温エタノール分画法により得られたヒト血清アルブミン画分(ヒト血清アルブミンは画分Vに分画される)から天然のヒト血清アルブミンを入手することができる。また、Kistlerらによる方法(Graham,J.M.,Rickwood,D.Subcellular Fractionation,a Practical Approach.Oxford University Press.1997)、Tanaka Kらによる方法(Braz J Med Biol Res.1998 Nov;31(11):1383-8)などのCohn Methodを改良した方法によっても、血漿成分からヒト血清アルブミンを分離することが可能である。
 リコンビナントのヒト血清アルブミンの入手方法としては、酵母菌などの微生物、動物細胞又は植物などにヒト血清アルブミンを生産させ、培養物からヒト血清アルブミンを単離精製する方法が挙げられるが、これらに限定されない。微生物にヒト血清アルブミンを生産させる方法としては、酵母を用いる方法(Quirk AVら,Biotechnol Appl Biochem.1989 Jun;11(3):273-87、Okabayashi Kら,J Biochem.1991 Jul;110(1):103-10、特開昭60-41487号公報、特開昭63-39576号公報、特開昭63-74493号公報)、大腸菌を用いる方法(Lawn RMら,Nucleic Acids Res.1981 Nov 25;9(22):6103-114)、枯草菌を用いる方法(Saunders CWら,J Bacteriol.1987 Jul;169(7):2917-25、特開昭62-25133号公報)などが挙げられる。植物にヒト血清アルブミンを生産させる方法としては、イネ(Oryza sativa)の胚乳中でヒト血清アルブミンを生産させる方法(Heら,Proc Natl Acad Sci USA.2011 Nov 22;108(47):19078-83)などが挙げられる。また、CHO細胞などの動物細胞に生産させたヒト血清アルブミンを使用することもできる。これらのヒト血清アルブミン産生宿主からのヒト血清アルブミンの単離精製は、上記の文献に準じた方法、特開平5-317079号公報、特開平6-56883号公報、特開平6-245789号公報、特開平7-170993号公報、特開平7-170994号公報、特表平6-500050号公報、特開2005-348745号公報、特開2007-130025号公報などに記載の精製方法に準じた方法、又はアフィニティークロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーなど自体公知の方法、及びそれらの組み合わせなどを適宜選択し行われる。
 ヒト血清アルブミンのcDNA配列としては、NCBI Accession No.としてAF542069、DQ986150、AY960291、NM_000477等が例示されるが、これらに限定されない。ヒト血清アルブミンのアミノ酸配列としては、NCBI Accession No.としてNP_000468、AAA98797、CAA00844、CAA02034等が例示されるが、これらに限定されない。
 ヒト血清アルブミンとしては、
1)上記ヒト血清アルブミンのアミノ配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進するタンパク質、
2)上記ヒト血清アルブミンのアミノ配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持効果を有するタンパク質、
などが含まれる。
 上記タンパク質が神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進効果を有するか否かは、例えば、該タンパク質を添加した培地中又はタンパク質を添加していない培地中で、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を播種し、該培地中で14日間培養後の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の数を測定し比較することで判定できるが、これに限定されない。また、培養期間は13日以下、15日以上など適宜選択可能である。また、タンパク質が神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持効果を有するか否かは、例えば、該タンパク質を添加した培地中又はタンパク質を添加していない培地中で、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を播種し、該培地中で14日間培養後の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を後述の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞マーカーで染色し、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞マーカーで染色される細胞数を測定し比較することで判定できるが、これに限定されない。なお、上記タンパク質にはヒト血清アルブミンが含まれる。
 ヒト血清アルブミンは、商業的に入手可能なものを用いることもできる。商業的に入手可能なリコンビナントのヒト血清アルブミンとしては、シグマアルドリッチ社A9731(型番)、サイエンセルリサーチラボラトリーズ社OsrHSA-10(型番)、ウーハンヘルスジェンバイオテクノロジーズ社HY01E-10g(型番)、イーエンザイム社HSA-1r(型番)、バイオベルデ社IBK-A1-10(型番)等の組換えイネ由来の製品やシグマアルドリッチ社A7223(型番)、A6608(型番)、A7736(型番)、ノボザイム社のAlbucult(登録商標)(製品名)、Recombumin alpha(登録商標)(製品名)、AlbIX(登録商標)(製品名)等の組換え酵母由来の製品が挙げられる。商業的に入手可能なヒト血漿由来ヒト血清アルブミンとしては、シグマアルドリッチ社A1887(型番)、A1653(型番)、A9511(型番)、A3782(型番)、A8763(型番)、A4327(型番)、バイオロジカルインダストリーズ社Bio-Pure HSA 10% Solution(製品名)等の製品が挙げられる。
 (2)神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞
 本明細書中、神経幹細胞とは、神経系細胞(神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)、並びにそれらの前駆細胞)への複分化能(multipotency)を維持し、自己複製能を有する未分化な細胞を意味する。具体的には、神経幹細胞とは、神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)を最終的に生み出す能力を有し、かつ、初期化などの特別な操作を加えない限りにおいて、表皮系細胞、血球系細胞、筋肉細胞等の神経系以外の細胞を実質的に生み出さない細胞である。実質的に生み出さないとは、神経幹細胞の生み出す細胞のうち、90%以上が、神経細胞及びグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイトなど)、並びにそれらの前駆細胞(神経幹細胞を含む)のいずれかである状態を指す。
