WO2013042414A1 - ジチエノピロール系化合物、光電変換素子用色素、これを用いた光電変換素子用半導体電極、および光電変換素子 - Google Patents
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Abstract
下記一般式(1)で表されることを特徴とするジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体。(式(1)中、R1は、置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、或いは置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。Dは、電子供与性置換基を含む有機基を表す。Z1、Z2はそれぞれ独立に、単結合、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基、ビニレン基(-CH=CH-)及びエチニレン基(-C≡C-)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む連結基を表す。Aは、酸性基を有する有機基を表す。)
Description
本発明は、ジチエノピロール系化合物、光電変換素子用色素、これを用いた光電変換素子用半導体電極、および光電変換素子に関する。
これまでの石油に代表される化石燃料の大量使用により、CO2濃度が増加して地球温暖化が深刻な問題となっている。また、化石燃料の枯渇が心配されている。そのため、今後の大量のエネルギー需要をどう賄うかが、地球規模で非常に重要な課題となっている。このような状況の中、無限でかつ、原子力発電に対してクリーンな光エネルギーを発電に利用することが積極的に検討されている。光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等の無機系材料を用いた無機系太陽電池や、有機色素や導電性高分子材料を用いた有機系太陽電池が提案されている。
このような状況の中、1991年スイスのグレッツェル博士らによって提案された色素増感型太陽電池(グレッツェル型太陽電池)(非特許文献1、特許文献1)は、簡易な製造プロセスによって、アモルファスシリコン並みの変換効率が得られることから、次世代の太陽電池として期待されている。グレッツェル型太陽電池は、導電性基材上に色素を吸着させた半導体層を有する半導体電極と、この電極に相対する導電性基材からなる対電極と、両電極間に保持された電解質層とを備えている。
このグレッツェル型太陽電池では、吸着させた色素が光吸収して励起状態となり、その励起された色素から半導体層に電子が注入される。電子の放出により酸化状態となった色素は、電解質層中のレドックス剤の酸化反応により色素に電子が移動することで、元の色素に戻る。そして、色素に電子を供与したレドックス剤は、対電極側で再び還元される。この一連の反応によって電池として機能する。
このグレッツェル型太陽電池では、半導体層に微粒子を焼結させた多孔性の酸化チタンを用いたことで有効な反応表面積が約1000倍にも増大し、従来よりも大きな光電流を取り出せたことが大きな特徴となっている。
このグレッツェル型太陽電池では、半導体層に微粒子を焼結させた多孔性の酸化チタンを用いたことで有効な反応表面積が約1000倍にも増大し、従来よりも大きな光電流を取り出せたことが大きな特徴となっている。
グレッツェル型太陽電池では、増感色素としてルテニウム錯体等の金属錯体が用いられ、具体的には、例えば、シス-ビス(イソチオシアナト)-ビス-(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)ルテニウム(II)二テトラブチルアンモニウム錯体、シス-ビス(イソチオシアナト)-ビス-(2,2’-ビピリジル-4,4’-ジカルボン酸)ルテニウム(II)等のルテニウムのビピリジン錯体や、テルピリジン錯体の一種であるトリス(イソチオシアナト)(2,2’:6’,2’’-テルピリジル-4,4’,4’’-トリカルボン酸)ルテニウム(II)三テトラブチルアンモニウム錯体が用いられる。
Nature,353巻,p.737-740(1991)
金属錯体を用いた色素増感型太陽電池の問題点は、色素の原料にルテニウム等の貴金属を用いることにある。このような金属錯体を用いて色素増感型太陽電池を大量生産する場合、資源的な制約が問題となり、且つ太陽電池が高価なものになり、普及の妨げにもなる。
このため、色素増感型太陽電池における増感色素として、ルテニウム等の貴金属を含まない有機色素の開発が求められている。一般に有機色素はルテニウム錯体等の金属錯体に比べてモル吸光係数が大きく、さらに分子設計の自由度も大きいことから高い光電変換効率の色素の開発が期待されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、光電変換特性に優れた光電変換素子用色素、これを用いた光電変換素子用半導体電極、および光電変換素子、並びに光電変換特性に優れたジチエノピロール系化合物等を提供することにある。
一実施形態は、
下記一般式(1)で表されることを特徴とするジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体に関する。
下記一般式(1)で表されることを特徴とするジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体に関する。
光電変換特性に優れたジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<ジチエノピロール系化合物>
本実施形態である光電変換素子用の色素に好適なジチエノピロール系化合物は、以下の一般式(1)で表される化合物である。
本実施形態である光電変換素子用の色素に好適なジチエノピロール系化合物は、以下の一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)のR1は、置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、或いは置換若しくは無置換のヘテロアリール基を表す。
置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルキル基において、アルキル基の炭素数は例えば1~30、好ましくは1~24であり、前記炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、1-オクチルノニル基、1-(3’,7’-ジメチルオクチル)-4,8-ジメチルノニル基等が挙げられる。
本発明において、置換アルキル基は、アルキル基(無置換アルキル基)が任意の置換基で置換された置換アルキル基でよい。置換アルキル基の置換基は、1でも複数でもよく、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。置換アルキル基の置換基は、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリール基(例えばフェニル基)等が挙げられる。置換アルキル基としては、具体的には、例えば、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられる。また、R1はアルキル基を構造中に含む基(アルキルアミノ基、アルコキシ基、アルカノイル基等)とすることもでき、この場合、アルキル基は上記と同様である。
置換若しくは無置換のアリール基としては、炭素数は例えば5~24、好ましくは6~14であり、前記炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
