JP4520727B2 - ピロリジニウム塩、電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池 - Google Patents

ピロリジニウム塩、電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池 Download PDF

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Description

本発明は、新規ピロリジニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池に関する。
従来から電池、センサー、表示素子、記録素子等の電気化学的素子の電解質として、電解質塩を溶媒に溶解した液状電解質が用いられてきた。しかしながら、このような液状電解質を用いた電気化学的素子においては長期間の使用又は保存の間に液漏れが発生することがあり、信頼性に欠ける。
特許文献1等は、色素により増感された微粒子半導体を用いた光電変換素子及びそれを用いた光化学電池を開示しているが、これらにおいても電荷輸送層に液状電解質を用いているため、長期間の使用又は保存の間に電解液が漏洩又は枯渇し、光電変換効率が著しく低下したり、素子として機能しなくなったりすることが懸念される。
電解液の漏洩及び枯渇を防止し光電変換素子の耐久性を向上させるために、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等を電解質とする方法が開示されている(特許文献2〜4等)。これらの塩は室温において溶融状態にあり、室温溶融塩と呼ばれる。
この方法では水や有機溶媒等の電解質を溶解させる溶媒が不要或いは少量で済むため、電池の耐久性が向上する。しかしながら、これらの室温溶融塩を用いた光電変換素子は一般に光電変換効率が低い。
米国特許第4,927,721号明細書 国際公開第95/18456号パンフレット 特開平8−259543号公報 特開2001−256828号公報
本発明の目的は、光電変換素子に用いた場合に高い光電変換効率を与える新規なピロリジニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池を提供することである。
前記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、置換又は無置換のエチレンオキシ基の繰り返しを含む置換基を特定の位置に有するピロリジニウム塩を光電変換素子に用いることにより高い光電変換効率が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)次式(I):
Figure 0004520727
[式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Rは次式:
−(CR−CR−O)−R
(式中、R〜Rは、同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
で示される基を表し、Aはアニオンを表す。]
で示されるピロリジニウム塩。
(2)前記(1)に記載のピロリジニウム塩を含有する電解質組成物。
(3)光化学電池に用いられる前記(2)に記載の電解質組成物。
(4)導電層、感光層、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が前記(2)又は(3)に記載の電解質組成物を含有する光電変換素子。
(5)前記(4)に記載の光電変換素子において、前記感光層が色素によって増感された微粒子半導体を含有する光電変換素子。
(6)前記(4)又は(5)に記載の光電変換素子を用いた光化学電池。
(7)色素増感太陽電池である前記(6)に記載の光化学電池。
本発明によれば、光電変換素子に用いた場合に高い光電変換効率を与える新規なピロリジニウム塩、並びにこれを用いた電解質組成物、光電変換素子及び光化学電池を提供することができる。
[1]ピロリジニウム塩
本発明のピロリジニウム塩は前記式(I)で示される化合物である。
前記式(I)において、Rで表される炭素数1〜4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、1−ブテニル、2−ブテニル等の炭素数2〜4のアルケニル基;エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、3−ブチニル基等の炭素数2〜4のアルキニル基が挙げられる。
〜Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基が挙げられる。
で表されるアニオンとしては、例えばハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、N(CFSO、N(CFCFSO、C(CFSO、BF 、BPh 、PF 、ClO 、R−COO、R−SO 、SCN、好ましくはIが挙げられる。
前記Ra、は水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また環状であってもよく、例えばメチル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、エチルプロピル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、t−オクチル基、デシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等)又は置換若しくは無置換のアリール基(好ましくは炭素数6〜12、例えばフェニル基、トリル基、ナフチル基等)を表す。
a、が置換基を有するアルキル基又はアリール基の場合、当該置換基の例としては、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基等)、シアノ基、アルコキシカルボニル基(エトキシカルボニル基、メトキシエトキシカルボニル基等)、炭酸エステル基(エトキシカルボニルオキシ基等)、アミド基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、カルバモイル基(N,N−ジメチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等)、ホスホニル基(ジエチルホスホニル基等)、複素環基(ピリジル基、イミダゾリル基、フラニル基、オキサゾリジノニル基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基等)、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、スルホニル基(メタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基等)、アシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基等)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等)、アリール基(フェニル基、トルイル基等)、アリーロキシ基(フェノキシ基等)、アルケニル基(ビニル基、1−プロペニル基等)、置換若しくは無置換のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、シクロプロピル基、2−カルボキシエチル基、ベンジル基等)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)等が挙げられる。