 本明細書中、神経前駆細胞(neural progenitor)とは、分裂能を有する未分化な細胞であって、1種以上の神経細胞に最終的に分化する能力を有する細胞を指す。神経前駆細胞は、神経細胞を最終的に生み出すよう運命決定され、かつ神経細胞及びその前駆細胞以外を実質的に生み出さない細胞を指す。グリア前駆細胞(glial progenitor)とは、神経幹細胞に由来し、分裂能を有する未分化な細胞であって、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、上衣細胞、シュワン細胞のいずれか又はそれらの前駆細胞に分化する能力を有し、かつ神経細胞に実質的に分化しない細胞を指す。
 神経幹細胞及び神経前駆細胞は、厳密に区別することが困難なため、本明細書中「神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞」として区別なく使用される場合がある。
 本発明においては、通常、哺乳動物由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が用いられる。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において用いられる神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、好ましくはマウス等のげっ歯類又はヒト等の霊長類の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞であり、より好ましくは、ヒト神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞である。
 本発明に用いられる神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、多能性幹細胞由来のもの、生体組織から分離したもの、線維芽細胞などから多能性幹細胞を経由せずに直接分化誘導したもの(Stem Cells.2012 Jun;30(6):1109-19)などが挙げられ、上記に記載の未分化性を維持し複分化能を維持する細胞であって神経細胞を生み出す能力を維持する限り、特に制限されない。本明細書中、多能性幹細胞とは、自己複製能及び分化/増殖能を有する未熟な細胞であって、胎盤を除く生体を構成する全ての組織や細胞へ分化し得る能力を有する細胞を意味する。多能性幹細胞の例としては、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)(Takahashi Kら,Cell.2007 Nov 30;131(5):861-72)、精子幹細胞(Kanatsu-Shinohara Mら,Biol Reprod.2007 Jan;76(1):55-62)、胚性生殖細胞(Matsui Yら,Cell.1992 Sep 4;70(5):841-7)、核移植により得られたクローン胚由来のES細胞(Wakayama Tら,Science.2001 Apr 27;292(5517):740-3)などが挙げられる。
 多能性幹細胞由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は自体公知の方法により、入手できる。多能性幹細胞由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の作成方法としては、多能性幹細胞の浮遊培養を行い胚葉体形成を経由して神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を形成させる方法(Bain Gら,Dev Biol.1995 Apr;168(2):342-57など)、ストローマ細胞等をフィーダー細胞として使い多能性幹細胞を培養する方法、bFGFを含む無血清培地中で多能性幹細胞を浮遊培養を行う方法(Watanabe Kら,Nat Neurosci.2005 Mar;8(3):288-96など)、SMADシグナル阻害剤Noggin及びSB431542の存在下で多能性幹細胞(ES細胞等)を接着培養する方法(Chambers SMら,Nat Biotechnol.2009 Mar;27(3):275-80)、単層培養した多能性幹細胞(ES細胞等)を、glycogen synthase kinase 3(GSK3)阻害剤、transforming growth factor β(TGF-β)阻害剤、Notchシグナル阻害剤存在下で培養する方法(Li Wら,Proc Natl Acad Sci USA.2011 May 17;108(20):8299-304)などが挙げられる。
 好ましくは、本発明に用いられる神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、ES細胞又は人工多能性幹細胞由来であり、より好ましくは人工多能性幹細胞由来である。
 細胞が神経幹細胞であることは、例えば、細胞をEGF及びbFGFを含む無血清培地中で浮遊培養し、培養した細胞塊を分散処理後に、接着培養を行うことにより、神経細胞及びグリア細胞に分化誘導させることによって確認することができる。
 また、神経幹細胞は、神経幹細胞で発現することが知られている遺伝子、その転写産物、タンパク質など(神経幹細胞マーカー)により確認することもできる。
 神経幹細胞マーカーとしては、細胞骨格タンパク質であるネスチン(Nestin;Science,276,66(1997))、SOX1(SRY(sex determining region Y)-box1)、SOX2(SRY(sex determining region Y)-box2)、Pax6(paired box 6)、Ki67、増殖細胞核抗原(PCNA)、脂肪酸結合タンパク質7(Fabp7、BLBPともいう)などが知られており、当業者は、これらのマーカーを適宜組み合わせて所望の神経幹細胞であることを確認することができる。本発明に適した神経幹細胞としては、例えば、SOX2陽性かつネスチン陽性である細胞が挙げられるが、これに限定されない。
 細胞が神経前駆細胞であることは、例えば、細胞を培養し、神経細胞に分化誘導させることによって確認することができる。
 神経前駆細胞で発現する遺伝子としては、Tbr2(T-box brain protein 2)、MASH1(Mammalian achaete-scute homolog 1)、ネスチン等が挙げられる。本発明に適した神経前駆細胞としては、SOX2陰性かつネスチン陽性である細胞が挙げられるが、これに限定されない。
 分化した神経細胞のマーカーの例としては、βIIIチューブリン、MAP2(microtubule-associated protein)等が挙げられる。
 本明細書中、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が未分化維持するとは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が分裂後に形成する細胞のうち1以上の細胞が神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞としての性質を維持し続けること、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の分化が抑制されていること、あるいは神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が分裂せず神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞としての性質を維持し続けることを言う。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が分裂後に形成する細胞が、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞としての性質を維持しているか否かは、例えば、上述のマーカーにより確認することができる。
