WO2015045631A1

WO2015045631A1 - 作業機、及び、コンバイン

Info

Publication number: WO2015045631A1
Application number: PCT/JP2014/070628
Authority: WO
Inventors: 山形浩司; 新家衛; 中島伸六; 吉田有作; 福岡義剛; 長田祐希; 三井孝文
Original assignee: 株式会社クボタ
Priority date: 2013-09-27
Filing date: 2014-08-05
Publication date: 2015-04-02
Also published as: CN105828598A; CN105828598B; CN112314159A; CN109937683A; CN109937683B

Abstract

　エンジン動力に基づいてラジエータ冷却ファンを駆動させる駆動装置を備え、駆動装置は、無端回動帯で正転動力を伝達可能な正転系動力伝達機構と、別の無端回動帯で逆転動力を伝達可能な逆転系動力伝達機構との二系統の動力伝達機構が備えられ、かつ、何れか一方の動力伝達機構からの動力を択一的に選択してラジエータ冷却ファンの入力回転体７２に伝達可能な正逆転選択機構６が備えられている。

Description

作業機、及び、コンバイン

　本発明は、作業機、及び、コンバインに関する。

［背景技術１］
　上記のように、ラジエータ冷却ファンを正逆に反転させて駆動可能な駆動装置を備える作業機としては、特許文献１に記載のものが知られている。
　特許文献１の作業機は、エンジンの出力軸に装着した出力プーリと、ラジエータのファン駆動用の入力用プーリと、オルタネータの入力プーリとに、第１伝動ベルトを巻回し、この第１伝動ベルトに対して、内周側から接触する正転用プーリと、外周側から接触する逆転用プーリとを備えている。さらに、ラジエータのファン駆動用の入力用プーリと前記正転用プーリ及び逆転用プーリとにわたって第２伝動ベルトを巻回してある。
　そして、第１伝動ベルトに対して、正転用プーリを押しつけて逆転用プーリを離反させた正転状態と、逆転用プーリを押しつけて正転用プーリを離反させた逆転状態とに、第１伝動ベルトに対する正転用プーリと逆転用プーリとの作用状態を切り換えて、ラジエータのファン駆動用の入力用プーリを正転状態と逆転状態とに切換可能に構成してある。

［背景技術２］
　上記のように、エンジンの動力を走行装置に伝達するトランスミッションと、脱穀装置とに伝達する構造のコンバインとしては、特許文献２に記載のものが知られている。
　特許文献２のコンバインには、エンジンの出力軸からトランスミッションへ駆動力を伝達する伝動系と、脱穀装置に駆動力を伝達する伝動系とが備えられている。

［背景技術３］
　従来のコンバインでは、エンジンからの動力を脱穀装置に対してエンジンとは反対側に伝達するカウンター軸が、脱穀装置の前部側外方に位置する状態で備えられ、エンジンの動力が、そのカウンター軸から脱穀装置における扱胴や選別処理用の装置、及び、作物搬送用のフィーダ等に分配供給されるようにしたものがあった（例えば、特許文献３参照。）。

日本国特開２００１－２６３０６３号公報（段落［００２２］、［００２３］、図３、図４）日本国特開２０１３－１５８２５８号公報（段落［００７４］、［００７５］、図５、図８、図１０、図１２）日本国特開２０１２－６０９６８号公報

　上記［背景技術１］に対応する［発明が解決しようとする課題１］は、以下のとおりである。
　上記の特許文献１に記載された作業車のエンジン冷却装置では、第１伝動ベルトに対して、正転用プーリと逆転用プーリとが、内周面に対する押しつけ方向と、外周面に対する押しつけ方向との、互いに相反する２方向からの押しつけ方向の変更によって正逆転が切り換えられる。このように、第１伝動ベルトに対して、正転用プーリと逆転用プーリとの択一的な押しつけ作用によってラジエータのファン駆動用の入力用プーリの正逆転を切り換えることができるので、簡単な構造によって正逆転切換構造を得られる点では有用なものである。
　しかしながら、この構造では、正転用プーリと逆転用プーリとが、単に第１伝動ベルトを緊張状態と弛緩状態とに切り換えるだけのものではなく、その正転用プーリと逆転用プーリとが動力を伝達する手段としても利用されるものである。つまり、伝動ベルトの張力変更の役目だけではなく、動力伝達部材としても備えられている。したがって、正転用プーリや逆転用プーリに動力伝達が可能な摩擦力を与えるために、正転用プーリや逆転用プーリに対する伝動ベルトの巻回範囲を大きくする必要がある。

　ところが、正転用プーリもしくは逆転用プーリのいずれか一方のプーリ周面に対して伝動ベルトの巻回範囲が大きい状態で伝動が行われている状態から、他方のプーリ周面に対する巻回範囲が大きくなるように切り換えるには、正転用プーリや逆転用プーリを大きく揺動移動させて、正転用プーリや逆転用プーリに対する伝動ベルトの巻回範囲を大きくする必要がある。
　このため、正逆転の切換操作途中での伝動ベルトの弛みが大きくなってプーリ周面からの外れを生じる虞があったり、正逆転の切換操作を迅速には行い難いなどの問題が生じる虞があり、これらの点で改善の余地がある。

　このような実情に鑑み、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達を合理的な構造で、構造簡単に構成した作業機の提供が望まれていた。

　上記［背景技術２］に対応する［発明が解決しようとする課題２］は、以下のとおりである。
　上記の特許文献２に記載された構造のコンバインは、エンジンから脱穀装置への動力伝達を行うに際し、脱穀装置の比較的高い位置にある副唐箕軸にエンジン動力を入力し、その副唐箕軸から脱穀装置の各部位に駆動力を分配するように伝動機構が設けられている。
　しかしながら、脱穀装置として、副唐箕を備えない構造のものを採用した場合、低い位置の主唐箕軸にエンジン動力を伝達するには、エンジンと脱穀装置との間で、伝動プーリを掛け回すことのできる程度に、エンジンと脱穀装置とを離間させて配設する、あるいは、別途、中継軸を設けてエンジンから主唐箕軸への動力伝達を行う必要が生じるので、この点で改善の余地がある。

　このような実情に鑑み、エンジンから脱穀装置への動力伝達を合理的な構造で、構造簡単に構成したコンバインの提供が望まれていた。

　上記［背景技術３］に対応する［発明が解決しようとする課題３］は、以下のとおりである。
　上記従来構成では、カウンター軸が脱穀装置の前部側外方に位置する状態で備えられているので、脱穀装置の前部側にカウンター軸を設置するための設置スペースが必要となり、その分だけ脱穀装置の設置に制約を受けて、例えば、脱穀装置の前後方向での寸法が小型になり、脱穀処理能力の面で不利となる等のおそれがある。

　特許文献３に記載される構成では、カウンター軸が低速で駆動される低速駆動型の装置（穀粒の搬送装置等）に動力を分配し、カウンター軸とは別の高速用のカウンター軸を設けて、高速で駆動される高速駆動型の装置（排ワラ処理装置等）に動力を分配する構成となっているが、この構成に代えて、カウンター軸を共用して伝動構造を簡素化することが考えられる。

　すなわち、カウンター軸から直接に、高速駆動型の装置と低速駆動型の装置の夫々に分配させる構成である。そして、このような構成とした場合には、カウンター軸にて分配された後に、各装置において夫々に適した回転速度に変換させる必要があるので、大きく速度変更させるための構成、例えば、大型の回転体を設けるための設置スペースが必要になる等、伝動機構を構成する上で不利な面がある。

　このような実情に鑑み、伝動構造が簡素なものでありながら、無駄な設置スペースが少ない合理的な機体配置構成とすることが可能なコンバインの提供が望まれていた。

　上記［発明が解決しようとする課題１］に対応する［課題を解決するための手段１］は、以下のとおりである。
　すなわち、本発明に係る作業機は、ラジエータと、ラジエータ冷却ファンと、エンジンの動力に基づいてラジエータ冷却ファンを駆動させる駆動装置とが備えられ、前記駆動装置は、無端回動帯で正転動力を伝達可能な正転系動力伝達機構と、別の無端回動帯で逆転動力を伝達可能な逆転系動力伝達機構との二系統の動力伝達機構が備えられ、かつ、前記二系統の動力伝達機構のうち、何れか一方の動力伝達機構からの動力を択一的に選択して前記ラジエータ冷却ファンの入力回転体に伝達可能な正逆転選択機構が備えられたものである。

　本発明によれば、正転動力を伝達可能な正転系動力伝達機構の無端回動帯と、逆転動力を伝達可能な逆転系動力伝達機構の無端回動帯とのうちの何れか一方を正逆転選択機構で択一的に選択して、何れか一方の動力伝達機構からの動力をラジエータ冷却ファンの入力回転体に伝達することにより、ラジエータ冷却ファンを正逆転させている。
　このため、正逆転選択機構自体は、正逆何れか一方の動力伝達機構の無端回動帯の動力がラジエータ冷却ファンの入力回転体に伝達されるように構成されていればよく、動力伝達機構としての役割は必要としない。
　したがって、正逆転選択機構としては、動力伝達のために無端回動帯の巻回範囲を大きくするような機構や、そのための操作などが必要なく、正逆転選択機構の構造の簡素化や操作性の向上を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記入力回転体に、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回されていると好適である。

　本構成によれば、入力回転体に、正転系動力伝達機構の無端回動帯と、逆転系動力伝達機構の無端回動帯との両方が巻回されるように構成したことで、入力回転体の構成を簡素化を図り得る。そして、入力回転体には、正転側もしくは逆転側の何れか一方の無端回動帯に伝えられた動力のみが伝えられるので、ラジエータ冷却ファンの正逆転を確実に切換操作することができる。

　本発明においては、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とは、同一の駆動回転体に巻回されていると好適である。

　本構成によれば、正転系動力伝達機構の無端回動帯と、逆転系動力伝達機構の無端回動帯とは同一方向の回転が伝えられるものであるから、両無端回動帯に、同一の駆動回転体を用いて動力を伝達することができる。
　したがって、駆動力を伝える駆動回転体側には正逆転切換のための手段は要さず構造簡単に構成し易くなる利点がある。

　本発明においては、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とのうちの一方が、前記入力回転体に対して、当該無端回動帯の内外の周面のうちの内周面側で接するように巻回され、他方が外周面側で接するように巻回されていると好適である。

　本構成によれば、正転系動力伝達機構の無端回動帯と逆転系動力伝達機構の無端回動帯とを同一方向で回転させながらも、入力回転体に対する接触状態を、無端回動帯の一方が内周面側で接し、他方が外周面側で接するように巻回することで、入力回転体に対する回転伝動方向を正逆に切り換えることができる。
　したがって、入力回転体に対する無端回動帯の巻回の仕方によって、特別な構成部材の付加などを要さずに、正転系の動力伝達と逆転系の動力伝達とを行うことができ、正転系動力伝達機構及び逆転系動力伝達機構の構造の簡素化を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記駆動回転体の軸心と前記入力回転体の軸心とを結ぶ仮想線分の両側に、夫々、前記入力回転体に外周面側で接するように巻回されている前記無端回動帯の内周面側に位置する状態で、輪体が配備され、これらの輪体のうち、何れか一方もしくは両方が、前記入力回転体に対して外周面側で接するように巻回されている前記無端回動帯を、緊張又は弛緩させる側へ移動可能であるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、駆動回転体の軸心と入力回転体の軸心とを結ぶ仮想線分の両側に振り分けられている輪体に内周側を巻回させた無端回動帯を備え、その無端回動帯が外周面側で入力回転体に接するように巻回されている。そして、外周面側で入力回転体に接する無端回動帯を緊張又は弛緩させる側へ前記輪体のうちの何れか一方もしくは両方を移動させるので、入力回転体に対して外周面側で接するように巻回されている無端回動帯を、入力回転体に対する巻回範囲が広い状態を維持しながらの緊張又は弛緩させる側へ移動が可能である。
　したがって、無端回動帯に対する輪体自体の移動方向は内周側に対する一方向での押圧、又は押圧解除の操作であり、輪体の動き量としては比較的少ない量でありながら、無端回動帯の伝動対象である入力回転体に対する巻回範囲が広い状態を維持しながらの緊張又は弛緩を可能にし得る利点がある。

　本発明においては、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯が、前記入力回転体に対して、内外の周面のうちの内周面側で接するように巻回されていると好適である。

　本構成によれば、作業機の稼動時間中における使用頻度、あるいは使用時間の多い側となる傾向がある正転系動力伝達機構の無端回動帯が、入力回転体に対して内周面側で接するように巻回されるので、伝動対象の入力回転体に対する巻回範囲を大きくし易くなる。これによって、使用頻度や使用時間の多い正転系動力伝達機構による伝動効率を良好な状態に保ち易くなるという利点がある。

　本発明においては、前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とを、択一的に選択して緊張又は弛緩させることにより動力の断続を行うことが可能なテンションクラッチにより構成されたものであると好適である。

　本構成によれば、正転系動力伝達機構の無端回動帯と、逆転系動力伝達機構の無端回動帯とのいずれかが伝動状態となるように緊張又は弛緩させるテンションクラッチによって正逆転選択機構を構成したものであるから、動力伝達構造と正逆転選択機構とを別構造にして、構造簡単に構成し得る利点がある。

　本発明においては、前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯に作用する第１テンション輪体と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯に作用する第２テンション輪体とが、単一の揺動アームに支持されたものであると好適である。

　本構成によれば、正転系動力伝達機構の第１テンション輪体と、逆転系動力伝達機構の第２テンション輪体とを、単一の揺動アームに支持させて、正逆転選択機構の簡素化を図り得たものである。

　本発明においては、前記揺動アームの軸心は前記入力回転体の軸心と同一軸心であると好適である。

　本構成によれば、揺動アームの軸心が入力回転体の軸心と同一軸心であるように構成して、正逆転選択機構の一層の簡素化を図り得たものである。

　本発明においては、前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構をその無端回動帯が緊張された状態に付勢する付勢機構が備えられたものであると好適である。

　本構成によれば、作業機の稼動時間中における使用頻度、あるいは使用時間の多い側となる傾向がある正転系動力伝達機構を、その無端回動帯が緊張された状態に付勢する付勢機構が備えられているので、使用頻度や使用時間の少ない逆転系動力伝達機構を使用するときにだけ意識して逆転駆動操作を行い、その操作が終われば自動的に正転駆動状態に復帰するので、正転駆動状態への戻し忘れを無くして便利に用いることができる。

　本発明においては、前記正逆転選択機構は、前記揺動アームを操作可能な操作レバーが備えられたものであると好適である。

　本構成によれば、揺動アームを操作可能な操作レバーが備えられているので、人為操作での正逆転切換が簡単に行える利点がある。

　本発明においては、前記操作レバーは、前記エンジンが存在する側とは反対側に延出されていると好適である。

　本構成によれば、エンジンが存在する側とは反対側に操作レバーが延出されているので、エンジン周辺機器を避けながらの操作ではなく、比較的余裕のある空間での操作を行い易く構成し得る利点がある。

　本発明においては、前記エンジンの機体横外方側は、側部カバーで覆われ、前記操作レバーは、前記側部カバーで覆われていない側に露出した状態で設けられていると好適である。

　本構成によれば、側部カバーの開閉操作を要さずに操作レバーの操作を簡便に行える利点がある。

　本発明においては、前記操作レバーは前記揺動アームに連結されていると好適である。

　本構成によれば、操作レバーによって揺動アームを直接的に操作できるので、不必要な連係構造を省き、正逆転選択機構をより一層簡素に構成し易いという利点がある。

　本発明においては、前記駆動装置には、前記エンジンからの動力が伝達されていると好適である。

　本構成によれば、正逆転選択機構の駆動を行うための電動モータなどの別途の駆動手段を要さず、作業機として各種作業装置や走行系の駆動のために用いられているエンジン動力を有効利用して、コスト低減を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回される駆動回転体は、前記エンジンから前記ラジエータ冷却ファンへの動力伝達系における中継回転体を兼ねるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、正逆転選択機構に駆動力を伝える駆動回転体が、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達系に備えた中継回転体を兼ねるものであるから、部材の兼用化による構造の簡素化、及びコスト低減を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記駆動回転体と前記エンジンの出力プーリとに亘って巻回される無端回動帯と、この無端回動体にテンション作用する回転体及びこの回転体を支持する揺動アームを有するテンション機構と、が備えられ、この回転体は、この無端回動帯の回転方向において前記揺動アームの揺動軸心よりも下手側に位置する状態で設けられていると好適である。

　本構成によれば、駆動回転体とエンジンの出力プーリとに亘って巻回される無端回動帯の張力を、テンション機構によって調節することができる。このテンション機構において、無端回動帯に作用可能な回転体が、回転体を支持する揺動アームの揺動軸心よりも、無端回動帯の回転方向における下手側に位置しているので、無端回動帯に無理な力が作用しにくくなる。これにより、無端回動帯の張力を調節可能としながら、無端回動帯が、駆動回転体や出力プーリから外れにくい構造にできる。

　本発明においては、走行車体の横一側箇所に前記エンジンが出力軸を左右方向に向けた状態で配備され、そのエンジンの車体後方側箇所、又は前記エンジンの車体前方側箇所、あるいは前記エンジンの車体上方側箇所に、前記ラジエータが配備されていると好適である。

　本構成によれば、ラジエータをエンジンの出力軸の軸線方向に並べて配設する場合に比べて、エンジンとラジエータとの軸線方向長さの総和を短くすることができる。したがって、エンジンをできるだけ機体外方側に寄せて配設して機体内方側に他装置などの配設用スペースを確保したり、エンジンのメンテナンスを機体外方側から行い易くなるなどの利点がある。

　本発明においては、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回される駆動回転体は、前記ラジエータ冷却ファンに対する前記駆動装置の無端回動帯と、前記エンジンからの動力を伝える原動側無端回動帯とが掛張される複数の巻回部を備え、前記原動側無端回動帯が前記駆動装置の無端回動帯よりも機体外方側に位置するように構成されていると好適である。

　本構成によれば、機体外方側へ配備させたエンジンから、機体内方側へ配備したラジエータ冷却ファンへの伝動系を、原動側無端回動帯とラジエータ冷却ファンに対する駆動装置の無端回動帯とによって合理的に配設し易くなる利点がある。

　本発明においては、前記エンジンの出力軸に、前記ラジエータ冷却ファンに動力を伝達するファン用プーリと、エアコン装置のコンプレッサに動力を伝達するコンプレッサ用プーリとが備えられ、前記ファン用プーリが、前記コンプレッサ用プーリよりも、前記エンジンから近い側に位置していると好適である。

　本構成によれば、コンプレッサ用プーリが外側に位置し、コンプレッサへの動力伝達系のメンテナンスを行い易いという利点がある。

　本発明においては、前記入力回転体に巻回された無端回動体の回転方向と直交する方向において、この無端回動体の変位量を規制するガイド部材が備えられていると好適である。

　本構成によれば、入力回転体に巻回された無端回動体について、この無端回動体の回転方向と直交する方向において変位量が規制されるので、ガイド部材により、無端回動体が入力回転体から外れることを防止できる。

　上記［発明が解決しようとする課題２］に対応する［課題を解決するための手段２］は、以下のとおりである。
　すなわち、本発明に係るコンバインは、エンジンと、走行装置に駆動力を伝達するトランスミッションと、脱穀装置とを備え、前記エンジンの動力が、前記トランスミッションの入力軸を介して前記脱穀装置に分岐伝動されるように構成されたものである。

　本発明によれば、エンジンの動力が、近接した位置の脱穀装置よりもエンジンから離れて位置するトランスミッションの入力軸に一旦伝達される。そして、トランスミッションの入力軸に伝達された動力が、伝動下手側の走行装置に対して走行用の駆動力として伝達されるのであるが、その走行装置に伝達される動力とは別に、入力軸から脱穀装置への駆動力も取り出され、脱穀装置に分岐伝動される。
　つまり、走行系に対する伝動機構として必要不可欠なトランスミッションの入力軸を、脱穀装置の伝動系における中継軸として有効利用できるようにすることで、エンジンの出力部と脱穀装置の入力部が前後方向で互いに接近していても、支障なくエンジンから脱穀装置への伝達機構を、構造簡単に構成し得る利点がある。

　本発明においては、前記入力軸に、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられていると好適である。

　本構成によれば、トランスミッションの入力軸に出力回転体を設けるだけの簡単な構造により、脱穀装置への動力伝達構造の簡素化を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が、前記トランスミッションに対して、前記入力回転体が設けられた側と同じ側で前記入力軸に取り付けられていると好適である。

　本構成によれば、入力軸のうち、脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられ側とは反対側では、入力軸に対する制約がないので、別装置を配設するなど、設計上の自由度を高め得る利点がある。

　本発明においては、前記トランスミッションに対して、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられた側とは反対側に、前記走行装置への伝達動力を変速する無段変速装置が備えられていると好適である。

　本構成によれば、出力回転体が設けられた側とは反対側では、トランスミッションに対して、走行装置への伝達動力を変速する無段変速装置を備えることで、トランスミッションの入力軸を無段変速装置の入力手段としても活用でき、より一層、構造の簡素化を図り得る利点がある。

　本発明においては、前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が、前記入力軸上で、前記入力回転体と、前記トランスミッションとの間に位置していると好適である。

　本構成によれば、エンジンからの動力を走行装置への動力を入力するための入力回転体と、脱穀装置へ動力を入力するための出力回転体とを、互いにごく接近させた状態で配設することができる。したがって、エンジン、脱穀装置、及びトランスミッションが互いに近接して配設されている箇所で、それらに対する伝動構造をコンパクトに構成し得る利点がある。

　本発明においては、前記入力軸に、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられ、前記出力回転体から前記脱穀装置側に備えた脱穀側回転体へ無端回動帯を介して動力を伝える脱穀用動力伝達部が備えられ、この脱穀用動力伝達部が、前記出力回転体の軸心に沿う方向における前記エンジンと前記トランスミッションとの間に位置していると好適である。

　本構成によれば、出力回転体から脱穀装置側の脱穀側回転体へ、無端回動帯を介して動力を伝える脱穀用動力伝達部を用いることによって、エンジンとトランスミッションとの間の狭い左右方向間隔に、入力軸から脱穀装置への動力伝達構造をコンパクトに配置し得る利点がある。

　本発明においては、前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記エンジンに備えたエンジン出力回転体から前記入力回転体に無端回動帯を介して駆動力を伝達するエンジン動力伝達部が備えられ、このエンジン動力伝達部は、前記入力軸の軸心に沿う方向で、前記エンジンと前記トランスミッションとの間に位置していると好適である。

　本構成によれば、エンジン出力回転体から入力回転体へ無端回動帯を介して動力を伝えるエンジン動力伝達部を用いることによって、エンジンとトランスミッションとの間の狭い左右方向間隔に、エンジン出力軸からトランスミッションへの動力伝達構造をコンパクトに配置し得る利点がある。

　本発明においては、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体と前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体とは、前記入力軸上で隣り合う位置に配設されていると好適である。

　本構成によれば、脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体とエンジンからの動力が伝達される入力回転体とが、トランスミッションの入力軸上で、隣り合う位置にあり、互いに近接した状態に配設することができるので、エンジンからトランスミッションを経て脱穀装置に至る伝動構造をコンパクトに構成し易いという利点がある。

　本発明においては、前記出力回転体と前記入力回転体とは、前記入力軸に備えた一連のプーリで構成されていると好適である。

　本構成によれば、脱穀装置側の出力回転体とトランスミッション側の入力回転体とが、トランスミッションの入力軸に備えた一連のプーリで構成されているので、より一層互いに近接した状態で配設され易い。したがって、エンジンからトランスミッションを経て脱穀装置に至る伝動構造を、さらにコンパクトに構成し易いという利点がある。

　本発明においては、前記エンジンからの動力を前記入力軸に備えられた入力回転体に伝達するエンジン動力伝達部と、前記入力軸に伝達された動力を、前記入力軸に備えられた出力回転体から無端回動帯を介して前記脱穀装置側に伝達する脱穀用動力伝達部と、を備え、この脱穀用動力伝達部と前記エンジン動力伝達部とが、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で互いに重複した位置に設けられていると好適である。

　本構成によれば、脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部とが、エンジンの出力軸の軸線方向視で互いに重複するように設けられることにより、この脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部との配設用空間を、前後方向及び上下方向で短くすることができる。
　つまり、エンジン出力軸から互いに前後方向での反対側へ向けた状態で脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部とを配設すると、脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部との配設用空間が前後方向に長くなってしまう。また、脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部とが上下で位置ずれした状態に配設されると、脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部との配設用空間が上下に幅広く存在することになり、配設用空間を大きく確保する必要がある。
　また、本構成によれば、脱穀用動力伝達部とエンジン動力伝達部とが、エンジンの出力軸の軸線方向視で互いに重複する状態に配設されるので、その配設用空間をコンパクトに構成し得る利点がある。

　本発明においては、前記脱穀用動力伝達部の無端回動帯は、前記出力回転体と、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で前記エンジンと重複する位置に配設された脱穀側回転体とに掛張されていると好適である。

　本構成によれば、脱穀用動力伝達部の無端回動帯が、トランスミッションの入力軸に設けられた出力回転体と、エンジンの出力軸の軸線方向視でエンジンと重複する位置に配設された脱穀側回転体とに掛張されているので、前後方向で近接する位置関係にあるエンジンと脱穀側回転体との間で、脱穀用動力伝達部の無端回動帯を支障なく配設することができる利点がある。

　本発明においては、前記脱穀側回転体は、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で前記エンジンに備えたエンジン出力回転体と重複する位置に配設されていると好適である。

　本構成によれば、脱穀側回転体は、エンジンの出力軸の軸線方向視でエンジン出力回転体と重複する位置に配設されているので、さらに脱穀装置とエンジンとが前後方向で近接していても支障なく動力伝達を行える利点がある。

　本発明においては、前記エンジンの横側方に前記脱穀装置が配設され、前記エンジンよりも前側に前記トランスミッションが配設されていると好適である。

　本構成によれば、エンジンの横側方に配設された脱穀装置への動力伝達を、そのエンジンや脱穀装置よりも前側に配設されているトランスミッションの入力軸を利用して行うので、エンジンから横側方位置の脱穀装置への動力伝達を支障なく行うことができる。
　そして、そのエンジンから脱穀装置への動力伝達構造を、エンジンや脱穀装置の前部側に存在する空間を有効利用して配置できるので、脱穀装置の後部側などの各種の伝動系や装置類が錯綜する空間を狭めずに配設できる点でも有用である。

　本発明においては、前記脱穀側回転体は、前記脱穀装置の唐箕軸に取り付けられていると好適である。

　本構成によれば、脱穀装置の唐箕軸を脱穀側回転体として利用できるので、別途入力用の伝動軸を配設するような部品点数の増大を避けることができる。

　本発明においては、前記唐箕軸を介して前記エンジンの動力が、収穫対象物を刈取収穫する刈取部に伝達されるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、唐箕軸を刈取部への動力伝達部材としても活用することができ、部材に兼用化による構造の簡素化を図り得たものである。

　本発明においては、前記入力軸に、前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体と前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体とが備えられ、その入力回転体と出力回転体との周速度差で減速された動力が、前記脱穀装置側へ伝達されるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、トランスミッションの入力軸の入力回転体と出力回転体との周速度差で減速された動力が、脱穀装置側へ伝達される。したがって、出力回転体と脱穀装置の脱穀側回転体との間でも、出力回転体に対する脱穀側回転体の径差をさらに大きくして減速度合いを増大する必要がなく、脱穀側回転体の径を比較的小さく構成できる利点がある。

　本発明においては、前記エンジンの出力軸にフライホイールが取り付けられると共に、前記フライホイールに出力プーリが取り付けられ、前記出力プーリは、有底の円筒形状に形成されると共に、底部が前記フライホイールに突合せられた状態で前記フライホイールに取り付けられ、前記出力プーリの内周側における前記底部に、前記フライホイールに対する取付部が備えられていると好適である。

　本構成によれば、フライホイールに取り付けられる出力プーリの大径化を実現できる。このため、空きスペースの活用を図ることができると共に、出力プーリに巻回される無端回動帯により、大きな動力を伝達できる。また、出力プーリの内周側における底部に、フライホイールに対する取付部が備えられているので、取付部に対する作業を行う際に、出力プーリの外周側に巻回される無端回動帯が邪魔にならない利点がある。

　本発明においては、前記出力プーリのプーリ溝が、前記取付部の外周箇所に形成されていると好適である。

　本構成によれば、フライホイールに対する取付部の外周箇所に、出力プーリのプーリ溝が備えられているので、出力プーリをフライホイール側に寄せることが可能となる。これにより、エンジンから遠ざかる側への出力プーリの突出量が抑えられると共に、プーリ溝に取り付けられる伝動ベルトのテンション荷重による負荷を軽減することができる。

　上記［発明が解決しようとする課題３］に対応する［課題を解決するための手段３］は、以下のとおりである。
　すなわち、本発明に係るコンバインは、機体前部の刈取部にて刈り取られた作物を後方に搬送するフィーダと、前記フィーダにより搬送される作物の脱穀処理を行う脱穀装置とが備えられ、前記脱穀装置に、回転する扱胴により作物に対する扱き処理を行う扱室と、前記扱室の下方に位置して扱き処理物を選別処理する選別処理部とが備えられ、前記脱穀装置の内部を貫通するとともに、エンジンからの動力を前記脱穀装置に対して前記エンジンとは反対側に伝達するカウンター軸と、前記カウンター軸とは別の中継軸と、前記カウンター軸に取り付けられた駆動回転体から前記中継軸に取り付けられた従動回転体に動力を伝達する中継伝動機構と、前記従動回転体から前記扱胴及び前記フィーダに動力を分配供給する分配伝動機構とが備えられている点にある。

　本発明によれば、エンジンからの動力を脱穀装置に対してエンジンとは反対側に伝達するカウンター軸が、脱穀装置の内部を貫通する状態で備えられるので、脱穀装置の外方側に、カウンター軸を設置するための特別なスペースを設ける必要がなく、脱穀装置の設置に制約を受ける不利がない。

　又、カウンター軸とは別の中継軸が備えられ、カウンター軸を通してエンジンとは反対側に伝達されたのちに中継伝動機構により中継軸に動力が伝達され、分配伝動機構により中継軸から扱胴及びフィーダに動力が分配供給される。つまり、カウンター軸から直接に扱胴やフィーダ等の各装置に伝達されるのではなく、中継軸を経由して伝達されることになる。又、カウンター軸から直接、動力伝達させることもできる。

　その結果、例えば、高速駆動型の装置に対してはカウンター軸から動力伝達させるようにして、中継軸から扱胴やフィーダ等の低速駆動型の装置に動力伝達させるようにすると、低速駆動型の装置において、大きく速度変更させるための構成、例えば、大型の回転体を設けるための設置スペースは不要となる。又、上記カウンター軸の他にさらに別のカウンター軸を設ける必要がなく、それだけ伝動構造は簡素なものにできる。

　従って、伝動構造が簡素なものでありながら、無駄な設置スペースが少ない合理的な機体配置構成とすることが可能なコンバインを提供できるに至った。

　本発明においては、前記選別処理部に、選別後の処理物を搬送する処理物搬送機構が備えられ、前記分配伝動機構が、前記従動伝動体から前記処理物搬送機構に動力を分配供給するように構成されていると好適である。

　本構成によれば、分配伝動機構により中継軸から処理物搬送機構に動力を分配供給される。処理物搬送機構は、選別後の処理物、つまり、分離された穀粒や枝付き粒等の二番物を搬送する。中継軸を介して動力が伝達されるので、大きく速度変更させるための構成を不要にすることができる。

　従って、大きく速度変更させるための構成を設ける設置スペースが不要でありながら、処理物搬送機構に低速の動力を伝達することができ、穀粒が損傷するおそれの少ない状態で良好に搬送することができる。

　本発明においては、前記選別処理部に、前記扱き処理物に対して選別風を供給する唐箕が備えられ、前記カウンター軸が、前記唐箕の回転軸に兼用構成されていると好適である。

　本構成によれば、唐箕の回転軸をカウンター軸に兼用するものであるから、専用のカウンター軸を設ける場合に比べて、軸の共用化により伝動構造の簡素化を図れる。

　唐箕は回転駆動によって選別風を送風するものであり、高速で回転駆動させる必要があるが、唐箕の回転軸はカウンター軸に兼用するものであるから、増速のために大型の回転体を設けることなく、カウンター軸に伝達された動力により唐箕を高速で駆動することができる。

　本発明においては、前記扱室から外部に排出される扱き処理後の排出物を後処理する後処理装置が備えられ、前記カウンター軸に取り付けられた後処理用回転体から前記中継軸を介さずに前記後処理装置に動力を伝達する後処理用伝動機構が備えられていると好適である。

　本構成によれば、後処理用伝動機構によって、カウンター軸から中継軸を介さずに後処理装置に動力が伝達される。後処理装置は扱き処理後の排出物を後処理するものであり、例えば、排出物としての排ワラを細かく細断する等の機能を備えるものである。このような後処理装置は細断等の後処理を的確に行うために高速で駆動する必要がある。

　そこで、カウンター軸から中継軸を介さないで直接に動力を伝達させることにより、高速で後処理装置を駆動することができ、後処理装置における処理を良好に行うことができる。

　本発明においては、前記後処理用回転体が、前記駆動回転体よりも機体内方側に位置する状態で前記カウンター軸に備えられていると好適である。

　後処理装置は、排ワラを細断処理する等の後処理を行うものであるが、このような後処理装置は、処理物の詰まり等の不具合が発生した場合に、一時的に駆動負荷が大きくなることがある。

　そこで、本構成では、後処理用回転体が、カウンター軸において駆動回転体よりも機体内方側に位置している、言い換えると、カウンター軸が軸受け部にて支持される箇所に近い箇所に位置している。その結果、後処理用回転体において負荷変動等に起因した振動が生じても、カウンター軸の振れは少ないものに抑制され、極力、駆動動作を安定化させ易いものとなる。

