WO2014203585A1 - シューズアッパーの製造方法、およびシューズアッパー - Google Patents

Abstract

二重構造を有するシューズアッパーを生産性良く製造することができるシューズアッパーの製造方法を提供する。シューズアッパーの内側部分となる筒状の内側編地部（１９）と、シューズアッパーの外側部分となる筒状の外側編地部（１１）と、が針床上で左右に並んだ状態で、かつ両編地部（１１，１９）の履き口対応部（１１０，１９０）同士が繋がった状態で、両編地部（１１，１９）を編成する（工程α）。その際、内側編地部（１９）と外側編地部（１１）の少なくとも一方は、熱融着糸を含む融着編糸を用いて編成する。内側編地部（１９）を外側編地部（１１）の内部に折り込んで、二重構造のシューズアッパーを形成する（工程β）。二重構造のシューズアッパーを足型に嵌めて熱処理する（工程γ）。

Description

シューズアッパーの製造方法、およびシューズアッパー

　本発明は、二重構造を有するシューズアッパー、およびそのシューズアッパーの製造方法に関する。

　近年、横編機を用いてシューズアッパーを編成することが試みられている。シューズアッパーを編成する場合、太い編糸を使用すれば、シューズアッパーの表面に凹凸が形成され、見栄えや履き心地などが損なわれる恐れがある。一方、細い編糸を使用してシューズアッパーを編成すれば、シューズアッパーの表面が滑らかになり、見栄えは良好であるものの、シューズアッパーの厚みが十分に確保できない恐れがある。その場合、シューズアッパーのフィット感や強度が損なわれることが懸念される。

　上記問題点の解決策の一つとして、例えば特許文献１に記載のように、二重構造を有する編地を編成する技術を利用することができる。この特許文献１では、二重構造を有する靴下と手袋を編成している。靴下と手袋の編成手順はほぼ同様であり、靴下を編成する場合を例にして説明すれば次の通りである。まず、二重構造の靴下の内側編地部を爪先から履き口に向かって編成し、その内側編地部の履き口に続いて外側編地部を履き口から爪先に向かって編成している（但し、内側編地部と外側編地部のどちらを先に編成するかは任意である）。その結果、内側編地部と外側編地部の履き口同士が繋がった靴下が編成される。この靴下の使用時には、外側編地部の内部に内側編地部を折り込んで二重構造とする。

特開平１１－３２３６０８号公報

　近年、編成によって得られるシューズアッパーの需要が増しているため、シューズアッパーの編成効率の向上が望まれている。しかし、特許文献１の技術ではその要請に応えることができなかった。特許文献１の技術を適用して二重構造のシューズアッパーを作製する場合、シューズアッパーの内側編地部と外側編地部とを順次編成することになるため、実質的に二足分の編成時間が必要となるからである。

　本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的の一つは、二重構造を有するシューズアッパーを生産性良く製造することができるシューズアッパーの製造方法、およびその製造方法によって得られるシューズアッパーを提供することにある。

　本発明は、少なくとも前後一対の針床と編糸を給糸する給糸口とを備える横編機を用いてシューズアッパーを製造するシューズアッパーの製造方法に係り、以下の工程α～工程γを備えることを特徴とする。
［工程α］…シューズアッパーの内側部分となる筒状の内側編地部と、シューズアッパーの外側部分となる筒状の外側編地部と、が横編機の針床上で左右に並んだ状態で、かつ両編地部の履き口対応部同士が繋がった状態で、両編地部を編成する。その際、内側編地部と外側編地部の少なくとも一方は、熱融着糸を含む融着編糸を用いて編成する。なお、履き口対応部は、内側編地部を外側編地部の内部に折り込んだときに、シューズアッパーの履き口の縁部を構成する部分である。
［工程β］…内側編地部を外側編地部の内部に折り込んで、二重構造のシューズアッパーを形成する。
［工程γ］…二重構造のシューズアッパーを足型に嵌めて熱処理する。この工程γでは、熱処理時に溶融した熱融着糸によって外側編地部と内側編地部とを接着させ、かつ二重構造のシューズアッパーを足型に対応した形状に成形する。

