WO2014034100A1

WO2014034100A1 - 粘着剤組成物及びレーザー接合用粘着テープ

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Publication number: WO2014034100A1
Application number: PCT/JP2013/005057
Authority: WO
Inventors: 山田　功作; 博文村上
Original assignee: 早川ゴム株式会社
Priority date: 2012-08-27
Filing date: 2013-08-27
Publication date: 2014-03-06
Also published as: CN103781869B; KR101601565B1; WO2014033770A1; JPWO2014034100A1; JP6267640B2; KR20140056213A; CN103781869A

Abstract

　粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であり、上記粘着剤組成物の温度が１００℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であることを特徴とする。

Description

粘着剤組成物及びレーザー接合用粘着テープ

　本発明は、レーザー光の照射熱を利用して所定の部材を接着する際に用いられる粘着剤組成物及びレーザー接合用粘着テープに関するものである。

　例えば、液晶テレビ、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラ、携帯ゲーム機等が近年広く普及しており、生活する上で欠かせない存在となっている。

　これらの機器は、基板等を収容する筐体の他、表示画面に用いられるガラス板やアクリル板等の透明パネルを備えている。透明パネルの裏面の周縁部には、周縁部の端子等が透明パネルの表側から見えないようにそれらを隠すために、黒や白の印刷部分、いわゆる額縁部分が形成されている。

　上記のように額縁部分が形成された透明パネルと筐体とは、一般に接着される場合が多く、この場合には額縁部分よりも幅の狭い粘着テープが用いられる。

　例えば、特許文献１では、総厚みが薄く、かつ、発泡体層を有しており、さらに再剥離性に優れる両面粘着テープを提供するとして、総厚みが５００μｍ以下であり、発泡体層、補強層、及び、両表層としての粘着剤層を有し、かつ、少なくとも一方の側の表層の粘着剤層が、炭素数４～９の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する（メタ）アクリル酸アルキルエステルを必須の単量体成分として構成されるアクリル系ポリマー、粘着付与樹脂、架橋剤を含む粘着剤組成物より形成される両面粘着テープが開示されている。

　また、特許文献２では、透明パネルの意匠層を表側から視認可能にする場合に、意匠層を溶融又は分解させることなく、レーザー光を用いて接合できるようにすることで、外観見栄えを良好にするために、レーザー光非透過性を有する意匠層に隣接してレーザー接合用の粘着テープを設け、意匠層へ向けて意匠層の溶融又は分解温度を越えない所定温度となるまで該意匠層を加熱するためのレーザー光を照射して意匠層の熱によって粘着テープを加熱して粘着層を溶融し接着させる方法が開示されている。

　また、特許文献３では、予め接合してある部材の分別回収をレーザー光を用いて容易に行えるようにするために、レーザー接合用の粘着テープを２つの部材の間に挟んだ状態で接合用レーザー光を用いて粘着テープを加熱することにより両部材を接合しておき、その後、分離用レーザー光を照射して粘着テープを加熱して部材を分離する方法が記載されている。

特開２０１１－２５２０９５号公報特開２０１１－１５６８５８号公報特開２０１２－６１５０２号公報

　ところで、上記機器は様々な環境下で使用されることが想定されるので、透明パネルと筐体との接着部分には、接着信頼性（耐衝撃性、耐寒性、防水性）が高い次元で求められる。

　耐衝撃性を高めるためには、粘着剤の持つ粘弾性で衝撃吸収を行う必要があり、また、耐寒性を高めるためには粘着力を向上させる必要があり、また、防水性を高めるためには粘着剤自体の変形によって接着対象物の凹凸や段差を吸収させる必要がある。

　特に近年、上記機器の外形を小さくしながら、逆に表示画面を大きくすることが望まれているので、透明パネルの額縁部分の幅が狭くなりつつある（狭額縁化）。透明パネルの額縁部分の幅が狭くなると、それに応じて粘着テープの幅も狭くしなければならない。粘着テープの幅を狭くすると有効接着面積が狭くなるので、一般的には、粘着力が低下するとともに接着信頼性も低下し、上述した耐衝撃性、耐寒性、防水性を十分に満足することができなくなる。