 本明細書中、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の分化が抑制されるとは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が生み出す全細胞のうち、分化した細胞(例えば神経細胞)の占める割合が減少することを言う。分化の抑制は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞から神経細胞などへの分化抑制であってもよい。分化抑制されているか否かは、例えば、上述の分化マーカー(例えばβIIIチューブリン等の神経細胞マーカー)により確認することができる。
 一態様において、本発明において用いられる神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、単離されている。「単離」とは、目的とする成分や細胞以外の因子を除去する操作がなされ、天然(例、生体内)に存在する状態を脱していることを意味する。
 (3)本発明の培地
 本発明の一実施形態として、本発明は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養用の培地を提供する。本発明の培地は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能を維持させ、増殖を促進させる効果を有する。本発明の一実施形態として、本発明の培地は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持用であり、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進用であり、あるいは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持かつ増殖促進用である。
 本発明の培地は、ヒト血清アルブミンを含む。添加するヒト血清アルブミンについては前述のとおりである。本発明の培地に含まれるヒト血清アルブミン以外の成分については、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されず、通常の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養に使用される組成を適宜採用し得る。
 本発明の培地は、動物細胞の培養に通常用いられる培地を基礎培地として調製してもよい。基礎培地としては、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、F-12培地、DMEM/F12培地、IMDM/F12培地、ハム培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、又はこれらの混合培地など、動物細胞の培養に用いることのできる培地を挙げることができる。本発明の培地は、幹細胞培養用として通常用いられる培地を基礎培地として調製してもよい。市販の幹細胞培養用の基礎培地としては、RHB培地(StemCells,Inc.)、TeSRTM-E6(STEMCELL Technologies)、hESF-GRO培地(ニプロ株式会社)、HESF-DIF培地(ニプロ株式会社)、CSTI-7(株式会社細胞科学研究所)、Essential 6培地(Life Technologies)等が挙げられる。
 本発明に用いる培地は、化学的に未決定な成分の混入を回避する観点から、好ましくは、含有成分が化学的に決定された培地(Chemically defined medium;CDM)である。
 血清中には神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の分化を促進する成分が含まれることから、本発明の培地は、無血清培地であることが好ましい。本発明における「無血清培地」とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味する。本発明では、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、EGF、bFGFなどの増殖因子)が混入している培地も、無調整又は未精製の血清を含まない限り無血清培地に含まれる。
 無血清培地は、血清代替物を含有していてもよい。血清代替物としては、例えば、トランスフェリン、脂肪酸、コラーゲン前駆体、微量元素、2-メルカプトエタノール又は3’チオールグリセロール、あるいはこれらの均等物などを適宜含有するものを挙げることができる。かかる血清代替物は、例えば、WO98/30679に記載の方法により調製することができる。血清代替物としては市販品を利用してもよい。かかる市販の血清代替物としては、例えば、GlutamaxTM(Life Technologies社製)、N2(Life Technologies社)が挙げられるが、これらに限定されない。
 本発明の培地をヒト神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞に用いる場合、異種由来の成分の混入を避けるという観点から、ウシ血清アルブミン等のヒト以外の動物由来の血清アルブミンを含まないことが好ましい。
 本発明の培地がヒト以外の動物由来のアルブミンを含む場合であっても、異種由来の成分の混入を避けるという観点から、その量は可能な限り低減されていることが好ましい。具体的には、本発明の培地中のヒト以外の動物由来のアルブミンの量は、通常1000ng/mL以下、好ましくは500ng/mL以下、より好ましくは100ng/mL以下、さらに好ましくは10ng/mL以下、さらにより好ましくは0ng/mLである。
 本発明の培地は、さらに培地添加物を含有してもよい。培地添加物としては、ビタミン類、グルタミンなどの非必須アミノ酸、サイトカイン及び成長因子などのタンパク質、L-アスコルビン酸、リン酸L-アスコルビルマグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、2-アミノエタノール、グルコース、炭酸水素ナトリウム、HEPES、インスリン、プロゲステロン、セレン酸ナトリウム、プトレシン等が挙げられるが、これらに限定されない。添加物は自体公知の濃度範囲内で含まれることが好ましい。
 本発明の培地は、必須アミノ酸(L-リジン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-トレオニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-トリプトファン)を含む。本発明の培地は、好ましくは、L-セリン、L-シスチン、グリシン、L-システイン、L-プロリン、L-メチオニン、L-グルタミン酸、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸及びL-アラニン、L-グルタミン、L-アルギニン、L-チロシンを含む。