　本発明のシューズアッパーの製造方法として、工程αにおいて、内側編地部と外側編地部とを踵から爪先に向かって編成する形態を挙げることができる。

　本発明のシューズアッパーの製造方法として、工程αにおいて、内側編地部の履き口対応部から爪先に向かって延びる内側切込みと、外側編地部の履き口対応部から爪先に向かって延びる外側切込みと、を形成する形態を挙げることができる。

　本発明のシューズアッパーの製造方法として、内側編地部と外側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせる編成を行なう形態を挙げることができる。例えば、［１］内側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせ、外側編地部の厚みを均一にする、［２］内側編地部の厚みを均一にして、外側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせる、［３］内側編地部の少なくとも一部、および外側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせる。なお、上記［３］の場合、内側編地部の厚みを持たせた部分と外側編地部の厚みを持たせた部分とは、二重構造のシューズアッパーにおいて重複しても良いし、重複しなくても良い。

　一方、本発明は、履き口を有するシューズアッパーに係る。この本発明のシューズアッパーは、外側編地部と、その外側編地部の内部に重ねられた内側編地部と、を備え、外側編地部と内側編地部とが溶融した熱融着糸によって接着されている。この本発明のシューズアッパーでは、外側編地部の履き口対応部と内側編地部の履き口対応部とが編糸で繋がり、かつ前記外側編地部の履き口対応部の編目と、前記内側編地部の履き口対応部の編目とが、シューズアッパーの長さ方向における同じ方向に向いている。

　本発明のシューズアッパーの製造方法によれば、本発明のシューズアッパーを生産性良く製造することができる。それは、シューズアッパーを構成する内側編地部と外側編地部とを針床上で左右に並べて編成するからである。内側編地部と外側編地部とを左右に並べて編成すれば、両編地部を一度に編成できるし、両編地部を左右に並べた分だけ編幅方向の編成区間が長くなり、編成速度を加速させ易い。

　内側編地部と外側編地部とを踵から爪先に向かって編成するシューズアッパーの編成方法は、両編地部を爪先から踵に向かって編成するよりも効率的にシューズアッパーを製造できる。その理由は、実施形態で詳しく述べる。

　内側編地部と外側編地部の両履き口対応部から爪先に延びる内側切込みと外側切込みを形成することで、工程βにおいて内側編地部を外側編地部の内部に折り込んだときに、両編地部の切込みによってシューズアッパーの履き口から爪先に向かって延びるスリットを形成することができる。当該スリットにはタン（ｔｏｎｇｕｅ）を形成することができる。

　内側編地部と外側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせることで、シューズアッパーを補強することができる。例えば、圧力が作用し易い踵の位置、張力が作用し易い土踏まずの位置、あるいは実施形態に示すように、履き口対応部の位置などにおいて、シューズアッパーに厚みを持たせることが挙げられる。

　内側編地部を外側編地部よりも小さく編成することで、外側編地部の内部に折り込まれる内側編地部のだぶつきを抑制し、内側編地部に皺が寄ることを回避できる。

（Ａ），（Ｂ）は、実施形態１に示すシューズアッパーの概略斜視図である。 実施形態１に示すシューズアッパーの型紙を示す模式図である。 実施形態１に示すシューズアッパーの編成手順を示す模式図である。

　以下、本発明のシューズアッパーとその製造方法の実施形態を図面に基づいて説明する。シューズアッパーの製造には、少なくとも前後一対の針床を備え、前後の針床間で編目の目移しが可能な２枚ベッド横編機を用いた。

＜実施形態１＞
　≪シューズアッパー≫
　実施形態１では、二重構造を有するシューズアッパーを説明する。図１（Ａ）に示すように、シューズアッパー１を機能的な観点で区分すると、着用者の足の甲側の部分を覆うインステップカバー部３と、着用者の足裏の部分を覆うソールカバー部２と、に分けることができる。インステップカバー部３とソールカバー部２とは、無縫製で一体に編成されている。このシューズアッパー１をそのままシューズとして利用することもできるし、シューズアッパー１を構成するソールカバー部２の外側に樹脂などでできたアウターソール（図示せず）を取り付けて、シューズとしても構わない。