　本発明においては、前記従動回転体は、前記カウンター軸からの動力が入力される入力用回転体と、動力を分配供給するための複数の出力用回転体とを一連に連なる状態で備えた多連式に構成され、且つ、前記入力用回転体に対して回転軸心方向両側に振り分けた状態で複数の出力用回転体が備えられていると好適である。

　本構成によれば、中継軸において、入力用回転体に対して回転軸心方向両側に振り分けた状態で複数の出力用回転体が備えられる。その結果、中継軸に対する駆動反力が、入力用回転体の軸心方向両側部に掛かるので、中継軸の捻じれが生じ難く、耐久性の面で有利なものにできる。

　本発明においては、前記複数の出力用回転体のうち前記扱胴に動力伝達する扱胴用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体外方側に位置すると好適である。

　扱胴は扱室内で駆動回転されて脱穀処理物を扱き処理するためのものであるから、駆動負荷が大であり、しかも、処理物が絡まり合って堆積すると、扱胴の回転が停止することもある。その結果、扱胴に対する伝動機構においては、メンテナンス作業の頻度が大となる。

　そして、本構成では、扱胴用の出力回転体が、入力用回転体よりも機体外方側に位置するので、扱胴に対する伝動機構についてのメンテナンス作業が機体外方側から行い易いものとなる。

　本発明においては、前記扱胴用の出力回転体が、前記中継軸に対して着脱自在に取り付けられていると好適である。

　本構成によれば、扱胴用の出力回転体が着脱自在であるから、例えば、ギア式変速機構等の専用の変速装置を設ける等、構成の複雑化を招くことなく、扱胴用の出力回転体を径の異なる別の出力回転体に付け替えるだけで、扱胴の出力回転速度を変更させることが可能となる。

　従って、収穫対象作物が異なった場合に、出力回転体を付け替えるだけで、扱胴の出力回転速度を作物に適した値に調整することが可能となる。

　本発明においては、前記複数の出力用回転体のうち前記フィーダに動力伝達するフィーダ用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体内方側に位置すると好適である。

　本構成によれば、中継軸を介して伝達される低速の動力が、フィーダ用の出力回転体からフィーダに伝達されて、機体前部の刈取部にて刈取られた作物が後方の脱穀装置に向けて良好に搬送される。

　このようなフィーダにおいて必要とされる回転速度は、作物の種類の違いにかかわらず変化しないので、フィーダ用の出力回転体を、中継軸において入力用回転体よりも機体内方側に位置させて配置することができる。

　本発明においては、前記複数の出力用回転体のうち前記処理物搬送機構に動力伝達する処理物搬送用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体内方側に位置すると好適である。

　本構成によれば、中継軸を介して伝達される低速の動力が、処理物搬送用の出力回転体から処理物搬送機構に伝達されて、選別後の処理物、つまり、分離された穀粒や枝付き粒等の二番物が良好に搬送される。

　このような処理物搬送機構における必要とされる回転速度は、作物の種類の違いにかかわらず変化しないので、処理物搬送用の出力回転体を、中継軸において入力用回転体よりも機体内方側に位置させて配置することができる。

　本発明においては、前記扱胴が、機体前後方向に沿う回転軸心周りで回転すると好適である。

　本構成によれば、扱胴が機体前後方向に沿う回転軸心周りで回転して、脱穀処理物に対する扱き処理を実行する。このような構成では、機体前部の刈取部から供給される作物が扱胴の外周部に沿う長い処理経路にて扱き処理され、良好な扱き処理が行える。

　本発明においては、前記カウンター軸が、前記扱胴の下方を通過する状態で備えられていると好適である。

　本構成によれば、カウンター軸が扱胴の下方における脱穀装置内部を貫通する状態で備えられる。扱胴の回転駆動を阻害しない状態で、扱胴の下方の領域を有効利用してカウンター軸を配置させることができる。

　本発明においては、前記エンジンの動力が、機体走行用の伝動機構に伝達されたのち、その機体走行用の伝動機構から前記カウンター軸に伝達されるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、エンジンの動力が、直接にカウンター軸に伝達されるのではなく、機体走行用の伝動機構に伝達され、その機体走行用の伝動機構からカウンター軸に伝達される。

　説明を加えると、無駄な設置スペースが少ない合理的な機体配置構成とするために、例えば、エンジンの出力軸の横側にカウンター軸を配設する構成を採用する場合、エンジンの動力を、直接にカウンター軸に伝達しようとすると、エンジンの出力回転体とカウンター軸の入力回転体とが横並び状態となり、無端回動体等を巻回できないことがある。

　しかし、そのような配置構成であっても、エンジンの動力を機体走行用の伝動機構に伝達したのち、その機体走行用の伝動機構からカウンター軸に伝達させるようにすると、動力伝達が可能となる。

　従って、本構成によれば、伝動構造を改良することにより、無駄な設置スペースが少ない合理的な機体配置構成とすることが可能となった。

　本発明においては、前記エンジンの動力が、機体走行用の伝動機構に対する走行用入力軸に伝達されたのち、その走行用入力軸から前記カウンター軸に伝達されるように構成されていると好適である。

　本構成によれば、走行用入力軸から機体走行用の伝動機構とカウンター軸とに動力が分岐伝達されるので、機体走行用の伝動機構を大幅に構造改良する必要がなく、簡単な構造改良で対応できる。

　本発明においては、前記脱穀装置の後方に、排ワラ処理装置が備えられ、前記排ワラ処理装置の入力回転体へ動力を伝達する伝達機構に、複数本のベルトが備えられていると好適である。

　本構成によれば、排ワラ処理装置の入力回転体への駆動力の伝達が、複数本のベルトにより行われるので、伝達機構におけるテンション力が各ベルトに分散され、各ベルトの耐用期間を長くすることができるとともに、伝達機構に小径のプーリを用いた場合であっても、各ベルトとプーリとの間にスリップが生じにくく、排ワラ処理装置への動力伝達を円滑に行うことができる。

第１実施形態を示す図であって、コンバインの右側面図である。第１実施形態を示す図であって、コンバインの全体平面図である。第１実施形態を示す図であって、コンバインにおいてグレンタンクを外した状態を示す平面図である。第１実施形態を示す図であって、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達構造を示す側面図である。第１実施形態を示す図であって、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達構造を示す平面図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構における正転伝動状態を示す側面図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構における逆転伝動状態を示す側面図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示す拡大側面図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は部分拡大図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示す背面図である。第１実施形態を示す図であって、正逆転選択機構の取付構造を示す分解斜視図である。第１実施形態を示す図であって、動力伝達系統を示す線図である。第２実施形態を示す図であって、コンバインの右側面図である。第２実施形態を示す図であって、コンバインの全体平面図である。第２実施形態を示す図であって、コンバインにおいてグレンタンクを外した状態を示す平面図である。第２実施形態を示す図であって、エンジンとトランスミッションと脱穀装置との動力伝達構造を示す側面図である。第２実施形態を示す図であって、エンジンとトランスミッションと脱穀装置との動力伝達構造を示す正面図である。第２実施形態を示す図であって、エンジンとトランスミッションと脱穀装置との動力伝達構造を示す正面図である。第２実施形態を示す図であって、エンジンからトランスミッションを経て脱穀装置に至る動力伝達箇所の構造を示す分解斜視図である。第２実施形態を示す図であって、動力伝達系統を示す線図である。第３実施形態を示す図であって、普通型コンバインの全体左側面図である。第３実施形態を示す図であって、普通型コンバインの全体平面図である。第３実施形態を示す図であって、脱穀装置の縦断側面図である。第３実施形態を示す図であって、扱室の側面図である。第３実施形態を示す図であって、扱室の縦断正面図である。第３実施形態を示す図であって、天板と左側板とを開放した状態の脱穀装置の縦断正面図である。第３実施形態を示す図であって、左側板の斜視図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は扱胴の側面図、（ｂ）はＸＸＸＶＩＩＩｂ―ＸＸＸＶＩＩＩｂ線断面図、（ｃ）はＸＸＸＶＩＩＩｃ―ＸＸＸＶＩＩＩｃ線断面図、（ｄ）は支持プレートの断面図、（ｅ）はＸＸＸＶＩＩＩｅ―ＸＸＸＶＩＩＩｅ線断面図である。第３実施形態を示す図であって、受網の連結状態を示す図である。第３実施形態を示す図であって、受網の取外し時の断面図である。第３実施形態を示す図であって、脱穀装置の平面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は補強板の取付状態を示す縦断正面図、（ｂ）は（ａ）の一部拡大図である。第３実施形態を示す図であって、選別処理部の側面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は移動案内部の側面図、（ｂ）は移動案内部の平面図、（ｃ）はガイドレールにて案内される揺動選別装置の縦断正面図、（ｄ）は移動案内部にて支持される揺動選別装置の縦断正面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は揺動駆動部の側面図、（ｂ）は揺動駆動部の平面図である。第３実施形態を示す図であって、グレンシーブの着脱状態を示す斜視図である。第３実施形態を示す図であって、揺動選別装置の一部縦断側面図である。第３実施形態を示す図であって、流し板の側面図である。第３実施形態を示す図であって、普通型コンバインの右側面図である。第３実施形態を示す図であって、第１穀粒搬送装置の側面図である。第３実施形態を示す図であって、第１穀粒搬送装置の下部を示す図であり、（ａ）は縦断側面図、（ｂ）は縦断正面図である。第３実施形態を示す図であって、第１穀粒搬送装置の背面図である。第３実施形態を示す図であって、第１穀粒搬送装置の搬送終端部の一部切欠き背面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は第１穀粒搬送装置の搬送終端部の縦断側面図、（ｂ）は第１穀粒搬送装置の搬送終端部の縦断背面図である。第３実施形態を示す図であって、上部カバーの斜視である。第３実施形態を示す図であって、第２穀粒搬送装置の背面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は二番物還元装置の側面図、（ｂ）はチェーンケースの断面図である。第３実施形態を示す図であって、二番物還元装置の展開した状態での切欠き背面図である。第３実施形態を示す図であって、二番物還元装置の排出部の横断平面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は唐箕の縦断正面図、（ｂ）唐箕の左側面図、（ｃ）唐箕の右側面図である。第３実施形態を示す図であって、開度調整板の支持構造を示す側面図である。第３実施形態を示す図であって、開度調整板の支持構造を示す側面図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）はシャッター部材の支持構造を示す平面図、（ｂ）はシャッター部材の支持構造を示す側面図である。第３実施形態を示す図であって、伝動系統図である。第３実施形態を示す図であって、（ａ）は中継用伝動機構の縦断正面図、（ｂ）は脱穀装置に対する伝動構造を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、コンバインの右側面図である。第４実施形態を示す図であって、コンバインの全体平面図である。第４実施形態を示す図であって、エンジンとトランスミッションと脱穀装置との動力伝達構造を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、エンジンとトランスミッションと脱穀装置との動力伝達構造を示す平面図である。第４実施形態を示す図であって、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達構造を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、エンジンからラジエータ冷却ファンへの動力伝達構造を示す平面図である。第４実施形態を示す図であって、送風機構を示す背面図である。第４実施形態を示す図であって、動力伝達系統を示す線図である。第４実施形態を示す図であって、ラジエータへの吸気ケース部分を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、ラジエータへの吸気ケース部分を示す背面図である。第４実施形態を示す図であって、ラジエータへの吸気ケース部分を示し、（ａ）は平面図、（ｂ）は上下の接続箇所を示す斜視図である。第４実施形態を示す図であって、ラジエータと吸気ケースとラジエータ冷却ファンとを示す分解斜視図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示す水平方向に沿う断面での平面図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示す上下方向に沿う断面での背面図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構の取付構造を示す分解斜視図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構における正転伝動状態を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構における逆転伝動状態を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、正逆転選択機構を示す拡大側面図である。第４実施形態を示す図であって、図７１におけるＬＸＸＩＶ－ＬＸＸＩＶ線断面図である。第４実施形態を示す図であって、ベルト外れ止め具を示す側面図である。第４実施形態を示す図であって、ベルト外れ止め具を示す平面図である。第４実施形態を示す図であって、運転キャビン内部での操作具の取付状態を示す説明図である。第４実施形態の別実施形態におけるコンバインの右側面図である。

［第１実施形態］
　以下、本発明の第１実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
［全体構成］
　図１乃至図５は、本発明に係るコンバインの一例である全稈投入型（普通型）コンバインを示している。図１が機体全体の右側面を示し、図２が平面を示している。図３はグレンタンク５を外して脱穀装置４等を露出させた状態を示す平面図である。

　これらの図に示すように、上記の全稈投入型コンバインは、車体フレーム１の下側に左右一対の前輪２Ｆ，２Ｆ（前走行装置に相当する）、及び左右一対の後輪２Ｒ，２Ｒ（後走行装置に相当する）からなる走行装置２を備えている。
　車体フレーム１の前部に運転キャビン１５（運転部に相当する）を備え、その後方側に脱穀装置４、及びグレンタンク５を夫々備え、最後部に排ワラ処理装置１６を備え、車体フレーム１に対して水平横軸心（図示せず）周りで昇降作動する刈取処理装置１７を前部に備えて自走機体を構成している。
　車体フレーム１上の前部で脱穀装置４の横側部にエンジン３が搭載され、エンジン３から離れた後方位置にラジエータ７が配設されている。脱穀装置４を挟んでエンジン３とは反対側に燃料タンク１２が搭載されている。エンジン３の動力は、上記の走行装置２の他、脱穀装置４、刈取処理装置１７、及びラジエータ７の冷却を行うラジエータ冷却ファン７０などに対して伝達される。

　走行装置２の前輪２Ｆには、車体フレーム１の前部に装着されたトランスミッション２０から左右に延出された前輪駆動軸２４を介して伝達される動力が、前輪２Ｆの機体内方側に向く面に形成された凹入箇所に入り込む状態で配備された減速ケース２５、及び減速ケース２５に支持された前車軸２ａを介して前輪２Ｆに伝達されるように構成してある。
　これにより前輪２Ｆは、前車軸２ａを介してエンジン３の動力が伝達され、前車軸２ａの水平横軸心ｘ１Ａ周りで駆動回転されるように取り付けられたものであり、その左右方向幅及び直径のいずれもが、後輪２Ｒよりも大きいタイヤ車輪からなる非操向車輪によって構成してある。

　後輪２Ｒは、図４及び図５に示すように、車体フレーム１の後部で、前後方向軸心（図示せず）周りで左右揺動自在に装着された後輪支持フレーム（図示せず）の左右両端側に設けてあり、上下揺動軸心周りで操向操作可能な後車軸２ｂを備えた操向車輪によって構成してある。この後輪２Ｒは、その左右方向幅及び直径が前輪２Ｆよりも小さく設定されたタイヤ車輪で構成され、後車軸２ｂの水平横軸心ｘ２Ａ周りで回動する。

［刈取処理装置］
　図１乃至図３に示すように、車体フレーム１に搭載した脱穀装置４の前側で左右方向に沿う横軸心周りで昇降作動する刈取処理装置１７を設けてある。
　この刈取処理装置１７は、脱穀装置４に対して刈り取られた茎稈などの作物を供給するフィーダ１７Ａと、植立茎稈などの作物穂先側を掻き込む掻き込みリール１７Ｂや、株元側を切断する刈取装置１７Ｃ、及び刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める横送りオーガ１７Ｄを備えて、作物を刈り取ってフィーダ１７Ａに送り込み、脱穀装置４に供給するように構成されている。
　このフィーダ１７Ａは、図示はしないが、角筒状のケース内部に前後方向に回動する無端帯状の搬送体が装備されていて、送り込まれた刈取作物を後方上方に向けて搬送するように構成されている。フィーダ１７Ａによる作物搬送方向は、脱穀装置４内における扱胴４０の扱胴回転軸心ｐ０Ａ（図４参照）に沿う前後方向であり、フィーダ１７Ａ部分の昇降動作に伴って、掻き込みリール１７Ｂや刈取装置１７Ｃ及び横送りオーガ１７Ｄも昇降作動可能に構成してある。

［脱穀装置］
　脱穀装置４は、前述したように、車体フレーム１上で、扱胴回転軸心ｐ０Ａが前後方向に沿うように配設されている。この脱穀装置４は、前後方向で前輪２Ｆと後輪２Ｒとの前後方向間隔内に配備され、左右方向でも、左右の前輪２Ｆ及び後輪２Ｒの間隔幅内に位置する状態で配設されている。
　また、脱穀装置４は、その下面が図１に示すように、非操向車輪である前輪２Ｆの前車軸２ａよりも少し低く、操向車輪である後輪２Ｒの後車軸２ｂよりも少し高い位置にある。つまり、非操向車輪である前輪２Ｆの前車軸２ａ、もしくは操向車輪である後輪２Ｒの後車軸２ｂと略同じ高さに位置するように配設されている。

　このように配設された脱穀装置４は、機体の左右方向での中心線ＣＬＡに対して、脱穀装置４の扱胴回転軸心ｐ０Ａが、左側へ偏倚した状態で配設されている。脱穀装置４の左右方向での中心線は、内部に配設されている扱胴４０の前後方向の扱胴回転軸心ｐ０Ａと同一の位置に存在しているので、脱穀装置４の全体も、機体の左右方向での中心線ＣＬＡに対して左側へ偏倚した状態で配設されている。

　脱穀装置４に刈取作物を供給するフィーダ１７Ａは、脱穀装置４と同様に機体の左右方向での中心線ＣＬＡに対して、左側へ偏倚した状態で配設されており、図３に示すように、機体の左右方向での中心線ＣＬＡに対して右寄りに偏倚したトランスミッション２０とは平面視で部分的に重複する位置に配設されている。
　排ワラ処理装置１６は、脱穀装置４の後部に一体的に装着されており、脱穀処理後の排ワラを切断して機外へ排出するように構成されている。

　脱穀装置４は、機体前後方向に長い矩形箱状に形成され、その前端部に唐箕４１を備えている（図１２参照）。この唐箕４１の送風翼を備えた唐箕軸４１ａが脱穀ケース４Ａの右横外側に延出され、その唐箕軸４１ａの延出箇所に、脱穀装置４にエンジン３から伝えられる動力を受け入れるための脱穀入力プーリ４１ｂ（脱穀側回転体に相当する）が装着されている。
　この脱穀装置４には、副唐箕は併設されていず、唐箕４１のみを用いて選別箇所に対する送風を行うように構成されている。

　脱穀装置４の内部には、フィーダ１７Ａ側から送り込まれる刈取作物を脱穀処理するための扱胴４０が、前後方向の扱胴軸４０ａ廻りで回転駆動されるように配備されている。この扱胴４０の他に、唐箕４１による送風作用とともに、扱胴４０で脱穀処理された刈取作物を揺動選別処理する選別処理装置４２などが配備されている。

［グレンタンク］
　グレンタンク５は、図１乃至図３に示すように、運転キャビン１５の後方側で、車体フレーム１上の右横側部に立設されたタンク支持台１３と、その左横側部に位置する脱穀装置４の上側とにわたって設けられている。
　グレンタンク５は、角パイプなどの各種の鋼材を組み付けて格子状に形成した底部枠５０の上側に、機体左右方向でのほぼ全幅にわたる左右方向幅を有した箱状のタンク本体５１を搭載してある。
　これらの底部枠５０とタンク本体５１とが一体的に連結されて、タンク支持台１３の上端部に設けた揺動支軸５２により、前後方向の揺動軸心ｚ２Ａ周りで揺動可能に支持されている。

　タンク支持台１３は、図１及び図３，４に示されるように、脱穀装置４の右横側方箇所で、前輪２Ｆと後輪２Ｒとの間で車体フレーム１上に配備されている。このタンク支持台１３は、脱穀装置４から遠い側に配設された外支柱１３Ａと、それよりも脱穀装置４に近い側に配設された内支柱１３Ｂとを備えている。これらの外支柱１３Ａの下端部と内支柱１３Ｂの下端部とが車体フレーム１に固定され、かつ外支柱１３Ａと内支柱１３Ｂとの各上端部が、上部枠１３Ｃに連結されている。この上部枠１３Ｃに、グレンタンク５の左右方向での一端側に相当する穀粒排出口５Ａ側の端部が、前後方向の揺動軸心ｚ２Ａ回りで起伏揺動可能に連結支持されている。
　そして、タンク支持台１３の内支柱１３Ｂとグレンタンク５の底部枠５０との間に、油圧駆動式のダンプシリンダ５３が介装されている。このダンプシリンダ５３の伸縮作動により、グレンタンク５を、タンク本体５１の底面が水平又はほぼ水平姿勢となる貯留姿勢と、底面が起立する側へ持ち上げられた排出姿勢とに、揺動軸心ｚ２Ａ回りで起伏揺動させて姿勢変更可能に構成してある。

　タンク支持台１３の後部には、図４及び図５に示すように、ラジエータ７が配設されている。このラジエータ７は、最後部の外支柱１３Ａに前端側を支持され、上部を上部枠１３Ｃに取り付けられ、下部を車体フレーム１から立設されているラジエータ支持脚１ａに支持された状態で取り付けられている。

［運転キャビン］
　運転キャビン１５は、図１及び図３に示すように、車体フレーム１上に立設された運転部フレーム１１に搭載設置されている。
　これによって、運転キャビン１５は、前輪２Ｆの外径の上縁よりも高い位置で、かつ前輪２Ｆの後縁よりも前方側の位置で運転部フレーム１１を介して車体フレーム１に支持されている。

　運転キャビン１５内には操縦操作用のステアリングハンドル１５ａや運転座席１５ｂ等が配備され、ステアリングハンドル１５ａの操作で後輪２Ｒが操向操作されるように構成されている。この運転キャビン１５内には、図示しないが、操縦操作用、及び作業操作用の各種の操作具、ならびに計器類が配備されている。

［動力伝達構造］
　次に、エンジン３の動力を、脱穀装置４やラジエータ冷却ファン７０に伝える動力伝達構造について説明する。
　図３，４、及び図１２に示すように、エンジン３は、クランク軸（図示せず）が機体左右方向に沿う状態で、車体フレーム１上の右外側寄り箇所に配設されている。
　エンジン３の左右方向での一端側（機体内方側）には、軸線方向が機体左右方向に沿う状態で、フライホイール（図示せず）とともにエンジン出力回転体としての出力プーリ３０が設けられている。他端側（機体外方側）には、出力軸３１が突出され、その出力軸３１に第２出力プーリ３１ａが装着されている。この第２出力プーリ３１ａから、後述する正逆転選択機構６を介して、エンジン３の動力がラジエータ冷却ファン７０の駆動力として取り出されるように構成してある。

　出力プーリ３０は、その外周部に、無端回動帯の一例である３本のＶベルトの組で構成される第１伝動ベルト３２を巻回するための３箇所のベルト溝を備えている。
　エンジン３の前方側で、エンジン３よりも機体内方側（左右方向での左側）に位置するトランスミッション２０には、機体外方側（左右方向での右側）に突出する入力軸２１を備えてあり、この入力軸２１に入力回転体として入出力プーリ２２を一体回動するように装着してある。

　この入出力プーリ２２には、第１伝動ベルト３２の３本のＶベルトを巻回するための３箇所のベルト溝を備えた第１回転体部分２２Ａと、後述する第２伝動ベルト３３を巻回するための２箇所のベルト溝を備えた第２回転体部分２２Ｂとが備えられている。この第２回転体部分２２Ｂは、脱穀装置４に対してはエンジン動力を伝達するための出力回転体としての役割を備えている。
　第１回転体部分２２Ａと第２回転体部分２２Ｂとは一体成型された多連プーリで構成され、第１回転体部分２２Ａ側が大径でエンジン３が存在する機体外側寄りに位置し、第２回転体部分２２Ｂが小径で、脱穀装置４が存在する機体内方側寄りに位置している。
　トランスミッション２０には、入出力プーリ２２が設けられた側とは反対側に、入力軸２１で入力される動力を変速して走行装置２に伝えるための無段変速装置２３が取り付けてあり、この無段変速装置２３で変速された動力が、トランスミッション２０の内部に備えた図示しない変速機構を経て前輪駆動軸２４から出力されるように構成されている。

　入出力プーリ２２の第２回転体部分２２Ｂには、無端回動帯の一例である２本のＶベルトの組で構成される第２伝動ベルト３３が巻回されている。
　この第２伝動ベルト３３は、脱穀装置４の唐箕軸４１ａに備えた脱穀入力プーリ４１ｂに対して巻回され、第２回転体部分２２Ｂから第２伝動ベルト３３を介してエンジン動力が脱穀装置４に入力されるように構成してある。
　唐箕軸４１ａ側の脱穀入力プーリ４１ｂは、第２回転体部分２２Ｂ、及び出力プーリ３０よりも大径に形成されており、エンジン回転数が減速されて唐箕軸４１ａに伝達されるように構成されている。

　図１２に示すように、唐箕軸４１ａに入力されたエンジン動力は、扱胴４０を駆動するための扱胴側駆動機構４３と、フィーダ１７Ａを含む刈取処理装置１７に動力を伝達する刈取側駆動機構４４と、選別処理装置４２等を駆動するための選別側駆動機構４５に分配供給されるように構成されている。これらの扱胴側駆動機構４３、刈取側駆動機構４４、選別側駆動機構４５の夫々は伝動ベルトを含んでいる。また、選別側駆動機構４５の伝動下手側から伝動ベルト４６を介して排ワラ処理装置１６にも動力を伝達するように構成されている。
　選別側駆動機構４５は、一番スクリュー４２ａと揚送装置４７とに動力を伝える伝動ベルト４５ａと、二番スクリュー４２ｂと二番還元装置４８とに動力を伝える伝動ベルト４５ｂと、揺動選別板４２ｃに動力を伝える伝動ベルト４５ｃとを備えている。

　ラジエータ冷却ファン７０への動力伝達は、図４，５、及び図１２に示すように、第３伝動ベルト３４を介して行われる。
　この第３伝動ベルト３４は、中継軸３５を挟んでエンジン３に近い側に位置する上手側伝動ベルト３４Ａ（原動側無端回動帯に相当する）と、ラジエータ冷却ファン７０に近い側に位置する下手側伝動ベルト３４Ｂ（駆動装置の無端回動帯に相当する）とを備えている。
　上手側伝動ベルト３４Ａは、エンジン３の出力プーリ３０とは反対側に位置する出力軸３１に備えた第２出力プーリ３１ａと、中継軸３５の機体外方側の端部（左右方向では右側の端部）に備えた中継入力プーリ３５ａ（駆動回転体に相当し、中継回転体を兼ねる）とにわたって巻回されたＶベルトによって構成されている。

　下手側伝動ベルト３４Ｂは、中継軸３５の機体内方側の端部（左右方向では左側の端部）に設けた複数の巻回部として、一対の中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃ（駆動回転体に相当し、中継回転体を兼ねる）と、ラジエータ冷却ファン７０の支軸７１に支持されたファン入力プーリ７２（入力回転体に相当する）とにわたって巻回した正転伝動ベルト３６（正転系動力伝達機構の無端回動帯に相当する）と、逆転伝動ベルト３７（逆転系動力伝達機構の無端回動帯に相当する）とによって構成されている。
　つまり、正転伝動ベルト３６と逆転伝動ベルト３７とのうちの、何れか一方が正逆転選択機構６によって伝動状態となるように選択され、その選択された側の正転伝動ベルト３６又は逆転伝動ベルト３７が、ファン入力プーリ７２に動力を伝える下手側伝動ベルト３４Ｂとして機能するように構成されている。

　上記のように、中継軸３５に装着された中継入力プーリ３５ａ、中継出力プーリ３５ｂ、中継出力プーリ３５ｃが駆動回転体の複数の巻回部を構成し、この駆動回転体と下手側伝動ベルト３４Ｂとが、ラジエータ冷却ファン７０を駆動するための駆動装置を構成している。
　この駆動装置では、中継入力プーリ３５ａに巻回される原動側無端回動帯であるところの上手側伝動ベルト３４Ａが、中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃに巻回される駆動装置の無端回動帯であるところの下手側伝動ベルト３４Ｂよりも機体外方側に位置するように設けられている。

　そして、エンジン３からラジエータ冷却ファン７０に至る動力伝達構造である第３伝動ベルト３４等は、エンジン３の横外側、及びラジエータ７の横外側が、側部カバー９で覆われていることにより外部から遮蔽された空間ｓ１Ａ内に納められた状態にある。
　この空間ｓ１Ａは、図４に示すように、下部前方に位置するエンジン３の出力軸３１から、後方に離れた少し高い位置のラジエータ冷却ファン７０に対して動力を伝達する第３伝動ベルト３４を配備する際に、その前後方向の中間部を、中継軸３５を用いて上方側へ持ち上げるようにして形成されたものである。
　これによって、第３伝動ベルト３４の下側に存在する空間の容積を大きくし、メンテナンス用の空間として有効利用できるようにしてある。

［正逆転選択機構］
　正逆転選択機構６について説明する。
　正逆転選択機構６は、正転伝動ベルト３６と逆転伝動ベルト３７とが巻回されるファン入力プーリ７２に対して、正転伝動ベルト３６と逆転伝動ベルト３７とのうちの何れか一方の動力が伝達され、他方の動力が伝達されないように伝動状態を選択することによって、ファン入力プーリ７２の回転方向を正転方向と逆転方向との何れかに切り換えるためのものである。
　ファン入力プーリ７２の正転方向とは、ラジエータ冷却ファン７０による送風方向が機体横外方側から内方側へ向けられ、ラジエータ７に対してラジエータ冷却ファン７０による吸引作用が働く方向である。逆転方向とはその逆方向へラジエータ冷却ファン７０による送風方向が向けられる方向である。この逆転方向では、ラジエータ冷却ファン７０による送風方向が機体内方側から外方側へ向けられ、ラジエータ７の機体横外側に存在する防塵網７ａに付着した塵埃を外側へ吹き飛ばすことが可能となる。

　図４乃至図１１に示すように、ラジエータ７の機体内方側に設置されるファン入力プーリ７２は、車体フレーム１上に立設したファン取付台８に支持されている。
　ファン取付台８は、車体フレーム１上に立設した支柱８０の上端部に平板状の座板８１を備えている。その座板８１の上面側に対して搭載される基板８２と、基板８２の上側で前後方向に沿って配設された角筒状部材８３と、角筒状部材８３の上面側で板面を前後方向に沿わせて起立する取付板８４とが溶接固定されている。座板８１と基板８２とは板面同士を当接させて連結ボルトで着脱可能に連結固定されている。

　取付板８４には、図８乃至図１１に示すように、取付板８４の板面を貫通する状態で、ファン入力プーリ７２を枢支するための支軸７１が固定されている。つまり、支軸７１には、取付板８４と対向する鍔状の当接面を備えた連結板７３が溶接固定されていて、この連結板７３を当てつけた状態で、取付板８４にボルト連結してある。
　取付板８４にボルト連結された支軸７１には、取付板８４の機体外方側に突出する部位に揺動アーム６０が装着され、取付板８４を貫いて機体内方側に突出する部位に操作レバー６２が装着されている。この揺動アーム６０及び操作レバー６２は、支軸７１の軸線方向での移動をサークリップ７１ａで阻止された状態で、回動自在に枢支されている。

　揺動アーム６０には、操作レバー６２側へ向けて突出する連係ピン６１が突出形成され、操作レバー６２側には、その連係ピン６１の頭部が嵌り込み可能な係合孔６２ａが形成されている。そして、取付板８４には、連係ピン６１の挿通が可能で、かつ、支軸７１の軸心ｐ２Ａ回りにおける連係ピン６１の円弧軌跡に沿う所定範囲で長孔８４ａが形成されている。
　したがって、揺動アーム６０の連係ピン６１が取付板８４の長孔８４ａを貫通した状態で操作レバー６２の係合孔６２ａに嵌り込ませると、操作レバー６２の揺動操作にともなって揺動アーム６０を長孔８４ａの所定範囲内で支軸７１の軸心ｐ２Ａ回りに揺動操作することができる。

　揺動アーム６０は、支軸７１の軸心ｐ２Ａから離れる２方向に延出された腕部分６０Ａ，６０Ｂを備えている。一方の腕部分６０Ａには、正転伝動ベルト３６に作用する第１テンション輪体６３の支軸６３ａが設けられ、他方の腕部分６０Ｂには、逆転伝動ベルト３７に作用する第２テンション輪体６４の支軸６４ａが設けられている。
　図９に示されているように、揺動アーム６０のうち、第１テンション輪体６３が装着された腕部分６０Ａは、第２テンション輪体６４が装着された腕部分６０Ｂよりも、取付板８４から離れて機体外方側に位置している。
　また、この第１テンション輪体６３が装着された腕部分６０Ａには、図８，９、及び図１１に示すように、正転伝動ベルト３６を緊張させる側（図８における時計回り方向）に回動付勢するコイルスプリング６６（付勢機構に相当する）を係止するための係止片６６ａが設けられている。コイルスプリング６６の他端側は、ファン取付台８の支柱８０に連結されており、揺動アーム６０に、常時、正転伝動ベルト３６を緊張させる側への付勢力が作用するように張設してある。

　逆転伝動ベルト３７は、第２テンション輪体６４の他に、第３テンション輪体６５にも巻回するように設けられている。
　第３テンション輪体６５は、取付板８４に設けた支軸６５ａに枢支されており、操作レバー６２の揺動操作によって位置変更されるものではなく、取付板８４上で位置固定されて設けられたものである。
　第２テンション輪体６４と第３テンション輪体６５とは、図６及び図７に示すように、駆動回転体である中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃの軸心ｐ１Ａと、入力回転体であるファン入力プーリ７２の回動中心となる支軸７１の軸心ｐ２Ａとを結ぶ仮想線分ＬＡの両側に振り分けられた状態に配設されている。