本発明のピロリジニウム塩としては、次式(Ia):
Figure 0004520727
(式中、nは前記と同義である。)
で示される化合物が好ましい。
前記式(I)又は(Ia)で示される本発明のピロリジニウム塩において、nは、好ましくは1〜8、更に好ましくは2〜5である。
前記式(I)で示される本発明のピロリジニウム塩は、例えば、次式(II):
Figure 0004520727
(式中、Rは前記と同義である。)
で示されるN−置換ピロリジンと、次式(III):
A−(CR−CR−O)−R
(式中、Aは脱離して前記Aで表されるアニオンとなりうる置換基を表し、R〜R及びnは前記と同義である。)
で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。Aがハロゲン化物イオンである式(I)で示される化合物は、式(II)で示されるN−置換ピロリジンと、Aがハロゲン化物イオンになる式(III)で示される化合物と混合し、0℃〜150℃の温度で30分間〜1週間程度攪拌することによって容易に製造することができる。反応はアセト二トリル、N,N−ジメチルホルムアミド、シクロヘキサンなどの有機溶媒中で加熱還流して行うことが好ましい。また、Aがハロゲン化物以外のアニオンである式(I)で示される化合物は、前記のようにして得られたAがハロゲン化物イオンである式(I)で示される化合物と、他のアニオンの銀塩、リチウム塩あるいはアンモニウム塩等とを混合してアニオン交換を行うことにより得ることができる。式(II)で示されるN−置換ピロリジンと式(III)で示される化合物の混合比は、通常、式(II)で示されるN−置換ピロリジン1モルに対し、式(III)で示される化合物が、1モル〜5モルの範囲である。
式(II)で示されるN−置換ピロリジンとしては、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−プロピルピロリジン、N−ブチルピロリジンなどが挙げられる。また、式(III)で示される化合物としては、1−ヨード−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタン、1−ヨード−2−(2−メトキシエトキシ)エタン、1−ヨード−2−メトキシエタン、1−ブロモ−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタン、1−クロロ−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタン等が挙げられる。
[2]電解質組成物
本発明の電解質組成物は化学反応、金属メッキ等の反応溶媒、CCD(電荷結合素子)カメラ、種々の光電変換素子、電池等に用いることができ、リチウム二次電池又は光化学電池に用いるのが好ましく、半導体を用いた光化学電池に用いるのが更に好ましい。以下、本発明の電解質組成物の各構成成分について詳述する。
(A)溶融塩
本発明の電解質組成物は前記式(I)で示されるピロリジニウム塩を含有する。前記式(I)で示される化合物は低融点の塩、いわゆる溶融塩である。この化合物には常温(25℃付近)で液体である化合物、いわゆる室温溶融塩が含まれる。
前記式(I)で示される化合物は溶媒をほとんど用いずに電解質として使用できることが多く、単独で電解質として使用できる場合も多い。常温で固体であっても少量の溶媒や添加剤等を加えることで液状とし、電解質として使用できる。また何も添加しなくても、加熱溶解して電極上に浸透させる方法、低沸点溶媒(メタノール、アセトニトリル、塩化メチレン等)等を用いて電極上に浸透させ、その後溶媒を加熱により除去する方法等により光電変換素子に組み込むことが可能である。
本発明の電解質組成物を光電変換素子に用いる場合、電解質組成物は前記式(I)で示される化合物以外にヨウ素塩、例えば、WO95/18456や特開平8−259543号公報に記載の5又は6員環の含窒素芳香族カチオンを含むイミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩あるいはホスホニウム塩等のヨウ素塩を併用してもよい。
前記式(I)で示される化合物がヨウ素塩である場合、電解質組成物は更にヨウ素塩以外の塩を含有していてもよい。また、ヨウ化物イオンを含む前記式(I)で示される化合物と、他のアニオンを含む前記式(I)で示される化合物を併用してもよい。
(B)酸化還元対
本発明の電解質組成物を光化学電池に用いる場合、電解質組成物は可逆的な酸化還元対を含有する。このような酸化還元対としてはI/I 系、Br/Br 系、キノン/ハイドロキノン系、金属錯体などが挙げられる。このような酸化還元対は従来公知の方法によって得ることができる。例えばI/I 系の酸化還元対は、Aがヨウ化物イオンの場合、前記式(I)で示されるヨウ化物にヨウ素を溶解することによって得ることができる。Aがヨウ化物イオン以外の場合、前記式(I)で示される化合物に、ヨウ化物(金属ヨウ化物や4級アンモニウム塩のヨウ素塩など)とヨウ素を溶解することによって得ることができる。いずれの場合においても、ヨウ化物とヨウ素とのモル比は、好ましくは100:1〜2:1、更に好ましくは50:1〜5:1である。
(C)溶媒
本発明の電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物の溶媒含有量は、通常、組成物全体の50質量%以下、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、或いはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等)、水等が挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
(D)その他
本発明の電解質組成物は、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類の重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用してもよい。
ポリマー添加によりゲル化させる場合、例えばポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを添加してゲル化させることができる。