本発明において、置換アリール基は、アリール基(無置換アリール基)が、任意の置換基で置換された置換アリール基でもよい。置換アリール基の置換基は、1でも複数でもよく、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。置換アリール基の置換基は、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。本発明において置換または無置換のアリール基としては、具体的には、例えば、フェニル基、ビフェニル基、トリル基、4-tert-ブチルフェニル基、3,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヘキシルオキシフェニル基、4-オクチルオキシフェニル基、3,4,5-トリオクチルオキシフェニル基、3,4,5-トリデシルオキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、および4-クロロフェニル基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のヘテロアリール基としては、炭素数が例えば5~24、好ましくは6~14であり、前記炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。具体的には、例えば、ピリジル基、キノリル基、アクリジル基、フラニル基、チエニル基、カルバゾイル基等が挙げられる。置換ヘテロアリール基は、ヘテロアリール基(無置換ヘテロアリール基)が、任意の置換基で置換された置換ヘテロアリール基である。置換ヘテロアリール基の置換基は、1でも複数でもよく、複数の場合は、同一でも異なっていてもよい。置換ヘテロアリール基の置換基は、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。置換ヘテロアリール基としては、具体的には、3-ヘキシルチエニル基、3-オクチルチエニル基、3-メトキシチエニル基、N-エチルカルバゾイル基等が挙げられる。
また、Dは、電子供与性置換基を含む有機基を表す。電子供与性置換基とは、一般式(1)中、Dが結合するZ1及びジチエノピロール骨格に対して電子供与の働きを示す置換基を意味する。電子供与性置換基を含む有機基Dとしては、一般式(2)、一般式(3)で表される有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
置換若しくは無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1~8のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられ、この炭素数には置換基の炭素数を含まないものとする。アルキル基に結合する置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば炭素数1~4のアルコキシ基)、フェニル基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のアリール基としては、フェニル基、トリル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-ヘキシルオキシフェニル基、4-オクチルオキシフェニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基、4-(N,N-ジオクチルアミノ)フェニル基、4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル基、α,α-ジメチルベンジルフェニル基、ビフェニル基等の炭素数6~22の置換若しくは無置換のアリール基が挙げられ、炭素数には、置換基の炭素数は含まないものとする。
アリール基に結合する置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~8のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、炭素数1~12のアルコキシ基)、N,N-ジアルキルアミノ基(アルキル基部分は例えば、炭素数1~12のアルキル基)、N,N-ジフェニルアミノ基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のヘテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、インドリル基、カルバゾイル基等が挙げられ、ヘテロアリール基に結合する置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~8のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、炭素数1~8のアルコキシ基)等が挙げられる。
また、Ar3は置換若しくは無置換のアリーレン基又は置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。
置換若しくは無置換のアリーレン基におけるアリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、アリーレン基に結合する置換基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~8のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、炭素数1~8のアルコキシ基)等が挙げられる。
置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基としては、チオフェンジイル基、フランジイル基、ピロールジイル基等が挙げられ、ヘテロアリーレン基に結合する置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1~8のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば炭素数1~8のアルコキシ基等が挙げられる。)。
R2~R5はそれぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。)、置換若しくは無置換のアリール基(フェニル基、トリル基、4-t-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基等が挙げられる。)、置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。)、ヒドロキシ基或いはN,N-ジアルキルアミノ基(例えば、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基)を表す。
また、電子供与性置換基を含む有機基Dとしては、式(D1)~(D9)で表される有機基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Z1、Z2はそれぞれ独立に、単結合、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基、ビニレン基(-CH=CH-)及びエチニレン基(-C≡C-)からなる群から選ばれる少なくとも一種の炭化水素基や単結合を有する連結基である。連結基Z1、Z2は、少なくとも一部の構造として、単結合、置換若しくは無置換のアリーレン基、置換若しくは無置換のヘテロアリーレン基、ビニレン基(-CH=CH-)、エチニレン基(-C≡C-)を有し、これらの基の中で同種又は異なる種類の基を複数、含んでいても良い。例えば、連結基Z1、Z2が、複数のアリーレン基やヘテロアリーレン基を含む場合、これらの環を構成する炭素原子同士が単結合により結合しても良いし、環同士が直接、縮合環を形成しても良い。また、連結基Z1、Z2は一部の構造として、これらの基以外の基を含んでいても良い。連結基Z1、Z2は、特に限定されないが、Z1が結合している電子供与性置換基D、Z2が結合している酸性基を有する有機基Aと共役可能な原子団であることが好ましい。
また、連結基Z1、Z2はそれぞれ独立に、少なくとも一部の構造として、単結合又は少なくとも下記一般式(4)で表される構造を有する連結基であることが好ましい。
置換若しくは無置換のアルキル基におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1~8のアルキル基が挙げられ、アルキル基に結合する置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。
前記一般式(4)中、Yは酸素原子、硫黄原子または-NRa-を表し、Raは水素原子、置換若しくは無置換の直鎖又は分枝アルキル基或いは置換若しくは無置換のアリール基を表す。