　正転伝動ベルト３６は、駆動回転体である中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃのうち、機体外方側の中継出力プーリ３５ｂと、ファン入力プーリ７２と、第１テンション輪体６３とにわたって巻回されている。これらの中継出力プーリ３５ｂ、ファン入力プーリ７２、及び第１テンション輪体６３は、何れもが正転伝動ベルト３６の内周側に接するように配設されている。
　したがって、図６に示すように、操作レバー６２が実線で示す「正転」位置に操作されると、揺動アーム６０が時計回りに揺動して、正転伝動ベルト３６を緊張させる側へ第１テンション輪体６３を移動させる。この第１テンション輪体６３の位置は、コイルスプリング６６の付勢力が作用することによって、操作レバー６２から手を離しても、正転伝動状態であるように維持される。
　このとき、第２テンション輪体６４を支持する揺動アーム６０の腕部分６０Ｂは、逆転伝動ベルト３７を弛める側に揺動（時計回りに揺動）していて、逆転伝動ベルト３７による動力伝達が行われない状態となっている。

　逆転伝動ベルト３７は、駆動回転体である中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃのうち、機体内方側の中継出力プーリ３５ｃと、ファン入力プーリ７２と、第２テンション輪体６４と、第３テンション輪体６５とにわたって巻回されている。
　これらのうち、中継出力プーリ３５ｃと、第２テンション輪体６４、及び第３テンション輪体６５は逆転伝動ベルト３７の内周側に接し、ファン入力プーリ７２は逆転伝動ベルト３７の外周側に接するように、逆転伝動ベルト３７が巻回されている。
　したがって、図７に示すように、操作レバー６２を「逆転」位置に操作すると、コイルスプリング６６の付勢力に抗して揺動アーム６０が反時計回りに揺動して、逆転伝動ベルト３７を緊張させる側へ第２テンション輪体６４を移動させる。この状態で緊張された逆転伝動ベルト３７が逆転伝動状態となる。
　このとき、第１テンション輪体６３を支持する揺動アーム６０の腕部分６０Ａは、正転伝動ベルト３６を弛める側に揺動（反時計回りに揺動）していて、正転伝動ベルト３６による動力伝達が行われない状態となっている。

　上記のように、中継出力プーリ３５ｂ、ファン入力プーリ７２、第１テンション輪体６３、及び正転伝動ベルト３６を備えて正転系動力伝達機構が構成され、中継出力プーリ３５ｃ、ファン入力プーリ７２、第２テンション輪体６４、第３テンション輪体６５、及び逆転伝動ベルト３７を備えて逆転系動力伝達機構が構成されている。
　正逆転選択機構６は、正転系動力伝達機構の正転伝動ベルト３６と、逆転系動力伝達機構の逆転伝動ベルト３７とを、操作レバー６２の操作で揺動アーム６０を揺動作動させ、択一的に選択して緊張又は弛緩させることにより動力の断続を行うことが可能なテンションクラッチによって構成されたものである。
　尚、操作レバー６２の操作による揺動アーム６０の揺動作動は、正転側への切換状態はコイルスプリング６６の付勢力によって、操作レバー６２による操作力を解除しても持続されるが、逆転側への操作は、操作レバー６２の操作によって揺動アーム６０が揺動作動されている間だけ継続し、操作レバー６２による操作が解除されると、コイルスプリング６６の付勢力によって、正転駆動状態に自動復帰される。

　図８，９、及び図１１に示す符号６７は、揺動アーム６０に一体に設けた棒状の外れ止めガイドであり、符号６８は、Ｌ字状に屈曲形成された板状の外れ止めガイドである。また、符号８４ｂは取付板８４に設けた棒状の外れ止めガイドである。これらは何れも、正転伝動ベルト３６又は逆転伝動ベルト３７の外れ止めを行うためのものである。

　操作レバー６２は、機体横外側部に設けられた側部カバー９よりも機体内方側で、エンジン３が存在する機体前方側とは反対の機体後方側へ向けて延出してあり、その後端部は側部カバー９の後端よりも後方側へ露出する状態で設けてある。
　側部カバー９は、図１に示すように機体の右側部でエンジン３などが存在する車体フレーム１上の空間ｓ１Ａの外側に設けられている。また、ラジエータ７の機体外側方に存在する防塵カバー部分も側部カバー９の一部として利用されている。操作レバー６２は、ラジエータ７の機体外側方に存在する防塵カバー部分よりも後方側へ露出するように延出されている。
　したがって、機体後方側に露出する操作レバー６２を把持して逆転側へ操作することにより、ラジエータ冷却ファン７０を必要に応じて逆転作動させることができる。そして、逆転側への操作を解除することで自動的に正転状態に復帰させることができる。

［第１実施形態の別実施形態１］
　上記の実施形態では、走行装置２として、前輪２Ｆを非操向車輪で構成し、後輪２Ｒを操向車輪で構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前輪２Ｆを操向車輪とし、後輪２Ｒを非操向車輪としてもよい。また、前輪２Ｆ及び後輪２Ｒをともに操向車輪で構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態２］
　上記の実施形態では、走行装置２として、前輪２Ｆを非操向車輪で構成された駆動輪とし、後輪２Ｒを駆動されていない操向車輪で構成した構造のものを示したが、これに限らず、例えば、前輪２Ｆを駆動されていない操向車輪として、後輪２Ｒを非操向車輪からなる駆動輪とする、あるいは、前輪２Ｆ及び後輪２Ｒをともに操向車輪で構成して、前輪２Ｆと後輪２Ｒとを、ともに駆動するように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態３］
　上記の実施形態では、前走行部を非操向車輪からなる前輪２Ｆで構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪２Ｒで構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪２Ｒで構成したものであってもよい。逆に、前走行部を操向車輪からなる前輪２Ｆで構成して、後走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成してもよい。
　この場合、セミクローラタイプのクローラ走行装置を駆動し、操向車輪で構成される後輪２Ｒ又は前輪２Ｆは非駆動のものであっても良いし、セミクローラタイプのクローラ走行装置と、操向車輪で構成される後輪２Ｒ又は前輪２Ｆを共に駆動するものであっても良い。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態４］
　上記の実施形態では、脱穀装置４の上方に配設されるグレンタンク５を、左右方向の一端側に設けた揺動軸心ｚ２Ａの回りで傾動可能に構成し、かつ、揺動軸心ｚ２Ａが設けられた側に開閉可能な穀粒排出口５Ａを設けて、その傾動姿勢で穀粒を排出可能に構成した構造のものを示したが、これに限られるものではない。例えば、グレンタンク５に開閉可能な穀粒排出口５Ａを設けずに、図示しない排出用オーガを設けるなどして穀粒を排出するようにしてもよい。
　このように構成すれば、グレンタンク５の傾動用のダンプシリンダ５３を設けなくとも排出することも可能であるが、ダンプシリンダ５３を設けることで、タンク本体５１の底部に存在する穀粒を排出用オーガの存在する側へ集めるように構成するのが望ましい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態５］
　上記の実施形態では、上記の実施形態では、運転部として運転キャビン１５を備えた構造のものを例示したが、これに限られるものではなく、運転部としては運転キャビン１５を備えずに、単に操縦部や運転座席１５ｂを備えただけのものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態６］
　上記の実施形態では、エンジン３からラジエータ冷却ファン７０への動力伝達系として、エンジン３の出力軸３１に装着した第２出力プーリ３１ａ、中継入力プーリ３５ａ、中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃ、ファン入力プーリ７２を用いた構造のものを示したが、このような出力用又は入力用の回転体をプーリで構成するものに限らず、例えばスプロケットで構成してもよい。
　その場合、伝動用の無端回動帯は、第３伝動ベルト３４、及び正転伝動ベルト３６，逆転伝動ベルト３７に代えて伝動チェーンを用いるようにしてもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態７］
　上記の実施形態では、ラジエータ冷却ファン７０への動力伝達系における駆動回転体として、同一の中継軸３５に固定された中継入力プーリ３５ａ、及び中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃを用いた構造のものを例示したが、これに限らず、例えば中継出力プーリ３５ｂ，３５ｃが別々の軸に取り付けられて各別に駆動されるように構成されたものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態８］
　上記の実施形態では、正転系動力伝達機構の正転伝動ベルト３６に作用する第１テンション輪体６３と、逆転系動力伝達機構の逆転伝動ベルト３７に作用する第２テンション輪体６４とが、単一の揺動アーム６０に支持された構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
　例えば、複数個の揺動アーム６０を用いて、第１テンション輪体６３と第２テンション輪体６４とを各別に備えさせた構造のものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態９］
　上記の実施形態では、揺動アーム６０の軸心と、ファン入力プーリ７２の軸心とが、共通の支軸７１を用いることによって同一の軸心ｐ２Ａであるように構成した構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。例えば、揺動アーム６０とファン入力プーリ７２とを別々の支軸で支持して、別々の軸心を有するように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態１０］
　上記の実施形態では、正逆転選択機構６として、正転系動力伝達機構の揺動アーム６０を、正転伝動ベルト３６が緊張された状態に付勢するコイルスプリング６６が備えられたものを例示したが、これに限られるものではない。例えば、コイルスプリング６６を用いないものであってもよい。
　また、正転側と逆転側との両位置で揺動アーム６０が位置固定されるように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態１１］
　上記の実施形態では、ラジエータ冷却ファン７０を駆動させる駆動装置として、エンジン３によって駆動される中継軸３５の動力を用いた構造のものを例示したが、これに限られるものではなく、例えば、エンジン３で駆動される発電装置と電動モータなどを用いて駆動される構造の駆動装置であってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第１実施形態の別実施形態１２］
　上記の実施形態では、出力軸３１を左右方向に向けた状態で配備されたエンジン３の車体後方側箇所にラジエータ７を配備した構造のものを例示したが、これに限らず、例えば、エンジン３の車体前方側箇所にラジエータ７を配備する、あるいは、エンジン３の車体上方側箇所にラジエータ７を配備するようにしたものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
［第１実施形態の別実施形態１３］
　上記の実施形態では、作業機として、コンバインの一例である全稈投入型（普通型）コンバインを例示したが、これに限らず、例えば、芝刈り機や、トラクターや、建機、あるいは運搬車などの作業機であってもよい。

［第２実施形態］
　以下、第２実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
［全体構成］
　図１３乃至図１７は、本発明に係るコンバインの一例である全稈投入型（普通型）コンバインを示している。図１３が機体全体の右側面を示し、図１４が平面を示している。図１５はグレンタンク２０５を外して脱穀装置２０４等を露出させた状態を示す平面図である。

　これらの図に示すように、上記の全稈投入型コンバインは、車体フレーム２０１の下側に左右一対の前輪２０２Ｆ，２０２Ｆ（前走行装置に相当する）、及び左右一対の後輪２０２Ｒ，２０２Ｒ（後走行装置に相当する）からなる走行装置２０２を備えている。
　車体フレーム２０１の前部に運転キャビン２１５（運転部に相当する）を備え、その後方側に脱穀装置２０４、及びグレンタンク２０５を夫々備え、最後部に排ワラ処理装置２１６を備え、車体フレーム２０１に対して水平横軸心（図示せず）周りで昇降作動する刈取処理装置２１７を前部に備えて自走機体を構成している。
　車体フレーム２０１上の前部で脱穀装置２０４の横側部にエンジン２０３が搭載され、エンジン２０３から離れた後方位置にラジエータ２０７が配設されている。脱穀装置２０４を挟んでエンジン２０３とは反対側に燃料タンク２０８が搭載されている。エンジン２０３の動力は、上記の走行装置２０２の他、脱穀装置２０４、刈取処理装置２１７、及びラジエータ２０７の冷却を行うラジエータファン２０７ａなどに対して伝達される。

　走行装置２０２の前輪２０２Ｆには、車体フレーム２０１の前部に装着されたトランスミッション２２０から左右に延出された前輪駆動軸２２４を介して伝達される動力が、前輪２０２Ｆの機体内方側に向く面に形成された凹入箇所に入り込む状態で配備された減速ケース２２５、及び減速ケース２２５に支持された前車軸２０２ａを介して前輪２０２Ｆに伝達されるように構成してある。
　これにより前輪２０２Ｆは、前車軸２０２ａを介してエンジン２０３の動力が伝達され、水平横軸心ｘ１Ｂ周りで駆動回転されるように取り付けられたものであり、その左右方向幅及び直径のいずれもが、後輪２０２Ｒよりも大きいタイヤ車輪からなる非操向車輪によって構成してある。

　後輪２０２Ｒは、図１６及び図１７に示すように、車体フレーム２０１の後部で、前後方向軸心（図示せず）周りで左右揺動自在に装着された後輪支持フレーム（図示せず）の左右両端側に設けてあり、上下揺動軸心周りで操向操作可能な後車軸２０２ｂを備えた操向車輪によって構成してある。この後輪２０２Ｒは、その左右方向幅及び直径が前輪２０２Ｆよりも小さく設定されたタイヤ車輪で構成され、後車軸２０２ｂの水平横軸心ｘ２Ｂ周りで回動する。

［刈取処理装置］
　図１３乃至図１５に示すように、車体フレーム２０１に搭載した脱穀装置２０４の前側で左右方向に沿う横軸心周りで昇降作動する刈取処理装置２１７を設けてある。
　この刈取処理装置２１７は、脱穀装置２０４に対して刈り取られた茎稈などの作物を供給するフィーダ２１７Ａと、植立茎稈などの作物穂先側を掻き込む掻き込みリール２１７Ｂや、株元側を切断する刈取装置２１７Ｃ、及び刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める横送りオーガ２１７Ｄを備えて、作物を刈り取ってフィーダ２１７Ａに送り込み、脱穀装置２０４に供給するように構成されている。
　このフィーダ２１７Ａは、図示はしないが、角筒状のケース内部に前後方向に回動する無端帯状の搬送体が装備されていて、送り込まれた刈取作物を後方上方に向けて搬送するように構成されている。フィーダ２１７Ａによる作物搬送方向は、脱穀装置２０４内における扱胴２４０の扱胴回転軸心ｐ１Ｂ（図１６参照）に沿う前後方向であり、フィーダ２１７Ａ部分の昇降動作に伴って、掻き込みリール２１７Ｂや刈取装置２１７Ｃ及び横送りオーガ２１７Ｄも昇降作動可能に構成してある。

［脱穀装置］
　脱穀装置２０４は、前述したように、車体フレーム２０１上で、扱胴回転軸心ｐ１Ｂが前後方向に沿うように配設されている。この脱穀装置２０４は、前後方向で前輪２０２Ｆと後輪２０２Ｒとの前後方向間隔内に配備され、左右方向でも、左右の前輪２０２Ｆ及び後輪２０２Ｒの間隔幅内に位置する状態で配設されている。
　また、脱穀装置２０４は、その下面が図１３に示すように、非操向車輪である前輪２０２Ｆの前車軸２０２ａよりも少し低く、操向車輪である後輪２０２Ｒの後車軸２０２ｂよりも少し高い位置にある。つまり、非操向車輪である前輪２０２Ｆの前車軸２０２ａ、もしくは操向車輪である後輪２０２Ｒの後車軸２０２ｂと略同じ高さに位置するように配設されている。

　このように配設された脱穀装置２０４は、機体の左右方向での中心線ＣＬＢに対して、脱穀装置２０４の扱胴回転軸心ｐ１Ｂが、左側へ偏倚した状態で配設されている。脱穀装置２０４の左右方向での中心線は、内部に配設されている扱胴２４０の前後方向の扱胴回転軸心ｐ１Ｂと同一の位置に存在しているので、脱穀装置２０４の全体も、機体の左右方向での中心線ＣＬＢに対して左側へ偏倚した状態で配設されている。

　脱穀装置２０４に刈取作物を供給するフィーダ２１７Ａは、脱穀装置２０４と同様に機体の左右方向での中心線ＣＬＢに対して、左側へ偏倚した状態で配設されており、図１５に示すように、機体の左右方向での中心線ＣＬＢに対して右寄りに偏倚したトランスミッション２２０とは平面視で部分的に重複する位置に配設されている。
　排ワラ処理装置２１６は、脱穀装置２０４の後部に一体的に装着されており、脱穀処理後の排ワラを切断して機外へ排出するように構成されている。

　脱穀装置２０４は、機体前後方向に長い矩形箱状に形成され、その前端部に唐箕２４１を備えている（図２０参照）。この唐箕２４１の送風翼を備えた唐箕軸２４１ａが脱穀ケース２０４Ａの右横外側に延出され、その唐箕軸２４１ａの延出箇所に、脱穀装置２０４にエンジン２０３から伝えられる動力を受け入れるための脱穀入力プーリ２４１ｂ（脱穀側回転体に相当する）が装着されている。
　この脱穀装置２０４には、副唐箕は併設されていず、唐箕２４１のみを用いて選別箇所に対する送風を行うように構成されている。

　脱穀装置２０４の内部には、フィーダ２１７Ａ側から送り込まれる刈取作物を脱穀処理するための扱胴２４０が、前後方向の扱胴軸２４０ａ廻りで回転駆動されるように配備されている。この扱胴２４０の他に、唐箕２４１よる送風作用とともに、扱胴２４０で脱穀処理された刈取作物を揺動選別処理する選別処理装置２４２などが配備されている。

［グレンタンク］
　グレンタンク２０５は、図１３乃至図１５に示すように、運転キャビン２１５の後方側で、車体フレーム２０１上の右横側部に立設されたタンク支持台２１３と、その左横側部に位置する脱穀装置２０４の上側とにわたって設けられている。
　グレンタンク２０５は、角パイプなどの各種の鋼材を組み付けて格子状に形成した底部枠２５０の上側に、機体左右方向でのほぼ全幅にわたる左右方向幅を有した箱状のタンク本体２５１を搭載してある。
　これらの底部枠２５０とタンク本体２５１とが一体的に連結されて、タンク支持台２１３の上端部に設けた揺動支軸２５２により、前後方向の揺動軸心ｚ２Ｂ周りで揺動可能に支持されている。

　タンク支持台２１３は、図１３及び図１５に示されるように、脱穀装置２０４の右横側方箇所で、前輪２０２Ｆと後輪２０２Ｒとの間で車体フレーム２０１上に配備されている。このタンク支持台２１３は、脱穀装置２０４から遠い側に配設された外支柱２１３Ａと、それよりも脱穀装置２０４に近い側に配設された内支柱２１３Ｂとを備えている。これらの外支柱２１３Ａの下端部と内支柱２１３Ｂの下端部とが車体フレーム２０１に固定され、かつ外支柱２１３Ａと内支柱２１３Ｂとの各上端部が、上部枠２１３Ｃに連結されている。この上部枠２１３Ｃに、グレンタンク２０５の左右方向での一端側に相当する穀粒排出口２０５Ａ側の端部が、前後方向の揺動軸心ｚ２Ｂ回りで起伏揺動可能に連結支持されている。
　そして、タンク支持台２１３の内支柱２１３Ｂとグレンタンク２０５の底部枠２５０との間に、油圧駆動式のダンプシリンダ２５３が介装されている。このダンプシリンダ２５３の伸縮作動により、グレンタンク２０５を、タンク本体２５１の底面が水平又はほぼ水平姿勢となる貯留姿勢と、底面が起立した排出姿勢とに、揺動軸心ｚ２Ｂ回りで起伏揺動させて姿勢変更可能に構成してある。

［運転キャビン］
　運転キャビン２１５は、図１３及び図１５に示すように、車体フレーム２０１上に立設された運転部フレーム２１１に搭載設置されている。
　これによって、運転キャビン２１５は、前輪２０２Ｆの外径の上縁よりも高い位置で、かつ前輪２０２Ｆの後縁よりも前方側の位置で運転部フレーム２１１を介して車体フレーム２０１に支持されている。

　運転キャビン２１５内には操縦操作用のステアリングハンドル２１５ａや運転座席２１５ｂ等が配備され、ステアリングハンドル２１５ａの操作で後輪２０２Ｒが操向操作されるように構成されている。この運転キャビン２１５内には、図示しないが、操縦操作用、及び作業操作用の各種の操作具、ならびに計器類が配備されている。

［動力伝達構造］
　次に、エンジン２０３の動力を、トランスミッション２２０の入力軸２２１を経て脱穀装置２０４に伝える動力伝達構造について説明する。
　図１６乃至図２０に示すように、エンジン２０３は、クランク軸（図示せず）が機体左右方向に沿う状態で、車体フレーム２０１上の右外側寄り箇所に配設されている。
　エンジン２０３の左右方向での一端側（機体内方側）には、フライホイール３Ａとともに軸線方向が機体左右方向に沿う状態で出力プーリ２３０（エンジン出力回転体に相当する）が設けられている。他端側（機体外方側）には、出力軸２３１が突出され、その出力軸２３１に第２出力プーリ２３１ａが装着されている。この第２出力プーリ２３１ａには、図２０に示すようにラジエータファン２０７ａへ駆動力を取り出すための無端回動帯の一例である１本のＶベルトで構成された第３伝動ベルト２３４が掛張されている。

　出力プーリ２３０は、その外周部に、無端回動帯の一例である３本のＶベルトの組で構成される第１伝動ベルト２３２（エンジン動力伝達部に相当する）を卷回するための３箇所のベルト溝を備えている。
　エンジン２０３の前方側で、エンジン２０３よりも機体内方側（左右方向での左側）に位置するトランスミッション２２０には、機体外方側（左右方向での右側）に突出する入力軸２２１を備えてあり、この入力軸２２１に入出力プーリ２２２を一体回動するように装着してある。

　この入出力プーリ２２２には、第１伝動ベルト２３２の３本のＶベルトを卷回するための３箇所のベルト溝を備えた第１回転体部分２２２Ａ（入力回転体に相当する）と、後述する第２伝動ベルト２３３を卷回するための２箇所のベルト溝を備えた第２回転体部分２２２Ｂ（出力回転体に相当する）とが備えられている。
　第１回転体部分２２２Ａと第２回転体部分２２２Ｂとは一体成型された多連プーリで構成され、第１回転体部分２２２Ａ側が大径でエンジン２０３が存在する機体外側寄りに位置し、第２回転体部分２２２Ｂが小径で、脱穀装置２０４が存在する機体内方側寄りに位置している。
　トランスミッション２２０には、入出力プーリ２２２が設けられた側とは反対側に、入力軸２２１から入力される動力を変速して走行装置２０２に伝えるための無段変速装置２２３が取り付けてある。この無段変速装置２２３で変速された動力が、トランスミッション２２０の内部に備えた図示しない変速機構を経て前輪駆動軸２２４から出力されるように構成されている。

　入出力プーリ２２２の第２回転体部分２２２Ｂには、無端回動帯の一例である２本のＶベルトの組で構成される第２伝動ベルト２３３（脱穀用動力伝達部に相当する）が卷回されている。
　この第２伝動ベルト２３３は、脱穀装置２０４の唐箕軸２４１ａに備えた脱穀入力プーリ２４１ｂに対して卷回され、第２回転体部分２２２Ｂから第２伝動ベルト２３３を介してエンジン動力が脱穀装置２０４に入力されるように構成してある。
　唐箕軸２４１ａ側の脱穀入力プーリ２４１ｂは、第２回転体部分２２２Ｂ、及び出力プーリ２３０よりも大径に形成されており、エンジン回転数が減速されて唐箕軸２４１ａに伝達されるように構成されている。

　脱穀装置２０４は、図１６及び図１８に示すように、トランスミッション２２０よりも後方側で車体フレーム２０１に搭載されており、唐箕軸２４１ａは、前後方向でトランスミッション２２０の入力軸２２１よりもエンジン２０３の出力プーリ２３０及び出力軸２３１の軸心ｘ３Ｂに近い位置にある。具体的には、図１６に示すように、エンジン２０３の出力プーリ２３０及び出力軸２３１の軸心ｘ３Ｂ方向視で、唐箕軸２４１ａが出力プーリ２３０と重複する位置にある。
　したがって、出力プーリ２３０と脱穀入力プーリ２４１ｂとが互いに重複し、第１伝動ベルト２３２と第２伝動ベルト２３３も互いに重複する位置関係に配備されている。

　また、正面視もしくは平面視では、図１７及び図１８に示すように、出力プーリ２３０や入出力プーリ２２２や脱穀入力プーリ２４１ｂも、エンジン２０３とトランスミッション２２０及び脱穀装置２０４との間に配設されている。入出力プーリ２２２は、第１回転体部分２２２Ａがエンジン２０３側に近く、第２回転体部分２２２Ｂがトランスミッション２２０及び脱穀装置２０４に近い側に配設されている。
　したがって、当然のことながら第１伝動ベルト２３２と第２伝動ベルト２３３も、エンジン２０３と、トランスミッション２２０及び脱穀装置２０４との間に配設された状態となる。

　エンジン２０３の出力プーリ２３０とトランスミッション２２０の第１回転体部分２２２Ａとにわたって巻回される第１伝動ベルト２３２には、第１テンション輪２３５が作用するように設けてある。
　また、トランスミッション２２０の第２回転体部分２２２Ｂと脱穀装置２０４の脱穀入力プーリ２４１ｂとにわたって巻回される第２伝動ベルト２３３には、第２テンション輪２３６が作用するように設けられている。

　第１テンション輪２３５は、図１７に示すように、その支軸２３５ａの一端側が一方向に長く延長され、その延長部分が、揺動自在な第１アーム部材２３５ｂの遊端側と、付勢機構２３７の遊端側とで支持されている。
　第１アーム部材２３５ｂは、図１６に示すように、車体フレーム２０１のうちで、運転部フレーム２１１の取付台となるようにトランスミッション２２０よりも高い位置にまで持ち上げられたＬ字状の支持台フレーム２１２に基端側を枢支されている。付勢機構２３７の基端側はエンジン２０３に近い側で車体フレーム２０１に固定されたブラケット２０１ａに枢支されている。
　付勢機構２３７には、支軸２３５ａと、付勢機構２３７の基端側の枢支箇所との間の距離を短縮する方向に付勢する圧縮スプリング２３７ａが装備されている。この圧縮スプリング２３７ａの付勢力で第１伝動ベルト２３２を常時緊張側に付勢するように、第１テンション輪２３５に付勢力が付与される構成となっている。

　第２テンション輪２３６は、その支軸２３６ａが、トランスミッション２２０の上部に基端側を枢支されて揺動自在に構成された第２アーム部材２３６ｂに取り付けられている。この第２アーム部材２３６ｂの長さ方向の途中位置には、コイルスプリングを備えた操作部材２３６ｃが連結されており、その操作部材２３６ｃに連結された揺動操作可能な操作レバー等の図示しない切換操作具により、脱穀クラッチ入り状態と切り状態とに切換可能に構成されている。
　その結果、第２テンション輪２３６を持ち上げ側に揺動して第２伝動ベルト２３３が緊張される側に切り換えることによって脱穀装置２０４にエンジン動力が伝達される脱穀クラッチ入り状態となる。第２テンション輪２３６の持ち上げを解除して第２伝動ベルト２３３が弛緩する側に切り換えることによって脱穀装置２０４に対するエンジン動力の伝達を断つ脱穀クラッチ切り状態となる。

　図２０に示すように、唐箕軸２４１ａに入力されたエンジン動力は、扱胴２４０を駆動するための扱胴側駆動機構２４３と、フィーダ２１７Ａを含む刈取処理装置２１７に動力を伝達する刈取側駆動機構２４４と、選別処理装置２４２等を駆動するための選別側駆動機構２４５に分配供給されるように構成されている。これらの扱胴側駆動機構２４３、刈取側駆動機構２４４、選別側駆動機構２４５の夫々は伝動ベルトを含んでいる。また、選別側駆動機構２４５の伝動下手側から伝動ベルト２４６を介して排ワラ処理装置２１６にも動力を伝達するように構成されている。
　選別側駆動機構２４５は、一番スクリュー２４２ａと揚送装置２４７とに動力を伝える伝動ベルト２４５ａと、二番スクリュー２４２ｂと二番還元装置２４８とに動力を伝える伝動ベルト２４５ｂと、揺動選別板２４２ｃに動力を伝える伝動ベルト２４５ｃとを備えている。

［第２実施形態の別実施形態１］
　上記の実施形態では、走行装置２０２として、前輪２０２Ｆを非操向車輪で構成し、後輪２０２Ｒを操向車輪で構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前輪２０２Ｆを操向車輪とし、後輪２０２Ｒを非操向車輪としてもよい。また、前輪２０２Ｆ及び後輪２０２Ｒをともに操向車輪で構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態２］
　上記の実施形態では、走行装置２０２として、前輪２０２Ｆを非操向車輪で構成された駆動輪とし、後輪２０２Ｒを駆動されていない操向車輪で構成した構造のものを示したが、これに限られるものではない。
　例えば、前輪２０２Ｆを駆動されていない操向車輪として、後輪２０２Ｒを非操向車輪からなる駆動輪とする、あるいは、前輪２０２Ｆ及び後輪２０２Ｒをともに操向車輪で構成して、前輪２０２Ｆと後輪２０２Ｒとを、ともに駆動するように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態３］
　上記の実施形態では、前走行部を非操向車輪からなる前輪２０２Ｆで構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪２０２Ｒで構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪２０２Ｒで構成したものであってもよい。逆に、前走行部を操向車輪からなる前輪２０２Ｆで構成して、後走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成してもよい。
　この場合、セミクローラタイプのクローラ走行装置を駆動し、操向車輪で構成される後輪２０２Ｒ又は前輪２０２Ｆは非駆動のものであっても良いし、セミクローラタイプのクローラ走行装置と、操向車輪で構成される後輪２０２Ｒ又は前輪２０２Ｆを共に駆動するものであっても良い。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態４］
　上記の実施形態では、脱穀装置２０４の上方に配設されるグレンタンク２０５を、左右方向の一端側に設けた揺動軸心ｚ２Ｂの回りで傾動可能に構成し、かつ、揺動軸心ｚ２Ｂが設けられた側に開閉可能な穀粒排出口２０５Ａを設けて、その傾動姿勢で穀粒を排出可能に構成した構造のものを示したが、これに限られるものではない。例えば、グレンタンク２０５に開閉可能な穀粒排出口２０５Ａを設けずに、図示しない排出用オーガを設けるなどして穀粒を排出するようにしてもよい。
　このように構成すれば、グレンタンク２０５の傾動用のダンプシリンダ２５３を設けなくとも排出することも可能であるが、ダンプシリンダ２５３を設けることで、タンク本体２５１の底部に存在する穀粒を排出用オーガの存在する側へ集めるように構成するのが望ましい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態５］
　上記の実施形態では、上記の実施形態では、運転部として運転キャビン２１５を備えた構造のものを例示したが、これに限られるものではなく、運転部としては運転キャビン２１５を備えずに、単にステアリングハンドル２１５ａや運転座席２１５ｂを備えただけのものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態６］
　上記の実施形態では、エンジン出力回転体としての出力プーリ２３０、入力回転体及び出力回転体としての入出力プーリ２２２、及び脱穀側回転体としての脱穀入力プーリ２４１ｂを用いた構造のものを示したが、このような出力用又は入力用の回転体をプーリで構成するものに限らず、例えばスプロケットで構成してもよい。その場合、伝動用の無端回動帯は、伝動ベルト２３２，２３３に代えて伝動チェーンを用いるようにしてもよい。また、脱穀装置２０４等の他の箇所における無端回動帯を用いた伝動構造においても同様に、伝動ベルトに代えて伝動チェーンを採用してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態７］
　上記の実施形態では、脱穀装置２０４側へ動力を伝える出力回転体としての第２回転体部分２２２Ｂが、トランスミッション２２０に対して、入力回転体としての第１回転体部分２２２Ａが存在する側と同じ側で入力軸２２１に取り付けられた構造のものを例示したが、これに限らず、例えば、トランスミッション２２０に対して、第１回転体部分２２２Ａが存在する側とは反対側に第２回転体部分２２２Ｂが存在するように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態８］
　上記の実施形態では、脱穀側回転体として唐箕軸２４１ａを採用した構造のものを例示したが、これに限らず、伝動可能な中継軸となり得る適宜の軸を採用することができる。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態９］
　上記の実施形態では、第１回転体部分２２２Ａと第２回転体部分２２２Ｂとを一体成型された入出力プーリ２２２によって構成した構造のものを例示したが、これに限らず、例えば第１回転体部分２２２Ａと第２回転体部分２２２Ｂとの夫々を別体で構成されたプーリもしくはスプロケットで構成し、個々に入力軸２２１に固定するようにした構造のものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態１０］
　上記の実施形態では、エンジン動力伝達部としての第１伝動ベルト２３２と脱穀用動力伝達部としての第２伝動ベルト２３３とが、エンジン２０３の出力軸２３１の軸線方向視で互いに重複する構造のものを例示したこれに限られるものではなく、例えば第１伝動ベルト２３２と第２伝動ベルト２３３とが上下方向で互いに位置ずれした状態に配設されたものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態１１］
　上記の実施形態では、トランスミッション２２０がエンジン２０３の前方位置に存在する構造のものを示したが、これに限らず、例えば、トランスミッション２２０がエンジン２０３の後方側に存在する構造であってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第２実施形態の別実施形態１２］
　コンバインとしては、稲、麦、とうもろこしなどの穀物を収穫するものに限らず、大豆などの豆類や菜種などの花卉類を収穫するものに適用することもできる。また、普通型コンバインに限らず、自脱型コンバインであってもよい。

［第３実施形態］
　以下、第３実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
［全体構成］
　図２１及び図２２に示すように、普通型コンバインは、左右一対の操向不能な前走行装置としてのゴムタイヤ式の前車輪３０１と、左右一対の操向操作可能な後走行装置としてのゴムタイヤ式の後車輪３０２とを備えた走行機体３０３の前部に、作物を刈り取って後方に搬送する刈取搬送部３０４が刈取昇降シリンダ３０５により横向き支点Ｐ１Ｃ周りで駆動昇降自在に支持されている。そして、走行機体３０３には、前部側に位置してキャビン３０６にて覆われた運転者が搭乗する運転部３０７、刈取搬送部３０４にて刈り取られた作物の脱穀処理を行う脱穀装置３０８、その脱穀装置３０８にて脱穀処理されて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク３０９、駆動用のエンジン３１０、エンジン３１０に供給するための燃料を貯留する燃料タンク３１１等が備えられている。脱穀装置３０８の後方側下部には、脱穀装置３０８において脱穀処理が終了した後の茎稈（排ワラ）を細かく細断して機体外部に排出する排ワラ処理装置３１２が備えられている。