 本発明の培地は、イノシトール、塩化コリン、葉酸、D-パントテン酸カルシウム、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ナイアシンアミド、ビタミンB12、リボフラビン(ビタミンB2)、D-ビオチン、D-グルコース、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチン、チミジン、リポ酸、プトレシン塩酸塩から成る群より選択される培地添加物を1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上含む。
 本発明の培地は、好ましくは、上皮細胞成長因子(EGF)及び/又は塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含み、より好ましくはbFGFを含む。
 本発明において培地中のbFGFの量の上限値は、所望の効果を達成し得る限り制限されないが、好ましくは1000ng/mL以下、より好ましくは500ng/mL以下、さらに好ましくは200ng/mL以下である。
 本発明において培地中のbFGFの量の下限値は、所望の効果を達成し得る限り制限されないが、好ましくは0.1ng/mL以上、より好ましくは1ng/mL以上、さらに好ましくは10ng/mL以上である。
 本発明において培地中のbFGFの量は、所望の効果を達成し得る限り制限されないが、好ましくは0.1ng/mL~1000ng/mL、より好ましくは1ng/mL~200ng/mL、さらに好ましくは10ng/mL~200ng/mLである。
 一態様として、本発明の培地は、bFGF(終濃度10ng/mL~200ng/mL)を含む。
 また、本発明の培地は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の分化を促進させる効果を有する物質(本明細書中、神経分化促進物質ともいう)を実質的に含まないことが好ましい。
 神経分化促進物質の例としては、BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)、GDNF(Glial cell line-derived neurotrophic factor)、cAMP(Cyclic adenosine monophosphate)、dbcAMP(dibutyryl cAMP)、DAPT(tert-butyl (2S)-2-[[(2S)-2-[[2-(3,5-difluorophenyl)acetyl]amino]propanoyl]amino]-2-phenylacetate)、compound E(N-[(1S)-2-[[(3S)-2,3-Dihydro-1-methyl-2-oxo-5-phenyl-1H-1,4-benzodiazepin-3-yl]amino]-1-methyl-2-oxoethyl]-3,5-difluorobenzeneacetamide)、SU5402(2-[(1,2-Dihydro-2-oxo-3H-indol-3-ylidene)methyl]-4-methyl-1H-pyrrole-3-propanoic acid)、SU6668(3-[2,4-dimethyl-5-[(E)-(2-oxo-1H-indol-3-ylidene)methyl]-1H-pyrrol-3-yl]propanoic acid; Orantinib; 3-[2, 4-dimethyl-5-[(E)-(2-oxo-1H-indol-3-ylidene)methyl]-1H-pyrrol-3-yl] propanoic acid)が挙げられる。
 神経分化促進物質を実質的に含まないとは、神経分化促進物質が含まれていても神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の分化を促進し得ない量であり、用いる神経分化促進物質の種類によって適宜設定される。
 より好ましくは、本発明の培地に含まれる神経分化促進物質の濃度は、0μMである。
 本発明の培地は、脂肪酸を含んでもよい。本発明の培地に含まれる脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、イコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、酪酸、酢酸、パルミトレイン酸、吉草酸(バレリアン酸)、カプロン酸、エナント酸(ヘプチル酸)、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、マルガリン酸、クセン酸、エレオステアリン酸、アラキジン酸、8,11-エイコサジエン酸、5,8,11-エイコサトリエン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の培地に含まれる脂肪酸は、所望の効果を達成し得る限り特に限定されず、飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。
 所望の効果を達成し得る限り限定されるものではないが、培地には通常リノール酸が使用されている。
 本発明の培地には、通常、基礎培地に由来する脂肪酸が含まれている。
 本発明において、培地中の脂肪酸の量は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り、あるいは所望の効果に悪影響を及ぼさない限り特に限定されないが、50μM以下、好ましくは25μM以下、より好ましくは22μM以下、更に好ましくは20μM以下、更により好ましくは20μM未満である。脂肪酸の濃度が60μMの場合では、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞のうち、その多数が通常よりも増殖能が低い黒色の異形スフィアを形成する細胞となる点で望ましくなく、培地中の脂肪酸の量は50μM以下が望ましく、量が少ないほど黒色の異形スフィアが形成されにくくなるので望ましい。
 本発明の培地は、通常の基礎培地に含まれる程度の量の脂肪酸を含むことが好ましく、その量は、好ましくは0.01μM以上、より好ましくは0.05μM以上、さらに好ましくは0.1μM以上である。
 本発明において培地中の脂肪酸濃度は、所望の効果を達成し得る限り制限されないが、好ましくは0.01μM~50μM、より好ましくは0.05μM~25μM、さらに好ましくは0.05μM~22μM、さらにより好ましくは0.1μM~22μM、最も好ましくは0.1μM~20μMである。
 本発明の培地が脂肪酸と結合しているヒト血清アルブミンを含む場合、上記「培地中の脂肪酸の量」は、培地中の遊離脂肪酸の量に加え、ヒト血清アルブミンと結合している脂肪酸の量も含む。
 脂肪酸と結合したヒト血清アルブミンを添加して本発明の培地を作製する場合、所望の培地脂肪酸量を達成できるよう、脂肪酸担持量が適切なヒト血清アルブミンを使用して本発明の培地を作製することが望ましい。
 2種以上の脂肪酸が本発明の培地中に含まれている場合には、その合計量が上記範囲となるように設定されることが好ましい。
 好ましくは、本発明の培地は、bFGF(10ng/mL~200ng/mL)及びヒト血清アルブミン(0.5mg/mL~10mg/mL)を含み、培地中の脂肪酸量が0.05μM~50μMである無血清培地である。
 より好ましくは、本発明の培地は、bFGF(10ng/mL~200ng/mL)、ヒト血清アルブミン(約1mg/mL~約2.1mg/mL)を含み、ヒト以外の動物由来の血清アルブミンの濃度が500ng/mL以下であって、培地中の脂肪酸量が約0.1μM~約20μMである無血清培地である。ここで、「約」とは±10%を許容する意味で用いる。