Raが置換若しくは無置換のアルキル基の場合におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1~8のアルキル基、ベンジル基等のアラルキル基が挙げられ、アルキル基に結合する置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェニル基等が挙げられる。
置換若しくは無置換のアリール基としては、フェニル基、トリル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニル基等が挙げられる。アリール基に結合する置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、N,N-ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
前記連結基Z1、Z2の具体的な例を化学式(Z1)~(Z29)に示すが、これらに限定されるものではない。Z1、Z2において、ヘテロアリーレン基及びアリーレン基が複数ある場合は、それら環を構成する炭素同士が直接結合するか、または縮合環を形成して結合している。また、これらの連結基が複数個、連結した基であってもよい。
一般式(1)で表わされるジチエノピロール系化合物は、半導体電極に用いられる半導体層に吸着させる観点から、半導体層に吸着できる官能基を有することが好ましく、有機基Aの酸性基がその官能基の役割を果たすことができる。酸性基を有する有機基Aの具体的な例を化学式(A1)~(A16)で示すが、これらに限定されるものではない。これらの有機基Aは酸性基の他に例えば、炭素-炭素二重結合を有し、この炭素-炭素二重結合の一方の炭素に連結基Z2の一方の結合手が結合し、他方の炭素にシアノ基、カルボニル基、他の炭素-炭素二重結合の炭素、炭素-窒素二重結合の炭素等のいずれかが結合している。
この塩を形成しうる陽イオンとしては、カルボキシ基と塩を形成し得る各種の陽イオンが挙げられる。このような陽イオンとしては、例えば、アンモニウムカチオン(NH4
+);アミンから誘導された有機アンモニウムカチオン(A1A2A3A4N+、A1~A4はそれぞれ独立に、水素原子または有機基を示すが、その少なくとも1つは有機基である);Li+、Na+、K+、Cs+等のアルカリ金属イオン;Mg2+、Ca2+、Sr2+等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。なお、Mがアルカリ土類金属イオン等の2価の陽イオンの場合、一般式(5)で表されるAを含む一般式(1)のジチエノピロール系化合物等は二量体等を形成している。有機アンモニウムカチオンの有機基としては、例えば、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。
また、前記一般式(1)で表されるジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体におけるDおよびZ1、Z2、Aの組み合わせはとしては、例えば、下記表1~6の(a-1)~(l-29)が挙げられる。
本実施形態による光電変換素子の一例の断面構造を模式的に図1に示す。図1に示した光電変換素子は、半導体電極4と、対電極8と、両極間に保持された電解質層(電荷輸送層)5と、を備える。半導体電極4は、光透過性基板3及び透明導電層2を含む導電性基板と、半導体層1と、を備える。対電極8は、触媒層6と、基板7と、を備える。なお、半導体層1には上記で説明したジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体である色素が吸着されている。
この光電変換素子に光が入射すると、半導体層1に吸着している色素が励起され、電子を放出する。この電子は、半導体の伝導帯に移動し、さらに拡散により透明導電層2に移動する。透明導電層2中の電子は、外部回路(図示せず)を経由して、対電極8に移動する。そして、電子を放出した色素(酸化された色素)は、電解質層5から電子を受け取り(還元され)、もとの状態に戻り、色素が再生する。一方、対極に移動した電子は電解質層に付与され、電解質が還元される。このようにして光電変換素子は電池として機能する構成となっている。以下、図1に示す光電変換素子を例に挙げて各構成要素を説明する。
<半導体電極>
半導体電極4は、光透過性基板3及び透明導電層2を含む導電性基板と、半導体層1と、を備える。図1に示すように、光透過性基板3と、透明導電層2と、半導体層1と、が素子の外側から内側に向かってこの順に積層されている。この半導体層1には色素(図示せず)が吸着されている。
半導体電極4は、光透過性基板3及び透明導電層2を含む導電性基板と、半導体層1と、を備える。図1に示すように、光透過性基板3と、透明導電層2と、半導体層1と、が素子の外側から内側に向かってこの順に積層されている。この半導体層1には色素(図示せず)が吸着されている。
<導電性基板>
半導体電極4の導電性基板は、基板自体が導電性を有している単層構造、または、基板上に導電層を形成した2層構造であってもよい。図1に示す光電変換素子の導電性基板は、光透過性基板3上に、透明導電層2を形成した2層構造を有している。
半導体電極4の導電性基板は、基板自体が導電性を有している単層構造、または、基板上に導電層を形成した2層構造であってもよい。図1に示す光電変換素子の導電性基板は、光透過性基板3上に、透明導電層2を形成した2層構造を有している。
導電性基板に用いられる基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、金属板などが挙げられ、中でも光透過性の高い基板、例えば透明なプラスチック基板が特に好ましい。透明なプラスチック基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
また、基板(例えば光透過性基板3)上に形成される導電層(例えば透明導電層2)は、特に限定されるものではないが、例えば酸化インジウムスズ(Indium-Tin-Oxide:ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(Fluorine doped Tin Oxide:FTO)、インジウム-亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、酸化スズ(SnO2)などの透明材料から構成された透明導電層が好ましい。基板上に形成される導電層は、基板の全面または一部の面に膜状に形成することができる。この導電層の膜厚は、適宜選択することができるが、0.02μm以上10μm以下程度が好ましい。このような導電層は、通常の成膜技術を利用して形成できる。
なお、本実施形態における導電性基板は、導電性基板の抵抗を下げる目的で、金属リード線を用いることもできる。金属リード線の材質は、アルミニウム、銅、金、銀、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、蒸着、スパッタリング等で作製できる。基板(例えば光透過性基板3)上に金属リード線を形成した後、この金属リード線上に導電層(例えばITOやFTO等の透明導電層2)を設けることができる。または基板(例えば光透過性基板3)上に導電層(例えば透明導電層2)を設けた後、この導電層上に金属リード線を作製してもよい。
以下の本実施形態の説明は、半導体電極の導電性基板として、光透過性基板3上に透明導電層2を形成した2層構造の導電性基板を用いた例を前提に説明するが、この例に限定されるものではない。
<半導体層>
半導体層1を構成する材料としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、金属カルコゲナイド等の化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。
半導体層1を構成する材料としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、金属カルコゲナイド等の化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。