　運転部３０７は、機体右側から運転者が乗り降りするようになっており、運転部３０７の右側に、乗り込み用の梯子３０７ａと乗降ステップ３０７ｂとが備えられている。尚、この実施形態では、左右方向を定義するときは、機体進行方向視で左側又は右側として定める。従って、図面上の左右と異なる場合がある。

　刈取搬送部３０４は、植立する作物を刈り取ったのち刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める刈取部３１３と、刈り取られて中央に寄せ集められた作物を機体後方の脱穀装置３０８に向けて搬送するフィーダ３１４とを備えて構成されている。

　刈取部３１３は、作物の株元を切断して刈り取るバリカン型の刈刃３１５、刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める横送りオーガ３１６、刈取対象となる作物の穂先側を後方に向けて掻込む回転リール３１７等を備えて構成されている。フィーダ３１４は、角筒状のフィーダケース３１８内に、前後方向に亘って左右一対の無端回動チェーン３１９が巻回張設され、左右の無端回動チェーン３１９にわたって架設する状態で且つ周方向に沿って適宜間隔をあけて備える状態で搬送体３２０を備えており、搬送体３２０によって刈取部３１３から受け渡された作物を後方上方に向けて搬送するように構成されている。

　燃料タンク３１１は、脱穀装置３０８の左側に位置する状態で備えられ、エンジン３１０は、脱穀装置３０８の右側に位置する状態で備えられている。又、脱穀装置３０８の機体左横側外方箇所すなわち走行機体３０３の左側外端部の上部側が、左上外装カバー３２１により覆われている。又、脱穀装置３０８の機体左横側外方箇所の下部側は、左下外装カバーを兼用する燃料タンク３１１により覆われている。

　左上外装カバー３２１は、脱穀装置３０８から固定延設された前後一対の支持機構３２３Ａ，３２３Ｂにより、機体前後向き軸心Ｘ１Ｃ周りで揺動自在に支持され、脱穀装置３０８の機体左横側外方箇所を覆う縦向きの作用姿勢と、上方外方に向けて揺動して脱穀装置３０８の機体左横側外方箇所を開放する横向きの開放姿勢とにわたり姿勢切り換え自在に構成されている。又、後部側の支持機構３２３Ｂには、左上外装カバー３２１を開放姿勢にて位置保持自在なガスダンパー３２４が備えられている。

　又、図示はしないが、燃料タンク３１１は、機体後部側箇所において、上下軸心周りで揺動自在に機体フレーム３２５に支持されており、前部側を上下軸心周りで揺動させることで、脱穀装置３０８の下部の左側を開放させることができるようになっている。

　図２４及び図２５に示すように、脱穀装置３０８は、左右両側が側壁３０８Ａによって覆われ、上部が天板３２６によって覆われている。そして、図２３に示すように、左右の側壁３０８Ａと天板３２６により囲われた内部空間の上部側に、回転する扱胴３２７とその外周部に沿って設けられる受網３３８とを有し、刈取搬送部３０４により搬送されてくる刈取穀稈の扱き処理を実行する扱室３２９が形成されている。又、扱室３２９の下部に、扱室３２９から漏下してくる扱き処理物を穀粒とワラ屑等に選別する選別処理部３３０が備えられている。

［扱室］
　脱穀装置３０８における左側の側壁３０８Ａにおいて、扱室３２９の左側箇所を覆う上側部分が着脱可能な左側板３３１にて構成されている。この扱室３２９の左側板３３１が、外装カバー側の側板に対応する。

　扱室３２９の左側板３３１について説明する。
　図２４及び図２７に示すように、左側板３３１は、機体前後方向すなわち、扱胴３２７の回転軸心方向に沿って２つに分割される構成となっている。２つの分割側板３３１Ａは、夫々、下部に、脱穀フレーム３３２に設けられた被係止部３３３に係脱自在に係止する係止部３３４が備えられ、且つ、係止部３３４を被係止部３３３に係止させた状態で、上部が、脱穀フレーム３３２の被連結箇所に対して取外し可能に締結固定される構成となっている。

　説明を加えると、図２４～図２６に示すように、２つの分割側板３３１Ａは、夫々、下端部にて折り曲げ形成された水平面部３３４ａにおける前後方向に離間した２箇所において、下方に突出する状態で棒状の係止ピン３３４ｂが備えられている。又、脱穀フレーム３３２のうち脱穀装置３０８の上下中間部を前後方向に延びる角パイプ状の中間フレーム体３３７の上面３３３ａに、係止ピン３３４ｂが上下方向に差し込み係合可能な位置決め用の貫通孔３３３ｂが形成されている。

　つまり、分割側板３３１Ａの下端部は、水平面部３３４ａが中間フレーム体３３７の上面３３３ａに接当係合し且つ係止ピン３３４ｂが貫通孔３３３ｂに差し込み係合されることにより、位置決めされた状態で載置支持される構成となっている。従って、水平面部３３４ａと係止ピン３３４ｂにより係止部３３４が構成され、中間フレーム体３３７の上面３３３ａと貫通孔３３３ｂにより被係止部３３３が構成されている。

　又、分割側板３３１Ａの上部側箇所における前後方向に離間した２箇所においてネジ挿通孔３３９が形成されている。一方、脱穀フレーム３３２のうち脱穀装置３０８の上部側箇所を前後方向に延びる角パイプ状の上部フレーム体３４０に、ネジ挿通孔３３９に対応する位置に被連結箇所としての断面Ｌ字形の連結用ブラケット３４１が連結されている。そして、蝶ボルト３４２を、分割側板３３１Ａに形成されているネジ挿通孔３３９及び連結用ブラケット３４１に形成されている挿通孔３４３を通して、連結用ブラケット３４１の裏面に溶接固定されているナット３４４に締結することで、分割側板３３１Ａの下部が取り外し可能に締結固定されている。

　この構成では、２つの分割側板３３１Ａは、夫々各別に、蝶ボルト３４２の締結を解除して、中間フレーム体３３７に対する係止ピン３３４ｂの差し込み係合を解除することにより、取り外すことができる。又、分割側板３３１Ａの下端部の係止ピン３３４ｂを中間フレーム体３３７の貫通孔３３３ｂに差し込み係合させ、且つ、水平面部３３４ａを中間フレーム体３３７の上面３３３ａに載置支持させた状態で、蝶ボルト３４２の締結により上部側箇所を固定することで、容易に装着することができる。

　２つの分割側板３３１Ａ、すなわち、扱室３２９の左側板３３１を取り外すと、扱室３２９に対応する箇所に開口Ｋ１Ｃが形成され、この開口Ｋ１Ｃを通して受網３３８を外方に取り出すことができる。受網３３８の構成については後述する。

　扱室３２９の左側板３３１には、図２５～図２７に示すように、その内側に下方側ほど扱室３２９内方側に向けて位置する傾斜姿勢のガイド板３４５が備えられている。又、ガイド板３４５は、２つの分割側板３３１Ａの夫々において、扱胴３２７の回転軸心方向すなわち機体前後方向に沿う一端部から他端部に亘って幅広に設けられている。

　このガイド板３４５は、受網３３８の扱胴３２７の回転方向上手側箇所、つまり、扱室３２９の左側端部から多量に漏下してくる扱き処理物を右側に向けて移動案内する。その結果、選別処理部３３０に対して極力均した状態で扱き処理物を供給することができる。

　ガイド板３４５の下端部に、左側板３３１との間の隙間を塞ぐ底板３４６が備えられている。底板３４６は、左側板３３１に向かうほど下方側に位置する傾斜姿勢に構成されている。この底板３４６は、ガイド板３４５の下端部から一連に連なる状態で一体形成されており、底板３４６の下端部は左側板３３１に連結固定されている。

　すなわち、一枚の板金材を略Ｌ字形に折り曲げて、ガイド板３４５と底板３４６とが一体的に形成されており、その板体の上端側箇所と下端側箇所とが夫々、左側板３３１に溶接にて連結固定されている。

　ガイド板３４５の前後方向の両側端部に、左側板３３１との間の隙間を塞ぐ縦向きの遮蔽板３４７が備えられている。この遮蔽板３４７もガイド板３４５と同様に板金材にて構成され、ガイド板３４５の前後方向両側端部において、ガイド板３４５、底板３４６、及び、左側板３３１の夫々にスポット溶接にて連結される構成となっている。この遮蔽板３４７は、前後方向視で略三角形状に形成されるが、板金材を折り曲げて形成されることから、角部において少しだけ隙間が形成される。その結果、ガイド板３４５、底板３４６、遮蔽板３４７にて囲まれる空間の内部に、隙間を通して細かなワラ屑等が侵入することがある。そこで、図２７に示すように、底板３４６に排塵用の開口３４６Ａが形成されている。内部にワラ屑等が侵入してもこの開口３４６Ａを通して下方に向けて排出させることができる。

　［扱胴］
　扱胴３２７について説明する。
　図２３及び図２８（ａ）に示すように、扱胴３２７は、脱穀フレーム３３２に支持される前部側枠体３４８と後部側枠体３４９とわたって機体前後向き軸心Ｘ２Ｃ周りに回転自在に支持される扱胴軸３５０を備え、その扱胴軸３５０を中心に一体回転するように構成され、且つ、前端部を形成する掻込部３５１と、後部側を形成する扱き処理部３５２とを備えている。

　掻込部３５１は、前細りの円錐台状に形成した胴部分３５３の外周面に掻き込み搬送用の２枚の螺旋羽根３５４を備えており、回転することでフィーダ３１４からの刈取穀稈の全体を後方に掻き入れるスクリュー搬送式に構成されている。そして、この螺旋羽根３５４には、稲等の摩耗するおそれが大きい作物を収穫するときに、摩耗防止板（図示せず）を取り付けるためのボルト挿通孔３５５が形成されている。

　扱き処理部３５２は、円板状に形成され且つ扱胴軸３５０に一体回転自在に連結固定された複数の支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃ、扱胴３２７の周方向に等間隔で分散配置して各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃの夫々に連結された６本の支持杆３５７、各支持杆３５７の軸心方向に並ぶ複数箇所から扱胴３２７外周側に突出するバー形の扱歯３５８を備えている。複数の支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃとしては、前部側支持プレート３５６ａ、３つの中間側支持プレート３５６ｂ及び後部側支持プレート３５６ｃが備えられている。

　図２５，２６，２８に示すように、支持杆３５７は丸パイプ材にて構成されている。又、扱歯３５８は、丸棒材にて構成され、扱胴３２７の径方向に沿って支持杆３５７を貫通させた状態で溶接にて一体的に連結固定されている。又、６本の支持杆３５７には夫々、各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃに対応する位置に連結用のブラケット３５９が溶接にて連結固定され、ブラケット３５９を各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃにボルトで締結固定することにより、６本の支持杆３５７が連結されている。

　支持杆３５７は、前後向きを入れ替えても取り付けることができるように構成されている。すなわち、各ブラケット３５９の各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃに対するボルト締結を解除することで、支持杆３５７を取り外すことができ、又、前後向きを変更しても各ブラケット３５９と各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃとのボルト締結が可能なように、ブラケット３５９と各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃとの位置が設定されている。

　説明を加えると、３つの中間側支持プレート３５６ｂのうちの前後中間に位置するものが、扱胴３２７の前後方向の中央に位置する状態で設けられ、その中央に位置する中間側支持プレート３５６ｂから前後両側の中間側支持プレート３５６ｂまでの間隔が夫々同じ間隔に設定されている。又、前側の中間側支持プレート３５６ｂから前部側支持プレート３５６ａでの間隔と、後側の中間側支持プレート３５６ｂから後部側支持プレート３５６ｃまでの間隔も同じ間隔に設定されている。

　そして、各支持杆３５７は、予め、周方向に隣り合うもの同士が互いに前後向きを異ならせた状態で取り付けられており、前後向きが異なると、軸心方向に沿って扱歯３５８が半ピッチずつ位置がずれる構成となっており、処理物に対する扱き処理を効率よく行えるように構成されている。

　各支持杆３５７は、扱歯３５８が扱胴３２７の回転方向下手側に向けて傾斜するように後退角を有する状態で各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃに連結されている。そして、上述したような支持杆３５７の前後向きの入れ替え作業が行われた場合であっても、全ての扱歯３５８の後退角が正確に設定角（例えば、１５度）になるように、ブラケット３５９を各支持プレート３５６ａ，３５６ｂ，３５６ｃにボルト締結する取り付け作業時において、ブラケット３５９が適正な傾斜姿勢になるように位置規制することができるようになっている。

　すなわち、図２８（ｃ）（ｄ）に示すように、前部側支持プレート３５６ａ及び後部側支持プレート３５６ｃの夫々における、支持杆３５７が備えられる側の側面に、ブラケット３５９が設定角だけ後退傾斜した状態で、ブラケット３５９に接当して姿勢を規制する突起３６０が形成されている。この突起３６０は、プレス加工することによって板面から突出させるように形成したものである。ブラケット３５９が突起３６０に接当して姿勢を規制している状態でボルトを締め付けることで、ブラケット３５９に形成されたボルト挿通孔におけるガタに起因した傾斜姿勢の誤差が生じないようにしている。

　前部側支持プレート３５６ａと後部側支持プレート３５６ｃは、同じ構成のものを共用する構成としている。すなわち、前後向きを反転させても支持杆３５７を装着することができるように、ボルト挿通孔及び規制用突起３６０を左側用及び右側用の夫々が形成されており、前部用と後部用とを共用できる構成となっている。ちなみに、支持杆３５７の前後向きの入れ替え作業は、例えば、扱き処理が行われるに伴って、扱胴３２７の前部側に位置する扱歯３５８が後部側の扱歯３５８に比べて摩耗が激しい場合等において行われることがある。

　このような構成の扱胴３２７では、扱き処理物を支持杆３５７同士の間から扱胴３２７の内部空間に入り込ませることにより、脱穀負荷の軽減を図りながら脱穀処理することができる。

　［受網］
　次に、受網３３８について説明する。
　図２３及び図２４に示すように、受網３３８は、機体前後方向すなわち扱胴３２７の回転軸心方向に沿って略均等に３分割された３つの分割受網３３８Ａにて構成され、さらに、３つの分割受網３３８Ａの夫々が、機体左右方向、すなわち、扱胴３２７の周方向に沿って、扱室３２９の左側板３３１から遠い奥側の分割受網３３８Ａ１と近い側の分割受網３３８Ａ２とに分割される構成となっている。すなわち、受網３３８は合計６個に分割される構成となっており、夫々の分割受網３３８Ａを扱室３２９の左側板３３１に形成される開口Ｋ１Ｃを通して機体外方に取り外すことができるように構成されている。

　図２５に示すように、奥側の分割受網３３８Ａ１が位置する箇所には、前後両側に扱胴３２７の周方向に沿う円弧状のガイドレール３６１が備えられ、そのガイドレール３６１に沿ってスライドさせて、奥側の分割受網３３８Ａ１を取外したり、装着させたりすることができる。

　奥側の分割受網３３８Ａ１は、ガイドレール３６１により載置支持され、且つ、奥側の端部を脱穀フレーム３３２のうちの奥側の中間フレーム体３３７に近接する位置にまでスライドさせた状態で、開口側の端部が、扱胴３２７の回転軸心方向に沿って設けられた支持枠体３６２に、ボルト締結により連結固定されている。

　又、図２５に示すように、奥側の分割受網３３８Ａ１における開口側の端部と、開口側の分割受網３３８Ａ２の一端部とを突き合わせた状態で、それらをボルトにより支持枠体３６２に共締め状態で締結して連結固定されている。そして、図２９に示すように、開口側の分割受網３３８Ａ２の他端部が、中間フレーム体３３７にボルト締結により連結固定されている。ボルトが挿通する箇所には、奥側の分割受網３３８Ａ１にナットが溶接固定されており、作業者は開口Ｋ１Ｃを通して装置外方側からボルト締結作業を行うことができる。

　従って、受網３３８は、ボルトの締結作業や締結解除作業により、開口Ｋ１Ｃを通して、装置外方に取り外したり、外部から扱室３２９内部に装着させることができる。受網３３８が６個に分割されているので、分割受網３３８Ａは小型軽量であり、このような着脱作業を楽に行うことができる。

　扱胴３２７の回転軸心方向に沿って隣り合う３個の分割受網３３８Ａは、前後方向の隙間が少ない状態で装着されており、例えば、塵埃が隙間に詰まる等により、分割受網３３８Ａを取り出すとき、手作業で取り出し難い場合がある。そこで、図３０に示すように、開口側の分割受網３３８Ａ２の他端部における中間フレーム体３３７に対して下方から接当する箇所に、中間フレーム体３３７に対する締結が解除されたボルトＢｏＣを用いて、開口側の分割受網３３８Ａ２を分離する方向に押し出すための押出し用ナット３６３が装着されている。

　つまり、中間フレーム体３３７に対する締結が解除されたボルトＢｏＣを、押出し用ナット３６３に装着して挿通孔３６４を通して中間フレーム体３３７に押し付けるようにネジ込むと、相対的に開口側の分割受網３３８Ａ２が中間フレーム体３３７から離間する方向に力が発生して、開口側の分割受網３３８Ａ２を取り外すことができる。

［天板］
　次に、天板３２６の内面側の構成について説明する。
　図２５及び図３１に示すように、天板３２６の内面側における機体前端側には、扱胴３２７の回転に伴って扱胴３２７の回転方向に流動する処理物を機体後方側に案内する固定案内板３６５が位置固定状態で取り付けられている。そして、図３１及び図３２に示すように、固定案内板３６５よりも機体後方側箇所に、扱胴３２７の回転に伴って扱胴３２７の回転方向に流動する処理物を機体後方側に案内する複数の送塵弁３６６が、機体前後方向に沿って間隔をあけて並ぶ状態で且つ上下軸心周りで回動自在に天板３２６に支持される状態で備えられている。

　図３２に示すように、複数の送塵弁３６６には、夫々、天板３２６を貫通するとともに、枢支ボス３６７により回動自在に支持される縦向きの支軸３６８が一体回動する状態で備えられ、支軸３６８は、枢支ボス３６７を相対回動可能に挿通して抜け止めされている。各送塵弁３６６は、揺動支点となる支軸３６８を中心にした同時揺動操作が可能になるように、それらの扱胴回転方向上手側の端部が１本の連係リンク３６９を介して連動連結されている。

　天板３２６には、連係リンク３６９を収容する収容空間を確保するために、天板３２６での扱胴回転方向上手側となる左側の横外側に向けて張り出す張り出し部３７０が形成されている。張り出し部３７０は、縦板部分３７０ａ、底面部分３７０ｂ、上面部分３７０ｃを備えて連係リンク３６９を収容するように形成されている。

　図３１に示すように、連係リンク３６９を機体前後方向にスライド自在に支持する複数（この実施形態では３つ）の案内部材３７１が、機体前後方向に適宜間隔をあけて天板３２６に取り付け固定されている。図３２（ｂ）に示すように、各案内部材３７１は、張り出し部３７０の上面部分３７０ｃと縦板部分３７０ａとの夫々にボルトで締結固定されている。

　各支軸３６８のうち、脱穀処理方向上手側から２番目に位置する支軸３６８には、この支軸３６８を介して送塵弁３６６と一体揺動する操作レバー３７２が、支軸３６８から左側方に向けて延出するように取り付けられている。天板３２６の左側部には、操作レバー３７２の遊端側を前後方向に揺動可能に受け止め支持する台座３７３が備えられている。台座３７３は、ノブ付きの固定ボルト３７４を備えている。そして、この固定ボルト３７４により、操作レバー３７２を８つの操作位置のうちの任意の操作位置に固定できるように構成されている。

　操作レバー３７２を操作することで、複数の送塵弁３６６を夫々の支軸３６８を中心にして同時に揺動操作することができ、脱穀処理中の処理物の各送塵弁３６６による処理物移送方向下手側への送り量を調節することができる。

　そして、天板３２６の内面側には、天板３２６と送塵弁３６６との間に位置する状態で補強板３７５が取り付けられている。この補強板３７５は、機体前後方向の前半部分にのみ備えられ、機体横幅方向の全幅又は略全幅にわたる状態で備えられている。しかも、補強板３７５は、固定案内板３６５よりも機体後方側箇所に位置する状態で、着脱自在に天板３２６に取り付けられている。

　説明を加えると、補強板３７５は、張り出し部３７０に対応する位置を分割ラインとして左右に分割された左右一対の分割補強板３７５Ａ，３７５Ｂにて構成されている。各分割補強板３７５Ａ，３７５Ｂは、扱き処理物が接触しても摩耗し難いステンレス鋼の板状体からなり、天板３２６の内面に沿って位置する状態で備えられている。

　左側の分割補強板３７５Ａは、機体前部側の４つの送塵弁３６６における夫々の回動支持部３７６、機体前部側に位置する２個の案内部材３７１における左側（上面部分側）のボルト締結箇所、天板３２６の左側端部における脱穀フレーム３３２に対する前後２箇所のボルト締結箇所の夫々において、共締め固定される構成となっている。又、左側の分割補強板３７５Ａの前端部はボルト締結により天板３２６に固定されている。

　右側の分割補強板３７５Ｂは、２個の案内部材３７１における右側（縦面部分側）のボルト締結箇所、天板３２６の右側端部における脱穀フレーム３３２に対する前後２箇所のボルト締結箇所の夫々において、共締め固定される構成となっている。又、右側の分割補強板３７５Ｂの前端部はボルト締結により天板３２６に固定されている。

　図３２（ｂ）に示すように、回動支持部３７６にて共締め固定される箇所では、締め付けが強過ぎて分割補強板３７５Ａとの摩擦により送塵弁３６６が回動できなくなることを回避するために、分割補強板３７５Ａよりも少し厚いシム３７７を介装して共締め固定されている。回動支持部３７６以外の締結箇所は、単に、ボルトにより共締め固定する構成であるから説明は省略する。

　上述したように、補強板３７５はボルトの締結により固定されており、ボルトの締結を解除することで補強板３７５を取り外したり、再度、取り付けることができる。

　天板３２６は、右側端部に設けられた回動支点部３７８を介して、機体前後向き軸心Ｘ３Ｃ周りで揺動自在に脱穀フレーム３３２に支持され、且つ、扱室３２９の上方を覆う使用姿勢と扱室３２９の上方を開放する開放姿勢とにわたり姿勢切り換え自在に構成されている。又、図示はしていないが、天板３２６の後端部には、天板３２６が開放姿勢に切り換えられている状態で位置保持自在な位置保持機構としてのガスダンパーが備えられている。

　又、図２５に示すように、天板３２６における右側端部と左側端部とは、略同じ形状となっており、回動支点部３７８を左右いずれの側にも取り付けることができるようになっている。その結果、図示はしないが、回動支点部３７８を天板３２６の左側端部に取り付けて、左側端部における前後軸心周りで開放揺動自在な状態に変更することが可能となっている。

　［選別処理部］
　次に、選別処理部３３０について説明する。
　図２３に示すように、選別処理部３３０は、扱室３２９から漏下した処理物を受け止めて揺動運動によって篩い選別を行う揺動選別装置３８０、選別風を生成する唐箕３８１、穀粒（一番物）を回収する一番物回収部３８２、枝付き穀粒等の二番物を回収する二番物回収部３８３等を備えている。

　一番物回収部３８２に回収された穀粒を脱穀装置３０８の右側外方に向けて横送り搬送する一番スクリュー３８４と、その一番スクリュー３８４によって右側外方に搬送された穀粒を上方に搬送する搬送部としてのスラットコンベア式の第１穀粒搬送装置３８５と、その第１穀粒搬送装置３８５の搬送終端部からさらも上方に搬送して穀粒タンク３０９に供給するスクリューコンベア式の第２穀粒搬送装置３８６（図２１、図３９参照）とが備えられている。

　又、二番物回収部３８３にて回収された二番物を脱穀装置３０８の右側外方に向けて横送り搬送する二番スクリュー３８７と、その二番スクリュー３８７によって右側外方に搬送された二番物を揺動選別装置３８０上に戻す二番物還元装置３８８とが備えられている。

　図２１、図２３及び図３９に示すように、第１穀粒搬送装置３８５は、脱穀装置３０８の右側部において、一番スクリュー３８４に対応する位置から脱穀装置３０８の前部側の上部箇所に至るまで前方上方に向けて延びる斜め姿勢で設けられている。又、二番物還元装置３８８は、脱穀装置３０８の右側部において、二番スクリュー３８７に対応する位置から脱穀装置３０８の右側における前方上方に向けて延びる斜め姿勢で設けられている。つまり、第１穀粒搬送装置３８５と二番物還元装置３８８は、略平行な姿勢で前方上方に向けて延びる状態で配備されている。このように配備することで、両者が機体横幅方向に重複することなく、横幅方向の寸法をコンパクトにしながらも、穀粒や二番物を効率よく搬送することができる。

　［揺動選別装置］
　揺動選別装置３８０は、後部下方側に備えたクランク式の揺動駆動部３８９の作動で前後揺動する平面視で矩形枠状のシーブケース３９０を備え、そのシーブケース３９０内に、扱室３２９における処理物移送方向上手側から漏下した処理物を後方に移送するグレンパン３９１、そのグレンパン３９１にて移送される処理物及び扱室３２９における処理物移送方向下手側から漏下した処理物についての粗選別を行うチャフシーブ３９２、チャフシーブ３９２から漏下した処理物について精選別を行って穀粒（一番物）を下方の一番物回収部３８２に漏下させるグレンシーブ３９３、扱室３２９やチャフシーブ３９２から供給される排ワラ屑を後方に向けて揺動移送しながら穀粒を落下させる複数のストローラック３９４等を備えている。

　揺動選別装置３８０を揺動駆動する揺動駆動部３８９について説明する。
　揺動駆動部３８９は、横向き軸心Ｐ２Ｃ周りで回転する回転軸３９５と、回転軸３９５に対して偏芯する横向き軸心を有し且つ回転軸３９５の軸心周りで回動する偏芯揺動軸３９６と、一端が揺動選別装置３８０に連結されるとともに、他端が偏芯揺動軸３９６に対して相対回動自在に枢支連結されて、揺動選別装置３８０と偏芯揺動軸３９６とを連結する連結部３９７とを備えている。

　すなわち、図３５に示すように、脱穀装置３０８の左右両側の側壁３０８Ａ夫々を挿通する状態で、横向きの同一軸心Ｐ２Ｃ周りで回転自在に左右一対の回転軸３９５が支持されている。又、左右両側の回転軸３９５にわたって一体的に架設連結される状態で、回転軸３９５に対して偏芯する横向き軸心を有し且つ回転軸３９５の軸心周りで回動する偏芯揺動軸３９６が設けられている。

　そして、揺動選別装置３８０と偏芯揺動軸３９６とを連結する連結部３９７は、偏芯揺動軸３９６に対する枢支連結箇所にて偏芯揺動軸３９６を挟んで両側に分離される状態で、揺動選別装置３８０に一体的に連結された第１連結部材３９８と、偏芯揺動軸３９６を挟み込む状態で着脱自在に第１連結部材３９８に連結された第２連結部材３９９とを備えている。

　説明を加えると、揺動選別装置３８０におけるシーブケース３９０の左右両側部から後下方に向けて一体的に支持ブラケット４００が固定延設されている。そして、一対の支持ブラケット４００に対する左右両側の連結部３９７において、夫々、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９とが備えられている。

　第１連結部材３９８は、前部側に３箇所をボルト締結することにより支持ブラケット４００に連結固定される板状連結部３９８ａが形成され、後部側には、偏芯揺動軸３９６に外装されたベアリング４０１が入り込む凹部３９８ｂと、その凹部３９８ｂの前後両側に位置してベアリング４０１を介して偏芯揺動軸３９６を挟んで第２連結部材３９９と連結するためのフランジ連結部３９８ｃとが形成されている。

　第２連結部材３９９には、ベアリング４０１が入り込む凹部３９９ａと、その凹部３９９ａの前後両側に位置してベアリング４０１を介して偏芯揺動軸３９６を挟んで第１連結部材３９８と連結するためのフランジ連結部３９９ｂが形成されている。

　偏芯揺動軸３９６を挟んで第１連結部材３９８及び第２連結部材３９９夫々のフランジ連結部３９８ｃ，３９９ｂ同士がボルト締結により固定されることにより、揺動選別装置３８０と偏芯揺動軸３９６とが連動連結される。伝動構造については後述するが、図３５に示すように、左右両側の回転軸３９５のうち左側の回転軸３９５の側壁３０８Ａの外方側箇所に入力プーリ４０２が備えられ、この入力プーリ４０２にエンジン３１０からの動力が伝達されて、回転軸３９５が駆動される。回転軸３９５が回転すると、偏芯揺動軸３９６が回転軸３９５の軸心Ｐ２Ｃ周りで回動して、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９とが一体的に上下に往復移動して、揺動選別装置３８０を揺動駆動する。又、左右両側の回転軸３９５における左右側壁３０８Ａの外方側箇所には、夫々、揺動選別装置３８０の駆動に伴う機体振動を抑制するためのバランスウエイトＢＷＣが備えられている。

　次に、揺動選別装置３８０の前部側の支持構造について説明する。
　図３３及び図３４に示すように、シーブケース３９０の前部側における左右両側箇所に、横軸心周りで回動自在に支持される状態で転動ローラ４０３が備えられ、脱穀装置３０８の左右両側の側壁３０８Ａには、転動ローラ４０３の浮き上がり並びに左右方向への位置ズレを防止しながら前後移動を許容する左右一対の移動案内部４０４が備えられている。

　図３４（ａ）（ｄ）に示すように、移動案内部４０４は、転動ローラ４０３を後上がり傾斜状の案内経路に沿って前後移動を許容するように、転動ローラ４０３の下端部を受止めて荷重を支持しながら転動案内する下側案内面４０４ａと、転動ローラ４０３の上方への浮き上がりを防止する上側案内面４０４ｂとを備えている。

　揺動選別装置３８０は、揺動駆動部３８９による揺動運動と、移動案内部４０４による転動ローラ４０３の前後移動案内とにより、前後方向並びに上下方向に揺動することにより、扱き処理物を後方に揺動移送しながら篩い選別を行う。すなわち、穀粒は下方に漏下させ、細かな塵埃やワラ屑等は、選別風によって機体後方側に形成された開口としての排塵口４０５を通して後方に排出させる。排塵口４０５を通して排出されるワラ屑等は排ワラ処理装置３１２に供給され、さらに細かく細断処理されて機外に排出される。

　排ワラ処理装置３１２は、支持構造については詳述しないが、機体横幅方向一端側の上下軸心周りで後方に揺動自在に支持されており、この排ワラ処理装置３１２を揺動させることで、排塵口４０５の後方側を開放させることができるように構成されている。

　揺動選別装置３８０は、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９との連結を解除した状態で、脱穀装置３０８の機体後部側の開口としての排塵口４０５を通して抜き差しすることができる。
　すなわち、図３３及び図３４に示すように、揺動選別装置３８０を抜き差し自在にスライド案内する左右一対のガイドレール４０６が、脱穀装置３０８の左右両側の側壁３０８Ａの内面に機体前後方向に沿って延びる状態で備えられている。図３４（ｃ）に示すように、このガイドレール４０６は、脱穀装置３０８の側壁３０８Ａに溶接固定される縦面部４０６ａと、その縦面部４０６ａの下端から機体横幅方向内側に向けて延びる水平面部４０６ｂとを備えて、機体前後方向視で略Ｌ字状に形成されている。揺動選別装置３８０は、ガイドレール４０６の水平面部に載置される状態でスライド移動自在に案内支持される。

　図３３及び図３４（ａ）に示すように、左右両側の移動案内部４０４は、左右両側のガイドレール４０６の前端に連なる状態で位置しており、移動案内部４０４にて支持されている転動ローラ４０３をそのままガイドレール４０６に沿って移動させることができる。

　揺動選別装置３８０は、左右両側の連結部３９７の夫々において、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９との連結を解除した状態で、作業者が後部側を手で支えて、左右両側の転動ローラ４０３をガイドレール４０６の水平面部４０６ｂに載置させた状態で転動させながら機体前後方向にスライド移動させて、排塵口４０５から抜き差しすることができる。

　図３４（ｃ）に示すように、左右一対のガイドレール４０６の左右外端位置同士の間隔Ｌ１Ｃが、左右両側の転動ローラ４０３の左右外端位置同士の間隔Ｌ２Ｃよりも幅広に形成されている。又、左右のガイドレール４０６の水平面部４０６ｂは、転動ローラ４０３の横幅より幅広に形成されている。

　従って、揺動選別装置３８０が、ガイドレール４０６の水平面部４０６ｂに載置される状態でスライド移動させるときに、左右方向に余裕があり、揺動選別装置３８０が左右方向に少し傾いた姿勢になることがあっても、転動ローラ４０３がガイドレール４０６から外れて脱輪するおそれが少なく、スライド移動を良好に行い易いものとなる。

　揺動選別装置３８０は、ガイドレール４０６上を移動するときは、揺動選別装置３８０はガイドレール４０６に対して左右方向に余裕がある。これに対して、移動案内部４０４は、転動ローラ４０３の浮き上がり並びに左右方向への位置ズレを防止しながら前後移動を許容するものであるから、左右方向に余裕がなく、転動ローラ４０３と移動案内部４０４との間の左右方向の間隔が少ない状態となる。
　すなわち、左右一対の移動案内部４０４の左右外端位置同士の間隔は、左右両側の転動ローラ４０３の左右外端位置同士の間隔と略同じであって、左右一対のガイドレールの左右外端位置同士の間隔よりも狭い状態となる。

　そこで、図３４（ｂ）に示すように、ガイドレール４０６と移動案内部４０４との接続箇所に、転動ローラ４０３を移動案内部４０４に向けて脱穀装置３０８内方側に向けて案内する傾斜案内部４０７が形成されている。このように傾斜案内部４０７を形成することで、ガイドレール４０６から移動案内部４０４に移動するときは、転動ローラ４０３は傾斜案内部４０７により脱穀装置３０８内方側に向けて案内されることにより、引っ掛かりや詰まり等のない状態でスムーズに移動することができる。