　また、透明パネルと筐体とを粘着テープで接着した後、例えば製品検査をして透明パネルか基板等に不具合が発見された場合や、接着作業を失敗した場合等には、透明パネルを筐体から一旦剥がして使用可能な物を再利用することがあるが、このときに粘着テープが透明パネルや筐体に残ってしまうと再利用の障害となるので、溶剤を使用したり、熱を加えたりして粘着テープを徐々に剥がしていかなればならないという問題がある。

　上記特許文献１では、粘着テープの基材が発泡体層であるので引っ張り強度が弱く、例えば粘着テープの粘着層を透明パネルから容易に剥がすことができたとしても、筐体側に粘着テープの一部が残ることがある。その残った粘着テープを剥がそうとして引っ張っても直ぐに破断してしまうので、溶剤を使用したり、熱を加えたりして作業者の手で時間をかけて丁寧に作業しなければならないという問題がある。

　また、上記特許文献２では、粘着テープに隣接する意匠層にレーザー光を照射して発熱させ、その熱で粘着層を軟化させるようにしているので、従来の単純な貼り合わせのみに比べて接着信頼性はある程度まで高まるものの、狭額縁化による粘着力の低下や防水性の低下が懸念される。

　また、上記特許文献３では、レーザー光で意匠層を加熱し、その熱によって粘着テープの粘着層を軟化させるようにしているので、熱に弱い液晶表示装置等に悪影響を与えることなく剥離作業を行えるものの、剥離作業の際に粘着テープが凝集破壊を起こしてしまい、結局、特許文献１と同様に溶剤を使用しなければならない恐れがある。

　本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば狭額縁化のように有効接着面積が狭くなっても、耐衝撃性、耐寒性、防水性を十分に得て接着信頼性を高め、しかも、接着された部材を剥がす際に粘着剤組成物からなる粘着層が破断しにくく、粘着層を部材から容易に剥がすことができるようにすることにある。

　上記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ねて次の構成を備えた発明をするに至った。

　第１の発明は、透光性を有する第１部材と第２部材との間に配置され、
　上記第１部材が有する意匠層に照射されたレーザー光の照射熱により加熱される粘着剤組成物であって、
　上記粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であり、
　上記粘着剤組成物の温度が１００℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であることを特徴とするものである。

　この構成によれば、第１部材と第２部材とを接着する際には、第１部材と第２部材との間に粘着剤組成物を配置した状態で、第１部材の意匠層にレーザー光を照射すると、レーザー光が意匠層に吸収されて熱を発生し、この熱が粘着剤組成物に伝達して粘着剤組成物が加熱されて軟化する。第１部材や第２部材の接着面に凹凸や段差がある場合に、粘着剤組成物が軟化することで凹凸や段差の形状に沿うように容易に変形して隙間なく密着する。これにより第１部材と第２部材との間に高い防水性を得ることが可能になる。また、粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上の高い粘着力であるため、温度低下しても十分な粘着力を確保することが可能になり、高い耐寒性、及び耐衝撃性が得られる。

　一方、第１部材を第２部材から剥がす際には、レーザー光を再度意匠層に照射する。これにより、上記したように粘着剤組成物が軟化する。粘着剤組成物の温度が１００℃であるときに、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下であり、しかも、界面剥離の破壊現象を呈するので、第１部材を第２部材から容易に剥がすことが可能になる。粘着剤組成物が例えば第１部材に残った場合を想定すると、粘着剤組成物の温度が２５℃であるときに界面剥離の破壊現象を呈するので、例えば指で粘着剤組成物の一部を摘んで引っ張ることで粘着剤組成物からなる粘着層が破断することなく、第１部材から界面剥離していくことになる。よって、溶剤を使用したり、熱を加えたりすることなく、残った粘着剤組成物の全てを容易に剥離することが可能になる。

　第２の発明は、第１の発明において、
　上記粘着剤組成物によって形成した厚み１００μｍのダンベル状３号形による引っ張り強度が５ＭＰａ以上で、かつ、伸びが８００％以上であることを特徴とするものである。