　インステップカバー部３の上方にはシューズ開口部５が形成されている。シューズ開口部５は、着用者が足を挿入する履き口５ｉと、履き口５ｉから爪先側に向かって延びるスリット５ｓと、を備える。インステップカバー部３における履き口５ｉ近傍の部分である履き口縁部３５は、他の部分よりも厚みを持って形成されている。また、インステップカバー部３におけるスリット５ｓの位置には、靴紐を通す孔である鳩目孔（ｅｙｅｌｅｔ　ｈｏｌｅ）６０が形成されている。靴紐を用いないシューズであれば、鳩目孔６０は必要ない。スリット５ｓの端部５１は、シューズアッパー１の爪先寄りの位置にあり、この端部５１にタン（図示せず）の根元を接続することができる。もちろん、スリット５ｓがないシューズアッパー１としても良い。

　ソールカバー部２は、シューズアッパー１をそのままシューズとして利用する場合は、靴底となる部分である。ソールカバー部２の外側にアウターソールと取り付けるのであれば、ソールカバー部２は、シューズの中敷きとして機能する。いずれの形態であっても、ソールカバー部２は着用者の足裏の全面を覆う。

　一方、シューズアッパー１を、後述するシューズアッパーの製造方法の観点から区別すると、図１（Ｂ）に示すように、外側編地部１１と、その内部に重ねられた内側編地部１９と、に分けることができる。外側編地部１１は、図１（Ａ）のインステップカバー部３とソールカバー部２の外側部分を構成し、内側編地部１９は、インステップカバー部３とソールカバー部２の内側部分を構成する。これら外側編地部１１と内側編地部１９とは、溶融した熱融着糸によって接着されている。

　外側編地部１１と内側編地部１９との接続境界は、履き口５ｉの近傍の一点鎖線で示す位置（図１（Ａ）の履き口縁部３５に相当する）にある。この一点鎖線で示す接続境界を挟む外側編地部１１の履き口対応部１１０と内側編地部１９の履き口対応部１９０とが編糸で繋がっている。また、履き口対応部１１０の編目と履き口対応部１９０の編目とがシューズアッパー１の長さ方向における同じ方向、本実施形態では爪先方向に向いている。なお、後述する編成工程に従って編成された本実施形態のシューズアッパー１の編目は全体的に爪先側に向いている。

　≪シューズアッパーの製造方法≫
　上記シューズアッパー１は、概略的に次の三つの工程によって製造される。
［工程α］…外側編地部１１と内側編地部１９とを編成する。
［工程β］…内側編地部１９を外側編地部１１の内部に折り込んで、二重構造のシューズアッパー１を形成する。
［工程γ］…二重構造のシューズアッパー１を熱処理する。

　［工程α］
　工程αでは、図２の型紙に示すように、シューズアッパー１を編成する際、外側編地部１１と内側編地部１９を左右に並べた状態で編成する。図２には、シューズアッパー１を構成する外側編地部１１と内側編地部１９の各左側部分が示されており、両編地部１１，１９の各右側部分は、図２の紙面奥側に配置されていると考えて良い。各編地部１１（１９）の左側部分と右側部分とは、図中のハッチングで示す位置で繋がった状態とし、また外側編地部１１と内側編地部１９とは、左右方向の矢印で示す位置（履き口対応部１１０，１９０の位置、および鳩目孔６０が形成されるスリット５ｓの縁となる位置）で繋がった状態とする。つまり、工程αでは、両編地部１１，１９からなる一つの筒状編地を編成する。なお、言うまでもないが、足の形状は左右非対称であるため、足の形状に合わせてシューズアッパー１の右側部分と左側部分の編幅などを変えることが好ましい。