　図３３及び図３５に示すように、第１連結部材３９８は、揺動選別装置３８０に対する連結箇所から後方下方側に向けて斜め姿勢で延設されており、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９との分割面が、機体側面視で前部側が下側に位置し後部側が上側に位置する後上がり傾斜状態に形成されており、それらを連結するボルトは下方側から装着する。従って、第１連結部材３９８と第２連結部材３９９との連結箇所が、機体後方に向かう状態で形成されている。

　シーブケース３９０に連結されている第１連結部材３９８には、前後両側のフランジ連結部３９８ｃの間にベアリング４０１が入り込む円弧状の凹部３９８ｂが形成されており、第２連結部材３９９が連結されていない状態で、この凹部３９８ｂにベアリング４０１を入り込ませた状態で偏芯揺動軸３９６に受止め支持させることができる。つまり、第１連結部材３９８は、第２連結部材３９９が連結されていない状態で、偏芯揺動軸３９６に係止して受止め支持可能に構成されている。

　揺動選別装置３８０と偏芯揺動軸３９６との間の連結を解除したり、再度、連結させる場合には、第１連結部材３９８の凹部３９８ｂをベアリング４０１に対して斜め上方から載置して支持させることにより、揺動選別装置３８０の後部側の荷重を偏芯揺動軸３９６に支持させることができる。つまり、揺動選別装置３８０の後部側の荷重をそのまま作業者が支持しながら連結作業を行うような場合に比べて、作業負担を軽減させることができる。

　このコンバインは、脱穀装置３０８が地面から高めの位置にあり、揺動選別装置３８０も装着状態では地面から高めの位置にある。その結果、揺動選別装置３８０を外方に取り外すときに、そのままの位置では作業が行い難いものとなるおそれがある。

　そこで、図３３に示すように、ガイドレール４０６は、揺動駆動部３８９よりも機体前部側に位置する前部側部分４０６Ｆが略水平姿勢に形成され、ガイドレール４０６の揺動駆動部３８９よりも機体後部側に位置する後部側部分４０６Ｒは、機体後部側ほど下方に位置する後下がり状に形成されている。つまり、ガイドレール４０６は、後端部が前端部よりも低い位置に設定されており、ガイドレール４０６の後部を低い位置にすることで取り出し作業を楽に行えるようにしている。

　図３３に示すように、揺動選別装置３８０のチャフシーブ３９２の上方側箇所に、受網用の支持枠体３６２に支持される状態で、チャフシーブ３９２の上方に載置されて移送される脱穀処理物の層厚を検出するポテンショメータ式の層厚センサＳ１Ｃが備えられている。この層厚センサＳ１Ｃにて検出される層厚が設定値以上になると、運転部に備えられた図示しない報知ランプにて報知するようになっている。

　［グレンシーブ］
　グレンシーブ３９３について説明する。
　図３６に示すように、グレンシーブ３９３は、穀粒を漏下させるための漏下孔が多数形成された矩形状のクリンプ網４０８と、そのクリンプ網４０８の周囲を保持する保持枠体４０９と、保持枠体４０９の左側端部に一体的に連結され且つシーブケース３９０に連結するための取付板４１０とを備えている。取付板４１０は、３箇所をボルト締結することにより、シーブケース３９０の左側の側面部３９０ａに着脱自在に連結されている。

　図３６に示すように、脱穀装置３０８の左側の側壁３０８Ａにおけるグレンシーブ３９３に対応する箇所には、開閉自在な蓋体４１１にて覆われた作業用開口４１２が形成されている。又、シーブケース３９０の左側の側面部３９０ａにおけるグレンシーブ３９３に対応する箇所には、グレンシーブ３９３を出し入れ可能な出入用開口４１３が形成され、グレンシーブ３９３が装着されているときは、この出入用開口４１３は取付板４１０により閉塞される。

　シーブケース３９０の左右両側の側面部にわたって、グレンシーブ３９３の前後両側部を受止め支持する側面視Ｌ字形の支持台４１４が架設されており、グレンシーブ３９３は、この前後の支持台４１４により受止め支持されている状態で、左右方向にスライド移動させることができる。

　そして、作業用開口４１２を開放させている状態で、取付板４１０のシーブケース３９０に対する３つのボルトの締結を解除して、前後の支持台４１４により受止め支持させている状態でグレンシーブ３９３をスライド移動させて、出入用開口４１３を通して横側外方に抜き出すことができる。又、グレンシーブ３９３をシーブケース３９０の外方側から内方側にスライド移動させることにより、シーブケース３９０内の適正位置に装着することができる。

　取付板４１０の外側面には、取り外したボルトＢｏＣを一時保持するための装着用のナット４１５が固定状態で備えられている。ナット４１５にネジ込み装着されているボルトＢｏＣは、グレンシーブ３９３のスライド操作の際に握り操作部として利用することができる。

　グレンシーブ３９３がシーブケース３９０内の適正位置に移動したときに、グレンシーブ３９３の奥側端部の浮き上がりを抑制する前後一対の押さえ具４１６が備えられている。図３７に示すように、この押さえ具４１６は、帯板状の板バネ材を折り曲げて形成されており、その長手方向一端部が、シーブケース３９０の右側の側面部３９０ａに形成されたスリットＣＣを通して差し込まれている。そして、長手方向他端側に形成された押圧部４１６ａが下方に向けて押し作用するように、長手方向の途中部を１本のボルトＢｏＣで側面部３９０ａに締結固定されている。

　押圧部４１６ａは、グレンシーブ３９３が適正位置に向けて移動するときに、グレンシーブ３９３の端部が接当して上方に持ち上げ案内されるように、中間部が下向きに突出する中凹み湾曲状に形成されている。

　従って、グレンシーブ３９３を適正位置に移動させるに伴って、グレンシーブ３９３の奥側端部が押圧部４１６ａにより押さえられて浮き上がりを抑制する状態となり、グレンシーブ３９３を横側外方に抜き出すときは、押圧部４１６ａによる押圧力に抗してグレンシーブ３９３をそのまま引き出すことができる。

　図３７に示すように、前部側の支持台４１４の前部側には、チャフシーブ３９２の前端部から漏下したワラ屑の多い処理物を後方に移送する下部側グレンパン４１７が備えられている。又、前部側の支持台４１４の下部には、グレンシーブ３９３の漏下面積を変更調整自在なスライド調節板４１８が備えられている。このスライド調節板４１８は、前部側の支持台４１４の下部に一体的に固定された複数のボルトＢｏＣにより締結固定されるとともに、ボルト挿通孔が前後方向に長孔に形成されている。従って、前後方向に位置を調節してボルトＢｏＣを締め付けることで位置を変更することができる。前後位置を変更することで、グレンシーブ３９３の漏下面積を変更することができる。

　図２３に示すように、揺動選別装置３８０の下方側に唐箕から供給される選別風の風向きを、主にチャフシーブ３９２に向かう風路と、主にグレンシーブ３９３に向かう風路と、一番物回収部３８２に向かう風路とに振り分け案内する３つの風向案内体４１９が備えられている。

　図３７に示すように、下部側グレンパン４１７、及び、機体前部側にスライド移動した状態のスライド調節板４１８が、風向案内体４１９により選別風が供給されない領域に位置する状態で配備されている。その結果、下部側グレンパン４１７やスライド調節板４１８が選別風の流れを阻害することがなく、選別風が必要な箇所に効率よく供給される。

　図２３及び図３８に示すように、二番物回収部３８３の上方に、側面視略Ｌ字形の流し板４２０が備えられている。この流し板４２０は、グレンシーブ３９３の後端部から排出された処理物のうち前部側に位置するものを一番物回収部３８２に流下案内するとともに、処理物のうち後部側に位置するものを二番物回収部３８３に流下案内する。

　流し板４２０は、前後位置を変更自在にシーブケース３９０に連結されている。
　すなわち、図３８に示すように、前後方向視でチャンネル形に形成された連結ブラケット４２１が、シーブケース３９０に対して左右両側部をボルトで締結固定され、この連結ブラケット４２１に複数箇所をボルトで締め付ける状態で、流し板４２０が連結されている。

　連結ブラケット４２１は、シーブケース３９０の左右両側部の夫々に前後２箇所をボルト連結にて固定されている。シーブケース３９０には、取付孔４２２が前後方向に等間隔をあけて３個形成されている。そこで、シーブケース３９０側の３個の取付孔４２２のうちの前部側２個を用いて連結ブラケット４２１を連結する状態と、３個の取付孔４２２のうちの後部側２個を用いて連結ブラケット４２１を連結する状態とにより、流し板４２０の前後位置を２位置に大きく切り換えることができる。

　又、流し板４２０におけるボルト挿通孔４２３が前後方向に沿って長尺の長孔に形成されており、流し板４２０の連結ブラケット４２１に対する相対前後位置を変更調整することができ、流し板４２０の前後位置を微調節することができる。

　流し板４２０の一番回収部側には、穀粒を一番物回収部３８２に向けて流下案内する帆布等の軟質材からなる案内体４２４がボルトで共締めされる状態で備えられている。この案内体４２４は、揺動選別装置３８０の揺動移動にかかわらず、一番物回収部３８２との間に隙間が生じることなく、穀粒を流下案内できるようにしたものである。

　［第１穀粒搬送装置］
　次に、第１穀粒搬送装置３８５について説明する。
　図４１に示すように、一番スクリュー３８４が、脱穀装置３０８の右側の側壁３０８Ａに形成された開口を通して横側外方に延長突出する状態で設けられ、その一番スクリュー３８４の回転軸４２５を、第１穀粒搬送装置３８５における搬送方向一端側に位置する駆動軸と兼用する構成となっている。

　図４０に示すように、第１穀粒搬送装置３８５は、駆動軸としての一番スクリュー３８４の回転軸４２５と、搬送方向他端側に位置する従動軸４２６と、それらの各軸の軸心方向中央部同士にわたって巻回張設された１本の無端回動体としての無端回動チェーン４２７と、その無端回動チェーン４２７に所定間隔をあけて取り付けられた平板状の複数の係止搬送体４２８と、それらの周囲を覆う搬送ケース４２９とを備えている。伝動系については、後述するが、図５４に示すように、エンジン３１０からの動力は、一番スクリュー３８４の回転軸４２５における左側端部に備えられた入力プーリ４３０を介して伝達される。

　第１穀粒搬送装置３８５の全体を支持する搬送ケース４２９は、図４０に示すように、上下中間部箇所と上部側箇所の２箇所において、取付ブラケット５９０を介して脱穀装置３０８の側壁３０８Ａに取り付け固定されている。そして、上下両側の取付ブラケット５９０は、同じ構成のものを兼用している。

　図４１（ｂ）に示すように、一番スクリュー３８４の延長突出部を覆うとともに、脱穀装置３０８の側壁３０８Ａと搬送ケース４２９とを接続する接続ケース部４３１は、搬送ケース４２９とは別体で形成されている。この接続ケース部４３１は、内側フランジ部４３１Ａと、外側フランジ部４３１Ｂと、それらを接続する筒状部４３１Ｃとが一体的に連結されている。そして、内側フランジ部４３１Ａが脱穀装置３０８の側壁３０８Ａにボルト連結され、外側フランジ部４３１Ｂが搬送ケース４２９の側面にボルト連結されている。

　図４０に示すように、従動軸４２６の軸心方向両側端部夫々に、無端回動チェーン４２７の張設方向に沿って延びる案内用の支持ロッド４３２と、その支持ロッド４３２を介して、無端回動チェーン４２７に張力を付与する張力付与機構４３３とが備えられている。
　従動軸４２６を回動自在に支持する軸受部としてのベアリング４３４が、支持ロッド４３２に一体的に連結されるとともに、無端回動チェーン４２７の張設方向に沿ってスライド移動自在に搬送ケース４２９に支持され、張力付与機構４３３は、支持ロッド４３２を介して軸受部（ベアリング４３４）をスライド移動させることにより、無端回動チェーン４２７に張力を付与する。

　説明を加えると、図４４に示すように、従動軸４２６の軸心方向両側端部夫々において、ベアリング４３４を保持するベアリング保持部４３５を備えた板状保持部材４３６が、搬送ケース４２９に連結固定されている前後一対の摺動案内部材４３７によって、無端回動チェーン４２７の張設方向に沿ってスライド自在に支持されている。

　支持ロッド４３２は、六角形の頭部４３２ａとネジ部４３２ｂとを有するボルトを用いて、板状保持部材４３６の上端部における水平面部４３６ａの下から上向きに挿通して、頭部４３２ａが水平面部４３６ａよりも下側に位置し、ネジ部４３２ｂが水平面部４３６ａよりも上方に突出する状態で設けられている。

　又、支持ロッド４３２は、搬送ケース４２９に連結固定されたバネ受け用のブラケット４３８を挿通するとともに、ブラケット４３８よりも上部側において、支持ロッド４３２にコイルバネ４３９が外挿されている。そして、コイルバネ４３９の上部側を受止め支持するバネ受け具４４０が備えられ、さらに、そのバネ受け具４４０の上側に位置して受け止め支持する２個のナット４４１が支持ロッド４３２に螺合装着されている。

　ナット４４１が螺合装着された状態では、コイルバネ４３９が、自由状態から圧縮されて、支持ロッド４３２を上方に向けて移動付勢する付勢力を発揮する状態で備えられる。又、コイルバネ４３９の外周側には筒状体４４２が備えられ、この筒状体４４２によりブラケット４３８とバネ受け具４４０との間の間隔を常に一定に維持して、コイルバネ４３９の付勢力を適正値に設定することができる。このようにして張力付与機構４３３が構成されている。

　つまり、左右両側の張力付与機構４３３は、夫々、適切な値に調節された左右で略均等なコイルバネ４３９の付勢力により支持ロッド４３２を上方に向けて移動付勢する。従って、左右で略均等なコイルバネ４３９の付勢力により従動軸４２６が上方に向けて移動付勢されて、無端回動チェーン４２７に張力が付与される。

　板状保持部材４３６の水平面部４３６ａの形成箇所には、板状保持部材４３６の剛性を高めるとともに、支持ロッド４３２の頭部４３２ａに作用して自由な回動を阻止する一対の補強リブ４４３が固定状態で備えられている。支持ロッド４３２の頭部４３２ａは六角形状であり、一対の補強リブ４４３が六角形の対向する面に対して接当する状態で形成されている。そして、一対の補強リブ４４３の間に支持ロッド４３２の頭部４３２ａを嵌め込むことにより、スパナとしての機能を備えて、支持ロッド４３２の回動を阻止することができる。その結果、支持ロッド４３２の回動に起因するコイルバネ４３９の付勢力の変化を防止できる。

　左右一対の支持ロッド４３２の夫々に、搬送ケース４２９における無端回動チェーン４２７の張設方向に沿う従動軸４２６の端部よりもさらに張設方向外方側に延びる延長突出部４３２ｃが形成されている。そして、一対の支持ロッド４３２における延長突出部４３２ｃの夫々にわたって架設連結されて、一対の支持ロッド４３２同士を連結する連結部材４４４が備えられている。

　すなわち、一対の支持ロッド４３２の夫々における受け止め支持用の２個のナット４４１よりも軸端側箇所にわたって、帯板材からなる連結部材４４４が架設連結され，連結部材４４４は、夫々の支持ロッド４３２にナット４４５で締め付け固定されている。

　図４３及び図４４に示すように、従動軸４２６における搬送ケース４２９よりも右側外方に突出する端部に、伝達された動力を他の装置としての第２穀粒搬送装置３８６に伝達するための出力回転体としての出力プーリ４４６が備えられている。出力プーリ４４６からの動力は、伝動ベルト４４７を介して横向き入力軸４４８に伝達され、この横向き入力軸４４８からベベルギア機構４４９を介して、第２穀粒搬送装置３８６に伝達される。

　図４０及び図４１（ａ）に示すように、第１穀粒搬送装置３８５は、無端回動チェーン４２７における駆動スプロケット４５０に対する巻回箇所よりも回動下手側箇所が回動上手側箇所よりも上側に位置し、回動下手側箇所が位置する部位に、処理物搬送経路ＬＣが形成され、処理物搬送経路ＬＣにおける無端回動チェーン４２７の内周側に沿って延びる状態で、処理物搬送経路ＬＣの横幅方向の全幅にわたる底部案内板が、処理物搬送経路ＬＣの略全長にわたって備えられている。すなわち、直線経路に沿って長く設けられる中間部の底部案内板４５１Ａ、搬送上手側に位置する上手側の底部案内板４５１Ｂ、及び、搬送下手側に位置する下手側の底部搬送板４５１Ｃが備えられ、係止搬送体４２８によって押し移動される処理物を下側から受け止めて移送案内する。

　無端回動チェーン４２７は、図４０、図４１（ａ）において右回りで回動駆動され、一番スクリュー３８４から搬送された穀粒を、右回り状態で無端回動チェーン４２７に取り付けられた係止搬送体４２８により掻き上げながら、回動下手側箇所における処理物搬送経路ＬＣを通して順次搬送する。

　そして、図４１（ａ）（ｂ）に示すように、上手側の底部案内板４５１Ｂにおける駆動スプロケット４５０側の端部が、回転軸４２５の外周部に沿って回り込んで覆うように延長形成されている。上手側の底部案内板４５１Ｂは、上部側箇所に一体的に連結されたＬ形の連結具４５２が、搬送ケース４２９の左右両側面にボルト締結により固定されて支持されている。又、駆動スプロケット４５０側の端部には、駆動スプロケット４５０を避けるための切欠き４５３が形成され、その切欠き４５３の両側部が回転軸４２５の外周部に沿って回り込んで覆うように延長形成されている。

　図４１（ｂ）及び図４４（ｂ）に示すように、駆動スプロケット４５０における無端回動チェーン４２７が噛み合う噛み合い箇所に、無端回動チェーン４２７の巻回方向と直交する横幅方向に沿って膨出する膨出部４５５が形成されている。

　膨出部４５５は、駆動スプロケット４５０のチェーン噛み合い箇所である係合突部４５６の横側部が、前後方向視で略円弧状に横幅方向外方に膨出する状態で形成されており、無端回動チェーン４２７の左右両側のチェーンリンク４２７ａと係合突部４５６との間の横幅方向の隙間が小さくなる。このように形成することで、無端回動チェーン４２７との噛み合いが円滑に行えるようにしながら、駆動スプロケット４５０と無端回動チェーン４２７との間に穀粒が噛み込まれるおそれが少ないものとなる。

　搬送ケース４２９には、内部の清掃や点検等のメンテナンス作業のために複数の開口が形成されており、夫々の開口は開閉自在なカバーにより覆われている。

　図４１に示すように、搬送ケース４２９の搬送始端部には、駆動スプロケット４５０の円弧状の外周部に沿って略半周にわたる大きな開口Ｋ２Ｃが形成されている。その開口Ｋ２Ｃを覆う底部カバー４５７は、側面視で円弧状の搬送ケース４２９に沿う略円弧状に形成され、その両側端部が夫々、周知構造のロック機構４５８により保持されている。

　図４２に示すように、搬送ケース４２９による処理物搬送経路ＬＣの直線状の途中経路部分には、矩形状の開口Ｋ３Ｃが形成されている。この開口Ｋ３Ｃを覆う中間部カバー４５９は、上部側端部が、左右一対の切り込み４５９ａにより内側部分４５９ｂとその両側に位置する外側部分４５９ｃとに分離され、内側部分４４９ｂが開口Ｋ３Ｃの上部側の縁部の内側に入り込み、外側部分４５９ｃが開口Ｋ３Ｃの上部側の縁部の外側に位置する状態で差し込み係合される。一方、下部側端部は、Ｌ字形に折り曲げた縦面部４５９ｄが形成され、この縦面部４５９ｄと搬送ケース４２９の外面に固定されたＬ字形のブラケット４６０とがノブ付きボルト４６１により締結されている。

　搬送ケース４２９の搬送終端部には、従動スプロケット４５４の円弧状の外周部のうち後部側の領域に開口Ｋ４Ｃが形成されており、その開口Ｋ４Ｃを覆う上部カバー４６２は、上端側箇所が搬送ケース４２９に固定された係止部材４６３に係止保持され、下端側箇所が周知構造のロック機構４５８により保持されている。

　図４５に示すように、係止部材４６３は、板材を側面視で略Ｌ字形に折り曲げるとともに、その屈曲部分の一方の面に開口４６３ａが形成されている。又、屈曲部分の他方の面における開口４６３ａに対応する縁部の両側に切り込み４６３ｂが形成されている。上部カバー４６２の上端側箇所に、開口４６３ａに入り込み係合する係止部４６２ａが上向きに少し屈曲する状態で形成されている。そして、この係止部４６２ａを開口４６３ａに入り込ませて前記縁部に係止する状態で、下端側箇所をロック機構４５８により保持することにより、上部カバー４６２が固定状態で装着される。

　搬送ケース４２９の搬送終端部から第２穀粒搬送装置３８６に向けて穀粒を送り出す中継用ケース４６４には横側面に開口Ｋ５Ｃが形成され、その開口Ｋ５Ｃを覆う中継部カバー４６５は、中間部カバー４５９と同様に、下部側端部が、左右一対の切り込み４６５ａにより内側部分４６５ｂとその両側に位置する外側部分４６５ｃとに分離され、内側部分４６５ｂが開口Ｋ５Ｃの上部側の縁部の内側に入り込み、外側部分４６５ｃが開口Ｋ５Ｃの下部側の縁部の外側に位置する状態で差し込み係合される。一方、上部側端部は、Ｌ字形に折り曲げた縦面部４６５ｄが形成され、この縦面部４６５ｄと搬送ケース４２９の外面に固定されたＬ字形のブラケット４６６とがノブ付きボルト４６７により締結されている。

　メンテナンス作業のために、一番スクリュー３８４を脱穀装置３０８から取り外す場合には、燃料タンク３１１を開放姿勢に切り換えて、機体左側外方に抜き出すことができる。一番スクリュー３８４の左側端部は、図示はしないが、単に、ベアリングを介して脱穀装置３０８の側壁に支持される構成であり、ベアリング保持部を取り外すことで、容易に外すことができる。

　一番スクリュー３８４の回転軸４２５の右側端部は、図４１（ｂ）に示すように、ベアリング４６８を介して搬送ケース４２９に支持されている。このベアリング４６８を保持するベアリング保持部４６８Ａは、左右両側で同じ形状の浅絞り形状の保持部単位体をボルト締結した簡易な構造のものを用いている。又、ベアリング４６８に対する回転軸４２５の嵌合箇所は、嵌め合い交差がＪＳクラス（プラス、マイナス両方の交差を有するもの）に設定されており、ギアプーラ等の治具を用いて抜き外すことができる。

　［第２穀粒搬送装置］
　図３９に示すように、第２穀粒搬送装置３８６は、脱穀装置３０８と運転部との間の隙間を通して第１穀粒搬送装置３８５の搬送終端部から左方向上方に向けて延びる斜め姿勢で設けられている。この第２穀粒搬送装置３８６は、穀粒を左側斜め上方に向けて搬送するスクリューコンベア式の搬送部４６９と、その搬送部４６９の搬送終端部に位置して穀粒を穀粒タンク３０９内に排出供給する排出部４７０とを備えている。

　この第２穀粒搬送装置３８６において、搬送部４６９は、一体的に形成された円筒状の外装ケース４７１内に搬送スクリュー４７２を回転自在に備えて、搬送スクリュー４７２の回転作動に伴って穀粒を斜め上方に搬送する。又、排出部４７０は、外装ケース４７１に連なる状態で設けられた排出ケース４７３に排出用の開口を備えるとともに、排出ケース４７３の内部に、搬送スクリュー４７２と一体的に回転する回転羽根４７５を備えて、搬送した穀粒を回転羽根４７５により跳ね飛ばしながら穀粒タンク３０９内に排出供給する。

　第２穀粒搬送装置３８６の搬送終端部には、搬送スクリュー４７２の回転速度を検出する回転速度センサＳ２Ｃが備えられ、この回転速度センサＳ２Ｃにて検出される回転速度が設定速度以下に低下すると、運転部３０７に備えられた図示しない報知ランプにて報知するようになっている。

　［二番物還元装置］
　次に、二番物還元装置３８８について説明する。
　図４７及び図４８に示すように、二番物還元装置３８８は、二番物を二番スクリュー３８７に対応する位置から前部上方側の排出位置まで搬送するスクリューコンベア式の搬送部４７６と、二番スクリュー３８７により搬送された二番物を搬送部４７６に受け渡す供給部４７７と、搬送部４７６の搬送終端部に位置して二番物を脱穀装置３０８の揺動選別装置３８０上に排出供給する排出部４７８と、二番スクリュー３８７の動力を搬送部４７６に伝達する二番物搬送用の伝動機構４７９とを備えている。伝動系については、後述するが、図４８に示すように、エンジン３１０からの動力は、二番スクリュー３８７の回転軸４８０における左側端部に備えられた入力プーリ４８１を介して伝達される。

　搬送部４７６は、二つ割り構造の円筒状ケース４８２内に搬送スクリュー４８３が回転自在に備えられ、搬送スクリュー４８３の回転作動に伴って穀粒を斜め上方に搬送する。供給部４７７は、脱穀装置３０８の左側の側壁３０８Ａに形成された開口を通して横側外方に延長突出する二番スクリュー３８７の回転軸４８０に取り付けられた回転羽根４８４と、この回転羽根４８４の外周部を覆うとともに、二番物を搬送部４７６に供給する供給用ケース４８５とが備えられている。

　供給用ケース４８５は、回転羽根４８４の外周部に沿う側面視で略円弧状の第１ケース部分４８５Ａと、回転羽根４８４により跳ね飛ばされる二番物を前部側斜め下方に向けて案内するとともに、搬送スクリュー４８３の搬送始端部を覆う第２ケース部分４８５Ｂとが、一体的に連なる状態で備えられている。

　図示していないが、第２ケース部分４８５Ｂにおける二番物の跳ね飛ばし方向下手側箇所が、搬送スクリュー４８３の外周部に沿う円弧状に形成され、且つ、第２ケース部分４８５Ｂと搬送部４７６における円筒状ケース４８２とが滑らかに連なる状態で接続されて、搬送スクリュー４８３による送り作用を良好に発揮できるようにしている。

　図４７（ａ）に示すように、第２ケース部分４８５Ｂにおける搬送スクリュー４８３の送り方向に沿う幅が、側面視で第１ケース部分４８５Ａの直径寸法と略同じ幅広に形成されている。その結果、回転羽根４８４から搬送部４７６への二番物の受け渡しを滞留の少ない状態で円滑に行うことができる。

　図４７（ａ）に示すように、第２ケース部分４８５Ｂにおける回転羽根４８４による二番物の跳ね飛ばし方向下手側箇所のうち下部側の箇所に、周方向に沿って約９０度の範囲にわたってメンテナンス用の開口Ｋ６Ｃが形成されている。この箇所は、搬送される二番物の詰まりが発生するおそれが大きい箇所である。

　メンテナンス用の開口Ｋ６Ｃを覆う下部カバー４８６は、図４７（ａ）に示すように、第２ケース部分４８５Ｂに沿うように円弧状に形成されており、周方向の両側部に径方向に突出するフランジ部４８６ａが形成されている。このフランジ部４８６ａと、第２ケース部分４８５Ｂに備えられたフランジ部４８５Ｂ１を、蝶ボルト４８７にて締結することで、下部カバー４８６が供給用ケース４８５に固定状態で装着されている。蝶ボルト４８７を操作することにより、下部カバー４８６を容易に着脱させることができる。

　図４７（ａ）及び図４９に示すように、排出部４７８は、搬送部４７６における円筒状ケース４８２に連なる状態で排出ケース４８８が備えられ、この排出ケース４８８における機体内方側箇所に排出用の開口４８９が形成され、排出ケース４８８の内部に、搬送スクリュー４８３と一体的に回転する回転羽根４９０が備えられている。

　排出ケース４８８における排出用の開口４８９とは反対側（機体外方側）箇所には、メンテナンス用の開口Ｋ７Ｃが形成されている。その開口Ｋ７Ｃを覆う上部カバー４９１は、回転羽根４９０の回転を許容するように円弧状に形成され、前後両側をボルトで締結して装着されている。

　図４９に示すように、排出用の開口４８９には、回転羽根４９０により跳ね飛ばされる二番物を、揺動選別装置３８０の上方箇所のうち、できるだけ機体前部側に向けて排出させるための案内板４９２が備えられている。この案内板４９２は、一枚の帯板を円弧状に曲げたものであり、排出ケース４８８の内側では排出用の開口４８９の内壁面に沿わせて当て付ける状態で備えられ、途中部で内壁面にボルト締結するとともに、上部カバー４９１の取付用のボルトＢｏＣにて共締めする状態で固定されている。

　次に、二番物搬送用の伝動機構４７９について説明する。
　図４７及び図４８に示すように、二番スクリュー３８７の回転軸４８０における回転羽根４８４の装着位置よりも外方側が第１ケース部分４８５Ａから外方に突出し、その外方突出部に一体回転自在に駆動スプロケット４９３が備えられている。又、第２ケース部分４８５Ｂにおける底面の下方側に、横向き伝動軸４９５と搬送スクリュー４８３とを連動連結するベベルギア機構を収納したギアケース４９６が備えられ、横向き伝動軸４９５がギアケース４９６から横側外方に突出する状態で備えられている。

　横向き伝動軸４９５に取り付けられた従動スプロケット４９７と駆動スプロケット４９３とを連動連結する伝動チェーン４９８が備えられ、駆動スプロケット４９３、伝動チェーン４９８、従動スプロケット４９７等が、外付けのチェーンケース４９９に収納される状態で備えられている。

　チェーンケース４９９における二番スクリュー３８７の回転軸４８０を支持する駆動側の軸支部は、ベアリング５０１を抜け止めする状態で回転軸４８０に外挿し、且つ、駆動スプロケット４９３をキー連結にて一体回転自在に装着した状態で，ボルトＢｏＣで回転軸４８０の軸端に締め付けて固定されている。そして、この駆動側の軸支部は、第１ケース部分４８５Ａにおける取外し自在な横側壁５０３に対してボルト締結にて固定されている。横側壁５０３は、４箇所を蝶ボルト５０４で第１ケース部分４８５Ａの側部に形成された開口５０５の周縁部に取外し自在に固定されている。

　そして、チェーンケース４９９における横向き伝動軸４９５を支持する従動側の軸支部は、ベアリング５０６にて従動スプロケット４９７を内嵌支持するとともに、従動スプロケット４９７を横向き伝動軸４９５に対してスプライン嵌合させている。従って、チェーンケース４９９と第１ケース部分４８５Ａとの連結を解除すると、従動側の軸支部は横向き伝動軸４９４から抜き外すことができる。

　チェーンケース４９９内において張設される伝動チェーン４９８に対して張力を付与する張力付与手段としての板バネ５０７が設けられている。この板バネ５０７は、図４７に示すように、中央部がケース内方側に突出するように湾曲状に形成され、両側端部がチェーンケース４９９に受止め支持されている。この板バネ５０７は、一端部に支持ピン５０８が固定状態で備えられ、他端はケース内面に接当する状態で備えられる。

　チェーンケース４９９は２つ割り構造の分割ケース４９９ａ，４９９ｂがフランジ接続されている。そして、板バネ５０７の一端部に備えられた支持ピン５０８を、一方の分割ケース４９９ａに形成された凹部５０９に差し込み、チェーンケース４９９をフランジ接続すると、支持ピン５０８がチェーンケース４９９により挟み込まれて、板バネ５０７が保持される。つまり、伝動チェーン４９８に対して張力を付与する姿勢が維持される。

　二番スクリュー３８７の左側外方には、燃料タンク３１１の回動支持部が存在しており、メンテナンス作業のために、二番スクリュー３８７を脱穀装置３０８から取り外す場合には、機体右方に抜き外すようになっている。
　二番スクリュー３８７を抜き外す場合には、先ず、二番スクリュー３８７の回転軸４８０における左側端部において、固定用のボルトを緩めて入力プーリ４８１を取り外す。そして、チェーンケース４９９における駆動側の軸支部において第１ケース部分４８５Ａとの連結を解除する。つまり、４箇所の蝶ボルト５０４を取り外して、チェーンケース４９９の駆動側の軸支部が固定されている横側壁５０３を第１ケース部分４８５Ａの周縁部から取り外す。そうすると、チェーンケース４９９における従動側の軸支部は横向き伝動軸４９４から抜き外すことができ、チェーンケース４９９と二番スクリュー３８７の回転軸４８０とを一体的に脱穀装置３０８の右側外方に抜き外すことができる。

　又、二番物還元装置３８８の搬送終端部には、搬送スクリュー４８３の回転速度を検出する回転速度センサＳ３Ｃが備えられ、この回転速度センサＳ３Ｃにて検出される回転速度が設定速度以下に低下すると、運転部３０７に備えられた図示しない報知ランプにて報知するようになっている。

　［唐箕］
　次に、唐箕３８１について説明する。
　図５０（ａ）に示すように、唐箕３８１は、脱穀装置３０８の左右両側の側壁３０８Ａにわたってそれらを貫通する状態で回転軸５１０が設けられ、その回転軸５１０の外周部に一体回転する状態で複数の回転羽根５１１が備えられている。つまり、回転軸５１０に相対回転自在に外嵌された筒部材５１２がネジ５１３により一体回転すべく固定され、その筒部材５１２に一体的に備えられた略円板状の回転体５１４に連結用板体５１５を介して複数の回転羽根５１１が夫々ボルト連結されている。従って、回転羽根５１１が破損したときは、破損した回転羽根５１１だけを取り外して交換することができ、回転軸５１０が破損したときは、筒部材５１２を取り外して回転軸５１０だけを交換することもできる。