金属カルコゲナイドとしては、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、インジウム、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、ストロンチウム、ハフニウム、セリウム、ランタン等の酸化物;カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマス等の硫化物;カドミウム、鉛等のセレン化物;カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては、亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物;ガリウム砒素;銅-インジウム-セレン化物;銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム等の通常知られている半導体化合物が挙げられる。これらの半導体材料は単独で用いることも2種類以上を混合して用いることもできる。
これらの半導体材料の中でも、変換効率、安定性、安全性の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を含む半導体材料が好ましく、酸化チタンを含む半導体材料がより好ましい。酸化チタンとしては、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの種々のタイプの酸化チタンが挙げられ、また、含酸化チタン複合体を用いることができる。これらの中でも、光電変換の安定性をさらに向上させる観点からは、アナターゼ型酸化チタンが好ましい。
半導体層の形態としては、半導体微粒子などを焼結することにより得られる多孔性の半導体層、ゾル-ゲル法やスパッタ法、スプレー熱分解法などにより得られる薄膜状半導体層等が挙げられる。また、繊維状半導体層や、針状晶からなる半導体層としてもよい。これらの半導体層の形態は、光電変換素子の使用目的に応じて、適宜選択することができる。これらの中でも、色素吸着量などの観点から、多孔性の半導体層、針状晶からなる半導体層などの比表面積の大きな半導体層が好ましい。さらに、半導体微粒子の粒径により入射光の利用率などを調整できる観点から、半導体微粒子から形成される多孔性の半導体層が好ましい。また、半導体層は、単層であっても多層であってもよい。多層にすることによって、充分な厚さの半導体層をさらに容易に形成することができる。また、半導体微粒子から形成される多孔性の半導体層が多層の場合は、半導体微粒子の平均粒径の異なる複数の半導体層からなってもよい。例えば、光入射側に近い方の半導体層(第1半導体層)の半導体微粒子の平均粒径を、光入射側から遠い方の半導体層(第2半導体層)より小さくしてもよい。このようにすれば、第1半導体層で多くの光を吸収させるとともに、第1半導体層を通過した光を第2半導体層で効率よく散乱させて第1半導体層に戻し、戻した光を第1半導体層で吸収させることにより、全体の光吸収率をより一層向上させることができる。
半導体層の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、変換効率などの観点より、例えば0.5μm以上45μm以下とすることができる。半導体層の比表面積は、多量の色素を吸着させる観点から、例えば10m2/g以上200m2/g以下とすることができる。
また、多孔性の半導体層に色素を吸着させた構成の場合、電解質中のイオンがさらに充分に拡散して電荷輸送が行われる観点から、多孔性の半導体層の空隙率は例えば40%以上80%以下とすることが好ましい。ここで、空隙率とは、半導体層の体積のうち当該半導体層中の細孔が占める体積の割合をパーセントで示したものである。
<半導体層の形成方法>
次に、半導体層1の形成方法について、多孔性の半導体層を例にとって説明する。多孔性の半導体層は、例えば、次のようにして形成することができる。
次に、半導体層1の形成方法について、多孔性の半導体層を例にとって説明する。多孔性の半導体層は、例えば、次のようにして形成することができる。
まず、半導体微粒子を樹脂などの有機化合物および分散剤とともに、有機溶媒や水など分散媒に加えて懸濁液を調製する。そして、この懸濁液を導電性基板(図1では透明導電層2)上に塗布し、これを乾燥、焼成して、半導体層が得られる。半導体微粒子とともに分散媒に有機化合物を添加しておくと、焼成時に有機化合物が燃焼して、多孔性の半導体層内にさらに充分な隙間(空隙)を確保することが可能となる。また焼成時に燃焼する有機化合物の分子量や添加量を制御することで空隙率を変化させることができる。
使用する有機化合物としては、懸濁液中に溶解し、焼成するときに燃焼して除去できるものであれば特に制限されない。例えば、ポリエチレングリコール、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シリコーン樹脂が挙げられ、また、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のビニル化合物の重合体や共重合体等が挙げられる。有機化合物の種類や配合量は、使用する微粒子の種類や状態、懸濁液の組成比や総重量等に応じて適宜選択することができる。その際、半導体微粒子の割合が懸濁液全体の総重量に対して10質量%以上のときは、作製した膜の強度をより一層、充分に強くすることができ、半導体微粒子の割合が懸濁液全体の総重量に対して40質量%以下であれば、空隙率が大きな多孔性の半導体層をより一層安定的に得ることができるため、半導体微粒子の割合は懸濁液全体の総重量に対して10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
半導体微粒子としては、適当な平均粒径、例えば、1nm以上500nm以下程度の平均粒径を有する単一または複数の化合物半導体の粒子などを用いることができる。その中でも比表面積を大きくするという点からは、1nm以上50nm以下程度の平均粒径のものが望ましい。また入射光の利用率を高めるために、200nm以上400nm以下程度の平均粒径の比較的大きな半導体粒子を添加してもよい。
また、半導体微粒子の製造方法としては、水熱合成法などのゾル-ゲル法、硫酸法、塩素法などが挙げられ、目的の微粒子を製造できる方法であれば制限されないが、結晶性の観点からは、水熱合成法により合成することが好ましい。
懸濁液の分散媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグライム系溶媒;イソプロピルアルコール等のアルコール類;イソプロピルアルコール/トルエン等の混合溶媒;水等が挙げられる。
懸濁液の塗布は、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法等の通常の塗布方法により行うことができる。懸濁液の塗布後に行う塗膜の乾燥、焼成の条件は、例えば大気下または不活性ガス雰囲気下、50℃以上800℃以下程度の範囲内で、10秒から12時間程度とすることができる。この乾燥および焼成は、単一の温度で1回または温度を変化させて2回以上行うことができる。
多孔性の半導体層以外の他の種類の半導体層は、光電変換素子に用いられる半導体層の通常の形成方法を用いて形成することができる。
<色素>
本実施形態による光電変換素子における色素としては、上述した、一般式(1)で表されるジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体を用いることができる。
本実施形態による光電変換素子における色素としては、上述した、一般式(1)で表されるジチエノピロール系化合物、その互変異性体若しくは立体異性体を用いることができる。
半導体層1に色素を吸着させる方法としては、例えば、色素を溶かした溶液に、半導体基板(すなわち半導体層1を備えた導電性基板)を浸漬させる方法、あるいは色素溶液を半導体層に塗布して吸着させる方法が挙げられる。
この色素溶液の溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等のニトリル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;水を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
この色素溶液に半導体基板を浸漬させている際に、溶液を攪拌したり、加熱還流をしたり、超音波を印加したりすることもできる。