　次に、図３の模式図を参照し、実際の編成手順を説明する。シューズアッパー１は、便宜上、領域Ｉ～Ｖに分けて編成する（各領域Ｉ～Ｖ間に縫い目はない）。領域Ｉはシューズアッパー１の踵の部分に対応する領域、領域ＩＩは履き口５ｉの部分に対応する領域、領域ＩＩＩは履き口５ｉからスリット５ｓの中間部までの部分に対応する領域、領域ＩＶはスリット５ｓの中間部から端部までの部分に対応する領域、領域Ｖは爪先の部分に対応する領域である（図１を合わせて参照）。なお、領域Ｉ～Ｖを通じて、内側編地部１９を外側編地部１１よりも小さく編成する。

　工程αではまず、外側編地部１１の編出し部１１ｓと、内側編地部１９の編出し部１９ｓを編成する。本実施形態では外側編地部１１と内側編地部１９とを、同じ融着編糸で編成している。融着編糸は、熱融着糸を含む編糸である。もちろん、外側編地部１１と内側編地部１９とを、異なる編糸で編成しても良い。例えば、熱融着糸を含む融着編糸で内側編地部１９を編成し、外側編地部１１は熱融着糸を含まない通常編糸で編成することが挙げられる。その場合、一点鎖線で示す両編地部１１，１９の接続境界では、融着編糸と通常編糸とをインターシャ編成などによって繋げると良い。

　編出し部１１ｓ，１９ｓに基づいて、外側編地部１１と内側編地部１９の領域Ｉを編成する。領域Ｉでは、徐々に編幅方向のニットする編目の数を減らす編成を行なった後、徐々に編幅方向のニットする編目の数を増やす編成を行なう。編幅方向のニットする編目の数を増やす際、矢印で示す部分がウエール方向に接合される。さらにこの領域Ｉでは、徐々に編幅方向のニットする編目の数を減らす編成を行なう。ニットする編目の数を減らす編成と増やす編成を行なう回数は特に限定されない。回数を増やすことで、シューズアッパー１の踵の形状を滑らかな立体形状とすることができる。

　踵の編成に続いて、両編地部１１，１９の領域ＩＩを編成する。領域ＩＩでは編幅方向の端部よりも内側の位置（図中の折れ線矢印を参照）で編目を減らす内減らしを行なった後、編幅方向の端部よりも内側の位置（図中の折れ線矢印を参照）で編目を増やす内増やしを行なう。この内減らしと内増やしによって、図１（Ａ）に示すシューズアッパー１の履き口縁部３５の形状を形成する。履き口縁部３５は、着用者の踝を避けるようにシューズアッパー１の下方に湾曲する。

　履き口５ｉに対応する部分の編成に続いて、両編地部１１，１９の領域ＩＩＩを編成する。領域ＩＩＩでも編幅方向の端部よりも内側の位置（図中の折れ線矢印を参照）で内減らしを行ない、図１に示すシューズアッパー１のスリット５ｓの中間部までの部分を編成する。

　ここで、領域ＩＩ，ＩＩＩの点線で囲まれる履き口対応部１１０，１９０は、厚みを持たせることが好ましい。履き口対応部１１０，１９０に厚みを持たせることで履き口縁部３５（図１（Ａ）参照）を補強することができる。厚みを持たせる編成としては、例えば１コース分の編成を、ミス編成を交えながら複数回に分けて行なうことが挙げられる。具体的には、履き口対応部１１０，１９０の範囲内にある奇数番目の編目にニットし、偶数番目の編目をミスする第一の編成を行なった後、履き口対応部１１０，１９０の範囲内にある偶数番目の編目にニットし、奇数番目の編目をミスする第二の編成を行なう。そうすることで、二つの編目列が厚み方向に重なり、履き口対応部１１０，１９０に厚みを持たせることができる。その他、タック編成を繰り返して渡り糸を重ねる編成を行なうことで、履き口対応部１１０，１９０に厚みを持たせても良い。