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化してゲル電解質とする場合は、電解質組成物に多官能モノマー類、重合開始剤、及び溶媒を加えた溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により電極上に電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。多官能モノマー類はエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。
ゲル電解質は前記多官能モノマー類の他に単官能モノマーを含む混合物の重合によって形成してもよい。単官能モノマーとしては、アクリル酸又はα−アルキルアクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等)或いはそれらのエステル又はアミド(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、3−ペンチルアクリレート、t−ペンチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2,2−ジメチルブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−プロピルペンチルアクリレート、セチルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、ベンジルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシエトキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−メチル−2−ニトロプロピルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ペンチルメタクリレート、n−オクタデシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−メトキシエトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピルメタクリレート、ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、エチレングリコールエチルカーボネートメタクリレート、2−イソボルニルメタクリレート、2−ノルボルニルメチルメタクリレート、5−ノルボルネン−2−イルメチルメタクリレート、3−メチル−2−ノルボニルメチルメタクリレート、アクリルアミド、N−i−プロピルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル等)、マレイン酸又はフマル酸或いはそれらから誘導されるエステル類(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル等)、p−スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(ブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン等)、芳香族ビニル化合物(スチレン、p−クロロスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(メチルビニルエーテル等)、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブテン、N−フェニルマレイミド等が使用可能である。
モノマー総量に占める多官能モノマーの重量組成は、好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは1.0〜50質量%である。
前述のモノマーは、一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用するゲル電解質用モノマーは加熱、光又は電子線によって、或いは電気化学的にラジカル重合させることができるが、特に色素の分解が起こり難いことや、均一な重合が可能であることから加熱によってラジカル重合させるのが好ましい。この場合、好ましく使用できる重合開始剤は2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート等の過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量はモノマー総量に対し0.01〜20質量%であり、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
ゲル電解質に占めるモノマーの重量組成範囲は、好ましくは0.5〜70質量%、更に好ましくは1.0〜50質量%である。
ポリマーの架橋反応により電解質組成物をゲル化させる場合は、電解質組成物に架橋可能な反応性基を有するポリマー及び架橋剤を添加して行う。好ましい反応性基はピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等の含窒素複素環であり、好ましい架橋剤は窒素原子が求核攻撃できる官能基を2つ以上有する化合物(求電子剤)であり、例えば2官能以上のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等である。
また、本発明ではt-ブチルピリジンや、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。
[3]光電変換素子
本発明の光電変換素子6は導電層、感光層、電荷輸送層及び対極を有し、電荷輸送層に前記本発明の電解質組成物を含有する。好ましくは図1に示すように、導電層1と感光層2からなる光電極、電荷輸送層3、対極導電層4の順に積層し、感光層2を色素によって増感された半導体微粒子と当該半導体微粒子の間の空隙に充填された電解質とから構成してなる。電解質は電荷輸送層3に用いる材料と同じ成分からなる。また光電変換素子に強度を付与するために、導電層1側及び/又は対極導電層4側に基板を設けてもよい。以下、本明細書では、導電層1及び任意に設ける基板からなる層を「導電性支持体」、対極導電層4及び任意に設ける基板からなる層を「対極」と呼ぶ。スペーサー5を介して、光電極と対極を積層することにより形成した隙間に電荷輸送層3を形成してもよい。スペーサーとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどを使用することができる。この光電変換素子を外部回路に接続して仕事をさせるようにしたものが光化学電池である。なお、導電層1、対極導電層4、基板は、それぞれ透明導電層、透明対極導電層、透明基板であってもよい。
図1に示す本発明の光電変換素子6において、色素により増感された半導体微粒子を含む感光層2に入射した光は色素等を励起し、励起された色素等中の高エネルギーの電子が半導体微粒子の伝導帯に渡され、更に拡散により導電層1に到達する。このとき色素等の分子は酸化体となっている。光化学電池においては、導電層1中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層4及び電荷輸送層3を経て色素等の酸化体に戻り、色素が再生する。感光層2は負極として働く。以下各層について詳細に説明する。