色素の吸着処理を行った後、吸着されずに残った色素を取り除くために、アセトニトリル等の溶媒で洗浄することが望ましい。
色素の担持量は、1×10-10以上1×10-4mol/cm2以下の範囲内に設定でき、1×10-9以上9.0×10-6mol/cm2以下の範囲が好ましい。この範囲内であれば、経済的且つ十分に光電変換効率向上の効果を得ることができる。
また、光電変換できる波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるために、二種以上の色素を混合して用いてもよく、その場合、色素の吸収波長域と強度を考慮して、色素の種類と割合を適宜選択することが好ましい。
また、色素同士の会合による変換効率の低下を抑制するため、色素を吸着させる際に添加剤を併用してもよい。このような添加剤としては、カルボキシ基を有するステロイド系化合物(例えば、デオキシコール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸等)が挙げられる。
<対電極>
本実施形態による光電変換素子における対電極8は、基板7上に触媒層6を有している。この光電変換素子では、光の入射に起因して半導体層1に吸着した色素から発生したホールが、電解質層5を通して対電極8まで運ばれるが、対電極8は電子とホールが効率よく対消滅するという機能を果たせれば材料に制限はない。
本実施形態による光電変換素子における対電極8は、基板7上に触媒層6を有している。この光電変換素子では、光の入射に起因して半導体層1に吸着した色素から発生したホールが、電解質層5を通して対電極8まで運ばれるが、対電極8は電子とホールが効率よく対消滅するという機能を果たせれば材料に制限はない。
対電極8の触媒層6は、蒸着法などによって、基板7上に金属蒸着膜として形成することができる。例えば、基板7に形成されたPt層であってもよい。また、対電極8の触媒層6には、ナノカーボン材料を含んでいてもよい。例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン又はカーボンファイバーを含んだペーストを多孔性絶縁膜上に焼結して対電極8の触媒層6を形成してよい。ナノカーボン材料は比表面積が大きく、電子とホールの対消滅確率を向上できる。
基板7としては、ガラスや高分子フィルム等の透明基板、金属板(箔)などが挙げられる。光透過性の対電極8を作製する場合は、基板7として透明導電膜付きガラスを選択し、その上に蒸着法やスパッタ法を用いて白金やカーボンなどを触媒層6として形成して作製することができる。
<電解質層>
本実施形態による光電変換素子における電解質層5は、光の入射に起因して半導体層1に吸着した色素から発生したホールを対電極8へ輸送する機能を有する。このような電解質層としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、有機正孔輸送材料等を用いることができる。
本実施形態による光電変換素子における電解質層5は、光の入射に起因して半導体層1に吸着した色素から発生したホールを対電極8へ輸送する機能を有する。このような電解質層としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、有機正孔輸送材料等を用いることができる。
この電解質層は、電解質、溶媒及び添加剤から構成することができる。電解質としては、LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩等のヨウ化物とI2との組み合わせ;LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩等の臭化物とBr2との組み合わせ;フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩やフェロセン-フェリシニウムイオン等の金属錯体;ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール-アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物;ビオロゲン色素;ヒドロキノン-キノン等が挙げられる。これらの中でも、LiIとピリジニウムヨーダイドとの組み合わせ、またはイミダゾリウムヨーダイドとI2との組み合わせが好ましい。また、上記の電解質は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、電解質として、室温で溶融状態の溶融塩を用いることもでき、この場合は溶媒を用いなくてもよい。
この電解質層に用いられる溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;γ-ブチロラクトンやバレロラクトン等のラクトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒;2-メチル-3-オキサゾリジノン、2-メチル-1,3-ジオキソラン等の複素環化合物等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
この電解質層には、暗電流を抑制するために塩基性化合物を加えてもよい。塩基性化合物の種類としては、特に限定されるものではないが、t-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等が挙げられる。塩基性化合物を添加する場合の添加濃度は、例えば、0.05mol/L以上2mol/L以下程度とすることができる。
電解質として、固体状の電解質を用いることもできる。この固体状の電解質としては、ゲル電解質や完全固体電解質を用いることができる。
ゲル電解質としては、ゲル化剤中に電解質もしくは常温溶融塩を添加したものを用いることができる。ゲル化の方法としては、ポリマーやオイルゲル化剤の添加、共存する多官能モノマー類の重合、または、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化できる。
ポリマーの添加によりゲル化させる際のポリマーとしては、ポリアクリロニトリルやポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。オイルゲル化剤としては、ジベンジルデン-D-ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス-(1R,2R)-1,2-シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N-オクチル-D-グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム塩誘導体等が挙げられる。
多官能モノマーの重合によりゲル化を行う場合、使用するモノマーとしては、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であるのが好ましく、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。ゲル化の際、多官能モノマー以外に単官能モノマーを含んでもよい。単官能モノマーとしては、アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸やα-アルキルアクリル酸類から誘導されるエステル類;アミド類;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸やフマル酸から誘導されるエステル類;ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン等のジエン類;スチレン、p-クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するビニル化合物;4級アンモニウム塩を有するビニル化合物;その他、N-ビニルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニリデンフルオライド、ビニルアルキルエーテル類、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。モノマー全量に占める多官能モノマーは、0.5質量%以上70質量%以下が好ましく、1.0質量%以上50質量%以下がより好ましい。