　図５０（ｂ）（ｃ）に示すように、左右両側の側壁３０８Ａの夫々に、選別風を吸い込むための吸気用開口５１６が形成されている。この吸気用開口５１６は、回転羽根５１１の外端部の円形の回転軌跡と略同じ大きさの開口である。唐箕３８１は、回転羽根５１１が回転するのに伴って、左右両側の吸気用開口５１６を通して外部から選別風を吸い込み、その吸い込んだ選別風を回転羽根５１１の回転軌跡の接線方向に向けて、すなわち、選別処理部３３０に向けて送風する。

　そして、左右両側の吸気用開口５１６の開度を変更調整自在な開度調整機構としての左右一対の板状の開度調整板５１７が備えられている。
　図５１及び図５２に示すように、各開度調整板５１７は、吸気用開口５１６に対向する状態で設けられ、且つ、側壁３０８Ａのうち吸気用開口５１６に対して上側箇所と下側箇所とに亘るように設けられている。具体的には、吸気用開口５１６における機体前部側の領域を覆うように、側壁３０８Ａにおける吸気用開口５１６の上側に位置する上側箇所５１８と、側壁３０８Ａにおける吸気用開口５１６の下側に位置する下側箇所５１９とにわたるように上下に長尺に設けられている。

　左右一対の開度調整板５１７は、機体横幅方向に沿って一連に連なる揺動支軸５２０により揺動自在に支持され、その揺動支軸５２０における機体横方向に沿う軸心Ｐ３Ｃ周りでの揺動により吸気用開口５１６の開度を調整することができる。

　揺動支軸５２０は、脱穀装置３０８の前側箇所を機体横方向に沿って通過する状態で、且つ、脱穀装置３０８の前部側フレームとしての脱穀フレーム３３２の前面３３２ａに支持される状態で備えられている。すなわち、揺動支軸５２０は、左右両側端部が左右の開度調整板５１７にボルト締結にて固定され、脱穀フレーム３３２の前面３３２ａに備えられた左右一対の軸受け部材５２１により横軸心Ｐ３Ｃ周りで回動自在に支持されている。

　図５１（ａ）及び図５２（ａ）に示すように、揺動支軸５２０とは異なる箇所、すなわち、開度調整板５１７における揺動途中部位であって且つ脱穀フレーム３３２の前面３３２ａよりも前部側に位置する箇所において、左右一対の開度調整板５１７同士にわたって一体的に連結部材としての連動リンク５２２が架設連結されている。この連動リンク５２２により、左右一対の開度調整板５１７を連動させて開度を調整することができる。従って、この連動リンク５２２が一対の開度調整板５１７を連動させて開度を調整する連動機構に相当する。

　図５１に示すように、左側の側壁３０８Ａに対応する位置に、開度調整板５１７による吸気用開口５１６の開度を保持する開度保持部としての蝶ボルト５２３が備えられている。開度調整板５１７における上下途中部に揺動軸心に沿う円弧状の長孔５２４が形成され、脱穀フレーム３３２におけるこの長孔５２４に対応する箇所にネジ装着部５２５が形成され、長孔５２４を挿通する状態で蝶ボルト５２３が装着されている。蝶ボルト５２３を締め付けると、開度調整板５１７を位置固定することができ、蝶ボルト５２３を緩めると、手動操作にて長孔５２４の範囲内で開度調整板５１７を揺動させて開度を変更させることができる。

　開度調整の際には、連動リンク５２２を介して右側の開度調整板５１７も揺動操作されるが、右側の開度調整板５１７にも左側の開度調整板５１７と同様な円弧状の長孔５２４が形成され、長孔５２４を挿通する状態で揺動範囲規制用のボルト５２６が備えられている。但し、このボルト５２６は締め付けずに、融通を持たせた状態となっている。

　脱穀装置３０８のメンテナンス作業を行う場合に、燃料タンク３１１を上下揺動軸心周りで揺動開放させた状態で機体左側外方から作業を行うことができ、唐箕３８１の風量調整も機体左側から行うことができる。

　図５１及び図５２に示すように、脱穀装置３０８の側壁３０８Ａと開度調整板５１７との間の隙間を閉塞する閉塞部材５２７が備えられている。閉塞部材５２７は、側壁３０８Ａにおける吸気用開口５１６の上側に位置する上側箇所５１８と、側壁３０８Ａにおける吸気用開口５１６の下側に位置する下側箇所５１９との夫々において、側壁３０８Ａに取り付けられている。

　閉塞部材５２７は、前後方向視でＬ字形に形成された板材にて構成され、側壁３０８Ａに一体固定される状態で備えられている。そして、開度調整板５１７が揺動可能範囲な全範囲において、先端部が開度調整板５１７の内面側に近接する状態を維持することにより、開度調整板５１７と側壁３０８Ａとの間の隙間から選別風が吸い込まれることがないようにしている。

　機体横側外方に臨む外方側の側壁としての左側の側壁３０８Ａに対応する位置に、開度調整板５１７の開度を変更するための操作部５２８が備えられている。具体的には、開度調整板の前部側の縦向き縁部を、略Ｌ字形に折り曲げて、揺動支軸５２０と連動リンク５２２とを連結する連結部を形成すると共に、その折り曲げ部が縁部の長手方向の全域にわたって設けられ、操作部５２８が形成されている。この操作部５２８を手で持って開度調整板５１７を揺動操作させることができる。尚、図５１及び図５２以外の図では、開度調整板５１７の記載は省略している。

　図５０に示すように、唐箕３８１の回転軸５１０は、吸気用開口５１６が形成される左右側壁３０８Ａに支持させるために、吸気用開口５１６を前後方向に跨ぐ状態で架設支持された軸受けブラケット５２９により回転自在に支持されている。

　左側の軸受けブラケット５２９は、機体左側から脱穀フレーム３３２に当て付けた状態でボルトで締結固定されている。右側の軸受けブラケット５２９は、吸気用開口５１６の前後両側部において脱穀フレーム３３２に固定されている前後の連結部材５３０に、機体左側から当て付けた状態でボルトで締結固定されている。右側の軸受けブラケット５２９の長手方向（前後方向）に沿う幅は、吸気用開口５１６の幅よりも少しだけ幅狭に形成されている。

　エンジン３１０からの動力は、唐箕３８１の回転軸５１０における右側端部に備えられた入力プーリ５３１を介して伝達される。そして、後述するように、この回転軸５１０における左側端部に備えられた出力プーリ５３２を介して脱穀装置３０８の各部に動力が伝達される。図５０における符号５３３は、出力用伝動ベルト５３４に作用するテンションプーリであり、このテンションプーリ５３３は、回転軸５１０を揺動支軸に兼用したテンションアーム５３５にて支持されている。

　メンテナンス作業のために、唐箕３８１を脱穀装置３０８から取り外す場合には、機体右方に抜き外すようになっている。すなわち、唐箕３８１を取り外すときは、左側の軸受けブラケット５２９の脱穀フレーム３３２に対するボルト締結を解除する。尚、このとき、テンションアーム５３５は予め取り外しておく。次に、回転軸５１０に備えられている入力プーリ５３１を取り外したのち、右側の軸受けブラケット５２９の前後の連結部材５３０に対するボルト締結を解除する。そうすると、唐箕３８１全体と左右両側の軸受けブラケット５２９とが一体的に連なった状態で、脱穀装置３０８の左側外方に抜き外すことができる。

　［シャッター部材］
　図２３及び図５３に示すように、揺動選別装置３８０の機体後部側上方における外部排出経路としての排塵口４０５を開閉自在なシャッター部材５３７が備えられている。又、受網３３８から漏下する脱穀処理物の量を検出する処理物量検出手段としての処理物量検出体５３８が備えられている。シャッター部材５３７は、処理物量検出体にて検出される脱穀処理物の量に応じて開度が変更調整される。具体的には、脱穀処理物の量が多いほど排塵口４０５を開放させる。

　処理物量検出体５３８は、受網３３８の後端部に設けられ、揺動変位により扱室３２９から外部に排出される扱き処理後の排出物の量を検出する。すなわち、処理物量検出体５３８は、機体横方向に長い帯板状に形成されて脱穀装置３０８の横幅方向略全幅にわたって設けられている。そして、機体前部側の横向き軸心Ｐ４Ｃ周りで上下揺動自在に支持されて、上方側の基準姿勢に向けて上昇付勢され、且つ、扱室３２９から排出される排出物の重量にて上方付勢力に抗して下方に揺動変位自在に設けられている。

　シャッター部材５３７は、揺動選別装置３８０の後端部上方に、受網３３８の支持枠３６２Ａに対して、横向き軸心Ｐ５Ｃ周りで上下揺動自在に支持されている。又、このシャッター部材５３７は、処理物量検出体５３８と同様に、機体横方向に長い帯板状に形成されて脱穀装置３０８の横幅方向略全幅にわたって設けられている。

　処理物量検出体５３８とシャッター部材５３７の支持構造について説明する。
　図５３に示すように、脱穀装置３０８の横幅方向に沿って適宜間隔をあけて分散配備される状態で、受網３３８の後部側の支持枠３６２Ａに対して支持台３６２Ａ１を介して、複数の枢支部材５４０が、ボルトの締結により取付固定されている。この枢支部材５４０は、板材の上下両側を円弧状に屈曲して枢支ボス部５４１が形成されている。

　上側の枢支ボス部５４１には、処理物量検出体５３８に一体的に固定された枢支ピン５４２が差し込まれて、その枢支ピン５４２の軸心Ｐ４Ｃ周りで上下揺動自在に処理物量検出体５３８が支持されている。又、下側の枢支ボス部５４１には、シャッター部材５３７に一体的に固定された枢支ピン５４３が差し込まれて、その枢支ピン５４３の軸心Ｐ５Ｃ周りで上下揺動自在にシャッター部材５３７が支持されている。

　そして、これら処理物量検出体５３８とシャッター部材５３７との配設箇所における脱穀装置３０８の横幅方向一端側箇所に、脱穀処理物の量が大であれば、シャッター部材５３７が開状態となり、脱穀処理物の量が小であれば、シャッター部材５３７が閉状態となるように、処理物量検出体５３８とシャッター部材５３７とを連動連係するリンク機構５４４が備えられている。

　リンク機構５４４について説明する。
　脱穀装置３０８の左側の側壁３０８Ａの外方側に、横軸心Ｐ６Ｃ周りで揺動自在に略Ｌ字形の揺動部材５４５が備えられている。又、処理物量検出体５３８の揺動途中部に一体的に固定された筒部材５４６に第１連動操作体５４７が差し込み支持されている。この第１連動操作体５４７は、横方向に延び、揺動部材５４５の一端側の揺動端部に連動連係されている。

　一方、シャッター部材５３７の揺動途中部に一体的に固定された筒部材５４８に第２連動操作体５４９が差し込み支持されている。この第２連動操作体５４９は、横方向に延び且つＬ字形に折り曲げて、揺動部材５４５の他端側の揺動端部に近い位置に連動連係されている。そして、揺動部材５４５の他端側の揺動端部に、シャッター部材５３７を閉じ状態に向けて付勢するように揺動部材５４５を揺動付勢する付勢手段としてのコイルバネ５５０が備えられている。又、側壁３０８Ａには、第１連動操作体５４７の揺動移動範囲を規制する長孔５５１と、第２連動操作体５４９の揺動移動範囲を規制する長孔５５２とが形成されている。

　この構成によれば、コイルバネ５５０の付勢力によって、シャッター部材５３７が下向き姿勢で排塵口４０５が閉じる閉じ状態となるように、且つ、処理物量検出体５３８が、上方側の基準姿勢に向けて上昇揺動するように揺動付勢される。それらの揺動限界は長孔５５１，５５２によって規制される。そして、扱室３２９から排出される排出物の重量が大きくなると、コイルバネ５５０の上方付勢力に抗して、処理物量検出体５３８が下方に揺動変位するとともに、それに伴って、シャッター部材５３７が開方向に揺動操作されることになる。しかも、排出物の重量が大きいほど、処理物量検出体５３８が大きく下方へ揺動し、シャッター部材５３７が大きく開放される。

　［伝動構造］
　次に、脱穀装置３０８に対する伝動構造について説明する。
　図５４に示すように、エンジン３１０の動力が、機体走行用の伝動機構５５３に対する走行用入力軸５５４に伝達されたのち、その走行用入力軸５５４からカウンター軸に兼用構成されている唐箕３８１の回転軸５１０の右側端部に備えられた入力プーリ５３１に伝達される。

　そして、唐箕３８１の回転軸５１０に備えられた駆動回転体としての第１駆動プーリ５５５から中継軸５５６に備えられた従動回転体５５７に動力を伝達する中継伝動機構５５８と、従動回転体５５７から扱胴３２７、フィーダ３１４、処理物搬送機構としての一番スクリュー３８４と二番スクリュー３８７、及び、揺動駆動部３８９に動力を分配供給する分配伝動機構５５９とが備えられている。

　中継伝動機構５５８について説明する。
　図５５に示すように、唐箕３８１の回転軸５１０よりも少し前部側寄りで且つ上方側の箇所に、側壁３０８Ａから片持ち状に外方に突出する状態で中継軸５５６が固定状態で備えられている。この中継軸５５６は、基端側に側面視矩形状のフランジ部５６０が形成され、そのフランジ部５６０の四隅を脱穀装置３０８の側壁３０８Ａにボルト締結により固定されている。フランジ部５６０から外方に向かうほど小径となる略円筒状の軸部５６１が一体形成され、この軸部５６１に従動回転体５５７が回転自在に支持されている。

　唐箕３８１の回転軸５１０の左側端部に第１駆動プーリ５５５が備えられ、この第１駆動プーリ５５５から伝動ベルト５６２を介して従動回転体５５７に備えられた入力用回転体としての入力プーリ５６３に回転軸５１０からの動力が入力される。

　次に、分配伝動機構５５９について説明する。
　図５５に示すように、従動回転体５５７は、入力プーリ５６３と、動力を分配供給するための複数の出力プーリ５６４，５６５，５６６とを一連に連なる状態で備えた多連式に構成され、且つ、入力プーリ５６３に対して回転軸心方向両側に振り分けた状態で複数の出力プーリ５６４，５６５，５６６が備えられている。

　複数の出力プーリは、扱胴３２７に動力を供給する出力回転体としての扱胴用出力プーリ５６４、フィーダ３１４に動力を供給するフィーダ用出力プーリ５６５、及び、一番スクリュー３８４と二番スクリュー３８７、及び、揺動駆動部３８９に動力を供給する搬送用出力プーリ５６６が備えられている。そして、複数の出力プーリのうち、出力用回転体である扱胴用出力プーリ５６４が入力プーリ５６３よりも機体外方側に位置している。又、フィーダ用出力プーリ５６５と搬送用出力プーリ５６６とが入力プーリ５６３よりも機体内方側に位置している。

　扱胴用出力プーリ５６４が最も機体外方側に位置しており、この扱胴用出力プーリ５６４が、中継軸５５６に対して着脱自在に取り付けられている。又、フィーダ用出力プーリ５６５が、入力プーリ５６３に対して搬送用出力プーリ５６６よりも離間する状態、すなわち、最も機体内方側に位置する状態で備えられている。

　そして、図５５に示すように、扱胴用出力プーリ５６４から扱胴用伝動ベルト５６７を介して扱胴３２７に対する伝動用プーリ５８２に動力が伝達され、フィーダ用出力プーリ５６５からフィーダ用伝動ベルト５６８を介してフィーダ３１４に対する伝動用プーリ５８３に動力が伝達され、伝動用プーリ５８３からフィーダ３１４に伝達された動力は刈取部３１３にも伝達される。

　搬送用出力プーリ５６６から搬送用伝動ベルト５６９を介して一番スクリュー３８４と二番スクリュー３８７とに動力が伝達される。その搬送用伝動ベルト５６９の伝動途中には、回転動力を反転させる反転用プーリ５７０が備えられ、その反転用プーリ５７０から揺動駆動用の伝動ベルト５７１を介して揺動駆動部３８９に動力が伝達される。

　又、搬送用伝動ベルト５６９の上部側部分の伝動途中には、搬送用伝動ベルト５６９がグレンシーブ３９３の横側箇所を通過しないようにテンション輪５７３により下方に押し下げるようにしている。

　又、唐箕３８１の回転軸５１０には、第１駆動プーリ５５５と一体的に、後処理用回転体としての第２駆動プーリ５７４が備えられ、この第２駆動プーリ５７４から排ワラ処理装置３１２に動力を伝達する後処理用伝動機構５７５が備えられている。

　すなわち、第２駆動プーリ５７４から前部伝動ベルト５７６、中継軸５７７、後部伝動ベルト５７９を介して、排ワラ処理装置３１２の駆動軸５８０に備えられた小径の入力プーリ５８１に増速した動力が伝達される。このようにして、排ワラの細断処理のために高速の動力を伝達する。尚、排ワラ処理装置３１２の駆動軸５８０には、回転速度を検出する回転速度センサＳ４Ｃ（図２１参照）が備えられ、この回転速度センサＳ４Ｃにて検出される回転速度が設定速度以下に低下すると、運転部３０７に備えられた図示しない報知ランプにて報知するようになっている。

　このコンバインは、刈取対象作物として、稲や麦の他、蕎麦、大豆、菜種や金時豆等を収穫可能である。但し、このような対象作物が異なる場合、扱胴の回転速度を変更させる必要がある。例えば、稲や麦の場合は高速、蕎麦や大豆の場合は中速、菜種や金時豆等の場合は低速で駆動する必要がある。

　そして、このコンバインでは、標準として高速に設定されるが、扱胴の速度を変更するにあたり、扱胴用出力プーリ５６４と扱胴３２７に対する伝動用プーリ５８２とを取り外して付け替えることにより、低速での駆動を行えるように回転比率が設定されている。中速の場合には、径の異なるプーリを用いる必要がある。

［第３実施形態の別実施形態１］
　上記の実施形態では、唐箕３８１の回転軸５１０をカウンター軸として兼用構成したが、この構成に代えて、唐箕以外の回転軸、例えば、一番スクリュー３８４の回転軸３８４Ａ、二番スクリュー３８７の回転軸４８０等をカウンター軸に兼用してもよく、又、専用のカウンター軸を設けてもよい。

［第３実施形態の別実施形態２］
　上記の実施形態では、分配伝動機構５５９により、扱胴３２７、フィーダ３１４、一番スクリュー３８４、二番スクリュー３８７、揺動駆動部３８９の夫々に動力を分配供給するようにしたが、そのうち、少なくとも、扱胴３２７とフィーダ３１４に動力を分配すればよく、他の装置には、分配しない構成でもよい。又、他の装置の少なくともいずれか１つ、あるいは、２つ以上にも分配供給してもよく、扱胴３２７、フィーダ３１４、一番スクリュー３８４、二番スクリュー３８７、揺動駆動部３８９以外の装置に動力を伝達するようにしてもよい。

［第３実施形態の別実施形態３］
　上記の実施形態では、カウンター軸（回転軸５１０）に後処理用回転体としての第２駆動プーリ５７４が備えられ、この後処理用回転体５７４から後処理装置（排ワラ処理装置３１２）に動力を供給する後処理用伝動機構５７５が備えられるようにしたが、このような後処理用伝動機構５７５を備えない構成としてもよい。

［第３実施形態の別実施形態４］
　上記の実施形態では、従動回転体５５７に、入力プーリ５６３と、入力プーリ５６３に対して回転軸心方向両側に振り分けた状態で複数の出力用回転体とが備えられる構成とし、入力プーリ５６３よりも機体外方側に扱胴用の出力回転体としての扱胴用出力プーリ５６４を備え、入力プーリ５６３よりも機体内方側に、フィーダ用の出力回転体であるフィーダ用出力プーリ５６５、処理物搬送用の出力回転体である搬送用出力プーリ５６６が備えられ、フィーダ用の出力回転体であるフィーダ用出力プーリ５６５が、入力プーリ５６３に対して処理物搬送用の出力回転体である搬送用出力プーリ５６６よりも離間する状態、すなわち、最も機体内方側に位置する状態で備えられる構成としたが、この構成に限らず、入力プーリ５６３と出力用回転体である出力プーリ５６４，５６５，５６６の配置は種々変更してもよい。例えば、処理物搬送用の出力回転体である搬送用出力プーリ５６６が最も機体内方側に位置する状態で備えられる構成としてもよく、出力用回転体の配置は上記実施形態の構成に限定されるものではない。

［第３実施形態の別実施形態５］
　上記の実施形態では、エンジン３１０の動力が、機体走行用の伝動機構５５３に伝達されたのち、その機体走行用の伝動機構５５３からカウンター軸（回転軸５１０）に伝達されるように構成したが、エンジン３１０の動力を直接にカウンター軸に伝達する構成としてもよい。

［第３実施形態の別実施形態６］
　上記の実施形態では、コンバインとして、車輪式の走行装置を備えた普通型コンバインを例示したが、これに限らず、クローラ走行装置を備えた普通型コンバインであってもよい。

［第４実施形態］
　以下、本発明の第４実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
［全体構成］
　図５６及び図５７は、本発明に係る収穫機の一例である全稈投入型（普通型）コンバインを示している。図５６が機体全体の右側面を示し、図５７が平面を示している。

　これらの図に示すように、上記の全稈投入型コンバインは、車体フレーム６０１の下側に左右一対の前輪６０２Ｆ，６０２Ｆ（前走行装置に相当する）、及び左右一対の後輪６０２Ｒ，６０２Ｒ（後走行装置に相当する）からなる走行装置６０２を備えている。
　車体フレーム６０１の前部に運転キャビン６１５（運転部に相当する）を備え、その後方側に脱穀装置６０４、及びグレンタンク６０５を夫々備え、最後部に排ワラ処理装置６１６（排ワラ部に相当する）を備えている。さらに、車体フレーム６０１に対して左右方向に沿う横軸心（図示せず）周りで昇降作動する刈取処理装置６１７を前部に備えて自走機体を構成している。
　車体フレーム６０１上の前部で脱穀装置６０４の横側部にエンジン６０３が搭載され、エンジン６０３から離れた後方位置にラジエータ６０７が配設されている。脱穀装置６０４を挟んでエンジン６０３やラジエータ６０７とは反対側に燃料タンク６１４が搭載されている。エンジン６０３の動力は、上記の走行装置６０２の他、脱穀装置６０４、刈取処理装置６１７、及びラジエータ６０７の冷却を行うラジエータ冷却ファン６７０などに対して伝達される。

　走行装置６０２の前輪６０２Ｆには、車体フレーム６０１の前部に装着されたトランスミッション６２０から左右に延出された前輪駆動軸６２４を介して動力が伝達される。つまり、前輪駆動軸６２４から、前輪６０２Ｆの機体内方側に向く面に形成された凹入箇所に入り込む状態で配備された減速ケース６２５、及び減速ケース６２５に支持された前車軸６０２ａを介して前輪６０２Ｆに動力が伝達されるように構成してある。
　これにより前輪６０２Ｆは、前車軸６０２ａを介してエンジン６０３の動力が伝達され、水平横軸心ｘ１Ｄ周りで駆動回転されるように取り付けられたものであり、その左右方向幅及び直径のいずれもが、後輪６０２Ｒよりも大きいタイヤ車輪からなる非操向車輪によって構成してある。

　後輪６０２Ｒは、図５６及び図５７に示すように、車体フレーム６０１の後部で、前後方向軸心（図示せず）周りで左右揺動自在に装着された後輪支持フレーム６１０の左右両端側に設けてある。また、上下揺動軸心ｙ１Ｄ周りで操向操作可能な後車軸６０２ｂを備えた操向車輪によって構成してある。この後輪６０２Ｒは、その左右方向幅及び直径が前輪６０２Ｆよりも小さく設定されたタイヤ車輪で構成され、後車軸６０２ｂの水平横軸心ｘ２Ｄ周りで回動する。

　自走機体の左右両横側部には、グレンタンク６０５よりも下方側で、前輪６０２Ｆと後輪６０２Ｒとの間に位置して機体横側部を覆うように外装カバー６０９（側部カバーに相当する）が設けられている。
　外装カバー６０９は、上端辺付近に設けてある前後方向に沿う揺動支点ｚ１Ｄ周りで起伏揺動可能に支持され、幅広のカバー面６０９Ａが上下方向に沿う閉塞姿勢と、そのカバー面６０９Ａが水平方向に沿う開放姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。

［刈取処理装置］
　図５６及び図５７に示すように、車体フレーム６０１に搭載した脱穀装置６０４の前側で左右方向に沿う横軸心周りで昇降作動する刈取処理装置６１７を設けてある。
　この刈取処理装置６１７は、脱穀装置６０４に対して刈り取られた茎稈などの作物を供給するフィーダ６１７Ａ、植立茎稈などの作物穂先側を掻き込む掻き込みリール６１７Ｂ、株元側を切断する刈取装置６１７Ｃ、及び刈り取った作物を刈幅方向の中央部に寄せ集める横送りオーガ６１７Ｄを備えて、作物を刈り取ってフィーダ６１７Ａに送り込み、脱穀装置６０４に供給するように構成されている。
　フィーダ６１７Ａは、図示はしないが、角筒状のケース内部に前後方向に回動する無端帯状の搬送体が装備されていて、送り込まれた刈取作物を後方上方に向けて搬送するように構成されている。フィーダ６１７Ａによる作物搬送方向は、脱穀装置６０４内における扱胴６４０の扱胴回転軸心ｐ０Ｄ（図５７参照）に沿う前後方向であり、フィーダ６１７Ａ部分の昇降動作に伴って、掻き込みリール６１７Ｂや刈取装置６１７Ｃ及び横送りオーガ６１７Ｄも昇降作動可能に構成してある。

［脱穀装置］
　脱穀装置６０４は、前述したように、車体フレーム６０１上で、扱胴回転軸心ｐ０Ｄが前後方向に沿うように配設されている。この脱穀装置６０４は、前後方向で前輪６０２Ｆと後輪６０２Ｒとの前後方向間隔内に配備され、左右方向でも、左右の前輪６０２Ｆ及び後輪６０２Ｒの間隔幅内に位置する状態で配設されている。
　また、脱穀装置６０４は、その下面が図５６に示すように、非操向車輪である前輪６０２Ｆの前車軸６０２ａよりも少し低く、操向車輪である後輪６０２Ｒの後車軸６０２ｂよりも少し高い位置にある。つまり、非操向車輪である前輪６０２Ｆの前車軸６０２ａ、もしくは操向車輪である後輪６０２Ｒの後車軸６０２ｂと略同じ高さに位置するように配設されている。
　このように配設された脱穀装置６０４は、機体の左右方向での中心線ＣＬＤに対して、脱穀装置６０４の扱胴回転軸心ｐ０Ｄが、左側へ偏倚した状態で配設されている。脱穀装置６０４の左右方向での中心線は、内部に配設されている扱胴６４０の前後方向の扱胴回転軸心ｐ０Ｄと同一の位置に存在しているので、脱穀装置６０４の全体も、機体の左右方向での中心線ＣＬＤに対して左側へ偏倚した状態で配設されている。

　脱穀装置６０４に刈取作物を供給するフィーダ６１７Ａは、脱穀装置６０４と同様に機体の左右方向での中心線ＣＬＤに対して、左側へ偏倚した状態で配設されており、図５７に示すように、機体の左右方向での中心線ＣＬＤに対して右寄りに偏倚したトランスミッション６２０とは平面視で部分的に重複する位置に配設されている。
　排ワラ処理装置６１６は、脱穀装置６０４の後部に一体的に装着されており、脱穀処理後の排ワラを切断して機外へ排出するように構成されている。

　脱穀装置６０４は、機体前後方向に長い矩形箱状に形成され、その前端部に唐箕６４１を備えている（図６３参照）。この唐箕６４１の送風翼を備えた唐箕軸６４１ａが脱穀ケース６０４Ａの右横外側に延出され、その唐箕軸６４１ａの延出箇所に、脱穀装置６０４にエンジン６０３から伝えられる動力を受け入れるための脱穀入力プーリ６４１ｂが装着されている。
　この脱穀装置６０４には、副唐箕は併設されていず、唐箕６４１のみを用いて選別箇所に対する送風を行うように構成されている。

　脱穀装置６０４の内部には、フィーダ６１７Ａ側から送り込まれる刈取作物を脱穀処理するための扱胴６４０が、前後方向の扱胴軸６４０ａ廻りで回転駆動されるように配備されている。この扱胴６４０の他に、唐箕６４１よる送風作用とともに、扱胴６４０で脱穀処理された刈取作物を揺動選別処理する選別処理装置６４２などが配備されている。

［グレンタンク］
　グレンタンク６０５は、図５６及び図５７に示すように、運転キャビン６１５の後方側で、車体フレーム６０１上の右横側部に立設されたタンク支持台６１３と、その左横側部に位置する脱穀装置６０４の上側とにわたって設けられている。
　グレンタンク６０５は、角パイプなどの各種の鋼材を組み付けて格子状に形成した底部枠６５０の上側に、機体左右方向でのほぼ全幅にわたる左右方向幅を有した箱状のタンク本体６５１を搭載してある。
　これらの底部枠６５０とタンク本体６５１とが一体的に連結されて、タンク支持台６１３の上端部に設けた揺動支軸６５２により、前後方向の揺動軸心ｚ２Ｄ周りで揺動可能に支持されている。

　タンク支持台６１３は、図５６及び図５７、及び図６０，６１に示されるように、脱穀装置６０４の右横側方箇所で、前輪６０２Ｆと後輪６０２Ｒとの間で車体フレーム６０１上に配備されている。このタンク支持台６１３は、脱穀装置６０４から遠い側に配設された外支柱６１３Ａと、それよりも脱穀装置６０４に近い側に配設された内支柱６１３Ｂとを備えている。これらの外支柱６１３Ａの下端部と内支柱６１３Ｂの下端部とが車体フレーム６０１に固定され、かつ外支柱６１３Ａと内支柱６１３Ｂとの各上端部が、上部枠６１３Ｃに連結されている。この上部枠６１３Ｃに、グレンタンク６０５の左右方向での一端側に相当する穀粒排出口６０５Ａ側の端部が、前後方向の揺動軸心ｚ２Ｄ回りで起伏揺動可能に連結支持されている。
　そして、タンク支持台６１３の内支柱６１３Ｂとグレンタンク６０５の底部枠６５０との間に、油圧駆動式のダンプシリンダ６５３が介装されている。このダンプシリンダ６５３の伸縮作動により、グレンタンク６０５を、タンク本体６５１の底面が水平又はほぼ水平姿勢となる貯留姿勢と、底面が起立した排出姿勢とに、揺動軸心ｚ２Ｄ回りで起伏揺動させて姿勢変更可能に構成してある。

　タンク支持台６１３を備えた車体フレーム６０１上では、図６０及び図６１に示すように、エンジン６０３の後方側に、タンク支持台６１３の下側空間を利用して機器搭載台６２６と、メンテナンスなどの作業に用い易い作業用空間ｓ１Ｄとが設けられている。
　機器搭載台６２６には、後述するコンプレッサ６０３Ｃが設置されているとともに、そのコンプレッサ６０３Ｃの機体内方側に位置する状態でバルブユニット６２７が設けられ、これらのコンプレッサ６０３Ｃ、及びバルブユニット６２７の後方側に位置させてバッテリ６２８が搭載されている。作業用空間ｓ１Ｄは機器搭載台６２６の後端とラジエータ６０７の前端との間で、車体フレーム６０１の横外側端よりも機体内方側に形成され、地面に立つ作業者が作業用空間ｓ１Ｄに入り込んだ状態で、前方側の機器搭載台６２６上の機器や、後方側のラジエータ６０７周りのメンテナンスを行うことが可能であるように構成されている。
　これらの機器搭載台６２６及び作業用空間ｓ１Ｄは、その外側に位置する外装カバー６０９によって、外装カバー６０９が閉塞姿勢であるときには横外側が覆われ、外装カバー６０９が開放姿勢に切り換えられると横外側が開放される。

［運転キャビン］
　運転キャビン６１５は、図５６，５７、及び図７７に示されるように、車体フレーム６０１上に立設された運転部フレーム６１１に搭載設置されている。
　これによって、運転キャビン６１５は、前輪６０２Ｆの外径の上縁よりも高い位置で、かつ前輪６０２Ｆの後縁よりも前方側の位置で運転部フレーム６１１を介して車体フレーム６０１に支持されている。

　運転キャビン６１５内には、操縦操作用のステアリングハンドル６１５ａや運転座席６１５ｂ等が配備され、ステアリングハンドル６１５ａの操作で後輪６０２Ｒが操向操作されるように構成されている。この運転キャビン６１５内には、図７７に示すように、仮想線で示す運転座席６１５ｂの右横側部と、その右側に存在するサイドパネル７０５との間に、後述する刈取処理装置６１７の刈取部逆転操作具７０６と、ラジエータ冷却ファン６７０のファン逆転操作具７０７とを配設してある。
　刈取部逆転操作具７０６は、操作ロッド７０６ａを備えた連係機構（図示せず）を介して刈取部の正転用クラッチ６１９Ａ及び逆転用クラッチ６１９Ｂに連係され、ファン逆転操作具７０７は操作ワイヤ７０７ａを備えた連係機構（図示せず）を介してラジエータ冷却ファン６７０の後述する操作腕６６２に連係されている。そして、それぞれの操作具７０６，７０７の引き操作に伴って、その引き操作されている間だけ、各別に逆転状態となるように連係されている。

［動力伝達構造］
　次に、エンジン６０３の動力を、脱穀装置６０４やラジエータ冷却ファン６７０等に伝える動力伝達構造について説明する。
　図５７、５９、６２、及び図６３に示すように、エンジン６０３は、クランク軸（図示せず）が機体左右方向に沿う状態で、車体フレーム６０１上の右外側寄り箇所に配設されている。
　エンジン６０３の左右方向での一端側（機体内方側）には、軸線方向が機体左右方向に沿う状態で、フライホイール６０３Ａとともに第１出力部としての出力プーリ６３０（エンジン出力回転体に相当する）が設けられている。つまり、エンジン６０３の出力軸にフライホイール６０３Ａが取り付けられると共に、フライホイール６０３Ａに出力プーリ６３０が取り付けられている。左右方向での他端側（機体外方側）には、第２出力部としての出力軸６３１が突出され、その出力軸６３１に第２出力プーリ６３１ａ、第３出力プーリ６３１ｂ、及び第４出力プーリ６３１ｃが装着されている。