(A)導電性支持体
導電性支持体は、(1)導電層の単層又は(2)導電層及び基板の2層からなる。強度や密封性が十分に保たれるような導電層を使用すれば、基板は必ずしも必要でない。
(1)の場合、導電層として金属のように十分な強度が得られ、且つ導電性があるものを用いる。
(2)の場合、導電剤を含有する導電層を感光層側に有する基板を使用することができる。好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、二酸化スズにフッ素をドープしたもの等)等が挙げられる。導電層の厚さは0.02〜10μm程度が好ましい。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。表面抵抗は好ましくは100Ω/□以下であり、更に好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光透過率が10%以上であることを意味する。光透過率は、好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上である。
透明導電性支持体としては、ガラス又はプラスチック等の透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布又は蒸着等により形成したものが好ましい。中でもフッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが好ましい。また低コストでフレキシブルな光電変換素子又は太陽電池とするには、透明ポリマーフィルムに導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムの材料としては、テトラアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエステルスルホン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン等が使用可能である。
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で、透明基板上にアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属材料やカーボンからなるリードを設け、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明導電層を設けることができる。金属リードを透明基板上に設ける方法としては蒸着、スパッタリング、スクリーン印刷、電解メッキ、無電解メッキ等が挙げられる。
(B)感光層
本発明の光電変換素子において、感光層は色素によって増感された微粒子半導体を含有することが好ましい。半導体はいわゆる感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感された半導体微粒子においては、光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素で起こり、半導体微粒子はこの電子を受け取り伝達する役割を担う。
(1)半導体微粒子
半導体微粒子としてはシリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、III−V系化合物半導体、金属カルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト構造を有する化合物(例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等)等が使用できる。本発明で使用する微粒子半導体は金属カルコゲニド微粒子からなるのが好ましい。
金属カルコゲニドとして、チタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ又はタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン又はビスマスの硫化物、カドミウム又は鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウム−ヒ素又は銅−インジウムのセレン化物、銅−インジウムの硫化物等が挙げられる。
本発明に用いる半導体は、好ましくはSi、TiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、ZnS、PbS、Bi、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeであり、更に好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO、Nb、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS又はCuInSeであり、特に好ましくはTiO又はNbであり、最も好ましくはTiOである。
本発明で用いる半導体は単結晶でも多結晶でもよい。
半導体微粒子の粒径は一般にnm〜μmのオーダーである。本発明において、微粒子の投影面積を円に換算したときの直径から求めた一次粒子平均粒径は5〜200nmであるのが好ましく、8〜100nmであるのが更に好ましい。
粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよい。
(2)半導体微粒子層
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布する際には、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法に加え、前述のゾル−ゲル法等を使用することができる。光電変換素子の量産化、半導体微粒子分散液又はコロイド溶液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮すると、湿式製膜方法が比較的好ましい。湿式製膜方法としては塗布法及び印刷法が代表的である。
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては、ゾル−ゲル法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。
分散媒としては、水又は各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が使用可能である。分散する際には、分散助剤としてポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤(アセチルアセトン)等を必要に応じて用いてもよい。