 好ましい一態様として、本発明の培地は、ヒト血清アルブミンに加え、トランスフェリン、インスリン、NaHCO、セレン、エタノールアミン、bFGFを含む。より好ましくは、本発明の培地は、ヒト血清アルブミンに加え、トランスフェリン、インスリン、NaHCO、セレン、エタノールアミン、bFGF、イノシトール、塩化コリン、葉酸、D-パントテン酸カルシウム、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ナイアシンアミド、ビタミンB12、リボフラビン(ビタミンB2)、D-ビオチン、D-グルコース、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチン、チミジン、リポ酸、プトレシン、リノール酸、L-リジン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-トレオニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-トリプトファン及びL-アスパラギンを含む無血清培地である。
 一態様として、本発明の培地は、DMEM/F-12培地を基礎培地とし、ヒト血清アルブミン(0.5mg/mL~10mg/mL)に加え、トランスフェリン(0.5μg/mL~100μg/mL)、インスリン(5μg/mL~1mg/mL)、NaHCO(100μg/mL~5mg/mL)、セレン酸ナトリウム(2ng/mL~1μg/mL)、エタノールアミン(100ng/mL~100μg/mL)、bFGF(10ng/mL~200ng/mL)を含む。
 別の好ましい態様として、本発明の培地は、ヒト血清アルブミンに加え、bFGF、hLIF、グルコース、グルタミン、NaHCO、HEPES、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、セレン酸ナトリウム、プトレシンを含む。より好ましくは、本発明の培地は、ヒト血清アルブミンに加え、グルコース、グルタミン、NaHCO、HEPES、インスリン、トランスフェリン、プロゲステロン、セレン酸ナトリウム、プトレシン、イノシトール、塩化コリン、葉酸、D-パントテン酸カルシウム、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB6)、ナイアシンアミド、ビタミンB12、リボフラビン(ビタミンB2)、D-ビオチン、D-グルコース、ピルビン酸ナトリウム、ヒポキサンチン、チミジン、リポ酸、プトレシン、リノール酸、L-リジン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-トレオニン、L-バリン、L-フェニルアラニン、L-ヒスチジン、L-トリプトファン、L-アスパラギンを含む無血清培地である。
 一態様として、本発明の培地は、DMEM/F-12培地を基礎培地とし、ヒト血清アルブミン(0.5mg/mL~10mg/mL)に加え、bFGF(10ng/mL~200ng/mL)、hLIF(1ng/mL~100ng/mL)、グルコース(1mg/mL~10mg/mL)、グルタミン(100μg/mL~1mg/mL)、NaHCO(100μg/mL~5mg/mL)、HEPES(100μg/mL~5mg/mL)、インスリン(5μg/mL~1mg/mL)、トランスフェリン(0.5μg/mL~100μg/mL)、プロゲステロン(2ng/mL~1μg/mL)、セレン酸ナトリウム(2ng/mL~1μg/mL)、プトレシン(100μg/mL~10mg/mL)を含む。
 本発明の培地は、接着培養、浮遊培養、包埋培養、組織培養等のいずれの培養方法にも用いることができる。好ましくは、本培地は浮遊培養用である。
 本発明の培地は、いずれの動物由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養にも好適に使用することができる。本発明の培地を使用して培養され得る神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞であり、好ましくは、ヒト由来の神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞である。
 (4)本発明の方法
 本発明の一実施形態として、本発明は、ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養方法を提供する。当該方法は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を増殖させ、未分化を維持する方法でもある。
 本発明の一実施形態として、本発明の方法は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を本発明の培地で培養する工程を含む。また別の本発明の実施形態としては、本発明の方法は、ヒト血清アルブミンを含まない培地にヒト血清アルブミンを添加し、ヒト血清アルブミン存在下で一定期間培養する工程を含む。
 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に制限されるものではないが、本発明の方法における神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養する期間は、通常2日間以上、好ましくは4日間以上、さらに好ましくは8日以上である。
 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を4日以上続けて培養する場合、3日に一回、好ましくは2日に一回培地を交換することが好ましい。
 本発明の方法において培地にヒト血清アルブミンを添加する時間は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得るような長さの時間である限り特に限定されないが、好ましくは培養期間中の全期間においてヒト血清アルブミンを含む培地で培養する。培地の組成は前述のとおりである。
 本発明の方法において、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、用いる培地にヒト血清アルブミンが含まれていることを除いては、接着培養、浮遊培養、組織培養などの自体公知の方法により培養可能である。培養方法は目的に応じて適宜選択可能である。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の接着培養方法の例としては、Flanagan LAら,J Neurosci Res.2006 Apr;83(5):845-56、Conti Lら,PLoS Biology.,2005 Sep;3(9):e283などに記載の方法が挙げられる。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の浮遊培養とは、培地中において、培養器又はフィーダー細胞(用いられる場合)に対して非接着性の条件下で神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養することをいう。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の浮遊培養方法の例としては、ニューロスフィア法(Reynolds BA and Weiss S.,Science,USA,1992 Mar 27;255(5052):1707-10)、無血清凝集浮遊培養法(SFEB法、SFEBq法;Watanabeら,Nature Neuroscience 8,288-296(2005))などが挙げられる。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の組織培養とは、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を含む組織を、スライスなどの組織片又は組織全体として培養する方法である。神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の組織培養としては、O’Rourke NAら,Science.1992 Oct 9;258(5080):299-302.、Komuro Hら,Science.1992 Aug 7;257(5071):806-9に記載のスライス培養法などが挙げられる。本発明の方法において、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、ヒト血清アルブミンを含む培地中で浮遊培養されることが好ましい。