ゲル化のための上記モノマーの重合は、ラジカル重合法により行うことができる。このラジカル重合は、加熱、光、紫外線もしくは電子線により、または電気化学的に行うことができる。加熱により架橋高分子を形成する場合に用いる重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、モノマーの総量に対して0.01質量%以上15質量%以下が好ましく、0.05質量%以上10質量%以下がより好ましい。
ポリマーの架橋反応によりゲル化を行う場合、架橋反応に必要な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。好ましい架橋性反応基は、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環であり、好ましい架橋剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等の窒素原子に対して求電子置換反応が可能な2官能以上の化合物が挙げられる。
完全固体電解質としては、電解質とイオン伝導性高分子化合物の混合物を用いることができる。このイオン伝導性高分子化合物としては、例えば、ポリエーテル類、ポリエステル類、ポリアミン類、ポリスルフィド類等の極性高分子化合物が挙げられる。
本実施形態による光電変換素子においては、電荷輸送材料として、ヨウ化銅、チオシアン化銅等の無機の正孔輸送材料を用いることができる。この無機の正孔輸送材料は、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解めっき等の方法により電極内部に導入することができる。
本実施形態による光電変換素子においては、電荷輸送材料としての電解質の代わりに有機の正孔輸送材料を使用することができる。有機正孔輸送材料としては、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(例えばAdv.Mater.2005,17,813に記載の化合物)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン等の芳香族ジアミン(例えば米国特許第4,764,625号明細書に記載の化合物)、トリフェニルアミン誘導体(例えば特開平4-129271号公報に記載の化合物)、スチルベン誘導体(例えば特開平2-51162号公報に記載の化合物)、ヒドラゾン誘導体(例えば特開平2-226160号公報に記載の化合物)等が挙げられる。有機正孔輸送材料は、真空蒸着法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法等の方法により電極内部に導入することができる。
本実施形態の光電変換素子の電解質層5の作製は、例えば、以下の2通りの方法により行うことができる。一つは、色素を吸着させた半導体層1の上に、先に対電極8を貼り合わせて、その隙間に液状の電解質層5を導入する方法である。もう一つは、半導体層1の上に直接電解質層5を形成する方法である。後者の場合、対電極8は電解質層5を形成した後、その上に形成することになる。
以上に説明した光電変換素子を用いて光電気化学電池を提供することができる。この光電気化学電池は、太陽電池として好適に利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
<ジチエノピロール系化合物DTP-1の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-1を合成した。
<ジチエノピロール系化合物DTP-1の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-1を合成した。
次に、14.9gのA1とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)3.55gを脱水クロロホルム250mlに溶解し、そこにオキシ塩化リン7.46gを加え、4時間加熱還流させた。室温に冷却し、飽和酢酸ナトリウム水溶液150mlを加え、有機層をクロロホルムで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製することでA2を15.9g得た。
次に、11.6gのA2をテトラヒドロフラン(THF)400mlに溶解し、そこに0℃でN-ブロモコハク酸イミド(NBS)5.24gを加え、4時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノールの順に洗浄した。さらに、ヘキサン/クロロホルム(9/1)80ml中で攪拌洗浄することでA3を12.6g得た。
次に、6gのB1(Chem. Commun. 2009年、2198-2200頁に記載の方法で合成)を脱水THF60mlに溶解し、そこにアルゴン雰囲気下、-78℃でn-ブチルリチウム(1.64Mヘキサン溶液)7.7mlを加え、2時間攪拌した。そして、塩化トリブチルスズ4.33gを加え、その温度で1時間攪拌し、さらに室温で一晩攪拌した。反応溶媒に水200mlを加え、有機層をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去することでB2を7.1g得た。
次に、2.47gのA3と5.93gB2をジオキサン60mlに溶解し、そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.181gを加え、100℃で10時間攪拌する。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:トルエン/クロロホルム=10/1)で精製することでB3を3.98g得た。
次に、0.3gのB3とシアノ酢酸0.039g、ピペリジン0.065gをクロロホルム20mlに溶解し、11時間加熱還流させた。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣に少量のTHFを加え、それを水400mlに滴下し、希塩酸で酸性にする。析出した結晶をろ別し、水洗し、乾燥する。得られた結晶をヘキサンで洗浄することで目的のDTP-1を0.15g得た(収率47%)。
得られたジチエノピロール系化合物DTP-1の1H-NMR(THF-d8)の測定結果は次の通りであった:δが8.29(1H,s)、8.02(1H,s)、7.50-7.54(5H,m)、7.38(1H,s)、7.15(4H,d)、6.86(2H,d)、6.83(4H,d)、4.38(4H,dd)、3.94(4H,t)、1.73-1.79(4H,m)、1.45-1.55(4H,m)、1.43(18H,s)、1.34-1.39(8H,m)、0.92(6H,t)。
また、得られたジチエノピロール系化合物DTP-1(色素)のTHF中の吸収スペクトル曲線を図2に示す。本ジチエノピロール系化合物DTP-1の極大吸収波長(λmax)は537nmであった。
(実施例2)
<ジチエノピロール系化合物DTP-2の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-2を合成した。
<ジチエノピロール系化合物DTP-2の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-2を合成した。
次に、10gのC2を乾燥THF160mlに溶解し、そこにアルゴン雰囲気下、-78℃でn-ブチルリチウム(1.64Mヘキサン溶液)15.4mlを加え、2時間攪拌した。そして、塩化トリブチルスズ8.01gを加え、その温度で1時間攪拌し、さらに室温で一晩攪拌した。反応溶媒に水300mlを加え、有機層をジエチルエーテルで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去することでC3を12.74g得た。
次に4.26gのC3と実施例1で合成したA3を2g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.146gをジオキサン50mlに溶解し、100℃で8時間攪拌する。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:トルエン/クロロホルム=2/1)で精製することでC4を2.41g得た。