塗布方法としては、ローラ法、ディップ法キャスト法、エアーナイフ法、ブレード法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーンなどの印刷等が利用できる。以上の方法の中から、分散液の粘度や塗付厚さなどに応じて好ましい塗付方法を選択すればよい。
半導体微粒子層は単層に限らず、粒径の異なる半導体微粒子分散液を多層など塗布したり、異なる種類の半導体微粒子(或いは異なるバインダー、添加剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布では膜厚が不足する場合にも、多層塗布は有効である。また、多層塗布する場合は、同時に多数の層を塗布してもよく、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。順次重ね塗りする場合には、スクリーン印刷法やスプレー法が好ましく使用できる。
一般に、半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの色素担持量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って、半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。特に、光化学電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは1〜30μmであるのが好ましく、2〜25μmであるのが更に好ましい。支持体1m当たりの半導体微粒子塗布量は0.5〜400gとすることが好ましく、5〜100gとするのが更に好ましい。半導体微粒子を導電性支持体に塗布した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させると共に塗膜強度や支持体との密着性を向上させるために、加熱処理(焼成)を施すのが好ましい。加熱温度は40℃以上700℃未満とすることが好ましく、100℃以上600℃以下とするのが更に好ましい。また、加熱時間は10分〜10時間程度とすればよい。
加熱処理後、半導体微粒子の表面積を増大させるため、或いは半導体微粒子近傍の純度を高め色素から半導体微粒子への電子注入効率を高めるために、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を施してもよい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように大きな表面積を有することが好ましい。半導体微粒子を支持体上に塗布した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、100倍以上であるのが更に好ましい。上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
(3)色素
感光層に使用する色素は種々の金属錯体色素、有機色素を用いることができる。光電変換の波長域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、二種類以上の色素を混合して用いてもよい。また、光源の波長域と強度分布に合わせて、混合する色素とその混合割合を選択すればよい。
本発明で用いる色素は、好ましくは半導体微粒子表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有する。好ましい結合基としては−COOH基、−SOH基、シアノ基、−P(O)(OH)基、−OP(O)(OH)基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα−ケトエノレートのようなキレート化基が挙げられる。中でも−COOH基、−P(O)(OH)基及び−OP(O)(OH)基が特に好ましい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、分子内塩を形成していてもよい。
本発明で使用する色素としては、増感の効果や耐久性の点から金属錯体色素を用いることが好ましく、また、その金属錯体の金属原子はルテニウムRuが好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許第4927721号、特開2001-256828号公報等に記載のものが使用可能である。
本発明で用いるルテニウム錯体色素は次式(X):
(ARu(B−a)(B−b)(B−c) (X)
(式中、AはCl、SCN、HO、Br、I、CN、NCO及びSeCNからなる群から選ばれた配位子を表す。pは0〜2の整数であり、好ましくは2である。B−a、B−b及びB−cはそれぞれ独立に含窒素複素環を含有する有機配位子、例えば2,2´−ビピリジル−4,4´−ジカルボキシラトを表す。)で示されるものが好ましい。B−a、B−b及びB−cは同じでも異なっていてもよい。
(4)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させるためは、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬する方法、或いは色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の方法では、浸漬法、ローラ法、エアーナイフ法等が使用可能である。なお、浸漬法の場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号公報に記載されているように加熱還流して行ってもよい。また、後者の方法では、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等の塗布方法や、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等の印刷方法が利用できる。
色素の溶液に用いる溶媒は色素の溶解性に応じて適宜選択でき、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)、これらの混合溶媒等が使用できる。
色素の吸着方法は色素の溶液の粘度、塗布量、導電性支持体の材質、塗布速度等に応じて適宜選択すればよい。量産化の観点からは、塗布後の色素吸着に要する時間をなるべく短くすることが好ましい。
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄により除去することが好ましい。洗浄は、アセトニトリル等の極性溶剤やアルコール系溶剤等の有機溶媒を用いて行うのが好ましい。また、色素の吸着量を増大させるために吸着前に加熱処理を施すのが好ましい。加熱処理の後に半導体微粒子表面に水が吸着するのを抑制するために、常温に戻さず40〜80℃で素早く色素を吸着させるのが好ましい。
色素の全使用量は、導電性支持体の単位表面積(1m)当たり0.01〜100mmolとすることが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は、十分な増感効果を得るためには半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。色素の吸着量が少なすぎると増感効果が不十分となり、また多すぎると色素が浮遊しやすく、増感効果を低減させる原因となる。