 浮遊培養により神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、球状の塊、いわゆるニューロスフィアを形成する。浮遊培養を行う場合、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖の有無、程度は形成されるニューロスフィアの大きさ、あるいはニューロスフィアを構成する細胞の数を測定することによって評価することができる。また、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖の有無や、その程度は、トリパンブルー等の細胞染色試薬を用いて生細胞数を計測することによっても評価することができる。
 本発明の方法において、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養に用いられる培養器は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養が可能なものであれば特に限定されないが、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウエルプレート、マルチプレート、マルチウエルプレート、マイクロスライド、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、及びローラーボトルが挙げられ得る。
 神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の培養に用いられる培養器は、細胞接着性であっても細胞非接着性であってもよく、目的に応じて適宜選ばれる。浮遊培養により神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養する場合、分化しやすい細胞を除去するため、接着性の培養器を使用するのが好ましい。
 また、接着培養により神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を培養する場合においても、培養器は細胞接着性であることが好ましい。細胞接着性の培養器は、培養器の表面の細胞との接着性を向上させる目的で、細胞外マトリックス(ECM)等の任意の細胞支持用基質又はそれらの機能をミミックする人工物でコーティングされたものであり得る。細胞支持用基質は、幹細胞又はフィーダー細胞(用いられる場合)の接着を目的とする任意の物質であり得る。
 その他の培養条件は、適宜設定できる。例えば、培養温度は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進及び未分化性の維持等の所望の効果を達成し得る限り特に限定されないが、約30~40℃、好ましくは約37℃である。CO濃度は、約1~10%、好ましくは約2~5%である。酸素濃度は、通常1~40%であるが、培養条件などにより適宜選択される。
 (5)ヒト血清アルブミンを含む培地並びに神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を含んでなる培養組成物
 本発明はさらに上記本発明の培地並びに神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を含んでなる、培養組成物(本明細書中、本発明の培養組成物ともいう)を提供する。該培養組成物は、細胞を培養することにより得られる結果物を含む。本発明の培養組成物に関連する各用語の定義及び態様は、上記に記載したものと同一である。
 本発明の培養組成物における神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、生存し、増殖している細胞である。
 本発明の培養組成物における神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の純度(全細胞数に占める神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の数の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。
 本発明の培養組成物において、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は、本発明の培地中に存在する。一態様において、本発明の培養組成物は、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の、本発明の培地中の懸濁液である。本発明の培養組成物は、適切な容器中に封入されていてもよい。
 一実施態様として、本発明の培養組成物は凍結保存させた状態で提供され得る。本発明の培養組成物は、凍結保存することが可能であり、必要に応じて融解・起眠して使用することができる。凍結保存は、自体公知の細胞凍結保存方法を使用することができる。凍結保存の例としては、本発明の培養組成物にジメチルスルホキシドを加え、-80~-200℃、好ましくは-196℃(液体窒素中)の条件で本発明の培養組成物を保存する方法が挙げられる。
 以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1:ヒト血清アルブミン機能評価
 (1)ヒト多能性幹細胞からニューロスフィアへの誘導
 B27サプリメント(1x;Life Technologies)、bFGF(PeproTech inc.)、hLIF(Millipore)、Y27632(和光純薬工業)を添加したMedia hormone mix(MHM)培地を作成し、iPS細胞をTrypLETM Selectで単一細胞に分散したものを該培地中で、37℃、5% CO、4%O環境下で浮遊培養を行った。培地の交換は7日に一回、行った。培養後、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は球状の細胞塊であるニューロスフィアを形成した。
 (2)ニューロスフィアの培養法
 B27サプリメント(1x;Life Technologies)、bFGF(最終濃度20ng/mL;PeproTech inc.)、hLIF(最終濃度10ng/mL;Millipore)を添加したMedia hormone mix(MHM)培地(Life Technologies)を作成し、ヒト多能性幹細胞より誘導した神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を該培地中で、37℃、5% CO、4%O環境下で浮遊培養を行った。培地の交換は7日に一回、行った。培養後、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞は球状の細胞塊であるニューロスフィアを形成した。