　この構成によれば、粘着剤組成物が冷却された後にも、十分な強度を確保することが可能になるので、粘着剤組成物を第１部材や第２部材から容易に剥離することが可能になる。

　第３の発明は、第１の発明において、
　上記第１部材と上記第２部材とで挟まれて両部材に粘着した粘着剤組成物の一部に引っ張り力を加えた際に該粘着剤組成物が延伸して該部材から界面剥離することを特徴とする。

　この構成によれば、粘着剤組成物を第１部材と第２部材に接着した後、粘着剤組成物を剥がす際、粘着剤組成物の一部を摘まむ等して粘着剤組成物の一部に引っ張り力を加えると、粘着剤組成物が延伸して徐々に当該部材から剥離していき、このとき界面剥離であるため、粘着剤組成物の一部が当該部材に残ってしまうことはない。つまり、粘着剤組成物を剥離する際に溶剤等を用いることなく、簡単な作業で、きれいに剥離することが可能になる。

　第４の発明は、第１の発明において、
　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物とテルペン系粘着付与剤を含むことを特徴とするものである。

　この構成によれば、粘着力を十分に得ることが可能になる。

　第５の発明は、第１の発明において、
　テルペン系粘着付与剤の含有量は、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の６０重量部以下であることを特徴とするものである。

　すなわち、テルペン系粘着付与剤の含有量を、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の６０重量部よりも多くすると、粘着力が不十分になり、接着信頼性が低下するが、６０重量部以下にすることで、粘着力を十分に得ることが可能になる。

　第６の発明は、第１の発明において、
　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の中のジブロック成分が４０重量部以上６０重量部未満であることを特徴とするものである。

　この構成によれば、粘着力をより一層高めることが可能になる。

　第７の発明は、第１から第６のいずれか１つの発明にかかる粘着剤組成物を使用したことを特徴とするレーザー接合用粘着テープである。

　この構成によれば、第１の発明と同様な作用効果を奏することが可能になる。

　第１の発明によれば、有効接着面積が狭くなっても、耐衝撃性、耐寒性、防水性を十分に得て接着信頼性を高め、しかも、第１部材を第２部材から剥がす際に粘着剤組成物からなる粘着層が破断しにくく、容易に剥がすことができる。

　第２の発明によれば、粘着剤組成物が冷却された後にも、十分な強度を確保できるので、粘着剤組成物を第１部材や第２部材から容易に剥離することができる。

　第３の発明によれば、第１部材と第２部材とで挟まれて両部材にに粘着した粘着剤組成物の一部に引っ張り力を加えた際に該粘着剤組成物が延伸して当該部材から界面剥離するので、簡単な作業で、きれいに剥離することができる。

　第４～６の発明によれば、接着信頼性をより一層高めることができる。

　第７の発明によれば、第１から第６の発明にかかる粘着剤組成物を使用することで、接着信頼性が高く、しかも、第１部材を第２部材から容易に剥がすことができるレーザー接合用粘着テープとすることができる。

　以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。

　本発明の実施形態にかかる粘着剤組成物は、透光性を有する第１部材と第２部材との間に配置され、第１部材が有する意匠層に照射されたレーザー光の照射熱により加熱されて軟化する粘着剤組成物である。第１部材としては、例えば、液晶テレビ、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、デジタルカメラ、携帯ゲーム機等の表示画面に用いられるガラス板やアクリル板等からなる透明パネルであるが、これ以外の物であってもよい。

　透明パネルはレーザー光を透過させるレーザー光透過性を有している。レーザー光透過性とは、照射されたレーザー光の全てを透過させる場合を含むのはもちろんのこと、照射されたレーザー光をわずかに吸収する場合も含む。

　透明パネルの周縁部には、額縁部分として黒や白の印刷部分が設けられている。この印刷部分は、レーザー光を通さないレーザー光非透過性を有する意匠層で構成されている。レーザー光非透過性とは、照射されたレーザー光の全てを吸収する場合を含むのはもちろんのこと、照射されたレーザー光をわずかに透過する場合も含む。

　第２部材は、例えば上記機器の基板等を収容する筐体である。筐体はレーザー光透過性を有していてもよいし、レーザー光非透過性を有していてもよい。

　粘着剤組成物は、その粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であり、その粘着剤組成物の温度が１００℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離となるように構成成分が設定され、その含有量が設定されている。

　粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力として好ましいのは、３０Ｎ／２５ｍｍ以上である。この程度以上あれば透明パネルと筐体を、市販の一般的な粘着テープよりも強固に接着することができる。また、粘着剤組成物の温度が１００℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力として好ましいのは、８Ｎ／２５ｍｍ以下である。この程度の強度以下であれば、透明パネルと筐体とを接着した後、分離するためにレーザー光で意匠層を再加熱した場合、そのときの熱によって粘着剤組成物を加熱して透明パネルと筐体とを容易に分離することができる。

　１８０度引き剥がし粘着力を得るための試験方法は、ＪＩＳ　Ｚ　０２３７に準拠して幅２５ｍｍの試験片をステンレスＳＵＳ３０４ＢＡ鋼板に貼り付け、温度２５℃および１００℃において引き剥がし速度３００ｍｍ／分で１８０度方向へ剥がすときの剥離抵抗値を測定した（単位：Ｎ／２５ｍｍ）。

　また、粘着剤組成物は、粘着剤組成物によって形成した厚み１００μｍのダンベル状３号形による引っ張り強度が５ＭＰａ以上で、かつ、伸びが８００％以上となるように構成成分が設定され、その含有量が設定されている。この引っ張り強度は、好ましくは７ＭＰａ以上である。５ＭＰａ未満では、粘着剤組成物によって構成した粘着層の引っ張り強度が不足して、例えば指で粘着層を引っ張った場合に破断する可能性が高くなるので好ましくない。特に、透明パネルを狭額縁化にした場合は、接着可能な幅も狭くなり破断しやすくなる。

　また、上記伸びについては、好ましくは１０００％以上である。伸びが８００%未満の場合、粘着剤組成物によって構成した粘着層が硬くなっているので耐衝撃性や低温特性（耐寒性）が低下して、低温で機器が落下した場合に透明パネルが筐体から剥離する恐れがあるので好ましくない。

　引っ張り強度及び伸びの試験方法は、ＪＩＳ　K　６２５１に準拠して厚み１００μｍのダンベル状３号形の試験片を、温度２０℃において引っ張り速度5００ｍｍ／分で引っ張った時の強度と伸びを測定した。

　粘着剤組成物は、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物とテルペン系粘着付与剤を必須成分として含んでいる。主要粘着成分がホットメルトの主要成分として使用されているスチレン・イソプレン・スチレン共重合物の場合は、１８０度引き剥がし粘着力で比較した際、主要粘着成分がスチレン・ブタジェン・スチレン共重合物を使用したものに比べて小さくなる。よって、主要粘着成分がスチレン・ブタジェン・スチレン共重合物とするのが好ましい。

　また、反応性ホットメルト型接着剤として、主要成分がＵＶ硬化型アクリル系ホットメルトを使用することが考えられるが、これは次の理由から好ましくない。ＵＶ硬化型アクリル系ホットメルトを使用する場合には、接着性を発現させるためには紫外線をシートもしくはテープに直接照射する必要があるが、本実施形態のように透明パネルや筐体を接着する場合には、透明パネル側または筐体側から紫外線を照射するのが困難なためである。

　また、主要成分が湿気硬化型の反応性ウレタン樹脂ホットメルトを使用することが考えられるが、これは次の理由から好ましくない。反応性ウレタン樹脂ホットメルトの場合、シート状に加工してから裁断工程を経てテープ状にして使用するまでの加工工程全般、及び在庫の状態で湿気の吸収を完全に防ぐ対策が必要となるからである。

　主要成分がポリアミド系ホットメルト型接着剤やポリエステル系ホットメルト型接着剤や熱可塑性ポリウレタン系ホットメルト型接着剤の場合、軟化点が高いものが多くホットメルトを溶融固化させるには１００℃よりも高い温度となるまで温度上昇させる必要があり、他部品（液晶表示装置、タッチパネルセンサ）へ熱による悪影響を及ぼす可能性があるので適していない。

　主要成分がポリエチレン系ホットメルト型接着剤やポリプロピレン系ホットメルト型接着剤の場合、高温での接着性が悪くなり、さらに低温で脆くなるので使用可能温度領域が狭く、適していない。