光電変換の波長域をできるだけ広くするとともに変換効率を上げるために、2種類以上の色素を混合して使用してもよい。この場合、光源の波長域と強度分布に応じて、適宜混合する色素及びその混合割合を選択することが好ましい。
会合のような色素同士の相互作用を低減する目的で、無色の疎水性化合物を半導体微粒子に共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばケノデオキシコール酸)等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を併用してもよい。
余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。アミン類としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよく、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。電荷輸送層に前記本発明の電解質組成物を用いるが、更に固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を併用することもできる。
本発明の電解質組成物からなる電荷輸送層を形成するには、キャスト法、塗布法、浸漬法等により感光層上に電解質組成物の溶液を塗布する方法や、光電極と対極を有するセルを作製しその隙間に電解質組成物を注入する方法などが挙げられる。
塗布法によって電荷輸送層を形成する場合、溶融塩等を含む電解質組成物の溶液に塗布性改良剤(レベリング剤等)等の添加剤を添加して、これをスピンコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ホッパーを使用するエクストルージョンコート法、多層同時塗布方法等の方法により塗布し、その後必要に応じて加熱すればよい。加熱する場合の加熱温度は色素の耐熱温度等により適当に選択すればよいが、通常10〜150℃であるのが好ましく、10〜100℃であるのが更に好ましい。加熱時間は加熱温度等にもよるが、5分〜72時間程度である。
好ましい態様によれば、感光層2中の空隙を完全に埋める量より多い電解質組成物の溶液を塗布するので、図1に示すように得られる電解質の層は実質的に導電性支持体の導電層1との境界から対極導電層4との境界までの間に存在する。ここで、色素増感半導体を含む感光層2との境界から対極4との境界までの間に存在する電解質の層を電荷輸送層3とすると、その厚さは0.001〜200μmであるのが好ましく、0.1〜100μmであるのが更に好ましく、0.1〜50μmであるのが特に好ましい。電荷輸送層3が0.001μmより薄いと感光層中の半導体微粒子が対極導電層4に接触するおそれがあり、また200μmより厚いと電荷の移動距離が大きくなりすぎ、素子の抵抗が大きくなる。なお、感光層2+電荷輸送層3の厚さ(実質的に電解質組成物からなる層の厚さに等しい)は0.1〜300μmであるのが好ましく、1〜130μmであるのが更に好ましく、2〜75μmであるのが特に好ましい。
酸化還元対を生成させるために電解質組成物にヨウ素等を導入する場合、前述の電解質の溶液に添加する方法や、電荷輸送層を形成した支持体をヨウ素等と共に密閉容器内に置き、電解質中に拡散させる手法等が使用できる。また、対極にヨウ素等を塗布又は蒸着し、光電変換素子を組み立てたときに電荷輸送層中に導入することも可能である。
なお、電荷輸送層中の水分は10,000ppm以下であるのが好ましく、更に好ましくは2,000ppm以下であり、特に好ましくは100ppm以下である。
(D)対極
対極は光電変換素子を光化学電池としたときに正極として作用するものである。対極は前記導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層のみから構成されていてもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電性材料としては、金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が使用できる。対極に用いる支持基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、これに前記導電性材料を塗布又は蒸着して用いる。対極導電層の厚さは特に制限されないが3nm〜10μmであるのが好ましい。特に、対極導電層が金属である場合は、その厚さは5μm以下であるのが好ましく、5nm〜3μmであるのが更に好ましい。
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極のうち少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率向上の観点からは、導電性支持体を透明にし、光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有することが好ましい。このような対極の材料としては、金属や導電性の酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、金属薄膜等が使用できる。
対極を設ける手順としては、(イ)電荷輸送層を形成した後でその上に設ける場合と(ロ)半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を配置し、その空隙に電解質溶液を充填する場合の2通りある。(イ)の場合、電荷輸送層上に直接導電材を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を設けた基板の導電層側を貼り付ける。また(ロ)の場合、半導体微粒子層の上にスペーサーを介して対極を組み立てて固定し、得られた組立体の開放端を電解質溶液に浸漬し、毛細管現象又は減圧を利用して半導体微粒子層と対極との空隙に電解質を浸透させる。また、導電性支持体の場合と同様に、特に対極が実質的に透明な場合には抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。なお、好ましい金属リードの材質及び設置方法、金属リード設置による入射光量の低下等は前記導電性支持体の場合と同じである。
(E)その他の層
電極として作用する導電性支持体及び対極の一方又は両方に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。このような機能性層を多層に形成する場合、同時多層塗布法や逐次塗布法が利用できる。生産性の観点からは同時多層塗布法が好ましい。同時多層塗布法では、生産性及び塗膜の均一性の観点からスライドホッパー法やエクストルージョン法が好ましい。機能性層の形成には、導電性支持体又は対極の材質に応じて蒸着法や貼り付け法等を用いることができる。