 ニューロスフィアの継代には、TrypLE Select(Life Technologies)を用いた。ニューロスフィア培養中の培養皿から培地を除去し、TrypLE Selectに置き換えた。TrypLE Select内で37℃、10分間インキュベートを行い、その後ピペッティングを行って、単一の細胞とした。分散させた細胞を、上記培地中に1.0x10cells/mLとなるように播種し、37℃、5%CO環境下で培養を行った。
 (3)ヒト血清アルブミン機能評価
 (2)で培養したニューロスフィアを用いて培地の機能評価を行った。bFGF(最終濃度20ng/mL)、hLIF(最終濃度10ng/mL)を添加したMedia hormone mix(MHM)培地(Life Technologies)を作成し被検基礎培地とした。この被検基礎培地にヒト血清アルブミン(Essentially fatty acid free(~0.005%)、Sigma Aldrich)をそれぞれ最終濃度0.2、1、2.1mg/mLとなるように添加した培地(ヒト血清アルブミン添加培地)又は未添加な培地(コントロール培地)中でニューロスフィア培養を行い、ヒト血清アルブミンの機能評価を行った。7日に一度培地交換を行い、14日間培養後、顕微鏡下で形成されたニューロスフィアの形態の観察を行った。結果を図1に示す。(尚、(3)の培養開始前に、(3)に記載の培養前に用いた培地の持ち込みを極力抑えられるよう、培養前に用いた培地を希釈し十分に取り除いた。)
 コントロール培地で培養したニューロスフィアは、14日間の培養後に、球状の形態を失い、分化した神経細胞に見られる突起の伸びた細胞形態を示した。一方、1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地、2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地中で培養したニューロスフィアは、14日間の培養後も球状の形態を維持し、培養前と比較してニューロスフィアが大きくなっていた。これらの培地中で培養したニューロスフィアでは分化した細胞に見られる突起の伸びた細胞形態は示さなかった。0.2mg/mLヒト血清アルブミン添加培地で培養したニューロスフィアは、一部において分化した細胞に見られる突起の伸びた細胞形態が観察されたが、コントロール培地と比較して突起の数が少なく球状形態を維持しているニューロスフィアも多数観察された。
 この結果から、ヒト血清アルブミン濃度依存的なニューロスフィアの分化抑制傾向が示された。ヒト血清アルブミンの量が0.2mg/mL以上で球状形態を維持しているニューロスフィアが多数観察されるが、特にヒト血清アルブミン1mg/mL以上で良好なニューロスフィア像の形成が確認された。
実施例2:神経細胞への分化誘導
 ヒト血清アルブミン添加培地中で培養したニューロスフィアが神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞としての性質を維持していることを実証する。
 実施例1と同様に、ヒト多能性幹細胞由来のニューロスフィアを2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地中で14日間培養し、その後分化誘導培養を行った。分化誘導培養のため、ヒト血清アルブミン添加培地中で培養したニューロスフィアの分散処理を行った。分散処理には、TrypLE Select(Life Technologies)を用いた。ニューロスフィア培養中の培養皿から培地を除去し、TrypLE Selectに置き換えた。TrypLE Select内で37℃、10分間インキュベートを行い、その後ピペッティングを行って、単一の細胞とした。細胞数測定は、血球計算盤を用いて行った。分散させた細胞は、1.5x10cells/wellとなるようにポリ-L-オルニチン/フィブロネクチンでコートした48ウェルプレートに播種し、B27サプリメント(1x;Life Technologies)を添加したMedia hormone mix(MHM)(Life Technologies)培地中で20日間培養した。37℃、5%CO環境下で培養を行い、培地交換は2日に一度行った。
 培養後、細胞を固定し、神経細胞マーカーであるβIIIチューブリンに対する抗体を用いて免疫染色を行った。結果を図2に示す。
 分化誘導培養した細胞は、βIIIチューブリン陽性の神経細胞を多数含んでいた。ヒト血清アルブミン添加培地中で培養したニューロスフィアは効率的に神経細胞に分化し得ることが示された。
実施例3:脂肪酸の機能評価
 ヒト血清アルブミン添加培地にさらに脂肪酸を添加し機能評価を行った。実施例3の目的は、脂肪酸担持量の多いヒト血清アルブミンの作用を確認することである。
 実施例1と同様に2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地を作成した。この培地に、それぞれ最終濃度20μM、60μMとなるようにオレイン酸(東京化成工業)を添加した培地、又はオレイン酸を添加していない培地を作成し、これらの培地中でニューロスフィア培養を行った。(尚、脂肪酸及びヒト血清アルブミンを含む培地は、脂肪酸をあらかじめ所定の濃度のヒト血清アルブミン溶液と混合し、該混合液を培地に添加することによっても作製できる。)培地中のオレイン酸のほぼ100%がHSAと結合していると見積もられる。7日に一度培地交換を行い、14日間培養後、顕微鏡下で形成されたニューロスフィアの形態の観察を行った。結果を図3に示す。
 20μMオレイン酸添加培地中で培養したニューロスフィアは、脂肪酸を添加していない培地中で培養したニューロスフィアと同様の良好なニューロスフィアの形態を示した。一方、60μMオレイン酸添加培地中で培養したニューロスフィアでは、黒色の異形スフィアの形態を示すものが多数確認された。
実施例4:ヒト血清アルブミン機能評価
(1)Long-term self-renewing neuro epithelial-like stem cells(以下LtNES細胞)誘導法
 iPS細胞よりEBを形成し、E6培地(Life TechnologiesまたはSTEMCELL Technologies)からアスコルビン酸及びトランスフェリンを除いた組成に相当する培地にトランスフェリン(終濃度0.5~10μg/mL)、エタノールアミン(終濃度5~50μM)を添加した培地中にて、4日間培養した。ポリLオルニチン(PO)コートしたdishにEBを播種し、上記培地中で10日程度培養し、Rosette様の構造が形成されることを確認した。Rosette部分をくり抜き、ニューロスフィアとして上記培地中で浮遊培養を7日程度行った。ニューロスフィアをトリプシン/EDTAにて分散し、PO/ラミニンコートしたdish上で上記培地中にて培養し、LtNES細胞を作成した。LtNES細胞は、神経幹細胞及び神経前駆細胞が混在したものである。
 なお、上記E6培地(Essential 6培地)については、Life Technologies社ホームページ<URL:http://www.lifetechnologies.com/order/catalog/product/A1516401>において、E8培地をベースとした製法で作られ、bFGFとTGFβを含まないことが記載されている。なお、E8培地(Essential 8培地)については、Nat Methods 2011 May;8(5):424-429に記載されている。
 また、上記E6培地の成分は、Stem Cells.2014 Apr;32(4),1032-42の要約中にも記載されている。