　本実施形態では、粘着剤組成物には粘着性と柔軟性を付与するために粘着付与剤、いわゆるタッキファイアを添加する。

　この場合、１８０度引き剥がし粘着力で比較すると、テルペン系樹脂の場合、引き剥がし粘着力が３２Ｎ／２５ｍｍ(ヤスハラケミカル株式会社　ＹＳポリスターＴ－１１５　)であるのに対して、天然系粘着付与剤でもテルペン系樹脂でもない特殊ロジンエステル(荒川化学工業株式会社　スーパーエステル　Ａ－１１５)では、同２８Ｎ／２５ｍｍ、脂肪族系炭化水素樹脂(東燃石油化学株式会社　エスコレッツ１３０４)では、同３Ｎ／２５ｍｍ、脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社　アルコン　Ｍ１１５)では、同１０Ｎ／２５ｍｍと、テルペン系樹脂以外のどれを使用してもテルペン系樹脂で得られるような高い１８０度引き剥がし粘着力を得ることができなかった。

　また、本実施形態の粘着剤組成物では、テルペン系樹脂の含有量がスチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の６０重量部以下である。さらに、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物中のジブロック成分が４０重量部以上６０重量部未満である。

　テルペン系樹脂は、常温領域での粘弾性を低下させて粘着性を付与するという効果があるが、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の６０重量部よりも多くテルペン系樹脂を添加すると、低温領域では逆にガラス転移点を上げてしまうことになる。すなわち、低温領域で粘着剤組成物が固くなることにより、耐寒性が低下してしまう。

　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物のジブロック成分が４０重量部より少なくなると、粘着剤組成物が硬くなり濡れ性が悪くなることで常温領域での接着力が低下する。粘着剤組成物が硬くなると、低温領域では衝撃に弱くなってしまう。

　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物のジブロック成分が６０重量部以上になると、粘着層が軟らかくなり、常温での凝集力が低下するので１８０度引き剥がし粘着力が低下する。

　以上のことからジブロック成分が４０重量部以上６０重量部未満であると低温領域での粘着剤組成物の軟らかさを確保しながら常温領域では適度な凝集力があるのでバランスの取れた粘着剤組成物とすることができる。

　また、本実施形態では、溶液の特性を上げる添加剤としてレオロジーコントロール剤、レベリング剤、消泡剤を粘着剤組成物に配合することを妨げるものではない。

　得られた粘着剤組成物の安定性を高める目的で光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤を配合しておくことも一般的な範囲で可能である。光安定剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、リン系、アミン系のもの等が挙げられる。

　また、粘着剤組成物の物性を妨げない程度に、着色のため色素や顔料を添加してもよい。

　また、コストを下げるために物性に影響を与えない程度の充填剤の配合もしても構わない。

　また、機能性を付与するために、例えば、導電剤、難燃剤、帯電防止剤、架橋剤および可塑剤からなる群から選択された少なくとも一つを混合することも可能である。

　上記粘着剤組成物を用いて透明パネルと筐体とを接着する際には、粘着剤組成物をそのまま使用して接着してもよいし、粘着剤組成物を使用してレーザー接合用粘着テープを作成し、このレーザー接合用粘着テープを使用することができる。

　そして、透明パネルと筐体との間に粘着剤組成物を配置した状態で、透明パネルの意匠層にレーザー光を照射すると、レーザー光が意匠層に吸収されて熱を発生し、この熱が粘着剤組成物に伝達して粘着剤組成物が加熱されて軟化する。透明パネルや筐体に凹凸や段差がある場合には、粘着剤組成物が軟化することで凹凸や段差の形状に沿うように容易に変形して隙間なく密着する。これにより透明パネルと筐体との間に高い防水性を得ることが可能になる。また、粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上の高い粘着力であるため、温度低下しても十分な粘着力を確保することが可能になり、高い耐寒性、及び耐衝撃性が得られる。