また、対極と光電極の短絡を防止するため、予め導電性支持体と感光層の間に緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として塗設してもよい。下塗り層の材料は好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO及び/又はNbであり、更に好ましくはTiOである。下塗り層はスプレーパイロリシス法により塗設することができる。下塗り層の膜厚は5〜1000nmであるのが好ましく、10〜500nmであるのが更に好ましい。
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と片面からのみ可能な構造が可能である。
[4]光化学電池
本発明の光化学電池は、前記光電変換素子に外部回路で仕事をさせるようにしたものである。光化学電池は構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続される外部回路自体は公知のものでよい。
[5]色素増感太陽電池
本発明の光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に前述した光電変換素子の構造と同じである。以下、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池のモジュール構造について説明する。
本発明の色素増感太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは一般的には金属、セラミック等の支持基板上にセルを形成し、それを充填樹脂や保護ガラス等で覆って構成される、支持基板の反対側から光を取り込む構造を有する。支持基板の材料として強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを形成してその透明支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ或いはポッティングタイプのモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が知られている。本発明の光電変換素子を用いた色素増感太陽電池においても、使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。
以上詳述したように、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)ピロリジニウム塩(化合物1)の合成(前記式(I):R=R=メチル基、R〜R=水素原子、n=3、A=I
Figure 0004520727
(1)1−ヨード−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタンの合成 (前記式(III):A=I、R〜R=水素原子、R=メチル基)
トリエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成工業社製)16.42g(0.1mol)と反応の際に生成するp−トルエンスルホン酸を中和するためのピリジン(関東化学社製)17.4gを溶媒であるジクロロメタン100mlに溶解した。この溶液中に、トシル化剤であるp−トルエンスルホニルクロリド20.97g(0.11mol)をジクロロメタン100mlに溶解させた溶液を、滴下ロートを用いて撹拌しながら30分かけて滴下した。室温で3日間撹拌した後、析出した固体を濾過にて除去した。濾液を希塩酸水溶液と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて順に洗浄した後、ジクロロメタン層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥した。ジクロロメタンを減圧除去し、残渣をアセトン100mlに溶解した。この溶液中にヨウ化ナトリウム(関東化学社製)22.5g(0.15mol)をアセトン100mlに溶解したものを加え、光を遮蔽しながら室温で24時間撹拌した。析出物を濾過して取り除き、濾液を減圧濃縮した後、減圧蒸留することによって1−ヨード−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタンを得た。(97℃/3mmHg)
(2)ピロリジニウム塩の合成
(1)で合成した1−ヨード−2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エタン2.74g(0.01mol)とN−メチルピロリジン(1−メチルピロリジン)(東京化成工業社製)0.85g(0.01mol)をアセトニトリル50mlに溶解し、8時間加熱還流させた。反応液を過剰量のジエチルエーテルに滴下し、沈降した液体を回収した後、溶媒を除去、更に100℃で3日間真空乾燥して目的の化合物を得た。得られた化合物のH−NMRの測定結果を示す。
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)
δ2.07(s, 4H, 2×CH2(ring)), 3.04(s, 3H, N-CH3), 3.22(s, 3H, O-CH3), 3.40-3.43(m, 2H, N-CH2), 3.49-3.59(m, 12H, O-CH2, N-CH2(ring)), 3.84(s, 2H, N-CH2-CH 2 -O)
この結果から、得られた化合物が目的のピロリジニウム塩であることが確認された。
(実施例2及び比較例1〜4)色素増感太陽電池セルの作製
(1)二酸化チタン分散液の調製
半導体微粒子として二酸化チタン(TiO)粒子(日本アエロジル社製、Degussa P-25、一次粒子平均粒径21nm)12g、水3.6ml、アセチルアセトン(関東化学社製)0.4mlを混合し、乳鉢を用いて強く分散した。次いで、撹拌を続けながら水16mlを徐々に加え、更にノニオン系界面活性剤(Triton X-100、Aldrich社製)0.2mlを加えて分散液とした。
(2)光電極の作製
導電層としてフッ素をドープした二酸化スズを塗付した透明導電性ガラス(日本板硝子社製、表面抵抗10Ω/□)の導電層表面に前記の分散液をガラス棒を用いてキャスト法により塗布した。その際、透明導電性ガラスの大きさは20mm×20mmとし、塗布面積が1cmとなるように導電性ガラスの両端に厚み45μmの粘着テープを貼り付け、この粘着テープの厚みをギャップとして塗布を行った。塗布後に粘着テープを剥離し、室温で8時間乾燥した後、電気炉(ヤマト科学社製マッフル炉)を用いて450℃で30分間加熱処理(焼成)を行った。電気炉から取り出し、約80℃まで冷却した後、ルテニウム錯体色素(化学名:cis-bis(isothiocyanato)bis(2,2’-bipyridyl-4,4’-dicarboxylato)ruthenium(II), Solaronix製、Ruthenium 535)のエタノール溶液(3×10−4mol/l)に24時間室温で浸漬することによって、二酸化チタン粒子の表面に色素を吸着させた。この電極を色素溶液から取り出し、エタノールで洗浄し乾燥して感光層を形成し光電極とした。この電極の二酸化チタン層の厚みを測定したところ約10μmであった。