　出力プーリ６３０は、有底の円筒形状に形成されると共に、底部がフライホイール６０３Ａに突合せられた状態でフライホイール６０３Ａに取り付けられている。出力プーリ６３０の内周側における底部に、エンジン６０３の出力軸に対する取付部６３０Ａが備えられている。出力プーリ６３０の３つのプーリ溝６３０Ｂは、取付部６３０Ａの外周箇所に形成されている。

［第１出力部による動力伝達構造］
　図５８及び図５９に示すように、エンジン６０３の第１出力部である出力プーリ６３０から駆動力を伝達されるトランスミッション６２０は、エンジン６０３の前方側で、エンジン６０３よりも機体内方側（左右方向での左側）に配置されている。
　このトランスミッション６２０には、機体外方側（左右方向での右側）に突出する入力軸６２１を備えてあり、この入力軸６２１に入力回転体として入出力プーリ６２２を一体回動するように装着してある。この入出力プーリ６２２と出力プーリ６３０との間に３本の第１伝動ベルト６３２Ａが巻回され、出力プーリ６３０からトランスミッション６２０にエンジン動力が入力される。

　この入出力プーリ６２２には、第１伝動ベルト６３２Ａの３本のＶベルトを卷回するための３箇所のベルト溝を備えた第１回転体部分６２２Ａと、後述する第２伝動ベルト６３２Ｂを卷回するための２箇所のベルト溝を備えた第２回転体部分６２２Ｂとが備えられている。
　第１回転体部分６２２Ａと第２回転体部分６２２Ｂとは一体成型された多連プーリで構成され、第１回転体部分６２２Ａ側が大径でエンジン６０３が存在する機体外側寄りに位置し、第２回転体部分６２２Ｂが小径で、脱穀装置６０４が存在する機体内方側寄りに位置している。
　トランスミッション６２０には、入出力プーリ６２２が設けられた側とは反対側に、入力軸６２１から入力される動力を変速して走行装置６０２に伝えるための無段変速装置６２３が取り付けてある。この無段変速装置６２３で変速された動力が、トランスミッション６２０の内部に備えた図示しない変速機構を経て前輪駆動軸６２４から出力されるように構成されている。

　入出力プーリ６２２の第２回転体部分６２２Ｂには、無端回動帯の一例である２本のＶベルトの組で構成される第２伝動ベルト６３２Ｂが卷回されている。
　この第２伝動ベルト６３２Ｂは、脱穀装置６０４の唐箕軸６４１ａに備えた脱穀入力プーリ６４１ｂに対して卷回され、第２回転体部分６２２Ｂから第２伝動ベルト６３２Ｂを介してエンジン動力が脱穀装置６０４に入力されるように構成してある。
　唐箕軸６４１ａ側の脱穀入力プーリ６４１ｂは、第２回転体部分６２２Ｂ、及び出力プーリ６３０よりも大径に形成されており、エンジン回転数が減速されて唐箕軸６４１ａに伝達されるように構成されている。

　脱穀装置６０４は、図５７乃至図５９に示すように、トランスミッション６２０よりも後方側で車体フレーム６０１に搭載されており、唐箕軸６４１ａは、前後方向でトランスミッション６２０の入力軸６２１よりもエンジン６０３の出力プーリ６３０及び出力軸６３１の軸心ｘ３Ｄに近い位置にある。具体的には、図５８に示すように、エンジン６０３の出力プーリ６３０及び出力軸６３１の軸心ｘ３Ｄ方向視で、唐箕軸６４１ａが出力プーリ６３０と重複する位置にある。
　したがって、出力プーリ６３０と脱穀入力プーリ６４１ｂとが互いに重複し、第１伝動ベルト６３２Ａと第２伝動ベルト６３２Ｂも互いに重複する位置関係に配備されている。

　また、平面視では、図５７及び図５９に示すように、出力プーリ６３０や入出力プーリ６２２や脱穀入力プーリ６４１ｂも、エンジン６０３とトランスミッション６２０及び脱穀装置６０４との間に配設されている。入出力プーリ６２２は、第１回転体部分６２２Ａがエンジン６０３側に近く、第２回転体部分６２２Ｂがトランスミッション６２０及び脱穀装置６０４に近い側に配設されている。
　したがって、当然のことながら第１伝動ベルト６３２Ａと第２伝動ベルト６３２Ｂも、エンジン６０３と、トランスミッション６２０及び脱穀装置６０４との間に配設された状態となる。

　エンジン６０３の出力プーリ６３０とトランスミッション６２０の第１回転体部分６２２Ａとにわたって巻回される第１伝動ベルト６３２Ａには、第１テンション輪６３５が作用するように設けてある。
　また、トランスミッション６２０の第２回転体部分６２２Ｂと脱穀装置６０４の脱穀入力プーリ６４１ｂとにわたって巻回される第２伝動ベルト６３２Ｂには、第２テンション輪６３６が作用するように設けられている。

　第１テンション輪６３５は、図５８及び図５９に示すように、その支軸６３５ａの一端側が一方向に長く延長され、その延長部分が、揺動自在な第１アーム部材６３５ｂの遊端側と、付勢機構６３７の遊端側とで支持されている。
　第１アーム部材６３５ｂは、図５８に示すように、車体フレーム６０１のうちで、運転部フレーム６１１の取付台となるようにトランスミッション６２０よりも高い位置にまで持ち上げられたＬ字状の支持台フレーム６１２に基端側を枢支されている。付勢機構６３７の基端側はエンジン６０３に近い側で車体フレーム６０１に固定されたブラケット６０１ａに枢支されている。
　付勢機構６３７には、支軸６３５ａと、付勢機構６３７の基端側の枢支箇所との間の距離を短縮する方向に付勢する圧縮スプリング６３７ａが装備されている。この圧縮スプリング６３７ａの付勢力で第１伝動ベルト６３２Ａを常時緊張側に付勢するように、第１テンション輪６３５に付勢力が付与される構成となっている。

　第２テンション輪６３６は、その支軸６３６ａが、トランスミッション６２０の上部に基端側を枢支されて揺動自在に構成された第２アーム部材６３６ｂに取り付けられている。この第２アーム部材６３６ｂの長さ方向の途中位置には、コイルスプリングを備えた操作部材６３６ｃが連結されており、その操作部材６３６ｃに連結された揺動操作可能な操作レバー等の、運転キャビン６１５内に備えた図示しない脱穀クラッチ操作具により、脱穀クラッチ入り状態と切り状態とに切換可能に構成されている。
　その結果、第２テンション輪６３６を持ち上げ側に揺動して第２伝動ベルト６３２Ｂが緊張される側に切り換えることによって脱穀装置６０４にエンジン動力が伝達される脱穀クラッチ入り状態となる。第２テンション輪６３６の持ち上げを解除して第２伝動ベルト６３２Ｂが弛緩する側に切り換えることによって脱穀装置６０４に対するエンジン動力の伝達を断つ脱穀クラッチ切り状態となる。

　図６３に示すように、唐箕軸６４１ａに入力されたエンジン動力は、扱胴６４０を駆動するための扱胴側駆動機構６４３と、フィーダ６１７Ａを含む刈取処理装置６１７に動力を伝達する刈取側駆動機構６４４と、選別処理装置６４２等を駆動するための選別側駆動機構６４５に分配供給されるように構成されている。これらの扱胴側駆動機構６４３、刈取側駆動機構６４４、選別側駆動機構６４５の夫々は伝動ベルトを含んでいる。また、選別側駆動機構６４５の伝動下手側から伝動ベルト６４６を介して排ワラ処理装置６１６にも動力を伝達するように構成されている。

　排ワラ処理装置６１６は、脱穀装置６０４の後方に備えられている。エンジン６０３側からの動力伝達を受ける駆動プーリ６４６Ｂから排ワラ処理装置６１６の入力回転体としての従動プーリ６４６Ａへ伝動ベルト６４６により動力を伝達する伝達機構が備えられている。伝動ベルト６４６は、複数本（例えば、２本）のベルトで構成されている。このように、伝動ベルト６４６が複数本のベルトで構成されているため、伝達機構のテンション力が、複数本のベルトに分散され、伝動ベルト６４６の耐用期間を長くすることができる。そして、増速率を上げるために、従動プーリ６４６Ａを可能な限り小径に設定しても、伝動ベルト６４６が複数本のベルトで構成されているため、従動プーリ６４６Ａと伝動ベルト６４６との間にスリップが発生しにくいものとなる。このため、従動プーリ６４６Ａを必要以上に大径にしなくても、排ワラ処理装置６１６への動力伝達を円滑に行うことができる。尚、伝動ベルトは、３本以上のベルトで構成されていてもよい。

　選別側駆動機構６４５は、一番スクリュー６４２ａと揚送装置６４７とに動力を伝える伝動ベルト６４５ａと、二番スクリュー６４２ｂと二番還元装置６４８とに動力を伝える伝動ベルト６４５ｂと、揺動選別板６４２ｃに動力を伝える伝動ベルト６４５ｃとを備えている。

　唐箕軸６４１ａに入力されたエンジン動力のうち、刈取側駆動機構６４４に分配供給された動力は、伝動ベルトを介して刈取処理装置６１７の刈取駆動軸６１８の正転用プーリ６１８ａに対して入力されている。また、扱胴側駆動機構６４３に分配供給された動力は、扱胴駆動ケース６４９に内装された逆転機構６４９ａを介して、逆転出力プーリ６４９ｂから逆転用動力として出力される。この逆転出力プーリ６４９ｂと刈取駆動軸６１８の逆転用プーリ６１８ｂとに掛け渡された伝動ベルトを介して刈取駆動軸６１８に逆転動力が伝動されるように構成してある。
　図６３に示すように、正転用プーリ６１８ａに動力を伝える伝動ベルトを緊張状態と弛緩状態とに操作可能な正転用クラッチ６１９Ａと、逆転用プーリ６１８ｂに動力を伝える伝動ベルトを緊張状態と弛緩状態とに操作可能な逆転用クラッチ６１９Ｂとが備えられている。

　この正転用クラッチ６１９Ａと逆転用クラッチ６１９Ｂとは、伝動ベルトを緊張させた状態で動力を伝達し、弛緩させた状態では動力が伝達されないように構成され、かつ一方が緊張状態であるときには他方が弛緩状態となるように、背反的に緊張状態と弛緩状態とが切り換えられるように構成されている。
　そして、正転用クラッチ６１９Ａが伝動ベルトを緊張させた状態にあり、逆転用クラッチ６１９Ｂが弛緩状態であるように、常時は正転駆動状態であるように付勢されている。
　この状態から、後述する運転キャビン６１５内の刈取部逆転操作具７０６を引き操作することで、逆転用クラッチ６１９Ｂが緊張され、正転用クラッチ６１９Ａが弛緩されて逆転駆動状態に切換操作される。刈取部逆転操作具７０６の引き操作を解除すると、元の正転駆動状態に復元する。
　上記の扱胴駆動ケース６４９に内装された逆転機構６４９ａ、及び逆転出力プーリ６４９ｂと刈取駆動軸６１８の逆転用プーリ６１８ｂとに掛け渡された伝動ベルト、及び逆転用クラッチ６１９Ｂが、作業部としての刈取処理装置６１７の刈取部駆動系を逆転させる第１逆転機構を構成している。

［第２出力部による動力伝達構造］
　エンジン６０３の他端側（機体外方側）には、第２出力部としての出力軸６３１が突出されており、この第２出力部における動力伝達は次のようにして行われる。
　図５８、及び図６０乃至図６３に示すように、出力軸６３１には、エンジン６０３に近い側から順に、第２出力プーリ６３１ａ、第３出力プーリ６３１ｂ、及び第４出力プーリ６３１ｃが一体回動するように装着されている。

　エンジン６０３の他端側（機体外方側）には、第２出力部としての出力軸６３１の軸心ｘ３Ｄと平行な左右方向の軸心周りで回動するように、オルタネータ６０３Ｂを駆動するための発電用駆動プーリ６３３と、後述する送風機構７００の送風ファン７０２を駆動するための送風用駆動プーリ６３４とが設けられている。
　そして、図６１に示すように、第２出力プーリ６３１ａ（送風機構７００の送風ファン７０２への出力回転体に相当する）と、発電用駆動プーリ６３３と、送風用駆動プーリ６３４とにわたって、無端回動帯の一例である１本のＶベルトで構成された第３伝動ベルト６３８Ａが巻回され、第２出力プーリ６３１ａの回転に伴ってオルタネータ６０３Ｂと送風ファン７０２とが回転駆動されるように構成されている。

　出力軸６３１に装着された第３出力プーリ６３１ｂ、及び第４出力プーリ６３１ｃのうち、エンジン６０３から最も遠い側の第４出力プーリ６３１ｃは、第３出力プーリ６３１ｂよりも小径に形成されている。
　そして、この第４出力プーリ６３１ｃには、エンジン６０３の後方側に備えられたコンプレッサ６０３Ｃに対して駆動力を伝達するように、第５伝動ベルト６３８Ｃが巻回されている。

　図６３に示すように、エンジン６０３の出力軸に、ラジエータ冷却ファン６７０に動力を伝達するファン用プーリとしての第３出力プーリ６３１ｂと、エアコン装置のコンプレッサ６０３Ｃに動力を伝達するコンプレッサ用プーリとしての第４出力プーリ６３１ｃとが備えられている。第３出力プーリ６３１ｂは、第４出力プーリ６３１ｃよりも、エンジン６０３から近い側に位置している。

［ラジエータ冷却ファンへの伝動］
　ラジエータ冷却ファン６７０への動力伝達は、図６０、図６１、及び図６３に示すように、出力軸６３１に装着された第３出力プーリ６３１ｂに巻回された第４伝動ベルト６３８Ｂと、エンジン６０３から離れた後方の上部に設けてある中継軸６５５と、後述する正逆転選択機構６０６とを介して、エンジン６０３の動力がラジエータ冷却ファン６７０の駆動力として取り出されるように構成してある。

　中継軸６５５は、機体外方側の端部（左右方向では右側の端部）に中継入力プーリ６５５ａ（駆動回転体に相当する）を備え、機体内方側の端部（左右方向では左側の端部）に一対の中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃ（駆動回転体に相当する）を備えている。この中継入力プーリ６５５ａと第３出力プーリ６３１ｂとにわたって第４伝動ベルト６３８Ｂ（無端回動体に相当する）が巻回され、出力軸６３１の回転動力が中継軸６５５に伝達されるように構成されている。
　このように、中継軸６５５を用いることにより、前方に位置するエンジン６０３と後方に位置するラジエータ６０７との間に、第４伝動ベルト６３８Ｂが、機器搭載台６２６や作業用空間ｓ１Ｄの上部を迂回する状態で配置され、作業用空間ｓ１Ｄをメンテナンスなどの作業に用い易い空間として利用できるようにしている。

　第４伝動ベルト６３８Ｂには、その弛み側のベルト部分に弛み取り用のテンション機構６５４が設けられている。このテンション機構６５４は、タンク支持台６１３の外支柱６１３Ａの一部に設けた支軸６５４ａに回動自在に枢支された固定側プーリ６５４ｂを備えている。そして、その固定側プーリ６５４ｂの支軸６５４ａ周りで揺動自在な揺動アーム６５４ｃを備え、その揺動アーム６５４ｃの遊端側に取り付けた支軸６５４ｄ周りで回動する遊動側プーリ６５４ｅを備えている。さらに、揺動アーム６５４ｃを弛み取り側（図６０中における右上方側）へ引っ張り付勢するコイルスプリング６５４ｆを備えている。
　これらの固定側プーリ６５４ｂ、揺動アーム６５４ｃ、遊動側プーリ６５４ｅ、コイルスプリング６５４ｆを備えることによって、第４伝動ベルト６３８Ｂに対して、常時張り側へ付勢する弛み取り用のテンション機構６５４が構成されている。

　つまり、テンション機構６５４には、第４伝動ベルト６３８Ｂにテンション作用する回転体としての遊動側プーリ６５４ｅ及びこの遊動側プーリ６５４ｅを支持する揺動アーム６５４ｃを備えている。遊動側プーリ６５４ｅは、第４伝動ベルト６３８Ｂの回転方向において揺動アーム６５４ｃの揺動軸心での支軸６５４ａよりも下手側に位置する状態で設けられている。

　中継軸６５５側の一対の中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃと、ラジエータ冷却ファン６７０側のファン入力プーリ６７２（入力回転体に相当する）とにわたって、正転伝動ベルト６５６（正転系動力伝達機構の無端回動帯に相当する）と、逆転伝動ベルト６５７（逆転系動力伝達機構の無端回動帯に相当する）とが掛張されている。
　この正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とのうち、正転伝動ベルト６５６は、その内周面がファン入力プーリ６７２の外周面に接触するように巻回させてあり、逆転伝動ベルト６５７は、その外周面がファン入力プーリ６７２の外周面に接触するように巻回させてある。
　このように配設された正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とは、一対のテンション輪体６６３，６６４とともに正逆転選択機構６０６を構成している。正逆転選択機構６０６については後述する。

　このように配設された正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とは、一対のテンション輪体６６３，６６４とともに正逆転選択機構６０６（第２逆転機構に相当する）を構成している。一対のテンション輪体６６３，６６４は、正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７との内の、何れか一方を緊張状態にして他方を弛み状態とするように、択一的に切換操作可能に構成されている。
　この一対のテンション輪体６６３，６６４は、運転キャビン６１５内に備えたファン逆転操作具７０７に操作ワイヤ７０７ａを介して連係されている。そしてファン逆転操作具７０７の操作で、正転伝動ベルト６５６を緊張させた正転伝動状態と、逆転伝動ベルト６５７を緊張させた逆転伝動状態とに切換可能に構成されている。

［送風機構］
　送風機構７００は次のように構成されている。
　図５６、図６０、及び図６２に示すように、自走機体の両横側部に外装カバー６０９が設けられている。この外装カバー６０９のうち、機体の右横側部に設けられた外装カバー６０９について説明する。
　この右側の外装カバー６０９は、脱穀装置６０４、及びエンジン６０３の横外側に位置するように配設されたものであるが、前後向きの揺動軸心ｚ１Ｄ周りで揺動開閉自在に構成された上部カバー部６９０と、閉塞姿勢にある上部カバー部６９０の下縁よりも下方側で、脱穀装置６０４、及びエンジン６０３の横外側に位置するように配設された下部カバー部６９１とを備えている。
　下部カバー部６９１は、上部カバー部６９０のように揺動軸心ｚ１Ｄ周りで揺動開閉されるものではないが、エンジン６０３の下部側を覆うように、グレンタンク６０５を載置支持するために備えられたタンク支持台６１３に対して、適宜係合金具を介して、脱着可能に構成されている。
　したがって、タンク支持台６１３に対して下部カバー部６９１を装着して機体の右横側部を覆う閉塞姿勢と、タンク支持台６１３から取り外した開放姿勢とに、姿勢を変更することができる。

　上部カバー部６９０の前部下方には、図６２に示すように多数の通気孔７０１ａによって構成された給気部７０１が形成されている。通気孔７０１ａは、上部カバー部６９０の外側から機体内方側への、塵埃の入り込みを制限しながら通気が可能であるように孔の大きさ等を設定されたものであり、給気部７０１は、その通気孔７０１ａの形成箇所が、送風機構７００の送風ファン７０２の回転範囲に対向する位置で、送風ファン７０２の回転範囲とほぼ同程度の面積を有したものである。
　そして、給気部７０１が形成された箇所の上部カバー部６９０の機体内方側の面には、送風ファン７０２の回転半径よりも少し外側に位置するように、ファンシュラウド７０３が設けられている。
　このファンシュラウド７０３は、送風ファン７０２の上半側を上方側から覆うように、送風ファン７０２の回転軌跡に沿う部分円弧状に形成され、送風ファン７０２のほぼ半周を覆う範囲に設けられている。

　上記の送風機構７００は、給気部７０１と、送風ファン７０２と、ファンシュラウド７０３とを組み合わせて構成されたものであり、この送風機構７００によって、外装カバー６０９の存在に関わらず、機外から外気を吸引して、エンジン６０３側へ送風することができる。
　これによって、エンジン６０３周りに堆積しがちな細かな塵埃を吹き飛ばすことが可能となり、エンジン６０３周りに堆積する塵埃を除去するためのメンテナンス頻度を少なくし易い。
　また、給気部７０１とファンシュラウド７０３とが上部カバー部６９０に設けられているので、エンジン６０３周りのメンテナンスを行う際に、上部カバー部６９０を開放姿勢に姿勢変更するだけで、給気部７０１やファンシュラウド７０３をエンジン６０３周りから離れた位置に移動させられる。したがって、エンジン６０３周りを広く開放するとともに、給気部７０１やファンシュラウド７０３を脱着する手数が省ける点でも有利である。

［ラジエータの吸気ケース］
　自走機体の後部に配備されたラジエータ６０７に対して、その機体内方側にラジエータ冷却ファン６７０が配備され、かつ、機体外方側に吸気ケース６０８が配設されている。このラジエータ６０７は、自走機体の右側方寄り箇所に配設されており、ファンシュラウド６７０ａ付きのラジエータ冷却ファン６７０が配備された側とは反対側の外向きの通気面６０７ａに対して、吸気ケース６０８側から外気が導入されるように構成されている。ラジエータ６０７の下部には冷却水を排出する際に用いられる排水ドレン管６０７ｂが設けられている。
　吸気ケース６０８は、ラジエータ６０７の機体外方側に対向するように配備された下部ケース部６０８Ａと、その上方側に位置するように配備された上部ケース部６０８Ｂとを組み合わせて構成されている。

　図６４乃至図６７に示すように、下部ケース部６０８Ａは、ラジエータ６０７の外向きの通気面６０７ａに対向する側の面に相当する部分（便宜上、内側開放面と称する）と、それとは反対側の面に相当する部分（便宜上、外側開放面と称する）とが開放されて開口部分となっている。そして、内外両側の開口部分の周囲は矩形のラジエータ６０７の外周縁に沿う四面で構成される周面を有して、ほぼ矩形の横向きの短筒状に形成されてケース本体６８０を構成している。
　そして、ケース本体６８０の外側開放面を開閉可能であるように、閉塞姿勢で外側開放面に対向するカバー蓋部材６８１を備え、ケース本体６８０とカバー蓋部材６８１との組み合わせによって下部ケース部６０８Ａが構成されている。
　カバー蓋部材６８１は、ケース本体６８０の外側開放面の全面と、上部ケース部６０８Ｂの下部とを覆うように扁平状に形成された無孔の板面６８１ａと、その周辺で機体内方側へ折り返された内向き端縁部分６８１ｂとを備えている。このカバー蓋部材６８１が、ケース本体６８０の周面のうちの前端側の側面６８０ａに取り付けられたヒンジ６８２によって、上下方向の軸心ｙ２Ｄ周りで揺動開閉可能に構成されている。
　カバー蓋部材６８１の後端側の内向き端縁部分６８１ｂと、ケース本体６８０の周面のうちの後端側の側面６８０ｂ部分とは、バックル式の止め金具６８３で連結固定されている。

　ケース本体６８０の四つの周面のうちの上面６８０ｃ部分には、上部ケース部６０８Ｂが搭載されている。
　上部ケース部６０８Ｂは、全体がほぼ矩形箱状であるが、ラジエータ冷却ファン６７０の軸心方向に沿う方向視と、ラジエータ冷却ファン６７０の軸心方向に交差する方向視とで、その形状が異なっている。つまり、図６４に示すように、側面視（ラジエータ冷却ファン６７０の軸心に沿う方向視）では、全体が下部ケース部６０８Ａよりも幅狭に形成されている。さらに、下部側よりも上部側が幅狭となる縦長で、後面側が後下がりに傾斜した変形台形状に形成されている。
　また、後面視（ラジエータ冷却ファン６７０の軸心に交差する方向視）では、図６５に示すように、下部側が下部ケース部６０８Ａの左右方向幅と同程度の幅に形成され、かつ上部側が下部側に対して機体内方側へ張り出した幅広形状に形成され、下部ケース部６０８Ａの左右方向幅よりも大きな左右方向幅を有している。

　上部ケース部６０８Ｂには、その前後左右の各面に外気導入用の吸気口６８４が形成されている。
　つまり、ラジエータ６０７に隣接して配置される吸気ケース６０８において、水平方向でラジエータ６０７が存在する側とは反対側における上部ケース部６０８Ｂの横外側面６０８Ｂａに、パンチングメタル、又は網目で構成される通気用の吸気口６８４が形成されている。同様の吸気口６８４は、横外側面６０８Ｂａとは反対側で、水平方向でラジエータ６０７が存在する側と同じ側であるところの、機体内方側に向く横内側面６０８Ｂｂにも形成されている。
　また、横外側面６０８Ｂａと横内側面６０８Ｂｂとの間に位置するところの、機体前方側に向く前側面６０８Ｂｃと、機体後方側へ向く後側面６０８Ｂｄとのそれぞれにも、同様にパンチングメタル、又は網目で構成される通気用の吸気口６８４が形成されている。

　上部ケース部６０８Ｂは、自走機体の後端部に設けた排ワラ処理装置６１６よりも高い位置に配設されている。また、上部ケース部６０８Ｂのうちで、下部付近に相当する箇所は、無孔の筒状部分６８５に形成され、吸気口６８４は、その無孔の筒状部分６８５よりも高い位置に形成されている。そして、吸気口６８４の下端縁は脱穀装置６０４の後部側に設けられた後部カバー６０４Ｂの上端部、及び下部ケース部６０８Ａのカバー蓋部材６８１の上端縁と同程度の高さに設定されている。この上部ケース部６０８Ｂの上端部の高さは、その前方側に存在するグレンタンク６０５の非傾動状態における上端縁の高さと同程度以下に設定されている。

　このように構成された下部ケース部６０８Ａと上部ケース部６０８Ｂとの対向箇所、つまり、ケース本体６８０の四つの周面のうちの上面６８０ｃと上部ケース部６０８Ｂの下面との対向箇所には、ぞれぞれに、ほぼ同一の矩形状でほぼ同一寸法の通気用開口６８６が形成されている。
　図６４乃至図６７に示されるように、通気用開口６８６の周辺部では、上部ケース部６０８Ｂの横外側面６０８Ｂａの下端部外側に付設した断面Ｌ字状の取付ブラケット６８７が筒状部分６８５の横外側に溶接固定されている。この取付ブラケット６８７の下向き面側に形成された連結孔と対向する固定ナット付きの連結孔６８７ａがケース本体６８０の上面６８０ｃの右横外側端部に形成され、連結ボルト６８７ｂで連結固定可能に構成されている。
　通気用開口６８６の後方側では、上部ケース部６０８Ｂの後側面６０８Ｂｄの下端部の内側に対向するように断面Ｌ字状の起立突片６８８がケース本体６８０の上面６８０ｃに溶接固定されていて、その起立突片６８８に形成された連結孔と対向する固定ナット付きの連結孔６８８ａが後側面６０８Ｂｄの筒状部分６８５に形成され、連結ボルト６８８ｂで連結固定可能に構成されている。
　したがって、上部ケース部６０８Ｂの後側面６０８Ｂｄの下端部内面を起立突片６８８の外側に当てつけて後側面６０８Ｂｄの連結孔６８８ａに対向させ、横外側面６０８Ｂａの下端部外側の取付ブラケット６８７を、ケース本体６８０の上面６８０ｃの連結孔６８７ａに対向するように載置して、連結ボルト６８７ｂ，６８８ｂで連結することにより、上部ケース部６０８Ｂを下部ケース部６０８Ａの上側に立設させた状態で固定することができる。

　上部ケース部６０８Ｂの前側面６０８Ｂｃには、グレンタンク６０５の揺動軸心ｚ２Ｄを備える揺動支軸６５２を支承する支持部材６０５Ｂに対して連結固定可能な連結ブラケット６８９が、筒状部分６８５の外側から前向きに連設してある。この連結ブラケット６８９を支持部材６０５Ｂに連結することで、上部ケース部６０８Ｂの上下方向での途中箇所を連結固定することができ、安定良く支持し易い。

　下部ケース部６０８Ａのケース本体６８０のうち、底面６８０ｄには、その底面６８０ｄの一部を開放するように開口６８０ｅが設けてあり、その開口６８０ｅを閉塞するための開閉可能な蓋体６８０ｆも設けてある。これにより、下部ケース部６０８Ａのケース本体６８０の内部にワラ屑や塵埃が堆積するなどのメンテナンスの必要が生じた場合、カバー蓋部材６８１を開放することにより、ケース本体６８０の内部に身を乗り出して蓋体６８０ｆを開放し、ケース本体６８０の内部のワラ屑や塵埃を落下除去するなどの作業を簡便に行い易い。

　吸気ケース６０８は、下部ケース部６０８Ａの前端側下部が、タンク支持台６１３の後部側の外支柱６１３Ａから後方向きに延出された支持ブラケット６１３Ａａに支持されている。下部ケース部６０８Ａの後部側下部は、車体フレーム６０１後端部で後輪６０２Ｒを支持するための後輪支持フレーム６１０から立設されているケース支持脚６１０ａに支持されている。このケース支持脚６１０ａには、ラジエータ６０７の下部も連結固定されている（図６５参照）。
　また、下部ケース部６０８Ａの上部側は、タンク支持台６１３の上部枠６１３Ｃに取り付けられ、下部ケース部６０８Ａとラジエータ６０７とが、通気面６０７ａの周辺にシール材６０７ｃを介装させた状態で互いに連結されている。

［正逆転選択機構］
　ラジエータ６０７を冷却するためのラジエータ冷却ファン６７０の伝動系には、次のように構成された正逆転選択機構６０６が介在されている。
　正逆転選択機構６０６は、図７１乃至図７３に示すように、正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とが巻回されるファン入力プーリ６７２に対して、正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とのうちの何れか一方の動力が伝達され、他方の動力が伝達されないように伝動状態を選択する。このように、正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７とのうちの何れか一方の動力を伝達することによって、ファン入力プーリ６７２の回転方向を正転方向と逆転方向との何れかに切り換えるためのものである。
　ファン入力プーリ６７２の正転方向とは、ラジエータ冷却ファン６７０による送風方向が機体横外方側から内方側へ向けられ、ラジエータ６０７に対してラジエータ冷却ファン６７０による吸引作用が働く方向である。逆転方向とはその逆方向へラジエータ冷却ファン６７０による送風方向が向けられる方向である。この逆転方向では、ラジエータ冷却ファン６７０による送風方向が機体内方側から外方側へ向けられ、ラジエータ６０７の機体横外側に存在する通気面６０７ａに付着した塵埃を外側へ吹き飛ばすことが可能となる。

　図６４乃至図７０に示すように、ラジエータ６０７よりも機体内方側に設置されるファン入力プーリ６７２は、車体フレーム６０１上に立設したファン取付台６７４に支持されている。
　ファン取付台６７４は、車体フレーム６０１の後端部に備えた後輪支持フレーム６１０の機体内方側の側面に沿って取り付けられた支柱６７４Ａと、その支柱６７４Ａの上端部に設けられた平板状の座板６７４Ｂとを備えている。その座板６７４Ｂの上面側に対して搭載される基板６７５と、基板６７５の上側で前後方向に沿って配設された角筒状部材６７６と、角筒状部材６７６の上面側で板面を前後方向に沿わせて起立する取付板６７７とが溶接固定されている。座板６７４Ｂと基板６７５とは板面同士を当接させて連結ボルトで着脱可能に連結固定されている。

　取付板６７７には、図６８乃至図７３に示すように、取付板６７７の板面を貫通する状態で、ファン入力プーリ６７２を枢支するための支軸６７１が固定されている。つまり、支軸６７１には、取付板６７７と対向する鍔状の当接面を備えた連結板６７３が溶接固定されていて、この連結板６７３を当てつけた状態で、取付板６７７にボルト連結してある。
　取付板６７７にボルト連結された支軸６７１には、取付板６７７の機体外方側に突出する部位に揺動板６６０が装着されている。この揺動板６６０は、支軸６７１の軸心ｐ２Ｄから離れる２方向に延出された腕部分６６０Ａ，６６０Ｂを備えている。一方の腕部分６６０Ａには、正転伝動ベルト６５６に作用する第１テンション輪体６６３の支軸６６３ａが設けられ、他方の腕部分６６０Ｂには、逆転伝動ベルト６５７に作用する第２テンション輪体６６４の支軸６６４ａが設けられている。
　そして、一方の腕部分６６０Ａには、揺動板６６０を支軸６７１の軸心ｐ２Ｄ回りで揺動操作するための操作腕６６２が連結固定されている。

　揺動板６６０には、取付板６７７側へ向けて突出する連係ピン６６１が突出形成され、取付板６７７側には、その連係ピン６６１の頭部が嵌り込み可能で、かつ、支軸６７１の軸心ｐ２Ｄ回りにおける連係ピン６６１の円弧軌跡に沿う所定範囲で長孔６７７ａが形成されている。
　したがって、揺動板６６０の連係ピン６６１が取付板６７７の長孔６７７ａを貫通した状態に嵌り込ませると、操作腕６６２の揺動操作にともなって揺動板６６０を長孔６７７ａの所定範囲内で支軸６７１の軸心ｐ２Ｄ回りに揺動操作することができる。

　図６３に示されているように、揺動板６６０のうち、第１テンション輪体６６３が装着された腕部分６６０Ａは、第２テンション輪体６６４が装着された腕部分６６０Ｂよりも、取付板６７７から離れて機体外方側に位置している。
　また、この第１テンション輪体６６３が装着された腕部分６６０Ａには、図７０乃至図７３に示すように、正転伝動ベルト６５６を緊張させる側（図６２における時計回り方向）に回動付勢するコイルスプリング６６６（付勢機構に相当する）を係止するための係止片６６６ａが設けられている。コイルスプリング６６６の他端側は、ファン取付台６７４の支柱６７４Ａに連結されており、揺動板６６０に常時正転伝動ベルト６５６を緊張させる側への付勢力が作用するように張設してある。