次に、0.54gのC4とシアノ酢酸0.078g、ピペリジン0.13gをクロロホルム30mlに溶解し、12時間加熱還流させた。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣に少量のTHFを加え、それを水400mlに滴下し、希塩酸で酸性にする。析出した結晶をろ別し、水洗し、乾燥する。得られた結晶をヘキサンで洗浄することで目的のDTP-2を0.27g得た(収率46%)。
得られたジチエノピロール系化合物DTP-2の1H-NMR(THF-d8)の測定結果は次の通りであった:δが8.28(1H,s)、7.94(1H,s)、7.48(1H,s)、7.47(1H,s)、7.19-7.26(8H,m)、7.09-7.16(8H,m)、7.05(4H,d)、6.56(1H,d)、1.65(12H,s)、1.40(18H,s)。
また、得られたジチエノピロール系化合物DTP-2(色素)のTHF中の吸収スペクトル曲線を図3に示す。本ジチエノピロール系化合物DTP-2のλmaxは504nmであった。
(実施例3)
<ジチエノピロール系化合物DTP-3の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-3を合成した。
<ジチエノピロール系化合物DTP-3の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-3を合成した。
次に、11.4gのD1とN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)2.95gを脱水クロロホルム230mlに溶解し、そこにオキシ塩化リン6.18gを加え、6時間加熱還流させた。室温に冷却し、飽和酢酸ナトリウム水溶液150mlを加え、有機層をクロロホルムで抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:ヘキサン/クロロホルム=1/1)で精製することでD2を11.8g得た。
次に、10gのD2をテトラヒドロフラン(THF)400mlに溶解し、そこに0℃でN-ブロモコハク酸イミド(NBS)5.24gを加え、3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノールの順に洗浄した。さらに、ヘキサン/クロロホルム(4/1)80ml中で攪拌洗浄することでD3を12g得た。
次に、3gのD3と実施例1で合成したB2 7.53gをジオキサン70mlに溶解し、そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.248gを加え、100℃で10時間攪拌する。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:トルエン/クロロホルム=1/10)で精製することでD4を4.63g得た。
次に、0.4gのD4とシアノ酢酸0.055g、ピペリジン0.092gをクロロホルム30mlに溶解し、11時間加熱還流させた。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣に少量のTHFを加え、それを水400mlに滴下し、希塩酸で酸性にする。析出した結晶をろ別し、水洗し、乾燥する。得られた結晶をヘキサンで洗浄することで目的のDTP-3を0.227g得た(収率53%)。
得られたジチエノピロール系化合物DTP-3(色素)のTHF中の極大吸収波長(λmax)は538nmであった。
(実施例4)
<ジチエノピロール系化合物DTP-17の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-17を合成した。
<ジチエノピロール系化合物DTP-17の合成>
下記の反応式に従って、下記の通り、ジチエノピロール系化合物DTP-17を合成した。
次に、8.54gのE1と5gのA3をジオキサン100mlに溶解し、そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.365gを加え、100℃で7時間攪拌する。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:トルエン/クロロホルム=5/1)で精製することでE2を4.8g得た。
次に、1.1gのE2をDMF10mlに溶解し、そこにNBS0.269gを加え、室温で2時間攪拌する。反応溶液にエーテル200mlを加え、有機層を3%炭酸水素ナトリム水溶液、水の順に洗浄する。硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧下留去することでE3を1.01g得た。
次に、0.9gのE3と実施例1で合成したB2 1.268gをジオキサン20mlに溶解し、そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.039gを加え、100℃で6時間攪拌する。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラム(溶出溶媒:トルエン/クロロホルム=2/1)で精製することでE4を0.61g得た。
次に、0.57gのE4とシアノ酢酸0.074g、ピペリジン0.11gをクロロホルム15mlに溶解し、10時間加熱還流させた。放冷後、溶媒を減圧下留去し、残渣に少量のTHFを加え、それを水400mlに滴下し、希塩酸で酸性にする。析出した結晶をろ別し、水洗し、乾燥する。得られた結晶をヘキサンで洗浄することで目的のDTP-17を0.563g得た(収率94%)。
得られたジチエノピロール系化合物DTP-17の1H-NMR(ジクロロメタン-d2)の測定結果は次の通りであった:δが8.16(1H,s)、7.70(1H,s)、7.4-7.55(5H,br)、6.7-7.1(13H,br)、4.28(4H,br)、3.92(4H,t)、1.7-1.8(4H,m)、1.58-1.68(4H,br)、1.44(18H,s),1.25-1.5(26H,br)、1.0.84-0.95(12H,m)。
また、得られたジチエノピロール系化合物DTP-17(色素)のλmaxは505nmであった。
(実施例5)
<光電変換素子の作製>
光電変換素子を次のようにして作製した。
(a)半導体電極および対電極の作製
まず、半導体電極を次の順序で作製した。サイズが15mm×15mmで厚さが1.1mmのFTO付きガラス(10Ωcm2)を、導電性基板(透明導電層付き光透過性基板)として準備した。また、酸化チタンペースト(半導体層の材料)を次のようにして調製した。市販の酸化チタン粉末(商品名:P25、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径:21nm)5g、15vol%酢酸水溶液20ml、界面活性剤0.1ml(商品名:Triton(登録商標)X-100、シグマアルドリッチ社製)、及びポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)(和光純薬工業社製、商品コード:168-11285)0.3gを混合し、この混合物を攪拌ミキサーで約1時間攪拌し、酸化チタンペーストを得た。
<光電変換素子の作製>
光電変換素子を次のようにして作製した。
(a)半導体電極および対電極の作製
まず、半導体電極を次の順序で作製した。サイズが15mm×15mmで厚さが1.1mmのFTO付きガラス(10Ωcm2)を、導電性基板(透明導電層付き光透過性基板)として準備した。また、酸化チタンペースト(半導体層の材料)を次のようにして調製した。市販の酸化チタン粉末(商品名:P25、日本アエロジル(株)製、平均一次粒子径:21nm)5g、15vol%酢酸水溶液20ml、界面活性剤0.1ml(商品名:Triton(登録商標)X-100、シグマアルドリッチ社製)、及びポリエチレングリコール(重量平均分子量20000)(和光純薬工業社製、商品コード:168-11285)0.3gを混合し、この混合物を攪拌ミキサーで約1時間攪拌し、酸化チタンペーストを得た。
次いで、この酸化チタンペーストをFTO付きガラス上にドクターブレード法で膜厚が50μm程度となるように塗布(塗布面積:10mm×10mm)した。
その後、酸化チタンペーストを塗布したFTO付きガラスを電気炉に入れ、大気雰囲気にて450℃で約30分間焼成し、自然冷却させることで、FTO付きガラス上の多孔性の酸化チタン膜を得た。