(3)対極
前記と同じ透明導電性ガラスの導電面にスパッタリングにより白金膜を形成させたものを用いた。
(4)セルの組み立て
前記の光電極と対極を厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをスペーサーとして重ね合わせ、その隙間に調製した電解質組成物(実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物1)にヨウ素をモル比10:1の割合で溶解した溶液)を注入して電荷輸送層とし、色素増感太陽電池セル(光化学電池)とした(図1参照)。
実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物1)の代わりに下記の4級アンモニウム塩(化合物A)を用いて、比較例1の太陽電池セルを作製した。
Figure 0004520727
(化合物A) 実施例1のN−メチルピロリジンの代わりに1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(Aldrich製)を用いた以外は同様の手順で化合物Aを合成した。
(5)光電変換効率(太陽電池セル変換効率)の測定
実施例2及び比較例1の色素増感太陽電池セルについて、AM1.5Gスペクトルのソーラーシミュレーター(100W/m)を用いて光電変換効率(太陽電池セル変換効率)を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004520727
表1から、本発明の電解質組成物を電荷輸送層に用いると、高い光電変換効率(太陽電池セル変換効率)が得られることがわかる。
(実施例3)
実施例1(1)において、トリエチレングリコールモノメチルエーテルの代わりに、次式:HO−(CHCHO)CH
において、nが1である化合物、nが2である化合物又はnの平均値が7.2である混合物を用いる以外は、実施例1と同様にして次式(Ia):
Figure 0004520727
において、nが1であるピロリジニウム塩(化合物2)、nが2である化合物(化合物3)又はnの平均値が7.2であるピロリジニウム塩(混合物;化合物4)を合成した。
化合物2のH−NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)
δ2.06(s, 4H, 2×CH2(ring)), 3.04(s, 3H, N-CH3), 3.29(s, 3H, O-CH3), 3.52(s, 4H, 2×N-CH2(ring)), 3.57-3.60(m, 2H, N-CH2), 3.75(s, 2H, O-CH2)
化合物3のH−NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)
δ2.07(s, 4H, 2×CH2(ring)), 3.03(s, 3H, N-CH3), 3.22(s, 3H, O-CH3), 3.44-3.47(m, 2H, N-CH2), 3.51-3.53(s, 4H, 2×N-CH2(ring)), 3.56-3.59(m, 4H, O-CH2), 3.82(s, 2H, N-CH2-CH 2 -O)
化合物4のH−NMRの測定結果を以下に示す。
1H NMR (300 MHz, d6-DMSO)
δ2.07(s, 4H, 2×CH2(ring)), 3.04(s, 3H, N-CH3), 3.22(s, 3H, O-CH3), 3.41-3.42(m, 2H, N-CH2), 3.49-3.58(m, 29H, 2×N-CH2, O-CH2), 3.84(s, 2H, N-CH2-CH 2 -O)
次いで、実施例2(4)で用いた電解質組成物(実施例1で得たピロリジニウム塩(化合物1)にヨウ素をモル比10:1の割合で溶解した溶液)の代わりに、化合物2にヨウ素をモル比10:1の割合で加え、更に化合物2の10質量%の水を加えて調製した電解質組成物、化合物3にヨウ素をモル比10:1の割合で加えて調製した電解質組成物、又は化合物4にヨウ素をモル比10:1の割合で加えて調製した電解質組成物をそれぞれ用いる以外は、実施例2と同様にして、太陽電池セルを作製し、光電変換効率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004520727
本発明の光電変換素子及び光化学電池の構造の一例を示す図である。
符号の説明
1 導電層(光電極)
2 感光層(色素で増感された酸化チタン層)
3 電荷輸送層(電解質組成物)
4 対極導電層(対極)
5 スペーサー
6 光電変換素子

Claims (11)

  1. 次式(I):
    Figure 0004520727
    [式中、Rは炭素数1〜4の炭化水素基を表し、Rは次式:
    −(CR−CR−O)−R
    (式中、R〜Rは、同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
    で示される基を表し、Aはアニオンを表す。]
    で示されるピロリジニウム塩(但し、次式:
    Figure 0004520727
    で示されるピロリジニウム塩を除く。)
  2. 前記式(I)において、nが2である請求項1記載のピロリジニウム塩。
  3. 前記式(I)において、R 〜R が水素原子である請求項1又は2記載のピロリジニウム塩。
  4. 次式(I):
    Figure 0004520727
    [式中、R は炭素数1〜4の炭化水素基を表し、R は次式:
    −(CR −CR −O) −R
    (式中、R 〜R は、同一又は異なり、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、nは2〜5の整数を表す。)
    で示される基を表し、A はアニオンを表す。]
    で示されるピロリジニウム塩を含有する電解質組成物。
  5. 前記式(I)において、nが2又は3である請求項4記載の電解質組成物。
  6. 前記式(I)において、R 〜R が水素原子である請求項4又は5記載の電解質組成物。
  7. 光化学電池に用いられる請求項4〜6のいずれか1項に記載の電解質組成物。
  8. 導電層と感光層からなる光電極、電荷輸送層及び対極を有する光電変換素子において、前記電荷輸送層が請求項4〜7のいずれか1項に記載の電解質組成物を含有する光電変換素子。
  9. 請求項記載の光電変換素子において、前記感光層が色素によって増感された微粒子半導体を含有する光電変換素子。
  10. 請求項又は記載の光電変換素子を用いた光化学電池。
  11. 色素増感太陽電池である請求項10記載の光化学電池。
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