　一方、透明パネルを筐体から剥がす際や、筐体を透明パネルから剥がす際には、レーザー光を再度意匠層に照射する。これにより、上記したように粘着剤組成物が軟化する。具体的には、粘着剤組成物の温度が１００℃以上となるまで加熱するが、内部の基板や液晶表示装置への熱影響がないように上限温度は設定する。粘着剤組成物の温度が１００℃であるときには、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下であり、しかも、界面剥離の破壊現象を呈するので、透明パネルを筐体から容易に剥がすことが可能になる。粘着剤組成物が例えば透明パネルに残った場合を想定すると、粘着剤組成物の温度が２５℃であるときに界面剥離の破壊現象を呈するので、例えば指で粘着剤組成物の一部を摘んで引っ張ることで粘着剤組成物からなる粘着層が破断することなく、透明パネルから界面剥離していくことになる。よって、溶剤を使用したり、熱を加えたりすることなく、残った粘着剤組成物の全てを容易に剥離することが可能になる。

　また、粘着剤組成物を透明パネルや筐体から剥離する際には、粘着剤組成物の一部を摘まむ等して引っ張り力を加えればよい。これにより、粘着剤組成物が引っ張り力を加えたところから延伸してちぎれることなく透明パネルや筐体から剥離していき、やがて全ての粘着剤組成物が透明パネルや筐体から界面剥離する。これは、粘着剤組成物が上述のように構成されていることによる。従って、粘着剤組成物を引っ張って透明パネルや筐体から剥離する際に、粘着剤組成物の一部が透明パネルや筐体に残ることはなく、溶剤等を用いる必要はない。

　したがって、本実施形態にかかる粘着剤組成物によれば、有効接着面積が狭くなっても、耐衝撃性、耐寒性、防水性を十分に得て接着信頼性を高め、しかも、透明パネルを筐体から剥がす際に粘着剤組成物からなる粘着層が破断しにくく、容易に剥がすことができる。

　以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限られるものではない。

　ジブッロク成分７８%のスチレン・ブタジェン・スチレン共重合物、いわゆるＳＢＳ　(Ｋｒａｔｏｎ製Ｄ－１１１８)　５６重量部とジブッロク成分１５%のスチレン・ブタジェン・スチレン共重合物　(ＪＳＲ株式会社製ＴＲ２６０１)　４４重量部およびタッキファイアとしてテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製ＹＳポリスターＴ－１１５)　５０重量部、オイル(株式会社クラレ製ＬＢＲ－３０５) １０重量部、酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製　イルガノックス１０１０) １重量部をトルエンに溶解して固形分４０重量部の粘着剤溶液を調整した。スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物のジブロック成分は５０重量部になる。

　アプリケーターを用いて離型ＰＥＴフィルムに乾燥皮膜が１００μｍになるように塗布して乾燥させ、厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　粘着特性を測定したところ、１８０度引き剥がし粘着力、タック、保持力、低温特性とも良好であった。

　また、上記のようにして得た厚さ１００μｍの粘着剤組成物を、厚さ２ｍｍの２枚のポリカーボネート板の間に配置し、これらポリカーボネート板に圧着力を加えてこれらポリカーボネート板を粘着剤組成物により接着した。このとき、粘着剤組成物の一部を２枚のポリカーボネート板の間から出しておく。この状態で、一方のポリカーボネート板を他方のポリカーボネート板から剥がそうと手で力を加えても剥がすことができなかった。次に、２枚のポリカーボネート板の間から出ている粘着剤組成物の一部を摘まんで引っ張り力を加えると、粘着剤組成物が延伸して２枚のポリカーボネート板の間から出てきて、途中で破断することなく、一部がポリカーボネート板に残ったりすることなく、全ての粘着剤組成物が一体となったまま剥離した。これにより、２枚のポリカーボネート板を容易に分離することができた。

　実施例１と同様に固形分４０重量部の粘着剤溶液を調整した。

　ただし、ジブッロク成分７８%スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物　(Ｋｒａｔｏｎ製Ｄ－１１１８)　４０重量部、ジブッロク成分１５%スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物　(ＪＳＲ株式会社製ＴＲ２６０１)　６０重量部とした。スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物のジブロック成分は４０重量部になる。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　低温特性がわずかに低下したが使用できるレベルであった。