　次いで、両編地部１１，１９の領域ＩＶを編成する。この領域ＩＶでは、外側編地部１１と内側編地部１９とを分離した状態で編成する。各編地部１１，１９は別々の給糸口を用いて編成する。具体的には、外側編地部１１の履き口対応部１１０から爪先に向かって延びる外側切込み１１ｃを形成すると共に、内側編地部１９の履き口対応部１９０から爪先に向かって延びる内側切込み１９ｃを形成する。外側切込み１１ｃの位置では外側編地部１１の左側部分と紙面奥側の右側部分とは繋がっておらず、領域ＩＶにおける外側編地部１１は紙面左側を折り返し端とするＣ字状に編成される。同様に、内側切込み１９ｃの位置では内側編地部１９の左側部分と紙面奥側の右側部分とは繋がっておらず、領域ＩＶにおける内側編地部１９は紙面右側を折り返し端とするＣ字状に編成される。

　ここで、図３では図示していないが、領域ＩＩＩ，ＩＶにおける接続境界の近傍の部分で編目の寄せなどを行なって、両編地部１１，１９に孔を形成する。この孔は、シューズアッパー１を完成させたときに鳩目孔６０となる（図１，２参照）。

　なお、領域ＩＶで行なう内減らしは、スリット５ｓの端部となる切込み１１ｃ，１９ｃを形成するために行なっている。そのため、シューズアッパー１にスリット５ｓを形成しない場合、領域ＩＶでは、切込み１１ｃ，１９ｃを形成することなく、外側編地部１１と内側編地部１９とをそれぞれ、別々の給糸口を用いて筒状に編成する。

　最後に両編地部１１，１９の領域Ｖを編成する。この領域Ｖではまず切込み１１ｃ，１９ｃの位置に編出し部１１ｃｓ，１９ｃｓを形成する。これら編出し部１１ｃｓ，１９ｃｓは、図１のスリット５ｓの端部５１となる部分である。これら編出し部１１ｃｓ，１９ｃｓを編成したら、両編地部１１，１９の領域Ｖを個別に編成する。基本的には、筒状編成を行ないつつ内減らしを行なって、シューズアッパー１の爪先の先細り形状を形成する。そして、両編地部１１，１９のウエール方向端部を伏目処理するなどして編終り部１１ｅ，１９ｅを形成し、外側編地部１１と内側編地部１９の編成を終了する。

　完成した外側編地部１１と内側編地部１９とは筒状に繋がった状態となる。また、両編地部１１，１９は、内増やしや内減らしを行なって編幅を変えた分だけ、局所的に膨らんだり凹んだりしている。この膨らみと凹みは、シューズアッパー１の立体形状に対応するものである。

　以上説明した編成手順に従えば、外側編地部１１と内側編地部１９とを一度に編成できるので、短時間で両編地部１１，１９を完成させることができる。両編地部１１，１９を左右に並べた分だけ編幅方向の編成区間が長くなるので、編成速度を加速させ易く、その結果として短時間で両編地部１１，１９を完成させることができる。

　上記編成手順では、シューズアッパー１の踵から爪先に向かって編成を行なっているため、効率的にシューズアッパー１を編成できる。踵から爪先に向かって編成を行なう場合、途中で編幅の増減はあるものの、全体的には徐々に編幅は小さくなっていく。そのため、踵から爪先に向かって編成を行なうと、編目を増やす編成を行なう回数を少なくできる。編目を増やす編成は編目を減らす編成よりも手間がかかるので、編目を増やす編成の回数を少なくできれば、シューズアッパー１を効率的に編成できる。また、踵から爪先に向かって編成を行なう場合、爪先が先細りの形状となっているため、手間のかかる編終り部の処理（伏目処理）の範囲を小さくすることができる。そのこともシューズアッパー１の編成の効率化に寄与する。

　［工程β］
　図３に示す編成手順に従う外側編地部１１と内側編地部１９を編成が終了したら、外側編地部１１の内部に内側編地部１９を折り込んで、二重構造のシューズアッパー１を形成する。その際、外側編地部１１と内側編地部１９とが、履き口対応部１１０，１９０の位置で繋がっているため、外側編地部１１に対する内側編地部１９の位置合わせを容易に行なえる。