さらに、この酸化チタン膜上に、次のようにして光散乱層を形成した。平均粒子径が400nmの酸化チタンペースト(商品名:PST-400C、日揮触媒化成(株)製)をスクリーン印刷法により、上述の酸化チタン膜上に20μmの厚さで塗布した。その後、大気雰囲気にて450℃で約30分間焼成し、自然冷却させることで、酸化チタン膜上の光散乱層を得た。以上のようして、色素が吸着される前の半導体電極を得た。
一方、対電極を次のようにした作製した。ソーダライムガラス板(厚さ1.1mm)上に、触媒層として平均膜厚1μmの白金層を真空蒸着法により蒸着し、対電極を得た。
(b)色素の吸着
次に、上述の酸化チタン膜および光散乱層からなる半導体層に色素を吸着させた。色素の吸着には、実施例1のジチエノピロール系化合物DTP-1を、0.1mMの濃度でTHF/アセトニトリル/t-ブタノール(2/4/4)混合溶媒中に溶かし、さらに共吸着剤としてデオキシコール酸を1.0mM添加した溶液を用いた。この色素溶液中に上述の半導体電極を6時間浸した。その後、色素溶液から半導体電極を取り出し、アセトニトリルでリンスして余分な色素を除去し、空気中で乾燥させ、色素が吸着された半導体電極を得た。
次に、上述の酸化チタン膜および光散乱層からなる半導体層に色素を吸着させた。色素の吸着には、実施例1のジチエノピロール系化合物DTP-1を、0.1mMの濃度でTHF/アセトニトリル/t-ブタノール(2/4/4)混合溶媒中に溶かし、さらに共吸着剤としてデオキシコール酸を1.0mM添加した溶液を用いた。この色素溶液中に上述の半導体電極を6時間浸した。その後、色素溶液から半導体電極を取り出し、アセトニトリルでリンスして余分な色素を除去し、空気中で乾燥させ、色素が吸着された半導体電極を得た。
(c)セル組み立て
上述の色素吸着処理後の半導体電極と上述の対電極とを、半導体層と触媒層が対向するように配置し、電解質注入前のセルを形成した。次に、電解質が半導体電極と対極との隙間に浸透できるだけの切り目を入れた熱硬化性樹脂フィルムを、セルの外周部に熱圧着した。
上述の色素吸着処理後の半導体電極と上述の対電極とを、半導体層と触媒層が対向するように配置し、電解質注入前のセルを形成した。次に、電解質が半導体電極と対極との隙間に浸透できるだけの切り目を入れた熱硬化性樹脂フィルムを、セルの外周部に熱圧着した。
(d)電解質の注入
上述のセルに、ヨウ素系電解質を上述の切り目を入れたところから注入し、半導体電極と対極との間に浸透させた。ヨウ素系電解質は、溶剤としてアセトニトリルを用い、ヨウ素の濃度が0.03mol/L、ヨウ化リチウムの濃度が0.05mol/L、4-tert-ブチルピリジンを0.5mol/L、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドを1.0mol/Lの濃度である溶液を用いた。
上述のセルに、ヨウ素系電解質を上述の切り目を入れたところから注入し、半導体電極と対極との間に浸透させた。ヨウ素系電解質は、溶剤としてアセトニトリルを用い、ヨウ素の濃度が0.03mol/L、ヨウ化リチウムの濃度が0.05mol/L、4-tert-ブチルピリジンを0.5mol/L、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムアイオダイドを1.0mol/Lの濃度である溶液を用いた。
(e)光電流の測定
上述のようにして作製した光電変換素子に、ソーラーシミュレータでAM1.5条件下の100mW/cm2の強度の光を照射して、発生した電気を電流電圧測定装置で測定し、光電変換特性を評価した。図4に得られた電流-電圧曲線を示す。その結果、5.5%の光電変換効率が得られた。
上述のようにして作製した光電変換素子に、ソーラーシミュレータでAM1.5条件下の100mW/cm2の強度の光を照射して、発生した電気を電流電圧測定装置で測定し、光電変換特性を評価した。図4に得られた電流-電圧曲線を示す。その結果、5.5%の光電変換効率が得られた。
(実施例6)
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-2を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-2を用いた素子では、3.8%の光電変換効率が得られた。
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-2を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-2を用いた素子では、3.8%の光電変換効率が得られた。
(実施例7)
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-3を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-3を用いた素子では、5.3%の光電変換効率が得られた。
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-3を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-3を用いた素子では、5.3%の光電変換効率が得られた。
(実施例8)
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-17を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-17を用いた素子では、5.8%の光電変換効率が得られた。
ジチエノピロール系化合物DTP-1に代えて、ジチエノピロール系化合物DTP-17を用いた以外は、実施例5と同様にして光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子の光電変換特性を評価した結果、DTP-17を用いた素子では、5.8%の光電変換効率が得られた。
以上の説明から明らかなように、本発明の実施形態によるジチエノピロール系化合物を光電変換素子用色素として用いることで、光電変換効率に優れた光電変換素子およびこれに用いられる半導体電極を得ることができる。このような光電変換素子は光電気化学電池に適用でき、特に太陽電池に好適である。また、貴金属を含む金属錯体を用いた場合よりも低コスト化を図ることが可能である。
この出願は、2011年9月22日に出願された日本出願の特願2011-207686を基礎とする優先権を主張し、その開示範囲の全てをここに取り込む。
1 半導体層
2 透明導電層
3 光透過性基板
4 半導体電極
5 電解質層(電荷輸送層)
6 触媒層
7 基板
8 対電極
2 透明導電層
3 光透過性基板
4 半導体電極
5 電解質層(電荷輸送層)
6 触媒層
7 基板
8 対電極
Claims (10)
- 請求項1ないし5の何れか1項に記載のジチエノピロール系化合物、その互変異性体及びその立体異性体からなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする光電変換素子用色素。
- 請求項6に記載の光電変換素子用色素を含む半導体層を有することを特徴とする光電変換素子用半導体電極。
- 前記半導体層は、酸化チタン及び酸化亜鉛のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子用半導体電極。
- 請求項7または8に記載の光電変換素子用半導体電極を有することを特徴とする光電変換素子。
- 前記光電変換素子は光電気化学電池であることを特徴とする請求項9に記載の光電変換素子。
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JP2011207686 | 2011-09-22 | ||
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-
2012
- 2012-06-21 WO PCT/JP2012/065822 patent/WO2013042414A1/ja active Application Filing
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