　ただし、ジブッロク成分７８%スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物　(Ｋｒａｔｏｎ製Ｄ－１１１８)　７１重量部、ジブッロク成分１５%スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物　(ＪＳＲ株式会社製ＴＲ２６０１)　２９重量部とした。スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物のジブロック成分は６０重量部になる。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　タックがわずかに低下したが使用できるレベルであった。

　ただし、タッキファイアはテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製ＹＳポリスターＴ－１１５)　６０重量部に変更した。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　タックがわずかに低下したが使用できるレベルであった。

比較例１

　ただし、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物はジブッロク成分０%　(ＪＳＲ株式会社製ＴＲ２８２７)　１００重量部のみとした。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　タックが不足しており使用できないレベルであった。

比較例２

　ただし、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物はジブッロク成分７８%　(Ｋｒａｔｏｎ製Ｄ－１１１８)　１００重量部のみとした。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　保持力が不足しており使用できないレベルであった。

比較例３

　ただし、タッキファイアは特殊ロジンエステル　(荒川化学工業株式会社　スーパーエステル　Ａ－１１５)　５０重量部に変更した。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　低温特性が不足しており使用できないレベルであった。

比較例４

　ただし、タッキファイアは脂肪族系炭化水素樹脂 (東燃石油化学株式会社　エスコレッツ１３０４)　５０重量部に変更した。
実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。
タック、保持力、低温特性とも不足しており使用できないレベルであった。

比較例５

　ただし、タッキファイアは脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社　アルコン　Ｍ１１５)　５０重量部に変更した。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　保持力、低温特性が不足しており使用できないレベルであった。

比較例６

　ただし、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物をジブッロク成分２０%のスチレン・イソプレン・スチレン共重合物、いわゆるＳＩＳ　(ＪＳＲ株式会社製　ＳＩＳ５２００)　１００重量部に変更した。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　タック、保持力が不足しており使用できないレベルであった。

比較例７

　ただし、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物に変え、標準のマレーシア天然ゴム：ＳＭＲ－Ｌ　１００重量部に変更した。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　１００℃での１８０度引き剥がし粘着力が高く、引張強度が小さく使用できないレベルであった。

比較例８

　ただし、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物に変え、アクリル系粘着剤　一方社油脂工業株式会社　ソルベント型粘着剤　ＡＳ－５５３５に架橋剤　Ｂ－４５を２．７部添加して固形分４０%の粘着剤溶液とした。

　実施例１と同様に厚さ１００μｍの粘着層を作製した。

　引っ張り強度および低温特性が不足しており使用できないレベルであった。

　以上説明したように、本発明は、例えば各種電子機器や電気製品のパネルと筐体とを接着する際に用いることができる。

Claims

　透光性を有する第１部材と第２部材との間に配置され、
　上記第１部材が有する意匠層に照射されたレーザー光の照射熱により加熱されて軟化する粘着剤組成物であって、
　上記粘着剤組成物の温度が２５℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が２０Ｎ／２５ｍｍ以上で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であり、
　上記粘着剤組成物の温度が１００℃であるとき、ステンレス板からの１８０度引き剥がし粘着力が１０Ｎ／２５ｍｍ以下で、かつ、当該粘着剤組成物の破壊現象が界面剥離であることを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１に記載の粘着剤組成物において、
　上記粘着剤組成物によって形成した厚み１００μｍのダンベル状３号形による引っ張り強度が５ＭＰａ以上で、かつ、伸びが８００％以上であることを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１に記載の粘着剤組成物において、
　上記第１部材と上記第２部材とで挟まれて両部材に粘着した粘着剤組成物の一部に引っ張り力を加えた際に該粘着剤組成物が延伸して該部材から界面剥離することを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１に記載の粘着剤組成物において、
　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物とテルペン系粘着付与剤を含むことを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１に記載の粘着剤組成物において、
　テルペン系粘着付与剤の含有量は、スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の６０重量部以下であることを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１に記載の粘着剤組成物において、
　スチレン・ブタジェン・スチレン共重合物の中のジブロック成分が４０重量部以上６０重量部未満であることを特徴とする粘着剤組成物。
　請求項１から請求項６のいずれか１つに記載されている粘着剤組成物を使用したことを特徴とするレーザー接合用粘着テープ。