　逆転伝動ベルト６５７は、第２テンション輪体６６４の他に、第３テンション輪体６６５にも巻回するように設けられている。
　第３テンション輪体６６５は、取付板６７７に設けた支軸６６５ａに枢支されており、操作腕６６２の揺動操作によって位置変更されるものではなく、取付板６７７上で位置固定されて設けられたものである。
　第２テンション輪体６６４と第３テンション輪体６６５とは、図７１及び図７２に示すように、駆動回転体である中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃの軸心ｐ１Ｄと、入力回転体であるファン入力プーリ６７２の回動中心となる支軸６７１の軸心ｐ２Ｄとを結ぶ仮想線分Ｌ１Ｄの両側に振り分けられた状態に配設されている。

　正転伝動ベルト６５６は、駆動回転体である中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃのうち、機体外方側の中継出力プーリ６５５ｂと、ファン入力プーリ６７２と、第１テンション輪体６６３とにわたって巻回されている。これらの中継出力プーリ６５５ｂ、ファン入力プーリ６７２、及び第１テンション輪体６６３は、何れもが正転伝動ベルト６５６の内周側に接するように配設されている。
　したがって、図７１に示すように、操作腕６６２が実線で示す「正転」位置に操作されると、揺動板６６０が時計回りに揺動して、正転伝動ベルト６５６を緊張させる側へ第１テンション輪体６６３を移動させる。この第１テンション輪体６６３の位置は、コイルスプリング６６６の付勢力が作用することによって、操作腕６６２に対する操作が解除されても、正転伝動状態であるように維持される。
　このとき、第２テンション輪体６６４を支持する揺動板６６０の腕部分６６０Ｂは、逆転伝動ベルト６５７を弛める側に揺動（時計回りに揺動）していて、逆転伝動ベルト６５７による動力伝達が行われない状態となっている。

　逆転伝動ベルト６５７は、駆動回転体である中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃのうち、機体内方側の中継出力プーリ６５５ｃと、ファン入力プーリ６７２と、第２テンション輪体６６４と、第３テンション輪体６６５とにわたって巻回されている。
　これらのうち、中継出力プーリ６５５ｃと、第２テンション輪体６６４、及び第３テンション輪体６６５は逆転伝動ベルト６５７の内周側に接し、ファン入力プーリ６７２は逆転伝動ベルト６５７の外周側に接するように、逆転伝動ベルト６５７が巻回されている。
　したがって、図７２に示すように、操作腕６６２を「逆転」位置に操作すると、コイルスプリング６６６の付勢力に抗して揺動板６６０が反時計回りに揺動して、逆転伝動ベルト６５７を緊張させる側へ第２テンション輪体６６４を移動させる。この状態で緊張された逆転伝動ベルト６５７が逆転伝動状態となる。
　このとき、第１テンション輪体６６３を支持する揺動板６６０の腕部分６６０Ａは、正転伝動ベルト６５６を弛める側に揺動（反時計回りに揺動）していて、正転伝動ベルト６５６による動力伝達が行われない状態となっている。

　上記のように、中継出力プーリ６５５ｂ、ファン入力プーリ６７２、第１テンション輪体６６３、及び正転伝動ベルト６５６を備えて正転系動力伝達機構が構成され、中継出力プーリ６５５ｃ、ファン入力プーリ６７２、第２テンション輪体６６４、第３テンション輪体６６５、及び逆転伝動ベルト６５７を備えて逆転系動力伝達機構が構成されている。
　正逆転選択機構６０６は、正転系動力伝達機構の正転伝動ベルト６５６と、逆転系動力伝達機構の逆転伝動ベルト６５７とを、操作腕６６２の操作で揺動板６６０を揺動作動させ、択一的に選択して緊張又は弛緩させることにより動力の断続を行うことが可能なテンションクラッチによって構成されたものである。
　尚、操作腕６６２の操作による揺動板６６０の揺動作動は、正転側への切換状態はコイルスプリング６６６の付勢力によって、操作腕６６２による操作力を解除しても持続されるが、逆転側への操作は、操作腕６６２の操作によって揺動板６６０が揺動作動されている間だけ継続し、操作腕６６２による操作が解除されると、コイルスプリング６６６の付勢力によって、正転駆動状態に自動復帰される。

　図６８乃至図７３に示す符号６６７は、揺動板６６０に一体に設けた棒状の外れ止めガイドであり、符号６６８は、Ｌ字状に屈曲形成された板状の外れ止めガイドである。また、符号６７７ｂは取付板６７７に設けた棒状の外れ止めガイドである。これらは何れも、正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７の外れ止めを行うためのものである。

　中継軸６５５側の一対の中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃと、ラジエータ冷却ファン６７０側のファン入力プーリ６７２とにわたって掛張された正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７に対しては、その正転伝動ベルト６５６と逆転伝動ベルト６５７を案内するためのガイド部材としてのベルトガイド６６９が設けられている。ベルトガイド６６９は、入力回転体としての中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃに巻回された無端回動体である正転伝動ベルト６５６及び逆転伝動ベルト６５７の回転方向と直交する方向において、正転伝動ベルト６５６及び逆転伝動ベルト６５７の変位量を規制するように構成されている。
　このベルトガイド６６９は、正転伝動ベルト６５６及び逆転伝動ベルト６５７に対して、駆動状態で緊張されている状態の正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７にはでは接触せず、所定量以上の弛みが生じたとき、これを下方側から支持するように構成されている。このようにしたことにより、弛んだ逆転伝動ベルト６５７又は正転伝動ベルト６５６が大きく垂れて、駆動中の正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７に接触するような状態となることを避けられるようにしてある。これによって、弛んだ逆転伝動ベルト６５７又は正転伝動ベルト６５６が駆動中の正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７に接触して、互いに損耗する可能性を低減することができる。

　具体的には、図７１、図７２、及び図７４に示すように、ベルトガイド６６９は、逆転伝動ベルト６５７の駆動中には仮想線で示すように接触せず、正転伝動ベルト６５６が駆動されて逆転伝動ベルト６５７が非駆動状態となったとき、その逆転伝動ベルト６５７の緩み側と張り側のそれぞれを、所定量以上の弛みが生じたときに下方側で、実線で示すように支持するための第１支持部６６９ａと第２支持部６６９ｂとを備えている。この逆転伝動ベルト６５７側では、ファン入力プーリ６７２に対して逆転伝動ベルト６５７の外周側で接する側が張り側であり、第３テンション輪体６６５に内周側で接する側が緩み側である。

　また、このベルトガイド６６９は、正転伝動ベルト６５６側に対して、正転伝動ベルト６５６の緩み側に所定量以上の弛みが生じたときに、その正転伝動ベルト６５６の緩み側を下方から仮想線で示すように支持するための第３支持部６６９ｃを備えている。
　このように第１支持部６６９ａと第２支持部６６９ｂ、及び第３支持部６６９ｃを備えたことにより、正逆転の切換にともなって正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７の何れかが緩められたとき、弛んだ正転伝動ベルト６５６又は逆転伝動ベルト６５７の必要以上の垂れ下がりを抑制する。

　正転伝動ベルト６５６の張り側に対しては、図７１及び図７２に示すように、ベルトガイド６６９とは別に、弛み取り用の調節輪体６７９を設けてある。
　この調節輪体６７９は、ファン取付台６７４に固定された角筒状部材６７６の前端部からタンク支持台６１３の上部枠６１３Ｃに向けて立設した支持部材６７８に対して上下に位置変更可能に取り付けてある。
　この調節輪体６７９を正転伝動ベルト６５６の張り側の下方側に位置させて、正転伝動ベルト６５６が緩められたときに、その正転伝動ベルト６５６の弛みによる垂れ下がりを制限し得るように位置させておけばよい。尚、この調節輪体６７９は、正転伝動ベルト６５６の緊張状態では特に接触させておく必要性はないが、長めの正転伝動ベルト６５６を用いた場合や、正転伝動ベルト６５６が延びて緩んできた場合に、その弛み取りのために、正転伝動ベルト６５６を緊張状態にするための位置を調節できるようにしてもよい。

　中継軸６５５は、タンク支持台６１３の上部枠６１３Ｃに対して、取付ブラケット６１３Ｄを介して吊り下げ状態で取り付けてある。
　そして、中継軸６５５に備えた一対の中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃには、図６０及び図７５，７６に示すように、外れ止めガイド６５８が設けられている。
　この外れ止めガイド６５８は、中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃの外周側に対向し、側面視で中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃの機体前方側の外周に沿うように設けられている。この外れ止めガイド６５８の側面視での形状は、板材を多角形状に屈折させながら中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃの外周円のほぼ半周に沿うように形成されている。

　多角形状の外れ止めガイド６５８は、その上端部の角部の両側に備えた一対の取付片６５８ａ，６５８ａを介して取付ブラケット６１３Ｄにボルト連結されている。
　また、多角形状の外れ止めガイド６５８の上端部と下端部とは、図７６に示すように、中継出力プーリ６５５ｂ，６５５ｃ、及び中継軸６５５を迂回するＵ字状の屈曲棒材６５８ｂで連結されており、外れ止めガイド６５８の強度が高められている。

［第４実施形態の別実施形態１］
　上記の実施形態では、脱穀装置６０４の上方に配設されるグレンタンク６０５を、左右方向の一端側に設けた揺動軸心ｚ２Ｄの回りで傾動可能に構成し、かつ、揺動軸心ｚ２Ｄが設けられた側に開閉可能な穀粒排出口６０５Ａを設けて、その傾動姿勢で穀粒を排出可能に構成した構造のものを示したが、これに限られるものではない。
　例えば、図７８に示すように、グレンタンク６０５に開閉可能な穀粒排出口６０５Ａを設けずに貯留物排出用のアンローダ６０５Ｃを設けて貯留物を排出するようにしてもよい。
　このように構成すれば、グレンタンク６０５に開閉可能な穀粒排出口６０５Ａを設けたり、グレンタンク６０５を傾動させるためのダンプシリンダ６５３を設けたりしなくとも穀粒を排出することが可能である。
　しかし、アンローダ６０５Ｃを備えたグレンタンク６０５においても、ダンプシリンダ６５３を設けることで、タンク本体６５１の底部に存在する貯留物をスムースにアンローダ６０５Ｃの存在する側へ集めるように構成してもよい。

　アンローダ６０５Ｃは、グレンタンク６０５の前壁部分から貯留物を持ち上げる方向に立ち上げられた縦搬送筒７１０と、その縦搬送筒７１０の上端部から横倒れ方向に延出された横搬送筒７１１と、横搬送筒７１１の先端部から貯留物を排出する排出部７１２とを備えている。
　横搬送筒７１１は、その長手方向を自走機体の横外側へ向けて、排出部７１２が自走機体から離れた横側方に位置する貯留物排出姿勢と、横搬送筒７１１の長手方向が図７８に示すように、自走機体に沿って後方側へ向けられた格納姿勢とに、姿勢変更可能に構成されている。
　このように横搬送筒７１１を格納姿勢にしたとき、排出部７１２は、吸気ケース６０８の上部ケース部６０８Ｂの上側を越して、上部ケース部６０８Ｂよりも後方で、排ワラ処理装置６１６の上方に位置するように構成されている。このとき、上部ケース部６０８Ｂが下部ケース部６０８Ａよりも幅狭で、かつ上部ケース部６０８Ｂの後面側が後下がりに傾斜した変形台形状に形成されているので、横搬送筒７１１の前後方向長さをできるだけ短く設定することができ、コンパクト化を図る上で有効である。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態２］
　上記の実施形態では、吸気ケース６０８として、上部ケース部６０８Ｂと下部ケース部６０８Ａとが別体で構成された構造のものを例示したが、これに限られるものではない。例えば、上部ケース部６０８Ｂと下部ケース部６０８Ａとが一体のケースで構成されたものであってもよい。
　また、上部ケース部６０８Ｂや下部ケース部６０８Ａの形状としては、矩形箱状のものに限らず、例えば、三角筒形状や、多角筒形状や、円筒状など、適宜の形状を採用することが可能である。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態３］
　上記の実施形態では、上部ケース部６０８Ｂとして、ラジエータ冷却ファン６７０の軸心に沿う方向視では、下部側よりも上部側が幅狭となる縦長形状のものを示したが、これに限られるものではない。例えば、下部側と上部側とが同一幅であったり、逆に、下部側よりも上部側が広くなっている形状であっても差し支えない。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態４］
　上記の実施形態では、上部ケース部６０８Ｂの吸気口６８４は、前後左右の全部の面に形成された構造のものを示したが、これに限られるものではない。例えば、前後左右の面うちの一部の面にのみ吸気口６８４を設けたものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態５］
　上記の実施形態では、刈取部逆転操作具７０６及びファン逆転操作具７０７として、引き操作している間だけ逆転状態に操作し、引き操作を解除すると正転状態に戻るようにした構造のものを示したが、これに限られるものではない。
　例えば、図示はしないが、引き操作されるごとに、逆転状態と正転状態とが交互に切り替わるように構成されたものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態６］
　上記の実施形態では、走行装置６０２として、前輪６０２Ｆを非操向車輪で構成し、後輪６０２Ｒを操向車輪で構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前輪６０２Ｆを操向車輪とし、後輪６０２Ｒを非操向車輪としてもよい。また、前輪６０２Ｆ及び後輪６０２Ｒをともに操向車輪で構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態７］
　上記の実施形態では、走行装置６０２として、前輪６０２Ｆを非操向車輪で構成された駆動輪とし、後輪６０２Ｒを駆動されていない操向車輪で構成した構造のものを示したが、これに限られるものではない。
　例えば、前輪６０２Ｆを駆動されていない操向車輪として、後輪６０２Ｒを非操向車輪からなる駆動輪とする、あるいは、前輪６０２Ｆ及び後輪６０２Ｒをともに操向車輪で構成して、前輪６０２Ｆと後輪６０２Ｒとを、ともに駆動するように構成してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態８］
　上記の実施形態では、前走行部を非操向車輪からなる前輪６０２Ｆで構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪６０２Ｒで構成したものを示したが、これに限らず、例えば、前走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成し、後走行部を操向車輪からなる後輪６０２Ｒで構成したものであってもよい。逆に、前走行部を操向車輪からなる前輪６０２Ｆで構成して、後走行部をセミクローラタイプのクローラ走行装置で構成してもよい。
　この場合、セミクローラタイプのクローラ走行装置を駆動し、操向車輪で構成される後輪６０２Ｒ又は前輪６０２Ｆは非駆動のものであっても良いし、セミクローラタイプのクローラ走行装置と、操向車輪で構成される後輪６０２Ｒ又は前輪６０２Ｆを共に駆動するものであっても良い。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態９］
　上記の実施形態では、上記の実施形態では、運転部として運転キャビン６１５を備えた構造のものを例示したが、これに限られるものではなく、運転部としては運転キャビン６１５を備えずに、単にステアリングハンドル６１５ａや運転座席６１５ｂを備えただけのものであってもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態１０］
　上記の実施形態では、エンジン出力回転体としての出力プーリ６３０、入力回転体及び出力回転体としての入出力プーリ６２２、及び脱穀側回転体としての脱穀入力プーリ６４１ｂを用いた構造のものを示したが、このような出力用又は入力用の回転体をプーリで構成するものに限らず、例えばスプロケットで構成してもよい。その場合、伝動用の無端回動帯は、伝動ベルト６３２Ａ，６３２Ｂに代えて伝動チェーンを用いるようにしてもよい。また、脱穀装置６０４等の他の箇所における無端回動帯を用いた伝動構造においても同様に、伝動ベルトに代えて伝動チェーンを採用してもよい。
　その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。

［第４実施形態の別実施形態１１］
　上記の実施形態では、排ワラ部として、排ワラを細断可能な排ワラチョッパーを備える排ワラ処理装置６１６を示したが、これに限られるものではない。例えば、排ワラチョッパーとは異なる切断装置を設けたり、落下放出する装置を設ける、あるいは、単に排ワラが排出される排ワラ出口が存在するだけのものであってもよい。
［第４実施形態の別実施形態１２］
　上記の実施形態では、収穫機の一例として普通型コンバインを例示したが、これにかぎられず、自脱型コンバインであってもよい。また、このような稲、麦、とうもろこしなどの穀物を収穫するコンバインに限らず、大豆などの豆類や菜種などの花卉類を収穫する収穫機であってもよい。

　以上に述べた各実施形態は、矛盾が生じない限り、それぞれ互いに組み合わせて実施することができる。また、本発明の範囲は、上記各実施形態で示した形態に限られるものではない。

（第１実施形態）
３　　　　　　　　　　　：エンジン
６　　　　　　　　　　　：正逆転選択機構
７　　　　　　　　　　　：ラジエータ
９　　　　　　　　　　　：側部カバー
３４Ａ　　　　　　　　　：上手側伝動ベルト（原動側無端回動帯）
３４Ｂ　　　　　　　　　：下手側伝動ベルト（無端回動帯）
３５ａ　　　　　　　　　：中継入力プーリ（駆動回転体）
３５ｂ　　　　　　　　　：中継出力プーリ（駆動回転体）
３５ｃ　　　　　　　　　：中継出力プーリ（駆動回転体）
３６　　　　　　　　　　：正転伝動ベルト（正転系動力伝達機構の無端回動帯）
３７　　　　　　　　　　：逆転伝動ベルト（逆転系動力伝達機構の無端回動帯）
６０　　　　　　　　　　：揺動アーム
６２　　　　　　　　　　：操作レバー
６３　　　　　　　　　　：第１テンション輪体（輪体）
６４　　　　　　　　　　：第２テンション輪体（輪体）
６５　　　　　　　　　　：第３テンション輪体（輪体）
６６　　　　　　　　　　：コイルスプリング（付勢機構）
７０　　　　　　　　　　：ラジエータ冷却ファン
７２　　　　　　　　　　：ファン入力プーリ（入力回転体）
ＬＡ　　　　　　　　　　：仮想線分
ｐ１Ａ　　　　　　　　　：軸心
ｐ２Ａ　　　　　　　　　：軸心
（第２実施形態）
２０２　　　　　　　　　：走行装置
２０３　　　　　　　　　：エンジン
２０４　　　　　　　　　：脱穀装置
２２０　　　　　　　　　：トランスミッション
２２１　　　　　　　　　：入力軸
２２２Ａ　　　　　　　　：第１回転体部分（入力回転体）
２２２Ｂ　　　　　　　　：第２回転体部分（出力回転体）
２２３　　　　　　　　　：無段変速装置
２３０　　　　　　　　　：出力プーリ（エンジン出力回転体）
２３１　　　　　　　　　：出力軸
２３２　　　　　　　　　：第１伝動ベルト（エンジン動力伝達部）
２３３　　　　　　　　　：第２伝動ベルト（脱穀用動力伝達部）
２４１ａ　　　　　　　　：唐箕軸
２４１ｂ　　　　　　　　：脱穀入力プーリ（脱穀側回転体）
（第３実施形態）
３０８　　　　　　　　　：脱穀装置
３１０　　　　　　　　　：エンジン
３１２　　　　　　　　　：排ワラ処理装置（後処理装置）
３１３　　　　　　　　　：刈取部
３１４　　　　　　　　　：フィーダ
３２７　　　　　　　　　：扱胴
３２９　　　　　　　　　：扱室
３３０　　　　　　　　　：選別処理部
３８１　　　　　　　　　：唐箕
３８４　　　　　　　　　：一番スクリュー（処理物搬送機構）
３８７　　　　　　　　　：二番スクリュー（処理物搬送機構）
５１０　　　　　　　　　：回転軸（カウンター軸）
５５３　　　　　　　　　：機体走行用の伝動機構
５５４　　　　　　　　　：走行用入力軸
５５５　　　　　　　　　：第１駆動プーリ（駆動回転体）
５５６　　　　　　　　　：中継軸
５５７　　　　　　　　　：従動回転体
５５８　　　　　　　　　：中継伝動機構
５５９　　　　　　　　　：分配伝動機構
５６３　　　　　　　　　：入力プーリ（入力用回転体）
５６４　　　　　　　　　：扱胴用出力プーリ（扱胴用の出力回転体）
５６５　　　　　　　　　：フィーダ用出力プーリ（フィーダ用の出力回転体）
５６６　　　　　　　　　：搬送用出力プーリ（処理物搬送用の出力回転体）
５７４　　　　　　　　　：第２駆動プーリ（後処理用回転体）
５７５　　　　　　　　　：後処理用伝動機構
Ｘ２Ｃ　　　　　　　　　：軸心
（第４実施形態）
６０３　　　　　　　　　：エンジン
６０３Ａ　　　　　　　　：フライホイール
６０３Ｃ　　　　　　　　：コンプレッサ
６０４　　　　　　　　　：脱穀装置
６１６　　　　　　　　　：排ワラ処理装置
６３０　　　　　　　　　：出力プーリ
６３０Ａ　　　　　　　　：取付部
６３０Ｂ　　　　　　　　：プーリ溝
６３１ｂ　　　　　　　　：第３出力プーリ（ファン用プーリ）
６３１ｃ　　　　　　　　：第４出力プーリ（コンプレッサ用プーリ）
６３８Ｂ　　　　　　　　：第４伝動ベルト（無端回動帯）
６４６　　　　　　　　　：伝動ベルト
６４６Ａ　　　　　　　　：従動プーリ（入力回転体）
６５４　　　　　　　　　：テンション機構
６５４ｃ　　　　　　　　：揺動アーム
６５４ｅ　　　　　　　　：遊動側プーリ（回転体）
６５６　　　　　　　　　：正転伝動ベルト（無端回動体）
６５７　　　　　　　　　：逆転伝動ベルト（無端回動体）
６６９　　　　　　　　　：ベルトガイド（ガイド部材）
６７２　　　　　　　　　：ファン入力プーリ（入力回転体）

Claims

　ラジエータと、
　ラジエータ冷却ファンと、
　エンジンの動力に基づいてラジエータ冷却ファンを駆動させる駆動装置とが備えられ、
　前記駆動装置は、無端回動帯で正転動力を伝達可能な正転系動力伝達機構と、別の無端回動帯で逆転動力を伝達可能な逆転系動力伝達機構との二系統の動力伝達機構が備えられ、かつ、前記二系統の動力伝達機構のうち、何れか一方の動力伝達機構からの動力を択一的に選択して前記ラジエータ冷却ファンの入力回転体に伝達可能な正逆転選択機構が備えられたものである作業機。
　前記入力回転体に、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回されている請求項１に記載の作業機。
　前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とは、同一の駆動回転体に巻回されている請求項１又は２に記載の作業機。
　前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とのうちの一方が、前記入力回転体に対して、当該無端回動帯の内外の周面のうちの内周面側で接するように巻回され、他方が外周面側で接するように巻回されている請求項３に記載の作業機。
　前記駆動回転体の軸心と前記入力回転体の軸心とを結ぶ仮想線分の両側に、夫々、前記入力回転体に外周面側で接するように巻回されている前記無端回動帯の内周面側に位置する状態で、輪体が配備され、これらの輪体のうち、何れか一方もしくは両方が、前記入力回転体に対して外周面側で接するように巻回されている前記無端回動帯を、緊張又は弛緩させる側へ移動可能であるように構成されている請求項４に記載の作業機。
　前記正転系動力伝達機構の無端回動帯が、前記入力回転体に対して、内外の周面のうちの内周面側で接するように巻回されている請求項１～５のいずれか一項に記載の作業機。
　前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とを、択一的に選択して緊張又は弛緩させることにより動力の断続を行うことが可能なテンションクラッチにより構成されたものである請求項１～６のいずれか一項に記載の作業機。
　前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構の無端回動帯に作用する第１テンション輪体と、前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯に作用する第２テンション輪体とが、単一の揺動アームに支持されたものである請求項７に記載の作業機。
　前記揺動アームの軸心は前記入力回転体の軸心と同一軸心である請求項８に記載の作業機。
　前記正逆転選択機構は、前記正転系動力伝達機構をその無端回動帯が緊張された状態に付勢する付勢機構が備えられたものである請求項１～９のいずれか一項に記載の作業機。
　前記正逆転選択機構は、前記揺動アームを操作可能な操作レバーが備えられたものである請求項８又は９に記載の作業機。
　前記操作レバーは、前記エンジンが存在する側とは反対側に延出されている請求項１１に記載の作業機。
　前記エンジンの機体横外方側は、側部カバーで覆われ、前記操作レバーは、前記側部カバーで覆われていない側に露出した状態で設けられている請求項１１又は１２に記載の作業機。
　前記操作レバーは前記揺動アームに連結されている請求項１１～１３のいずれか一項に記載の作業機。
　前記駆動装置には、前記エンジンからの動力が伝達されている請求項１～１４のいずれか一項に記載の作業機。
　前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回される駆動回転体は、前記エンジンから前記ラジエータ冷却ファンへの動力伝達系における中継回転体を兼ねるように構成されている請求項１５に記載の作業機。
　前記駆動回転体と前記エンジンの出力プーリとに亘って巻回される無端回動帯と、この無端回動体にテンション作用する回転体及びこの回転体を支持する揺動アームを有するテンション機構と、が備えられ、
　この回転体は、この無端回動帯の回転方向において前記揺動アームの揺動軸心よりも下手側に位置する状態で設けられている請求項１～１６のいずれか一項に記載の作業機。
　走行車体の横一側箇所に前記エンジンが出力軸を左右方向に向けた状態で配備され、そのエンジンの車体後方側箇所、又は前記エンジンの車体前方側箇所、あるいは前記エンジンの車体上方側箇所に、前記ラジエータが配備されている請求項１～１７のいずれか一項に記載の作業機。
　前記正転系動力伝達機構の無端回動帯と前記逆転系動力伝達機構の無端回動帯とが巻回される駆動回転体は、前記ラジエータ冷却ファンに対する前記駆動装置の無端回動帯と、前記エンジンからの動力を伝える原動側無端回動帯とが掛張される複数の巻回部を備え、前記原動側無端回動帯が前記駆動装置の無端回動帯よりも機体外方側に位置するように構成されている請求項１～１８のいずれか一項に記載の作業機。
　前記エンジンの出力軸に、前記ラジエータ冷却ファンに動力を伝達するファン用プーリと、エアコン装置のコンプレッサに動力を伝達するコンプレッサ用プーリとが備えられ、
　前記ファン用プーリが、前記コンプレッサ用プーリよりも、前記エンジンから近い側に位置している請求項１～１９のいずれか一項に記載の作業機。
　前記入力回転体に巻回された無端回動体の回転方向と直交する方向において、この無端回動体の変位量を規制するガイド部材が備えられている請求項１～２０のいずれか一項に記載の作業機。
　エンジンと、
　走行装置に駆動力を伝達するトランスミッションと、
　脱穀装置とを備え、
　前記エンジンの動力が、前記トランスミッションの入力軸を介して前記脱穀装置に分岐伝動されるように構成されたコンバイン。
　前記入力軸に、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられている請求項２２に記載のコンバイン。
　前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が、前記トランスミッションに対して、前記入力回転体が設けられた側と同じ側で前記入力軸に取り付けられている請求項２２又は２３に記載のコンバイン。
　前記トランスミッションに対して、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられた側とは反対側に、前記走行装置への伝達動力を変速する無段変速装置が備えられている請求項２２～２４のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が、前記入力軸上で、前記入力回転体と、前記トランスミッションとの間に位置している請求項２２～２５のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記入力軸に、前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体が設けられ、前記出力回転体から前記脱穀装置側に備えた脱穀側回転体へ無端回動帯を介して動力を伝える脱穀用動力伝達部が備えられ、この脱穀用動力伝達部が、前記出力回転体の軸心に沿う方向における前記エンジンと前記トランスミッションとの間に位置している請求項２２～２６のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体が前記入力軸に備えられ、前記エンジンに備えたエンジン出力回転体から前記入力回転体に無端回動帯を介して駆動力を伝達するエンジン動力伝達部が備えられ、このエンジン動力伝達部は、前記入力軸の軸心に沿う方向で、前記エンジンと前記トランスミッションとの間に位置している請求項２２～２７のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体と前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体とは、前記入力軸上で隣り合う位置に配設されている請求項２２～２８のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記出力回転体と前記入力回転体とは、前記入力軸に備えた一連のプーリで構成されている請求項２９に記載のコンバイン。
　前記エンジンからの動力を前記入力軸に備えられた入力回転体に伝達するエンジン動力伝達部と、
　前記入力軸に伝達された動力を、前記入力軸に備えられた出力回転体から無端回動帯を介して前記脱穀装置側に伝達する脱穀用動力伝達部と、を備え、
　この脱穀用動力伝達部と前記エンジン動力伝達部とが、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で互いに重複した位置に設けられている請求項２２～３０のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記脱穀用動力伝達部の無端回動帯は、前記出力回転体と、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で前記エンジンと重複する位置に配設された脱穀側回転体とに掛張されている請求項３１に記載のコンバイン。
　前記脱穀側回転体は、前記エンジンの出力軸の軸線方向視で前記エンジンに備えたエンジン出力回転体と重複する位置に配設されている請求項３２に記載のコンバイン。
　前記エンジンの横側方に前記脱穀装置が配設され、前記エンジンよりも前側に前記トランスミッションが配設されている請求項２２～３３のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記脱穀側回転体は、前記脱穀装置の唐箕軸に取り付けられている請求項３２又は３３に記載のコンバイン。
　前記唐箕軸を介して前記エンジンの動力が、収穫対象物を刈取収穫する刈取部に伝達されるように構成されている請求項３５に記載のコンバイン。
　前記入力軸に、前記エンジンからの動力が伝達される入力回転体と前記脱穀装置側へ動力を伝える出力回転体とが備えられ、その入力回転体と出力回転体との周速度差で減速された動力が、前記脱穀装置側へ伝達されるように構成されている請求項２２～３６のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記エンジンの出力軸にフライホイールが取り付けられると共に、前記フライホイールに出力プーリが取り付けられ、
　前記出力プーリは、有底の円筒形状に形成されると共に、底部が前記フライホイールに突合せられた状態で前記フライホイールに取り付けられ、
　前記出力プーリの内周側における前記底部に、前記フライホイールに対する取付部が備えられている請求項２２～３７のいずれか一項に記載のコンバイン。
　前記出力プーリのプーリ溝が、前記取付部の外周箇所に形成されている請求項３８に記載のコンバイン。
　機体前部の刈取部にて刈り取られた作物を後方に搬送するフィーダと、前記フィーダにより搬送される作物の脱穀処理を行う脱穀装置とが備えられ、
　前記脱穀装置に、回転する扱胴により作物に対する扱き処理を行う扱室と、前記扱室の下方に位置して扱き処理物を選別処理する選別処理部とが備えられ、
　前記脱穀装置の内部を貫通するとともに、エンジンからの動力を前記脱穀装置に対して前記エンジンとは反対側に伝達するカウンター軸と、前記カウンター軸とは別の中継軸と、前記カウンター軸に取り付けられた駆動回転体から前記中継軸に取り付けられた従動回転体に動力を伝達する中継伝動機構と、前記従動回転体から前記扱胴及び前記フィーダに動力を分配供給する分配伝動機構とが備えられているコンバイン。
　前記選別処理部に、選別後の処理物を搬送する処理物搬送機構が備えられ、
　前記分配伝動機構が、前記従動伝動体から前記処理物搬送機構に動力を分配供給するように構成されている請求項４０に記載のコンバイン。
　前記選別処理部に、前記扱き処理物に対して選別風を供給する唐箕が備えられ、
　前記カウンター軸が、前記唐箕の回転軸に兼用構成されている請求項４０又は４１に記載のコンバイン。
　前記扱室から外部に排出される扱き処理後の排出物を後処理する後処理装置が備えられ、
　前記カウンター軸に取り付けられた後処理用回転体から前記中継軸を介さずに前記後処理装置に動力を伝達する後処理用伝動機構が備えられている請求項４０～４２のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記後処理用回転体が、前記駆動回転体よりも機体内方側に位置する状態で前記カウンター軸に備えられている請求項４３に記載のコンバイン。
　前記従動回転体は、
　前記カウンター軸からの動力が入力される入力用回転体と、動力を分配供給するための複数の出力用回転体とを一連に連なる状態で備えた多連式に構成され、且つ、
　前記入力用回転体に対して回転軸心方向両側に振り分けた状態で複数の出力用回転体が備えられている請求項４０～４４のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記複数の出力用回転体のうち前記扱胴に動力伝達する扱胴用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体外方側に位置する請求項４５に記載のコンバイン。
　前記扱胴用の出力回転体が、前記中継軸に対して着脱自在に取り付けられている請求項４６に記載のコンバイン。
　前記複数の出力用回転体のうち前記フィーダに動力伝達するフィーダ用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体内方側に位置する請求項４５～４７のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記複数の出力用回転体のうち前記処理物搬送機構に動力伝達する処理物搬送用の出力回転体が、前記入力用回転体よりも機体内方側に位置する請求項４５～４８のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記扱胴が、機体前後方向に沿う回転軸心周りで回転する請求項４０～４９のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記カウンター軸が、前記扱胴の下方を通過する状態で備えられている請求項５０に記載のコンバイン。
　前記エンジンの動力が、機体走行用の伝動機構に伝達されたのち、その機体走行用の伝動機構から前記カウンター軸に伝達されるように構成されている請求項４０～５１のいずれか１項に記載のコンバイン。
　前記エンジンの動力が、機体走行用の伝動機構に対する走行用入力軸に伝達されたのち、その走行用入力軸から前記カウンター軸に伝達されるように構成されている請求項５２に記載のコンバイン。
　前記脱穀装置の後方に、排ワラ処理装置が備えられ、
　前記排ワラ処理装置の入力回転体へ動力を伝達する伝達機構に、複数本のベルトが備えられている請求項４０～５３のいずれか１項に記載のコンバイン。