　［工程γ］
　二重構造のシューズアッパー１を足型に嵌めて熱処理する。熱処理の際、融着編糸の熱融着糸が溶融し、溶融した熱融着糸によって、外側編地部１１と内側編地部１９とが接着され、かつ二重構造のシューズアッパー１が足型に対応した形状に成形される。

　以上説明した実施形態１のシューズアッパーの製造方法によれば、二重構造のシューズアッパー１を生産性良く製造することができる。

＜実施形態２＞
　実施形態１では、シューズアッパー１の踵から爪先に向かって編成し、シューズアッパー１を作製した。これに対して、シューズアッパー１の爪先から踵に向かって編成することもできる。実施形態２では、図３を参照して爪先から踵に向かって編成する手順を簡単に説明する。

　実施形態２では、符号１１ｅで示す位置で外側編地部１１を編出し、符号１９ｅで示す位置で内側編地部１９を編出す。以降は、領域Ｖ→領域ＩＶ→領域ＩＩＩ→領域ＩＩ→領域Ｉの順に両編地部１１，１９を編成し、最後に符号１１ｓ，１９ｓで示す位置で外側編地部１１と内側編地部１９を編終わる。

　なお、本発明は上述した実施形態の構成に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。

１　シューズアッパー
　２　ソールカバー部
　３　インステップカバー部　３５　履き口縁部
　５　シューズ開口部　　５ｉ　履き口　５ｓ　スリット　５１　端部
　６０　鳩目孔
　１１　外側編地部
　　１１ｓ　編出し部　１１ｅ　編終り部　１１０　履き口対応部
　　１１ｃ　外側切込み　１１ｃｓ　編出し部
　１９　内側編地部
　　１９ｓ　編出し部　１９ｅ　編終り部　１９０　履き口対応部
　　１９ｃ　内側切込み　１９ｃｓ　編出し部

Claims (5)

1. 　少なくとも前後一対の針床と編糸を給糸する給糸口とを備える横編機を用いてシューズアッパーを製造するシューズアッパーの製造方法において、
   　シューズアッパーの内側部分となる筒状の内側編地部と、シューズアッパーの外側部分となる筒状の外側編地部と、が前記針床上で左右に並んだ状態で、かつ両編地部の履き口対応部同士が繋がった状態で、両編地部を編成する工程αと、
   　前記内側編地部を前記外側編地部の内部に折り込んで、二重構造のシューズアッパーを形成する工程βと、
   　前記二重構造のシューズアッパーを足型に嵌めて熱処理する工程γと、を備え、
   　前記工程αにおいて熱融着糸を含む融着編糸を用いて前記内側編地部と前記外側編地部の少なくとも一方を編成することで、前記工程γの前記熱処理時に溶融した前記熱融着糸によって前記外側編地部と前記内側編地部とを接着させ、かつ前記二重構造のシューズアッパーを前記足型に対応した形状に成形することを特徴とするシューズアッパーの製造方法。
2. 　前記工程αにおいて、前記内側編地部と前記外側編地部とを踵から爪先に向かって編成することを特徴とする請求項１に記載のシューズアッパーの製造方法。
3. 　前記工程αにおいて、前記内側編地部の履き口対応部から爪先に向かって延びる内側切込みと、前記外側編地部の履き口対応部から爪先に向かって延びる外側切込みと、を形成することを特徴とする請求項１または２に記載のシューズアッパーの製造方法。
4. 　前記内側編地部と前記外側編地部の少なくとも一部に厚みを持たせる編成を行なうことを特徴とする請求項１～３のいずれか一項に記載のシューズアッパーの製造方法。
5. 　履き口を有するシューズアッパーにおいて、
   　外側編地部と、その外側編地部の内部に重ねられた内側編地部と、を備え、
   　前記外側編地部と前記内側編地部とが溶融した熱融着糸によって接着されており、
   　前記外側編地部の履き口対応部と前記内側編地部の履き口対応部とが編糸で繋がり、
   　かつ前記外側編地部の履き口対応部の編目と前記内側編地部の履き口対応部の編目とがシューズアッパーの長さ方向における同じ方向に向いていることを特徴とするシューズアッパー。

Images