(2)ヒト血清アルブミン機能評価
 E6培地(Life TechnologiesまたはSTEMCELL Technologies)からアスコルビン酸及びトランスフェリンを除いた組成に相当する培地に、トランスフェリン(終濃度0.5~10μg/mL)、エタノールアミン(終濃度5~50μM)、bFGF(終濃度5~100ng/mL)を添加して、被検基礎培地を作成した。
 被検基礎培地に、ヒト血清由来アルブミン(Sigma Aldrich)を終濃度0、0.21、1、2.1mg/mLとなるように添加した被検培地を作成した。
 各被検培地を用い、ヒト多能性幹細胞より誘導したLtNES細胞(1.5×10細胞)を培養した。細胞の培養は、37℃、5%CO雰囲気下のインキュベーター内で行った。2日に一度培地交換を行い、4~5日間培養した。培養後、被検培地の代わりにTrypLE Selectを添加し、37℃、1分間インキュベートして細胞分散処理を行った。TrypLE Selectを培地で希釈後、ピペッティングを行い、単一の細胞とし、細胞数をカウントし、評価した。細胞数測定は、トリパンブルー(ライフテクノロジーズ社)による死細胞染色を行った上で、血球計算盤で行った。
 結果を図4に示す。1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地において細胞数が最も増加し、0.21、2.1mg/mLヒト血清アルブミン添加培地においても細胞は良好な増殖を示した。
 本発明によれば、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化性及び複分化能を維持したまま細胞増殖を促進させることが可能となり、神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞培養にかかる人的コスト及び金銭的コストを削減することができる。
 ここで述べられた特許、特許出願明細書、科学文献を含む全ての刊行物に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
 本出願は、日本で出願された特願2015-069979(出願日:2015年3月30日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (29)

  1.  ヒト血清アルブミンを含む神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞用培地。
  2.  神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持用である、請求項1に記載の培地。
  3.  神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の増殖促進用である、請求項1又は2に記載の培地。
  4.  神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持かつ増殖促進用である、請求項1に記載の培地。
  5.  神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が多能性幹細胞由来である、請求項1~4のいずれか一項に記載の培地。
  6.  ヒト血清アルブミンがリコンビナントのヒト血清アルブミンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の培地。
  7.  ヒト血清アルブミンがヒト血漿由来である、請求項1~5のいずれか一項に記載の培地。
  8.  培地中に脂肪酸を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の培地。
  9.  培地中の脂肪酸量が50μM以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の培地。
  10.  培地中の脂肪酸量が20μM以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の培地。
  11.  培地中のヒト血清アルブミン量が0.2mg/mL以上20mg/mL以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の培地。
  12.  培地中のヒト血清アルブミン量が0.5mg/mL以上10mg/mL以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の培地。
  13.  浮遊培養用である、請求項1~12のいずれか一項に記載の培地。
  14.  無血清培地である、請求項1~13のいずれか一項に記載の培地。
  15.  塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の培地。
  16.  培地中のbFGF量が1ng/mL以上200ng/mL以下である、請求項15に記載の培地。
  17.  ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を増殖させる方法。
  18.  ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞の未分化維持方法。
  19.  ヒト血清アルブミンを培地に添加することを特徴とする神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を未分化維持させながら増殖促進する方法。
  20.  神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞が多能性幹細胞由来である、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
  21.  ヒト血清アルブミンがリコンビナントのヒト血清アルブミンである、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
  22.  ヒト血清アルブミンがヒト血漿由来である、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
  23.  培地に脂肪酸が含まれることを特徴とする、請求項17~22のいずれか一項に記載の方法。
  24.  培地中の脂肪酸量が50μM以下である、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
  25.  培地中の脂肪酸量が20μM以下である、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
  26.  培地中のヒト血清アルブミン量が0.2mg/mL以上20mg/mL以下である、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
  27.  培地中のヒト血清アルブミン量が0.5mg/mL以上10mg/mL以下である、請求項17~26のいずれか一項に記載の方法。
  28.  該培地中で神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を浮遊培養することを特徴とする、請求項17~27のいずれか一項に記載の方法。
  29.  請求項1~16のいずれかに記載の培地並びに神経幹細胞及び/又は神経前駆細胞を含んでなる培養組成物。
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